2018年09月19日

2018年09月18日のtweet




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2018年09月18日

平成30年司法試験の結果について(3)

1 今回は、論文式試験の全科目平均点をみていきます。以下は、これまでの全科目平均点及び受験者数の推移をまとめたものです。全科目平均点の括弧書きは最低ライン未満者を含む数字、受験者数前年比の括弧書きは変化率を示しています(なお、各年の全科目平均点を比較することの意味については、「平成26年司法試験の結果について(4)の補足」を参照。ただし、後記2のとおり、現在ではその意味が薄まってきています。)。


(平成)
全科目
平均点
前年比

受験者数

前年比
18 404.06 ---

2087

---
19 393.91 -10.15

4597

+2510
(+120.2%)
20 378.21
(372.18)
-15.70

6238

+1641
(+35.6%)
21 367.10
(361.85)
-11.11
(-10.33)

7353

+1115
(+17.8%)
22 353.80
(346.10)
-13.30
(-15.70)

8163

+810
(+11.0%)
23 353.05
(344.69)
-0.75
(-1.41)

8765

+602
(+7.3%)
24 363.54
(353.12)
+10.49
(+8.43)
8387 -378
(-4.3%)
25 361.62
(351.18)
-1.92
(-1.94)
7653 -734
(-8.7%)
26 359.16
(344.09)
-2.46
(-7.09)
8015 +362
(+4.7%)
27 376.51
(365.74)
+17.35
(+21.65)
8016 +1
(+0.0%)
28 397.67
(389.72)
+21.16
(+23.98)
6899 -1117
(-13.9%)
29 374.04
(360.53)
-23.63
(-29.19)
5967 -932
(-13.5%)
30 378.08
(369.80)
+4.04
(+9.27)
5238 -729
(-12.2%)

 全科目平均点と受験者数の間には、緩やかな逆相関性があります。いつの年にも、上位層というのは、一定の限られた人数しかいないものです。ですから、受験者数が増加することは、下位層の増加を意味することになりやすい。その結果、受験者数が増加すると、全科目平均点は下がりやすい、という緩やかな関係性があるというわけです。ただし、必ずしも、受験者数の増減幅に応じて全科目平均点が上下する、という関係にはありません。平成25年のように、逆相関の関係にない年もある。「緩やかな」と表現した所以です。とはいえ、平成26年までは、それで概ね説明が付きました

2 しかし、平成27年は、受験者数にほとんど変化がないのに、全科目平均点が急上昇しました。これは、上記の全科目平均点と受験者数の関係性からは説明が付きません。当サイトでは、この異常な全科目平均点の急上昇の主な要因として、考査委員間で得点分布の目安を守ろうという申し合わせがあったのではないか、と説明してきました(「平成27年司法試験の結果について(3)」)。「法科大学院制度がうまくいかないのは、司法試験が難しすぎるせいだ。(法科大学院が悪いのではなく、司法試験委員会が悪い。)」という法科大学院関係者からの批判を契機として、司法試験の成績評価の在り方が、検証の対象とされるようになったからです。

 

法曹の養成に関するフォーラム論点整理(取りまとめ)(平成24年5月10日)より引用。太字強調は筆者。)

 現在の合否判定は,受験者の専門的学識・能力の評価を実質的に反映した合理性のあるものになっているか疑問とする余地があり,合格者数が低迷しているのは合格レベルに達しない受験者が多かったからだと直ちに断定することはできず,合否判定の在り方についても見直す必要があるのではないか,法曹になるために最低限必要な能力は何かという観点から合格水準について検討すべきではないか,新たな法曹養成制度の下で司法試験合格者に求められる専門的学識・能力の内容や程度について,考査委員の間に共通の認識がないのではないか,新司法試験の考査委員には,法科大学院での教育やその趣旨についての理解が十分でないまま,旧来の司法試験と同様の意識や感覚で合否の決定に当たっている者も少なくないのではないかと疑われるとの意見があり,また,この立場から,考査委員の選任や考査委員会議の在り方等について工夫してはどうか(例えば,考査委員代表者を中心にする少人数の作業班により答案の質的レベル評価を反映する合格ラインの決定を行う等)との意見があった。

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第48回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁座長代理 やはり旧来どおりの司法試験の在り方やその結果が絶対だと見る既存のものの考え方が根強く残っている。新しい法曹養成制度になったときに、制度の趣旨に照らしてその点を見直し、その結果として前のとおりで良いと意識的に判断して、そうしているならば、それはそれで一つの考え方だと思うのですけれども、果たしてそのような意識的な検討が十分なされたのかどうか。新たな法曹養成制度の下で、特に多様なバックグラウンドの方をたくさん受け入れて、法曹の質を豊かなものにしていこうというのが大きな理念であるはずですが、それに適合した選別の仕方がなされているのかどうか。その辺について内部では議論されているのかもしれないのですけれど、司法試験委員会ないし考査委員会議は、守秘義務の壁の向こうにあるものですから、よく分からない。しかし、そういったところも、やはり検証する必要がある

井上正仁座長代理 司法試験については、司法試験委員会ないし法務省の方の見解では、決して数が先にあるのではなく、あくまで各年の司法試験の成績に基づいて、合格水準に達している人を合格させており、その結果として、今の数字になっているというのです。確かに、閣議決定で3,000人というのが目標とはされているのだけれども、受験者の成績がそこまでではないから、2,000ちょっとで止まっているのだというわけです。それに対しては、その合格者決定の仕方が必ずしも外からは見えないこともあり、本当にそうなのかどうか、合格のための要求水準について従来どおりの考え方でやっていないかどうかといった点も検証する必要がある

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第68回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁座長 法科大学院制度発足のときにも,必ずしも法廷活動を中心にする狭い意味の法曹の育成を専ら念頭に置いていたというわけではなく,社会のいろいろな方面に法曹資格,あるいは,それに匹敵するような能力を備えた人が進出していき,その専門的能力を活(い)かして様々な貢献をするということが目指すべき理想とされ,そういう理念で出発したはずなのですけれども,その後,現実には司法試験というものの比重が非常に重いため,どうしても狭い意味の法曹というところに焦点が絞られるというか,多くの関係者の視野が狭くなってしまっていると言うことだと思います。これまでの本委員会でも,度々同じような御意見が出,議論もあったところですが,何かもう少し具体的な形で議論できるようにすることを考えていきたいと思っています。

(引用終わり)

(「法曹養成制度検討会議取りまとめ」(平成25年6月26日)より引用。太字強調は筆者。)

 具体的な方式・内容,合格基準・合格者決定の在り方に関しては,司法試験委員会において,現状について検証・確認しつつより良い在り方を検討するべく,同委員会の下に,検討体制を整備することが期待される

(引用終わり)

 (「平成28年以降における司法試験の方式・内容等の在り方について」(平成27年6月10日司法試験委員会決定)より引用。太字強調は筆者。)

第3.出題の在り方等についての検証体制

1.検証体制の位置付け

 司法試験考査委員は,これまでも毎年の出題等に関する検証を行ってきたものであるが,今後,出題等に関するより一層の工夫が求められることを踏まえ,その工夫の趣旨や効果等を検証するとともに,各科目・分野を横断して認識を共有し,その後の出題等にいかすため,年ごとに,各科目・分野の考査委員の中から検証担当考査委員を選任し,その年の司法試験実施後において,共同してその年の試験についての検証を行うこととする。

2.検証体制の構成

 検証担当考査委員については,研究者と実務家の考査委員の双方を含めるとともに,実務家については,法曹三者を全て含めることとする。

3.検証の対象

 検証担当考査委員による検証については,その年の短答式試験及び論文式試験の出題のみならず,成績評価や出題趣旨・採点実感等も対象とする

4.検証結果の取扱い

 検証担当考査委員による検証の結果については,適切な方法で司法試験委員会に報告するとともに,その後の出題等にいかすこととする。

(引用終わり)

 (「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日)より引用。太字強調は筆者。)

 司法試験の具体的方式・内容、合格基準・合格者決定の在り方に関しては、司法試 験法の改正等を踏まえ、試験時間等に一定の変更が加えられたものであるが、今後においても、司法試験委員会において、継続的な検証を可能とする体制を整備することとしたことから、検証を通じ、より一層適切な運用がなされることを期待する

(引用終わり)

 

 上記の検証については、偶然に考査委員による情報漏えい問題と時期が一致したために、それとの関係で考えてしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。要するに、「司法試験をもっと簡単にしろ。」という圧力を、司法試験委員会にかけるための仕組みです(※)。「すべての元凶は司法試験が難しすぎるせいであって、法科大学院としてはもうどうしようもない。問題を解決するには司法試験を簡単にするしかない。」という論調は、その後も、法科大学院関係者からたびたび発せられています。このことは、法科大学院関係者ですら、「法科大学院で真面目に講義を受ければ司法試験に合格できる。」とは思っていないことを意味しています。
 ※ ただし、問題を簡単にしたり、採点を甘くしたからといって、実際には司法試験が受かりやすくなるわけではありません。実質的な難易度は、受験者合格率に依存するからです。

 

法科大学院特別委員会(第75回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

上田信太郎(北大)委員 私は,法科大学院教育そのものに内在している問題もあるとは思いますけれども,それよりは,やはりちょっと難しいかもしれませんが,司法試験の方をどこか根本的に変えていくほかないのではないかなと。特に今,4人受ければ3人落ちる試験になっています。あるいは5人受けると4人落ちてしまう試験になっています。そうした中で,いわゆる純粋未修と言われている人たちが3年間で法科大学院のカリキュラムを消化していけば,きっちりと受かるというようなことを司法試験の側で示していかないと,なかなか我々法科大学院教育の携わる者として,特効薬というか,そういうものを見付け出していくというのはもう既に難しい段階に来ているのではないかなとも思います。

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第78回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

鎌田薫(早大総長)委員 出口で想定している法曹像が,新しい制度を作ったときにイメージしていた法曹像と,実際の司法試験で合格させている人との間のずれが非常に大きいということなのではないかと思うんです。…問題の所在を発見して,どこに問題があって何を調べればいいかということを見通して,自分でちゃんと調べる能力があって,それに基づいて議論を立てて,プレゼンテーションをしてネゴシエーションができる人を想定していたわけで,ありとあらゆる法律に詳細な知識を詰め込んでいるのではない人を作ろうというのがこの制度だったはずですけれども,司法試験はそれに応じた改革がなされていないということであれば,結局,司法試験に通るための準備に四年,五年は最低掛かりますというふうなことになっていくのはやむを得ないのかなと思う反面,そこの目標に達するための手段として,法科大学院に行くほかに予備試験があるという制度が存在しているとしたら,法科大学院というのは一体どんな役割を果たすのか。それぐらいだったら,学部で四年,五年,しっかりやればいい。そこに,なぜ法科大学院が上に乗らないといけないのかの説明が,ますます難しくなってきているのだろうと思いますので,その辺のところをきちんと正当化できるような議論と組み合わせてやっていただくと同時に,未修者が,もう未修の法曹資格者を日本社会は期待していないのだというふうな感覚を持たないで済むような説明のできる新しい制度というのを是非作っていただきたいということを,次の期の委員会には期待したいと思います。

 (中略)

井上正仁(早大)座長 法曹となる段階で要求される学力ないし専門的学識が相当レベルの高いものであり,それがそのまま維持されたままですと,学力不足とされる人が増えることになるおそれが出てきます。そして,それがまた,ロースクールを出ても役に立たない,ロースクールは役割を果たしていない,といった評価に走らせかねませんので,その辺のところをやはり十分注意深く考えていく必要があると思うのです。一つは,個々のニーズに応じた柔軟な教育課程の組み方を可能にするということで,短縮してもやっていける人はそれでいいのですけれども,今の2年,あるいは3年の教育課程でも学力不足という人が実際かなりいるわけで,そういう人にはむしろ,もっと時間を掛けた教育をしないといけない。そういうことが可能なような制度の組み方を考えていかないといけないということです。もう一つは,短縮ということを本当にやろうとするなら,出口の方の司法試験もそれに適切に対応して変えてもらわなければならないということです。もちろん,法曹となって利用者に適切な法的サービスを提供できることを担保するためには,最低限一定レベル以上の学力,学識があることを確認することが不可欠ですから,それよりレベルを下げろということではないのはもちろんですけれども,やはり,それに先立つ教育期間の短縮ということを踏まえて,司法試験の範囲や問題内容,その難度をについて見直すことをやっていただく必要があるだろうということです。

(引用終わり) 

法科大学院等特別委員会第80回議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁(早大)座長 我々としてできることは限られており,その結果,どうしても後手後手に回ってしまって,志望者がどんどん減っていく。法科大学院として集めたくないわけではなく,集めようと努力してきたにも拘わらず,学生の方が志望してこなくなってきているというのが実情なのですね。それはなぜかといいますと,様々な原因があるのでしょうが,やはり最も大きいのは司法試験が難関であることであって,特に法学部出身でない学生がその難関を突破することがますます難しくなっており,それが更に志望者の減につながっていっている。つまり,そのような状況では,特に社会人の方とか,いろいろなバックグラウンドの人たちも,法科大学院に入ってからの確固としたキャリアプランが描けないわけで,そういうところにリスクを冒して入ってきてくれるかというと,それはかなり無理な話になっている。そういう構造的な問題点をどうにかして変えていかない限り,問題は解消しないのですけれど,その点で私たちとしてできることには限界があって,そこを崩せないでいる。

 (中略)

井上正仁(早大)座長 法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度を構想し,制度設計した当初も,グローバル化にどう対応するかということが司法制度改革全体の大きなテーマの一つで,法曹養成の育成についても,狭い意味の法曹ばかりではなく,国際的な視野と学識・能力を備えた人材を育てていくことが大きな目標だったのですね。ただ,その場合,法科大学院すべてが,そういった同じ目標に向かって一丸となって進んでいくということではなく,国際的な方向だけに限らず多様な人材を育成することが重要で,それぞれの法科大学院が各々,得意分野を持ってそれを目標にしていくべきだといのが司法制度改革審議会の提言であり,全体の改革の方向だったわけです。
 そして,制度発足当初は,そういう特色を示そうとした法科大学院も少なからずあったのですが,難関の司法試験との関係で次第に萎縮してしまい,本来の企図がなかなか実現できなくなったというのが実情だと思います。

 (中略)

大貫裕之(中央大) 委員 司法試験の問題の在り方,司法試験との連携の在り方を考えないとちょっとなかなかこの議論はつらいのかなと思います。直感的に申し上げますと,重い司法試験を前提にして,重い教育を前提にして,その教育期間を延ばしているだけではないかという印象がないわけではないんです。未修に関していうと,純粋未修に関して完全に教育期間は長くなるわけですね。本当にそれでいいのかなという気はしておりまして,ここでやるべきことではないということは十分分かっていますけれども,司法試験との連携ということが必要だということは,やはり繰り返し申し上げたいなというのがまず第1点です。

(引用終わり)

法科大学院等特別委員会(第83回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

大貫裕之(中央大) 委員 法科大学院成績と司法試験の成績の相関関係について調べたところを見ると,法科大学院の成績が同じである人が司法試験を受けると,ダブルスコアで未修の方が悪いわけです。これはどう理解するかは非常に重要な論点です。私は司法試験の方も,法科大学院の教育に合わせてくれということではないですが,法科大学院の教育と適切な連携を図ったものにより一層なっていただきたいと思っています。

(引用終わり)

  

 さて、本題に戻ります。得点分布の目安が守られた場合の全科目平均点を試算すると、概ね374.6点となります(「平成27年司法試験の結果について(3)」)。「考査委員が得点分布の目安を守ろうとした。」という仮説を前提にすると、全科目平均点は、この374.6点に近い数字になるでしょう。そこで、そのような目で、平成27年以降の全科目平均点を改めてみてみましょう。


(平成)
全科目
平均点
27 376.51
28 397.67
29 374.04
30 378.08

 平成28年は374.6点よりも20点以上高い数字になっていますが、それ以外の年は、概ね374.6点に近い数字になってます。したがって、現在のところ、「考査委員が得点分布の目安を守ろうとした。」という仮説で説明が付くわけです。平成28年に全科目平均点が高くなりすぎてしまった原因としては、平成27年よりも受験者数が減少し、全科目平均点は上昇しやすい要素があったのに、平成27年同様の甘い採点基準を適用してしまった可能性や、考査委員から法科大学院教員が排除されたために、手堅い問題、採点基準を採用してしまった結果、従来より得点しやすくなってしまった可能性が考えられるでしょう(「平成27年司法試験の結果について(3)」)。いずれにせよ、平成28年は、特殊な要因に基づくイレギュラーな数字であったということです。
 このように、全科目平均点を一定の数字に近づけるような採点がされるようになってくると、各年の全科目平均点を比較しても、受験生のレベルの変化を測ることが困難になっていきます。

3 「考査委員が得点分布の目安を守ろうとした。」という仮説が正しいとするなら、これは今後も同様の傾向となるでしょう。すなわち、全科目平均点は、374点くらいで推移するだろう、と予測できることになります。
 現在のところ、全科目平均点がどのくらいの水準であるかは、合否の決定には直接の影響はないといえます。司法試験の合否は、「2000人基準」、「1800人基準」、「1500人基準」というように、人数を基準にして決定されてきたからです(「平成30年司法試験の結果について(1)」)。つまり、受験者合格率に変化がない限り、全科目平均点が上がればそれに応じて合格点も上がるし、全科目平均点が下がれば合格点もそれに応じて下がるので、全科目平均点が上がったから難易度が下がるとか、全科目平均点が下がったから難易度が上がるということはない。ただし、全科目平均点の水準は、間接的に、最低ライン未満になりやすいか否かや、採点実感等に関する意見における評価区分(優秀、良好、一応の水準及び不良)の読み方等に影響してきます。この点については、後の記事で、詳しく説明したいと思います。 

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