2018年02月18日

「司法試験平成29年最新判例ノート」を発売しました

 Amazonより、「司法試験平成29年最新判例ノート」を発売しました。
 本書はKindle用電子書籍ですが、Kindle以外の端末やPCからも、下記の無料アプリを使って利用できます。

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【本書の概要】

 本書は、平成29年に出された最高裁判例のうち、司法試験対策上重要と考えられるものを掲載したものです。

1.最新判例を学習する意味は、概ね以下の2つです。
 1つは、短答の知識としての意味です。最新判例の判示内容を問う肢が出題された場合には、その場で考えて正解できることもないわけではありませんが、基本的には知っているかどうかで差が付きます。もっとも、短答試験は問題数が多いため、1つの肢が分からない程度で合否に大きく影響することはありません。ですから、短答対策として最新判例を学習する必要性は、それほど高くないといえるでしょう。とはいえ、一度軽く目を通しておけば、それだけで正誤の判断が容易になる場合もありますから、軽く一読する程度の学習は、費用対効果という面で、それなりに意味のあることだろうと思います。
 もう1つの意味は、論文における問題の所在を把握するヒントとしての意味です。論文試験では、最新判例の事案と類似していたり、共通の問題意識が背景となっているような出題がされることがあります。例えば、平成28年司法試験の刑事系第2問では、最決平27・5・25と類似の事案が出題され、同判例が判示した論点が直接に問われています。

 

(最決平27・5・25より引用。太字強調は筆者。)

 「公判前整理手続は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため、事件の争点及び証拠を整理する手続であり、訴訟関係人は、その実施に関して協力する義務を負う上、被告人又は弁護人は、刑訴法316条の17第1項所定の主張明示義務を負うのであるから、公判期日においてすることを予定している主張があるにもかかわらず、これを明示しないということは許されない。こうしてみると、公判前整理手続終了後の新たな主張を制限する規定はなく、公判期日で新たな主張に沿った被告人の供述を当然に制限できるとは解し得ないものの、公判前整理手続における被告人又は弁護人の予定主張の明示状況(裁判所の求釈明に対する釈明の状況を含む。)、新たな主張がされるに至った経緯、新たな主張の内容等の諸般の事情を総合的に考慮し、前記主張明示義務に違反したものと認められ、かつ、公判前整理手続で明示されなかった主張に関して被告人の供述を求める行為(質問)やこれに応じた被告人の供述を許すことが、公判前整理手続を行った意味を失わせるものと認められる場合(例えば、公判前整理手続において、裁判所の求釈明にもかかわらず、「アリバイの主張をする予定である。具体的内容は被告人質問において明らかにする。」という限度でしか主張を明示しなかったような場合)には、新たな主張に係る事項の重要性等も踏まえた上で、公判期日でその具体的内容に関する質問や被告人の供述が、刑訴法295条1項により制限されることがあり得るというべきである。」

(引用終わり)

(平成28年司法試験論文式試験出題の趣旨より引用。太字強調は筆者。)

 「本設問に関連し、公判前整理手続で明示されたアリバイ主張に関し、その内容を更に具体化する被告人質問等を刑事訴訟法第295条第1項により制限することの可否について判示した最高裁判所決定がある(最二決平成27年5月25日刑集69巻4号636頁)。本設問の解答に当たっては、同決定を踏まえた論述まで求めるものではないが、被告人及び弁護人には、公判前整理手続終了後における主張制限の規定が置かれておらず、新たな主張に沿った被告人の供述を当然に制限することはできないことに留意しつつ、公判前整理手続の趣旨に遡り、被告人質問を制限できる場合に関する自説を論じた上、本設問における公判前整理手続の経過及び結果並びに乙が公判期日で供述しようとした内容を抽出・指摘しながら、当てはめを行う必要がある。」

 (引用終わり)

 

 上記の出題の趣旨では、「同決定を踏まえた論述まで求めるものではないが」とされていますが、その後に続く内容は、判例の判示内容と重なっています。事前に判例を一読していたか、そうでなかったかというだけで、どのような観点から規範を定立すべきなのか、どの事実に着目すべきなのか等の点について、現場での把握の容易さが大きく違うでしょう。
 最新判例と類似の事案が出題された場合、既存の知識を使って適切な解答にたどり着くことは不可能ではありませんが、判例を知らないと問題の所在を的確に把握できず、的外れな論述になってしまうおそれがあります。上記の例でいえば、現場で確認可能な情報は、刑訴法295条1項ですが、これは以下のような条文です。

(刑訴法295条1項)
 裁判長は、訴訟関係人のする尋問又は陳述が既にした尋問若しくは陳述と重複するとき、又は事件に関係のない事項にわたるときその他相当でないときは、訴訟関係人の本質的な権利を害しない限り、これを制限することができる。訴訟関係人の被告人に対する供述を求める行為についても同様である。

 上記の判例を知らないと、普通はこの条文の文言に素直に当てはめようとするでしょう。そうなると、「訴訟関係人のする尋問又は陳述が既にした尋問若しくは陳述と重複するとき」に当たるか、「事件に関係のない事項にわたるとき」に当たるか、「その他相当でないとき」に当たるか、「訴訟関係人の本質的な権利を害しない」といえるか、等を羅列的に当てはめるような答案になってしまいます。これでは、出題の趣旨に沿った解答にはなりません。判例を知っているか、知らないかということは、とても大きいのです。
 注意したいのは、平成28年の司法試験で、平成27年の判例が出題されている、ということです。これは、本書に収録した平成29年の判例との関係でいえば、平成30年の司法試験で出題されてもおかしくない、ということを示しています。論文は設問の数が少ないですから、ある設問で問題意識を大きく外してしまうと、予定された配点を丸々落としてしまい、合否に大きく影響することになります。入り口の問題把握を誤って、出題意図と全く関係のない論述に終始してしまうというのは、不合格答案の典型例です。これを避けるために、最新判例を学習するのです。この意味において、最新判例を学習する必要性はそれなりに高い、ということができると思います。他方で、最新判例については、ほとんどの場合、既存の重要判例とは異なり、厳密に規範を覚えたり、射程範囲を理解するところまでは必要ではありません。重要なことは、上記のような論述の入り口を把握できずに、問題意識を大きく外して的外れな論述になるという事態を避けるということです。その程度のレベルであれば、一度軽く目を通し、一応の理解をする程度で足ります。この程度のことをやっているだけでも、問題の所在の把握の容易さは大きく変わります。このことは、本試験の現場で、限られた時間の中において答案構成をするときに、大きな差となって表れてくるでしょう。
 本書では、上記のような観点から、試験前に一度は目を通しておくとよいだろうと思われる判例に絞って収録しました。
 憲法7、行政法3、民法5、商法4、民訴法1、刑法4、刑訴法2の合計26の判例を収録しています。
 各判例には、重要度に応じてAAからCまでのランクを付しました。ただし、今年はAAに該当するものはありません。

2.司法試験対策として判例を学習する場合には、原文に当たるのが基本です。特に最新判例については、何よりもまず、どのような事案でどのような判示がされたのか、ということ自体を把握することが重要です。それが従来の学説の理解との関係でどのように位置付けられるか、射程範囲はどうか、等については、学者の間で議論がまとまるまで、一定の時間を要するからです。すなわち、「とにかくそんな判例がある。」ことを知っておくことが重要だ、ということです。最新判例を出題する側の立場になって考えてみればわかることですが、短答で正誤を問うにしても、学説の理解が定まっていない状況では、原文と照らし合わせて容易に正誤が分かるものしか出せません。論文で出題するにしても、その判例の射程について学説の理解が定まっていない状況では、出せる事案の幅に限界があるのです。ですから、学者の評釈などはあまり気にせずに、原文を軽く一読しておく、というのが、前記の最新判例を学習する意義との関係でも有益です。その意味では、市販の判例集は、学者の評釈部分が長すぎる反面で、肝心の判旨部分が短すぎる傾向があるように感じます。
 そこで、本書では、原文を要約することなく、そのまま掲載することを基本としています。もっとも、Kindle用書籍ということを考慮し、できる限りコンパクトにまとめるよう努力しました。その関係で、収録するのは多数意見の重要部分に限るものとし、個別意見の収録は見送りました。事案についても、判旨の理解に不要な場合は、掲載を省いたり、簡略化したものを掲載しました。

3.市販の判例集を読んで挫折する要因の1つに、細部に目が行ってしまうということがあります。判例の事案や判旨には、「被上告人は、○県○市○町(○年に行われた合併により、現在は○市)の…であり、…であったところ、○年○月○日に…(なお、…は…であり、…とされたものである。)」など、判旨の本質的理解に必ずしも必要のない細かい部分の記述が含まれています。これは、内容の正確性、特定性を確保するために必要な記述です。しかし、そのような記述があるために、何度読んでも事案の概要や判旨が頭に入って来ず、挫折してしまう、ということが起きるのです。しかし、だからといって、安易に要約をしてしまうのは、原文を学習するという前記の意義が薄れてしまいますし、詳細が気になった場合には、かえって困ることになります。そこで、本書では、骨格読み(スケルトンリーディング)の手法を用い、基本的に原文をそのまま掲載しつつ、本質的理解に必要な部分を太字とし、太字部分だけを繋いで目を通せば、概要をつかめるようにしています。まずは太字部分だけに目を通し、詳細が気になった場合に、前後を注意して読み直すと、効率良く理解できるでしょう。

4.判例を学習する際、ただ漫然と目を通しても頭に入ってこない、という人が多いと思います。与えられた文字を読む場合には、どうしても脳は受動的となり、活発に働かなくなるからです。これに対し、質問に対する答えを考える場合には、脳は解答を探そうと活発に働きます。そのため、急に理解が進むようになるのです。
 そこで、本書では、各判例の理解のポイントとなる部分について、末尾に一問一答形式のチェックテストを付けています。スマホやタブレット端末での操作になじむよう、問題の次のページに解答に対応する判示部分を再掲しています。直前に見たばかりの判旨でも、チェックテストで指摘されたポイントを意識していないと、頭に入っていないことに気が付くと思います。同時に、特定のポイントを意識して解答を考えてから同じ判旨をみると、見え方が違うことにも気が付くでしょう。

5.論文対策として、多くの人が準備しているのが、論証です。論文試験は、時間との戦いです。論証は、試験の現場で表現ぶり等に悩むことなく書けるように準備しておくことによって、貴重な時間を節約するためのものです。最新判例の論証は、必須とまではいえませんが、あると便利であることも確かです。そこで、本書の末尾には、付録として、論証化して整理しておくと論文で役に立つと思われる判例について、判旨を論証化した論証例集を収録しました。

6.なお、本書では、判決・決定のいずれにおいても、「判旨」と表記しています。「裁判所の判断の要旨」ないし「裁判要旨」の略称と考えておけばよいでしょう。市販されている判例集の中には、決定の場合に「決旨」と表記するものがあります。これは、「判旨」とは判決の要旨を、「決旨」とは決定の要旨を指すと理解しているからです。しかし、そのような使い分けに意味があるとは思われません。決定のときに限って、判例を「決例」としたり、判示を「決示」などとしないのと同様です。最高裁のHPでも、「裁判要旨」の表記が用いられています。

7.本書が、受験生の方々の最新判例の学習に少しでも役立てば幸いです。

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2017年02月18日

「司法試験平成28年最新判例ノート」を発売しました

 Amazonより、「司法試験平成28年最新判例ノート」を発売しました。
 本書はKindle用電子書籍ですが、Kindle以外の端末やPCからも、下記の無料アプリを使って利用できます。

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【本書の概要】

 本書は、平成28年に出された最高裁判例(一部平成27年のものも含む)のうち、司法試験対策上重要と考えられるものを掲載したものです。

1.最新判例を学習する意味は、概ね以下の2つです。
 1つは、短答知識としての意味です。最新判例の判示内容を問う肢が出題された場合には、その場で考えて正解できることもないわけではありませんが、基本的には知っているかどうかで差が付きます。もっとも、短答試験は問題数が多いため、1つの肢が分からない程度で合否に大きく影響することはありません。ですから、短答対策として最新判例を学習する必要性は、それほど高くないといえるでしょう。とはいえ、一度軽く目を通しておけば、それだけで正誤の判断が容易になる場合もありますから、軽く一読する程度の学習は、費用対効果という面で、それなりに意味のあることだろうと思います。
 もう1つの意味は、論文における問題の所在を把握するヒントとしての意味です。論文試験では、最新判例の事案と類似していたり、共通の問題意識が背景となっているような出題がされることがあります。この場合も、既存の知識を使って適切な解答にたどり着くことは不可能ではありませんが、知らないと問題の所在を的確に把握できず、的外れな論述になってしまうおそれがあります。論文は設問の数が少ないですから、ある設問で問題意識を大きく外してしまうと、予定された配点を丸々落としてしまい、合否に大きく影響することになります。入り口の問題把握を誤って、出題意図と全く関係のない論述に終始してしまうというのは、不合格答案の典型例です。これを避けるために、最新判例を学習するのです。この意味において、最新判例を学習する必要性はそれなりに高い、ということができると思います。他方で、最新判例については、ほとんどの場合、既存の重要判例とは異なり、厳密に規範を覚えたり、射程範囲を理解するところまでは必要ではありません。重要なことは、上記のような論述の入り口を把握できずに、問題意識を大きく外して的外れな論述になるという事態を避けるということです。その程度のレベルであれば、一度軽く目を通し、一応の理解をする程度で足ります。この程度のことをやっているだけでも、問題の所在の把握の容易さは大きく変わります。このことは、本試験の現場で、限られた時間の中において答案構成をするときに、大きな差となって表れてくるでしょう。
 本書では、上記のような観点から、試験前に一度は目を通しておくとよいだろうと思われる判例に絞って収録しました。
 憲法5、行政法3、民法8、商法2、民訴法3、刑法5、刑訴法2の合計28の判例を収録しています。
 各判例には、重要度に応じてAAからCまでのランクを付しました。ただし、今年はAAに該当するものはありません。

2.司法試験対策として判例を学習する場合には、原文に当たるのが基本です。特に最新判例については、何よりもまず、どのような事案でどのような判示がされたのか、ということ自体を把握することが重要です。それが従来の学説の理解との関係でどのように位置付けられるか、射程範囲はどうか、等については、学者の間で議論がまとまるまで、一定の時間を要するからです。すなわち、「とにかくそんな判例がある」ことを知っておくことが重要だということです。最新判例を出題する側の立場になって考えてみればわかることですが、短答で正誤を問うにしても、学説の理解が定まっていない状況では、原文と照らし合わせて容易に正誤が分かるものしか出せません。論文で出題するにしても、その判例の射程について学説の理解が定まっていない状況では、出せる事案の幅に限界があるのです。ですから、学者の評釈などはあまり気にせずに、原文を軽く一読しておく、というのが、前記の最新判例を学習する意義との関係でも有益です。
 そこで、本書では、原文を要約することなく、そのまま掲載することを基本としています。もっとも、Kindle用書籍ということを考慮し、できる限りコンパクトにまとめるよう努力しました。その関係で、収録するのは多数意見の重要部分に限るものとし、個別意見の収録は見送りました。事案についても、判旨の理解に不要な場合は、掲載を省いたり、簡略化したものを掲載しました。

3.市販の判例集を読んで挫折する要因の1つに、細部に目が行ってしまうということがあります。判例の事案や判旨には、「被上告人は、○県○市○町(○年に行われた合併により、現在は、○市)の…であり、…であったところ、○年○月○日に…(なお、…は…であり、…とされたものである。)」など、判旨の本質的理解に必ずしも必要のない細かい部分の記述が含まれています。これは、内容の正確性、特定性を確保するために必要な記述です。しかし、そのような記述があるために、何度読んでも事案の概要や判旨が頭に入って来ず、挫折してしまう、ということが起きるのです。しかし、だからといって、安易に要約をしてしまうのは、原文を学習するという前記の意義が薄れてしまいますし、詳細が気になった場合には、かえって困ることになります。そこで、本書では、骨格読み(スケルトンリーディング)の手法を用い、基本的に原文をそのまま掲載しつつ、本質的理解に必要な部分を太字とし、太字部分だけを繋いで目を通せば、概要をつかめるようにしています。まずは太字部分だけに目を通し、詳細が気になった場合に、前後を注意して読み直すと、効率良く理解できるでしょう。

4.判例を学習する際、ただ漫然と目を通しても頭に入ってこない、という人が多いと思います。与えられた文字を読む場合には、どうしても脳は受動的となり、活発に働かなくなるからです。これに対し、質問に対する答えを考える場合には、脳は解答を探そうと活発に働きます。そのため、急に理解が進むようになるのです。
 そこで、本書では、各判例の理解のポイントとなる部分について、末尾に一問一答形式のチェックテストを付けています。スマホやタブレット端末での操作になじむよう、問題の次のページに解答に対応する判示部分を再掲しています。直前に見たばかりの判旨でも、チェックテストで指摘されたポイントを意識していないと、頭に入って来ないことに気が付くと思います。同時に、特定のポイントを意識して解答を考えてから同じ判旨をみると、見え方が違うことにも気が付くでしょう。

5.本書の末尾には、付録として、論証化して整理しておくと論文で役に立つと思われる判例について、判旨を論証化した論証例集を収録しました。

6.なお、本書では、判決・決定のいずれにおいても、「判旨」と表記しています。「裁判所の判断の要旨」ないし「裁判要旨」の略称と考えておけばよいでしょう。市販されている判例集の中には、決定の場合に「決旨」と表記するものがあります。これは、「判旨」とは判決の要旨を、「決旨」とは決定の要旨を指すと理解しているからです。しかし、そのような使い分けに意味があるとは思われません。決定のときに限って、判例を「決例」としたり、判示を「決示」などとしないのと同様です。最高裁のHPでも、「裁判要旨」の表記が用いられています。

7.本書が、受験生の方々の最新判例の学習に少しでも役立てば幸いです。

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2017年01月09日

「平成29年司法試験のための平成28年刑訴法改正の解説」を発売しました

 Amazonより、「平成29年司法試験のための平成28年刑訴法改正の解説」を発売しました。
 本書はKindle用電子書籍ですが、Kindle以外の端末やPCからも、下記の無料アプリを使って利用できます。

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【本書の概要】

1.本書は、平成28年5月24日に可決、成立し、同年6月3日に公布された刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号。以下「改正法」といいます。)による刑事訴訟法等の改正のうち、平成29年の司法試験及び予備試験において影響のあることが確実なものについて、その内容を紹介するとともに、試験対策上の留意点を説明したものです。

2.司法試験及び予備試験は、いずれも、原則として試験時に施行されている法令に基づいて出題することとされています。

(参考資料)「司法試験の出題に係る法令について」(平成17年5月31日司法試験委員会決定。平成23年11月9日改正。)

1 司法試験は、試験時に施行されている法令に基づいて出題する。
2 例外的に、各科目別の考査委員において、1と異なる取扱いとすることを相当と認めるときは、司法試験委員会に対し、1と異なる取扱いとする旨を速やかに広報するよう求める。


(参考資料)「司法試験予備試験の出題に係る法令について」(平成22年11月10日司法試験委員会決定)

1 司法試験予備試験は、試験時に施行されている法令に基づいて出題する。
2 例外的に、各科目別の考査委員において、1と異なる取扱いとすることを相当と認めるときは、司法試験委員会に対し、1と異なる取扱いとする旨を速やかに広報するよう求める。


 改正法による刑訴法等の改正については、「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日が施行期日である。」という説明がされることがあり、平成29年の司法試験及び予備試験には全く影響がないと誤解している人もいるようです。
 しかし、実際には、改正法附則1条1号から3号までに規定された改正については、既に施行期日が到来しています(平成29年1月1日現在)。

(改正法附則1条)
 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する
一 附則第九条第三項の規定 公布の日
二 第一条(刑事訴訟法第九十条、第百五十一条及び第百六十一条の改正規定に限る。)、第三条、第五条及び第八条の規定並びに附則第三条及び第五条の規定 公布の日から起算して二十日を経過した日
三 第一条(前号に掲げる改正規定を除く。)及び第六条の規定並びに次条並びに附則第四条、第六条、第八条、第十条、第十一条(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号)第六十四条第一項の表第四十三条第四項、第六十九条、第七十六条第二項、第八十五条、第百八条第三項、第百二十五条第一項、第百六十三条第一項、第百六十九条、第二百七十八条の二第二項、第二百九十七条第二項、第三百十六条の十一の項及び第六十五条第四項の改正規定に限る。)及び第十二条から第十五条までの規定 公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日
四 第二条(刑事訴訟法第三百一条の次に一条を加える改正規定を除く。)及び第四条の規定並びに附則第七条及び第十一条(前号に掲げる改正規定を除く。)の規定 公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日


(刑事訴訟法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(平成28年9月30日政令第316号))

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律附則第一条第三号に掲げる規定の施行期日は、平成二十八年十二月一日とする


 したがって、平成29年の司法試験又は予備試験を受験する場合には、既に施行されている改正事項について、一応は頭に入れておく必要があるのです。もっとも、一般の受験生にとっては、どの部分が既に施行されているのか、よくわからない、というのが普通だと思います。そこで、本書は、改正法による刑訴法等の改正のうち、平成29年の司法試験及び予備試験において影響のあることが確実なものに絞って、説明しました。

3.司法試験及び予備試験の試験対策において、改正対応の学習は、それほどメインのものではありません。本書では、できる限り簡潔な説明にとどめつつも、適宜、改正に係る議論を参考資料として紹介し、改正の経緯ないし立法事実が正しく理解できるように努めました。

4.現在の司法試験の短答式試験においては、刑事訴訟法は出題範囲に含まれていません。そのため、本書における短答式試験対策とは、専ら予備試験の短答式試験対策を意味します。
 他方、論文式試験対策としては、司法試験の刑事訴訟法分野(刑事系第2問)、予備試験の刑事訴訟法科目、予備試験の刑事実務基礎科目に影響があります。本書において、論文式試験対策というときは、司法試験の刑事訴訟法分野(刑事系第2問)、予備試験の刑事訴訟法科目、予備試験の刑事実務基礎科目に関するものを意味しています。
 また、予備試験の口述試験では、刑事実務基礎科目に影響があります。
 本書では、これらの点について、各改正事項ごとに、簡単に試験対策上の留意点を説明しました。

5.本書において摘示された条文番号は、特に記載のない限り、刑事訴訟法です。

6.本書が、改正法による刑訴法等の改正についての学習に少しでも役に立てば幸いです。

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