2017年06月21日

平成29年司法試験論文式民事系第3問参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.現在の司法試験の論文式試験において、ほとんどの科目では、合格ラインに達するための要件は、概ね以下の3つです。

(1)基本論点を抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

 もっとも、民訴法は、必ずしも上記が当てはまらない独特の傾向でした。設問の内容自体は易しく、誰もが簡単に解答できてしまうものなのですが、その説明の仕方が出題趣旨に沿っていないと、点が付かない。そこでポイントになっていたのは、概ね以下の3つでした。

(ア)問題文で指定されたことだけに無駄なく答えている。
(イ)参照判例がある場合、まずその判例の趣旨を確認している。
(ウ)例外が問われた場合、まず原則論を確認している。

 上記(ア)から(ウ)までを守っていないと、理論的には全く正しい内容を書いているのに、全然点が付かない。一方で、上記(ア)から(ウ)を守ることさえ考えていれば、無難に合格点が取れる。このように、民訴は、他の科目とは異なる独特の採点傾向を把握しておくことが必要でした。

2.ただ、昨年は、上記の傾向に変化が生じていました。上記の傾向に合致する部分がある反面、他の科目同様の事例処理的な傾向も混在していたのです(「平成28年司法試験論文式民事系第3問参考答案」)。漏洩事件を受けた考査委員の交代の影響によるものなのでしょう。

 今年も、そのような混在傾向が続いています。まず、設問1をみてみましょう。修習生に対する課題に答えるという形式は、従来と同様です。前記の(ア)を意識する必要があります。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

J1:今日の証拠調べの結果をどのように評価しますか。率直な意見を聴かせてください。

P:取引経緯に関するAの証言は具体的で信用できるため,Yの代理人AとXとの間で,本件絵画の時価相当額を代金額とする売買契約が成立し,その額は200万円であると考えられます。Xはこの200万円を支払っていませんから,売買を理由に,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決をすべきではないでしょうか。

J1:私の心証も同じですが,あなたの言うような判決を直ちにすることができるのでしょうか。まず,Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの心証が得られたとして,その事実を本件訴訟の判決の基礎とすることができるのかについて,考えてみてください。

P:両当事者がその点を問題にしなかったのだからいいように思いましたが,考えてみます。

(引用終わり)

 

 「Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの心証が得られたとして,その事実を本件訴訟の判決の基礎とすることができるのかだけを答える、というのがポイントで、ここでは、「贈与契約」、「売買契約」ではなく、単に「契約」となっているのがポイントになります。つまり、贈与か売買か、という訴訟物レベルの話はしなくてよい。要するに、処分権主義の話はするな、ということです。したがって、当事者は直接取引しか主張していないのに、代理人による契約成立を認定することは弁論主義に反しないか、その話だけを書けばよいのです。
 ここまでは、従来の傾向に沿っているといえます。しかし、ここまでです。ここから先、従来であれば、参照判例として、最判昭33・7・8が示されたことでしょう。

 

最判昭33・7・8より引用。太字強調は筆者。)

 斡旋料支払の特約が当事者本人によつてなされたか、代理人によつてなされたかは、その法律効果に変りはないのであるから、原判決が被上告人と上告人代理人Dとの間に本件契約がなされた旨判示したからといつて弁論主義に反するところはなく、原判決には所論のような理由不備の違法もない。

(引用終わり)

 

 仮に、これが示された場合には、前記1の(イ)によって、判例の趣旨を確認する必要があることになる。判例は、「効果が同じなんだから不意打ちにもならないでしょ。」という趣旨だろう。そう考えると、前記の(ウ)によって、「主要事実について異なる認定をすることは許されない。」という原則を確認した上で、「その趣旨は、通常当事者に不意打ちになるという点にある。したがって、不意打ちにならない場合は例外だ。」という流れで例外論を書くことになります。このように、原則・例外の形式に整理して書くのが、前記(ウ)のポイントです。
 しかし、本問は、そこまでの参照判例の掲載なり、設問での誘導なりがありません。ですから、従来の事例処理の書き方、すなわち、前記(1)から(3)までの書き方でも、十分解答できてしまいます。端的に、弁論主義違反となるための基準を示して、事実を摘示して当てはめる。配点が15しかないことからして、それで十分合格答案なのでしょう。参考答案は、そのような書き方をしています。ここが、事例処理型が混在している部分です。

 設問2です。小問(1)は、従来の傾向どおり、比較的詳細な誘導があります。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

J1:次に,あなたの言うような判決はXの請求に対する裁判所の応答として適当なのか,すなわち,本件の訴訟物は何かを考える必要もありますね。
 そして,Xは,第1回口頭弁論期日に,「仮にこの取引が売買であり,本件絵画の時価相当額が代金額であるとしても,その額は200万円にすぎない。」と主張していますが,これには,どのような法的な意味合いがありますか。

P:Xが単に譲歩をしただけで,あまり法的に意味のある主張には見えませんが。

J1:本当にそうでしょうか。
 他方,Yは,「本件絵画をXに時価相当額で売却し,その額は300万円である。」と主張していますが,その法的な意味合いも問題になりますね。

P:はい。Xの主張する請求原因事実との関係で,Yのこの主張がどのように位置付けられるか,整理したいと思います。

J1:本件は,訴訟代理人が選任されていないこともあり,紛争解決のために,両当事者の曖昧な主張を法的に明確にする必要がありそうです。
 訴訟物の捉え方については様々な議論がありますが,あなたの捉える本件の訴訟物は何になるかを示した上で,各当事者から少なくともどのような申立てや主張がされれば,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決をすることができるか,考えてみてください。その際,先ほどお願いしたYの主張の位置付けの整理も行ってください。これを課題1とします。

(引用終わり)

 

 ここで、前記(ア)を意識します。課題1の直接的な内容は、上記引用部分の最後のJ1発言に示された以下の3つです。

1.本件の訴訟物は何か。
2.引換給付判決をするためには、各当事者からどのような申立てや主張がされることを要するか。
3.上記1及び2を検討するに当たり、Yの主張の位置付けを整理する。

 まず、1の訴訟物は、訴状の記載から贈与契約に基づく本件絵画の引渡請求であることが明らかです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 Xは,訴状において,次のように主張した。
 「Xは,かねてよりYの事業の支援をしていたが,平成27年9月1日,Yから,これまでの支援の御礼として,本件絵画の贈与を受けた。Yから受け取った念書には,YがXに本件絵画を譲る旨や同年10月1日にY宅で本件絵画を引き渡す旨が記載されている。その後,Xが約束どおりY宅に出向いて本件絵画の引渡しを求めたのに,Yはこれを拒み,一切の話合いに応じないので,贈与契約に基づく本件絵画の引渡しを求めるため,本件訴えを提起した。贈与の事実の証拠として,この念書を提出する。」

(引用終わり)

 

 「訴訟物の捉え方については様々な議論がありますが」とわざわざ書いてありますから、訴訟物を示す際には、旧訴訟物理論に立つことを示しておくべきなのでしょう。旧訴訟物理論からは、贈与契約に基づく本件絵画の引渡請求が訴訟物になる。これを端的に示せば足ります。
 次に、上記2ですが、ここまで検討した段階で、訴訟物が贈与契約に基づく本件絵画の引渡請求のままでは、引換給付になる余地がないことに気付くはずです。ここで、3を考慮する必要があるということがわかる。「本件絵画をXに時価相当額で売却し、その額は300万円である。」という主張は、現在の訴訟物との関係では、贈与契約成立の請求原因に対する積極否認でしかありません。そこまで気付けば、引換給付とするには、訴訟物が売買契約に基づく本件絵画の引渡請求であって、Yの「本件絵画をXに時価相当額で売却し、その額は300万円である。」という主張が、同時履行の抗弁権となることが必要だ、ということがわかる。後は、「各当事者から少なくともどのような申立てや主張がされれば」という問題文の問い方に対応させて考えればよいわけです。すなわち、Xは、売買の請求を追加する必要があるわけですから、訴えの追加的変更の申立てをする必要がありますし、この場面での同時履行の抗弁権は権利抗弁となりますから、Yは、その権利主張をする必要がある、ということになる。そして、引換給付判決は質的一部認容判決ですから、一応これが可能であることを書いておく。以上を無駄なく端的に示せれば、上位の合格答案でしょう。
 上記のことは、十分な体調で、余裕のある精神状態で問題文を読めば、比較的容易に読み取ることができるはずです。しかし、実際の試験現場では、これを普通に読み解ける人は、案外少ないだろうと思います。民訴は、体感的に最も辛い2日目の最後の科目です。疲労がピークに達し、誰もが正常な判断能力を失ってしまっている。問題文に明らかに「各当事者から少なくともどのような申立てや主張がされれば」と書いてあるのに、当事者の申立てや主張について一切触れていない人も、相当数出るはずです。ですので、上記のうちの3分の2程度が書けていれば、合格ラインだろうと思います。その意味では、この部分の参考答案は、冷静になれば難しいことは何一つ書いていないわけですが、実際には、合格ラインより上の水準にあるといえるでしょう。

 さて、残るは設問2の小問(2)と設問3です。これらは、論理的に相互にリンクしているので、まとめて説明したいと思います。ここは、伝統的な学説の理解と、判例の理解とで、考え方の筋道が違ってくるところです。
 まずは、伝統的な学説の理解に沿って考えてみましょう。設問2の小問(2)は、処分権主義の問題でしょうか。それとも、弁論主義の問題でしょうか。「えっ?単なる量的一部認容の可否でしょ?処分権主義に決まってるじゃん。」と思った人は、処分権主義の対象が審判対象、すなわち、訴訟物であることを思い出す必要があります。小問(1)の申立て及び主張がされた前提で、引換給付判決がされる場合の訴訟物は、伝統的な学説に従えば、「売買契約に基づく本件絵画の引渡請求」ということになるでしょう。そう考えた場合に、以下の判決を一部認容判決としてすることはできるでしょうか。

 

(判決主文の例その1)

1.被告は、原告に対し、原告から200万円の支払を受けるのと引換えに、本件絵画を引き渡せ。
2.原告のその余の請求を棄却する。

(判決主文の例その2)

1.被告は、原告に対し、原告から220万円の支払を受けるのと引換えに、本件絵画を引き渡せ。
2.原告のその余の請求を棄却する。

(判決主文の例その3)

1.被告は、原告に対し、原告から180万円の支払を受けるのと引換えに、本件絵画を引き渡せ。
2.原告のその余の請求を棄却する。

 

 これらは、いずれも原告の請求についての質的一部認容判決として認められる、というのが、一部認容判決に関する普通の理解です。「いや、180万円の場合は被告Yに不意打ちになるからダメじゃないの?」と思うかもしれません。確かに、一部認容判決をするための考慮要素ないし要件として、当事者の意思に反しないこととか、不意打ちとならないということが言われます。しかし、それは、「原告の請求に含まれているか。」という点についてです。当事者の意思に反するとか、被告に不意打ちになるから許されない場合とは、例えば、建物の引渡請求において、以下のような判決をする場合です。

 

(判決主文の例その4)

1.被告は、原告に対し、本件建物のうち、屋根、廊下の床板及び勝手口の扉を引き渡せ。
2.原告のその余の請求を棄却する。

 

 このような判決をみれば、「いやいや確かに建物の一部だけどさ。それはさすがに原告の請求に含まれてるとは思わないだろ。」となるでしょう。このことを指して、「当事者の意思に反するから許されない。」などと表現するのです。これに対し、本件絵画と代金との引換給付は、通常は、それが原告の請求に含まれているという点においては異論は生じないはずです。ですから、その意味において、当事者の意思に反するとか、被告の不意打ちになるとはいえないのです。
 それでも、「代金額が変化すると、引換給付判決の執行段階でYが受け取れる金額が変わるのだから、処分権主義の問題なんじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、伝統的な学説にそのまま従うなら、この引換給付部分は、原告の設定した審判対象=訴訟物に含まれない以上、処分権主義の問題とはならないのです。このことは、設問3の既判力の客観的範囲の理解にそのままリンクします。
 とはいえ、「当事者の主張していない金額を勝手に裁判所が認定しても構わないの?」という疑問はあるでしょう。それはそのとおりですが、それは、「当事者の主張しない事実を基礎とする場合」ですから、弁論主義の第1原則の問題です。
 もう少し詳しく考えてみましょう。本問において、具体的な代金額の主張立証責任は、XとYのどちらが負うのでしょうか。この問いに対し、「Xでしょう。」と答えるのは、中級者です。「Yですよね。」と答えるのは、初学者と上級者です。どういうことか。引換給付が問題になる場合の訴訟物は、売買契約に基づく本件絵画の引渡請求ですから、請求原因において、Xは売買契約の成立を主張・立証する必要があります。そして、売買の要素は目的物と代金ですから、Xは、目的物だけでなく、代金額をも特定して主張・立証する必要があるということになりそうです。ここに気付くことができれば、少なくとも中級者です。これにすら気付くことなく、引換給付を受けるのはYだから、という安易な理由だけで「Yですよね。」と答えるのは、初学者です。
 上記を文字どおりに理解すると、どうなるか。Xが具体的な代金額の立証に失敗すれば、売買の成立が否定されるということです。すなわち、Xの請求は棄却される。売買代金支払請求であれば、代金がいくらか確定できない以上、棄却の結論もやむを得ないでしょう(その場合でも最低限認められる金額を認定するのが実務的ですが。)。しかし、目的物引渡請求の場合に、具体的な代金額が立証できないというだけで請求が棄却されてしまうのは、おかしい。そこで、売買に基づく引渡請求については、一般に、売買契約の成立を認めるに当たり具体的な代金額の立証までは必要でなく、例えば、「時価相当額」という程度の主張・立証がされれば足りる、と解されています。そして、本問は、まさにその場合なのです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者)

J1:今日の証拠調べの結果をどのように評価しますか。率直な意見を聴かせてください。

P:取引経緯に関するAの証言は具体的で信用できるため,Yの代理人AとXとの間で,本件絵画の時価相当額を代金額とする売買契約が成立し,その額は200万円であると考えられます。Xはこの200万円を支払っていませんから,売買を理由に,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決をすべきではないでしょうか。

 (中略)

J1:…ところで,本件絵画の時価相当額については,当事者からより適切な証拠が提出されれば,別の金額と評価される可能性もあると思います。課題1で必要となる各当事者の申立てや主張がされたという前提の下で,仮に,本件絵画の時価相当額が220万円と評価される場合あるいは180万円と評価される場合には,それぞれどのような判決をすることになるのかについても,考えてみてください。これを課題2とします。
 なお,課題1及び2の検討においては,設問1で検討した点に触れる必要はありません。
 また,あなたの言うとおり,本件絵画の時価相当額を代金額とする売買契約が成立したものとして,考えてください

(引用終わり)

 

 大事なことなので、二度書いてある。しかし、試験の現場でこの正確な意味に気が付いた人は、ほとんどいなかったでしょう。こうして、請求原因が認められ、Yが同時履行の抗弁権を主張する番になる。さて、ここで、Yは、抗弁を基礎付ける事実として、何か主張・立証する必要があるでしょうか。通常は、同時履行の関係が請求原因に表れているので、抗弁権を行使する趣旨の権利主張があれば足り、それ以外に何らの主張・立証も要しないとされています(代金支払は再抗弁)。ところが、本問のように請求原因段階で、代金額が「時価相当額」としか特定されていない場合にも、同じように考えてよいのでしょうか。ざっくりと考えると、2つの考え方がありそうです。1つは、代金額が具体的に問題となった以上、翻ってXにおいて、請求原因として具体的な代金額を立証しなければならない、という考え方。もう1つは、同時履行の抗弁権の内容として、「○○円を支払うまでは」という事実主張が必要である以上、Yにおいて、具体的な代金額を主張・立証すべきであるという考え方です。売買契約においては、代金債権を有する売主において、代金債権の内容である代金額の具体的な主張・立証をすべきである、という考え方からは、後者の立場が妥当だということになるでしょう。こうして、本問において、具体的な代金額を主張・立証すべき者は、Yだ、ということになる。ここまでわかっていた人は、間違いなく上級者といえるでしょう。
 さて、ここまで理解した上で、小問(2)で問題となっていることを考えましょう。Xは200万円と主張し、Yは300万円と主張している。それなのに、両者の主張しない220万円や180万円を、裁判所が勝手に認定できるのか。処分権主義の枠組みで一部認容と考える場合には、X・Yにとって有利か不利か、という視点で考えればよかったのです。しかし、弁論主義の第1原則の問題として考える場合、220万円も180万円も、当事者が主張していないことには変わりがないから、ダメだということになりそうです。特に、設問1で問答無用に弁論主義違反を認めた人は、ここでも両方弁論主義違反としなければ、筋が通らないでしょう。ところが、「当事者が特定の代金額を主張している場合には、その主張に係る売買契約と同一性を有する範囲で黙示的にそれ以外の代金額も主張していると考えられるから、その範囲であれば裁判所は当事者の主張するものと異なる代金額を認定することができる。」とするのが、一般的な見解です。本問でいえば、180万円も220万円も、本件絵画の代金として同一性を有する範囲内といえるでしょうから、裁判所はいずれも認定可能である、ということになります。ちなみに、同一性を欠く場合とは、例えば、代金額を1億円とか10円と認定するような場合で、そのような場合は、「それはもはや本件絵画ではなくて、何か別のものの代金額を認定してしまっていませんか?」という意味で、「同一性を欠く」と表現するのです。
 さて、上記のような理解に立って、今度は設問3を考えましょう。これは要するに、引換給付判決の既判力の客観的範囲とその作用が問われている。ただ、それだけの問題ともいえます。これは、旧司法試験でもそのまま問われている内容です。

 

(旧司法試験平成15年度論文式試験民事訴訟法第2問)

 甲は,乙に対し,乙所有の絵画を代金額500万円で買い受けたとして,売買契約に基づき,その引渡しを求める訴えを提起した。
 次の各場合について答えよ。

1. 甲の乙に対する訴訟の係属中に,乙は,甲に対し,この絵画の売買代金額は1000万円であるとして,その支払を求める訴えを提起した。

(1)甲は,乙の訴えについて,反訴として提起できるのだから別訴は許されないと主張した。この主張は,正当か。

(2) 裁判所は,この二つの訴訟を併合し,その審理の結果,この絵画の売買代金額は700万円であると認定した。裁判所は,甲の請求について「乙は甲に対し,700万円の支払を受けるのと引換えに,絵画を引き渡せ。」との判決をすることができるか。一方,乙の請求について「甲は乙に対し,絵画の引渡しを受けるのと引換えに,700万円を支払え 」。 との判決をすることができるか。

2. 甲の乙に対する訴訟において,「乙は甲に対し,500万円の支払を受けるのと引換えに,絵画を引き渡せ。」との判決が確定した。その後,乙が,甲に対し,この絵画の売買代金額は1000万円であると主張して,その支払を求める訴えを提起することはできるか。

 

 ただし、現在の司法試験では、前記の(ア)、すなわち、問題文で指定されたことだけに無駄なく答えることが必要です。問題文では、以下のような指示がなされています。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 J2:本件は,Yの訴訟代理人の主張するように,前訴判決に沿って,直ちに請求認容判決をすべきなのでしょうか。

Q:今まで考えたことがないのですが,既判力の範囲に関する民事訴訟法の規定に遡って考えないといけないように思います。

J2:そうですね。それを出発点としつつ,前訴判決の主文において引換給付の旨が掲げられていることの趣旨にも触れながら,後訴において,XY間の本件絵画の売買契約の成否及びその代金額に関して改めて審理・判断をすることができるかどうか,考えてみてください。

(引用終わり)

 

 まず、「既判力の範囲に関する民事訴訟法の規定」が、114条1項であることは明らかです。

 

(民事訴訟法114条1項)

 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。

 

 形式的には、「Xから200万円の支払を受けるのと引換えに」の部分も、主文に含まれています。しかし、伝統的な学説は、この部分には既判力は生じないと考える。その理由は、「前訴判決の主文において引換給付の旨が掲げられていることの趣旨」にあります。すなわち、114条1項の「主文に包含するもの」とは、訴訟物に対する判断を指しているところ、引換給付の旨が主文に掲げられる趣旨は執行の条件を指定するにすぎないから、訴訟物に対する判断には含まれないからだ、ということです。この「執行の条件」とは、具体的には民事執行法31条1項に示されています(意思表示の擬制の場合は174条2項)。

 

(民事執行法31条1項)

 債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証明したときに限り、開始することができる。

 

 このように考えると、前訴判決主文中、「Xから200万円の支払を受けるのと引換えに」の部分には、既判力は生じないということになります。そうすると、単に、「Yは、Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」 という判決と同じに考えればよい。では、この前訴判決の既判力は、後訴において、どのように作用するのでしょうか。ここは、非常に誤解の多いところなので、基本的なところから詳しく説明しましょう。
 既判力の作用は、端的にいえば、後訴裁判所が、前訴判決の既判力で確定された判断内容を基礎にして判断しなければならなくなる、ということで、一般にこれは積極的作用と呼ばれています。そして、このことから、後訴裁判所は、前訴判決の既判力と矛盾する主張等を排斥しなければならない、という裁判所に対する消極的作用が導かれます。このことは、同時に、当事者が前訴判決の既判力と矛盾する主張等をすることができないという当事者に対する消極的作用をも意味するのでした。このことを逆方向から説明すると、当事者が前訴判決の既判力と矛盾する主張等をすることができないのは、後訴裁判所が前訴判決の既判力と矛盾する主張等を排斥しなければならないからであり、それは、後訴裁判所が、前訴判決の既判力で確定された判断内容を基礎にして判断しなければならないからだ、ということになる。以上のような連関を、敢えて図示すれば、以下のようになるでしょう。

1.積極的作用→裁判所に対する消極的作用→当事者に対する消極的作用
2.積極的作用←裁判所に対する消極的作用←当事者に対する消極的作用

 「なんでこんな当り前のことを一々説明するのか。」と思うかもしれませんが、これを事前に確認していないので、様々な誤解が生じているのです。
 さて、上記の作用は、具体的にどのような場面で表れてくるのか。一般に、既判力は、前訴と後訴の訴訟物に同一関係、矛盾関係又は先決関係がある場合に作用するとか、判決理由中の判断には既判力は及ばない、などと説明されます。それは、間違ってはいませんが、誤解を招きやすい表現です。例えば、以下のような誤解です。

 「既判力は、前訴と後訴の訴訟物に同一関係、矛盾関係又は先決関係がある場合にのみ作用する。したがって、同一関係、矛盾関係又は先決関係のいずれにも当たらない場合には、後訴裁判所が前訴判決の既判力で確定された判断内容と矛盾する判断をすることができる。」

 「既判力は判決理由中の判断には及ばないから、例えば、前訴の訴訟物が甲土地の所有権確認の訴えである場合には、その判決理由中で示された甲土地の売買契約の成否についての主張は、後訴において前訴の既判力によって遮断されることはない。」

 どうしてこれらが誤解なのか。まず、以下の事例を考えてみましょう。

 

【事例1】

1.Xは、Yに対し、売買契約に基づく目的物引渡請求訴訟を提起し、Yは売買契約の成立を争ったが、裁判所は売買契約の成立を認めて、Xの請求を認容する判決をし、この判決は確定した。
2.その後、Xは、再度、Yに対し、売買契約に基づく目的物引渡請求訴訟を提起した。

 

 Xの再度の訴訟提起については、訴えの利益も問題になりますが、時効中断の必要等から訴えの利益は認められるという前提で考えて下さい。この事例で、「Yは、後訴において、Xが請求原因として主張する売買契約の成立に係る主張を否認できますか?」と質問すると、多くの人が、「前訴と後訴は同一関係にあるので、Yは売買契約の成立を否認できません。」と答えるでしょう。これは正解です。しかし、「え?売買契約の成否に関する判断は、前訴における判決理由中の判断ですよね?それでも否認できないんですか?」と、さらに問われると、「あうあう。」となってしまう人が多いのが実情です。これは、要件事実の主張と、そこから生じる法律関係とを整理できていないことから起こる混乱です。裁判所が、Yが売買契約を否認することを認め、売買契約の成立は認められない、と判断すると、どのような法律関係になるか。売買契約の不成立は、売買契約に基づく目的物引渡請求権の不発生を帰結します。これは、前訴基準時に、XのYに対する売買契約に基づく目的物引渡請求権が存在した、という前訴確定判決の既判力と矛盾する。そのような既判力と矛盾する法律関係を基礎付ける主張等は、許されない。こうして、Yが売買契約を否認したとしても、後訴裁判所は、それを排斥しなければならなくなるのです。
 次に、以下の事例を考えます。

 

【事例2】

1.Xは、Yに対し、甲土地の所有権確認の訴えを提起したのに対し、Yは、Xから甲土地を買い受けたので自分が所有権者であり、Xは所有権者ではないとして争ったが、裁判所はXY間の売買契約の成立を認めず、Xの請求を認容する判決をし、この判決は確定した。
2.その後、Yは、Xに対し、甲土地の所有権確認の訴えを提起した。

 

 この事例で、「Yは、後訴において、前訴基準時前にXY間で甲土地につき売買契約が成立した旨の主張をすることができますか?」と質問すると、多くの人が、「前訴と後訴は矛盾関係にあるので、Yはそのような主張をすることができません。」と答えるでしょう。これは正解です。しかし、「え?売買契約の成否に関する判断は、前訴における判決理由中の判断ですよね?それでも売買契約の成立を主張することができないんですか?」と、さらに問われると、やはり、「あうあう。」となってしまう。この事例で、裁判所が、Yによる「前訴基準時前にXY間で甲土地につき売買契約が成立した。」旨の主張を認め、売買契約の成立が認められる、と判断すると、どのような法律関係になるか。それは、Yの所有権取得を基礎付けると同時に、一物一権主義によって、反射的にXに所有権がない、という法律関係を認めることになります。これは、前訴基準時に、Xが甲土地の所有権を有していた、という前訴確定判決の既判力と矛盾します。そのような既判力と矛盾する法律関係を基礎付ける主張は、許されない。こうして、Yが売買契約の成立を主張したとしても、後訴裁判所は、それを排斥しなければならないのです。ここにおいて、前に紹介した、以下の命題が誤りであることが明らかになります。

 「既判力は判決理由中の判断には及ばないから、例えば、前訴の訴訟物が甲土地の所有権確認の訴えである場合には、その判決理由中で示された土地の売買契約の成否についての主張は、後訴において前訴の既判力によって遮断されることはない。」

 このような誤解が生じるのは、「既判力と矛盾する法律上の主張は許されない。」という抽象的な記述しか普段学んでおらず、そのような既判力と矛盾する法律上の主張を基礎付ける事実主張とはどのようなものか、という思考をすることがほとんどないからです。少し考えてみればわかりますが、主文(訴訟物に対する判断)は法律関係の存否に関するものなのですから、事実の存否に関する判断は、すべて判決理由中の判断に含まれます。それなのに、「既判力は主文に包含するものにのみ及び、判決理由中の判断には及ばないから、主文に含まれない事実の存否に関する判断は、既判力で遮断されることはない。」などと言ってしまえば、事実の主張はおよそ遮断される余地がなくなってしまいます。基本書等では紙幅の関係で省略されがちな部分を、具体的に考えてみる必要があるのです。
 もう1つ、以下の事例を考えましょう。

 

【事例3】

1.Xは、Yに対し、甲土地の所有権確認の訴えを提起したのに対し、Yは、Xから甲土地を買い受けたので自分が所有権者であり、Xは所有権者ではないとして争ったが、裁判所はXY間の売買契約の成立を認めず、Xの請求を認容する判決をし、この判決は確定した。
2.その後、Xは、Yに対し、所有権に基づく甲土地明渡請求訴訟を提起した。

 

 この事例で、「Yは、後訴において、Xの請求原因を認めた上で、前訴基準時前にXY間で甲土地につき売買契約が成立した旨の主張をして所有権喪失の抗弁を提出することができますか?」と質問すると、多くの人が、「前訴と後訴は先決関係にあるので、Yは所有権喪失の抗弁を提出できません。」と答えるでしょう。これは正解です。しかし、「え?売買契約の成否に関する判断は、前訴における判決の理由中の判断ですよね?それでも売買契約の成立を主張することができないんですか?」と、さらに問われると、またしても「あうあう。」となる。この事例で、裁判所が、Yによる前訴基準時前にXY間で甲土地につき売買契約が成立した旨の主張に基づく所有権喪失の抗弁について、売買契約の成立が認められ、抗弁が成立する、と判断すると、どのような法律関係になるか。それは、「所有権喪失の抗弁」の名前のとおり、Xに所有権がない、という法律関係を認めることになります。これは、前訴基準時に、Xが甲土地の所有権を有していた、という前訴確定判決の既判力と矛盾します。そのような既判力と矛盾する法律関係を基礎付ける主張等は、許されない。こうして、Yが売買契約の成立を主張して所有権喪失の抗弁を提出したとしても、後訴裁判所は、それを排斥しなければならないのです。
 以下の事例はどうでしょうか。

 

【事例4】

1.Xは、Yに対し、所有権に基づく甲土地明渡請求訴訟を提起したのに対し、Yは、Xから甲土地を買い受けたので自分が所有権者であり、Xは所有権者ではないとして争ったが、裁判所はXY間の売買契約の成立を認めず、Xの請求を認容する判決をし、この判決は確定した。
2.その後、Yは、Xに対し、甲土地の所有権確認の訴えを提起した。

 

 この事例で、「Yは、後訴において、前訴基準時前にXY間で甲土地につき売買契約が成立した旨を主張することができますか?」と質問すると、多くの人が、「ハハッちゃんと勉強してますよ。甲土地の所有権の帰属は判決理由中の判断だから、同一関係、矛盾関係、先決関係のいずれにも当たらず、既判力が作用しないので、Yはそのような主張をすることができます。」と答えるでしょう。これは正解です。しかし、「え?これまでに確認したように、売買契約の成否に関する判断は前訴における判決理由中の判断ですが、それでも売買契約の成立を主張することができない場合があったじゃないですか。それとの違いはどこにあるんですか?」と、さらに問われると、結局は、「あうあう。」となる。前にも説明したとおり、要件事実の主張(売買契約の成否)と、それによって生じる法律関係(所有権の存否ないし所有権に基づく物権的請求権の存否)とを区別して理解することが、ここでも重要です。この事例で、裁判所が、Yによる前訴基準時前にXY間で甲土地につき売買契約が成立した旨の主張を認め、売買契約の成立が認められる、と判断すると、どのような法律関係になるか。それは、Yの所有権取得を基礎付けると同時に、一物一権主義によって、反射的にXに所有権がない、という法律関係を認めることになります。これは、前訴基準時に、Xが、Yに対し、所有権に基づく甲土地明渡請求権を有していた、という前訴確定判決の既判力と矛盾するでしょうか。極めて少数の異説を除き、所有権と、所有権に基づく物権的請求権は別個の権利であることから、所有権がないことと、所有権に基づく物権的請求権を有することとは直ちに矛盾しない、という理解をするのが定説となっています。こうして、Yが売買契約の成立を主張しても、後訴裁判所は、それを排斥する必要はない、ということになるのです。
 このように、「同一関係、矛盾関係又は先決関係に当たるから既判力が作用する。」という説明は必ずしも的確ではなく、既判力の積極的作用・消極的作用との関係で、具体的に考える必要があるのです。そして、既判力の消極的作用によって主張等が排斥される場合が生じることを、「既判力が作用する。」と一般に表現しているわけです。その上で、既判力が作用する場合を、敢えて3種類に分類してみると、同一関係、矛盾関係又は先決関係に分類できるだろう。このことを、「既判力が作用するのは、同一関係、矛盾関係又は先決関係に当たる場合である。」と表現しているのです。ですから、前に紹介した、以下のような命題は誤っているのです。

 「既判力は、前訴と後訴の訴訟物に同一関係、矛盾関係又は先決関係がある場合にのみ作用する。したがって、同一関係、矛盾関係又は先決関係のいずれにも当たらない場合には、後訴裁判所が前訴判決の既判力で確定された判断内容と矛盾する判断をすることができる。」

 既判力の消極的作用によって主張等が排斥される場合が生じることを、「既判力が作用する。」と呼び、既判力が作用する場合を同一関係、矛盾関係又は先決関係に分類しているわけだから、「同一関係、矛盾関係又は先決関係のいずれにも当たらないが、後訴裁判所が前訴判決の既判力で確定された判断内容と矛盾する判断をする場合」などというものは、およそ生じ得ないわけです。ですから、「確かに既判力の客観的範囲の及ぶ事項と矛盾する主張ですが、本問は同一関係、矛盾関係又は先決関係のいずれにも当たらず、既判力が作用する場面ではないので、既判力によって主張が遮断されることはありません。」などという説明は、誤っているのです。

 さて、ここまで確認して初めて、本問を検討する準備が整いました。まず、前訴の既判力の客観的範囲を確認しておきましょう。前に説明したとおり、伝統的な学説の立場によれば、前訴の既判力は、「前訴基準時に、XのYに対する売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権が存在した 。」という点にのみ及ぶ、と考えればよかったのでした。そして、後訴の訴訟物は、YのXに対する売買代金支払請求です。後訴の請求原因としてYが主張・立証すべきは、本件絵画の売買契約の成立です。したがって、「XY間には本件絵画の贈与契約が成立したのであって、Xは売買代金の支払義務を負わない」 旨の主張は、売買契約の成立に対する積極否認ということになるでしょう。さあ、Xは、売買契約の成立を否認することができるでしょうかここまできちんと読んできた人であれば、「売買契約の成立は前訴の判決理由中の判断なので、Xは売買契約の成立を否認することができます!」などとは答えないでしょう。本問で、裁判所が、Xが売買契約を否認することを認め、売買契約の成立は認められない、と判断すると、どのような法律関係になるか。売買契約の不成立は、売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権の不発生を帰結します。これは、前訴基準時に、XのYに対する売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権が存在した、という前訴確定判決の既判力と矛盾する。そのような既判力と矛盾する法律関係を基礎付ける主張等は、許されない。こうして、後訴裁判所は、Xが売買契約を否認したとしても、それを排斥しなければならなくなるのです。 (※)
 では、「その代金額は150万円であり、Xはその限度でしか支払義務を負わない」旨の主張については、どうか。まずは、この主張の位置付けを整理しておきましょう。Yは、請求原因として売買契約の成立を主張・立証するわけですが、売買の要素として、目的物と代金を具体的に主張・立証することになる。そして、前訴と異なり、後訴は代金支払請求ですから、「時価相当額」という程度の特定では足りず、請求の趣旨に記載された200万円という代金額を具体的に立証する必要があるわけです。そうすると、「その代金額は150万円であり、Xはその限度でしか支払義務を負わない」旨の主張とは、このYの請求原因としての売買代金額の主張に対する積極否認ということになる。さて、Xは、Yの代金額の主張を否認することができるのでしょうか。代金額の主張を否認するとは、すなわち、売買契約の成立を否認することである、と考えると、やはり、それは許されないということになりそうです。しかし、さすがにそれはおかしい、と直感的に思うでしょう。ここで、売買契約に基づく引渡請求の場合には、請求原因において「時価相当額」程度の特定で足りる、と考えた趣旨を思い出す必要があるのです。売買契約に基づく引渡請求が訴訟物である場合には、売買契約の同一性を確保する趣旨で代金額の特定が求められていたにすぎず、厳密に代金額が特定されていなくても、売買契約の成立は否定されない。このことからすれば、後訴で代金額の主張を否認したからといって、直ちに売買契約の成立を否定する趣旨ではなく、あくまで代金額のみを争う趣旨である、と理解することが可能でしょう。こうして、後訴裁判所は、代金額が150万円であるという主張を既判力によって直ちに排斥するのではなく、代金額について改めて審理できるか否かについて、その主張が信義則に反するか否かという観点から判断すべきことになるのです。

 ※ なお、これは、「法的性質決定の既判力」とは無関係です。「法的性質決定の既判力」とは、主に新訴訟物理論に立つ場合に、考える実益のある概念です。新訴訟物理論では、「目的物の引渡しを受ける法的地位」などが訴訟物となりますから、これに対する判決の既判力も、例えば、「Xは、Yから本件絵画の引渡しを受ける法的地位にある。」となるはずです。それが実体法上売買に基づくのか、贈与に基づくのか、といったことは、何ら特定できないか、あるいは、「引渡しを基礎付ける法律原因をすべて統合した規範に基づく地位」などを想定することになります。しかし、それでは当事者が実体法上どのような権利を行使したのかすらわからないことになる。そこで、「せめて実体法上どの権利に基づいてその法的地位が認められたのか、というところまでは、既判力で特定していないとヤバくない?」という発想が生じてくるわけですね。これが、「法的性質決定の既判力」というものです。旧訴訟物理論では、もともと、訴訟物と実体法上の権利が1対1対応になっていますから、それほどこの概念を用いる必要性はありません。旧訴訟物理論の論者がこの言葉を使う場合には、せいぜい、「請求の趣旨の内容を特定する場合に請求原因を参照するのと同じように、主文に表示された訴訟物に対する判断がどのような法律関係に関するものであるかについて、判決理由中の判断を参照してその法的性質を特定する場合がある。」という程度の意味を有しているにすぎません。

 

 以上が、伝統的な学説からの理解でした。しかし、判例であれば、これとは異なる筋道で本問を解決しそうです。ここからは、設問2小問(2)と設問3について、判例の立場を簡単に説明したいと思います。
 設問2の小問(2)は、伝統的な学説からは、引換給付の部分は訴訟物に含まれないのだから、弁論主義の問題だ、という整理でした。その根拠としては、引換給付は執行の条件にすぎない、ということがありました。しかし、判例は、不執行の合意の存在について、訴訟物に準ずるものとして審判の対象となるとします。

 

最判平5・11・11より引用。太字強調は筆者。)

 給付訴訟の訴訟物は、直接的には、給付請求権の存在及びその範囲であるから、右請求権につき強制執行をしない旨の合意(以下「不執行の合意」という。)があって強制執行をすることができないものであるかどうかの点は、その審判の対象にならないというべきであり、債務者は、強制執行の段階において不執行の合意を主張して強制執行の可否を争うことができると解される。しかし、給付訴訟において、その給付請求権について不執行の合意があって強制執行をすることができないものであることが主張された場合には、この点も訴訟物に準ずるものとして審判の対象になるというべきであり、裁判所が右主張を認めて右請求権に基づく強制執行をすることができないと判断したときは、執行段階における当事者間の紛争を未然に防止するため、右請求権については強制執行をすることができないことを判決主文において明らかにするのが相当であると解される(最高裁昭和四六年(オ)第四一一号同四九年四月二六日第二小法廷判決・民集二八巻三号五〇三頁参照)。

(引用終わり)

 

 この判例の趣旨からすれば、執行の条件についても、訴訟において主張された場合には、訴訟物に準ずるものとして審判の対象となると理解することができるでしょう。そうなると、これは処分権主義(に準ずる)の問題だ、という余地が十分出てくるということになります。その場合には、180万円と認定することは、200万円というXの(請求に準ずる)主張の範囲に含まれていないので、処分権主義(の趣旨)に反し許されない、ということになり得るでしょう。
 このような理解は、設問3にもそのまま論理的にリンクしてきます。執行の条件が訴訟物に準ずるものとして審判の対象になるのであれば、それに対する応答としての判決についても、執行の条件に既判力に準ずる効力が生じる、ということになるでしょう。判例が、このような論理関係を前提にしていることは、明らかです。なぜなら、上記の最判平5・11・11が明示的に引用している「最高裁昭和四六年(オ)第四一一号同四九年四月二六日第二小法廷判決・民集二八巻三号五〇三頁」とは、以下の判例だからです。

 

最判昭49・4・26より引用。太字強調は筆者。)

  被相続人の債務につき債権者より相続人に対し給付の訴が提起され、右訴訟において該債務の存在とともに相続人の限定承認の事実も認められたときは、裁判所は、債務名義上相続人の限定責任を明らかにするため、判決主文において、相続人に対し相続財産の限度で右債務の支払を命ずべきである
 ところで、右のように相続財産の限度で支払を命じた、いわゆる留保付判決が確定した後において、債権者が、右訴訟の第二審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(たとえば民法九二一条の法定単純承認の事実を主張して、右債権につき無留保の判決を得るため新たに訴を提起することは許されないものと解すべきである。けだし、前訴の訴訟物は、直接には、給付請求権即ち債権(相続債務)の存在及びその範囲であるが、限定承認の存在及び効力も、これに準ずるものとして審理判断されるのみならず、限定承認が認められたときは前述のように主文においてそのことが明示されるのであるから、限定承認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし、また民訴法五四五条二項によると、確定判決に対する請求異議の訴は、異議を主張することを要する口頭弁論の終結後に生じた原因に基づいてのみ提起することができるとされているが、その法意は、権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにあると解すべきであり、右趣旨に照らすと、債権者が前訴において主張することのできた前述のごとき事実を主張して、前訴の確定判決が認めた限定承認の存在及び効力を争うことも同様に許されないものと考えられるからである。
 そして、右のことは、債権者の給付請求に対し相続人から限定承認の主張が提出され、これが認められて留保付判決がされた場合であると、債権者がみずから留保付で請求をし留保付判決がされた場合であるとによつて異なるところはないと解すべきである。

(引用終わり)

 

 これは、多くの人が知っているでしょうし、本問に関する予備校等の解説でも、断片的に出てくるでしょう。しかし、大事なことは、前記の最判平5・11・11が、これを明示的に引用している、ということです。判例は、明らかに「準ずる」場合について、審判対象と既判力の範囲をリンクさせているのです。そして、不執行の合意や責任範囲に関する留保は、いずれも訴訟物たる権利に付着する付款といえます。そして、執行の条件もまた、訴訟物たる権利に付着する付款です。このことからすれば、上記各判例の趣旨は、本問にも及ぶと考えることができるというわけです。
 さて、このように考えると、設問3は、どのような処理になるのか。Xの主張のうち、「XY間には本件絵画の贈与契約が成立したのであって、Xは売買代金の支払義務を負わない」旨の主張については、既に説明した伝統的な学説と同様に、引換給付部分以外の判決主文に生じる既判力によって排斥されます。問題は、「仮に贈与契約でなく売買契約が成立したと判断されたとしても,その代金額は150万円であり,Xはその限度でしか支払義務を負わない」という主張との関係です。本問の前訴判決主文中、「Xから200万円の支払を受けるのと引換えに」とする部分についても、既判力に準ずる効力が生じるわけですが、これは、具体的にはどのように後訴に作用するのでしょうか。
 これまでに説明したように、「Xから200万円の支払を受けるのと引換えに」とする部分は、執行の条件を示すものです。これを踏まえて既判力の生じる判断内容を表現するなら、「Xは、Yに対し、Yに200万円を支払うことを条件として、本件絵画の引渡しを求める権利を有する。」ということになるでしょう。そして、ここで、問題文の「前訴判決の主文において引換給付の旨が掲げられていることの趣旨」を、判例の立場に沿って考えてみる。これは、前に引用した各判例の「執行段階における当事者間の紛争を未然に防止するため、右請求権については強制執行をすることができないことを判決主文において明らかにする」(最判平5・11・11)、「権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されない」(最判昭49・4・26)という判示部分に示されています。この趣旨からすれば、Yの売買代金額の主張に対して、代金額が150万円であるとしてこれを否認することは、「Yに200万円を支払うことを条件として」という執行の条件を変更することを意味しますから、「執行段階における当事者間の紛争を未然に防止するため」に「前訴判決の主文において引換給付の旨が掲げられていることの趣旨」に反するでしょうし、「権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されない」といえるでしょう。こうして、後訴裁判所は、代金額が150万円であるというXの主張について、既判力に準ずる効力と矛盾するとして排斥すべきであり、代金額について改めて審理することはできない、ということになるのです。

 以上のことは、どうみても難しすぎます。これを試験の現場でスラスラ書ける受験生がいるとしたら、「薔薇」や「躑躅」をスラスラ書ける小学生と同じくらい怖い。ですから、ここは「みんなで堂々と赤信号を渡る。」というテクニックが重要になります。参考答案は、そのような観点から、受験生の多数が安直に考えて書きそうなことを、「規範の明示と事実の摘示」という原則を守りながら書いてみました。これで十分合格答案でしょう。参考にしてみてください。
 なお、設問2の小問(2)と設問3の論理的整合性については、かつての旧司法試験であれば、何の説明もなく前者を処分権主義の問題とし、後者について引換給付部分は訴訟物に含まれないと説明すれば、それだけでG評価(当時の最低の得点ランク)になったでしょう。これでは、それなりに実力のある中級者の多くが、引っかかってしまいます。その結果生じた現象として、旧司法試験時代には、法的構成すらほとんど明らかにしないスカスカ答案が、なぜか合格答案になるということが起きたのでした。そのカラクリは、「法的構成すら明らかにしていないので、論理矛盾と判定されない。」ということにあったのです。

 

法曹養成制度検討会議第12回会議議事録より引用。太字強調は筆者。)

鎌田薫(早大総長)委員 「かつての旧試験の末期は,論文試験ではともかく減点されないように,最低限のことしか書くなという指導が,受験予備校などで行われていた。これがまさに受験指導で,そういう指導をするなというのが法科大学院での受験指導をするなということの意味で,試験に役立つ起案・添削などはもちろんやっているんですけれども,旧試験時代には減点されないような答案を書きなさいという指導が行き渡っていて,全員ほぼ同じ文章を書く。これは分かっているのか,分かっていないのかわからないので,分かっているというふうにして,点をあげないと合格者がいなくなるので,どんどん点をあげていたのです」

(引用終わり)

 

 しかし、現在では、そのような論理性に着目する極端な採点は、ほとんどなされていません。その結果、かつてのようなスカスカ答案が、合格答案として浮上することはほとんどなくなりました。このことは、再現答案等を検討するときや、旧司法試験合格者のアドバイスを参考にする際に、少し頭の片隅にでも置いておくとよいでしょう。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの事実を本件訴訟の判決の基礎とすることは、弁論主義の第1原則に反しないか。

2.弁論主義の第1原則とは、裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることができないことをいう。弁論主義の第1原則に違反するか否かは、主要事実に食い違いがあるか、当事者に対する不意打ちとなるかという観点から判断する。

3.主要事実とは、法律効果の発生、消滅等の要件に該当する具体的事実をいう。具体的には、請求原因、抗弁等がこれに当たる。
 訴状記載の請求原因は、XY契約成立である。これに対し、Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの事実は、AX契約成立、AのXに対する顕名、YのAに対する先立つ代理権授与を請求原因とするから、主要事実に食い違いがある。

4.当事者に対する不意打ちとなるか否かは、当事者の攻撃防御の機会を失わせるか否かの観点から判断する。
 Aは、Yの申請した証人である。証人尋問において、Aが、契約はAがYの代理人としてXと締結したものであると述べたのに、AがYの代理人であったか否かについては、両当事者とも問題にしなかった。契約の成立という点で法律効果に変わりはない。以上から、XとYの攻撃防御の機会を失わせるとはいえない。
 したがって、当事者に対する不意打ちとなるとはいえない。

5.以上から、弁論主義の第1原則に反しない。

6.よって、Yの代理人AとXとの間で契約が締結されたとの事実を本件訴訟の判決の基礎とすることができる。

第2.設問2

1.小問(1)

(1)訴訟物は、実体法上の請求権を基準として判断すべきである(旧訴訟物理論)。
 したがって、本件の訴訟物は、贈与に基づく引渡請求である。

(2)Yの「本件絵画をXに時価相当額で売却し、その額は300万円である。」の主張は、請求原因である贈与契約締結の事実に関する積極否認である。裁判所は、贈与契約締結の事実を認めない場合には、請求を棄却することになる。

(3)Xの「仮にこの取引が売買であり、本件絵画の時価相当額が代金額であるとしても、その額は200万円にすぎない。」の主張は、贈与に基づく引渡請求とは別個の訴訟物である売買に基づく引渡請求を予備的に追加する趣旨といえる。
 そのためには、少なくとも、Xは訴えの追加的変更の申立て(143条1項)をする必要がある。

(4)上記(3)の売買に基づく引渡請求との関係では、Yの「本件絵画をXに時価相当額で売却し、その額は300万円である。」の主張は、請求原因を自白した上で、代金の支払があるまでは引渡しを拒む趣旨といえる。
 履行請求に対する同時履行の抗弁権は権利抗弁である。したがって、Yが上記の趣旨を実現するためには、少なくとも、「XがYに対し300万円を支払うまでは、本件絵画を引き渡さない。」旨の権利主張をすることが必要である。

(5)一部認容判決は、原告の意思に反することなく、被告の不意打ちともならない場合には、246条に反しない。一般に、引渡請求に対して同時履行の抗弁権の主張がされた場合に引換給付判決をすることは、債務名義を得ることのできる点で原告の意思に反しないし、原告から無条件の引渡請求を受けていた以上、被告にも不意打ちとならないから、質的一部認容判決として許される。

(6)よって、少なくとも(3)の申立て及び(4)の権利主張があるときは、「Yは、Xから200万円の支払を受けるのと引換えに、Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」との判決をすることができる。

2.小問(2)

(1)原告の意思に反しないか、被告の不意打ちとならないかという観点から、一部認容判決の可否を検討する。

(2)Yが300万円と主張しているから、180万円の場合はもちろん、220万円の場合であっても、Xの意思に反するとはいえない。

(3)他方、Xは200万円の主張しかしていないから、Yとしては、220万円の場合には不意打ちとならないが、180万円の場合には不意打ちとなる。

(4)以上から、220万円と認定することは許されるが、180万円と認定することは許されず、その場合はXの主張する200万円と認定すべきである。

(5)よって、本件絵画の時価相当額が220万円と評価される場合には、「Yは、Xから220万円の支払を受けるのと引換えに、Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」との判決をすることになり、本件絵画の時価相当額が180万円と評価される場合には、「Yは、Xから200万円の支払を受けるのと引換えに、Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」との判決をすることになる。

第3.設問3

1.確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する(114条1項)。前訴の確定判決の主文は、「Yは、Xから200万円の支払を受けるのと引換えに、Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」というものであるから、「Xから200万円の支払を受けるのと引換えに」とする部分も、形式的には主文に含まれている。

2.しかし、114条1項が、「主文に包含するものに限り」とした趣旨は、訴訟物の存否に対する判断について既判力を及ぼせば紛争解決に十分であり、それ以外の事項に既判力が生じるとすると、それを恐れた当事者が無用の主張・立証を強いられ、争点が拡散し、訴訟経済を害するという点にある。
 したがって、「主文に包含するもの」とは、訴訟物の存否に対する判断をいう。
 前訴の訴訟物は、XのYに対する本件絵画の引渡請求権であるから、確定判決の「主文に包含するもの」として既判力が生じるのは、「Yは…Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」の部分、すなわち、Xが、Yに対し、本件絵画の引渡請求権を有するという点に限られ、「Xから200万円の支払を受けるのと引換えに」とする部分には、既判力は生じない。

3.既判力が作用するのは、前訴と後訴の訴訟物の間に同一関係、矛盾関係、先決関係がある場合である。

(1)同一関係とは、後訴の訴訟物が、前訴で既判力が生じた権利・法律関係と同一である場合をいい、矛盾関係とは、後訴の訴訟物が、前訴で既判力が生じた権利・法律関係と法律上両立しない場合をいう。。
 本件で、前訴の訴訟物は、XのYに対する本件絵画の引渡請求権であるのに対し、後訴の訴訟物は、YのXに対する本件絵画の代金支払請求権である。前訴と後訴の訴訟物は同一ではない。本件絵画の引渡請求権の存否と本件絵画の代金支払請求権の存否はそれぞれ両立する法律関係である。
 したがって、同一関係、矛盾関係のいずれにも当たらない。

(2)先決関係とは、前訴で既判力が生じた権利・法律関係が、後訴の訴訟物の存否を判断する前提となる場合をいう。
 後訴の訴訟物である本件絵画の代金支払請求権の存否の判断の前提となる事実は、本件絵画を目的とする売買契約の成立、代金債務の消滅原因の存否等であって、本件絵画の引渡請求権の存否は、直接後訴の訴訟物の存否を左右しない。
 したがって、先決関係にも当たらない。

(3)以上から、前訴の既判力は、後訴に作用しない。

4.既判力によって遮断されない場合であっても、訴訟上の信義則(2条)に反するときは、後訴での主張は許されない。
 信義則に反するか否かは、前訴で容易に主張し得たか、相手方に前訴判決によって紛争が解決したとの信頼が生じるか、相手方を長期間不安定な地位に置くものといえるか等の観点から判断すべきである(判例)。
 Xは、前訴において、既に贈与の主張及び代金額の主張をしていた。Xから委任を受けた弁護士が改めて事実関係を争うべきであると考えたのは、Bから、本件絵画の取引は贈与である旨の証言を得られそうだとの感触を得たこと、同弁護士が本件絵画の写真数点を古物商に見せたところ、高くても150万円相当であるとのことであったことにあるが、これらは、いずれも前訴で容易に主張し得た。前訴では、「Yは、Xから200万円の支払を受けるのと引換えに、Xに対し、本件絵画を引き渡せ。」との判決がされ、この判決は確定したから、Yに紛争が解決したとの信頼が生じる。Xは、前訴を提起しておきながら、自らの事業の経営状態が悪化したこともあり、代金を支払ってまで本件絵画を手に入れることに熱意をなくしてしまっており、Yを長期間不安定な地位に置くものといえる。
 以上から、Xの主張は、信義則に反する。

5.よって、裁判所は、後訴において、XY間の本件絵画の売買契約の成否及びその代金額に関して改めて審理・判断をすることはできない。

以上

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2017年06月06日

平成29年司法試験論文式民事系第2問参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.司法試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、優秀・良好のレベル(概ね500番より上の順位)に達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。 

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があります。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は6頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に7頁、8頁まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、7頁、8頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

4.今年の商法は、従来の傾向どおり、他論点型、事例処理型の問題でした。上記の(1)から(3)までを普通に守れば、優に合格答案でしょう。本問は応用論点を比較的多く含んでおり、そのために難しく感じるかもしれませんが、基本論点だけに絞って書いていけばよいのです。
 設問1は、最も基本的な問題であり、ここで確実に点を取りたいところです。参考答案は一貫して判例の立場から書いていますが、本問に限っては、有力説の立場に立った方が書きやすいかもしれません。特に、小問(2)は、有力説から事後設立の手続で追認できるとする方が、現場で書いていて気分がよいでしょう。判例の立場からはFの要求に応じざるを得なくなり、さらに「重要な財産の…譲受け」(362条4項1号)に当たるとして取締役会の決定手続が必要となるかも検討することになりますが、現場で書いているときには、少し感触の悪さを感じるかもしれません。
 設問2は、基本論点と応用論点が混在しているので、論点の取捨選択をする必要があります。普通の合格を狙うのであれば、議決権行使代理人株主限定定款規定(Kの議決権行使)と株式併合の不当性(特別利害関係株主・著しく不当な決議)の点に絞って書くべきでしょう。これらは、いずれも事前に用意した規範を書き写すだけで書けるようになっておかなければなりません。訴訟要件についても、敢えて落としてしまって構わないでしょう。もちろん、書いても時間が余って余裕だ、というなら書いてもいいですが、本問では訴訟要件に基本論点は含まれていないので、無理をして拾いに行くのは危険です。参考答案は、訴訟要件を無視しています。株式併合が著しく不当といえるかについて、参考答案は、やや強引に不公正発行と同様の基準で判断していますが、上位を狙うなら、差止め(182条の3)との兼合いも考慮して、もう少し慎重に判断したいところです。特別決議が必要であること(309条2項4号)も、上位を狙うなら、指摘しておくとよいでしょう。
 設問2の応用論点としては、まず、平成26年会社法改正に関するものとして、株主総会決議の取消しにより株主の地位を回復する者の原告適格(831条1項後段)があります。Gは、株式併合の効力が発生すると、持株がすべて1株未満の端数となるため、株主ではなくなってしまうからです。

 

(「司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材」より引用。太字強調は原文による。)

株主総会決議の取消しにより株主の地位を回復する者が株主総会決議取消しの訴えを提起する場合

 株主総会決議の取消しにより株主の地位を回復する者について、株主総会決議取消しの訴えの原告適格が認められた(新831条1項後段)。

【条文】

新831条1項 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする
 各号略。

 

 これは、気付いた人は軽く条文を挙げるだけでよいので、書ければよかったかも知れません。ただ、誰もが気付くかというと、そうでもないでしょうから、時間内にまとめる自信がなければ、落とした方が賢明です。
 もう1つ、これは平成26年会社法改正以前からあった条文ですが、改正によって条文の位置が変わったものとして、株式併合の理由の説明(180条4項)があります(改正前は3項)。問題文13の説明が、株式併合を必要とする説明として十分か、ということですね。書く場合には、314条の論証を流用するとよいでしょう。「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」の論証を使えば、以下のようになります。

 

【論述例】

 314条の説明義務について、取締役等が説明義務を果たしたというためには、平均的な株主が決議事項について合理的な判断を行い得る程度の説明がなされたことを要する(東京スタイル事件参照)。180条4項の説明義務についても、同様に考えられる。

 

 もっとも、本問は論点が多く、試験の現場では、意外と多くの人が180条4項を落としてしまうでしょう。ですから、上位を狙うのでなければ、これは無理をして書きに行く必要はないと思います。
 設問2で最も応用的な論点は、相続が「譲渡」(130条1項)に当たるか、ということです。当然に当たる、と考えた人が多いと思いますが、会社法の立案担当者は明確に否定しています。

 

「会社法であそぼ。」2006年03月09日記事「相続と名義書換の関係」より引用。太字強調は筆者。)

 「移転」は、権利者の変更一般をあらわす言葉で、相続等の一般承継も、「移転」に含まれます。これに対し、「譲渡」は、権利者の処分による移転を指す言葉ですから、会社法130条は、相続等の一般承継の場合には適用されません。言い換えれば、会社法では、一般承継については、株主名簿の名義書換をすることなく、会社及び第三者に対抗することができると解すべきです。

(引用終わり)

 

 本問で、仮に相続が「譲渡」に含まれると考えると、Lは単なる失念株主です。

 

(問題文12より引用。太字強調は筆者。)

 Iは平成27年10月1日に死亡し,Iの唯一の相続人であるLが,Iが保有していた乙社株式800株(以下「本件株式」という。)を相続した。Lは,Iの生前から,乙社の株主名簿上のIの住所においてIと同居しており,Iが死亡した後も,引き続き同所において居住している。Lは,Iの生前から,Iが本件株式を保有していたことを知っていたものの,本件株式を相続により取得した後も,本件株式について株主名簿の名義書換えを請求していなかったが…

(引用終わり)

 

 本件株主総会の基準日は平成28年3月31日ですから、Iの死亡から約半年間、Lは本件株式の相続を知りながら、名義書換を怠っていたことになります。これでは、何らかの法律構成でLを救済すべきだ、という話にもならないでしょう。そうなると、Lに関する事情は、専ら設問3に関わりがあるだけで、設問2では何ら問題にならないということになってしまいます。
 ところが、相続が「譲渡」に含まれない、ということになると、Lは名義書換なくして乙社に株主の地位を対抗できることになります。「でも、それだと乙社は本当に相続人だかわからないのに、Lに権利行使させなければいけないの?」と思うかもしれませんが、それについては、Lに相続によって株主となったことの証明を求めることができるので問題ない、というのが、立案担当者の立場です。

 

「会社法であそぼ。」2006年03月09日記事「相続と名義書換の関係」より引用。太字強調は筆者。)

 相続人が、議決権や配当請求権を行使するときに、会社に対して、「自分が相続人であること」を証明しなければならないのは、証明責任の原則に照らしても、当然であり、その証明をしない相続人による請求を拒んだとしても、会社には責任がないものと解すべきです。
 したがって、名義書換を対会社対抗要件としなくても、「相続人は、相続を証する書面を提出する等して自己が相続人であることを証明してはじめて権利を行使することができる」と考えれば、必要十分だと思います。

(引用終わり)

 

 本問は、その証明がある事案です。

 

(問題文12より引用。太字強調は筆者。)

 Lは,Iの生前から,Iが本件株式を保有していたことを知っていたものの,本件株式を相続により取得した後も,本件株式について株主名簿の名義書換えを請求していなかったが,I宛ての本件株主総会の招集通知を受け取った日の翌日である平成28年6月3日,乙社に対し,相続により本件株式を取得したことを証する書面を提示して株主名簿の名義書換えを請求するとともに,上記10の株式の併合に反対する旨を乙社に通知した。乙社は,同日,Lの請求のとおり株主名簿の名義書換えを行った。

(引用終わり)

 

 若干気になるのは、Lが本件株主総会に出席する際には、相続による取得を証する書面を持参・提示していない、という点ですが、以下の事情からすれば、それは乙社が議決権行使を拒む理由にはならないように思われます。

 

(問題文12より引用。太字強調は筆者。)

 本件株主総会の当日,Lは,本件株主総会の会場に現れ,入場を求めたが,乙社の受付担当者は,乙社の代表取締役Jの指示に基づき,Lが本件株主総会に係る議決権行使の基準日において株主名簿上の株主でなかったことを理由として,Lの入場を認めなかった。

(引用終わり)

 

 そうなると、本件株主総会で、乙社がLに議決権の行使を認めなかったことは、違法となります。その前に、「招集通知をI宛に送付した点も違法なのでは?」と思うかもしれませんが、これは株主名簿の免責的効力(手形法40条3項類推適用によるのか、株券不発行の点に着目して民法478条によるべきか、という論点はありますが。)によって、適法なのでしょう。しかも、IとLが同居していて、Lが招集通知を受け取っているので、この点はそもそも問題にする必要がない、と考えてよいのだろうと思います。
 こうして、設問2でGの主張すべき本件決議の瑕疵としては、Lに議決権の行使を認めなかったという決議方法の法令違反(831条1項1号)もある、という話になるわけです。そうすると、付随的に、「Lが議決権を行使できなかったことをGが主張できるの?」という例の論点も生じてくるわけですね。そして、このことは、後に説明するとおり、設問3でもややこしい問題を引き起こすのです。
 このように、相続が「譲渡」に当たるかは、出題者は意識的に論点としているわけですが、気付く人はとても少ないでしょう。しかも、「軽く触れる」というわけにもいかない。そんなわけで、これは正常な受験生は触れてはいけない論点だ、ということになります。参考答案も、相続が「譲渡」に当たることを当然の前提としています。
 設問2では、問題文の以下の記述から、準共有株式の権利行使の方法に関する最判平27・2・19が気になるところです。

 

(問題文8より引用。太字強調は筆者。)

 乙社は従業員持株制度を採用しており,乙社の従業員のうち希望者が従業員持株会に加入している。当該従業員持株会(以下「本件持株会」という。)は,平成28年3月31日の時点で,乙社の従業員20人から成る民法上の組合であり,乙社の株式を1200株取得しており,当該1200株については下記9のとおり株主名簿に株主として本件持株会の理事長であるHが記載されている。本件持株会の会員は,積立口数に応じて本件持株会が保有する乙社の株式について持分を有し,各自の持分に相当する株式を管理の目的をもって理事長に信託している。すなわち,当該1200株については,実質的には,本件持株会の会員である従業員20人が,その持分に応じて,保有していることとなる。

(引用終わり)

最判平27・2・19より引用、太字強調は筆者。)

 共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において,当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは,株式会社が同条ただし書の同意をしても,当該権利の行使は,適法となるものではないと解するのが相当である。
 
そして,共有に属する株式についての議決権の行使は,当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられる
ものと解するのが相当である。

(引用終わり)

 

 結論から先にいえば、「一見関係がありそうで、よく見ると関係なさそうで、さらによく考えると少し関係がありそうだ。」という感じです。一見すると、「実質的には…持分に応じて,保有している」と書いてあるので、「株式準共有の場面だから関係ありそう。」と思います。しかし、気を付けたいのは、株主名簿上の株主は、理事長Hになっているということです。したがって、乙社との関係では、本件持株会の株式はHの単独所有である。このことから、106条の通知や指定は必要がありません。

 

(106条)

 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 

 そうすると、「共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合」について判示した最判平27・2・19は、「関係なさそう」だ、ということになる。ところが、さらによく考えてみると、乙社との関係はともかく、本件持株会内部における手続の問題は残っている。すなわち、理事長による議決権行使に関する内部的意思決定の手続として、「当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り,株式の管理に関する行為として,民法252条本文により,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決せられる」とする判例法理が、なお妥当する余地はあるかもしれない、ということです。すなわち、乙株式会社従業員持株会規約11条に議決権行使の方法が規定されており、これは少なくとも「直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り」においては、民法252条本文の特則として許容されるでしょう。しかし、「直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情」がある場合には、同規約11条にかかわらず、民法251条により、会員全員の明示の同意が必要(同規約11条ただし書の特別の指示がない、という黙示的同意では足りない)なのではないか

 

(民法251条)

 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

 

 本問は、本件決議によって、会員全員の持株がすべて1株未満の端数になってしまうわけですから、「直ちに株式を処分し,又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情」がある場合といえます。さて、このような場合にも、明示の同意は不要なのか。その意味において、最判平27・2・19の法理は、少し関係がありそうだ、といい得るわけです。とはいえ、このようなことは、誰も書けないでしょうから、無視して構いません
 念のため、気付いてしまったら厄介なことを、少し説明しておきましょう。154条の2です。

 

(154条の2)

 株式については、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができない
2 第百二十一条第一号の株主は、その有する株式が信託財産に属するときは、株式会社に対し、その旨を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
3 株主名簿に前項の規定による記載又は記録がされた場合における第百二十二条第一項及び第百三十二条の規定の適用については、第百二十二条第一項中「記録された株主名簿記載事項」とあるのは「記録された株主名簿記載事項(当該株主の有する株式が信託財産に属する旨を含む。)」と、第百三十二条中「株主名簿記載事項」とあるのは「株主名簿記載事項(当該株主の有する株式が信託財産に属する旨を含む。)」とする。
4 前三項の規定は、株券発行会社については、適用しない。

 

 現場で気付いてしまうと、「なんだこれは。」ということになってしまうでしょう。本問では、本件持株会の株式はHに信託されているわけですが、株主名簿に信託の記載はされていない。だから、乙社に対抗できないのではないか。それはそのとおりなのですが、対抗できないのは、「その株式が信託財産に属するものであること」であって、「Hが株主であること」ではありません。具体的にこの信託の記載が問題になるのは、Hが無資力になったような場合です。このような場合において、Hの債権者が本件持株会の株式に対して強制執行をしようとしたときに、これがHの固有財産ではなく、本件持株会会員の信託に基づく信託財産である、ということを対抗するためには、信託の記載が必要だ、ということです。

 

(信託法23条1項)

 信託財産責任負担債務に係る債権(信託財産に属する財産について生じた権利を含む。次項において同じ。)に基づく場合を除き、信託財産に属する財産に対しては、強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売(担保権の実行としてのものを除く。以下同じ。)又は国税滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)をすることができない

(信託法14条)

 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない

 

 本問はそのような場合ではないので、全く関係がない、ということになります。
 さて、設問3です。これは、完全に応用論点です。ただし、多くの人が、現場で目次から条文を引いて、株式買取請求(182条の4)の存在を発見できたのではないかと思います。これは平成26年会社法改正によって追加されたものですが、「司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材」でも、無理して事前準備をするのではなく、万が一出題されたら現場で条文を引くべきだ、と説明していたところでした。

 

(「司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材」より引用。太字強調は原文による。)

株式の併合により端数となる株式が生じる場合の規律

 事前・事後の情報開示(新182条の2、同条の6)、差止請求(新182条の3)、反対株主の株式買取請求権(新182条の4)及び価格決定申立権(新182条の5第2項)が新設された。
 しかし、論文試験において株式の併合により端数となる株式が生じる場合の規律を正面から問う可能性は高いとはいえず、仮に出題されたとしても、現場で会社法の目次から「株式の併合」の項目を探して条文にたどり着くことが可能である。従って、格別の対策を要しない

(引用終わり)

 

 ですから、最低限、182条の4まではたどり着く。普通の受験生にとっては、後は適当に条文を当てはめて終わりです。参考答案は、そのように書いています。ただ、実際には、さらに頑張って条文を引くと、「(一に満たない端数の処理)」という見出しの掲げられた条文を発見することができたはずです。

 

(会社法 第10節 雑則)

(一に満たない端数の処理)

234条 略。
2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については、同項中「競売により」とあるのは、「売却により」とする。
4 株式会社は、第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額
5 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。
6 略。

235条 株式会社が株式の分割又は株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない
2 前条第二項から第五項までの規定は、前項の場合について準用する。

 

 上位を狙うなら、これは引きたい。「235条があるのなら、株式買取請求なんてする意味がないじゃない。」と思うかもしれませんが、182条の4であれば「公正な価格」で買い取ってもらえるので、端数をまとめて競売等の手段で売却した代金よりは通常高額になる。だから、十分意味があるのです。ただし、この「公正な価格」が、単に本件決議がなければ有したであろう価格(「ナカリセバ価格」)なのか、乙社の完全子会社化による企業価値の増加(シナジー)が生じる場合として、その価値も織り込まれるのか、という点は、さらなる応用論点です。組織再編等に関する判例を応用して解答することになるでしょう。

 

最決平23・4・19(楽天・TBS事件)より引用。太字強調は筆者。)

 吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合には,増加した企業価値の適切な分配を考慮する余地はないから,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格(以下「ナカリセバ価格」という。)を算定し,これをもって「公正な価格」を定めるべきである。

(引用終わり)

最決平24・2・29(テクモ事件)より引用。太字強調は筆者。)

 株式移転によりシナジー効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうと解するのが相当であるが(前記第三小法廷決定参照),それ以外の場合には,株式移転後の企業価値は,株式移転計画において定められる株式移転設立完全親会社の株式等の割当てにより株主に分配されるものであること(以下,株式移転設立完全親会社の株式等の割当てに関する比率を「株式移転比率」という。)に照らすと,上記の「公正な価格」は,原則として,株式移転計画において定められていた株式移転比率が公正なものであったならば当該株式買取請求がされた日においてその株式が有していると認められる価格をいうものと解するのが相当である。

(引用終わり)

 

 「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」でも、これに対応する論証を用意していますが、本問では、気付いても書く余裕はないでしょうから、正常な受験生は無視すべきでしょう。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(会社法)より引用)

企業価値の増加が生じない場合の「公正な価格」(469条1項柱書、785条1項柱書、797条1項本文、806条1項柱書)の意義
重要度:A
 企業価値の増加が生じない場合の「公正な価格」(469条1項柱書、785条1項柱書、797条1項本文、806条1項柱書)とは、組織再編等を承認する株主総会決議がなければその株式が有していたであろう価格(「ナカリセバ価格」)をいう(楽天・TBS事件判例参照)。

 

企業価値の増加が生じる場合の「公正な価格」(469条1項柱書、785条1項柱書、797条1項本文、806条1項柱書)の意義
重要度:A
 企業価値の増加が生じる場合の「公正な価格」(469条1項柱書、785条1項柱書、797条1項本文、806条1項柱書)とは、組織再編等の対価が公正であったならばその株式が有していると認められる価格をいう(テクモ事件判例参照)。

(引用終わり)

 

 ところで、そもそも本問のLは、「反対株主」(182条の4第2項)に当たるのか、実は、これが設問3最大の応用論点です。

 

(182条の4第2項)

 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。
一 第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

 

 785条2項1号ロの「議決権を行使することができない株主」については、議決権制限株式の株主のことを指し、基準日後株主(失念株主も会社との関係では基準日後株主となる。)は含まない、というのが、立案担当者の立場です。このことは、182条の4第2項2号についても妥当すると考えてよいでしょう。

 

「会社法であそぼ」2009年7月14日記事「略式株式交換と株式買取請求権」)より引用。太字強調は筆者。)

  1号ロは、議決権制限株式の株主のことをいい、株主総会の「基準日後に株式を取得した株主」は議決権を行使することはできませんが、1号ロの適用はなく、株式買取請求権を行使することができないとするのが通説です(争いはありますが、実務では、この考え方で確立しています)。

(引用終わり)

 

 これに関しては、「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」でも同旨の論証を用意していましたから、超上位を狙うつもりで準備をしていた人は、書けたかもしれません。これはCランクですが、Cランクも絶対出ない、というわけではなく(絶対出ないものはそもそも収録しません。)、出題可能性も低いし、ガチガチに覚えておく必要もないけれど、上位を狙うなら知っておくと役に立つ場合もあるよ、というようなもので、本問のような場合がまさに当てはまるでしょう。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」より引用)

「議決権を行使することができない株主」(469条2項1号ロ、785条2項1号ロ、797条2項1号ロ、806条2項2号)に失念株主を含むか
重要度:C
 「議決権を行使することができない株主」を「反対株主」に含めた趣旨は、議決権制限株式の株主に株式買取請求権を付与する点にあること、名義書換を怠った失念株主の要保護性は低いことからすれば、失念株主は含まれない(旧カネボウ事件参照)。

(引用終わり)

 

 したがって、Lは、182条の4第2項2号によって株式買取請求をすることはできない。そうなると、1号はどうか。Lは、「第百八十条第二項の株主総会に先立って当該株式の併合に反対する旨を当該株式会社に対し通知し」の要件は満たしています。

 

(問題文12より引用。太字強調は筆者。)

 I宛ての本件株主総会の招集通知を受け取った日の翌日である平成28年6月3日,乙社に対し,相続により本件株式を取得したことを証する書面を提示して株主名簿の名義書換えを請求するとともに,上記10の株式の併合に反対する旨を乙社に通知した

(引用終わり)

 

 ネックになるのは、「当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主」という部分です。ここで、設問2で問題になった、相続は「譲渡」(130条1項)に当たるか、という論点の帰結が影響してきます。仮に、相続も「譲渡」に当たるから、本問のLは単純な失念株主である、と考えれば、Lを救済する必要も何ら認められないわけですから、182条の4第2項1号にも当たらない、という単純な帰結になります。ところが、これが相続も「譲渡」に当たる、ということになると、Lが議決権を行使できなかったのは、乙社が不当に議決権を行使させなかったからだ、ということになる。ここで、名義書換の不当拒絶の論点を想起しましょう。同じように、乙社が、Lが本件株主総会で反対の議決権行使をしていないことをもって、「当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主」に当たらないと主張することは、信義則に反し、許されない、ということになりそうです。こうして、Lは、182条の4第2項1号によって、株式買取請求をすることができる、ということになる。しかしながら、これを現場で書ける人は、ほとんどいないだろうと思います。
 参考答案の太字強調部分は、「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」に準拠した部分です。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

(1)DとEの支払請求が認められるためには、AD間の賃貸借契約、AE間の雇用契約の効果が、甲社に帰属していることが必要である。

(2)発起人が設立のためにした法律行為の効果は、実質的に権利能力のない社団である設立中の会社に帰属する。そして、会社が成立した場合には、設立中の会社と成立後の会社は同一の実体である以上、上記法律行為の効果はそのまま成立後の会社に帰属する
 設立のために必要な行為は、定款記載の設立費用(28条4号)の限度でのみ、成立後の会社に帰属する(東洋紙器事件判例参照)。この判例に対しては、定款記載額を超過する設立費用に係る債権者が複数ある場合の帰属が不明確であるという批判があるが、行為時の時系列によって効果帰属の可否を区別すべきであり、行為の先後が不明な場合には、債権額に応じた按分額によるべきである。したがって、判例の立場は妥当である。

(3)Aは、甲社の設立手続を進める上で、当初の1か月間は、設立事務を行う事務所と設立事務を補助する事務員が必要であると考えており、設立に不要であったことをうかがわせる事実はないから、Dからの事務所用建物の賃借とEの事務員としての雇用は、いずれも設立のために必要な行為である。
 もっとも、甲社の定款には、「設立費用は80万円以内とする。」と記載されていたから、80万円の限度でのみ、甲社に帰属する。AD間の賃貸借契約の賃料60万円とAE間の雇用の報酬40万円を合計すると80万円を超過するから、行為時の時系列によって帰属を判断する。AD間の賃貸借契約が成立したのは、平成23年5月9日であり、AE間の雇用契約が成立したのは、同月12日であるから、先に成立した前者が優先する。そうすると、AD間の賃貸借契約の賃料60万円は全額が甲社に帰属し、AE間の雇用契約の報酬40万円については、そのうち20万円の限度で甲社に帰属することになる。 

(4)よって、甲社は、Dへの賃料60万円の支払は拒むことができないが、Eへの報酬40万円の支払については、そのうちの20万円の支払は拒むことができる。

2.小問(2)

(1)本件購入契約は、成立後の甲社の事業に用いる目的で、甲社の成立を条件として締結されたから、会社成立後に財産を譲り受ける契約であり、財産引受け(28条2号)に当たる。定款に記載のない財産引受けは、無効である(同条柱書)
 甲社の定款には、財産引受けについて記載がなかったから、本件購入契約は無効である。

(2)要件を欠く財産引受けは無効であるし(民法119条参照)、厳重な手続(28条2号、33条)の潜脱を認めるべきではないから、会社による追認は認められない(判例)
 したがって、甲社は、事後設立(467条1項5号)の手続によって本件購入契約を追認する方法によって本件機械の引渡しを受けることはできない。

(3)要件を欠く財産引受けの無効は、無効である以上、会社のみならず他の当事者も主張することができる(判例)
 したがって、甲社は、Fは無効主張できないとして本件機械の引渡しを受けることはできない。

(4)以上から、甲社が本件機械の引渡しを受けるためには、Cが、甲社を代表して、再度Fと本件機械について売買契約を締結するという方法によらざるをえない。

(5)「重要な財産の処分」(362条4項1号)に当たるか否かは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきである(奈良屋事件判例参照)。このことは、同号の譲受けについても同様である。
 本件機械の代金は、Fから要求された追加額を含めると850万円であり、甲社の純資産額は、設立後、数か月の間、3000万円を超えることがなかったから、少なくとも純資産の4分の1を超えること、本件機械は甲社の事業活動に不可欠であったこと、Fから50万円を追加するよう要求されたこと等からすれば、「重要な財産の…譲受け」(362条4項1号)に当たる。
 よって、上記(4)の方法を採るためには、取締役会の決定手続が必要となる(同項柱書)。
(6)さらに、甲社の成立時である平成23年6月14日から2年以内に(4)の方法を採るためには、事後設立(467条1項5号)の手続が必要となる。本件機械の代金は、Fから要求された追加額を含めると850万円であり、甲社の純資産額は、設立後、数か月の間、3000万円を超えることがなかったから、同号ただし書の場合に当たらない。
 よって、株主総会の特別決議が必要である(309条2項11号)。

第2.設問2

1.Kを代理人とする議決権行使は乙社定款16条に違反するから、決議方法の定款違反(831条1項1号)があるという主張が考えられる。

(1)議決権行使の代理人資格を定款で制限することは、その合理的理由があり、相当と認められる程度のものである場合には、310条1項に反しない(関口本店事件判例参照)議決権行使の代理人資格を株主に限る旨の定款の定めは、株主以外の第三者による株主総会のかく乱を防止し、会社の利益を保護する趣旨のものであり、合理的な理由による相当程度の制限であるから、310条1項に反しないものとして有効である(同判例参照)
 したがって、乙社定款16条は、有効である。

(2)Kは、本件持株会の会員であり、実質的には本件持株会の株式について持分を有している。しかし、本件持株会の株式について株主名簿に株主として記載されているのは、理事長Hであるから、乙社との関係において、Kは株主ではない。乙社定款16条に違反するか。
 法人株主の職員、従業員等がその法人の代表者の意図に反する行動をすることができない場合には、総会かく乱のおそれはないから、特段の事情のない限り、その職員、従業員等による議決権の代理行使は、代理人資格を株主に限る旨の定款の定めに反しない(直江津海陸運送事件判例参照)。このことは、持株会の会員がその持株会の代表者の意図に反する行動をすることができない場合にも妥当する。
 Kは、本件持株会の発足以来の会員であり、Hの意図に反する行動をすることができないと考えられ、Kが特に総会をかく乱する意図を有していたとうかがわれる事実はなく、本件持株会の会員でHに対し本件株主総会における議決権行使についての特別の指示をしたものはいなかったから、上記特段の事情があるとはいえない。
 したがって、Kの代理人としての議決権行使は、乙社定款16条に違反しない。

(3)よって、上記主張は、認められない。

2.特別利害関係株主である甲社が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされた(831条1項3号)という主張が考えられる。

(1)特別利害関係株主(831条1項3号)とは、問題となる議案の成立により他の株主と共通しない特殊な利益を獲得し、又は不利益を免れる株主をいう
 本件株主総会の議案には、3000株を1株に併合することが含まれており、これにより、甲社だけ1株以上の株主となり、甲社以外の株主の保有株式はすべて1株未満の端数となる。したがって、甲社は、他の株主と共通しない特殊な利益を獲得し、又は不利益を免れる株主といえる。
 以上から、甲社は、特別利害関係株主に当たる。

(2)新株発行等が、特定の株主の持株比率を低下させて現経営者の支配権を維持することを主要な目的としてされた場合には、その新株発行等は不公正発行(210条2号)に該当する(忠実屋・いなげや事件参照)。このことは、株式の併合に係る決議が著しく不当なものといえるかについても妥当する。
 乙社が株式の併合をすることとなったのは、乙社を甲社の完全子会社とするためであること、乙社を完全子会社化するのは、甲社の経営方針に反対する少数株主を排除するためであったこと、乙社の創業者の一族である株主Gは、乙社が甲社の完全子会社となることに強硬に反対し、甲社からの株式売却の勧誘にも一切応じない姿勢を見せていたこと、株式の併合により、甲社だけが1株以上の株主となり、Gの保有株式は1株未満の端数となることから、本件決議は、Gの持株比率を低下させて甲社の支配権を維持することを主要な目的としてされたといえる。
 したがって、本件決議は著しく不当である。

(3)831条1項3号に該当する場合には、裁量棄却の余地はない(同条2項)。

(4)よって、上記主張は、認められる。

第3.設問3

1.反対株主の株式買取請求(182条の4)が考えられる。

2.本件株式は800株であったから、3000株を1株とする株式の併合によって、「一株に満たない端数が生ずる場合」(同条1項)に当たる。

3.Lは、株式の併合に反対する旨を乙社に通知した。しかし、Lは、平成27年10月1日にIの死亡により本件株式を相続し、Iが本件株式を保有していたことを知っていたのに、本件株主総会の基準日である平成28年3月31日(乙社定款11条)までに名義書換をしていなかったために、本件株主総会で反対の議決権行使ができなかったから、「当該株主総会において当該株式の併合に反対した株主」(同条2項1号)に当たらない。したがって、Lは、「反対株主」に当たらない。

4.よって、Lは、株式買取請求をすることができない。

以上

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2017年06月02日

平成29年司法試験論文式民事系第1問参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.司法試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、優秀・良好のレベル(概ね500番より上の順位)に達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。 

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があります。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は6頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に7頁、8頁まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、7頁、8頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

4.上記の(1)から(3)までの合格要件に、「概ね」という言葉を付けたのは、そうでない場合があるからで、今年の民法は、その場合です。どうしてか。端的にいえば、上記の(1)から(3)までだけを書いたのでは、時間が余るからです。上記2で説明したとおり、(1)から(3)までに絞る理由は、それ以外のことを書いているようでは時間が足りなくなるからでした。そうであるなら、(1)から(3)までを書いて時間が余るようなら、それ以外のことも書いてよいし、書くべきだ、ということになるわけです。
 本問の場合、基本論点は、設問1の取得時効の各要件と不動産賃借権の時効取得の要件、設問2の転貸と非背信性の認定くらいしかありません。設問3については、借地借家法10条1項の対抗力の問題だ、ということまでは基本知識でわかるでしょうが、論点の中身は基本とはいえません。これだけだと、文字を書く速さが普通の人であっても、上記の基本論点を拾って規範と事実を書き写して終わりというのでは、時間が余るでしょう。このような場合には、いつもは書きたくても我慢をしている趣旨からの理由付けや、事実の評価を解禁するのです。具体的には、参考答案を参考にしてみて下さい。
 設問1のポイントは、時効取得の起算点をどの時点とするかです。問題文を読んで、工事が遅れて云々、という部分は、誰もが気になったはずです。他論点型の忙しい問題なら、このようなところは無視しなければ最後まで書き切れません。しかし、本問のように論点が少ない問題では、十分考えて解答する余裕があるはずです。賃借権の時効取得の理由付けで、「時効中断の機会」というキーワードを覚えているでしょう。これが、「継続的な用益という外形的事実」という要件を要求する根拠でした。外形的に見てわかるような継続的な用益がないと、中断しようと思わないだろ、ということです。そのことからすれば、継続的な用益という外形的事実がなく、時効中断の機会がないにもかかわらず、時効期間が進行を始めるというのはおかしい。こうして、継続的な用益という外形的事実が備わった時点から時効期間を起算すべきだ、ということがわかります。
 時効取得の要件のうち、平穏、公然、善意に関しては、186条1項の適用を考えることになりますが、その際に、少しややこしい話があります。本件土地を使用していることは土地の占有といえますが、実は同時に賃借権の準占有でもあるのです。通常、賃借権は土地の占有そのものであって、準占有を観念する必要はない、と説明されるのですが、本問のように実際には賃借権が存在しないという場合には、賃借権の準占有を観念する必要が生じるのです。そして、所有権の時効取得を考える場合には、186条は直接適用でよいわけですが、賃借権の時効取得を考える場合には、準占有している賃借権の行使について186条を適用することになりますから、一応は205条から準用するという形式になる。これは、点数にはほとんど影響しないでしょうから、無視して構わない話ですが、一応、参考答案で205条を摘示している意味は、そういうことだということです。もう少し細かい話をすると、186条1項が準用される場合、「所有の意思」はその性質上推定の余地がないことは明らかですが、これに代えて、「自己のためにする意思」が推定されるのでしょうか。「自己のためにする意思」は、準用の基礎となる205条の要件とされているから、「自己のためにする意思」がなければ205条の適用の余地がなく、したがって、186条1項の準用によって推定される場面はない、というのが、法形式上は素直な帰結で、参考答案はこれを前提とします。もっとも、準占有の場合における「自己のためにする意思」は、所有権の時効取得における「所有の意思」とパラレルな関係にあることを重視すれば、推定が及ぶと考える余地もあるでしょう。
 それから、現場で若干悩むかもしれないのが、不動産賃借権の時効取得の要件を、どの文言に落とし込むか、ということです。継続的な用益という外形的事実を「行使」に、賃借意思の客観的表現を「自己のためにする意思」に、それぞれ対応させることも、一応は考えられます。しかし、「自己のためにする意思」というのは、163条以外にも、占有・準占有の要件として用いられており(180条、205条)、事実上の利益を自分に帰属させる意思、というように比較的きっちりと定義の定まっている用語(受験上は覚えるほどのものではありませんが)ですから、不動産賃借権の時効取得の場面においてだけ違う意味に読み替えるというのは、適切ではないと思います。また、財産権の「行使」についても、これは準占有の要件としての「行使」と同義に考えるのが素直でしょうから、これも不動産賃借権の時効取得の場面においてだけ違う意味に読み替えるというのは、適切ではないでしょう。

 

(民法163条)

 所有権以外の財産権を自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

(民法180条)

 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。

(民法205条)

 この章の規定は、自己のためにする意思をもって財産権の行使をする場合について準用する。

 

 仮に、継続的な用益という外形的事実がなければ「行使」に当たらず、賃借意思の客観的表現がなければ「自己のためにする意思」がない、ということになれば、賃借権の準占有自体が否定されてしまうということになりかねないでしょう。要するに、163条の「財産権を、自己のためにする意思をもって」、「行使する」の部分は、「財産権を準占有する場合において」という意味を有するにすぎない、ということです。ここで、「自己のためにする意思」と、「所有の意思」を混同しないよう、注意が必要です。間接占有(代理占有)が成立するのは、「自己のためにする意思」には、他人のためにする意思が併存しても構わないとされている(大判昭6・3・31)からですね。そして、この「自己のためにする意思」の有無は占有権原の客観的性質によって定まるので、賃貸借に基づいて引渡しを受ければ、それだけで「自己のためにする意思」があり、占有権が発生する。この場合には、事実上の賃借権行使による利益を自分に帰属させる意思も当然に認められるでしょうから、賃借権の準占有との関係でも、権原の性質上、当然に「自己のためにする意思」が認められることになるのです(205条、185条参照)。

 

最判昭44・9・30より引用。太字強調は筆者。)

 原審の確定したところによれば、上告人らの先代Eは、前叙のとおり、使用貸借契約に基づいて本件土地の使用収益を許されて来たものであるというのであるから、その占有権原の性質上、自己のために賃借権を行使する意思をもつて占有をしたものということができないことは、民法二〇五条・一八五条の規定に徴し、明らかである。それゆえ、同条の定めるところに従つて賃借権を行使する意思をもつてする占有に変更されたのち取得時効に必要な期間を経過した旨の主張がない本件において、賃借権の時効取得を認めなかつた原審の判断は結局正当であり、右判断の違法をいう論旨は採用することができない。

(引用終わり)

 

  以上のようなことから、不動産賃借権の時効取得の要件を、「行使」や「自己のためにする意思」との関係で考えるのは、おすすめできません。そもそも、不動産賃借権が時効取得の対象となるかが論点となるのは、通常の債権が「所有権以外の財産権」に当たらないとされていることから、同じく債権である不動産賃借権もこれに当たらないのではないか、というのが出発点ですし、不動産賃借権の時効取得の要件は、原権利者に時効中断の利益を与える趣旨のもので、「自己のためにする意思」や「行使」の要件が本来担っている機能とは別のものなのですから、「所有権以外の財産権」の文言との関係で検討する方が収まりがよいだろうと思います。参考答案も、そのような整理で書いています。
 なお、設問1では、土地の一部の時効取得という論点が含まれています。本問では論点が少ないので、気付けば書きたいような気もします。ただ、必ずしも基本論点とまではいえないでしょうし、本問では誰もが気付いて書くというわけではないでしょうから、書かないという判断もあり得るでしょう。参考答案では、事実の評価を優先し、この論点は落としています。
 設問2で注意したいのは、2の事実の法律構成です。問題文では、「CとDは,専らCの診療所の患者用駐車場として利用されてきた甲2土地について,以後は専らDの診療所の患者用駐車場として利用することを確認した。」とされています。「合意した」ではなく、わざわざ「確認した」という文言を使っているわけですから、この部分だけを書き写して、当然に「甲2土地についても賃貸借契約が締結されたといえ、転貸に当たる。」などとするのはマズいわけです。参考答案のように、丙賃貸借契約に甲2土地の使用が含まれることを基礎付ける事実を書き写す必要があります。
 
設問2で1と2が対比的に問われていることには、一応ワケがあります。ここでの隠れた問題意識は、一般に転貸に当たらないと理解されている1の事実との均衡です。1の事実については、短答の知識として、誰もが転貸に当たらないと判断したでしょう。しかし、よく考えてみると、不思議な感じもします。土地上の建物を賃貸して使用すれば、必然的に敷地の土地も利用することになるはずだからです。仮に、本件土地が分筆されておらず、1筆の土地だったとしたら。その場合には、敷地の一部を駐車場として使っているからといって、土地の転貸にはならない、という結論になりそうです。このように、「たまたま分筆されていたら転貸になってしまうんですか?」という問いかけが、背後にあるのです。とはいえ、この点については、おそらく誰も触れないでしょうから、正面から書くべきではありません。もっとも、非背信性の当てはめの考慮要素として使う余地はあるでしょう。参考答案では、そのような書き方をしてみました。
 非背信性の当てはめは、本問で最も差が付くところでしょう。ここをあっさり書いて時間を余らせた人は、受かる気がない、と言われても仕方がありません。できる限りの事実を書き写し、評価しましょう。本問では、その時間は十分あったはずです。
 さて、設問3ですが、現在では、多くの人にとって、これは何がなんだかわからない、という感じだったでしょう。まずは、本問の「正解」を説明します。
 Cの賃借権の対抗力(借地借家法10条1項)が問題になることは、明らかです。そして、登記簿上、丙建物の所在する土地の地番が「乙土地の地番及び甲1土地の地番」となっていることから、これが甲2土地にも及ぶのか、が問題になりそうだ、というところまでは、多くの人が気付くでしょう。通常の受験生にとっては、ここから先は未知の領域です。しかし、ここは旧司法試験時代の上位者であれば、択一プロパー知識として覚えていたであろう判例があるところです。

 

最判昭44・10・28より引用、太字強調は筆者。)

 上告人らは、乙地を賃借し、同地上に登記した建物(家屋)を有し、その庭として使用する目的のため本件土地を賃借し、現に本件土地を右目的に従つて使用し、本件土地は乙地上にある建物の便益に供されているのであるが、「建物保護ニ関スル法律」一条は建物の登記をもつて土地賃借権の登記に代用させようとする趣旨であることに鑑みれば、本件土地が乙地と一体として本件建物所有を目的として賃借されているとみるべきか否かについて判断するまでもなく、右法律による乙地に有する上告人らの賃借権の対抗力は本件土地には及ばないと解するのが相当である。

(引用終わり)

最判昭44・12・23より引用、太字強調は筆者。)

 建物保護に関する法律(明治四二年法律第四〇号)一条は、登記した建物をもつて土地賃借権の登記に代用する趣旨のものであるから、第三者が右建物の登記を見た場合に、その建物の登記によつてどの範囲の土地賃借権につき対抗力が生じているかを知りうるものでなければならず、当該建物の登記に敷地の表示として記載されている土地(更正登記の許される範囲においては敷地の適法な表示がされているものと扱うべきこともちろんである。)についてのみ、同条による賃借権の対抗力は生ずると解するを相当とする。したがつて、甲が、乙からその所有の相隣接するa番、b番の土地を建物所有の目的で貸借し、a番の土地の上にのみ登記ある建物を所有するにすぎないときは、法律上の利害の関係を有する第三者に対し、b番の土地の賃借権をもつて対抗することができないといわなければならない。

(引用終わり)

 

 これらの判例知識から、CはEに甲2土地の賃借権を対抗できない、となるかというと、「おっと俺は引っかからないぞ。」というのが、かつての旧試験時代の上位者でしょう。なぜかというと、上記の判例法理は、当初一筆であった土地に賃借権が設定され、その後分筆されるに至った事案には適用がないからです。これは、設問2で説明した、「たまたま分筆されていたら転貸になってしまうんですか?」という問題意識を対抗力の場面で法律論に反映させたものと理解できるでしょう。

 

最判昭30・9・23より引用、太字強調は筆者)

 分筆前の宅地の全部につき借地権、――しかもその宅地の上に、登記ある建物を所有することによつて第三者に対抗し得べき借地権――をもつていた被上告人は、その後分筆された右宅地の一部――右建物の存在しない部分――の所有権を取得した上告人に対しても、右借地権を対抗し得るものとした原判決の判断は正当であつて論旨は理由がない。

(引用終わり)

 

 これだけでは終わりません。「俺は最後まで詰めを怠りませんよ。」と言いながら、「仮に、賃借権の対抗力が甲2土地に及ばないとしても」と書きます。これは、かつての旧司法試験時代には、網羅的に論点を拾うための確立されたテクニックでした。なぜ、本問でこんなことをするかというと、問題文の「Aは,Eに対し,Cの契約違反を理由に本件土地賃貸借契約は解除されており,Cは速やかに丙建物を収去して本件土地を明け渡すことになっている旨の虚偽の説明をした。Eがこの説明を信じたため…」の部分を、Eの明渡請求が権利濫用になるかについての考慮要素とすべきことを、知っているからです。

 

最判平9・7・1より引用。太字強調は筆者。)

 建物の所有を目的として数個の土地につき締結された賃貸借契約の借地権者が、ある土地の上には登記されている建物を所有していなくても、他の土地の上には登記されている建物を所有しており、これらの土地が社会通念上相互に密接に関連する一体として利用されている場合においては、借地権者名義で登記されている建物の存在しない土地の買主の借地権者に対する明渡請求の可否については、双方における土地の利用の必要性ないし土地を利用することができないことによる損失の程度、土地の利用状況に関する買主の認識の有無や買主が明渡請求をするに至った経緯、借地権者が借地権につき対抗要件を具備していなかったことがやむを得ないというべき事情の有無等を考慮すべきであり、これらの事情いかんによっては、これが権利の濫用に当たるとして許されないことがあるものというべきである。
 これを本件について見るに、b番dの土地は、上告会社の経営するガソリンスタンドの給油場所及びその主要な営業用施設の設置場所として、上告会社の本店である本件建物の存在するb番eの土地と共に営業の用に供されていたのであり、これらの土地は社会通念上相互に密接に関連する一体として利用されていたものということができ、仮に上告会社においてb番dの土地を利用することができないこととなれば、ガソリンスタンドの営業の継続が事実上不可能となることは明らかであり、上告会社には同土地を利用する強い必要性がある。その反面、買主である被上告会社には、これらの土地の将来の利用につき、格別に特定された目的が存在するわけではない。そして、被上告会社は、b番dの土地の右のような利用状況は認識しつつも、補助参加人の説明により、上告会社は右各土地を補助参加人との間の使用貸借契約に基づいて占有しているにすぎないと信じ、本件の明渡請求に及んだものである。なるほど、補助参加人は上告会社の監査役であり、弁護士でもある上、上告会社の代表者等と血縁関係にあったというのであるから、被上告会社において補助参加人の上告会社の経営事情に関する発言の内容を信ずることもあり得ないではなかったといえる。しかしながら、営利法人である上告会社が、右各土地上に堅固の建物である本件建物を建築し、既に長期にわたりガソリンスタンドの営業を継続してきていたとの事情に照らし、被上告会社において、補助参加人の説明のみから、上告会社の右各土地の占有権原が権利関係の不安定な使用貸借契約によるものにすぎないと信じ、上告会社がその営業の廃止につながる右各土地の明渡しにも直ちに応ずると考えたのであるとすると、そのことについては、なお、落ち度があったというべきである。他方、上告会社は、b番dの土地には、登記手続の対象にはならない地下の石油貯蔵槽や地上の給油施設のほか、ポンプ室を有していたにすぎず、右ポンプ室の規模等に照らし、上告会社が、これを独立の建物としての価値を有するものとは認めず、登記手続を執らなかったことについては、やむを得ないと見るべき事情があったものということができる。そうすると、上告会社においてb番dの土地をb番eの土地と一体として利用する強度の必要性が存在し、右につき事情の変更が生ずべきことも特段認められない本件においては、被上告会社が右各土地を特に低廉な価格で買い受けたのではないことを考慮しても、なおその上告会社に対するb番dの土地についての明渡請求は、権利の濫用に当たり許されないものというべきである。

(引用終わり)

 

 ここまで書いて、ようやく、「フハハー参ったか!」ということになる。これが、いわゆる「正解」です。
 とはいえ、現代において、このような受験生がいたら、多くの人が「気持ち悪い」と感じるでしょう。その感覚は、正しい。このような人しか受からない司法試験ではいけない、というのが、延々と行われている司法試験改革の出発点でした。
 ここからは、実戦的なテクニック
を説明します。本問における基本知識は、借地借家法10条1項の趣旨です。趣旨は、規範ほどガチガチに覚えておく必要はありません。「登記のある建物の存在」、「借地権の存在を推知」などのキーワードを覚えておき、適当に繋ぎ合わせれば足ります。そして、大事なことは、趣旨から直接結論を出すのではなく、趣旨から規範を導出し、それに当てはめるという形式を踏む、ということです。「規範なんて覚えてないよ。」と思うかもしれませんが、趣旨を繰り返せばいいだけの話です。つまり、「…の趣旨は、○○である。したがって、…に当たるか否かは、○○の観点から判断する。」と書けばよい。「二度同じことを書いても意味ないだろ。」と思うかもしれませんが、こう書くだけで点数が変わるのですから、我慢して書くだけの価値はあるのです。後は、当てはまりそうな事実を書き写す。ここも、「設問2で書いたから、もう書きたくない。」というのではなく、面倒くさがらずに書き写すのがポイントです。それで、時間に余裕がありそうなら、評価も加えておきましょう。なお、ここで背後にある問題意識は、「建物登記をきっかけにしてどの程度の調査をする義務が第三者にあるのか」ということです。前記の判例(最判昭44・10・28最判昭44・12・23)は、建物登記簿の表示を見れば足りるという立場と親和的です。他方、学説は、「現地調査までするのが普通だろ。」と考える。多くの受験生は、後者の立場で教わっているはずです。参考答案も、後者の立場を前提にして書いています。
 このように考える場合、「Aは,Eに対し,Cの契約違反を理由に本件土地賃貸借契約は解除されており,Cは速やかに丙建物を収去して本件土地を明け渡すことになっている旨の虚偽の説明をしたEがこの説明を信じたため…」という事情はどう処理すればよいのかこれは、「建物の存在から借地権を推知できるとはいうけれど、本問のEは解除されたと信じているから丙建物があっても借地権があるとは思わないじゃない。」という事情と考えればよい。直前に説明した調査義務との関係では、本問においてCに対する直接の調査義務まであるか、という整理も可能でしょう。本問は論点の数が少ないですし、設問3は最後の設問ですから、時間に余裕があって時間を余らせるくらいならば、現場で考えて、参考答案のように簡単に処理したいところです。
 なお、上記事情から94条2項類推適用を考えた人は、反省すべきでしょう。不動産取引において94条2項類推適用が問題になるのは、虚偽の公示がある場合です。本問では、丙建物の登記に虚偽はないわけですから、Cの帰責性があるかを考える以前に、94条2項類推適用が問題になる場面ではないと判断すべきです。また、Eへの賃貸人の地位の移転が生じ、Eが解除して賃貸借終了に基づく明渡しを求めることができるのではないか、などと考えた人は、「Eは,Cに対し,本件土地の所有権に基づき,丙建物を収去して本件土地を明け渡すことを求める訴えを提起した。」という問題文の書きぶりから、それはない、と判断すべきです。そのようなことを問うつもりなら、債権的請求もあり得るように、もう少し含みのある表現を選ぶでしょう。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.甲1部分につきAは無権利であるから、考えられるCの反論は、10年の経過による甲1部分についての賃借権の時効取得(163条)である。
 上記反論が認められるためには、時効取得の対象となる「所有権以外の財産権」であること、自己のためにする意思、平穏、公然、善意、無過失、10年の経過の要件が必要である(163条)。

2.一般に、債権は1回的給付を前提とすることから、原則として継続的行使を前提とする時効取得になじまない。もっとも、賃貸借は継続的法律関係であり、不動産賃借権の機能は地上権と同様であることから、不動産賃借権は、時効取得の対象となりうると考えられる。もっとも、原権利者に時効中断の機会を与える必要もある。そこで、不動産賃借権が時効取得の対象となる「所有権以外の財産権」となるためには、継続的な用益という外形的事実が存在し、その用益が賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていることを要する(判例)。
 確かに、本件土地は、平成17年6月1日まで全く利用されておらず、更地のままであったから、その時までは継続的な用益という外形的事実が存在したとはいえない。しかし、同日以降については、本件工事が始まったことによって、Cの継続的な用益という外形的事実が存在したといえる。
 Cは、Aと本件土地賃貸借契約を締結し、Aが指定する銀行口座に賃料を振り込んでいたから、上記用益が賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていたといえる。
 したがって、「所有権以外の財産権」に当たる。

3.Cは、本件土地賃貸借契約に基づき、Aから本件土地の引渡しを受けており、自己のためにする意思がある。また、平穏、公然、善意は推定され(205条、186条1項)、これを覆すに足りる事実はうかがわれないから、上記各要件を充足する。

4.無過失というためには、通常必要とされる調査義務を怠らなかったことを要する。
 Cは、乙土地の登記簿を閲覧した上で、Aと共に本件土地を実地に調査し、本件土地の東側・北側・西側の外周に柵があることを確認し、本件土地の測量を行い、その面積が乙土地の登記簿に記載されている地積とほぼ合致することを確認したから、通常必要とされる調査義務を怠らなかったといえる。したがって、Cは、Aの無権利につき無過失である。

5.継続的な用益という外形的事実を要求した趣旨は、原権利者に時効中断の機会を与える点にあるから、時効期間は上記外形的事実が備わった時から起算すべきである。
 上記2のとおり、上記外形的事実が備わったのは平成17年6月1日であるから、同日から起算すると、Bが提訴した平成27年4月20日現在において、いまだ10年は経過していない。

6.よって、Cの反論は、認められない。

第2.設問2

1.1及び2の事実は、本件土地賃貸借契約の解除原因(612条2項)としての法律上の意義を有するか。

2.1の事実について

 土地賃借人が賃借土地上に所有する建物を第三者に賃貸しても、土地賃借人は建物所有のため自ら土地を使用していることに変わりがないから、賃借土地の転貸には当たらない(判例)。
 1の事実は、本件土地の賃借人であるCが、同土地上に建築して所有する丙建物をDに賃貸したことを示す事実であるから、本件土地の転貸には当たらない。
 したがって、1の事実は、解除原因としての法律上の意義を有しない。

3.2の事実について

(1)Cが平成18年4月1日に診療所を開設した当時から、甲2部分は、患者用駐車場(普通自動車3台分)として利用されていたこと、CとDは、丙賃貸借契約締結の際、専らCの診療所の患者用駐車場として利用されてきた甲2土地について、以後は専らDの診療所の患者用駐車場として利用することを確認したこと、その後、甲2土地は、診療所の患者用駐車場として利用されており、3台の駐車スペースのうち1台は救急患者専用のものとして利用されていることからすれば、丙賃貸借契約の目的物には、付随的に甲2土地も含まれていたと評価できる。したがって、2の事実は、甲2土地の転貸としての法律上の意義を有する。

(2)もっとも、612条2項が無承諾転貸を解除原因とした趣旨は、賃貸借が継続的な法律関係であり、両当事者の信頼関係がその存立の基礎となるところ、無承諾転貸は、一般にその信頼関係を破壊する背信行為となるという点にある。したがって、無承諾転貸がある場合であっても、背信行為と認めるに足らない特段の事由があるときは、解除原因とならない(判例)。
 確かに、丙賃貸借契約の相手方は、同居の親族などではなく、単なる友人であるDであるから、明確に使用の主体は変更している。Cは、友人Dから、勤務医を辞めて開業したいと考えているが、良い物件を知らないかと相談を受け、Dに対し、丙建物を貸すので、そこで診療所を営むことにしてはどうか、と自分の方から提案したものであって、Cは、健康上の理由で廃業を考えていたというにすぎず、Aに相談することなく転貸をしなければならない緊急の必要性があったとも認められない。
 しかし、甲2土地は、従前と同様、診療所の患者用駐車場として利用されており、患者用駐車場(普通自動車3台分)として利用されていたもののうち1台が救急患者専用のものとして利用されるようになったというわずかな変更点を除けば、利用形態に全く変更がなく、患者用駐車場という利用形態は、直接の利用者は来場する患者であって、賃借人が誰であるかによって通常影響を生じない性質のものであること、転貸の対象は、本件土地のうち甲2土地に限られること、甲2土地の使用は、丙賃貸借契約の際にCD間で確認されたにすぎず、両当事者において無承諾転貸に当たる旨の認識が薄かったとも思われること、Aは抗議をしているものの、Dの使用による支障について具体的に述べておらず、客観的にもAに何らかの不利益が生じると認めるに足りる事実はうかがわれないこと、仮に本件土地が一筆の土地であったとすれば、前記2と同様の理由で、敷地について転貸があるとはいえないと考えられることなどからすれば、背信行為と認めるに足らない特段の事由がある。

(3)以上から、2の事実は、解除原因としての法律上の意義を有しない。

4.よって、Aは、本件土地賃貸借契約を解除することはできない。

第3.設問3

1.考えられるCの反論は、本件土地について、Cは賃借権を有し、これをEに対抗することができる、というものである。

2.Eに対する賃借権の対抗力の根拠は、Cが、本件土地上に所有権保存登記のされた丙建物を所有していることにある(借地借家法10条1項)。

3.もっとも、Eの提訴当時、登記簿上の丙建物の所在する土地の地番は、「乙土地の地番及び甲1土地の地番」とされていることから、その対抗力は甲2土地には及ばないのではないか。
 借地借家法10条1項の趣旨は、登記された建物の存在によって借地権の存在を推知しうるという点にある。したがって、同項の対抗力が及ぶか否かは、その建物の存在によって借地権の存在を推知しうるかという観点から判断する。

4.Eの提訴当時、Dは、丙建物で診療所を営んでおり、丙建物の出入りは専ら甲1土地上にある出入口で行われていたものの、甲2土地は、診療所の患者用駐車場として利用されており、3台の駐車スペースのうち1台は救急患者専用のものとして利用されていたから、丙建物の存在を知った者は、丙建物の直接の敷地のみならず、それと一体として利用されている甲2土地についても、借地権が設定されているのではないかと考えるのが自然である。
 したがって、丙建物の存在から、甲2土地の借地権の存在を推知できるといえる。
 確かに、Aは、Eに対し、Cの契約違反を理由に本件土地賃貸借契約は解除されており、Cは速やかに丙建物を収去して本件土地を明け渡すことになっている旨の虚偽の説明をし、Eがこの説明を信じたという事情がある。この事情は、Eとしては、丙建物が存在しても、借地権は存在しないと考えるであろうという事情と評価できる。しかし、対抗力の有無は建物と土地の外観上の関係から客観的に判断すべきであるから、少なくともEがCに対する確認すらしていない本件においては、この事情は上記の判断を左右しない。

5.以上から、借地借家法10条1項の対抗力は、本件土地全体に及ぶ。

6.よって、Cの反論は、認められる。

以上

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