2017年06月18日

平成29年予備試験短答式試験の結果について(2)

1.以下は、直近5年の科目別平均点の推移です。一般教養だけは60点満点ですから、比較のため、括弧内に30点満点に換算した数字を記載しました。


平成
25年
平成
26年
平成
27年
平成
28年
平成
29年
憲法 16.5 17.8 17.3 17.6 16.7
行政 14.2 12.7 15.6 14.8 12.4
民法 19.7 17.7 16.9 16.3 16.3
商法 12.1 15.0 13.7 12.0 14.3
民訴 17.0 16.2 14.7 15.6 13.1
刑法 17.0 14.1 16.9 17.5 17.3
刑訴 17.9 12.4 15.5 16.5 15.3
教養 25.2
(12.6)
31.5
(15.75)
28.1
(14.05)
24.3
(12.15)
24.5
(12.25)
合計 139.5 137.3 138.7 134.6 130.0

 まず、全体の平均点をみると、昨年より4.6点下がって、130.0点となりました。これは、これまでの最低平均点であった平成23年の130.7点をさらに下回るものです。問題の難易度という意味では、明らかに難化しています。
 司法試験の短答式試験でも、全体の平均点は下がっていました(「平成29年司法試験短答式試験の結果について(2)」)。そのため、真面目に分析をしていないと、「司法試験でも平均点が下がっていましたよね。短答では予備と司法は共通問題が多いので、そのせいで予備も平均点が下がったんですよ。」などという説明をしてしまいがちです。
 しかし、科目別の平均点を昨年と比較してみると、司法試験との共通問題がある憲民刑の3科目については、憲法がやや下がっていますが、民法、刑法はほとんど変わっていないことがわかります。司法試験の方は、憲民刑のいずれも平均点が下がっていた(「平成29年司法試験短答式試験の結果について(3)」)わけですから、「司法試験と共通の問題が難しかったので、予備も平均点が下がった。」という説明はできないのです。
 では、全体平均点を押し下げた原因となった科目はどれなのか。そのような目で見てみると、行政法、民訴法及び刑訴法だったことがわかります。特に、行政法と民訴法は、それぞれ2.4点、2.5点と、大きな下落となっています。このように、予備試験の短答式試験の平均点の下落の原因は、司法試験とは別のところにあり、それは行政法、民訴法及び刑訴法、とりわけ行政法及び民訴法の難化によるところが大きい、というのが、正しい説明です。

2.昨年との比較では目立ちませんが、一般教養の平均点の低さにも、注意が必要でしょう。一般教養は、昨年難化し、今年もその傾向を引き継いでいます。このことも、全体の平均点の低さの一因となっています。
 一般教養とそれ以外の法律科目との関係は、短答の学習戦略を考える上で、重要なポイントとなります。以下は、一般教養でどのくらいの得点を取ると、短答合格のために法律科目で1科目当たり何点を取る必要があるか、ということをまとめたものです。

一般教養
の得点
法律科目
1科目当たりの
得点
54点
(9割)
(今年の最高得点)
15.1点
48点
(8割)
16.0点
42点
(7割)
16.8点
36点
(6割)
17.7点
30点
(5割)
18.5点
24.5点
(今年の平均点)
19.3点
12点
(実質零点)
21.1点

 今年の一般教養トップは、54点でした。ちょうど満点の9割に相当します。一般教養でこれだけ取れると、法律科目は5割程度でも合格できます。ただ、このような受かり方は推奨できません。そもそも一般教養で9割取ることが難しい、というだけでなく、合格した後の司法試験で苦しむことになりやすいからです。
 逆に、一般教養が12点で、法律科目を7割(21点)以上取って合格というのは、十分にあり得る戦略だと思います。一般教養はすべて5択ですから、デタラメに選んでも大体2割は取れてしまう。12点を、「実質零点」と表現しているのは、そのためです。つまり、これは一般教養を完全に捨てる戦略といえます。その上で、法律科目はガチガチに固めて7割以上を取る。これは、簡単とは言いませんが、決して不可能ではないことです。予備の段階で短答の知識をガチガチに固めておけば、その後の司法試験の学習が非常に楽になります。「司法試験は憲民刑以外の科目に短答がないのに、そこまでする意味があるの?」と思うかもしれませんが、短答の知識があると、論文の事例分析を速く、正確に行うことができるようになります。一般教養は、範囲が広すぎて対策を取ろうと思っても難しいということを考えると、中途半端な一般教養対策をするくらいなら、「法律科目7~8割」を目指す方が、予備の短答対策としては得策だろうと思います。予備の場合は、短答と論文の間に2か月程度の余裕があることも、この戦略を採りやすくしています。短答まではひたすら短答知識を詰め込んで、短答終了後にすばやく規範の詰め込みと答案の速書きの練習に切り替えれば、何とか間に合うだけの時間的余裕があるというわけです。
 もっとも、実際には、一般教養の対策を何もしていなくても、大学入試時代の知識や、たまたま知っている英語や時事的な知識等で解ける問題、それから、毎年2問程度出題される論理問題(今年は第10問、第11問)を拾っていけば、30点くらいは取れることが多いでしょう。一般教養で30点を確保できれば、法律科目は6割強を取れば合格できます。とはいえ、それでも6割強は必要ですし、昨年、今年と一般教養は点を取りにくい傾向が続いていますから、やはり、法律科目で安定して7割以上を取れる実力は付けておく必要があるといえるでしょう。その意味でも、「法律科目7~8割」は、予備短答における王道の目標といえるのです。

3.「法律科目7~8割」を目指すためには、何をすればいいか。当サイトは、肢別問題集を解く、ということで、議論の余地はないと考えています。短答は、過去問で問われた知識が繰り返し問われるのが特徴です。ですから、まずは過去問ベースの肢別問題集を解く。市販されているものとしては、「肢別本」と「考える肢」のシリーズがあります。どちらでもよいとは思いますが、解説の体裁や参考文献の挙げ方などが違いますので、自分の好みにあったものを選ぶとよいでしょう。
 肢別問題集を解く際には、単に正誤を答えられる、というだけでなく、それが判例なのか、条文なのか、学説なのか、誤っている肢は、正しくはどのような内容となるか、そういったことまで、答えられるようにすることが必要です。そこまで答えられて、初めて「正解」したといえます。目標は、全肢3回連続正解ですが、予備段階だと、時間的にそこまで詰めるのは難しいかもしれません。予備の場合は、短答と論文の間にブランクがありますので、短答当日までにできる限り詰める、という感覚でよいのだろうと思います。そして、短答終了直後に一気に論文に切り替える。予備の短答は法律科目7科目が対象となっているので、事例処理に必要な知識はそれほど問題ないはずです。なので、論文対策は、主として規範の記憶と時間内に答案を書き切る訓練に特化して行うことになる。これは、短答と論文の間の2か月でギリギリやれるだろうと思います。
 短答はひたすら肢別問題集をやればいい、という当サイトの立場に対しては、批判的な意見も案外あるものです。例えば、「肢別問題集だけでは網羅性がないので基本書やテキストを読むべきだ。」という考え方もあるでしょう。しかし、これはなぜ肢別問題集が有効か、ということを理解できていません。短答は、過去問で出た知識が繰り返し出題されます。「過去に出た知識はもう出ないのではないか。」と思う人もいるかもしれませんが、そうではないのです。過去問ベースの肢別問題集は、過去問で出た肢をダイレクトに習得できるので、効率がよいのです。つまり、「過去問で出たところに特化し、網羅性がないこと」こそが、過去問ベースの肢別問題集の長所なのですね。基本書やテキストを読む勉強法だと、短答で繰り返し出題されている部分がどこなのか、わからないまま漫然と学習することになりやすい。「基本書やテキストに過去問で出題された部分をマーカーしておき、それを見直すという勉強法ならいいはずだ。」と言う人もいるかもしれませんが、過去問で出題されたものを確認してマーカーを引く時間があれば、既に過去問ベースで肢別に整理された問題集を解いた方がよいでしょう。また、知識はただ眺めているだけでは、頭に入ってきません。肢単位で正誤を考えるという作業をして初めて、うっかりしやすいポイントなどがわかるのです。基本書やテキストは、肢別問題集を解く前のざっくりした知識の確認や、間違った肢の知識の確認に使う程度にした方がよいと思います。ただ、憲法判例に関しては、過去問ベースの肢別問題集だけでは少し足りないかもしれません。司法試験の場合は、当サイトでも論文の学習も兼ねて判例の原文を読むことを推奨しています(「平成29年司法試験短答式試験の結果について(2)」)。ただ、予備の場合は、短答と論文の試験日にブランクがあり、短答と論文の学習期間が分離しやすいので、短答学習段階でじっくり判例原文を読む時間的余裕は、あまりないように思います。間違えた判例問題の肢を確認する際に、原文も確認してみる、という程度でもやむを得ないかな、という印象です。
 また、「過去問を解けばいいから、肢別問題集は不要である。」という意見もあるでしょう。過去問を解くのは、基本書やテキストで勉強するよりは効率的です。しかし、設問ごとの正解・不正解ということになるので、肢ごとの緻密な知識のチェックがやりにくいのです。「それぞれの肢ごとにきちんと記録を残していけば、過去問を解く方法でもいいはずだ。」という意見もあるでしょうが、それなら最初から肢ごとに整理されたものを使った方が速いでしょう。なお、時間を測って本試験と同じ時間内に解く、という訓練は、予備校の模擬試験を何回か受ける程度で十分だろうと思います。現在の短答では複雑な論理問題は出題されないので、試験時間全体を設問の数で割った1問当たりの時間を把握しておけば、それほど時間配分で困ることはないからです。
 「肢別本は過去問ベースだから、それだけでは足りない。」という意見もあるでしょう。これは、過去問ベースの肢別問題集をマスターした上で、より確実に上位の得点を取りたい人にとっては、ある程度正しい意見かもしれません。過去問ベースの肢別問題集を3回連続正解して、まだやり足りない。そのような人は、伊藤塾のオリジナル問題ベースの肢別問題集や、予備校の模擬試験を受験した際の問題と解説をノートに切り貼りするなどして肢別に整理したものを、さらに詰めるとよいでしょう。ただし、これは過去問ベースの肢別問題集をマスターした後の話です。前に説明したように、短答は過去問で問われた知識が繰り返し問われるので、過去問ベース以外のものは、効率が落ちるからです。また、予備試験では、司法試験とは違って、短答、論文が総合評価されるのではなく、独立に合否が決まるわけですから、そこまでして短答で上位を取る必要があるのか、ということも、短答・論文の学習時間の配分という観点から考えてみる必要はあると思います。
 そして、非常に多いのが、「肢別問題集のような安易な方法で力が付くはずがない。もっと本質を理解する勉強をするべきだ。」というもので、大学教授やローの教官だけでなく、予備校の講師でも、このようなことを言う人はいるようです。これは、具体的な根拠を欠く主張であって、考慮するに値しないことは明らかなのですが、意外とこのような言説に惑わされる受験生が多いことも事実です。このような言説に出会ったなら、その人が短答の出題形式や出題傾向をどの程度踏まえているか、その人の推奨する勉強法で得点が取れるメカニズムはどのようなものか、それは現実味があるか、というようなことを、考えてみるとよいでしょう。短答試験の肢は、本質に遡って考えると、○とも×ともいえる、というものが結構あります。本質に遡って一生懸命考える人は、○×を判断できず、無駄に迷うことになる。このような場合、「この肢は過去問で誤りの肢として出題されていたのだから、×だよね。」と素早く判断できる方が、はるかに楽に受かります。たとえ本質を理解していても、○×を短時間で正確に判断できなければ、短答には合格できない、ということを、肝に銘じておくべきでしょう。

4.予備試験の短答式試験は、法律科目だけでも7科目あります。肢別問題集を解きまくるという勉強法に特化したとしても、膨大な時間がかかります。ですから、できる限り、早い段階で着手する必要がある。来年の予備試験の受験を考えているのなら、今から着手しなければ間に合いません。短答は、時間を掛ければ、素直に得点に結び付きます。その時間をいかに確保するか、毎日の生活の中で、上手に時間を作っていけるかどうかということも、合否を分ける1つのポイントになるでしょう。

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2017年06月16日

平成29年予備試験短答式試験の結果について(1)

1.平成29年予備試験短答式試験の結果が公表されました。合格点は160点合格者数は2299人受験者合格率は21.3%でした。

2.以下は、合格点、合格者数等の推移です。

受験者数 短答
合格者数
短答
合格率
短答
合格点
23 6477 1339 20.6% 165
24 7183 1711 23.8% 165
25 9224 2017 21.8% 170
26 10347 2018 19.5% 170
27 10334 2294 22.1% 170
28 10442 2426 23.2% 165
29 10743 2299 21.3% 160

 昨年まで、短答合格者数は一貫して増加していました。それが、今年は一転して減少に転じています。これをもって、「法務省は、これまで予備試験合格者の増加を許してきたが、法科大学院の定員削減に応じて、今年から予備試験合格者を減らそうとしているのだ。」という説明をする人が出てきそうです。本当にそのようなことが言えるのでしょうか。

3.平成25年以降、予備試験の短答式試験の合格点は、すべてあるルールによって説明できました。それは、「5点刻みで、最初に2000人を超えた得点が合格点となる。」というルールです。当サイトでは、これを「2000人基準」と呼んできました(「平成28年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。昨年まで一貫して短答合格者数が増加しているのは、実はこの「2000人基準」を適用した結果、偶然生じた現象です。今年も、このルールどおりに合格点が決まっているのか。確認してみましょう。以下は、法務省の得点別人員から、合格点前後の人員をまとめたものです。

得点 人員 累計
人員
165 78 1832
164 94 1926
163 95 2021
162 101 2122
161 104 2226
160 73 2299

 昨年の合格点だった165点の累計人員をみると、1832人で、2000人を超えていません。そして、5点刻みで次の160点の累計人員をみると、2299人で、初めて2000人を超えます。この160点が、合格点になっている。このことから、今年も、「5点刻みで、最初に2000人を超えた得点が合格点となる。」という「2000人基準」によって、合格点が決定された、ということができます。
 それにしても、昨年と比べて、合格者数は127人も減少しています。どうして、こうなったのか。昨年の合格点前後の人員をみると、これが単なる偶然であったことがわかります。

平成28年
得点 人員 累計
人員
170 86 1997
169 91 2088
168 79 2167
167 97 2264
166 79 2343
165 83 2426

 昨年は、170点の累計人員が1997人と、限りなく2000人に近かった。そのため、初めて2000人を超える得点である165点の累計人員が、通常よりもかなり多めになってしまったのです(このような場合でも律儀に「2000人基準」を適用しているところから、これが内部基準的なものとなっていることを感じさせます。)。このように、昨年が特殊だったのです。今年はむしろ、「2000人基準」を適用した場合の通常の合格者数に戻ったというべきでしょう。

4.現在のところ、予備試験の論文式試験における合格点は、以下の2つの基準によって説明できます(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。

(1)210点に累計で400人以上存在しない場合は、210点が合格点となる。
(2)210点に累計で400人以上存在する場合は、5点刻みで初めて400人を超える点数が合格点となる(「400人基準」)。

 これによれば、210点以上を取る人が何人いるかが重要になります。 平成27年及び平成28年は、いずれも210点の累計人員が400人を超えていました。その背景には、従来の経験則からは説明の難しい平均点の上昇がありました(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(2)」)。このことからすれば、平均点の急激な下落が生じない限り、今年も、210点の累計人員は400人を超えるであろうと予測できます。そうすると、平成27年及び平成28年と同様、今年も上記(2)の「400人基準」が適用されることになるでしょう。したがって、論文の合格者数も、平成27年及び平成28年と同様、400人強の数字となるだろう、というのが、当サイトの予測です。 

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2017年06月14日

平成29年司法試験短答式試験の結果について(4)

1.司法試験の合否は、短答と論文の総合評価によって決まります。今回は、短答でどのくらいの点数を取ると、論文でどのくらい有利になるのか、すなわち、短答の論文に対する寄与度をみていきます。
 総合評価の計算式は、以下のとおりです(「司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について」)。

 総合評価の得点=短答式試験の得点+(論文式試験の得点×1400÷800)

 これを見るとわかるとおり、短答の得点は、そのまま総合得点に加算されますが、論文は、800分の1400、すなわち、1.75倍になって総合得点に加算されます。したがって、論文の1点は、総合評価では、短答の1.75点に相当するわけです。
 総合評価に占める比重という点からいうと、短答は175点満点がそのまま総合評価の加算対象となるのに対し、論文は、論文段階では800点満点だったものが、総合評価では1400点満点となるために、総合評価段階での短答:論文の比重は、1:8となります。論文は、憲法、行政法、民法、商法、民訴法、刑法、刑訴法、選択科目の8科目。1:8という比重からすると、短答は9個目の科目である、という位置付けも可能でしょう。無視できるほど小さくはないけれども、選択科目と同じくらいと考えると、あまり過大視もできない、という感じです。その意味では、「短答の勉強と論文の勉強」というように、短答と論文を対等に位置付けるのは、やや短答を過大視しているといえるでしょう。もっとも、「選択科目と同じ比重なんだから、選択科目と同じくらいの勉強量でいいや。」などと言っていると、短答段階で不合格になってしまいかねません。この辺りが、短答の学習計画を考える際の難しさといえます。
 とはいえ、上記の比重を考えると、少なくとも短答の合格ラインを安定して超えるレベルになって以降は、積極的に短答の学習をするメリットは薄そうだ、ということが感じ取れます。

2.短答と論文の比重という点では、短答の寄与度は低そうだ、という印象でした。ただ、短答は、論文と違って、高得点を取りやすいシステムになっています。このことを考慮して、もう少し具体的に考えてみましょう。
 論文で、満点の75%といえば、優秀の水準を意味します。これは、現実には取ることが極めて難しい点数です。これに対し、短答における満点の75%(概ね131点)とは、今年の順位にすると1256位に相当します。これは、それなりに短答に自信のある人なら、普通に取れる点数です。また、論文には得点調整(採点格差調整)があります。これによって、強制的に、標準偏差が各科目の配点率(現在は10に設定されている。)に抑えられてしまいます。短答には、このような抑制機能を有する得点調整のようなシステムはありません。このように、短答は、論文よりも稼ぎやすいといえるのです。
 ただし、短答で高得点を取っても、単純に総合評価でそれだけ有利になる、というわけではないことに注意が必要です。短答合格点未満の点数の人は、総合評価段階では存在し得ないからです。今年で言えば、108点未満の人は、そもそも総合評価の段階では存在しない。ですから、例えば、短答で150点を取ったとしても、総合評価で150点有利になるわけではないのです。有利になるのは、最大でも、150-108=42点だけです。しかも、それは短答ギリギリ合格の人と比べて、という話です。今年の短答合格者平均点である125.4点の人と比べると、150点を取っても、150-125.4=24.6点しか有利になりません。 しかも、総合評価の段階で、論文の得点は1.75倍になりますから、短答の得点を論文の得点に換算する場合には、1.75で割り算することになります。そうすると、短答における24.6点というのは、論文の得点に換算すると、おおよそ14点程度ということになる。このように、短答は点を取りやすいとはいっても、それが論文に寄与する程度は、限定的なものになってしまうのです。

3.実際の数字でみてみましょう。短答でどのくらいの水準の得点を取れば、短答ギリギリ合格の人(108点)や、短答合格者平均点の人(125.4点)に対して、論文で何点分有利になるのか。以下の表は、これをまとめたものです。

短答の
水準
得点 最下位
(108点)
との論文での差
短答合格者平均
(125.4点)
との論文での差
トップ 163 31.4点 21.4点
100番 148 22.8点 12.9点
500番 139 17.7点 7.7点
1000番 133 14.2点 4.3点
合格者平均
(1960番)
125.4点 9.9点 ---

 短答でトップを取ると、短答ギリギリ合格の人に、論文で31.4点のアドバンテージを取ることができます。これが、短答で付けることのできる最大のアドバンテージです。これは、どのくらい大きいのか。設問が3つある場合には、おおよそ設問1個分に当たります。また、論文は8科目ですから、31.4を8で割ると、31.4÷8≒3.9点。1科目当たり、3.9点有利になる、という感じです。トップを取って、しかも、短答最下位の人と比べても、この程度しか論文で有利にはならない、ということです。
 現実に、上位を狙って勉強をして、それなりに安定して取ることができそうなのは、500番くらいだろうと思います。しかも、そのような上位を狙える人は、論文で短答最下位の人と合否を争うことは考えにくい。このように考えてみると、現実的に短答を勉強するメリットを考える場合に考慮すべきなのは、500番と短答合格者の平均との差ということになると思います。これは、たったの7.7点です。論文8科目で割り算をすると、1点にも満たない程度の差でしかありません。これが、現実的な短答における論文の寄与度なのです。

4.このように、短答の寄与度は、それほど大きくありません。ですから、「短答でぶっちぎりの得点を取って、逃げ切る。」などという戦略は、あり得ないのです。とはいえ、短答を軽視していいかといえば、そうでもない。その理由は2つあります。
 1つは、憲民刑3科目になってからの短答は、油断すると簡単に不合格になる、ということです。確実に短答をクリアするには、実際にはかなりの時間を投入する必要がある。上記の総合評価における寄与度は、あくまで短答に確実に受かることが前提だということを、忘れてはいけません。
 それからもう1つは、短答の知識が、論文を書く際の前提知識となる、ということです。短答レベルの知識があやふやな状態では、論文の事例を検討していても、正しく論点を抽出することができません。ですから、短答合格レベルに達するまでは、短答の学習を優先することに意味があるのです。
 以上のことからいえることは、「短答に確実に合格できる水準までは、短答の学習を優先すべきである。」ということと、「短答に確実に合格できる水準になったならば、短答は現状の実力を維持する程度の学習にとどめ、論文の学習に集中すべきである。」ということです。この優先順位に従って学習をするためには、できる限り早く短答の学習に着手する必要があります。短答の学習に着手する時期が遅いと、短答合格レベルに達する前に、論文の学習に着手せざるを得なくなってしまいます。そうなると、どちらも中途半端なまま、本試験に突入してしまう、ということになりやすい。短答の学習は、未修者であればローに入学してすぐに着手する。既修者であれば、法学部在学中にも、着手しておくべきでしょう。今年、短答で不合格になった人は、今すぐ着手しなければ、来年までに間に合いません。短答の知識は、定着させるまでにかなり時間がかかるものの、一度定着するとなかなか忘れない、というのが特徴です。今年の予備組の短答受験者合格率は、98.2%です。このことは、一度実力を付ければ、短答は安定して結果が出せることを示しています。
 短答合格レベルに達するまでに必要な膨大な勉強量を確保し、やり抜く
。これは、司法試験に合格するための前提となる第一関門なのです。これをクリアした先にあるのが、「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則のある恐怖の論文です。どんなに勉強量を増やしても、受かりにくい人は成績が全く伸びない。この論文の壁に苦しんでいる人にとっては、勉強量さえ確保できればクリアできる短答は、とても楽な試験だと感じられることでしょう。しかし、その勉強量の確保さえできない人も、実際にはかなりいるのです。

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福岡地裁 金塊密輸 被告に猶予判決 検察の没収は認めず
実務家に必要な刑事訴訟法ー入門編
AIがリアルに弁護士や金融マンや地方の人々の仕事を奪い始めた
法科大学院細る九州 志願者減止まらず6校が2校に 合格上位校に流出も 九大、福大、生き残りへ知恵絞る
司法試験&予備試験 短答過去問題集(法律科目) 平成30年度
司法試験委員会 第140回会議(平成30年6月6日)
法制審議会民事執行法部会第15回会議議事録等
司法試験予備試験 短答過去問詳解〈平成30年単年版〉
長崎県と佐賀県の利害衝突から道州制を考える
(社説)取り調べ録画 原点に立ち戻る運用を
録画で立証「劇場型裁判」に警鐘 検察の手法に影響も
司法書士白書 2018年版
【東京】≪司法試験受験者対象≫企業への就職を希望する方向け個別就職相談会
【名古屋】≪司法試験受験者対象≫合格発表前に今後のキャリアを考える個別就職相談会
ジュリスト 2018年 08 月号
【大阪】≪司法試験受験者対象≫択一試験合格発表後のスタートダッシュ!個別相談会
【シゴトを知ろう】米国弁護士 編
法学教室 2018年 08 月号
パフォーマンスを引き出すための「5つのバランス」
初の司法取引 企業の免責には疑問が残る
受験新報 2018年 09 月号
電通違法残業事件、上司の不起訴相当 検察審査会が議決
まつりさん上司の電通元部長は「不起訴相当」 検察審
大コンメンタール刑法 第13巻 第3版 第246条~第264
稲田伸夫さん=第30代検事総長に就任した
最高裁判決で「同一労働同一賃金」実現か
刑罰権の淵源
オウム真理教元幹部、死刑囚13人全員の刑執行
「死刑執行強く支持」犯罪被害者支援弁護士らが声明
警察官のための刑法講義〔第ニ版〕
「麻原彰晃が更に道連れにしていった」滝本太郎弁護士、オウム元幹部6人の死刑執行で心境明かす
空調や扇風機無し、室温30度超で熱中症続出 京都拘置所
工藤北斗の実況論文講義 刑法
手当や休暇、正社員と格差…日本郵便 控訴審開始 大阪高裁
岡口裁判官の懲戒申し立て=ツイッター不適切投稿-東京高裁
よくわかる刑法[第3版] (やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)
ツイート判事、分限裁判へ…東京高裁が懲戒求め
海賊版サイト対策…福井弁護士「苦しい判断しなくてすむように」、対立解消訴え
刑事政策 第2版
現行法の限界? 福井「400匹の犬猫工場」不起訴 「動物虐待罪、もっと明確化を」
長引く対立、にじむ疲弊 普天間移設、先行き見えず
対立、一段の泥沼化も 辺野古埋め立て承認の撤回表明 
警察政策 第20巻(2018)
英最高裁、「愛のない夫婦」の離婚認めず 厳しい破綻証明が壁
韓国最高裁「判事13人で審理」 新日鉄の徴用工裁判で
企業犯罪と刑事コンプライアンス
諫干請求異議訴訟 制裁金の返還要求も 30日控訴審判決
平成30年司法試験予備試験論文式試験問題
体験型プログラム~法科大学院生対象~(法務省)
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
問題演習 基本七法
弁護士・菊間千乃さん 父の「おまえはすごい」力に
NHK受信料に20年の時効なし 最高裁が初判断
民事訴訟法 第3版 (LEGAL QUEST)
砂川事件 「再審せず」確定 最高裁が特別抗告を棄却
砂川事件の再審認めず 最高裁、特別抗告を棄却
民事紛争解決の基本実務
参院「定数6増」より筋の悪い「特定枠」の正体
参議院「定数6増」はいくらなんでも酷すぎる
日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成29年度研修版>
タイ汚職 初の司法取引、法人免責 元取締役ら在宅起訴
社員と協力して上層部摘発のはずが… 初の司法取引、想定と正反対で疑問視も
民事訴訟法辞典
 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案
民事執行法の改正に関する中間試案(平成29年9月8日)
民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

刑事訴訟法等の一部を改正する法律について
法曹養成制度関係閣僚会議
法曹養成制度改革の推進について(PDF)
法曹養成制度改革推進会議
法曹養成制度改革顧問会議
平成30年司法試験予備試験の実施について
平成30年司法試験の実施について
司法試験考査委員の不適切行為に関する通報窓口

  【司法研修所教材・講義案・調査官解説等】
事件記録教材 法科大学院教材
調査官解説
事例で考える民事事実認定
プラクティス刑事裁判
プロシーディングス刑事裁判
検察講義案 平成24年版
新問題研究要件事実
紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造 改訂
刑事第一審公判手続の概要
刑事判決書起案の手引
民事判決起案の手引
民事訴訟第一審手続の解説
情況証拠の観点から見た事実認定
民事訴訟における要件事実 第2巻
民事訴訟における要件事実 増補 第1巻
書記官研修講義案等