2017年04月25日

平成29年予備試験の出願者数について

1.法務省から、平成29年司法試験予備試験の出願者数が公表されました。13178人でした。以下は、年別の予備試験の出願者数の推移です。


(平成)
出願者数 前年比
23 8971 ---
24 9118 +147
25 11255 +2137
26 12622 +1367
27 12543 -79
28 12767 +224
29 13178 +411

 平成25年、平成26年と急激に増加した出願者数は、平成27年にいったん頭打ちとなり、これからは減少傾向に転じるのではないかとも思われました。ところが、平成28年は微増今年も、微増の継続といった感じではありますが、やや増加幅を拡大させてきています。このような数字の推移をみると、また出願者数は増加傾向になるのかな、という印象も受けます。平成26年から平成28年までは1万2千人台で推移していたものが、今年は1万3千人台に入ってきたというのも、そのような印象を強くさせます。しかし、本当にそうなのでしょうか。

2.予備試験の出願者数が増えたのはなぜか。その原因を考えてみましょう。法曹になりたいと思った人には、法科大学院に入学するか、予備試験を受験するか、という選択肢があります。このことを大雑把に数式化すると、以下のような関係があることになります。

 法曹志願者総数=予備試験出願者数+法科大学院入学者数

 ただし、法科大学院に入学しても、在学中に予備試験を受ける人がいますから、それを考慮すると、

 法曹志願者総数=予備試験出願者数+(法科大学院入学者数-法科大学院在学中予備試験出願者数)

という関係が成り立つでしょう。これを変形すると、

 予備試験出願者数=法曹志願者総数-(法科大学院入学者数-法科大学院在学中予備試験出願者数)
 予備試験出願者数=法曹志願者総数-法科大学院入学者数+法科大学院在学中予備試験出願者数

という関係が成り立つことがわかります。

(1)まず、法科大学院入学者数に着目してみます。法曹志願者総数が一定で、法科大学院に入学する人が増えると、予備試験出願者数は減少し、逆に法科大学院に入学する人が減ると、予備試験出願者数が増えるという関係にある。そこで、法科大学院入学者数を確認してみましょう。以下は、平成20年以降の法科大学院の実入学人員の推移です(「各法科大学院の入学定員及び実入学者数の推移」参照)。

年度
(平成)
実入学者数 前年比
20 5397 ---
21 4844 -553
22 4122 -722
23 3620 -502
24 3150 -470
25 2698 -452
26 2272 -426
27 2201 -71
28 1857 -344

 上記の入学者数の推移と、予備試験の出願者数が対応しているか、という目で見てみます。法科大学院の入学者数は、平成26年まで、一貫して下がり続けています。これに対して、予備試験出願者数は、平成25年、平成26年に大幅に増加していますが、平成24年はそれほど増加していない。これは、予備試験ルートの認知度が影響しています。予備試験が始まったのは平成23年ですが、当時の合格者数は116人にとどまっていました。そのため、当時はまだ、予備試験ルートを真剣に検討する人は、少なかったのです。それが、平成24年に合格者が219人とほぼ倍増したことから、「予備合格者は今後どんどん増える。予備ルートの方が近道だ。」と言われだした。そのために、平成25年から、どっと予備試験受験者が増えたのでした。このような経緯を踏まえると、平成25年、平成26年に、それまでの法科大学院入学者数の減少分を一気に吸収した結果が、予備試験の出願者数の推移に表れているとみることができるでしょう。法曹志願者のうち、法科大学院への入学を躊躇していた人が、予備にどっと流れたのが、この時期だったといえます。
 そのような流れが一時的に止まったのが、平成27年でした。この年は、法科大学院の実入学者数の減少が、わずかにとどまっています。これは、予備試験の出願者数が平成27年に一時的に減少に転じたことと符合しています。
 平成28年になると、法科大学院の実入学者数の減少幅が、また拡大しました。予備の出願者数が増加に転じたことは、これと符合しています。
 以上のように、法科大学院の実入学者数の増減と、予備試験の出願者数は、ある程度対応して変動していることがわかります。それでは、今後はどうなるのか。今後の法科大学院の実入学者数を考えるに当たっては、文科省が入学定員の削減から志願者数の確保に方針を転換したことが重要です。

 

法科大学院特別委員会(第75回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

塩田専門職大学院室長「法曹人口の1,500人といったような数字を踏まえまして,当面,目指すべき法科大学院の定員規模を2,500人としたということでございまして,その2,500という数字を達成するために,加算プログラムを29年度以降も継続して実施するというような趣旨を書いているものでございます。…平成29年の予定ということでございますけれども…六大学が定員の見直しを行うということを予定されていて,募集停止となる2大学がございます。その定員分を含めまして…来年度は2,566人になる見込みということでございます。ということで,先ほど御説明しましたように,目標値として2,500人程度ということを掲げておりますので,数字がほぼ達成されるというような状況になってございます。
   加算プログラムにつきましては,自主的な組織見直しの促進ということと,各法科大学院における優れた取組を支援すると,こういったような目的で実施しておるわけでございますけれども,目標値である2,500人という数字が達成されるということでございますと,今後,基礎学の指標の取り方を含めまして何らかの修正を加える必要があるのかなとは認識してございます。」

(引用終わり)

(「「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム」の見直しについて 」より引用。太字強調は筆者。)

 入学定員の目標がほぼ達成され、今後は入学定員の適正化に代わって志願者数の確保が重要な課題となることから、定員充足率については指標から削除する。一方、入学者数が10名を下回る場合は、教育組織として規模が小さくなり過ぎているなど、法科大学院としてふさわしい教育環境の確保への影響が懸念されることから、3年連続で入学者数が10名未満となった場合は減点する。

(引用終わり)

 

 このことから、そろそろ実入学者数も下げ止まりそうだが、定員が下げ止まってもローに入学したいという人が増えてくるとは限らないので、正確なところはよくわからない、というのが、当サイトの立場です(「平成29年司法試験の出願者数について(1)」)。とはいえ、ここから更に減るといっても限界がありますから、減ったとしてもそれほど大きな減少にはならないだろうと思います。そうすると、これに対応して、予備試験の出願者数が増えるとしても、それほど大きな増加にはならないだろう、という予測ができます。

(2)もう1つ、法科大学院在学中の予備試験出願者について考えます。ローに入学する人が増えても、在学中に予備試験を受ける人が増えれば、予備試験の出願者数は増加します。以下は、法科大学院在学中の予備試験出願者数の推移です。


(平成)
法科大学院在学中の
予備試験出願者数
前年比
23 282 ---
24 706 +424
25 1722 +1016
26 2153 +431
27 1995 -158
28 1875 -120

 平成26年までは、一貫した増加傾向です。特に、平成25年の増加幅が大きい。このことが、平成25年の予備試験の出願者数の急増に対応しています。それが、平成27年になって、減少に転じました。平成27年は、予備試験の出願者数も減少に転じていますから、この点でも、対応関係があるといえるでしょう。
 ただ、平成28年に関してはロー在学中の予備出願者は減少を続けているのに、予備試験全体の出願者数は、むしろ増加しています。これは、前記2の法科大学院の入学者数の減少の影響の方が大きいのでしょう。
 今後、法科大学院在学中の予備試験出願者が増えるかというと、減る可能性の方が高そうです。そもそも、法科大学院の入学者数自体が減っているわけですから、その中から予備を受けようとする人の数も減るというのが自然です。そう考えると、予備試験全体の出願者数も、今後どんどん増えるという可能性は、あまりなさそうだ、ということになるでしょう。

3.以上のようにみてくると、これまでの予備試験出願者数の増減は、概ね法科大学院入学者数と法科大学院在学中の予備試験出願者数の増減によって説明が付くことがわかります。したがって、全体の法曹志願者数は、それほど増えたり減ったりしているわけではないということです。法曹志願者は例年あまり変わらないけれども、その法曹志願者が法科大学院入学を選ぶのか、予備試験受験を選ぶのか、という内訳が変動している、そういうことですね。前記1及び2でみたとおり、法科大学院入学者数が今後これ以上にどんどん減少することは考えにくいですし、法科大学院在学中の予備試験出願者がどんどん増えるということも考えにくいわけですから、今後、予備試験出願者数がどんどん増加することは、現状では考えにくい、という結論になるでしょう。言い方を変えれば、法曹志願者の法科大学院離れ、予備試験志向という一連のサイクルが、ほぼほぼ飽和状態に達した、ということです。予備試験出願者数が増加するのは、何かのきっかけで法曹志願者が増加する場合です。司法修習生に対する給付措置が、そのきっかけの1つとなる可能性はあるでしょう。

4.最後に、出願者数から予測できる今年の予備試験の短答・論文の難易度を確認しておきましょう。まず、受験者数の予測ですが、予備試験の受験率は、例年82%程度です。ですから、今年の予備試験の受験者数は、

 13178×0.82≒10805人

と予測できます。
 そして、予備試験の短答式試験の合格者数は、例年、「2000人基準」によって決まっています(「平成28年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。ここでは、2100人くらいと考えておきましょう。そうすると、短答式試験の受験者合格率は、

 2100÷10805≒19.4%

と予測できます。これは、どのくらいの水準なのか。以下は、これまでの短答合格率(受験者ベース)の推移です。


(平成)
短答
合格率
23 20.6%
24 23.8%
25 21.8%
26 19.5%
27 22.1%
28 23.2%
29 19.4%?

 これをみると、例年より短答はやや厳しめ、過去の例でいうと平成26年と同じくらいになりそうだ、ということがわかります。
 次に、論文です。近時の論文式試験の合格点及び合格者数は、以下の法則によって決定されています(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(1)」。

(1)210点に累計で400人以上存在しない場合は、210点が合格点となる。
(2)210点に累計で400人以上存在する場合は、5点刻みで初めて400人を超える点数が合格点となる(「400人基準」)。

 そして、平成27年、平成28年は、これまでの傾向では説明の付かない平均点の上昇が生じた結果、上記(2)の「400人基準」によって、合格点及び合格者数が決定されていたのでした(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(2)」)。この傾向の変化の原因が考査委員の申し合わせに基づく採点方針の変更にあるとすれば、この傾向は今年も続くでしょう。そこで、ここでは、今年の合格者数も「400人基準」によって決まると仮定してみましょう。差し当たり、410人程度の合格者数を想定します。この場合、論文式試験の論文受験者(短答合格者)ベースの合格率は、

 410÷2100≒19.5%

ということになります。過去の数字と比べてみましょう。


(平成)
論文
受験者数
論文
合格者数
論文合格率
23 1301 123 9.45%
24 1643 233 14.18%
25 1932 381 19.72%
26 1913 392 20.49%
27 2209 428 19.37%
28 2327 429 18.43%
29 2100? 410? 19.5%?

 概ね、平成25年以降と同じくらいだ、ということがわかります。平成28年が低めの合格率になっているのは、短答における「2000人基準」を適用した結果、たまたま短答合格者数が多めになってしまったことが原因です(「平成28年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。その意味では、今年も、短答の「2000人基準」と、論文の「400人基準」を適用した場合の数字のブレによって、合格率が上がったり、下がったりする可能性は十分あるということです。とはいえ、概ねこの前後の数字で収まるでしょう。ですから、論文については、例年どおりの難易度だと考えておけば良いと思います。

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2017年02月28日

平成29年司法試験の出願者数について(2)

1.今回は、明らかになった出願者数の速報値から、今年の司法試験についてわかることを考えてみます。以下は、直近5年の出願者数、受験者数等をまとめたものです。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
25 10315 7653 74.1%
26 9255 8015 86.6%
27 9072 8016 88.3%
28 7730 6899 89.2%
29 6716 ??? ???

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
25 5259 68.7%
26 5080 63.3%
27 5308 66.2%
28 4621 66.9%
29 ??? ???

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
25 2049 38.9% 26.7%
26 1810 35.6% 22.5%
27 1850 34.8% 23.0%
28 1583 34.2% 22.9%
29 ??? ??? ???

2.まず、受験者数の予測です。これは、出願者数に受験率を乗じることで、算出できます。受験率は、受験回数制限が緩和されて以降、概ね88%、89%程度で推移しています。ここでは、受験率を89%と仮定して、試算しましょう。そうすると、

 6716×0.89≒5977

 受験者数は、5977人と推計できます。概ね6000人前後で、昨年より900人程度減少するという計算になります。

3.次に、短答合格者数です。当サイトでは、現在の短答の合格点は、以下のようなルールによって決まっているのではないか、と考えています。

 

(「平成28年司法試験短答式試験の結果について(1)」より引用。太字強調は現在の筆者による。)

 従来、短答式試験は7科目350点満点で、その6割である210点が下限の合格点。それで合格者数が多すぎるようなら、5点刻みで上方修正する。これが、7科目時代の合格点の決まり方でした。
 昨年から、短答式試験の試験科目は憲民刑の3科目175点満点になりました。3科目になった場合、合格点はどのように決まるのか。当サイトの仮説は、満点(175点)の6割5分である113.75の小数点を切り上げた114点が基本的な合格点。それで合格者数が多すぎたり、少なすぎたりするようなら微修正する、というものです(「平成27年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。

(引用終わり)

 

 直近の数字をみる限り、合格率66%というのが、居心地の良い数字のようです。ちょうど、下位3分の1を落とす、という感じになっていることが、そう感じさせる理由なのでしょう。これより高かったり、低かったりするようなら、微修正をして、66%に近づけるのではないか。ここでは、差し当たりそのように考えてみましょう。そこで、今年も短答の合格率(対受験者)が66%となると仮定すると、

 5977×0.66≒3944

 短答合格者は、3944人と推計できます。概ね4000人前後ということですね。
 合格率を一定にして試算していますから、合格者数が4000人前後であれば、短答の難易度は、それほど変わらないということになります。ただ、初回受験者は、気を付ける必要があるでしょう。短答は、受験回数が増えると、受かりやすくなる、という傾向があるからです。以下は、平成28年の受験回数別の短答合格率(受験者ベース)です。

受験回数 短答合格率
(対受験者)
1回 63.1%
2回 63.4%
3回 62.4%
4回 71.5%
5回 83.1%

 平成28年の特徴は、1回目から3回目までがあまり差がなく、むしろ3回目は少し合格率が落ちている一方で、4回目、5回目の合格率が顕著に高くなっていることです。4回目、5回目の短答合格率が顕著に高いことは、受験回数制限が緩和されて以降、確立した傾向となっています。逆にいえば、初回受験者は、短答を甘くみていると、やられてしまいやすい、ということです。肢別本に代表される肢別の問題集を全肢3回連続間違えずに正解できる、というのが1つの目安ですが、そのレベルまで早い段階で高めておく必要があります。短答は、勉強時間さえ確保すれば、ダイレクトに得点に結び付けることができますから、手抜きをせずにやっておくべきです。

4.さて、論文です。ここは、1500人の下限が破られるか、というのが、ポイントになります。

 

(「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)より引用、太字強調は筆者)

  新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである

(引用終わり)

 

 論文合格者数は、昨年の段階で、既に1583人まで減少しています。上記は飽くまで「されるよう…目指す」ものに過ぎませんし、実際に合格者数を決めるのは、司法試験委員会です。これまでも、司法試験委員会は、政府の合格者数の目安を無視してきました。ですから、1500人が守られる保証は、どこにもないのです。したがって、現時点では、合格者数がどうなるのか、予測が難しいといえます。ここでは、いくつかのケースを想定して考えてみましょう。
 まず、下限が守られ、1500人だった場合です。この場合、論文の短答合格者ベースの合格率は、

 1500÷3944≒38.0%

となります。これは、直近でみると、平成25年に次ぐ高めの数字です。やや高すぎるという印象を持ちますね。このことは、1500人の下限が破られそうだと感じさせます。
 次に、1000人だった場合を考えてみましょう。これは、おそらく想定できる最悪の数字でしょう。直感的な予想に過ぎませんが、さすがに1000人を割ることはない、という感覚は、現段階で多くの人が共有しているところだろうと思います。この場合、論文の短答合格者ベースの合格率は、

 1000÷3944≒25.3%

となります。対受験者の合格率は、16.7%。これは、新司法試験では過去に例のない極端に低い数字です。合格率でみても、さすがにこれはない、という印象を持ちます。
 最後に、当サイトの仮説に基づく推計をしてみましょう。当サイトの仮説は、「司法試験委員会は、累積合格率7割が達成できる単年度合格率である23%を意識して、最終合格者数を決めている。」というものでした(「平成28年司法試験の結果について(3)」)。そこで、今年の受験者ベースの論文合格率が23%となる合格者数を考えると、

 5977×0.23≒1374

 論文合格者数は、1374人ということになります。感覚的にも、ありそうな数字だと感じさせます。この場合、短答合格者ベースの論文合格率は、

 1374÷3944≒34.8%

となります。これは、平成27年、平成28年とほぼ同水準です。これより合格者数が多ければ昨年より易しく、これより合格者数が少なければ昨年より厳しい。そのような感覚を持っておけばよいのだろうと思います。最後に、上記の数字をまとめておきましょう。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
24 11265 8387 74.4%
25 10315 7653 74.1%
26 9255 8015 86.6%
27 9072 8016 88.3%
28 7730 6899 89.2%
29 6716 5977? 89%?

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
24 5339 63.6%
25 5259 68.7%
26 5080 63.3%
27 5308 66.2%
28 4621 66.9%
29 3944? 66%?

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
24 2102 39.3% 25.0%
25 2049 38.9% 26.7%
26 1810 35.6% 22.5%
27 1850 34.8% 23.0%
28 1583 34.2% 22.9%
29 1500?
1000?
1374?
38.0%?
25.3%?
34.8%?
25.0%?
16.7%?
23%?

5.仮に、当サイトの仮説に基づく試算どおりの結果になると、合格者数が1500人を割ってしまうので、合格者数1500人を前提に入学定員2500人を想定していた文科省は困るのか。それは実はそうではない、ということは、以前の記事(「平成28年司法試験の結果について(3)」)で説明したとおりです。

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2017年02月26日

平成29年司法試験の出願者数について(1)

1.平成29年司法試験の出願者数の速報値が公表されました。6716人でした。以下は、直近5年の出願者数の推移です。

出願者数 前年比
25 10315 ---
26 9255 -1060
27 9072 -183
28 7730 -1342
29 6716 -1014

 出願者数は、昨年から1014人減少しています。昨年は1342人の減少ですから、減少幅は縮まっていますが、かなり大きな減少です。仮に、毎年同じペースで減少を続ければ、6、7年で受験者数がゼロになってしまいます。もちろん、そのようなことはあり得ないだろう、ということは直感的にわかるのですが、実際には、どのようなメカニズムで、下げ止まりが生じるのでしょうか

2.近時、出願者数が減少傾向にあることの原因は、法科大学院の入学者数の減少にあります。法科大学院に入学する人が減れば、受験資格を得る人が減りますから、出願する人も減るという理屈です。以下は、平成20年以降の法科大学院の入学定員及び実入学人員の推移です(「法科大学院における平成28年度の入学者選抜の状況」参照)。

年度 入学定員 前年比 実入学者数 前年比
20 5795 --- 5397 ---
21 5765 -30 4844 -553
22 4909 -856 4122 -722
23 4571 -338 3620 -502
24 4484 -87 3150 -470
25 4261 -223 2698 -452
26 3809 -452 2272 -426
27 3169 -640 2201 -71
28 2724 -445 1857 -344

 上記をみると、一時的に下げ止まった年(平成24年の入学定員や平成27年の実入学者数)はあるものの、一貫して減少傾向にあることがわかります。問題は、これがいつか下げ止まるのか、ということですが、おそらくは、来年以降から、入学定員については下げ止まりの傾向が出てくるはずです。その背景には、文科省の政策転換があります。

3.そもそも、法科大学院の定員削減は、何のために行われたのか。これは、志願者を増加させるためです。定員を削減したのでは、むしろ志願者は減ってしまうのではないか、と疑問を持つ人も多いでしょう。少し理解しにくいですね。これを理解するには、政府が、現在の志願者激減の原因をどのように捉えているか、ということを確認しておく必要があります。

 

(「法曹養成制度検討会議取りまとめ(平成25年6月26日)」より引用。太字強調は筆者。)

 法曹志願者の減少は,司法試験の合格状況における法科大学院間のばらつきが大きく,全体としての司法試験合格率は高くなっておらず,また,司法修習終了後の就職状況が厳しい一方で,法科大学院において一定の時間的・経済的負担を要することから,法曹を志願して法科大学院に入学することにリスクがあるととらえられていることが原因である

(引用終わり)

 

 政府は、司法試験の合格率が高くなっていないことが、志願者激減の原因の1つだと考えているのです。そこで、これを解消するにはどうしたらいいか、と考えてみると、2つの方策が考えられるでしょう。1つは、分子である合格者数を増やすこと。もう1つは、分母である受験者数を減少させることです。しかし、合格者数をこれ以上増やすことは、志願者減少の他の原因である司法修習終了後の就職状況をさらに悪化させることになってしまいます。そのため、合格者数は、1500人を一応の下限としつつ、むしろ減らしていこうというのが、現在の政府の方針になっています。

 

(「法曹養成制度検討会議取りまとめ(平成25年6月26日)」より引用。太字強調は筆者。)

 近年,過払金返還請求訴訟事件を除く民事訴訟事件数や法律相談件数はさほど増えておらず,法曹の法廷以外の新たな分野への進出も現時点では限定的といわざるを得ない状況にある。さらに,ここ数年,司法修習終了者の終了直後の弁護士未登録者数が増加する傾向にあり,法律事務所への就職が困難な状況が生じていることがうかがわれることからすれば,現時点においても司法試験の年間合格者数を3,000人程度とすることを目指すべきとの数値目標を掲げることは,現実性を欠くものといわざるを得ない。
 上記数値目標は,法曹人口の大幅な増加を図ることが喫緊の課題であったことから,早期に達成すべきものとして掲げられた目標であるが,現状においては,司法試験の年間合格者数の数値目標を掲げることによって,大幅な法曹人口増加を早期に図ることが必要な状況ではなくなっている

 

(「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成 27年6月30日)」より引用。太字強調は筆者。)

 新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである

(引用終わり)

 

 そうなると、考えられる方策は、受験者数の減少しかない、ということになります。法科大学院の定員を削減することが、最も直接的かつ有効な手段です。では、どの程度まで定員を削減すべきなのか。これは、合格率の目標とされてきた、「修了生の7割」(その具体的な意味については、「平成28年司法試験の結果について(3)」参照)、当面の合格者数の下限とされている1500人から、逆算することによって算定が可能です。現に、文科省はそのような逆算によって、あるべき法科大学院の定員目標を、概ね2500人としたのでした。

 

(「法曹人口の在り方に基づく法科大学院の定員規模について」より引用。太字強調は筆者。)

 累積合格率7割の達成を前提に、1,500人の合格者輩出のために必要な定員を試算すると、以下のとおりとなる。

○ 法科大学院では厳格な進級判定や修了認定が実施されており、これまでの累積修了率は85%であること。  

○ 予備試験合格資格による司法試験合格者は、平成26年は163名であるが、うち103名は法科大学院に在籍したことがあると推測されること。

 上記2点を考慮した計算式:(1,500 - 163) ÷ 0.7 ÷ 0.85 + 103 ≒ 2,350

○ さらに、法科大学院を修了しても司法試験を受験しない者がこれまでの累積で6%存在すること。 

 上記3点を考慮した計算式:(1,500 - 163)÷ 0.7 ÷ 0.85 ÷ 0.94 + 103 ≒ 2,493 

(引用終わり)

 

 法科大学院の定員を削減するといっても、文科省が直接に指示することはできません。飽くまで、定員は法科大学院自身が決めることですから、自主的に削減してもらうしかない。そこで用いられたのが、定員を削減しない法科大学院に対する補助金を削減する、という手段です。具体的には、補助金支給額の基準を「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム」として定め、その中に「定員充足率」の指標を含ませることで、定員を削減しないと補助金が減額されてしまう仕組みを作ったのでした。

 

(「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムの審査結果について(平成27年12月25日)」)

 本プログラムは,法科大学院の入学定員の適正化など自主的な組織見直しを促進するとともに,先導的な取組に対する支援を通じて,教育の質の向上を図るため,法科大学院間のメリハリのある予算配分を行うものです。

(引用終わり)

 

4.この結果、平成28年の入学定員は、2724人まで減少しました。そして、平成29年は、2566人となる見込みとなっており、目標としていた2500人に近い水準となることがわかっています。これで、多少のタイムラグはあるものの、近い将来に合格率は修了生の7割を実現できる程度となるだろう、というのが、文科省の目論見です(ただし、実は修了生7割と入学定員との間には直接の対応関係がないことについては、「平成28年司法試験の結果について(3)」参照。)。文科省の方針が、入学定員削減から志願者数確保へと転換したのは、このためなのです。今後合格率は上昇に向かい、志願者が減少した原因の1つが取り除かれるので、今後は志願者数は増加に向かうだろう、という観測があるわけです。

 

法科大学院特別委員会(第75回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

塩田専門職大学院室長「法曹人口の1,500人といったような数字を踏まえまして,当面,目指すべき法科大学院の定員規模を2,500人としたということでございまして,その2,500という数字を達成するために,加算プログラムを29年度以降も継続して実施するというような趣旨を書いているものでございます。…平成29年の予定ということでございますけれども…六大学が定員の見直しを行うということを予定されていて,募集停止となる2大学がございます。その定員分を含めまして…来年度は2,566人になる見込みということでございます。ということで,先ほど御説明しましたように,目標値として2,500人程度ということを掲げておりますので,数字がほぼ達成されるというような状況になってございます。
   加算プログラムにつきましては,自主的な組織見直しの促進ということと,各法科大学院における優れた取組を支援すると,こういったような目的で実施しておるわけでございますけれども,目標値である2,500人という数字が達成されるということでございますと,今後,基礎学の指標の取り方を含めまして何らかの修正を加える必要があるのかなとは認識してございます。」

(引用終わり)

(「「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム」の見直しについて 」より引用。太字強調は筆者。)

 入学定員の目標がほぼ達成され、今後は入学定員の適正化に代わって志願者数の確保が重要な課題となることから、定員充足率については指標から削除する。一方、入学者数が10名を下回る場合は、教育組織として規模が小さくなり過ぎているなど、法科大学院としてふさわしい教育環境の確保への影響が懸念されることから、3年連続で入学者数が10名未満となった場合は減点する。

(引用終わり)

 

5.以上のような理由から、今後は、入学定員は下げ止まるでしょう。問題は、実入学者数がこれに対応して下げ止まってくれるかです。入学定員が下げ止まっても、志願者が増えてくれなければ定員割れとなるだけで、意味がありません。昨年は実入学者数が下げ止まったかに見えたものの、今年は、また減少幅が大きくなっています。修習生への給付が一部復活したことなど、若干明るいニュースはあるものの、就職状況は依然として厳しいままなので、今後どの辺りで下げ止まるのか。直感的には、さすがにそろそろ下げ止まるのではないか、という感じはするものの、正確なところは、よくわかりません

posted by studyweb5 at 18:14| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする


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