2011年09月24日

最新下級審裁判例

福岡高裁第3民事部判決平成22年03月25日

【判旨】

 行訴法4条の「公法上の法律関係に関する確認の訴え」・・は,確認の対象となり得るものが形式的には無限定であることから,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保するため,その利益があることが訴訟要件として要求される。このような趣旨からすれば,確認の利益は,被控訴人の行為等により控訴人の権利又は法的地位に現実的かつ具体的な危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要で,かつ適切である場合に認められるべきものである(最高裁平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。・・そして,第三者の権利であっても,控訴人と被控訴人との間で現在それを確定することが控訴人の法律的地位の危険,不安を除去するのに適切であるときは確認の利益があるといえる。
 最高裁昭和47年11月30日第一小法廷判決・民集26巻9号1746頁は,訴訟の形式をいわゆる無名抗告訴訟と解した上でのものとも考えられ,公法上の法律関係に関する確認の訴え・・に当然に妥当するものではない。そして,行訴法4条による公法上の法律関係に関する確認の訴えにおける確認の利益は,紛争解決にとって無益な訴訟を排除し,紛争解決の実効性を確保するための要件であり,被控訴人の行為等により控訴人の権利又は法的地位に現実的かつ具体的な危険,不安が現に存し,その危険,不安を除去するために確認の訴えが必要で,かつ適切である場合には,これを認めることができるというべきであって,確認の訴えによらなければ事後的に回復不可能な損害を被ることまでは要しないと解すべきである。

 

横浜地裁第1民事部判決平成21年08月26日

【判旨】

1.行訴法は,違法な行政権の行使による侵害からの原告の権利利益の救済を図ることを目的とする司法作用を主要な規律の対象としているのに対し,行審法1条1項においては「国民の権利利益の救済」のほかに「行政の適正な運営を確保すること」を法律の目的とすることが規定されている点に特徴がある。
 行審法は,職権により,適当と認める者を参考人として陳述させることができること,書類その他の物件の所持人に対し,その物件の提出を求め,かつ,その提出された物件を留め置くことができること,必要な場所につき,検証することができること,審査請求人又は参加人を審尋することができることを定めている(同法27条ないし30条)。これが職権証拠調べを許容することは明らかであるが,さらに,これを超えて当事者の主張しない事実を職権で取り上げてその存否を調べること,つまり職権探知主義まで認めている趣旨かどうかは明らかではない。しかし,行政不服審査は,なお,行政過程における争訟であって,私人の権利利益の救済とともに行政の適正な運営の確保をも目的とするものであることをも考慮すると,行審法も職権探知を認めていると解すべきである(訴願法当時のものとして,最高裁昭和29年10月14日第一小法廷判決・民集8巻10号1858頁参照)。
 この点,原告は,行審法が,職権によって行政処分の違法・不当性に関するあらゆる事項を調査することができることを認めていると解することは,同法43条1項の規定の趣旨にも矛盾すること,すなわち,同項は「裁決は,関係行政庁を拘束する。」と定めているが,この裁決の拘束力について,学説・判例は,同一の理由若しくは資料に基づいて,同一人に対し同一の行為をすることを禁ずる趣旨にすぎないから,行政庁が別の理由若しくは資料に基づいて処分をすることを妨げるものではないとしていると解していること,しかし,行審法が,職権によって行政処分の違法・不当性に関するあらゆる事項の調査を許しているのならば,このような迂遠な方法を定める必要はないはずであること,したがって,行審法の規定が,審査庁に自ら直接決定する権限を与えることなく,単に「拘束する」との文言にとどめているのは,行政事件訴訟における裁判と同じく,不服申立適格者の権利救済に必要な範囲内にだけ補充的に職権探知を認める趣旨であることを主張する。
 しかしながら,行審法43条1項は,処分庁が同一事情の下では同一理由に基づく同一内容の処分をすることができないという反復禁止効を規定したものと解すべきところ,同項の規定が,審査庁が直接決定するものとなっていないのは,同一事情の下で異なる理由に基づく同一内容の処分をする可能性があるからである。
 したがって,同項の規定をもって職権探知が制限されると解することはできず,原告の上記主張は採用することができない。

2.行審法41条1項が「裁決は,書面で行ない,かつ,理由を附し・・・なければならない。」と規定しているのは,審査機関の判断を慎重ならしめるとともに,裁決が審査機関の恣意に流れることのないように,その公正を保障するためと解される。したがって,その理由としては,審査請求人の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明らかにしなければならない。
 もっとも,裁決に付記すべき理由の記載の程度は,事案の内容に応じて相対的に定まるものであって,必ずしも,裁決庁の意思決定の内容・過程が詳細にわたって明らかにされなければならないものではない。

3.行政手続法3条1項15号は,審査請求に対する行政庁の裁決について,同法第2章から第4章までの規定の適用を明示に排除している。したがって,同法第3章中の13条が規定する,不利益処分についての聴聞・弁明の機会付与等は,審査請求に対する行政庁の裁決に適用がない。その趣旨は,審査請求に対する行政庁の裁決は事後救済の手続としてされるものであるから,これに対し,行政手続法所定の事前手続の規定を適用することは屋上屋を重ねることになり,したがって,これを避けるため,適用排除の規定がされたものと解される。

4(1)行審法43条1項は,「裁決は,関係行政庁を拘束する。」と規定している。同規定により,関係行政庁は裁決の内容を実現すべく義務付けられ,処分の取消し又は撤廃の裁決があった場合には,同一事情の下で,同一内容の処分を繰り返すことが許されなくなる(反復禁止効)。
 裁決の拘束力の性質・根拠は,①審査請求人の権利救済のためには処分が取り消されただけでは十分でなく,消極的には,再び同一の過誤が将来の行政庁の行為において繰り返されないことが必要であり,積極的には,取り消された行為と直接関連して生じた違法状態を除去する必要があること,②行政内部において,ある意思が既に批判,修正された場合には,それ以前の元の意思について行政外部に対する独立の存在,行動を許すべきでないこと,③行政不服審査制度が,行政権が行政監督的方法をもって広義の行政機関内部の意思を統制する目的に奉仕する手段としての側面をもって設けられていること,④したがって,審査請求の対象となった原処分庁により別に裁決に対する抗争手段を認めることは,上記の行政上の統制を破る自壊作用を肯定することにほかならないことから,裁決によって,直接に裁決の趣旨に沿うべき行為義務を行政庁に負わせようとしているものであるとされている。

(2)行審法43条2項は,「申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され,又は申請を却下し若しくは棄却した処分が裁決で取り消されたときは,処分庁は,裁決の趣旨に従い,改めて申請に対する処分をしなければならない。」と規定している。
 申請を認容した処分に係る同項の趣旨は,以下のとおりである。
 すなわち,申請を認容した処分を審査庁が手続上の違法を理由として取り消したものである場合においては,処分庁が裁決の趣旨に従って再度適法に手続を行えば,申請を認容する処分をする余地が残されている。すなわち,この場合は申請者に再度の処分を受ける法律上の利益(やり直しの利益)が認められているのであるから,処分庁に「改めて申請に対する処分をしなければならない」と義務付けているのである。
 これに対し,行審法43条2項には,申請を認容した処分を審査庁が実体上の違法を理由として取り消した場合の規定がない。これは,認容処分が実体的な理由で取り消された場合は,裁決の拘束力の関係上,再度やり直しても認容処分のなされる見込みはない(すなわち,申請者にやり直しの利益が認められない)ので,一般に,このことをあえて法律によって強制するまでの必要はないと考えられるからであるとされている(行審法43条2項と同旨の行訴法33条3項につき,杉本良吉「行政事件訴訟法の解説」(法曹会)113頁参照)。
 以上のことから,同項は,申請を認容した処分につき裁決が処分を手続上の違法を理由として取り消したものである場合には,処分庁は裁決の趣旨に従って改めて申請に対する処分をすべきものとしたと解される。
 なお,申請を認容した処分が実体的な理由で取り消されたときにおいても,取消判決の形成力によって,初めから当該処分がなかったことになり,申請はいまだ行政庁の判断を受けないままの状態で存続していることになるのであるから,処分庁は改めて応答行為である処分をしなければならないと解されるが,新たな処分を要せず,当然に終了するとする学説もある。

5.行訴法22条所定の訴訟参加は「訴訟の結果により権利を害される第三者」について認められるところ,当該第三者は,取消判決の形成力によって直接利益を侵害される第三者や,取消判決の拘束力によって新たな処分がなされることを通して自己の権利を害される第三者を含むものと解される。また,「害される権利」とは,厳格な意味における権利に限らず,法律上保護された利益も含まれていると解される。

6.行訴法7条,民訴法42条に基づく補助参加が許されるのは,補助参加申出人が訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,また,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が補助参加申出人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。

 

京都地裁第1民事部判決平成22年03月08日

【事案】

1.被告は,平成10年6月8日から平成15年1月31日まで(実質は平成14年12月末日まで)原告の嘱託社員であり,平成12年1月から退職するまで中国上海に駐在していた。原告は,被告が,この駐在中,原告の中国における事業責任者としての地位にありながら,次の3つの行為をし,これらが雇用契約上の債務不履行に該当すると主張して,これに基づく損害賠償及び商事法定利率による遅延損害金を請求する。

① 売却先からの注文がないのに商品である金粉を原告本社に出荷させ,上海の倉庫に在庫して放置して,前記金粉が錆びて価値を失わせた行為(以下「本件金粉在庫行為」という。)

② 原告と取引先であるA貿易有限公司(以下「A」という。)との間の合意によってAから原告に対して支払われるものとして被告が受領した現金の一部を原告本社に送金するのを怠った行為(以下「本件送金懈怠行為」という。)

③ 原告がAを介して大連B貿易有限公司(以下「大連B」という。)に販売した商品の売掛金について,原告本社,Aのいずれの了解も得ずに,大連Bに対しこれを免除した行為(以下「本件売掛金免除行為」という。)

 被告は,被告が本件金粉在庫行為,本件送金懈怠行為及び本件売掛金免除行為(以下これらをまとめて「本件各行為」という。)の当時,原告の中国における事業責任者としての地位にあったことを争い,本件各行為についてもそれぞれ争うほか,原告の請求について商事消滅時効が成立しているとの抗弁を主張する。

2.前提事実

(1) 原告は,捺染用顔料樹脂等の製造販売を業とする株式会社である。被告は,平成10年6月8日から平成15年1月31日まで(実質は平成14年12月末日まで)原告の嘱託社員であり,平成12年1月から退職するまで中国上海に駐在していた。
 原告代表者は,当時営業部長ないし副社長であって,被告の上司として中国における事業を職掌していた(以下原告代表者を時期にかかわらず「C副社長」という。)。また,原告の従業員Dは,平成6年10月ころから,原告の中国事業を担当し,被告が退職した後はその業務を引き継いだ。

(2) 原告は,かつて,中国への商品の輸出について,名古屋市に所在していた商社であるB株式会社を窓口としていた。そして,同社は,その関連会社である上海所在の上海B貿易有限公司に商品を販売し,更に上海B貿易有限公司が,中国国内各地に存在する関連会社の大連B等の各B貿易有限公司(以下「Bグループ各社」という。)に商品を販売し,そこから末端のユーザーに商品が流れるようになっていた。
 しかし,平成11年12月ころ,前記B株式会社が倒産し,更に上海B貿易有限公司にも問題が生じたため,上海B貿易有限公司の営業がAに譲渡され,その後,原告は,中国の外貿を通じてAに商品を販売し,Aが中国国内のBグループ各社に商品を売却するようになった。

(3) さらに,平成12年12月ころには,Aにおける売掛金の管理にも問題が生じたため,原告の中国事務所が,Aの売掛金の実質的な管理をするようになり,被告が同事務所のリーダーという立場でその業務を担当することになった。

(4) 被告は,原告に対し,平成21年3月19日の本件弁論準備手続において,商事消滅時効を援用するとの意思表示をした。

3.商事消滅時効の成否に係る当事者の主張

(1) 被告の主張

ア.原告と被告との間の雇用契約は,被告会社の行為として商行為であると推定されるので,その債務不履行に基づく損害賠償請求権については商法522条が適用され,その消滅時効期間は5年である。そして,本訴請求債権の時効の起算点は,遅くとも原告と被告との間の雇用契約が終了した平成15年1月31日であり,本訴が提起された平成20年7月1日より前に時効期間が経過しているから,被告は,この時効を援用する。

イ.原告が下記で指摘する最高裁判例は,国が負う安全配慮義務に関し会計法30条の適用の是非が問題となった事案であり,本件とは事案を異にする。また,私企業における雇用契約から信義則上生じる安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権について,民法168条の適用を受ける旨を判示する裁判例もあるが,これらはじん肺事件のような特殊な安全配慮義務違反に関する損害賠償請求権についてのものであり,本件とは事案を異にする。

(2)原告の主張

 株式会社が使用人との間で締結する雇用契約については,商法522条は適用されないものというべきである。商法522条は,会社と雇用契約関係にある従業員が安全配慮義務違反に基づいて損害賠償を請求する場合(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決・民集29巻2号143頁)のように,商人が行った行為であっても適用されない場合があるところ,本件の損害賠償請求権は,雇用契約の本来の給付義務である労務の提供をしなかったことに基づく損害賠償請求ではなく,労務提供に際して付随的に会社に損害を与えないようにすべき義務の違反があったことに基づく損害賠償請求であって,前記の最高裁判例等と同様に,商人の取引について早期の権利義務関係の確定を図る必要があるとの同条の趣旨が妥当しないし,本件のような従業員の不適切な業務の執行は,ある程度の期間を経過して初めて発覚するものも少なくないから,本件の損害賠償請求権の消滅時効については,商法522条を適用せず,その期間は民法167条に基づいて10年とすべきである。

【判旨】

1.株式会社とその従業員との間の雇用契約は,会社がその事業のためにする行為であるから,商行為である(会社法5条)。そして,商行為によって生じた債権は,5年間の短期消滅時効が定められている(商法522条)。そこで,本件で原告が請求する雇用契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求権が,商法522条の「商行為によって生じた債権」といえるかについて,検討する。
 商行為である契約上の債務の不履行に基づく損害賠償請求権は,通常はその債務がその態様を変じたにすぎないものであるから,商法522条の「商行為によって生じた債権」に該当するというべきであるが,その債務不履行責任が,株式会社の取締役の会社に対する損害賠償責任のように,法によってその内容が加重された特殊な責任である,あるいは,商人である使用者の被用者に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任のように,本体的給付から離れた付随的義務を原因とする責任であるなど,契約上の債務が単に態様を変じたにすぎないということができず,商事取引における迅速決済の要請が妥当しない場合には,前記の「商行為によって生じた債権」に該当しないものと解するのが相当である(最高裁昭和47年5月25日第一小法廷判決・裁判集民事106号153頁最高裁平成6年2月22日第三小法廷判決・民集48巻2号441頁最高裁平成20年1月28日第二小法廷判決・民集62巻1号128頁参照)。

2.これを本件についてみると,本訴請求に係る債務不履行責任は,雇用契約における被用者の本体的給付義務である労務の提供がないという単純な不履行に基づくものではないものの,労務の提供の内容ないし方法に関する注意義務違反を原因とするものであって,本体的給付から離れた付随的義務を原因とするものということはできない。また,商事取引における迅速決済の要請についても,例えば商人間の売買取引における債権債務関係のような場合と比較すれば,会社における雇用契約についてその要請の程度が異なるということはできるけれども,会社にとって,雇用契約に基づく債権債務関係を他の債権債務と同様に迅速に決済する要請がないとはいえない。原告は,本件のような従業員の不適切な業務の執行による債務不履行は,ある程度の期間を経過して初めて発覚するものも少なくないなどとも指摘するが,会社における従業員の労務の提供については,取締役の任務懈怠行為とは異なり,会社がその内容を適切に管理して把握すべきものであるから,このような指摘は当を得ない。
 そうすると,本訴請求に係る債務不履行責任は,商行為である雇用契約上の債務がその態様を変じたにすぎないものとして,商法522条の「商行為によって生じた債権」に該当するものというべきであるから,同条により,その消滅時効期間は5年となる。そして,本訴請求債権の時効の起算点は,遅くとも原告と被告との間の雇用契約が終了した平成15年1月31日であり,本訴が提起された平成20年7月1日より前に時効期間が経過しているから,本訴請求債権についてはいずれも時効が成立する。

3.以上によれば,被告の商事消滅時効の抗弁に理由があるから,本訴請求の請求原因の成否にかかわらず,原告の請求はいずれも理由がなく,棄却する。

 

東京地裁民事第47部判決平成22年10月21日

【判旨】

 人は,著名人であるか否かにかかわらず,人格権の一部として,その氏名を他人に冒用されたり,みだりにその容ぼう等を撮影されたり,自己の容ぼう等が撮影された写真をみだりに公表されたりしない権利を有する(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁同昭和44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁同平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照。)。
 また,芸能人やスポーツ選手等の著名人については,その氏名,肖像が商品に付されたり,他の事業者のために広告に使用されたり,出版物に掲載されたりした場合に,大衆が当該著名人に対して抱く関心や好感,憧憬等の感情のゆえに,当該商品や出版物の販売促進に有益な効果,すなわち顧客吸引力を生じることは,一般によく知られているところである。このように,著名人の氏名,肖像は,顧客誘引力を有し,経済的利益,価値を生み出すものであるということができるのであり,著名人は,人格権に由来する権利として,このような経済的利益,価値を排他的に支配する権利(以下「パブリシティ権」という。)を有すると解するのが相当である。
 他方,著名人は,その著名性ゆえに,必然的に,著名人としての活動やそれに関連する事項が,一般人よりも社会の正当な関心事の対象となりやすいものである。そのため,著名人は,その著名人としての活動等が雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアによって批判,論評,紹介等の対象となることや,そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されることについて,言論,出版,報道等の表現の自由の保障という観点から,これを容認しなければならない場合があるといえる。そして,そのような紹介記事等を掲載した雑誌等の販売に当たって当該芸能人等の顧客吸引力が反映される場合があるとしても,上記の観点から,著名人はこれを容認せざるを得ない場合がある。
 以上の点を考慮すると,著名人の氏名,肖像を使用する行為が当該著名人のパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該著名人の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断するのが相当である。なお,上記の基準は,出版等につき顧客吸引力の利用以外の目的がわずかでもあれば,「専ら」に当たらないとしてパブリシティ権侵害とされることがないことを意味するものではなく,顧客吸引力の利用以外の目的があったとしても,そのほとんどの目的が著名人の氏名,肖像による顧客吸引力を利用するものであるような場合においては,上記の事情を総合的に判断した結果,「専ら」顧客吸引力の利用を目的とするものであるとしてパブリシティ権侵害とされることがあり得るというべきである。

posted by studyweb5 at 01:24| 下級審裁判例 | 更新情報をチェックする

2011年09月05日

最新下級審裁判例

東京高裁第4民事部判決平成22年03月11日

【事案】

 本件は,平成21年8月30日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙(以下「本件選挙」という。)における東京都第2区の選挙人である原告が,公職選挙法における衆議院小選挙区の区割りに係る規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づき施行された本件選挙の同選挙区における選挙も無効とすべきである旨主張して,同選挙の無効を求めた事案である。

1.基本的事実

(1) 原告は,本件選挙における東京都第2区の選挙人である。

(2) 平成6年1月,公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号)が成立し,その後,第128回国会において,公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律(同年法律第104号。以下「平成6年改正法」という。)によりその一部が改正され,また,衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下「設置法」という。)が成立した。

(3) 設置法によれば,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「審議会」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,平成19年法律第53号による改正前の統計法(以下「旧統計法」という。)4条2項の規定に基づく国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされており(同法2条,4条1項),各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは,審議会は,2条の規定による勧告を行うことができる(同法4条2項)とされている。また,審議会は,改定案を作成するに当たっては,投票価値の平等に配慮して,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととされている(同法3条1項)。そして,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ一を配当したうえで,これに,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とするとされている(同条2項。以下,この配当方式を「一人別枠方式」という。)。

(4) 審議会は,平成12年実施の国勢調査結果に基づき,平成13年12月,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案を作成して内閣総理大臣に勧告した。これを受けて,平成14年7月31日,同勧告に沿う内容で衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区を改定すること及び衆議院(比例代表選出)議員の各選挙区において選挙すべき議員の数を改定することを内容とする公職選挙法の一部を改正する法律(平成14年法律第95号。以下「区割改定法」という。)が成立し,公布された。区割改定法により,人口最少選挙区との較差が2倍以上の選挙区の数は,従前の95から9に減少した。

(5) 審議会は,平成17年12月から平成18年2月にかけて,平成17年実施の国勢調査結果に基づく選挙区別人口等について検討を行った結果,「各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情がある」とは認められないと判断し,勧告を行わないこととした。

(6) 本件選挙施行日である平成21年8月30日時点の選挙制度によれば,小選挙区選出議員の選挙については,全国に公職選挙法別表第一のとおり300の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選挙(同法13条1項)するものとされている(以下,同法別表第一及び13条1項を併せて「本件区割規定」という。)。なお,衆議院議員の定数は480人とされ,そのうち300人が小選挙区選出議員,180人が比例代表選出議員とされ(同法4条1項),投票は,小選挙区選出議員及び比例代表選出議員ごとに1人1票とされている(同法36条ただし書)。本件選挙は,このような制度の下に行われた。

(7) 本件選挙の直近である平成17年実施の国勢調査の結果に基づいて,本件区割規定の下における議員1人当たりの人口について,選挙区間の較差をみると,同人口が最少の高知県第3区と東京都第2区との間の較差は1対1.752,同人口が最少の高知県第3区と最多の千葉県第4区との間の較差は1対2.203であり,人口が最も少ない選挙区との人口較差が2倍を超える選挙区の数は48である。また,本件選挙当日における本件区割規定の下での議員1人当たりの選挙人数について,選挙区間の較差をみると,選挙人数が最少の高知県第3区と東京都第2区との間の較差は1対1.914であり,最大較差は,本件選挙当日選挙人数が最少の高知県第3区と最多の千葉県第4区との間の1対2.304である。

2.争点

 本件区割規定は憲法に違反するか否か。

3.争点に関する原告の主張

(1) 憲法は,代表民主制を採用し(憲法前文1段,43条1項),公務員の選定罷免権を国民固有の権利とし(憲法15条1項),普通選挙(同条3項)及び平等選挙(憲法14条1項,44条)を保障している。
 そして,憲法14条1項及び同44条は,国民の人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産,収入,住所等によって差別することなく,1人に1票を保障し,かつ,その選挙権の等価性を保障している。このような1人1票の選挙権についての憲法上の保障は,国会が選挙区制に基づく選挙制度を採用する場合には,各選挙区から選出される代表者すなわち議員の数の配分を人口分布に比例して配分すべく,国会の立法権限を覊束しているというべきである。
 また,憲法前文,56条,67条,6条及び79条は,正当に選挙された国会における代表者を通じて国家権力を行使するという代議制を定めている。ここにいう「正当な選挙」とは,選挙により,国会議員の多数が国民の多数から選出されることであるが,そのためには,人口に基づいて選挙区割りがされること,すなわち,選挙権の価値の平等が伴った「1人1票」が保障されることが必須である。
 このような人口比例原理は,参議院とは異なり,とりわけ衆議院において貫徹されるべきである。
 しかるに,前記1(7)のとおり,本件区割規定は,人口分布に基づいて選挙区割りをしていない。このため,現在の我が国では,全選挙人の過半数未満が全国会議員の過半数を選出しており,具体的には,本件選挙時点で,300の小選挙区の中の151の小選挙区に住む選挙人数は,全選挙人数の42パーセントでしかないため,現行の区割りの下では,全選挙人の42パーセントが,全小選挙区選出衆議院議員300人の中の151人を選出していることとなる。なお,平成21年3月31日現在の本件区割規定による選挙区間の人口較差は,議員1人当たりの人口が最少の高知県第3区(人口25万2840人)と最多の千葉県第4区(人口59万0943人)との間で2.337であり,また,平成20年9月2日現在では,議員1人当たりの選挙人数が最少の高知県第3区と最多の千葉県第4区との間の選挙人数の較差は1対2.255である。そして,高知県第3区の人口(平成21年3月31日現在)は上記のとおり25万2840人,選挙人数(平成20年9月2日現在)は21万4484人であり,東京都第2区の人口(平成21年3月31日現在)は46万5722人,選挙人数(平成20年9月2日現在)は40万1587人であるから,議員1人当たりの人口が最少の高知県第3区の1票の価値を1とすると,原告が選挙人となっている東京都第2区での1票の価値は,人口基準では0.54,選挙人数基準では0.53となる。
 すなわち,本件区割規定の下では,選挙人の少数が立法,行政府の長の選任及び最高裁判所の長たる裁判官を指名し,最高裁判所の裁判官を任命し得ることになっており,このことは,憲法が規定する「正当な選挙」ないし代議制民主制(憲法前文1段,43条1項,44条),その基礎となる公正な代表を選出するために必須の選挙権の平等の保障(憲法14条1項,44条,15条1項)及び両議院の多数決(憲法56条2項)に違反する。

(2) 投票価値の平等の保障のある「正当な選挙」のルールは,憲法の諸規範の位置づけの中で,基本的人権の保障と並んで最高位に位置する。そして,憲法によって保障された権利は,憲法に根拠付けられていない他の利益によって減殺されることはない。したがって,「選挙権の価値は平等であり,住所によって差別されない。」という憲法上の保障は,憲法14条1項,44条,前文1段,43条1項及び15条1項(以下「憲法14条1項等」という。)に基づく1人1票の保障に優越する憲法上の他の条文又は他の条文に根拠を持つ憲法の趣旨によってのみ,修正,変更され得る。
 被告は,「本件区割規定は,審議会において,① 市区等は基礎的自治体であることからできるだけ分割を避けるべきであること,② 仮に分割するとしてもこれらの選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当でなく,かつ困難であると考えられること,③ 市区を分割しようとすれば近接する多数の選挙区を含めた大幅な見直しが必要となること,④ 当時の最大較差や較差2倍以上の選挙区の数は設置法の許容するものであり,あえてそれ以上の見直しは必要ないと判断されたこと,によって定められたものであり,このことにかんがみれば,本件区割規定による各選挙区間の人口較差が,国会において正当に考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお,一般に合理性を有するものと考えられない程度に達しているとまでいうことができないことは明らかであり,本件区割規定は憲法に違反するとまではいえない。」旨主張するもののようである。しかし,憲法が国民主権の核として位置づけている多数決ルールは,数学的正確性をその本質とするきわめて厳格なルールであるところ,被告の主張する上記①から④は,憲法のいずれの条文によっても,保護されるべき権利又は利益として根拠づけることはできない。したがって,上記①から④によって,憲法14条1項等に定める「選挙権の価値は住所によって差別されない。」との日本国民の憲法上の権利を修正したり,変更することはできないというべきである。

(3) 投票価値の平等を実現することによって得られる利益とは,多数の国民が,投票価値の平等を前提とする正当な選挙に基づく代議制を介して,間接的に,立法及び行政の二権の内容とその仕組みを決定してこれを行使し,かつ,国会議員の多数決で指名された内閣総理大臣によって組閣された内閣が,最高裁判所裁判官を指名・任命するということである。他方,そうした投票価値の平等というものを以下の4要素,すなわち,(ア) 都道府県,(イ)人口密度や地理的状況,(ウ) 過疎化現象,(エ) 一人別枠方式,を理由として減殺することによって得られる利益とは,上記4要素を理由として投票価値の増加を享受する各選挙区の選挙人が,当該増加した投票価値に見合うだけの数の国会議員を追加的に選出できることにほかならない。しかし,後者の利益の実現は,少数の国民で構成される各選挙区の合計から選ばれた多数の国会議員が,各院のすべての議事を多数決によって決定してしまうという,憲法の想定していない反民主主義的事態を生じさせ,憲法が定める国の仕組みの基本的な骨格を破壊するものである。こうしたことは憲法により保護されている利益とはいえない以上,前者の利益は,後者の利益に圧倒的に優越するというべきである。このように,利益衡量の観点からみても,投票価値の平等を前提とする1人1票を選挙人すべてに保障するということを,上記(ア)から(エ)の4要素の全部又は一部によって減殺してはならないというべきである。

(4) 最高裁平成19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁は,「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が損なわれることになっても,やむを得ないものと解すべきである。」,「選挙区割りで議員定数配分を定める規定の合憲性は,結局は,国会が具体的に定めたところがその裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。」と判示する。しかし,1票の不平等を定める公職選挙法のおかげで当選している国会議員は,1票の不平等を定める公職選挙法が違憲,無効であるとの最高裁判決が下ると,自らが国会議員の地位を失うという関係に立っており,上記の判示は,国会議員が,上記のように議員定数配分規定の立法に関して当事者又は利害関係者であるという重大な事実を考慮していない議論であって,合理性や説得力を欠く。また,そのような最高裁判決の多数意見は,民事訴訟法23条1項1号の裁判官の除斥の法理や,同法24条1項の忌避の法理,利害関係者による議決権行使禁止の法理を定める会社法369条2項,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律95条2項,同189条3項の法理と矛盾する。
 国会議員は,憲法の最高規範性を定める憲法98条及び国会議員等の憲法尊重擁護義務を定める憲法99条により,裁量権を持つことなく,誠実に,憲法前文1段1文,44条,56条2項,14条の各規定が定めるところに従って,各衆議院議員小選挙区の人口が可能な限り等しくなるように,議員定数配分規定を立法しなければならない。すなわち,当該立法行為は,国会が裁量権を持たない覊束行為である。
 憲法前文1段2文は,「そもそも国政は,国民の厳粛な信託によるものであって,その権威は国民に由来し,その権力は国民の代表者がこれを行使し,その福利は国民がこれを享受する。」と定める。すなわち,主権者たる国民は信託における寄託者であり,国会議員は,その受託者でしかない。そのような国会議員が,寄託者である国民の国政に対する影響力すなわち1票の価値を裁量によって増減させることは,憲法前文の定める「信託」の法理から逸脱する。

(5) 憲法上,国民1人の国政に対する影響力は,① 憲法改正の国会提案に対する承認権(憲法96条1項),② 最高裁判所裁判官の国民審査権(憲法79条2項,3項),③ 普通選挙の投票権(憲法43条1項)の3つにつき,いずれも均一である。①②については,投票できる者につき1人1票が完全に保障されているのであるから,③についても,同様に完全な1人1票が保障されるべきである。

(6) 憲法14条1項等の定める1人1票の保障の下で,住所による差別を理由とする選挙権の価値の不平等が許容される最大値は,実務上採用可能な技術上の要請から生まれる制限によって,決定されるべきである。選挙権の価値の平等は,選挙区割りを機械的かつ事務的に,人口に基づいて定めるだけで実現できるのである。
 また,都道府県は,単なる行政区画でしかない。憲法14条1項等は,1人1票を保障し,そのために,人口に基づく選挙区割りを要求しているが,人口に基づく選挙区割りをするためには,ある都道府県と他の都道府県の一部から成る1つの選挙区を認めざるを得ない。都道府県の境界を越えて選挙区割りをすることを禁ずる憲法の前文,条文は存在しない。したがって,憲法は,衆議院選挙の小選挙区は,都道府県の境を越えてでも,人口に基づいて選挙区割りをすることを要求しているといわざるを得ない。

(7) 原告は,均一な人口の選挙区にしようとする誠実な努力によって,本件選挙区間の人口較差につき縮小又は排除可能であったことの立証責任を負う。もし,原告がこの立証責任を果たせば,被告は,本件選挙区間の人口較差は,憲法上許容される一定の目的を達成するために必要であったことの立証責任を負う。そして,原告は,本件において,選挙区間の投票価値の最大較差が前記(1)のとおり1対2.255に及ぶことを立証し,かつ,均一な人口の選挙区にしようと誠実に努力すれば,この1対2.255という投票価値の最大較差を縮小又は排除可能であることも立証した。仮に,被告が,実務上の実行可能性の視点から,個別具体的な事情の下で,各小選挙区の人口を可能な限り均一化するよう最大限誠実に努力しても,「実務上の実行可能性の基準」により,各小選挙区の人口が小選挙区の基準人口(平成17年実施の国勢調査による我が国の人口1億2776万7994人を小選挙区数300で除して得た数)42万5893人より特定の数だけ減少又は増加せざるを得ないことを主張,立証した場合には,上記基準人口からのその限度での乖離は合憲となる。しかし,上記基準人口からの乖離可能な上限の数値は,特定して証明できるものではない。

(8) よって,本件区割規定は憲法に違反して無効であり,これに基づいて施行された本件選挙のうち東京都第2区における選挙も無効とすべきである。

4.争点に関する被告の主張

(1) 選挙制度に関する国会の裁量権

 憲法は,代表民主制を採用する(憲法前文1段,43条1項)とともに,両議院の議員の定数,選挙区,投票の方法その他両議院の議院の選挙に関する事項は法律で定めるべきものと規定し(憲法43条2項,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を国会の裁量にゆだねている。これは,代表民主制の下における選挙制度は,選挙された代表者を通じて,国民の多様な利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし,他方,政治における安定の要請をも考慮しながら,それぞれの国において,その国の実情に即して多種多様で複雑微妙な政策的及び技術的考慮の下に具体的に決定されるべきものであり,そこに合理的に要請される一定不変の形態が存在するわけのものではないからである。
 また,憲法は,各選挙人の投票の価値の平等を要求していると解される。しかしながら,この平等は,国会が両議院の議員の選挙制度を決定する際の唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することのできる政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,違憲の問題が生じるものではない。
 すなわち,国会は,衆議院議員選挙について全国を多数の選挙区に分けて実施する制度を採用する場合には,選挙制度の仕組みのうち選挙区割りや議員定数配分を決定するに当たり,議員1 人当たりの選挙人数又は人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準として考慮するとともに,それ以外の諸般の要素である,都道府県,市町村その他の行政区画,従来の選挙の実績,選挙区としてのまとまり具合い,面積の大小,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況をも同時に考慮すべきである。さらに,人口流動等の社会情勢の変化を選挙区割りや議員定数にどのように反映させるかという点も,国会が政策的観点から考慮できる要素の一つである。
 このように,選挙区割りや議員定数の配分の具体的決定に当たっては,国会は,投票価値の平等の要請以外にも正当に斟酌することが許される政策的,技術的な諸要素に関係する事項を考慮して,公正かつ効果的な代表という目標を実現するために適切な選挙制度を具体的に決定することができる。
 したがって,選挙制度に関する問題は,代表民主制の下における選挙制度の在り方を前提とした国会の裁量権の範囲の問題としてとらえられるべきものであり,国会の定めた選挙制度に関する規定が合憲であるか否かは,国会が選挙に関する事項について有する裁量権の範囲を逸脱しているか否かという観点から判断されるべきである。そうすると,国会が定めた選挙に関する制度が,国会において正当に考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお,一般的合理性を有するものとは到底考えられない程度に達しているときに初めて,国会の裁量権の合理性の限界を超えていると推定され,これを正当化すべき特段の理由が示されない限り,憲法違反と判断されることになる。

(2) 本件区割規定の合憲性について

ア.区割改定法の成立過程

(ア) 平成5年7月18日に実施された衆議院選挙当時における定数較差は,選挙人比で最大1対2.82であったが,これについては,最高裁平成7年6月8日第一小法廷判決・民集49巻6号1443頁において,憲法の選挙権の平等の要求に反するものではないと判断された。
 しかし,国会は,最高裁昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁最高裁昭和60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁最高裁平成5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁の一連の判決において,公職選挙法における衆議院議員定数配分規定が憲法の要求する選挙権の平等の要求に反するものである旨の判断が示されていることにかんがみ,さらに抜本的な改正を図るべく,第128回国会において,平成6年改正法及び設置法を成立させた。
 この設置法によって設置された審議会は,10年ごとの国勢調査の結果によって勧告を行うことを原則としている(設置法4条1項)が,その下においても,同法が,各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情がある場合には勧告を行うことができる旨規定している(同条2項)のは,選挙区の変更に伴う選挙人の投票行動や候補者・政党の政治活動等に与える影響を考慮して,選挙制度の安定性の要請に配慮しつつ,例外として,10年ごとの勧告を待てないような特段の事情が生じた場合には勧告を可能とすることで,選挙制度の安定性の要請と投票価値の平等をはじめとする他の要請との調和を図ったものである。
 また,設置法は,審議会が改定案を作成するに当たっては,投票価値の平等に配慮して,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした(同法3条1項)ほか,過疎地域に対する配慮などから,人口の多寡にかかわらず各都道府県にあらかじめ定数1を配分することによって,相対的に人口の少ない県に居住する国民の意見をも十分に国政に反映させることができるようにすることを目的として,同条2項により,一人別枠方式を採用した。この点については,選挙区割りを決定するに当たっては,国会は,投票価値の平等のみならず,それ以外の諸般の要素をも考慮することができるのであって,都道府県は,選挙区割りをするに際して無視することができない基礎的な要素の一つであり,人口密度や地理的状況等のほか,人口の都市集中化及びこれに伴う人口流出地域の過疎化の現象等にどのような配慮をし,選挙区割りや議員定数配分にこれらをどのように反映させるかという点も,国会において考慮することができる要素というべきである。
 したがって,一人別枠方式を含む設置法3条所定の選挙区割りの基準は,国会が以上のような要素を総合的に考慮して定めたものと評価することができるのであって,これをもって投票価値の関係において国会の裁量範囲を逸脱するものということはできないから,憲法14条1項等に違反するということはできない。

(イ) 審議会の平成12年実施の国勢調査結果に基づく勧告を受けて,平成14年7月31日,区割改定法が成立した。同法によっても,人口最少選挙区との較差が2倍以上の選挙区は完全に解消されるということはなかったものの,その数は,改正前には95であったものが改定により9と大幅に減少した。人口較差2倍以上の選挙区が上記のように残ったのは,審議会において,個々にその縮減を図るべく検討が行われたものの,市区等は基礎的自治体であることからできるだけその分割を避けるべきであること,仮に分割するとしてもこれらの選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当でなく,かつ困難であると考えられること,市区を分割しようとすれば近接する多数の選挙区を含めた大幅な見直しが必要となること,最大較差が1対2.064であり,2倍以上の選挙区の数は9という結果は設置法の許容するものであり,あえてそれ以上の見直しは必要ないと判断されたことによるものである。

(ウ) 区割改定法施行後に行われた平成17年9月11日施行の衆議院議員総選挙に関する前記最高裁平成19年6月13日大法廷判決は,最高裁平成11年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁(以下「最高裁平成11年(行ツ)第7号大法廷判決」という。)及び最高裁同年月日大法廷判決・民集53巻8号1704頁(以下「最高裁平成11年(行ツ)第35号大法廷判決」という。)を踏襲し,設置法に規定される基準は憲法14条1項等に違反するものではないとした上,同基準に基づいて行われた選挙区の改定の結果,前記(イ)のとおり,平成12年国勢調査による人口を基にした区割規定の下での選挙区間の人口の最大較差が1対2.064と,1対2をきわめてわずかに超えるものにすぎず,最も人口の少ない選挙区との人口較差が2倍以上となった選挙区の数は9にとどまるものであったことからすれば,審議会が作成した改定案が設置法が規定する基準に反するものということはできないし,国会が上記改定案のとおり選挙区割りを改定したことが投票価値の平等との関係において国会の裁量の範囲を逸脱するものであるということはできない,選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.171であったというのであるから,選挙施行時における選挙区間の投票価値の不平等が,一般に合理性を有するものと考えられない程度に達し,憲法の投票価値の平等の要求に反する程度に至っていたということはできない旨判示した。

(エ) 審議会は,平成17年12月から平成18年2月にかけて,平成17年実施の国勢調査結果に基づいて,設置法4条2項にいう「各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情がある」と認められるかどうか検討を行った。その結果,選挙区間における最大較差は1対2.203,較差2倍を超える選挙区が48認められたものの,都道府県や市町村という行政区画を前提に区割りを行う以上,最大較差1対2.203というのは,これまでの最高裁判決に照らしても一般に合理性を有すると考えられない程度に達しているということはできず,また,最少選挙区との較差が2倍を超える選挙区が48あることも,過去の状況に照らし必ずしも異常とはいえないこと,市区町村において多くの合併が行われ,今後も行われることが予定されて,現在新たな基礎自治体として地域の一体化が進められている途上であるというべき状況などを斟酌し,審議会は,「各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情がある」とは認められないと判断し,勧告は行わないこととした。

(オ) 本件選挙は,このような経過を経て行われた。

イ.以上のとおり,区割改定法の成立過程及び投票の価値の平等に関する過去の最高裁判決(最高裁昭和58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁,前記最高裁昭和60年7月17日大法廷判決,最高裁昭和63年10月21日第二小法廷判決・民集42巻8号644頁,前記最高裁平成7年6月8日第一小法廷判決,最高裁平成11年(行ツ)第7号大法廷判決,最高裁平成11年(行ツ)第35号大法廷判決,最高裁平成13年12月18日第三小法廷判決・民集55巻7号1647頁,前記最高裁平成19年6月13日大法廷判決)等を総合すれば,本件区割規定に基づいて実施された本件選挙における前記の較差が,国会において正当に考慮し得る諸般の要素を考慮してもなお,一般に合理性を有するものとは認められない程度に達し,憲法の投票価値の平等の要求に反する程度に至っていたということはできない。

ウ.したがって,本件区割規定は,憲法の各規定に違反するものではない。

(3) 原告の主張に対する反論

ア.原告は,「選挙権の価値は平等であり,住所によって差別されない」という憲法上の保障は,憲法14条1項等に基づく1人1票の保障に優越する憲法上の他の条文又は他の条文に根拠を持つ憲法の趣旨によってのみ修正,変更され得る旨主張し,本件区割規定が是認される要素に,憲法上保護されるべき権利又は利益として根拠づけることができるものはないから,本件区割規定は違憲である旨主張する。
 しかし,そもそも,国会議員の選挙に関しては,投票の有する影響力の平等という点で,原告が主張するところの1人1票の原則は憲法上保障されていない以上,原告の主張はその前提を欠いており,失当である。

イ.原告は,「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである。それゆえ,国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り,それによって投票価値の平等が損なわれることになっても,やむを得ないものと解すべきである。」,「選挙区割りで議員定数配分を定める規定の合憲性は,結局は,国会が具体的に定めたところがその裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。」旨判示する最高裁判決の多数意見は,国会議員が,上記のように議員定数配分規定の立法に関して当事者又は利害関係者であるという重大な事実を考慮していない議論であって,合理性や説得力を欠く旨主張する。しかし,憲法47条においては,「選挙区,投票の方法その他両議員の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める。」と明記され,選挙区や選挙制度の決定は国会にゆだねられており,その判断に裁量が認められている。原告が援用する民事訴訟法上の除斥や忌避の制度,会社法の利害関係者による議決権行使の制限等の法理は,いずれも異なる制度における原則であって,選挙制度に関する憲法解釈の当否に影響するものではあり得ない。原告の主張は,独自の見解であって理由がない。

ウ.原告は,都道府県は単なる行政区画にすぎず,憲法はあくまでも衆議院選挙の小選挙区について,都道府県の境を越えてでも,人口に基づいて選挙区割りされることを要求している旨主張する。
 しかし,都道府県は,これまで我が国の政治及び行政の実際において相当の役割を果たしてきたことや,国民生活及び国民感情においてかなりの比重を占めていることなどにかんがみれば,選挙区割りをするに際して無視することのできない基礎的な要素の一つというべきであり,このこと等の諸般の事情を考慮して,都道府県の境を越える選挙区割りをしないことも国会の裁量に属することであるから,原告の上記主張も失当である。

【判旨】

1.代表民主制の下における選挙制度は,選挙された代表者を通じて,国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし,他方,政治における安定の要請をも考慮しながら,それぞれの国において,その国の実情に即して具体的に決定されるべきものであり,そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではない。憲法もまた,上記の理由から,国会の両議院の議員の選挙について,およそ議員は全国民を代表するものでなければならないという制約の下で,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(憲法43条,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量にゆだねている。このように,国会は,その裁量により,衆議院議員及び参議院議員それぞれについて公正かつ効果的な代表を選出するという目標を実現するために適切な選挙制度の仕組みを決定することができるのであるから,その具体的に定めたところが,上記の制約や法の下の平等などの憲法上の要請に反することにより,国会の上記のような裁量権を考慮してもなおその限界を超えており,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁最高裁昭和56年(行ツ)第57号同58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁。なお,参議院議員選挙に関する判例として,最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1521頁参照)。

2.国民が選挙を通じて国政に参加する権利は,憲法の規定する人権の中でもきわめて重要な位置づけを有するものであり,国民主権の原理及び憲法14条1項からすると,憲法は,議員の定数,選挙区等を定める立法について,選挙権の内容の平等,すなわち投票価値の平等を最重要の理念として要求していると解される。しかしながら,かかる理念は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであって,他の政策的目的ないし理由と合理的に調和するものである限り,各選挙人の投票の有する影響力,すなわち投票価値が,その投票する選挙区により完全に平等でないとしても,それが国会の裁量権の行使として合理性を是認し得るものである範囲内においては,憲法14条1項その他の憲法の規定に反するものではないと解すべきである。
 憲法は,国会が衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度を採用する場合には,議員1人当たりの選挙人数又は人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることを求めているというべきである。しかし,国民は,全国一律の平準化された存在ではなく,国の施策も,決して全国一律の平板なものではないのであって,国民の国政に対する利害関係には,しばしば,都道府県等の行政区画をまとまりとして濃淡が生じることがあり,かような利害関係の濃淡は,地勢や交通事情等の諸要素によっても影響を受けることがある。また,住民の選挙によって首長や議員が選出される都道府県等の地方公共団体の意思決定は,単にその区域内の住民に対する施策のみならず,国政全般に影響を及ぼすこともあり得る。とりわけ,都道府県は,歴史的にも政治的,経済的,社会的にも独自の意義と実体を有し,一つの政治的まとまりを有する単位として機能しているのであって,選挙区割りをするに当たって,無視することのできない基礎的な要素の一つというべきである。また,上記に判示したところにかんがみれば,都道府県の内部において選挙区割りをするに当たっても,市町村その他の行政区画,地勢,交通等(設置法3条2項参照)のほか,従来の選挙の実績,選挙区としてのまとまり具合い,面積の大小,人口密度,住民構成等諸般の事情がある程度考慮されるべきであるといわざるを得ない(このように解しても,国会議員が全国民を代表する旨を定める憲法43条1項と矛盾するものではない。)。このように,選挙区割りや議員定数配分の具体的決定に当たっては,複雑かつ高度な政策的な考慮要素並びに人口等の国勢調査結果に応じた改定処理その他に要する技術的及び時間的な考慮要素があり,これら諸要素をどのように総合判断して具体的決定に反映させるか,又はさせないかについて一定の客観的基準が存するものではないから,選挙区割りで議員定数配分を定める規定の憲法適合性の有無に係る判断に当たっては,選挙人の投票価値の平等の実現を最重要の憲法上の要請であるとする立場によりつつも,国会が具体的に定めたところがなお国会の裁量権の合理的行使として是認されるかどうかによって決するほかはない。そして,国会が社会的,経済的条件の変容に応じて不断に生じる人口の変動などを反映させたものとみるべき,具体的に決定された選挙区割りや議員定数配分の下において選挙人の有する投票価値に著しい不平等状態が生じ,かつ,それが相当期間継続しているにもかかわらずこれを是正する措置を講じないことが国会の裁量権を超えると判断される場合には,上記規定が,憲法に違反するに至るものと解するのが相当である。
 設置法3条は,1項において,選挙区の改定案の作成につき,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきことを基準として定めており,投票価値の平等に配慮していると認められる。また,同条2項が採用する一人別枠方式は,たしかに,人口流出地域,とりわけ過疎地域に対する配慮などから,相対的に人口の少ない県に定数を多めに配分し,人口の少ない県に居住する国民の意見をも十分に国政に反映させることができるようにするために,投票価値の平等の他に考慮すべき政策的要素として,一定の合理性を有するというべきではあるものの,事案1(7)のような不平等状態をもたらした原因となっていると認められる点にかんがみると,一人別枠方式の合理性につき何らの問題もないとはいえない。

3.本件区割規定は,審議会が平成12年実施の国勢調査結果に基づき作成した改定案のとおりの内容の区割改定法により,小選挙区選挙の選挙区割りが改定されたものであるところ,平成17年実施の国勢調査による人口を基にすると,事案1(7)に記載のとおり,本件区割規定の下における選挙区間の人口の最大較差は1対2.203であり,人口が最も少ない選挙区と比較して人口較差が2倍以上となっていた選挙区が48あった。この数値は,投票価値の平等実現という最重要の憲法上の要請からみれば,平成12年実施の国勢調査結果による上記最大較差が1対2.064であり,人口較差が2倍以上となる選挙区の数は9にとどまっていた状況よりも大きく悪化しており,憲法上好ましいものではない。しかし,設置法3条1項の規定は,選挙区間の人口の最大較差が2倍以上とならないようにすることを基本とし,同条2項の定める一人別枠方式による各都道府県への定数の配分を前提とした上で,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に区割りを行い,選挙区間の人口の最大較差ができるだけ2倍未満に収まるように区割りが行われるべきことを定めたものと解されるところ,上記改定案は,市町村の分割をできるだけ回避しつつ,前示のような諸要素を考慮して定められたものである。そして,上記の人口較差は,人口の変動の予測可能性に係る合理的根拠の有無についての検討はしばらく措くとして,最大で2倍を約10パーセント超過しているものの,人口較差が2倍以上となった選挙区の数は全選挙区の約6分の1にとどまっていることに照らすと,本件区割規定による区割りは,強固な合理性があるとまではいえない一人別枠方式を主たる原因とする選挙人の投票価値の不平等状態をもたらしているものと認められるが,進んで選挙制度の全体において投票価値の著しい不平等状態に立ち至らせているものとまでは認められないから,その限度ではなお合理性を残していると認めることができる。
 また,こうした不平等をもたらした審議会の上記勧告見送りについてみるに,措置法4条2項は,10年ごとの勧告の例外として「各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるとき」には国勢調査の結果を待たずに勧告を行うことができるとしているが,本件においては,人口の変動の予測可能性に係る合理的根拠の有無を含めて「特別の事情」を認めるに足りる的確な証拠は見出されないのであるから,勧告すべき特別の事情が存したと認めることもできない。したがって,審議会の上記勧告見送りの結果として国会による本件区割規定の改正作業の未着手という事態のまま現在に至ったこと自体につき,国会の裁量権の行使として合理性を欠いていたともいえない。
 以上によれば,本件区割規定は,本件選挙施行時において,憲法に違反するものであるとはいえない。

4(1) 原告は,1人1票の選挙権についての憲法上の保障は,とりわけ衆議院議員選挙については,各選挙区から選出される代表者すなわち議員の数の配分を人口分布に比例して配分すべく,国会の立法権限を覊束している旨主張する。
 たしかに,選挙制度についての立法において,投票価値の平等は最重要の憲法上の原則であるという点は首肯し得るとしても,前示のとおり,それが選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的な諸要素なども合理的な範囲内において併せ勘案し得るものであって,そのために1票の価値の平等が完全に守られる結果とならなくとも,憲法に違反するとはいえないと解すべきである。
 したがって,原告の上記の主張は,採用することができない。

(2) 原告は,投票価値の平等の保障のある「正当な選挙」のルールは,憲法に根拠づけられていない他の利益によって減殺されることはないというべきところ,① 市区等は基礎的自治体であることからできるだけ分割を避けるべきであること,② 仮に分割するとしてもこれらの選挙区についてのみ異なる新たな基準を設けることは適当でなく,かつ困難であると考えられること,③ 市区を分割しようとすれば近接する多数の選挙区を含めた大幅な見直しが必要となること,④ 当時の最大較差や較差2倍以上の選挙区の数は設置法の許容するものであり,あえてそれ以上の見直しは必要ないということは,憲法のいずれの条文によっても,保護されるべき権利又は利益として根拠づけることはできない旨主張する。
 しかし,合理的な理由がある場合には,形式的な平等が守られなくとも,必ずしも憲法14条1項の定める法の下の平等に反するものではない。なぜなら,選挙権の内容,つまり投票価値の内容を決定するに当たっては,法の下の平等の原則は,最も重要な位置を占めるものではあるが,他の政策的目的ないし理由との調和も図らなければならない以上,これらを考慮しないことは相当でないといわざるを得ない。そうであるならば,本件区割規定による1票の価値の較差は,前記した問題を指摘し得るものの,なお合理的な理由に起因して生じたものであるといわざるを得ず,さらに,投票価値の不平等な状態も著しいとまではいえないのであるから,本件区割規定は憲法14条1項に違反するものではない。
 したがって,原告の上記の主張は,採用することができない。

(3) 原告は,選挙人の投票価値の平等を以下の4要素,すなわち,(ア) 都道府県,(イ) 人口密度や地理的状況,(ウ) 過疎化現象,(エ) 一人別枠方式,を理由として減殺することによって得られる利益は,憲法により保護されている利益とはいえず,この利益に比して,投票価値の平等の実現によって得られる利益の方が圧倒的に優越する旨主張する。
 原告のこうした憲法上の利益考量の仕方が相当であるかという点はしばらく措き,原告主張のように,後者の利益が憲法の条文に直接根拠を置くものでないと解釈して,前者の憲法上の利益が後者の非憲法上の利益を圧倒的に優越するものとして存在するとまでは,必ずしも明確に断定することはできない。まず,原告の上記の主張は,(ア)(イ)(ウ)に係る主張については具体性を欠いたものであるといわなければならない。原告がそうした憲法上の利益の優越性が存することをもって本件区割規定の違憲無効を主張しようとするのであれば,訴訟手続上の原則に従って,上記(エ)については一応別として,(ア)(イ)(ウ)については,関連する法律を定めた際の立法事実と比較考量することにより法律の意義の優劣などを明らかにし,又は国会が考慮した他の政策的目的ないし理由との合理的な調和を著しく欠くことを立法事実をもって具体的に基礎づけて主張することを要し,かつ,証拠をもって各事実を明らかにした上で上記のような利益考量の有無など憲法適合性に係る法律上の主張をすべきものであると解するのが相当である。しかるところ,原告は,これらの事実に係る主張を殆どすることなく,また,的確な証拠も見出すことができない。
 したがって,原告の上記の主張は,その前提を欠き,採用することができない。

(4) 原告は,前記最高裁平成19年6月13日大法廷判決が判示するところは,国会議員が,議員定数配分規定の立法に関しては当事者又は利害関係者であるという重大な事実を考慮していない議論であって,合理性や説得力を欠く旨主張するが,国会議員が,議員定数配分規定の立法に関して利害関係を有しているにせよ,同規定の憲法適合性を裁判所が判断するに当たって,1票の価値の平等以外の要素を勘案することは必ずしも否定されるべきではないことは,前示のとおりである。
 したがって,原告の上記の主張は,採用することができない。
 なお,民事訴訟法23条1項1号の裁判官の除斥,同法24条1項の忌避,利害関係者による議決権行使禁止の法理を定める会社法369条2項,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律95条2項,同189条3項は,本件とは全く異なる問題に関する規定であって,本件区割規定の憲法適合性を争う本件においてこれらを援用する原告の主張は,その前提を異にし,失当である。

(5) 原告は,憲法上,国民1人の国政に対する影響力は,① 憲法改正の国会提案に対する承認権,② 最高裁判所裁判官の国民審査権,③ 普通選挙の投票権の3つにつき,いずれも均一であるから,①②と同じく,③についても,同様に完全な1人1票が保障されるべきである旨主張する。しかし,①②と③とは,異なる問題についての投票に係る参政権であって,①②について完全な1人1票が保障されていることをもって,直ちに③も同一であるべきであるとはいえないことは,前示のところに照らして,明らかである。
 したがって,原告の上記の主張は,採用することができない。

(6) 原告は,選挙権の価値の平等は,選挙区割りを機械的かつ事務的に,人口に基づいて定めるだけで実現でき,また,都道府県は単なる行政区画でしかなく,憲法は,衆議院選挙の小選挙区は都道府県の境を越えてでも人口に基づいて選挙区割りをすることを要求している旨主張する。しかし,選挙区割りを定める際,行政区画の分割をできるだけ回避しようとすることは,地方公共団体の一体化の維持や,恣意的な区割りの防止という観点からも合理性を有するというべきであるし,都道府県が,選挙区割りをするに際して無視することのできない基礎的な要素の一つというべきであることは,前示のとおりである。
 したがって,原告の上記の主張は,採用することができない。

(7) その他,原告がるる主張するところは,いずれも当裁判所の前記判断を動かすものではない。

5.結論

 以上によれば,原告の請求は理由がないから,これを棄却する。

posted by studyweb5 at 10:24| 下級審裁判例 | 更新情報をチェックする

2011年08月31日

最新下級審裁判例

仙台高裁第2民事部判決平成22年04月22日

【事案】

1.平成15年5月下旬ころ,左大腿部に熱傷を負った控訴人が,その被害は当時使用していた携帯電話機の欠陥により生じたものであるとして,その製造業者である被控訴人に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づき,損害金545万7370円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成17年6月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案。

2.控訴人は,平成15年5月20日午前7時50分ころ,肩書住所地を出て自動車で勤務先に向かったが,その際に本件携帯電話をズボン前面左側ポケットに入れた。
 控訴人は,同日午前8時30分ころ,○○○に出勤し,その後現場立会監督業務などのため2か所の現場に赴いた後,設計業務に従事した。平成15年5月当時は,翌月4日締切の設計業務など設計及び設計変更業務にも従事し,多忙であった。
 控訴人は,5月20日の業務中,現場への連絡用のため2,3回程度本件携帯電話を使用したが,支障なく連絡は済ませたし,現場作業や運転中,事務所でデスクワークをしている間においても,本件携帯電話をズボン前面左側ポケットに入れたままにしていたが,特に異変は感じなかった。
 控訴人は,同日午後7時30分ころ,勤務を終え,午後8時過ぎに帰宅し,仕事用の服装のままコタツに入り,午後8時30分から午後11時ころまでの間(本件時間帯),居間のコタツで晩酌(焼酎400cc程度をロックで飲酒)をしながら夕食を取った。この間,控訴人は,コタツの中で足を伸ばしたり,胡座をかくなどしていたが,疲れていたこともあってコタツを出ることはなかったし,酔って居眠りをしてしまったときもあった。その間,控訴人は本件携帯電話を同ポケットに入れたままであった。
 控訴人は,その後,入浴の上,同日午後11時10分ころ就寝した。その際,本件携帯電話は,机の上に置いたACアダプタで充電中で,控訴人の身体には接触した状態ではなかった。
 控訴人は,平成15年5月21日午前1時ないし2時ころ,就寝中,ひりひりして痛い感じがして目が覚めた。見ると控訴人の左大腿部にみみず腫れがあり,これを妻と確認し,本件熱傷に気が付いた。翌朝になってから見ると,水ぶくれになっていた。昨日着用していた作業ズボンには支障はなかった。

(参照条文)製造物責任法

2条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。
2  この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
3  この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。
一  当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)
二  自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者
三  前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

3条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

【判旨】

1.本件は,控訴人がその左大腿部に熱傷を負い,その原因は当時使用していた本件携帯電話の欠陥にあるとして,本件携帯電話の製造業者である被控訴人に対し,製造物責任法3条又は民法709条に基づき,損害賠償を請求するものであるところ,被控訴人は,控訴人の熱傷が本件携帯電話から発生したという製品起因性について否認するとともに,本件携帯電話の欠陥の存在についてもこれを否認している。
 このような場合には,製造物責任法の趣旨,本件で問題とされる製造物である携帯電話機の特性及びその通常予見される使用形態からして,製造物責任を追及する控訴人としては,本件携帯電話について通常の用法に従って使用していたにもかかわらず,身体・財産に被害を及ぼす異常が発生したことを主張・立証することで,欠陥の主張・立証としては足りるというべきであり,それ以上に,具体的欠陥等を特定した上で,欠陥を生じた原因,欠陥の科学的機序まで主張立証責任を負うものではないと解すべきである。すなわち,本件では,欠陥の箇所,欠陥を生じた原因,その科学的機序についてはいまだ解明されないものであっても,本件携帯電話が本件熱傷の発生源であり,本件携帯電話が通常予定される方法により使用されていた間に本件熱傷が生じたことさえ,控訴人が立証すれば,携帯電話機使用中に使用者に熱傷を負わせるような携帯電話機は,通信手段として通常有すべき安全性を欠いており,明らかに欠陥があるということができるから,欠陥に関する具体化の要請も十分に満たすものといえる。

2.これを本件についてみるに,携帯電話は,無線通信を利用した電話機端末(携帯電話機)を携帯する形の移動型の電気通信システムのことをいい,その特性から,携帯電話機を衣服等に収納した上,身辺において所持しつつ移動でき,至る所で,居ながらにして電気通信システムを利用できることにその利便性や利用価値があるのであるから,これをズボンのポケットに収納することは当然通常の利用方法であるし,その状態のままコタツで暖を取ることも,その通常予想される使用形態というべきである。ちなみに,被控訴人も,ズボンのポケットに収納したままコタツで暖を取ることを取扱説明書において禁止したり,危険を警告する表示をしてないところである。
 なお,被控訴人は,取扱説明書の本件携帯電話を高温の熱源に近づけないようにという警告表示がこれに当たるかのような主張をするが,コタツがそこにいう「高温の熱源」に当たるとは直ちにはいい難いし,上記警告表示が,携帯電話機をことさらコタツの熱源に接触させるような行為はともかくとして,これをズボンのポケットに収納した状態のままコタツで暖を取るという日常的行為を対象にしているとは到底解されない(仮に,そのような日常的行為の禁止をも含む趣旨であるとしたならば,表示内容としては極めて不十分な記載であり,警告表示上の欠陥があるというべきである。)。

3.そうすると,控訴人は,本件携帯電話をズボンのポケット内に収納して携帯するという,携帯電話機の性質上,通常の方法で使用していたにもかかわらず,その温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時間持続する事象が発生し,これにより本件熱傷という被害を被ったのであるから,本件携帯電話は,当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているといわざるを得ず,本件携帯電話には,携帯使用中に温度が約44度かそれを上回る程度の温度に達し,それが相当時間持続する(異常発熱する)という設計上又は製造上の欠陥があることが認められる。

4.その原因として,具体的には,①本件リチウムイオン電池に係る電池パック下部のコネクタカバーが喪失していたため,電池パック下部がむき出しになっていたことから,ホコリが電池パック内部に混入し,電池の内部に微少な物質が混入することによって,電池内部の電流が短絡(ショート)し,原因物質が融解して消滅するまで温度が上昇して,異常発熱した可能性が考えられるところ,ほかにも,②何らかの理由で本件リチウムイオン電池に外部から力が加わった結果,電池内部に微細な損傷が生じ,その後の充放電の繰り返しにおいて損傷が拡大して電池の内部で短絡(ショート)が発生し,これにより本件リチウムイオン電池が異常発熱した可能性,③本件携帯電話が何らかの理由により,本件時間帯において待ち受け状態から通話状態に切り替わり,それが持続したことに加えて,コタツ内にあったことから周囲温度が37度以上となり,これに連続通話状態における8.0度程度の温度上昇が加わった結果,本件携帯電話の温度が45度前後に達し,これが本件時間帯において持続した可能性,④コタツの熱による加熱が外部熱源となって本件リチウムイオン電池に作用し,熱暴走を引き起こし異常発熱につながった可能性などを指摘し得るところである。そして,低温熱傷が問題となるような約44度かそれを上回る程度の温度上昇ではPTC(発熱防止のために内臓された温度を感知して電流を遮断する電流制限素子)は作動しない事実が認められ,ほかにこのような事態が発生し,温度上昇が44度程度で持続した場合の対応策が本件携帯電話(本件リチウム電池を含む。)に施されていた形跡はない。
 しかしながら,いずれにしても,また,ほかの原因が考えられるとしても,製造物責任法においては,控訴人がその欠陥の部位,具体的原因,異常発生の科学的機序等を主張・立証することまでは必要でないことは,前記のとおりである。

5.以上によれば,本件携帯電話には製造物責任法2条2項にいう欠陥があったことが認められる。

 

千葉地裁刑事第1部判決平成22年05月26日

【事案】

第1.罪となるべき事実

 被告人両名は,平成21年7月20日,千葉県a市bc丁目d番e号所在の被告人A方において,被告人両名の長男であり精神疾患にり患していたC(当時35歳)が,被告人Aに対し,その頭部を殴り,その背中をける等の暴力をふるい,被告人Bがとっさに包丁を示してその暴力を制止しようとしたのに対し,「やれるもんならやってみろ。」と言って同人に殴りかかるなどし,被告人Aが背後から首をバンダナで絞めてその暴力を制止しようとしたのに対し,同バンダナを外そうとするなどしたことから,身の危険を感じるとともに,上記Cの精神疾患は治らず,今後も同人の暴力はなくならないだろうと将来を悲観して,同人を殺害するしかないと考え,ここに被告人両名は共謀の上,同日午後9時30分ころ,被告人両名の生命,身体を防衛するため,上記Cに対し,防衛に必要な程度を超え,殺意をもって,その頸部に電気コードを巻き付けて強く絞め付け,よって,そのころ,同所において,同人を頸部圧迫により窒息死させて殺害した。

第2.争点

 弁護人は,被告人B(以下「父」という。)及び被告人A(以下「母」という。)が,C(以下「息子」という。)の首を電気コードで絞めて殺害した行為(以下「本件殺害行為」という。)は過剰防衛に当たる旨主張し,被告人両名もこれに沿う供述をしているところ,検察官は本件殺害行為は過剰防衛に当たらない旨主張する。

第3.前提事実

1(1) 父及び母は,夫婦であり,息子は,父及び母の長男である。
 事件当時,父は67歳で,身長165センチメートル,体重50キログラムで,糖尿病にかかっていた。母は61歳で,身長155センチメートル,体重48キログラムであり,左足の指に坐骨神経痛があった。
 息子は,事件当時,35歳で,身長180センチメートル,体重84キログラムであった。

(2) 息子は,平成12年ころから精神疾患を発症し,事件当時まで,精神科に入通院して治療を受けていた。息子の精神疾患は,心臓が2つあるという体感幻覚を起こして胸が苦しくなるなどといった症状を起こすものであり,息子は症状が起きると精神的に不安定になり,父や母などに自分の気が済むまで暴力をふるい,父や母が素手で反撃すると逆上し,さらに暴力をふるっていた。
 父及び母,息子は,平成15年ころまで千葉県内にある本件犯行場所(以下「自宅」という。)で同居していたが,同年,息子の暴力から逃げるために父は東京都内にマンションを購入し,平日は上記マンションから通勤し,週末に自宅へ戻るという生活をするようになった。母は,自宅で息子と同居していたが,息子の暴力がひどくなると自宅を出て上記マンションに逃げ,息子の精神状態が落ち着いたころに自宅に戻るということを繰り返していた。
 なお,母は,平成21年6月23日ころ,息子に殺してくれと頼まれたことから,座っている息子の後方からバンダナ(一辺が約57センチメートルの正方形で,布製のもの。以下単に「バンダナ」という。)で息子の首を絞めたところ,息子が正気に戻ったことがあった。

2(1) 平成21年7月20日の夕方ころ,自宅において,息子は,母に対し,体調が悪いので救急車を呼ぶよう頼んだが,母は救急車を呼ばなかった。そこで息子は自ら救急車を呼んだが,救急車が到着する前に,これをキャンセルした。母が救急車をキャンセルした理由を聞くと,息子は,「お前を殴るためだ。」と言って母の左耳付近をこぶしで1回殴った。

(2) 同日の夕食中,息子は,自宅に酒がないことに機嫌を損ね,夕食後には,胸が苦しいと訴えた。母が,睡眠薬を飲んで寝るよう勧めると,息子は,「おれを眠らせといて朝になったらいないんだろう。」などと言って,台所の流し台付近で,母に対し,頭部をこぶしで1回殴り,背中に回しげりをし,口付近をこぶしで1回殴り,首を手で絞めた。
 母は,息子の手を振りほどいて息子の背後に回り込み,息子の首を右腕で絞めようとしたが,すぐに右腕をほどかれてしまったため,台所と連結しているリビングにバンダナを取りに行き,台所とリビングの境界付近で,バンダナを三角に2つ折りにして背後から息子の首に巻き付け,首の後ろでバンダナの両端を交差させ,絞め付けようとした。息子はバンダナと首の間に両手の指先を入れ,バンダナを外そうとした。
 このころ,台所で息子の前方にいた父は,息子が母を殴るなどしたのを見て,とっさに菜切り包丁(以下単に「菜切り包丁」という。)をつかみ,「やめろ。」と言って息子に突きつけた。しかし,息子は無言で父に歩み寄り,右のこぶしを振り上げて父に殴りかかろうとしたため,父は菜切り包丁を息子の腹付近に突き出したが,ほとんど刺さらず,刃の部分が根元から折れて床に落ちた。そこで父は,出刃包丁(以下単に「出刃包丁」という。)を出し,「やめろ。やめないと刺すぞ。」と言って出刃包丁を息子に示したが,息子は,「やれるもんならやってみろ。」と言って右手を振り上げ,殴るような形で父に近寄ってきた。そこで父は,出刃包丁を息子の腹付近に突き出したが,菜切り包丁と同様にほとんど息子には刺さらず,刃の部分が根元から折れてしまった。そこで父は,息子に殴られると思い,両手で頭を抱えるようにしてその場にしゃがみこんだが,殴られなかったので息子を見ると,母が息子の背後から首の部分をスカーフのようなもの(バンダナをさす。)で押さえていた。
 母は,息子の首を背後からバンダナで絞めながら,後方にあったリビングのソファ(2人掛けのもの。以下,単に「ソファ」という。)方向へと引っ張り,息子はよろけるように後ろに下がっていった。そこで父は,息子の右足にしがみ付き,頭で息子の腹を押すようにして母に加勢し,息子は,ソファに座るような状態で倒れ込んだ。そして,母は,ソファの背もたれの後ろから,体重をかけて息子の首をバンダナで絞めた。

(3) 息子がソファに倒れ込んですぐ,父は,廊下から,パソコン用電気コード(全長216センチメートル,幅0.7センチメートルのもの。以下単に「コード」という。)を持ち出し,結び目を作って輪のようにし,「C君これしかないよ。」と言って,息子の頭の上からコードの輪の部分を首に通して巻き付け,一人で息子の首を絞めようとした。しかし,うまく絞まらなかったため,父は,「そっちを持って。」と言ってコードの片端を母に渡し,母は,バンダナから手を放してコードを受け取った。そして,父と母は,同日午後9時30分ころ,母がソファの左側に立ち,父がソファの背もたれの後方に正座するような体勢で,コードの両端をそれぞれ強く引っ張り,約30分間にわたって息子の首を絞め付け,息子を頸部圧迫により窒息死させた。

3.息子は,母に背後からバンダナで首を絞められ,ソファ方面に引っ張られて以降,本件殺害行為に至るまで,両手の指先を首とバンダナの間に入れて両腕を動かし,バンダナを外そうとしていたが,言葉を発することはなく,父や母に暴力をふるうこともなかった。
 また,母が息子をソファ方面まで引っ張り始めた際の息子の位置から,ソファまでの距離はおよそ2メートル程度であり,父が息子に出刃包丁を突き出してから息子がソファに座るまでの時間が10秒程度であり,出刃包丁を突き出してから息子の首をコードで絞め始めるまでの時間は17秒程度であった。
 なお,父が菜切り包丁及び出刃包丁を息子の腹に突き出したことにより,息子は,腹部に2か所,小さく皮がはがれたような傷を負った。

【判旨】

 裁判官及び裁判員は,本件殺害行為について,過剰防衛行為に当たると判断したので,以下その理由について説明する。

第1.過剰防衛の成否について

 本件殺害行為が過剰防衛行為に当たるといえるためには,本件殺害行為が始まった時点,すなわち,父が息子の首にコードを巻き付けた時点(以下「殺害行為開始時点」という。)において,①息子の攻撃が差し迫っていたことと,②本件殺害行為が,父や母の身を守るための行為であったことが必要である。
 そこで,これらについて順に検討する。

1.①息子の攻撃が差し迫っていたか

(1)ア.息子は,父に包丁を2回突き立てられたことで前記の傷を負ったが,その傷は2か所ともきわめて軽いものである。さらに,2か所の傷の軽さは同程度であるが,息子は1回目に菜切り包丁を腹部に突き立てられた後も,「やれるもんならやってみろ。」と言って父に殴りかかるなどしており,ひるんだ様子を見せていない。これらの事情からすると,包丁で腹部に傷を負ったことによって息子の攻撃力が減ったとは考えられない。

イ.また,母が息子の首をバンダナで絞めた点をみても,バンダナがそれほど大きなものではなく,布製で,三角に折って用いられていること,息子が首とバンダナの間に両手の指先を入れてバンダナを外そうとしていたこと,息子の首の部分にはバンダナで絞められたような跡が残っていないこと,母と息子の身長差や体力差からすれば,息子がソファに座るまでの間はもとより,息子がソファに座った後も,息子の首はそれほど強く絞められていなかったと考えられる。
 検察官は,バンダナで首を絞められたことにより,息子は意識を失いかけていたと主張するが,上記のようにバンダナでは首を強く絞められない状況だったにもかかわらず息子が意識を失いかけるとは考えられないし,バンダナを外そうとした息子の行動は息子に意識があったことの表れともいえるから,検察官の主張は認められない。

ウ.以上からすれば,殺害行為開始時点において,息子の攻撃力が下がっていたことはないといえる。
 そして,バンダナが布製で,上記のようにそれほど強く首を絞めることができない形状であることからすると,息子は,殺害行為開始時点において,バンダナを外して父や母に再び攻撃するだけの力を持っていたということができる。

(2) 検察官は,ソファの方向に引っ張られて以降,息子がバンダナを外そうとするほかに父や母に攻撃的な言動をしていないことを指摘する。確かに,このように息子が攻撃的な言動をしていないことは,息子が,殺害行為開始時点において,父や母を攻撃する意思を失っていたことを一応うかがわせる事情である。
 しかし,父が息子に出刃包丁を向けた際の息子の言動からすると,その時点では息子は攻撃意思を失っていなかったということができ,その時点から殺害行為開始時点までは,およそ十数秒しか経っていない。また,事件以前の息子の暴力は,息子自身の気が済むまで父や母に暴力をふるうというものであり,父や母が反撃をすれば,その反撃以上の暴力をふるっていたというのであって,上記のとおり,殺害行為開始時点において,息子はバンダナを外して父や母に攻撃するだけの力も持っている。
 そうすると,殺害行為開始時点直前に,息子がバンダナを外そうとする以外に攻撃的な言動をしていないからといって,殺害行為開始時点に息子が父や母に攻撃する意思を失っていたことが常識的に考えて間違いないということはできない。
 また,検察官は,事件以前に母にバンダナで首を絞められた息子が正気に戻ったことがあるので,殺害行為開始の時点でも息子は正気に戻り,攻撃意思を失っていたはずである旨指摘するが,今回バンダナで首を絞められたことによって息子が正気に戻るとは言い切れない。

(3) 以上からすれば,殺害行為開始時点において,息子はバンダナを外して父や母に攻撃するだけの力を持っており,かつ,息子が父や母に攻撃する意思を失っていたともいえないのであるから,息子がバンダナを外して父や母に再び攻撃する可能性はあったということができる。
 すなわち,息子の攻撃が既に終わっていたという検察官の主張を認めることはできず,殺害行為開始時点において,息子の父や母に対する攻撃は差し迫っていたというべきである。

2.②身を守るための行為といえるか

(1) 殺害行為開始時点において,息子がバンダナを外して父や母に再び攻撃する可能性があったことは前記のとおりである。
 事件以前の息子の父母に対する暴力は,検察官の主張するとおり,父母に生命の危険をもたらすほどのものではなかったといえる。しかし,事件当時,父は包丁を息子の腹部に2回突き出し,母はバンダナで息子の首を絞めるなどして反撃しているところ,事件以前の父母の息子に対する反撃は素手によるものであって,事件当時のように道具を用いたものではなく,事件以前に母が息子の意に反してバンダナで息子の首を絞めたこともないこと,事件以前に息子が父母から反撃された際には,父母の反撃以上の暴力をふるっていたことからすれば,事件当時,息子がバンダナを外して父や母を再び攻撃した場合に,息子が父や母に対し,事件以前より強度の攻撃を加えていた可能性は否定できない。このことに,息子と父母の体格差や体力差も併せ考えると,息子が再び攻撃してきた場合,父や母が殺される危険が全くなかったと断言することはできない。
 そして,本件殺害行為の直前に,父が息子に包丁を示すなどし,母がバンダナで息子の首を絞めるなどした行為が,息子の暴力から父母の身を守るためにされたものであることは明らかであり,この点は検察官も争っていないが,前記のとおり,自宅台所での反撃からソファにおける本件殺害行為までの間隔は,距離にして2メートルほど,時間にしてわずか十数秒であり,上記のとおり,殺害行為開始時点において息子の攻撃が差し迫っていて,父や母が殺される危険が全くなかったとまではいえない状況だったことからすると,弁護人の主張するとおり,本件殺害行為は,直前の反撃行為と同じく,息子の攻撃から父母の身を守るためにされたものと考えるのが自然である。

(2)ア.一方,父は,殺害行為開始時点において,「C君これしかないよ。」と発言しているところ,父母は,捜査段階に検察官に対して,事件以前から息子の暴力に耐えられず,息子の将来を悲観して,息子を殺す以外道はないという気持ちを持っており,父が母に対して,自分が息子を殺したらどう思うかという趣旨の問いかけをしたことがあったなどと供述し,本件殺害行為の際には,その場の息子の暴力から身を守るという気持ちの他に,上記のような息子の暴力に耐えられないという気持ちや息子の将来への悲観もあって息子を殺すしかないと決意し,本件殺害行為に及んだと供述している。ただし,公判では,父母は事件当時の心境や事件以前の心情について,捜査段階の供述とは異なる供述をしている。

イ.父母の捜査段階における供述は,公判における供述に比べて自分や配偶者が不利になることが含まれており,母が手帳に記載していた内容とも合致している。そして,事件以前の息子の暴力の状況に照らせば,父母が息子に対し,殺そうという気持ちが一切浮かばないはずがないと考えられるところ,父母の検察官に対する供述調書の内容は,父母の心情が具体的かつ自然に述べられている。そして,本件殺害行為当時の,「C君これしかないよ。」という父の発言は,父がその場の息子の暴力から身を守るという気持ちだけではなく,将来への悲観など,検察官に述べたような感情を持っていたことの表れであるといえるし,母もそのような父の言葉を聞きながら父を止めることなく本件殺害行為に及んでいるのであるから,本件殺害行為当時,母も父と同じく,身を守るという気持ち以外に将来への悲観などといった感情があったとみるのが自然である。

ウ.そうすると,父母の捜査段階の供述は,公判における供述よりも信用でき,殺害行為開始時点において,父母は,当時の息子の攻撃から身を守るという気持ちだけではなく,将来への悲観など,当時の息子の攻撃から身を守ることとは関係のない感情から息子を殺害しようという気持ちも併せ持った上で,わざと息子を殺害したということができる。

(3) しかしながら,身を守るという気持ち以外に,積極的に相手を攻撃する気持ちがあったとしても,それだけで身を守るための行為ではなくなるわけではなく,身を守るために殺したといえる限りは,その殺害行為は,身を守るために反撃しようとしてやりすぎてしまった過剰防衛行為というべきである。
 本件では,上記のとおり,殺害行為開始時点において,息子の攻撃は差し迫っており,父母に生命の危険が全くなかったとまではいえない状況にある。このことからすると,父母が息子を殺害した行為は,息子の攻撃から身を守るのに必要な反撃の程度を超えるやり過ぎた行為であるということはできるものの,単なる加害行為と同視できるほどにやり過ぎた行為であるということはできない。加えて,本件殺害行為が,息子の攻撃から身を守るためにされた反撃行為からわずか十数秒の間に引き続いてされていることからすると,殺害行為開始時点において,父母から身を守ろうという気持ちが消えてしまい,将来への悲観などから,息子の攻撃から身を守ることと無関係に息子をわざと殺そうという気持ちに変わってしまったに違いないと決めつけることはできない。
 また,父母は30分間にわたって息子の首をコードで強く絞め付けて殺害しているが,単に息子を殺害することだけが目的であれば,これほどの長時間息子の首を絞め付ける必要はない。このように父母が異常に長い時間息子の首を絞めているのは,父母に息子からの反撃を恐れ,身を守ろうという気持ちがあったことの表れとみることができ,父母もこれに沿う供述をしている。
 以上からすれば,本件殺害行為について,身を守るための行為でなかったことが常識的に考えて間違いないとまで言うことはできない。そうすると,疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判のルールに従い,本件殺害行為は,身を守るための行為であったというべきである。

第2. 結論

 以上のとおり,本件殺害行為は,息子の攻撃から身を守るためにやりすぎた反撃行為というべきであり,過剰防衛に当たる。

posted by studyweb5 at 21:00| 下級審裁判例 | 更新情報をチェックする


  【当サイト作成の電子書籍一覧】
司法試験平成30年最新判例ノート
司法試験平成29年最新判例ノート
司法試験平成28年最新判例ノート
平成29年司法試験のための平成28年刑訴法改正の解説
司法試験定義趣旨論証集刑訴法(逐次改頁版)
司法試験定義趣旨論証集刑訴法(通常表示版)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(民法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(民法)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(行政法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(行政法)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(憲法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(憲法)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(会社法)
司法試験定義趣旨論証集(会社法)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(物権)
司法試験定義趣旨論証集(物権)
司法試験平成26年最新判例ノート
司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(民法総則)
司法試験定義趣旨論証集(民法総則)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(刑法各論)
司法試験定義趣旨論証集(刑法各論)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(刑法総論)
司法試験定義趣旨論証集(刑法総論)
司法試験平成25年判例肢別問題集
司法試験平成25年判例論証穴埋問題集
司法試験平成25年判例論証集
司法試験定義趣旨論証集(行政法)

  【最新ニュース・新刊書籍紹介】
司法試験委員会 第149回会議(令和元年7月3日)
弁護側主張 分からない 県弁護士会、裁判員裁判対策を模索
物権法・担保物権法 (伊藤塾呉明植基礎本シリーズ 5)
松川事件70年「諏訪メモ」スクープの元記者・倉嶋さん「冤罪終わらせて」
管理組合の弁護士費用補償=10月から新特約—損保ジャパン
アガルートの司法試験・予備試験 総合講義1問1答 民法
7割のフリーランスが報酬トラブルあり、損保ジャパンが日本初の保険
勾留却下の留学生、海外逃亡 公判打ち切り
条文あてはめ刑法
参院合区解消の協議停滞=地元は低投票率に危機感
リクナビによる「内定辞退率」データ提供の問題点はどこにあったか 法的観点から弁護士が解説
刑事政策の新たな潮流
リクナビ問題が大炎上した真相 “利用者不在”の人材ビジネスに潜む「構造的歪み」とは
知財は経営に寄り添うべき 翌日から世界が変わるダイナミクスがそこにある
大コンメンタール刑法〈第5巻〉第60条~第72条
N国・立花党首のマツコ・デラックス突撃に弁護士「喧嘩の仕方が上手い」
舞鶴女子高生殺人で無罪判決の「中勝美」、再び殺人未遂で逮捕、“獄死“の数奇な人生
刑事法の理論と実務1
第2次大戦中、日系人のふりをして進んで収容所に入ったアメリカ人がいた
<米国民として 日系人と戦争>(3)抵抗 強制収容 分断生んだ
[笑うケースメソッドIII]現代日本刑事法の基礎を問う
ジブラルタル、イランのタンカー解放命令 米国の要請に反し
ゴーン被告は「掃除係」…? 待ち受ける「刑務所生活」の厳しい現実
刑事法実務の基礎知識:特別刑法入門 2
21分内に12件の犯行、男に有罪評決 米オハイオ州
アマゾンが日本で法人税を納めずに済む仕掛け
Facebook「リブラ」公聴会に参加した法律専門家の見解
刑事法判例の最前線
令和2年司法試験の実施日程等について
令和2年司法試験予備試験の実施日程等について
アガルートの司法試験・予備試験 総合講義1問1答 民法
債務放棄、把握から3カ月以内=2次相続めぐり初判断―最高裁
借金の相続放棄 知ってから3カ月以内なら可能 最高裁初判断
ガイダンス 監査役・監査役会の実務
親の親族の債務、認知後3カ月は相続放棄可 最高裁
在外被爆者側の敗訴確定=死後20年、請求権消滅―最高裁
法学セミナー 2019年 09 月号
境の男性「無免許けん引」 罰金命令間違い 無罪 「非常上告」で最高裁判決
水戸地検が道交法の解釈誤り、罰金に 最高裁が取り消し
改訂 弁護士研修ノート 相談・受任~報酬請求 課題解決プログラム
諫早干拓上告審、9月13日判決 最高裁「ねじれ」巡り判断か
弁護士が教える!「不動産賃貸借契約書」を読むときのポイント
仮処分等を活用した反社会的勢力対応の実務と書式〔第2版〕─相談・受任から訴訟までの実践対策─
保釈後逃走検証 検察の再発防止策は心許ない
相次ぐ危害予告「一生を棒に振る」、ネットで100万回殺された唐澤弁護士が警告
〈概説〉民事訴訟法
女性が男性にセックスを強要……それはレイプなのか
リクルートはなぜ就活生の「内定辞退率予測」を売ったのか?学生無視した迷走の背景
現代民事手続法の課題 (春日偉知郎先生古稀祝賀)
弁護士が語る「起業で成功する人の共通点」とは
第2回 プロボノ活動の枠を超え 議員の道を選んだ弁護士が「2020」に描く夢
日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成30年度研修版>
「最高裁」名刺をチラつかせ…裁判所事務官の結婚詐欺を女性が告発
事務官2人が盗撮逮捕もどこ吹く風 最高裁“上級国民”の傲慢
民事訴訟における事案の解明
NHK、3日連続で「受信料」に理解求める番組放送 N国への危機感あらわ
大阪・枚方の寺院、墓地経営の許可狙い裁判所欺く? 「隣接地の所有者も了承」
民事裁判入門 裁判官は何を見ているのか (講談社現代新書)
弁護士探しやすく 分野別検索サービス開始 大阪弁護士会
弁護士と相談者をアプリで身近に結ぶ!「Legalus」が 『かんたん法律相談アプリ』を8月5日(月)にリリース!
簡裁民事ハンドブック3<少額訴訟債権執行編>〔第2版〕 (簡裁民事ハンドブックシリーズ)
佐川氏ら10人、再び不起訴 森友問題 改ざん・背任捜査終結
薬物依存症も障害基礎年金の受給者に?スイス最高裁が決定
新債権法における要件事実と訴状記載のポイント
税金を払わぬ巨大企業 日本だけの問題ではないGAFAの法人税逃れ
宮崎地家裁の冷房停止で検察官も裁判官も汗だく レジオネラ菌検出、再開まで1週間以上
TKC、商事法務研究会との提携を拡充『旬刊商事法務』Web版を提供開始
学び効率が最大化するインプット大全
誤認逮捕された女子大学生の手記
愛媛の女子大生誤認逮捕に「昭和の古い捜査手法」…小川泰平氏が指摘した3点の捜査ミス
司法試験&予備試験 短答過去問題集(法律科目) 令和元年【改正民法完全対応】
愛媛県警に誤認逮捕された20代女性が手記 「悔しかった。許せない」
組織づくりとテクノロジー活用の観点から、これからの法務に求められる機能を考える
未来世代の環境刑法 2 【1-第Ⅳ章】<Principles原理編>
東京弁護士会が調査命令 司法書士法人から「事件」紹介、法律事務所に 書士会「違反に当たらず」
最高裁の事務官が女性宅侵入の疑い 東京
最高裁事務官を再逮捕 盗撮目的で女性宅侵入疑い
副業AV女優
法曹の道、学生にアピール 最高裁で初イベント
最高裁で学生対象イベント「法曹という仕事」
未来世代の環境刑法 1 <Textbook基礎編>
笹子崩落事故 点検担当2人不起訴不当 甲府検察審「予見できる可能性」
保守担当2人を「不起訴不当」…笹子9人死亡
アガルートの司法試験・予備試験 合格論証集 民法
空き巣4人の不起訴不当 名古屋・検察審査会
これが新時代の「自由な働き方」? Uber配達員、事故にあっても「補償なし」に募る不満
アガルートの司法試験・予備試験 合格論証集 商法・民事訴訟法
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案
民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

刑事訴訟法等の一部を改正する法律について
法曹養成制度関係閣僚会議
法曹養成制度改革の推進について(PDF)
法曹養成制度改革推進会議
法曹養成制度改革顧問会議
平成31年司法試験予備試験の実施について
令和元年司法試験の結果について
司法試験考査委員の不適切行為に関する通報窓口

  【司法研修所教材・講義案・調査官解説等】
事件記録教材 法科大学院教材
調査官解説
事例で考える民事事実認定
プラクティス刑事裁判 平成30年版
プロシーディングス刑事裁判 平成30年版
検察講義案 平成27年版
新問題研究要件事実
紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造 改訂
刑事第一審公判手続の概要
刑事判決書起案の手引
民事判決起案の手引
民事訴訟第一審手続の解説
情況証拠の観点から見た事実認定
民事訴訟における要件事実 第2巻
民事訴訟における要件事実 増補 第1巻
書記官研修講義案等