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2012年01月29日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【判旨】

5.争点(2)ウ(省令制定手続の適法性)について

(1)ア.原告らは,@改正省令及び再改正省令の制定に当たって行われた意見公募手続において,その公募で寄せられた意見が反映されていない点,A再改正省令の意見公募手続において行政手続法で定められた期間が遵守されていない点で,本件改正規定の制定手続に違法がある旨主張する(事案5(2)ウ(原告らの主張の要旨)(以下「原告ら主張ウ」という。)(ア))。

イ.しかしながら,上記@については,行政手続法42条は,命令等制定機関は提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならないと定めているものの,これは,提出意見の内容をよく考え,定めようとする命令等に反映すべきかどうか等について適切に検討しなければならないということであり,その「考慮」は,提出意見の内容に着目して行われるものであって,提出意見の多寡に着目するものではなく,まして,提出意見のうち多数意見を採用することを義務付けるものではないと解されるところ,前記4(4)ア(ウ)のとおり,本件規制は,一般用医薬品の販売について,購入者の入手上の利便性よりも,使用上の安全性の確保を優先させて設けられた規制であり,提出意見の大半は一般用医薬品の入手上の利便性を求める内容にとどまり,副作用のリスクの情報提供の観点からの対面販売とインターネット販売との実効性の対比等に関する専門的・技術的な内容に言及するものは少なく,これに言及する意見の内容も,厚生科学審議会の検討部会・専門委員会及び第一次・第二次検討会における関係各界の専門家・有識者による議論の結果並びに国会審議における議論の状況を踏まえた厚生労働省の検討結果を左右するに足りるものとは認め難いところ,厚生労働省において提出意見を考慮してもなお上記のとおり判断されることを踏まえて改正省令及び再改正省令の制定に至ったものと認められることからすれば,意見公募手続の結果において本件規制に反対の意見が多数であり,その意見を採用しなかったからといって,本件規制を内容とする省令の制定手続が行政手続法42条に違反するものとは認められないというべきである。なお,改正省令に関する意見公募手続の結果の公表に際して,厚生労働省は,郵便等販売の規制に関する意見の主な理由とそれに対する回答につき,賛成意見に係る理由・回答の約3倍に当たる反対意見に係る理由・回答を公表しており(事案6(6)タ),その公表内容からは賛成・反対の意見の多寡につき反対意見の方が多かったことを容易に看取できることからすれば,この公表方法にも手続上の問題があったということはできない。
 また,上記Aについては,(ア)本件各規定は,いずれも改正省令によって加えられた規定であり,再改正省令によって加えられ又は改正された規定ではないから,再改正省令案の意見公募手続の瑕疵の有無は,改正省令により新設された本件各規定の制定手続の適法性を左右するものではないし,再改正省令の公布前に意見公募手続が実施されている以上,意見提出期間の短縮に係る手続の瑕疵の有無によって直ちに再改正省令自体の効力が左右されるとも解されない上,(イ)これらの点を措くとしても,行政手続法40条1項は,やむを得ない理由があるときは30日を下回る意見提出期間を定めることができ,命令等の案の公示の際その理由を明らかにすべきものと定めているところ,(a)再改正省令は,改正省令で定めた規制に対する経過措置を定めるものであることから,改正省令の施行前に制定する必要があったこと,事案6(7)の第二次検討会の議事の経緯によれば,平成21年5月12日までに再改正省令案を提示して意見を募集することが不可能な状況にあったことはいずれも明らかであるから,再改正省令の制定の際,意見提出期間を30日より短縮したことにはやむを得ない理由があったと認めるのが相当であり,また,(b)事案6(7)クによれば,再改正省令案の公示の際に期間短縮の理由も明らかにされていることが認められるので,再改正省令の制定手続に上記期間短縮の点で同省令の無効を招来するような違法があるとは認められない。

(2)ア.また,原告らは,前掲最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決を根拠に,改正省令及び再改正省令の立案の過程において,原告らに対し協議及び配慮がされるべき義務があるにもかかわらず,それが遵守されていない旨主張する(原告ら主張ウ(イ))。

イ.しかしながら,上記最高裁判決は,町長が事業者に不利益な一定の認定をする場合の手続として,町の条例上,事前協議をすべきことが定められていたという事案において,条例に定められた協議の場において事業者の地位に配慮することが必要であった旨判示した事例であり,前記3のとおり国会において成立した法律の委任に基づきその委任の範囲内で定められた省令の制定手続との関係で,当該省令の規制内容を定めるに当たって事前協議等の手続が法律又は省令に特に定められていない本件の場合とは事案を異にすることは明らかであり,改正省令及び再改正省令の制定手続について,所論の協議及び配慮の義務違反による違法があると認めることはできない。

(3)ア.さらに,原告らは,@改正省令の制定に至る過程において検討部会及び第一次検討会での検討は原告らを始めとするインターネット販売を行う業者を排除して行われた点,Aこれらの検討において厚生労働省からの天下りを受け入れている団体や多額の政治献金をしている団体などインターネット販売を行う業者と競合する業界の利益を代表する委員によって偏った議論が行われた点,また,B検討部会及び第一次・第二次検討会を通じてインターネット販売の規制の必要性及びその根拠についてのまともな議論が行われなかった点において,改正省令には手続的な瑕疵がある旨主張する(原告ら主張ウ(ウ))。

イ.しかしながら,前示のとおり,改正省令は,国会の審議・議決により制定された改正法の委任に基づき,その委任の範囲内で厚生労働大臣が定めたものであり,改正省令による本件規制の趣旨・内容は,一般用医薬品の副作用による健康被害の防止のための有資格者による情報提供並びにその内容・要否及び使用の適否の判断の実効性の観点からの情報提供及び販売の方法・態様の規制であると解されるところ,改正省令の制定に当たっては,薬学・医学,経営学及び法学等の専門家や薬害被害者団体・消費者団体の関係者などの幅広い分野の専門家・有識者を構成員に含む検討部会及び第一次検討会において関係各界の意見が聴取され,第一次検討会では原告P1代表者(P4理事長)及び他のインターネット販売を行う業者の意見の聴取並びに質疑も行われており,当該規制の趣旨・内容にかんがみ,当該業者を検討部会及び同検討会の構成員に加えなかったことの一事をもって,直ちに改正省令の制定手続にその効力を左右する瑕疵があるということはできない。そして,検討部会及び第一次検討会の構成員には上記のとおり薬学・医学,経営学及び法学等の専門家や薬害被害者団体・消費者団体の関係者などの幅広い分野の専門家・有識者が多数含まれ,医薬品販売業等(インターネット販売業を除く。)の業界団体関係の委員はいずれにおいても委員全体の3分の1以下にとどまること等を踏まえ,事案6(3)及び(6)の認定に係る検討部会及び第一次検討会における議論の状況と各報告書の内容並びに本件規制の必要性・合理性について前記4に説示したところを併せかんがみれば,改正省令による本件規制の内容が,上記検討部会及び第一次検討会の構成員及び議論の偏りのために不当にゆがめられて必要性・合理性を欠くものとなったなどということは到底できず(仮に原告らの主張に係る医薬品販売業界等における政治献金や天下りといった事実が存在したとしても,同様である。),かえって,事案6(3)及び(6)の認定によれば,検討部会及び第一次検討会において,インターネット販売の対面販売との対比等における問題点について真摯な議論がされていること(検討部会における前記3(4)エ(b)@の多数の委員の各発言,第一次検討会における事案6(6)オのP12委員及びP57委員,同カのP12委員,P50委員,P36委員及びP16委員並びに同キのP21委員の各発言参照),原告P1代表者(P4理事長)及び他のインターネット販売を行う業者は第一次検討会で意見を述べる機会を与えられており,その際,業界での自主規制案は作成中であるとするにとどまり,前記4の検討によれば,委員らから指摘された問題点に対する有効な対応策を示すことができたとはいえないこと(仮に,原告らの主張のとおり,この時点で自主規制案が完成していたとしても,委員らから指摘された問題点に対する有効な対応策を示すことができたとはいえないことからすれば,そのことは,後記の結論を左右するものではない。),その後に発表されたP4ガイドライン及びP4業界ルール案も,前記4(4)及び(5)のとおり,対面販売との対比等における各種の問題点に対する有効な対応策を示すことができたとはいえないことなどの議論の経過に照らしても,原告らの主張するような偏った議論があったとは認め難い。なお,事案6(7)のとおり,再改正省令の制定に当たっては,P5代表者及び原告P1代表者を構成員に含む第二次検討会において改正省令附則に加える経過措置の内容が議論され,再改正省令案の経過措置の追加に賛成する意見が全体の6割以上を占めたものの,規制強化の立場から当該経過措置の追加に反対する薬害被害者団体等の意見と,規制緩和の立場からインターネット販売に関する経過措置の更なる追加を求める同販売業者(P5及び原告P1)の意見が出され,意見の取りまとめに至らず,多数意見により支持された再改正省令案に沿った経過措置が同省令により改正省令附則に加えられたものであり,上記の経緯をもって,改正省令中の本件改正規定の制定手続にその効力を左右する違法を招来するものとは解されない。
 また,以上によれば,検討部会及び第一次・第二次検討会における議論にその過程での手続的な瑕疵に起因する不備があるために改正省令中の本件改正規定の制定手続が違法である旨の原告らの主張は理由がない。
 なお,厚生労働大臣の諮問機関又はこれに準ずるものとして法令改正の基礎となる政策について専門家・有識者等から意見を聴取するという厚生科学審議会の検討部会及び第一次・第二次検討会の各性質並びに事案3(2)ア,同(3)ア及び同(4)アの認定に係るそれぞれの設置の趣旨からすれば,これらにおいて,規制内容に関する憲法上の議論が行われなかったこと(あるいは,憲法・行政法を専攻する法学者がこれらの構成員に含まれていないこと)をもって,直ちに改正省令中の本件改正規定の制定手続に違法があるということはできない。

(4) そして,原告らのその余の主張も,改正省令中の本件改正規定の制定手続に係る瑕疵・違法の存在を基礎付けるものと認めることはできない。
 したがって,改正省令中の本件改正規定の制定手続に所論の違法はない。

6.小括

 以上によれば,改正省令中の本件改正規定は,これらを違法・違憲として無効であるということはできず,原告らは,本件改正規定により新設された新施行規則中の本件各規定の適用を受ける結果,既存一般販売業者(改正法附則2条)として,第一類・第二類医薬品につき郵便等販売をすることができる地位を有するとは認められないから,本件地位確認の訴えに係る請求は,いずれも理由がない。

7.結論

 よって,本件無効確認の訴え及び本件取消しの訴えはいずれも不適法であるから却下し,本件地位確認の訴えに係る請求はいずれも理由がないから棄却する。

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2012年01月24日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【判旨】

4.争点(2)イ(本件規制の憲法適合性)について

(1) 職業活動としての営業は,本質的に社会的かつ経済的な活動であって,その性質上,社会的相互関連性が大きいものであるから,憲法22条1項において保障される営業の自由は,それ以外の憲法の保障する自由,殊にいわゆる精神的自由に比較して,公権力による規制の要請が強く,同項の規定においても,特に「公共の福祉に反しない限り」という留保が明記されている。このように,営業は,それ自身のうちに何らかの制約の必要性が内在する社会的かつ経済的な活動であるところ,その種類,性質,内容,社会的意義や影響が極めて多種多様であるため,その規制を要求する社会的理由ないし目的も千差万別で,その重要性も区々にわたり,これに対応して,現実に営業の自由に加えられる制限としての規制措置も,それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるので,当該規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは,これを一律に論ずることができず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される営業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。そして,上記のような検討と考量をするのは,第一次的には立法機関(立法府の制定した法律により行政立法の権能の委任を受けた行政機関を含む。)の権限と責務であり,その憲法適合性の司法審査に当たっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上,そのための規制措置の具体的内容及び必要性と合理性については,上記立法機関の判断がその合理的裁量の範囲にとどまる限り,立法政策上の問題としてこれを尊重すべきであるが,その合理的裁量の範囲については,事の性質上おのずから広狭があり得るのであって,裁判所は,具体的な規制の目的,対象,方法等の性質と内容に照らして,これを決すべきものといわなければならない(最高裁昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁参照)。

(2) 改正法及び改正省令の規定内容並びに改正法案に係る衆参両院の本会議における各院厚生労働委員会の審議結果の報告(事案6(5)キ及び同コ)及び厚生労働大臣の趣旨説明の内容(事案6(5)イ)等によれば,本件規制の目的は,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保し,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止することであると認められる(被告の主張に係るセルフメディケーションの進展を踏まえた医薬品に関する適切な情報の提供による知識の普及等の要素も,究極的には上記の目的に収れんされる事柄であると解される。)。そして,事案6(2)ウのとおり,一般用医薬品の副作用被害の事例が死亡等の重大な結果をもたらした事例を含めて多数発生していること,同クのとおり,一般用医薬品を起因物質とする中毒の相談が多数あることに加え,改正法案の国会審議並びに同法案及び改正省令の立案の過程において,薬害被害者の団体や消費者団体等から薬害・副作用被害の防止のための販売方法及び情報提供に係る規制の強化を求める強い要望が寄せられていたこと(国会審議におけるP11のP44参考人の意見陳述(事案6(5)オ(ウ))及び複数の議員の質問中の意見(同エ(ア),カ(イ)),検討部会におけるP11のP12委員の意見(事案6(3)イ),同団体の他の役員の講義中の意見(同ケ)及び他の薬害被害者団体の役員の意見陳述(同タ)並びにP17連盟の意見陳述人の意見陳述(同ウ),第一次検討会におけるP11のP12委員(同(6)オ)及びP56会のP57委員(同オ)の意見,薬害被害者団体等からの要望書及びP15等からの声明書(同ス)等)を併せ考慮すれば,この規制の目的は公共の福祉に合致するものであるということができる。

(3)ア.そこで,上記規制目的のために採られた規制手段としての本件規制の性質についてみるに,本件規制は,薬局又は店舗販売業といった一般用医薬品の販売を行う業態が許可制になっていることを前提として,薬局又は店舗販売業の許可を得た者による第一類・第二類医薬品の販売において有資格者による対面での販売及び情報提供を義務付け,これに伴い,その販売方法から郵便等販売を除外するもので,それ自体としては,狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するものではなく,営業活動の態様に対する規制の範疇に属するものであると解される。
 原告らは,インターネット販売による医薬品販売業という職業を想定すべきであり,本件規制は,そのような職業の選択に関する制限である旨主張する(事案5(2)イ(原告らの主張の要旨)(以下「原告ら主張イ」という。)(ア)a及びb)が,改正法及び改正省令の施行の前後を通じて,薬事法及びその関係法令(以下「薬事法令」という。)によれば,郵便等販売をすることができるのは薬局又は店舗販売業の許可を得ている者に限られている(新施行規則15条の4,142条参照)のであり,店舗を有しないインターネット販売専業の医薬品販売業といった営業形態は薬事法令上認められておらず,医薬品のインターネット販売という営業については,薬局又は店舗販売業の許可を得た者が一般用医薬品の郵便等販売を行うという薬事法令上認められている場合の販売方法の一態様として位置付けられているところ,薬局又は店舗販売業の許可を得た者は郵便等販売が認められなくなっても通常の販売方法による医薬品の販売ができなくなるわけではないから,本件規制は,その法的性質としては,営業活動の態様に対する規制であると解するのが相当である。原告らは,本件規制は,前掲最高裁昭和50年4月30日大法廷判決が職業選択の自由そのものに対する規制であるとした適正配置規制以上の規制であり,職業選択の自由そのものに対する規制と解すべきであると主張するが,上記最高裁判決の事例は,許可を得られないことにより薬局としての営業が全くできない場合であるのに対し,本件規制の場合は,薬局又は店舗において全区分の一般用医薬品を販売することが可能であり,上記のとおり,薬事法令上,インターネット販売は郵便等販売という販売方法の一態様であってそれ自体が独立した職業と位置付けられているものではないことからすれば,本件規制は上記最高裁判決の場合とは事例を異にし,同判決の適正配置規制以上の規制であるということもできない。
 もっとも,各種商品のインターネット販売を主要な事業内容とする業者が,医薬品のインターネット販売を目的として店舗販売業の許可を受け,医薬品の販売方法として,実際には通常の店舗における販売を行わず,専ら郵便等販売の一態様としてのインターネット販売を行っている場合に,当該業者としては,事実上,医薬品の販売に係る営業活動そのものを制限される結果となることを考慮すると,上記のとおり本件規制はその法的性質としては営業活動の態様に対する規制ではあるものの,上記の業態の業者に関する限り,当該規制の事実上の効果としては,規制の強度において比較的強いものということができる。

イ.そして,本件規制の目的は,上記(2)のとおり,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保することにより,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止することであるところ,本件規制は,この目的のために,上記アのとおり,副作用の危険性が相対的に高い第一類・第二類医薬品について,薬局又は店舗販売業の許可を得た者によるこれらの医薬品の販売において有資格者の対面による販売及び情報提供を義務付け,これに伴い,その販売方法から郵便等販売を除外するものであって,規制の目的との関係においては,これと直接の関連性を有する規制の方法であるというべきである。
 他方,本件規制は,自由な営業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的・警察的な目的による規制措置であり,また,その規制の方法は,第三類医薬品の販売についてはその販売方法から郵便等販売を除外していないものの,第一類・第二類医薬品の販売に関する限り,例外を許さない一律の制限を内容とするものであることなどによれば,規制の強度において比較的強いものということができる。

ウ.そこで,本件規制の憲法適合性の判断においては,前記(1)の観点から,本件規制の上記ア及びイのような性質を前提として,本件規制を規制手段とした前記(1)の立法機関の判断がその合理的裁量の範囲を超えるものであるか否かを検討する必要があるところ,その検討に際して代替的な規制手段との対比を考慮するに当たっては,本件規制の規制内容が前示のとおり一般用医薬品の副作用による健康被害(薬害)の防止という国民の生命・身体の安全に直結する事柄であり,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用が確保されない結果としてひとたび副作用による健康被害(薬害)が発生すればその被害者に償うことのできない重大な損害が発生する危険性が高いことを踏まえて検討すべきものと解するのが相当であり,以下,このような見地から,本件規制の憲法適合性について検討する。

(4)ア(ア) 新施行規則中の本件各規定による本件規制の内容は,薬局開設者又は店舗販売業者による一般用医薬品の販売における情報提供(医薬品の適正な使用のために必要な情報の提供)及び販売の方法に関して,(あ)@159条の15において,薬剤師が第一類医薬品を販売する際には,書面を用いて対面で情報提供を行う義務を負うものとされ,A159条の16において,薬剤師又は登録販売者が第二類医薬品を販売する際には,対面で情報提供を行う努力義務を負うものとされ,B159条の17において,購入者等からの相談に応じ,第一類医薬品については薬剤師が,第二類及び第三類医薬品については薬剤師又は登録販売者が情報提供を行う義務を負うものとされ,(い)159条の14において,第一類医薬品については薬剤師,第二類医薬品及び第三類医薬品(第三類医薬品の郵便等販売を行う場合を除く。)については薬剤師又は登録販売者が,当該薬局又は店舗において対面で販売する義務を負うものとされ(ただし,薬剤師は,第一類医薬品を自ら販売するほか,その指導及び管理の下で登録販売者又は一般従事者に販売させることもでき,薬剤師又は登録販売者は,第二類医薬品及び第三類医薬品を自ら販売するほか,その指導及び管理の下で一般従事者に販売させることもできる。),これらの規制に伴う帰結として,(う)15条の4において,一般用医薬品の郵便等販売を行う場合は,第一類医薬品又は第二類医薬品の販売を行わないこと等とされており,このように,一般用医薬品の販売に当たっては,第三類医薬品の販売の場合を除き,対面による情報提供の義務又は努力義務が課され,第三類医薬品の郵便等販売の場合を除き,対面による販売が義務付けられ,また,すべての一般用医薬品について相談応需義務が課されることになる。

(イ) 改正省令により新施行規則に本件各規定が加えられた経緯については,前記3(3)イ(う)及び(え)並びに同(4)エのとおり,@厚生科学審議会の審議結果である検討部会報告書には,医薬品の販売については,対面販売が原則であることから,情報通信技術を活用した医薬品の販売には慎重に対応すべきであるとした上,第一類医薬品については,対面販売とすべきであり,情報通信技術を用いた販売を認めることは適当ではない旨,第三類医薬品については,一定の要件で通信販売を認めざるを得ない旨記載され,各区分の医薬品のいずれについて対面販売を義務付け,その結果として販売方法から郵便等販売を除外するかが,法令改正の対象事項として掲記される一方で,第二類医薬品についてはその結論が留保されており,検討部会では,薬害被害者団体の委員を含む多数の委員及び薬害被害者団体の役員である講師により,副作用による健康阻害の防止の観点から,一般用医薬品について有資格者の対面による販売及び情報提供を行うのが原則であり,対面によらないインターネット販売を認めることには消極である旨の意見が述べられていた(前記3(4)エ(b)@)こと,A国会審議でも,質疑において議員から同様の意見が述べられ(事案6(5)エ(イ)),P11のP44参考人から,インターネット販売の規制について政省令で定めるべきである旨の意見陳述がされ(同オ(ウ)),参考人であるP10部会長からも,質疑において対面販売が望ましいとの見解の表明がされ(同(エ)),厚生労働省の医薬食品局長からは,医薬品の販売における対面販売の重要性を強調した上,インターネット販売について検討部会報告書を踏まえて慎重な対応が必要である旨の答弁(同エ(イ),ケ)や,指定第二類医薬品についてオーバー・ザ・カウンターを義務付けるべきではないかとの質問に対し,法案成立後に検討する旨の答弁がされ(同エ(ア)),厚生労働大臣からも,第一類医薬品のインターネット販売を制限すべきではないかとの質問に対し,法改正後については,改正後の薬事法において,第一類医薬品を販売する場合には,省令で定めるところにより,薬剤師が所要の情報提供をしなければならないものとされていて,これに基づき対面販売により情報提供することを求めるという方向性になっており,その定めの違反は行政処分による強制力のある取締りの対象となり,従来は通知に基づく行政指導がされてきたインターネット販売はその取締りの対象となる旨の答弁(同カ(ウ))や,指定第二類医薬品についても,医薬食品局長と同旨の法案成立後に関係者の意見を詰めていきたい旨の答弁がされているところ,前記3(3)イ(あ)の趣旨説明を踏まえたこれらの答弁及び説明・意見に対し,特に異論が出たことは認められず,改正法案が原案どおり可決されたこと,Bその後の第一次検討会においても,当初は,第三類医薬品も含めてインターネット販売を全面的に禁止すべきとの意見もあったところ(事案6(6)エ,オ),P11のP12委員(同オ)及びP56会のP57委員(同オ)から,第一類・第二類医薬品について通信販売を禁止すべきとの意見が述べられており,第一次検討会報告書には,医薬品の販売に当たって専門家が対面によって情報提供することが原則であることから,販売時の情報提供に情報通信技術を活用することについては慎重に検討すべきであり,第一類医薬品については,情報通信技術を活用した情報提供による販売は適当ではなく,登録販売者制度の導入に伴い,時間帯にかかわらず専門家が対面により確実に情報提供が行われる体制を求めるべきで,テレビ電話を活用した販売も一定の猶予期間後は廃止すべきであって,通信販売も,情報通信技術を活用する場合は,販売時に情報提供を対面で行うことが困難であることから,販売時の情報提供に関する規定がない第三類医薬品を販売することを認めることが適当であり,販売時の情報提供を行うことが努力義務となっている第二類医薬品については,販売時の情報提供の方法について対面の原則が担保できない限り,販売することを認めることは適当ではない旨記載されており(事案6(6)ケ),その意味については,事務局から,上記の場合に対面の原則を担保できる方法は現在のところないが,何かアイディアがあれば個別に判断していく趣旨である旨の説明があったこと(同ク)に照らすと,新施行規則中の本件各規定は,これらの改正法及び改正省令の立案過程における厚生科学審議会(検討部会),国会審議及び第一次検討会での議論において,一般用医薬品の販売方法の規制に関しては,一定の範囲で医薬品の区分に応じた郵便等販売の制限につき法案成立後に行政立法によって規制内容の具体化を図ることとされ,特に副作用の危険の高い第一類医薬品について有資格者の対面による情報提供及び販売を義務付けてその販売方法から郵便等販売を除外すべきことを明記した上で第二類医薬品については結論を留保した検討部会報告書の審議結果を基礎としつつ,その後の国会審議及び第一次検討会での議論において,薬害被害者団体や消費者団体の関係者等から,一般用医薬品の副作用被害のリスクへの強い懸念と現在の本邦における消費者一般の副作用に関する意識・認識の実情等を踏まえて広範囲の医薬品につき通信販売の禁止を求める意見が強く主張されたこと等を踏まえ,最終的には,比較的副作用の危険が少ない第三類医薬品を除いて,相応に副作用の危険のある第二類医薬品についても,有資格者の対面による情報提供の努力義務及び対面による販売の義務を課し,その帰結として,その販売方法から郵便等販売を除外することとされたものと解される。

(ウ) そして,改正省令により新施行規則に本件各規定が設けられ,上記(ア)の内容の本件規制が定められた実質的な理由については,@事案6(2)ウのとおり,一般用医薬品の副作用による健康被害は,重大な結果を伴うもの(死亡事例など)を含めて現に多数生じており(原告らは,一般用医薬品については副作用が発生してもそれほど深刻なものではなく,副作用のリスクは決して大きくはないと主張する(原告ら主張イ(ウ)b)が,事案6(2)ウの認定に係る死亡事例を含む重篤又は中等度の症例及びそのリスクの深刻さ並びに報告件数の多さを看過し,客観的状況に係る認識の欠如を示すものであり,失当である。),その中には薬剤師等の有資格者から十分な情報提供が行われていれば防止することが可能であったものが相当数含まれていること(原告らは,販売段階での情報提供があっても発症が避けられない副作用も多い旨主張し(原告ら主張イ(ウ)b),その例として甲第114号証(医薬品・医療用具等安全性情報)及び第115号証(重篤副作用疾患別対応マニュアル・間質性肺炎)を提出するが,そのような副作用でも,適切な情報提供が行われることによって,早期に対応を採ることができ,副作用を軽微なものにとどめることができるのであるから(事案6(3)イのP14委員(大学医学部教授・薬剤部長)の発言参照),原告らが主張するような副作用についても販売時の適切な情報提供の必要性は失われない。),A他方,検討部会におけるP17連盟の意見陳述人の発言(同ウ)のとおり,事案6(2)オの調査結果にみられるように,消費者一般に一般用医薬品の副作用の危険性に関する意識・認識が十分でない傾向が我が国の現在の実情であるとされており(P15のP16委員(事案6(3)キ)の発言も同旨),現に,P33会の意見陳述人の発言(同タ)のとおり,一般用医薬品の副作用による薬害患者には,添付文書を読まずに服用して発症した者も多いことや薬店で売っているからそれほど強い薬ではないだろうと思っていた者がいることに加え,事案6(2)カ(ア)の調査結果のとおり,一般用医薬品の添付文書について分かりにくいとの意見が少なくないこと,B同カ(イ)の調査結果のとおり,消費者の間には一般用医薬品の薬局又は店舗での購入に際して薬剤師からの情報提供を求める意見も多いところ,検討部会におけるP11のP12委員(事案6(3)オ),P19のP20委員(同キ),大学医学部教授のP26委員(同セ),大学薬学部教授のP30専門委員(同セ)及びP27協会のP28委員(同セ)の各指摘のとおり,添付文書又は外箱の注意書き等の単なる一方的な書面等の記載によるのでは内容・趣旨が十分に伝わらないことが多く,説明の実効性に限界があるといった実情があり,このような実情を踏まえ,一般用医薬品の安全性を確保するためには,単に添付文書や外箱の表示を充実させるなど,医薬品及びその使用の適否に関する情報提供の要否及び内容について購入者の意思・判断にゆだねるのではなく,副作用の危険が比較的低い医薬品を除いては,販売者側において,有資格者が自ら直接に購入者と対面した上で,購入者の年齢,性別,体格,その他身体上の特徴,顔色,表情等の外見や行動,態度,しぐさ等を直接視認するとともに,それを踏まえて購入者に質問をし,その回答に応じて更に質問を重ねるなど能動的・双方向的な対話を通じて所要の事項を聴取し,併せて購入者の声質や口調などを聞くこと等を通じて,購入者側の属性・状態等を的確に把握し,それに応じて情報提供の要否・内容及び使用の適否を判断することが必要であり,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止するためには購入上の利便性よりも使用上の安全性の確保を優先させる必要があるとの考慮の下に(購入上の利便性よりも使用上の安全性の確保を優先させて副作用による健康被害を防止すべきことは,国会審議において,議員自身の薬害被害経験を踏まえた意見(事案6(5)エ(ア))及びP11のP44参考人(同オ(エ))の意見があったほか,検討部会等においても,P11のP12委員(事案6(3)タ),P63のP64委員(同(7)エ),P15のP16委員(同(3)イ)及び大阪府健康福祉部薬務課の意見陳述人(同タ)の各発言等で繰り返し述べられ,それらに対する異論は出されなかった。),上記のような情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断を可能とするために必要かつ実効的な手段として有資格者の対面による販売を義務付けたものと解するのが相当である。

イ(ア) そして,副作用による健康被害を防止するための一般用医薬品に係る有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断の実効性の観点から,有資格者の対面による販売と,インターネットを通じた購入申込みによる郵便等販売とを比較検討するに,後者の販売方法については,(a)@一般に,購入者がインターネットの画面上で自分の症状等に合うと思われる種類の一般用医薬品を検索してその内容等を確認し,画面に表示される商品を購入する旨の申込みボタンをクリックして購入申込みをすると,若干の画面操作を経て売買契約が成立し,販売者から購入者に商品が郵送されるという方法であるところ,これに加えて,A原告P1のインターネット販売の実施例では,画面上で検索された一般用医薬品について,当該商品及びその禁忌事項に関する質問の画面が表示され,その質問の回答欄へのクリックの過程で禁忌事項に該当すれば次の画面に進めず売買契約が成立しない上,禁忌事項に該当しない場合でも,画面に注意事項が表示され,その注意事項の内容を確認・了承の上で商品を購入する旨の申込みボタンをクリックしなければ購入申込みができない仕組みが採られているものと認められ,(b)さらに,これらに加えて,インターネット販売の業界による自主規制案として,@P4ガイドラインでは,ウェブサイト,電子メール,電話,ファクシミリ等の情報通信技術を通じて,販売者側が一定の事項について購入者の申出により確認し,必要に応じて購入者に質問するとともに,その購入者の申出又は購入者への質問に対する返答を中心として,薬剤師又は登録販売者(第一類医薬品は薬剤師)において情報提供又は相談応需を行うことが提案され(別紙の8,10,12ないし14,17,18及び20),AP4業界ルール案(事案6(7)イ)でも,上記@と同様の方法により有資格者による情報提供又は相談応需を行うことが提案されていることからすると,上記(a)@の方法に同(a)A及び上記(b)@の方法を加味した方法(一般的な方法に原告P1の実施例と業界自主規制案の内容を加味した方法)を,原告らが他に主張する添付文書及び外箱の記載の充実とともに,実現性のある代替的な規制手段の具体的な内容として,本件規制の規制方法である有資格者の対面による販売との比較検討をする必要があるものと解される(なお,上記(b)@の情報通信技術の手段については,別紙の14の例示に係るウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリの各手段による通常の形態を前提として検討し,その余の手段の可能性等については,後記カ(イ)において補充的に検討する。)。

(イ) そこで,以上を前提に検討するに,まず,対面による販売においては,販売に当たる有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等(購入者の年齢,性別,体格,その他身体上の特徴,顔色,表情等の外見や行動,態度,しぐさのほか,声質や口調等)を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことを通じて,販売者側が購入者側(購入者の家族・知人等が使用者である場合の当該家族・知人等を含む。以下同じ。)の属性・状態等を的確に把握し,それに応じて情報提供の要否・内容及び使用の適否を的確に判断することを確保できる(なお,薬剤師又は登録販売者が情報提供を行うことが法律上認められ,受診の勧奨を行うことが前提とされている以上,薬剤師又は登録販売者がこのような行為を行うことが医師法に違反する違法な診断行為に該当するとはいえない。事案6(3)セの検討部会における医療行為との関係に関する議論参照)のに対し,インターネットを通じた購入申込みでは,購入者側の属性・状態等の把握について,有資格者が自ら直接に購入者の様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことが困難であり(ウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリの各方法を通じて,購入者の申出又は必要に応じた購入者への質問によってこれらを行うとしても,購入者の申出による場合は受動的に購入者からの自己申告を基礎とするほかなく,能動的にこれを引き出すことはできず,申告内容の真偽の確認も著しく困難であるし,購入者への質問も購入者の様子等を見聞きしないでその要否・内容を判断することは著しく困難と考えられ,いずれも実効性に乏しい。),その難易及び実現可能性には相当の有意な差異があるものといわざるを得ない。この点に関し,原告らは,確認事項のチェックボックスを利用するなどして購入者から必要な情報の提供を受けることにより,販売者が必要な情報提供及び販売の適否の判断をすることができる旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))が,原告P1が実際に行っている購入者側の状況の把握のための画面にしても,P4ガイドライン(別紙の12及び28参照)及びP4業界ルール案等(事案6(7)イ,オ)の提案に係る仕組みにしても,購入者の自己申告が基本となっており,購入者が質問に真摯に対応し,質問の内容を正しく理解して正しく回答しなければ,購入者側の属性・状態等を的確に把握することはできないし,また,購入者が真摯にかつ誤りなく対応しているかどうかを販売者側で確認・把握することは困難であるといわざるを得ない(原告P1代表者も,第一次検討会において,よほどのことがない限り顧客の自己申告を信頼して販売することになることを認めている(事案6(6)カ)。)。
 そして,有資格者により情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることを担保するには,そのことについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に行われることが有効であると解されるところ,対面による販売では,勤務する薬剤師及び登録販売者は,その別と氏名を表示した掲示をした薬局又は店舗において,その別と氏名を名札で表示するなどし(新施行規則15条の15,別表第一の二,15条の2,142条),多数の購入者と対面して多数回にわたり直接のやり取りを行うことを要するものである以上,購入者への応対の相手方が有資格者であって,その有資格者が能動的・双方向的な聴取等を経て情報提供を懈怠なく適切に履行していることについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に担保される仕組みが確保されるものといえるが,インターネット販売では,購入者の申出又は必要に応じてウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリの各手段を通じて購入者と販売者側とのやり取りを行うことがあるとしても,その応対の相手方が真に有資格者であるかどうか及びその有資格者が所要のやり取り(画面上の表示に係る定型的な質問・確認事項に対し,選択肢から回答を選んだり確認のチェックボックスをクリックしたりすること等により収集される一般的な事項以外に個別に必要となる事柄に係るもの)を経て情報提供を懈怠なく適切に履行しているかどうかを購入者及び監督行政庁において確認することは,対面の場合と比較して著しく困難であるといわざるを得ない(事案6(3)ツのP21委員(大学院法学研究科教授)の発言参照)。そうすると,有資格者により情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることを購入者による確認及び行政上の監督によって担保することの実効性についても,インターネット販売は対面による販売に及ばず,両者の間には相当の有意な差異があるといわざるを得ず,インターネット販売を行う業者による対応策(原告P1の実施例)及び自主規制案(P4ガイドライン及びP4業界ルール案)の提案によっても,この差異を克服し得る方策が示されているとは認め難い。この点に関し,原告らは,対面による販売でも,名札の偽装等により情報提供の主体が有資格者であるかの確認は困難であり,インターネット販売でも,情報提供のルール作成,販売の適否の判断及び相談応需を担当する者を薬剤師として社内の勤務体制を作れば,無資格者による対応の防止として十分であると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(X))が,名札の偽造及び無資格者の顧客応対の有無と上記社内体制の整備の適否とでは購入者による確認及び行政上の監督の難易に大きな差異があると考えられ,以上に説示したところによれば,上記主張を勘案しても,有資格者により情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断が確実に履行されることの購入者による確認及び行政上の監督による実効的な担保の観点から,対面による販売とインターネット販売との間に相当の有意な差異があることが否定されるものではないというべきである。

(ウ) 原告らは,医薬品の販売において,対面により購入者側の情報を的確に把握して適切な対応が採られることは例外的な場合であると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))が,一般に,薬剤師等の有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことにより,購入者側の属性・状態等に係る情報を的確に把握することは,上記の過程を経ない場合と比べて,相当に容易であって実現可能性が高いものと考えられ,前示のとおり上記の過程の確保並びにその購入者による確認及び行政上の監督による担保が困難であるインターネットを通じた購入申込みの場合には,上記の過程の確保が制度的に担保される対面による販売の場合との比較において,その難易及び実現可能性に相当の有意な差異・限界があることは否定できず,その結果,適切な対応が採られる可能性・確実性においても相当の有意な差異があることも否定できない。特に,インターネットを通じた購入申込みの場合に,購入者側からの禁忌事項等に関する情報提供は,原告P1が現に実施している方式及びP4業界ルール案によっても,禁忌事項に当たる場合に画面上でチェックをしてインターネットで返信する仕組みになっており,禁忌事項に当たらないことをすべて確認したのか,それとも禁忌事項を全く見ていないのか,禁忌事項の意味・内容を正しく理解しているのか(実際には禁忌事項に該当していても,文面との関係でそのことを認識していない可能性もある(事案6(7)カのP36委員(大学薬学部教授)及び事案6(3)ソのP20委員(P19)の発言参照)。)を返信内容のみから判断することはおよそできないし,また,注意事項を理解したかどうかをチェックして返信する仕組みを採る場合にも,実際に注意事項を読んで正しく理解したかどうかを返信内容のみから判断することは事実上困難である(仮に,画面を下までスクロールしなければチェックできないような仕組みになっていたとしても,同様である。)から,そのようなインターネットのシステム上の仕組みを設けることは,購入者側の自己責任を追及する手がかりとなり,販売者側の免責の根拠にはなり得るとしても,医薬品の副作用による健康被害を防ぐための措置として真に実効性のあるものとは認め難い。そして,この点は,前示のとおりの医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)等をめぐる本邦の現状(前記ア(ウ))の下で,インターネットを通じた購入申込みによる郵便等販売について,購入者側の属性・状態等の的確な把握の難易及び実現可能性の観点から,これを確保し得ることが制度的に担保される有資格者の対面による販売との対比において,副作用による健康被害の防止の実効性を図ることを困難にする点であるといわざるを得ない(なお,原告らは,インターネットを通じて医薬品の購入申込みをする者は元来相応に理解力の高い者であると主張する(事案5(2)イ(原告らの主張の要旨)(ウ)c(a)(T))が,前示のとおりの消費者一般の副作用及び添付文書に関する意識・認識等の現状(前記ア(ウ))の下において,インターネットを通じて医薬品の購入申込みをしたことの一事をもって,直ちにその申込者のすべてが副作用及びこれに関する情報の重要性等についての意識・認識の高い者であるとは認め難く,この主張も上記の判断を左右するに足りるものとは認められない。)。

(エ) 次に,原告らは,販売者側の能力・資質を問題とする(原告ら主張イ(ウ)c(a)(U))が,薬剤師及び登録販売者は,所轄行政庁によって医薬品の販売に必要な免許又は資質の確認を受けた有資格者(薬剤師法,新薬事法36条の4)であり(なお,同条2項の政令は定めないものとされており,登録販売者は同条1項の試験に合格した者に限られる。),購入者と対面することを通じて,医薬品の効能・副作用に関する専門的知識を活用して,購入者側の属性・状態等を的確に把握し,それに応じて情報提供の要否・内容及び使用の適否を判断すること(事案6(3)クのP23委員の指摘のように,マニュアルどおりではない受け答えをすることも含まれる。)に必要な能力・資質が制度的に担保されており(原告らの主張に係る不適切な対応の例が,これら有資格者の一般的な能力の欠如を示すものであることを認めるに足りる証拠はない。),しかも,対面による販売によって,購入者への応対の相手方がこれら有資格者であって,その有資格者が購入者側の属性・状態等の的確な把握に基づく情報提供を懈怠なく適切に履行していることについて購入者による確認及び行政上の監督が実効的に担保される仕組みが確保されることは上記(イ)で説示したとおりであり,また,登録販売者又は一般従事者が薬剤師の管理・指導の下で,一般従事者が薬剤師又は登録販売者の管理・指導の下で販売業務に従事する場合でも,これらの管理・指導に従って,購入者の希望する医薬品に係る情報提供又は販売の適否について何らかの問題があると判断した場合には,有資格者(第一類医薬品については薬剤師)による情報提供又は判断を行わせるべく当該購入者を当該有資格者に引き継ぎ又は当該有資格者の具体的な指示を求めることができるのであるから,有資格者による情報提供及び販売の適否の判断は実質的に確保されることになるのであり,有資格者が自ら直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行う過程の確保並びにその購入者による確認及び行政上の監督による担保が困難であるインターネットによる購入申込みの場合とはその実効性に前示の有意な差異があるというべきである(上記(イ)及び(ウ)において説示したインターネット販売における質問・回答による購入者側の属性・状態等の的確な把握の困難性にかんがみると,原告らの主張に係るインターネット販売における質問項目の画一化の点(事案5(2)イ(原告らの主張の要旨)(ウ)c(a)(T))を勘案しても,上記の判断が左右されるものとは解されない。)。

(オ) そして,原告らは,第二類医薬品については情報提供の努力義務が課されているにすぎないことを指摘する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(T))が,この場合でも,情報提供の努力義務を課する前提として,販売自体は対面によることが義務付けられているのであり,対面による購入申込みを受けた医薬品の販売について問題があると考えられた場合には,有資格者が販売業務の従事者であるときは自ら必要な情報提供をし,有資格者以外の者が販売業務の従事者であるときは情報提供の要否・内容及び使用の適否の判断のため有資格者に引き継ぎ又は有資格者の具体的な指示を求めることを要求するのが第二類医薬品における情報提供の努力義務の趣旨であると考えられ,この点についての違反を理由として罰則又は行政処分を課することは困難であるとしても,努力義務を課していることには販売者に情報提供の必要性を認識させる点で重要な意味があり,第二類医薬品について情報提供が努力義務とされていることの一事をもって,対面による販売の趣旨が失われているとはいえないし,情報提供の要否・内容及び使用の適否を判断する上での端緒となる情報の把握等において前示の難点のあるインターネットによる購入申込みとの対比においてより実効性の高いものというべきである。

(カ) さらに,原告らは,新薬事法36条の6第4項において,第一類医薬品に係る情報提供義務について,購入者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には情報提供義務が免除されていることからすれば,対面による販売の実効性は失われていると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(U))が,前示の改正法の趣旨,新薬事法36条の6第1項及び第4項の文脈並びに同法の趣旨・委任に基づく本件各規定の内容に照らすと,上記免除の規定の適用場面において想定されるのは,第一類医薬品について,薬剤師が購入者と直接の対面をした際に,購入者から説明を要しない旨の意思表示を受けた状況であり,その時点で,薬剤師は,当該意思表示が真意に基づくものであり,かつ,情報提供を省略することが適当であることを確認した上で,情報提供をしないものとすることが想定されており,通常は真に説明を要しない場合(例えば,薬剤師等の医薬品に関する専門家が購入する場合や,以前に情報提供を受けたのと同じ医薬品を購入する場合等にのみ当該意思表示がされることを前提として情報提供義務の免除が規定されているものの,仮に客観的には説明を要するのに当該意思表示がされた場合には,薬剤師の対面による確認・説明を経て当該意思表示が撤回され,免除の効果が失効して情報提供が行われること(合理的な理由なく当該意思表示及び免除の効果が維持される場合でも,事実上,情報提供が行われること)が想定されているものと解するのが相当であり(原告らは,このように解釈することは法律に規定されていない条件を付加するもので相当ではない旨主張するが,改正法の趣旨並びに法律の規定の文脈及び省令の規定の内容を総合勘案した上でこのように解釈することが妨げられるものではないと解される。),したがって,上記免除の規定の存在をもって,直ちに対面による販売の実効性が失われるものということはできない。

(キ) 加えて,原告らは,医薬品を実際に使用する者が自ら購入するとは限らないことから,対面による販売の実効性は失われている旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(V))が,対面による販売であれば,実際の使用者が購入者以外の者である場合でも,購入者からの直接の能動的・双方向的な聴取や購入者の様子の視認等を即時・確実に行うことを通じて使用者を確認し,購入者からの直接の能動的・双方向的な聴取を通じて使用者の属性・状態等を的確に把握して,それに応じた情報提供の要否・内容及び使用の適否の判断を行うことができるし,購入時には具体的な使用者が特定されない家庭内等の常備薬の場合でも,購入者からの直接の能動的・双方向的な聴取を通じて当該医薬品の使用が想定される者(本人又は家族等)及びその属性・状態等を的確に把握して,それに応じた情報提供の要否・内容及び使用の適否の判断を行うことができるのであるから,対面による販売の実効性が失われるものではないのに対し,インターネットによる購入申込みにおいては,使用者自身が購入申込みをするとは限らないことは対面による販売と同様であるばかりか,使用者と購入者の異同については,基本的に購入者の自己申告の内容を前提とせざるを得ず,その内容の真否を確認することは著しく困難であるから,インターネット販売はこの点でも対面による販売のような実効性を確保し難いといわざるを得ない。

ウ(ア) また,対面による販売では,購入時には必ず薬剤師等の有資格者が自ら購入者との直接の相談に即時に応じられる態勢が整えられており,かつ,販売者との間で能動的・双方向的な意思疎通が可能な状況にあることから,有資格者が購入者から必要な確認事項や疑問を引き出して即時に相談に応ずる機会が確保されており,かつ,上記イ(イ)で説示したところと同様に,そのことが購入者による確認及び行政上の監督によって実効的に担保される仕組みが確保されるものといえるのに対し,インターネットを通じた購入申込みにおいては,申込時に購入者が自ら確認事項や疑問を覚知・整理して自発的に質問等をしなければ有資格者との相談の機会が得られず,かつ,相談に対する回答が即時に得られるとは限らないのであるから,この点も,対面による販売のような実効性を確保し難い点であるといわざるを得ない。

(イ) 原告らは,電子メールやファクシミリ等の手段で早期に回答を得られる態勢を整備することは可能であり,深夜等においては,インターネット販売ではある程度の対応は可能であるのに対し,一般の薬局等でも即座に問い合わせに対する回答が得られるわけではない旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(U))が,インターネット販売では購入の申込みは常にできる一方で,有資格者が購入者から必要な確認事項や疑問を引き出して相談の契機を作ることは期待できない上,購入時に常に有資格者が相談に応ずる態勢が確保され得るものではなく(P4ガイドラインにも相談を受ける時間が限定されることを前提とした記載があること(別紙の24),P4業界ルール案にも相談できる時間が限定されることを前提とした記載があることによれば,有資格者を常に24時間待機させて,すべての注文に即時に対応できる態勢を採ることは想定されておらず,インターネット販売を行う全業者においてこれを必ず履行することは現時点では事実上も困難であると解される。),有資格者による相談応需の態勢確保の有無に係る購入者による確認及び行政上の監督も困難であることは,対面による販売と大きく異なる点であるといえる。そうすると,インターネットを通じた購入申込みにおいては,対面による販売と比べて,必要な事項について相談及び情報提供の契機及び機会が失われ,所要の相談及び情報提供を経ないまま販売に至る可能性が高い点で(消費者一般に医薬品の副作用に対する意識・認識が十分でない現状からすれば,即時に回答が得られない場合に,後に返信の回答が来るのを待つよりも,多くの消費者が,相談の過程自体を省略して直ちに購入の手続を採ることになる可能性が高いものと考えられる。),対面による販売のような実効性を確保し難いものといわざるを得ない。

エ(ア) 加えて,インターネットを通じた購入申込みでは,購入者は実際に有資格者(その管理・指導の下にある一般従事者を含む。)と対面していないことから,これと対面している場合と比べて,虚偽の申告をすることに対する心理的な抵抗が少ないものということができ,虚偽の申告が多くなりがちである点で,対面による販売のような実効性を確保し難いことは否定できず,しかも,インターネット販売においては,購入者が虚偽の申告をした場合には,販売者側で申告内容の真偽を確認することは著しく困難であることからすれば,これらの点もインターネット販売について,副作用による健康被害の防止の実効性を図ることが困難になる点であるといわざるを得ない。
 この点に関し,原告らは,対面による販売であっても,有資格者が購入者の虚偽の申告や誤った申告を見抜くことは困難であると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(T))が,薬剤師等の有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことにより,購入者の申告内容の真偽を見極めることは,上記の過程を経ない場合と比べて,相当に容易であって実現可能性が高いと考えられ,上記主張は理由がない。

(イ) また,この点に関し,原告らは,購入者のプライバシー等の観点から,インターネットを通じた購入申込みの方が購入者の情報の開示に心理的な抵抗が少ない旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(V))が,対面による聴取においては,有資格者が購入者のプライバシー等に適切に配慮した対応をするとともに副作用の危険等を適切に説明することで,上記の観点からの心理的な抵抗を除去して情報開示の必要性に理解を得ることは十分に可能であり,他方,インターネット販売においては,むしろ確実にデータ化される個人情報の流出等によるプライバシー侵害のおそれを懸念してその開示に消極的となる購入者も相当数いるものと考えられ,この点でも,対面による販売がインターネット販売との対比においてより実効性の高いものであることを否定することはできない(なお,仮に,原告らの主張に係る対人恐怖症等の者が,インターネット販売の場合に,有資格者と対面する場合と比して,より心理的抵抗が少なく自己の状態を伝えることができ,それにより購入者側の情報提供が容易になる場合があり得るとしても,同時に虚偽の申告についての心理的抵抗も少なくなることは否定できず,医師による投薬等による対応も考えられるところであって,上記イ以下で説示したところに照らせば,前示のとおりの副作用に関する消費者一般の意識・認識等の現状(前記ア(ウ))の下で,原告らの主張に係る上記の事例を勘案しても,なお,副作用による健康被害の防止の実効性の観点における対面による販売のインターネット販売に対する優位性及びその差異の有意性を否定することはできないというべきである。)。

オ.なお,インターネット販売を含む郵便等販売において,添付文書及び外箱の記載を充実させるといった代替的な規制手段については,前記ア(ウ)のとおり,これらの単なる一方的な書面等の記載によるのでは内容・趣旨が十分に伝わらないことが多く,説明の実効性に限界があるといった実情があるところ,有資格者が自ら購入者と直接に対面し,その様子等を見聞きして直接の視認及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行うことにより,購入者側の属性・状態等に係る情報を的確に把握し,これに即応した所要の情報提供及び相談を行うといった過程を経る対面による販売との対比において,上記の過程を経ない点で,副作用による健康被害の防止の実効性を図ることが困難であることは明らかであるといわざるを得ない。

カ(ア) 以上のとおり,改正省令中の本件改正規定により新設された新施行規則中の本件各規定による本件規制において,副作用の危険の相対的に高い区分の一般用医薬品について,有資格者の対面による情報提供の義務又は努力義務の担保のために対面による販売を義務付け,その帰結としてその販売方法から郵便等販売を除外することは,有資格者による購入者側の属性・状態等の的確な把握並びにこれに即応した医薬品の効能・副作用に関する必要な情報の提供及び相談の機会を実効的に確保し,購入者による確認及び行政上の監督によってこれらを実効的に担保することを通じて,購入者による適切な選択及び適正な使用の確保に資するものであって,一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保することにより一般用医薬品の副作用による健康被害を防止するという規制目的を達成するための規制手段として,必要性と合理性が認められるというべきであり,また,医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)等をめぐる本邦の現状の下で,インターネットを通じた購入申込みによる郵便等販売においては,上記イないしオのとおり,有資格者の対面による販売のように,購入者側の属性・状態等の的確な把握並びにこれに即応した医薬品の効能・副作用に関する必要な情報の提供及び相談の機会を確保し,購入者による確認及び行政上の監督によってこれらを担保し得るものとはいえず,これらの実効性に相当の有意な差異・限界が存する結果,副作用の危険の相対的に高い医薬品の販売に当たり,有資格者の対面による販売と同等の所要の水準の安全性を確保し得るものとは認められず,前示のとおり,インターネット販売を行う業者による対応策(原告P1の実施例)及び自主規制案(P4ガイドライン及びP4業界ルール案)の提案に係る販売者側の対応や,添付文書及び外箱の記載の充実といった代替的な規制手段も,これらを法令で義務付けるか否かを問わず,有資格者の対面による販売と同等の所要の水準の安全性を確保し得るものとは認められない以上,本件規制については,上記の現状を前提とする限り,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないものと認めるのが相当である。

(イ) なお,インターネット販売における使用者の属性・状態等の把握及び情報提供の方法に関して,<A>第二次検討会では,原告P1代表者からP4業界ルール案の説明資料が提出される一方で,上記イ(ア)(b)@の情報通信技術の手段に関し,テレビ電話については,P59委員(大学総合政策学部教授)から,真に危険な医薬品についてはビデオ会議で薬剤師を呼び出すことも技術的には可能である旨の発言があった(前記1(7)イ))ものの,P4ガイドライン及びP4業界ルール案にはテレビ電話の手段に関する記載がなく,原告P1代表者やP5代表者等のインターネット販売の業界関係者からも同手段に言及する発言はなかったこと,<B>事案6(3)ケの検討部会におけるP24委員(大学フロンティア創造共同研究センター教授)の講義内容からすると,テレビ電話においては,映像の色等を一定の画質で正しく伝送するためには,カメラ,照明等の調整が必要となるものと認められ,インターネット販売において,カメラの性能や照明等の状態が区々に異なる各購入者の利用する様々な種類・状態のテレビ電話によっては,有資格者による購入者の顔の表情や顔色等の的確な把握を確保することは困難であること(この点で,一定の店舗に置かれた特定の種類・状態のテレビ電話を利用する事案6(1)オで認められていた方法とは本質的に異なることは明らかであり,また,乙第57号証の5によれば,インターネット販売を行う業者の中に,携帯電話を用いたテレビ電話による相談を受け付けている業者がいることがうかがわれるが,携帯電話を用いたテレビ電話では,画面の大きさ・性能等からして,有資格者による購入者の顔の表情や顔色等の的確な把握が困難であること(事案6(1)オの厚生労働省医薬食品局長通知参照)からすると,携帯電話を用いたテレビ電話が対面による販売と同等のものとはいえないことは明らかである。),<C>他方で,全購入者に対し統一的な種類・状態の携帯電話以外のテレビ電話の利用を必須の条件として義務付けることは実現可能性を欠くと考えられること等を総合考慮すると,現在の情報通信技術の状況及び事業上のコスト・態勢等を踏まえた現時点で実現性のある方法としては,前記イ(ア)のとおり,同(a)@の方法に同(a)A及び同(b)@の方法を加味した方法(一般的な方法に原告P1の実施例と業界自主規制案の内容を加味した方法)を具体的な内容として検討するほかなく,同(b)@の情報通信技術の手段については,これに例示として掲げられているウェブサイト,電子メール,電話又はファクシミリを通常の形態として検討するとともに,仮にその中に例示として掲げられていないテレビ電話が含まれ得るとしても,上記各手段との選択的な手段の一つとして,かつ,購入者の申出又は販売者側の必要に応じて,販売者の指定する一定の時間帯において(上記ウ(イ)によれば,有資格者を常に24時間待機させることは,業界自主規制案でも想定されておらず,インターネット販売を行う全業者においてこれを必ず履行することは現時点では事実上も困難であると解される。),各購入者の利用する様々な種類・状態のテレビ電話による交信が選択される形態のものとして検討するのが相当であり,現時点では,技術上及び事業上の観点から,テレビ電話をもって対面の方法を全面的に代替し得るこれと同等の方法として位置付けることはできないものといわざるを得ない。
 そして,上記のようなテレビ電話による交信の利用形態の下では,販売者と購入者との間でテレビ電話によるやり取りが選択されるとは限らず,前示のとおりの副作用に関する消費者一般の意識・認識等の現状(上記ア(ウ))の下で,上記イないしオに説示したところによれば,むしろその選択がされないまま購入に至ることが相当程度の蓋然性をもって想定されるといえるから,インターネット販売において,有資格者が自ら直接の視認及び及び能動的・双方向的な聴取を即時・確実に行う過程の確保並びにその購入者による確認及び行政上の監督による担保がいずれも困難であり,対面による販売と対比してこれらの実効性に相当の有意な差異が存することは,なお解消され得るものではないといわざるを得ない(また,仮にテレビ電話によるやり取りが選択されたとしても,上記のようなテレビ電話に係る現状によれば,購入者側の属性・状態等の的確な把握には限界があり,有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断について,対面による販売と同等の実効性を確保することはなお困難であるといわざるを得ない。)。したがって,テレビ電話を使えば対面で双方向的なやりとりが可能である旨の原告らの主張(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))は,以上に説示したところに照らし,採用の限りでなく,上記のようなテレビ電話による交信の利用形態があり得ることを前提としても,上記(ア)の判断が左右されるものではないといわざるを得ない。

(5) 上記(4)の点に関し,原告らの主張のうち,上記(4)において検討したもの以外の主張につき,以下,順次検討する。

ア.原告らは,インターネット販売が原因となって副作用が発生した事例の有無や件数は明らかでなく,インターネット販売を規制する立法事実がないと主張する(原告ら主張イ(ウ)b)。しかしながら,事案6(2)ウによれば,インターネット販売によって購入された一般用医薬品の服用による副作用被害の発症例は現に報告されて存在しており,その件数が判明していないのは,副作用情報の収集の際に購入経路等の調査がされていないことによるものであり,上記報告例の発症の原因が販売方法によるものか否かが判明していないのは,その原因の調査がされていないことによるものであるところ,一般用医薬品の服用による副作用被害の発症例が現に重篤な症状の例を含めて多数報告されて存在し,副作用による健康被害の防止のために医薬品の適正な使用に必要な情報の提供の確保が喫緊の課題とされる中で,前記(4)イないしオのとおり,インターネット販売によっては,購入者側の属性・状態等の的確な把握に基づく医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び適切な相談の実効的な確保の点において,対面による販売によって実現し得る所要の水準を制度的に確保することができず,副作用による健康被害の防止を十分に図り得ないものといわざるを得ない以上,その危険を除去するために,本件規制によって副作用の危険性の相対的に高い医薬品につき対面による販売を義務付けることには必要性と合理性が認められるということができる(医薬品の副作用による健康被害の防止のためには,副作用が実際に発生する前に十全の対応を採る必要があることについては,事案6(3)イの検討部会でのP11のP12委員の発言,同(5)エ(ア)の国会審議での議員自らの薬害被害の経験に基づく発言など,改正法案及び改正省令案の立案の過程で薬害被害者等から繰り返し強調されているところである。)ので,上記指摘は本件規制の合憲性に係る前示の判断を左右するものとは認められない。

イ.原告らは,対面の原則の定義・根拠が明確に確立されておらず,改正法及び改正省令の立案の過程で十分に議論された形跡もない旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c)。しかしながら,検討部会報告書の3(2)@には,対面販売について,「購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができる」販売方法である旨の記載がされ,検討部会及び第一次検討会においても同旨の説明がされており(事案6(3)テ(6)オ),これは,新施行規則中の本件各規定にいう「対面で」の文言から自然に導かれる解釈であって,事柄の性質上,特段の定義規定まで要するものではないということができるし,また,対面の原則の必要性については,事案6(1)ア及びイのとおり,法改正の以前から重要とされてきたところである上,前記3(3)イ(う)及び(え)並びに前記(4)ア(ウ)のとおり検討部会及び国会審議で繰り返し議論されてきたところであり,原告らの上記主張は理由がない(なお,原告らは,第二次検討会における座長及び事務局の発言からすると,改正法及び改正省令の成立後も,対面の原則に対する明確なコンセンサスはなく,厚生労働省も明確な見解を持ち合わせていなかった旨主張するが,原告らの指摘する発言のうち,@P10座長が,購入者と使用者が異なる場合の対面販売の実効性に疑問を呈する原告P1代表者の指摘を受けて,過去において疑問に思っていた等と述べた発言については,それに続けて自らの考えとして,その場合でも有資格者の質問等により対面の実質は確保されると理解している旨の説明がされ,この説明は,既に検討部会において厚生労働省担当官からされた説明(事案6(3)ニ)と同旨であり,検討部会の議事録上もその説明に特に異論は出ていないことからすれば,上記発言は全体としてはその疑問点が上記説明により解消され得ることを述べたものと解されるし,A厚生労働省担当官の発言については,P10座長から「対面」についての「イメージ」を問われたのに対する応答であり,その応答の内容に照らしても,厳密な定義・根拠というよりも実際の販売の場面における具体的なイメージを分かりやすく紹介する趣旨で述べられたものと解され,対面の原則の定義・根拠については上記のとおり検討部会報告書並びに検討部会及び第一次検討会における事務局の説明の中で明確にされている以上,上記応答をもって,対面の原則の定義・根拠について厚生労働省が明確な見解を持ち合わせていなかったということはできないから,原告らの上記主張は失当である。)。

ウ.原告らは,対面販売による情報提供が必要な場合やそれが効果的な場合は必ずしも多くなく,むしろインターネット販売の方がより実効的な情報提供をすることができる旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(T))。しかしながら,自ら進んで自己の属性・状態等に係る情報を正しく適切に開示し,積極的に情報提供を求める購入者については,インターネット販売においても相応の情報提供を行うことができる場合があり得るといえるものの,前記(4)ア(ウ)のとおり,一般的には医薬品の副作用の危険性についての消費者の意識・認識が十分でない実情にあることからすれば,そのような購入者はむしろ少数に属すると考えられるのが実情であり,多数を占めると考えられる情報開示に消極的で情報提供への関心の高くない顧客層を想定して規制内容を定めることが安全性の確保の観点からは必要かつ合理的であるところ,前記(4)イないしオのとおり,副作用による健康被害を防止するための一般用医薬品に係る有資格者による情報提供並びにその要否・内容及び使用の適否の判断の実効性の観点から,インターネット販売における情報提供・収集には,対面による販売との比較において相当の有意な差異・限界があるというべきであり,原告らがインターネット販売の方がより実効的な情報提供をすることができると主張する点は,これまで検討したところにかんがみ,いずれも対面による販売の優位性を否定するものとはいえず,上記の差異・限界を解消するに足りるものとは認められないといわざるを得ない(原告らは,インターネット販売では,購入前に店舗では通常見ることができない添付文書を見ることができるとか,時間を掛けて医薬品を選択することができると主張するが,前示のとおりの消費者一般の副作用及び添付文書に関する意識・認識等の現状(前記(4)ア(ウ))において,有資格者の対面による即時の能動的・双方向的な聴取及び直接の視認を経た情報提供が確保されない状況の下で,インターネット販売を利用する者が添付文書を丁寧に読んで正しく理解し,時間を掛けて適切な医薬品を選択することが確保されるものとはいえない以上,上記主張も理由がない。)。なお,原告らは,対面による販売において丁寧な情報提供のために時間を掛けることは,販売者と購入者に過大な負担を課すことになり,かえって購入者が重要な点を聞き損なうおそれがあるとも主張するが,副作用による健康被害の防止の実効的な確保の観点からは,丁寧な情報提供のために必要な時間を掛けることが購入者にとって過大な負担を課すものとはいえず,販売者側においても当然に果たすべき責務であるといえるし,有資格者の対面による情報提供においては特に重要な情報に重点を置いた説明が可能と考えられるので,上記主張も失当である。

エ.原告らは,改正法等の施行後も,一般の薬局や販売店等において,対面販売の原則が徹底されていることはうかがわれず,対面販売の原則は現実には守られていないというのが実情である旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(a)(W))が,事案6(8)イ及びウによれば,改正法及び改正省令の施行直後にこれらの法令改正によって義務付けられた有資格者の対面による販売及び情報提供が必ずしも遵守されていない若干の事例があったことは認められるものの,改正法及び改正省令の趣旨が周知されるには一定の期間を要することは避けられず,また,一定の周知に要する期間を経てもなお看過し難い薬事法令の違反が続くようであれば,業務改善命令等による是正がされ,又は許可の取消しがされることになると考えられる(事案6(2)エによれば,相当多数の施設に対し立入検査が行われていることが認められ,実効的な監督処分等を行う態勢が整備されていることがうかがわれる。)から,上記事実をもって,対面による販売を義務付ける本件規制の必要性と合理性が否定され,あるいはその実効性が失われるものということはできない(法制度としての規制の必要性・合理性に関しては,当該法令に基づく規制内容の遵守によって,一般用医薬品の副作用による健康被害の防止という規制目的の達成が実効的に確保されるか否かという点が重要なのであって,現にその実効的な確保が可能であり,代替的な規制手段によってはその実効的な確保が困難である以上,当該規制内容の遵守状況に関しては,法制度の運用における監督処分等の要否の問題にとどまり,当該規制自体の憲法適合性の判断を左右する事柄ではないというべきである。)。

オ.原告らは,インターネット販売では,どのような情報提供を行ったかの事後の検証も容易であり,さらに,購入履歴が残ることから,販売後に副作用が判明したような場合に連絡を取りやすいなどの利点もあると主張する(原告ら主張イ(ウ)c(b)(W))。しかしながら,P4ガイドラインやP4業界ルール案の内容に照らし,事後の検証や購入履歴を利用した追跡について,すべての業者がどれだけ実行可能な態勢を整備し得るかは疑問があり,その実行を担保するための行政上の監督も著しく困難であるといわざるを得ない(原告ら自身も,改正省令附則28条2項による継続販売者に関する経過措置の要件を満たした注文であるかどうかを判断するためには過大な労力が必要であることを自認している。)ことからすれば,上記原告らの主張によっても,インターネット販売における情報提供をもって規制の目的を達成し得るものと解することはできない。

カ.原告らは,本件規制においては,(a)(T)既存配置販売業及び(U)特例販売業の制度が,いずれも経過措置の中で残されており,対面販売の原則が守られない販売形態が事実上期限なく残されていること,(b)上記(a)(U)の特例販売業の許可を改正法施行直前に取得して医薬品の通信販売を行っている業者がいることからすれば,対面販売の原則の実効性は失われている旨主張する(原告ら主張イ(ウ)c(c)(W)及び(X))。上記(a)については,(T)既存配置販売業者(改正法附則10条)には,配置員が配置先の顧客と対面して情報提供をすることが義務付けられており(改正法附則11条1項,新薬事法36条の5,36条の6第5項),講習,研修等により配置員の資質の向上が期されていることも併せ考慮すれば,一定の範囲で対面による情報提供の履践が確保されているといえる上,既存配置販売業者に関する経過措置は,事案6(5)エ(ア)において認定したところによれば,販売品目が限定的に認められてきているものであること(配置販売品目指定基準(昭和36年厚生省告示第16号)参照)及び購入者等に無用の混乱を与えないようにすること等の観点から設けられたものであると認められ,新薬事法に基づく配置販売業に移行していくことが想定されているものであるところ,新薬事法に基づく配置販売業者も,薬剤師又は登録販売者が配置先の顧客と対面して情報提供し,薬剤師若しくは登録販売者が自ら又はその管理・指導下の配置員を通じて配置先の顧客と対面して販売をすることが義務付けられており(新薬事法36条の5,36条の6第5項,新施行規則159条の14,159条の18),対面による販売の履践が確保されているし(原告らは,既存配置販売業者の配置員又は新薬事法に基づく配置販売業者の有資格者が逐一配置先に赴いて相談応需を行うことが現実に行われるとは思われないと主張するが,その根拠は不明であり,採用の限りでない。),(U)特例販売業については,旧薬事法35条において,当該地域における薬局及び医薬品販売業の普及が十分でない場合その他特に必要がある場合に店舗ごとに品目を指定した上での特例として認められたものであって,改正法案の検討段階でも縮小していく方向が適当とされ(検討部会報告書3(5)@),改正法による廃止によって同法施行後は許可されることがなくなり,事案6(3)サのとおり現にその数は減少してきていることを踏まえ,上記の要件に該当する地域等において特定の品目の医薬品の入手自体に支障を生ずる事態の防止等の観点から,例外的に本件規制の対象から除外されたものと解される。以上のことからすれば,上記(T)及び(U)は,いずれも,旧薬事法の下で明文で定められた類型の販売業の許可を受けた販売業者の営業について激変緩和の観点から設けられた経過措置であって,その内容にはそれぞれ必要性と合理性があり,かつ,いずれも縮小の方向に向かうことが予定されているのであるから,これらの例外的な経過措置が存在し,その期限が限定されていないことをもって,本件規制の必要性と合理性が失われるものではないし,薬事法令の条文上の明確な位置付けがなかった郵便等販売について同様の経過措置が設けられていないことが不合理であるということもできない。また,上記(b)についても,事案6(8)エによれば,改正法の施行直前に特例販売業の許可を取得した業者がその施行後に医薬品の通信販売を行っているとの事実が認められるが,旧薬事法35条にいう当該地域における薬局及び医薬品販売業の普及が十分でない場合その他特に必要がある場合に当たるとして許可を取得した業者である以上,その取得の時期と改正法施行日との近接性によって施行後の郵便等販売の許容性に影響が及ぶものではなく,真に上記要件を具備していなかったのであれば,許可が取り消されることになり,上記要件を具備して許可を得た業者の改正法施行後の営業の実態において薬事法違反等の事実が認められるのであれば,上記エのとおり,行政処分等による是正がされることになるのであるから,上記の事実について別段不合理な点は認め難い。

キ.原告らは,本件規制は,郵便等販売によらなければ一般用医薬品を購入できない事情のある者(過疎地の居住者,身体の障害等の理由で外出困難な者,多忙で営業時間に薬局等に赴くことができない者等)に対し医薬品の購入を不可能とするものであると主張する(原告ら主張イ(ウ)d(a))。しかしながら,インターネット販売においては,実際の商品の配送は運送業者を介して行われるのが通常であることからすれば,緊急に一般用医薬品を必要とする場合にはインターネット販売を利用することはできず,継続的に服用している医薬品を購入する場合又は常備薬として家庭等に備蓄する場合にインターネット販売が利用されることになると解される(原告P1代表者も,第一次検討会においてその点を認める発言をしている(事案6(6)カ)。)ところ,そのような利用方法を前提とすると,原告らの主張に係るインターネット販売を必要とする者とは,インターネット販売によらなければ医薬品を入手し得ないものではなく,単にインターネット販売の方がより利便に資することを述べているものにとどまり,医薬品の利便性よりも安全性を優先させた本件規制の必要性と合理性を否定する根拠となり得るものではないと解するのが相当である。すなわち,過疎地に居住している者が上記用途での医薬品の購入のために薬局又は店舗のある場所まで移動することが不可能であるとは考えられず,仮にそれに相応の困難を伴う者がいたとしても,配置販売業者を利用できない事情があるとは考え難い。また,多忙を理由とする者は,まさに利便性を求めるものにすぎず,自ら又は家族を通じて薬局又は店舗で医薬品を購入することが不可能であるとは考えられないし,身体上の移動の支障等の理由から外出が困難な者についても,配置販売業の利用又は医師の診察による投薬といった代替手段を採ることが不可能であるといった事情は認め難い。そして,本件規制の趣旨は,前記(4)ア(ウ)のとおり一般用医薬品の入手上の利便性よりも使用上の安全性の確保を優先すべきということであり,その趣旨には必要性と合理性が認められること,前記(4)カ(ア)のとおり,インターネット販売では,購入者側の属性・状態等の的確な把握に基づく医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び適切な相談の実効的な確保の点において,対面による販売によって実現し得る所要の水準を確保することができず,副作用による健康被害の防止を十分に図り得ないものといわざるを得ないことからすれば,上記主張及びこれと同旨の利便性の観点からインターネット販売の規制に反対する意見が多数あることを考慮しても,本件規制の合憲性に係る前示の判断を左右するものとは認められない。
 なお,原告らは,インターネット販売業者では多数の品ぞろえを用意できると主張するが,薬局や店舗においても相当数の品ぞろえは確保されており,店頭にない薬品の取り寄せも可能であると考えられることからすれば,この点は,前示の判断を左右するものではない。また,原告らは,流行性の疾患の感染拡大防止のために外出が抑制される事態になったような場合にインターネット販売を利用した方が安全であると主張するが,この主張は,インターネット販売に従事する有資格者・従業員や運送業者がほぼ正常に活動できることを前提としているものと考えられるところ,そのような状況を前提とすると,インターネット販売を利用することによって薬局や店舗に出向かなくて済むという利点が,副作用による健康被害の防止の実効性の観点からのインターネット販売の問題点を克服できるほどのものであるとは考え難いことからすれば,この点も,前示の判断を左右するものではない。さらに,原告らは,インターネット販売を利用した方が早期に医薬品を手に入れることができると主張するが,主として継続的に服用される医薬品やいわゆる常備薬として備蓄される医薬品の購入に用いられるという前記のインターネット販売の利用の在り方を前提とすると,原告ら主張の利点は,それほど大きいものとはいえず,副作用による健康被害の防止の実効性の観点からのインターネット販売の問題点を克服できるものとはいえないから,原告らのこの主張によっても,前示の判断は左右されるものではない。

ク.原告らは,改正薬事法により規制緩和がされた部分がある一方で,本件規制はインターネット販売を行う業者にのみ厳しく,かつ,原告らの営業に重大な影響を与える規制である旨主張する(原告ら主張イ(ウ)d(b))が,本件規制は,薬局開設者及び店舗販売業者に等しく適用されるものであり,郵便等販売に該当する限り,インターネット販売のみならず,それ以外の郵便その他の方法による各種の通信販売全般に適用されるものであり,原告らのみに差別的に適用されるものではないし(これらのことは,前記(3)アにおいて説示したところからも明らかであるということができる。),事案6(8)オの認定に係る原告らの経営状況等(原告P1の総売上高の実績,総売上高及び当期純利益の予想金額並びに医薬品の売上高の総売上高に占める割合等,原告P2の医薬品の売上高の金額及びその推移)に照らすと,本件規制による一般用医薬品の販売収益の減少によって直ちに各種商品のインターネット販売を行う業者である原告らの経営に過酷な結果を招来するとまでは認め難く,原告らの上記主張は理由がない。

ケ.原告らは,本件規制によって医薬品の闇取引が横行するおそれがあると主張する(原告ら主張イ(ウ)d(c))が,本件規制によっても,薬局又は店舗における医薬品販売は可能であり,配置販売業者による販売も許容され,医薬品の入手自体が特に困難な場合については特例販売業者ないし離島居住者についての経過措置が設けられ,第二類医薬品の継続使用者についての経過措置も設けられていることに照らせば,本件規制によって直ちに一般用医薬品の闇取引が横行するとは考え難く,所論は理由がない。

コ.原告らは,再改正省令により改正省令附則に加えられた郵便等販売に関する経過措置のうち,(T)離島に関するもの(改正省令附則23条2項)については,離島以外にも薬局からの距離が遠い地域があること,(U)継続購入に関するもの(改正省令附則28条2項)については,郵便等販売を行う業者に購入履歴の調査等に過大な負担を課するものであることからすれば,合理的なものとはいえず,本件規制の違憲性を何ら減ずるものではないこと,(V)上記(U)の継続購入に関する経過措置の要件に該当しないにもかかわらず郵便等販売を行っている業者がいることからすれば,対面販売の原則は現実には守られていないという実態があるというべきであることを主張する(原告ら主張イ(エ))。
 しかしながら,上記(T)及び(U)については,再改正省令による経過措置は,(T)船舶・航空機等を利用しなければ医薬品を販売する薬局又は店舗に到達できないという点で,一般の過疎地と比べても格段に医薬品の入手自体に支障の生ずる可能性の高い「薬局又は店舗販売業の店舗が存しない離島」の居住者(改正省令附則23条2項)の場合及び(U)改正法施行前に現に特定の第二類医薬品を継続して使用し,同法施行後も同一の第二類医薬品を引き続き継続して使用する必要性がある継続購入者につき,有資格者が本人の情報提供を要しない旨の意思を確認してこれを要しないものと判断した場合(同省令附則28条2項)に,いずれも2年間に限定した経過措置を定めたものであって,その内容にはそれぞれ必要性と合理性があるものと解されるところ,このような期間の限定を付した例外的な経過措置が存在することをもって,第一類・第二類医薬品の通常の購入者との関係において有資格者の対面による販売を義務付ける本件規制の必要性と合理性が否定されるものではなく,その合憲性に関する前示の判断が左右されるものではない。また,上記(V)については,上記エと同様の理由から,原告ら主張に係る事実をもって,対面による販売を義務付ける本件規制の必要性と合理性が否定され,あるいはその実効性が失われるものということはできない。

サ.なお,原告らのその余の主張も,前記(4)の判断を左右するに足りるものとは認められない。

(6)ア.以上の諸事情を総合的に考慮すると,本件規制は,前記(2)の規制目的(一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保し,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止すること)を達成するための規制手段としての必要性と合理性を認めることができ,医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)及び情報通信技術等をめぐる本邦の現状の下において,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないと認められる以上,立法機関(立法府の制定した法律により行政立法の権能の委任を受けた行政機関を含む。)の合理的裁量の範囲について,職業活動の内容及び態様に関する規制として,あるいは狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課する規制に準じて,広狭のいずれに解するか(前記(1)参照)にかかわらず,その合理的裁量の範囲を超えるものではないというべきであり,本件規制及びこれを定める本件各規定を薬事法施行規則に加える改正省令中の本件改正規定は,憲法22条1項に違反するものということはできない。

イ.なお,付言するに,前示のとおり事柄の専門的・技術的な性質及び事情の変化に即応した柔軟な対応の必要性の観点から新薬事法において本件規制の具体的内容の定めが厚生労働省令にゆだねられていると解されることにもかんがみ,将来において医薬品の副作用(副作用に関する消費者一般の意識・認識等を含む。)及び情報通信技術等をめぐる本邦の状況に有意な事情の変更が生じた場合には,一般用医薬品の副作用の危険性に応じた区分及びその区分に応じた規制方法の在り方を含めて,その時点の新たな状況に応じた規制内容の見直し(郵便等販売に関する経過措置の追加を含む。)が図られることが新薬事法の趣旨にも合致するものと解されるところであり,本件規制の憲法適合性(改正省令中の本件改正規定の合憲性)に関する上記アの判断は,本件規制の内容を将来の状況の変化の有無にかかわらず恒久的に固定化されるべき規制措置として位置付ける趣旨のものではない。

(次回へ続く)

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2012年01月20日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【判旨】

3.争点(2)ア(委任命令としての適法性)について

(1) 憲法22条1項は,狭義における職業選択の自由のみならず,職業活動の自由としての営業の自由を保障する趣旨を包含していると解すべきところ,本件改正規定の適用の結果として第一類・第二類医薬品について郵便等販売の方法による販売はこれを行うことができなくなることからすれば,改正省令中の本件改正規定は,これらによって憲法22条1項において保障される営業の自由に係る事業者の権利が制限されるものであるということができる。
 本来,国民の権利を制限するには法律の根拠が必要であるが,制限される権利の種類及び制限の目的によっては,専門的・技術的な判断を要する事項等に応じて制限の範囲・内容を定める必要がある場合も考えられるところ,そのような事項及び制限の細目をすべて法律で定めることは,実際上困難であり,かつ,事情の変化に柔軟に対応していくことも困難になることから,法律による委任があり,かつ,その委任の範囲内であれば,省令を始めとする行政立法によって国民の権利を制限することも許されると解すべきである(国家行政組織法12条3項)。
 したがって,改正省令中の本件改正規定の適法性を判断するに当たっては,本件改正規定により設けられた新施行規則中の本件各規定が,法律の委任(授権)に基づくものであるか,法律の委任に基づくものであるとして,その委任の範囲内で定められたものであるかについて検討する必要がある。

(2) 本件改正規定により設けられた新施行規則中の本件各規定に対する法律の委任(授権)の有無について,被告は,新施行規則中の本件各規定のうち,15条の4は新薬事法36条の5及び36条の6,159条の14は新薬事法36条の5,159条の15第1項1号は新薬事法36条の6第1項,159条の16第1号は新薬事法36条の6第2項,159条の17第1号及び第2号は新薬事法36条の6第3項の規定の委任をそれぞれ受けたものであって,本件各規定にはいずれも法律の授権規定が存在すると主張する。
 まず,(a)新薬事法36条の5は,販売に従事する者に関しては,1号において第一類医薬品について薬剤師と,2号において第二類医薬品及び第三類医薬品について薬剤師又は登録販売者と,それぞれ明確かつ一義的に定めていることに加え,同条柱書の全体の文脈を併せ考えれば,同条柱書の「厚生労働省令で定めるところにより」という文言は,販売に従事する者の定めを委任する趣旨ではなく,「販売させ,又は授与させなければならない」にかかるものであることは明らかであり,したがって,同条は,その文理上,一般用医薬品の販売(第一類医薬品の薬剤師による販売並びに第二類医薬品及び第三類医薬品の薬剤師又は登録販売者による販売)における販売の方法・態様についての定めを厚生労働省令に委任したものと解するのが相当である(原告らは,同条は,販売に従事する者についての定めを委任したものであると主張するが,以上のとおり,失当である。)。また,(b)新薬事法36条の6第1項ないし第3項の「厚生労働省令で定めるところにより」という文言は,同各項の全体の文脈からすれば,それぞれ,「情報を提供させなければならない」又は「情報を提供させるよう努めなければならない」にかかるものであることは明らかであり,したがって,同各項は,いずれも,その文理上,一般用医薬品の販売又は相談応需における情報提供(第一類医薬品の販売に係る薬剤師による情報提供,第二類医薬品の販売に係る薬剤師又は登録販売者による情報提供並びに一般用医薬品の相談応需に係る薬剤師又は登録販売者による情報提供)の方法・態様についての定めを有資格者(医薬品の販売に必要な専門的知識又は資質について所轄行政庁の免許又は確認を受けた薬剤師又は登録販売者をいう。以下同じ。)の関与の在り方を含めて厚生労働省令に委任したものと解するのが相当である。
 そして,上記(a)及び(b)を踏まえて本件各規定の文言及び内容についてみるに,新施行規則中の本件各規定のうち,(ア)@159条の15第1項1号は,同項柱書の引用に係る新薬事法36条の6第1項の規定による情報提供の方法(有資格者の関与の在り方を含む。後記A及びBも同様)について定め,A159条の16第1号は,同条柱書の引用に係る新薬事法36条の6第2項の規定による情報提供の方法について定め,B159条の17第1号及び第2号は,同条柱書の引用に係る新薬事法36条の6第3項の規定による情報提供の方法について定めていることから,文理上,それぞれ新薬事法の上記各規定の委任に基づくものであるということができ,(イ)159条の14は,各項とも「法第三十六条の五の規定により」と明記した上で,@第1項において,第一類医薬品について,薬剤師自ら又はその管理及び指導の下で登録販売者若しくは一般従事者をして,当該薬局等において,対面で販売させるべき旨を規定し,A第2項において,第二類医薬品又は第三類医薬品について,薬剤師又は登録販売者自ら又はその管理及び指導の下で一般従事者をして,当該薬局等において,対面で販売させるべき旨を規定しており,いずれも,一般用医薬品の販売における具体的な販売の方法・態様(有資格者の関与の在り方を含む。)を定めたものといえるから,各項の規定の文言及び内容並びに上記(a)の委任の趣旨にかんがみ,新薬事法36条の5の規定の委任に基づくものであるということができ,(ウ)15条の4(142条において準用する場合を含む。)は,薬局開設者又は店舗販売業者が一般用医薬品の販売方法として郵便等販売を行う場合について,@第1項において,その販売方法を採るに当たっての遵守すべき事項(1号及び2号)及び情報提供の方法(3号,別表第一の二)を規定し,A第2項において,所要の手続として届書の提出を定めるものであり,一般用医薬品の販売における具体的な販売及び情報提供の方法・態様(有資格者の関与の在り方を含む。)を定めたものといえるから,各項の規定の文言及び内容並びに上記(a)及び(b)の委任の趣旨にかんがみ,新薬事法36条の5及び36条の6の委任に基づくものであるということができる。

(3) 以上によれば,改正省令中の本件改正規定により設けられた新施行規則中の本件各規定は,それぞれ,改正法により設けられた新薬事法の授権規定(同法36条の5及び36条の6)の委任に基づくものであるということができるので,以下,本件各規定がその委任の範囲内で定められたものかどうかについて検討する。

ア.前記(2)(a)及び(b)に説示したところによれば,<A>新薬事法36条の5は,一般用医薬品の販売(第一類医薬品の薬剤師による販売並びに第二類医薬品及び第三類医薬品の薬剤師又は登録販売者による販売)における販売の方法・態様についての定めを厚生労働省令に委任したものであり,<B>新薬事法36条の6は,一般用医薬品の販売又は相談応需における情報提供(第一類医薬品の販売に係る薬剤師による情報提供,第二類医薬品の販売に係る薬剤師又は登録販売者による情報提供並びに一般用医薬品の相談応需に係る薬剤師又は登録販売者による情報提供)の方法・態様についての定めを厚生労働省令に委任したものであると解されるところ,(ア)薬事法の目的には医薬品の安全性の確保のために必要な規制を行うことが掲げられ(1条),新薬事法36条の6において提供又は提供の努力が義務付けられる情報は一般用医薬品の「適正な使用のために必要な情報」とされており,新薬事法36条の5及び36条の6は改正法により併せて新設された規定であること,(イ)改正法案の可決時の参議院本会議への同院厚生労働委員会の報告において,改正法案は,「医薬品の適切な選択及び適正な使用に資するよう,一般用医薬品をその副作用等により健康被害が生ずるおそれの程度に応じて区分し,その区分ごとに,専門家が関与した販売方法を定める等,医薬品の販売制度全般の見直しを行う(中略)こと等により,保健衛生上の危害の発生の防止を図」ることを改正の目的とするものとされ(事案6(5)キ。衆議院本会議への同院厚生労働委員会の報告も同旨である(同コ)。),参議院の附帯決議においても,政府に対し,「医薬品の適切な選択及び適正な使用の確保のため,新たな一般用医薬品の販売制度が実効あるものとなるよう十分留意すること」,「新たな一般用医薬品の販売制度について,国民が,医薬品のリスク分類によって,販売者,販売の在り方等が異なることを理解し,適正に販売がなされていることを容易に確認できるよう必要な対策を講ずること。また,制度の実効性を確保するよう薬事監視の徹底を図ること」及び「一般用医薬品のリスク分類については,安全性に関する新たな知見や副作用の発生状況等を踏まえ,不断の見直しを図ること」を求める旨の決議がされていること(事案6(5)キ)等にかんがみると,新薬事法36条の5及び36条の6の規定は,一般用医薬品のリスク分類並びにその区分に応じた販売及び情報提供の方法・態様の在り方については,医学的・科学的な知見・検証等に基づく専門的・技術的な検討を必要とし,新たな知見や副作用の発生状況等の事情の変化に柔軟に対応する必要もあることから,一般用医薬品の安全性の確保(副作用等による健康被害の防止のための適切な選択及び適正な使用の確保)のため,36条の5において,その確保のために必要な販売の方法・態様について,36条の6において,その確保のために必要な情報提供の方法・態様について,それぞれ一般用医薬品のリスク(副作用等により健康被害が生ずるおそれ)の程度に応じた区分ごとにどのような方法・態様の販売及び情報提供の在り方(有資格者の関与の在り方を含む。)が適切であるかという観点からの専門的・技術的な検討を経た上で具体的に定めることとして,その定めを厚生労働省令に委任したものと解するのが相当である。そして,このように,新薬事法36条の5及び36条の6の授権規定による省令への委任の趣旨が,一般用医薬品の安全性の確保(副作用等による健康被害の防止のための適切な選択及び適正な使用の確保)を目的として,一般用医薬品のリスク(副作用等により健康被害が生ずるおそれ)の程度に応じた区分ごとに販売及び情報提供の適切な方法・態様の在り方(有資格者の関与の在り方を含む。)を専門的・技術的な判断に基づき定めることにあることにかんがみると,新薬事法の委任に基づき,省令において一定の区分の一般用医薬品について有資格者が関与する販売及び情報提供の方法・態様を具体的に定めることにより,その結果,当該区分の一般用医薬品につき一定の販売方法を採ることができなくなることがあるとしても,それは,上記のとおりの新薬事法の委任の趣旨に沿った規制に必然的に随伴する結果として,当該法律の委任の範囲に包含されており,その範囲を超えるものではないと解するのが相当である。
 しかるところ,新施行規則中の本件各規定は,(ア)新施行規則159条の15ないし159条の17において,一般用医薬品のリスク分類の区分に応じた情報提供の方法・態様(有資格者の関与の在り方を含む。)を,(イ)新施行規則159条の14において,一般用医薬品のリスク分類の区分に応じた販売の方法・態様(有資格者の関与の在り方を含む。)を,(ウ)新施行規則15条の4において,一般用医薬品のリスク分類の区分に応じた販売及び情報提供の方法・態様(有資格者の関与の在り方を含む。)をそれぞれ具体的に定めており,このように,@上記(ア)において,第一類・第二類医薬品についての薬剤師又は登録販売者による情報提供は対面で行うべきこと等を,A上記(イ)において,一般用医薬品についての薬剤師又は登録販売者による販売は第三類医薬品を郵便等販売する場合を除き対面で行うべきこと等をそれぞれ定めたのは,新薬事法36条の5及び36条の6の授権規定の委任に基づき,新薬事法の委任の趣旨に沿った規制として,省令において一定の区分の一般用医薬品について有資格者の関与する販売及び情報提供の方法・態様を具体的に定めたものであり,これらの規制に伴う帰結として,B上記(ウ)において,一般用医薬品の郵便等販売を行う場合は,第一類・第二類医薬品の販売を行わないこと等を定めていることについては,上記(ア)及び(イ)の具体的な定めに必然的に随伴する結果として,当該法律の委任の範囲に包含されており,上記@ないしBの本件各規定のいずれの定めも,その委任の範囲を超えるものではないというべきである。そして,法律の委任に基づき定められる省令が,専門的・技術的な検討及びその時々の事情の総合的な勘案等の上で定められることからすると,省令において法律の委任を受けた事項についてどのような定めを設けるかについては,法律の委任の趣旨を逸脱しない範囲内において,所管行政庁に専門的・技術的な観点からの一定の裁量権が認められているものと解するのが相当であるところ,第一類,第二類及び第三類の医薬品の各区分のいずれについて有資格者による対面の販売及び情報提供を義務付けるかについては専門的・技術的な検討及び事情の変化に応じた柔軟な対応が必要となる事項であると考えられる(なお,事案6(3)ネのとおり,第二類医薬品については,厚生科学審議会の審議結果である検討部会報告書でも結論は留保されていた。)ことからすると,新薬事法の授権規定が当該事項の定めを所管行政庁の専門的・技術的な観点からの裁量的判断にゆだねたことには一定の合理的な理由があり,前記のとおりの新薬事法の委任の趣旨にかんがみ,上記@ないしBの本件各規定の定めは,その内容の実質においても,当該法律の委任の趣旨(上記の裁量権の範囲)を逸脱するものではなく,その委任の範囲を超えるものではないというべきである。

イ.なお,以上に説示したことは,(あ)参議院・衆議院における改正法案の主務大臣である厚生労働大臣の趣旨説明において,「国民の健康意識の高まりや医薬分業の進展等の医薬品を取り巻く環境の変化,店舗における薬剤師等の不在など制度と実態の乖離等を踏まえ,医薬品の販売制度を見直すこと」が求められているとした上で,「今回の改正では,医薬品の適切な選択及び適正な使用に資するよう,医薬品をリスクの程度に応じて区分し,その区分ごとに,専門家が関与した販売方法を定める等,医薬品の販売制度全般の見直しを行う」との説明がされ(事案6(5)イ),この説明は,前記の参議院本会議に対する同院厚生労働委員会の審議結果の報告内容と同旨であること,(い)改正法案の主務官庁である厚生労働省が内閣法制局における審査時に提出した説明資料に,(T)新薬事法36条の6第1項及び第2項の原案に相当する条文案(当時の36条の4第1項及び第2項)について,「改正後については,薬剤師又は試験合格者(引用注・登録販売者に相当)の隣接空間内に限り,購入者に対して医薬品を販売し,情報提供を行うことができることとすることが適当である」,「安全性を確保する観点からは,購入者の質問に十分に答えられない場合や間違った情報を伝えないようにするため,薬剤師又は試験合格者が適切に管理することが求められる」,「よって,当該省令において,そのような管理下販売の方法について規定する予定である」との解説が記載され,(U)新薬事法36条の5の原案に相当する条文案(当時の36条の3第1項)について,省令への委任につき「厚生労働省令で定めるところにより,販売させ,授与させ(中略)ること」との標題の下に,上記(T)と同様の適切な情報提供及び相談応需の確保のための管理下販売の方法の定めを委任する趣旨と解される解説が記載されており,(V)同説明資料の添付資料として検討部会報告書(正式の部会での決定前の報告書案で,報告書と実質的に同じ内容のもの。以下,この添付資料としての報告書を指すときは,同じ。)が添付されていたこと(後記(う)参照)にもかんがみ,これらの条文案の解説等を全体的にみれば,新薬事法の授権規定は,一般用医薬品について,上記(T)の条文案の文言から一見して明白な情報提供の方法・態様のみならず,有資格者の管理の下における販売の方法・態様についても省令に委任することを前提として立案されたものと解されること,(う)厚生労働省による改正法案の立案作業の基礎とされ,上記(い)の説明資料にも添付された厚生科学審議会の審議結果である検討部会報告書には,医薬品の販売については,対面販売が原則であることから,情報通信技術を活用した医薬品の販売には慎重に対応すべきであるとした上,第一類医薬品については,対面販売とすべきであり,情報通信技術を用いた販売を認めることは適当ではない旨,第三類医薬品については,一定の要件で通信販売を認めざるを得ない旨記載され,医薬品のリスク分類による各区分のいずれについて対面販売を義務付け,その結果として郵便等販売が認められないものとするかが,法令改正の対象事項として掲記される一方で,第二類医薬品についてはその結論が留保されていたこと(事案6(3)ネ),(え)国会審議において,薬害被害を二度と発生させないために安全性を第一に考えてほしいという議員の質問に対し,厚生労働省の医薬食品局長が,改正により消費者の安全性がより確保される仕組みが構築される旨の答弁をし(事案6(5)エ(ア)),また,厚生労働大臣が,医薬品の安全体制の充実強化に積極的に取り組んでいく旨の答弁をし,議員からも,規制改革の流れの中で信頼,安全,安心をどのように作っていくかについてはぬかりなく油断なく対応してほしい旨の指摘がされた(事案6(5)カ(イ))という状況の下で,@(T)薬害・副作用被害の防止の観点からインターネット販売の規制を強化すべきではないかとの質問に対し,医薬食品局長は,医薬品の販売における対面販売の重要性を強調した上,インターネット販売について検討部会報告書を踏まえて慎重な対応が必要である旨答弁し(事案6(5)エ(イ),同ケ),指定第二類医薬品についてオーバー・ザ・カウンターの販売形態を義務付けるべきではないかとの質問に対し,法案成立後に検討する旨答弁しており(同エ(ア)),(U)厚生労働大臣も,第一類医薬品のインターネット販売を制限すべきではないかとの質問に対し,法改正後については,改正後の薬事法において,第一類医薬品を販売する場合には,省令で定めるところにより,薬剤師が所要の情報提供をしなければならないものとされていて,これに基づき対面販売により情報提供することを求めるという方向性になっており,その定めの違反は行政処分による強制力のある取締りの対象となり,従来は通知に基づく行政指導がされてきたインターネット販売はその取締りの対象となる旨答弁し(同カ(ウ)),指定第二類医薬品についても,上記(T)と同旨の質問に対して医薬食品局長の上記(T)と同旨の法案成立後に関係者の意見を詰めていきたい旨の答弁をしている(同エ(ア))上,A参考人であるP10部会長は,改正法案は検討部会での議論及び検討部会報告書を十分に踏まえたものであると説明し(同オ(ア)),質疑において対面販売が望ましい旨の見解を表明しており(同オ(エ)),BP11のP44参考人からは,インターネット販売の規制について政省令で定めるべきである旨の意見陳述がされているところ(同オ(ウ)),前記(あ)の趣旨説明を踏まえた上記@ないしBの答弁及び説明・意見等に対し,議事録上,特に異論が出たことは認められず,郵便等販売の具体的な規制を法律に規定すべきである旨の質疑等もされることなく,改正法案が原案どおり可決されていることからすれば,販売方法の規制に関しては,一定の区分の医薬品について,対面販売の義務化及びこれに伴う郵便等販売の制限が法案成立後に行政立法等によって具体化される方向で検討されていることを前提として改正法案の審議が進められたことがうかがわれることからも,裏付けられるものということができる(なお,対面の原則の定義・根拠に関する改正法案の立案過程における議論の状況等については,後記4(5)イ参照)。

(4)ア.これに対し,原告らは,(ア)@新薬事法36条の5は販売に従事する者についての規制を省令に委任したものであり,A新薬事法36条の6は情報提供の方法についての規制を省令に委任したものであって,いずれも,インターネット販売を禁止する省令の根拠とはなり得ない,(イ)店舗販売業の定義を定める新薬事法25条にいう「店舗において」とは,旧薬事法37条1項の「店舗による」と同義であり,郵便等販売を禁止する趣旨を含むものではないし,特に定めがない以上,薬事法36条の6第1項が電磁的方法による情報提供について規定していないからといってそれが認められない趣旨であると解すべきではない旨主張する(事案5(2)ア(原告らの主張の要旨)(以下「原告ら主張ア」という。)(ア)a)。
 しかしながら,上記(ア)@の主張に理由がないことは前記(2)(a)において,同Aの主張に理由がないことは前記(3)において,それぞれ既に説示したとおりである。また,上記(イ)の主張については,新薬事法25条が店舗販売業につき郵便等販売を禁止する趣旨を含んでおらず,新薬事法36条の6第1項が電磁的方法による情報提供について規定していないこと自体からそれが禁止される趣旨ではないことは所論のとおりであるとしても,そのことは,新薬事法36条の5及び36条の6が一般用医薬品のリスク分類の区分に応じた販売及び情報提供の方法・態様の定めを有資格者の関与の在り方を含めて省令に委任し,一定の区分の医薬品について有資格者の対面による販売及び情報提供を義務付ける結果として郵便等販売が販売方法から除外されることがその委任の範囲に含まれると解することの妨げとなるものではなく,上記主張は理由がない。

イ.原告らは,本件各規定の新薬事法上の授権規定に関する厚生労働省の説明が不正確かつあいまいであること,授権規定が明らかにされたのは改正法の成立よりかなり後であること等からすれば,薬事法の改正の際,厚生労働省担当者は,第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止する意図を有していなかった旨主張する(原告ら主張ア(ア)a)が,前記(3)イ(え)(国会審議での厚生労働省の医薬食品局長及び厚生労働大臣の答弁内容等)並びに同(い)及び(う)(厚生労働省の内閣法制局における法案審査時の説明資料及びその添付資料とされた厚生科学審議会の審議結果の厚生労働大臣への報告である検討部会報告書の内容)に説示したところに照らし,採用することができない。なお,原告らは,厚生労働大臣は第一類医薬品についてインターネット販売を規制する趣旨の答弁をしたにとどまる旨主張するが,この答弁は,事案6(5)カ(ウ)のとおり,第一類医薬品についてインターネット販売が行われている現状についての対応をただす質問に対し,法改正後は第一類医薬品について対面販売が求められることからインターネット販売ができなくなる旨及び現状については行政指導によって対応するしかない旨を答弁したものであり,この質問と答弁との対応関係及び指定第二類医薬品に関する同エ(ア)の答弁内容に加え,上記(3)イ(え)@(T)及び(U)の第二類医薬品に関する厚生労働省の医薬食品局長の答弁を併せ考慮すれば,上記大臣の答弁は,第一類医薬品に対する質問に対応して第一類医薬品に関する規制についての答弁をしたものと解すべきであり,第二類医薬品についての郵便等販売を認める趣旨のものとは解されないので,上記主張も理由がない。

ウ.原告らは,立法者の意思は法律の条文として明確な形で現れるか,少なくとも提案理由又は附帯決議に現れていることが必要であり,単に国会における議論の過程や答弁に現れているだけでは足りず,対面販売を義務付けることやこれまで認められてきた第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止することは法律の条文のみならず提案理由や附帯決議にも立法者の意思として現れていない旨主張する(原告ら主張ア(ア)b)が,前記(3)アのとおり,本件各規定が新薬事法の授権規定の委任に基づくものであることは,新薬事法の条文全体並びに国会の本会議における委員会報告及び附帯決議に示された立法者の意思から導かれるものであり,しかも,このことは,前記(3)イのとおり,上記報告内容と符合する衆参各院における厚生労働大臣の趣旨説明(提案理由説明)のほか,改正法案の立案過程の基礎資料(厚生労働省の内閣法制局における法案審査時の説明資料及びその添付資料とされた厚生科学審議会の審議結果である検討部会報告書)並びに国会審議における厚生労働省の医薬食品局長及び厚生労働大臣の答弁等からも裏付けられるのであるから,上記主張は理由がない。

エ.原告らは,(ア)改正法の制定過程において,(a)国会審議の過程での資料及び答弁のみならず,(b)厚生科学審議会(検討部会)での議論及び報告書の記述を通じて,新薬事法が第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止する趣旨を省令に委任したことをうかがわせる事情は見当たらない(原告ら主張ア(イ)a及びb(a)),(イ)外国での通信販売の状況について,厚生労働省担当者が,@検討部会において誤った資料を準備し,誤った議論の方向を修正しなかった上,A国会審議においても事実と異なる想定問答を準備していた旨主張する(原告ら主張ア(イ)b(b))。
 しかしながら,上記(ア)について,(a)国会審議では,前記(3)イ(え)のとおり,@(T)薬害・副作用被害の防止の観点からインターネット販売の規制を強化すべきではないかとの質問に対し,厚生労働省の医薬食品局長は,医薬品の販売における対面販売の重要性を強調した上,インターネット販売について検討部会報告書を踏まえて慎重な対応が必要である旨答弁し,指定第二類医薬品についてオーバー・ザ・カウンターの販売形態を義務付けるべきではないかとの質問に対し,法案成立後に検討する旨答弁しており,(U)厚生労働大臣も,第一類医薬品のインターネット販売を制限すべきではないかとの質問に対し,法改正後については,改正後の薬事法において,第一類医薬品を販売する場合には,省令で定めるところにより,薬剤師が所要の情報提供をしなければならないものとされていて,これに基づき対面販売により情報提供することを求めるという方向性になっており,その定めの違反は行政処分による強制力のある取締りの対象となり,従来は通知に基づく行政指導がされてきたインターネット販売はその取締りの対象となる旨答弁し,指定第二類医薬品について,上記(T)と同旨の質問に対して医薬食品局長の上記(T)と同旨の法案成立後に関係者の意見を詰めていきたい旨の答弁をしている上,A参考人であるP10部会長は,改正法案は検討部会での議論及び検討部会報告書を十分に踏まえたものであると説明し,質疑において対面販売が望ましい旨の見解を表明しており,BP11のP44参考人からは,インターネット販売の規制について政省令で定めるべきである旨の意見陳述がされているところ,前記の趣旨説明を踏まえた上記@ないしBの答弁及び説明・意見に対し,特に異論は出されず,郵便等販売の具体的な規制を法律に規定すべきである旨の質疑等もされることなく,改正法案が原案どおり可決されていることからすれば,販売方法の規制に関しては,一定の区分の医薬品について対面販売の義務化及びこれに伴う郵便等販売の制限が法案成立後に行政立法等によって具体化される方向で検討されていることを前提として改正法案の審議が進められたことがうかがわれること,(b)@検討部会の議論では,多数の委員(P11のP12委員(事案6(3)カ),大学薬学部教授のP36委員(同ナ),大学医学部教授のP26委員(同ナ),P15のP16委員(同ソ),東京都福祉保険局のP34委員(同タ))及びP11の役員である講師(同ケ)により,副作用による健康被害の防止の観点から,一般用医薬品について有資格者の対面による販売及び情報提供を行うのが原則であり,対面によらないインターネット販売を認めることには消極である旨の意見が述べられ,また,多数の委員(大学薬学部教授のP30専門委員(事案6(3)ソ),大学フロンティア創造共同研究センター教授のP24委員(同ソ,ナ及びニ),大学経営学部教授のP32委員(同ソ),大学院経営管理研究科教授のP35委員(同チ),P19のP20委員(同ソ),P27協会のP28委員(同セ),P6協会のP25委員(同ソ)等)の発言及び事務局による論点整理の経過(事案6(3)エ,同セ,同チ,同ナ及び同ニ)によれば,違法な薬物の取引と薬局や店舗販売業の許可を得ている者が行うインターネット販売とを区別した上で,後者の利点と問題点を比較検討して議論が行われており,A検討部会報告書には,上記@の議論を踏まえ,医薬品の販売については,対面販売が原則であることから,情報通信技術を活用した医薬品の販売には慎重に対応すべきであるとした上,第一類医薬品については,対面販売とすべきであり,情報通信技術を用いた販売を認めることは適当ではないとするなど,医薬品のリスク分類による各区分のいずれについて対面販売を義務付け,その結果として郵便等販売が認められないものとするかが,法令改正の対象事項として掲記される一方で,第二類医薬品についてはその結論が留保されていたこと(事案6(3)ネ)が認められ,上記(a)及び(b)の改正法の立法過程における国会審議及び厚生科学審議会での議論等は,本件各規定と新薬事法の委任の範囲との関係に関する前記(2)及び(3)アの判断をむしろ裏付けるものということができるので,原告らのこれらの点に関する主張は理由がない(なお,上記によれば,国会審議の段階で厚生労働省においてインターネット販売の禁止が念頭に置かれていなかったことを前提として,省令制定の段階において新薬事法の委任の存在を基礎付ける禁止理由等の明示がされていない旨を論ずる原告らの主張は,その前提を欠くし,厚生労働省が作成した改正法の概要や国会における想定問答集にインターネット販売の禁止に結び付く記載がないことから厚生労働省が立法段階でインターネット販売を禁止する意図を有していなかったとする原告らの主張も,上記に照らし,理由がない。)。
 また,上記(イ)については,(a)そもそも行政命令の内容が法律の委任の範囲内のものであるかどうかは,国内の事情に応じて制定される法律の条文及び趣旨並びに行政命令の内容によって客観的に定まるものであるから,仮に法律の立法過程で参考とされた外国法制の認識に誤りがあったとしても,そのことによって直ちに当該法律の行政命令への委任の範囲の広狭の解釈に影響が及ぶものとは解されないところ,(b)上記(イ)@については,原告らの主張及び甲第122号証(厚生労働省の作成に係る海外情勢報告の資料)によっても,平成16年9月より前の時点で,ドイツにおける平成15年9月の法改正の情報を厚生労働省担当者が知り得たとは認められず,平成16年6月の第2回検討部会における資料においてドイツで郵送による販売が禁止されている旨の記載をしたこと(事案6(3)ウ)はその当時の国内の資料に基づく記載であったと推認される上,甲第122号証自体,ドイツの医療保険近代化法の成立について記述したものであって,同号証に記載された法律の改正点の多くは医療保険に関するもので,甲第124号証(ドイツ連邦憲法裁判所の2003年(平成15年)2月11日判決の抄訳)がワクチンの医師への配送についての判例であることも併せ考えれば,甲第122号証の記載は医療保険の対象となる医療用医薬品の通信販売が解禁された旨の報告である可能性も考えられ,この記載のみから直ちに一般用医薬品の通信販売が認められるようになったか否か及びこれを厚生労働省担当者が知り得たか否かを結論付けることはできず,また,平成17年2月の第9回検討部会では,諸外国におけるインターネット販売の状況について調査はしたものの調査結果の正確性について疑義があったため資料に載せなかったと事務局が回答しているのであり,かつ,その後のP16委員の発言もそのことを前提に独自の調査の結果を明らかにしたものであるから(以上,事案6(3)コ),これらの経緯をもって,事務局が殊更に議論を誤った方向に誘導したとか誤った議論を修正しなかったということはできず,また,上記(イ)Aについても,甲第123号証の想定問答に基づき国会答弁がされた事実は認められず,この想定問答の存在が国会審議に影響したとは到底いえない(なお,事案6(2)ケのとおり,甲第124号証のドイツ連邦憲法裁判所の判決は,医師に対するワクチンの配送の禁止がドイツの基本法に反するという趣旨のもので,甲第125号証のEU裁判所の2003年(平成15年)12月11日判決は,他国からの輸入となる医薬品の通信販売を国内法で禁止することがEU法に反するという趣旨のものであり,これらをもって,ドイツ又はEU加盟国において一般用医薬品の国内での通信販売の禁止が当該国の憲法に反するとの解釈が直ちに導かれるかどうかは定かでない。)から,いずれにしても,原告らの指摘する外国の立法・判例に係る情報いかんによって,新施行規則中の本件各規定と新薬事法の委任の範囲との関係に関する前示の判断が左右されるものではない。

オ.さらに,原告らは,改正法による医薬品の販売に関する規制において,第二類医薬品の販売については,情報提供が単なる努力義務とされており(同条第2項),法的な拘束力のない努力義務を根拠として,適切な情報提供の可能な郵便等販売を禁止するのは不均衡であるとして,このことをもって,本件各規定によるインターネット販売の禁止は法律の委任の範囲を超える旨主張する(原告ら主張ア(イ)c)。しかしながら,第二類医薬品に係る情報提供について法律の規制が努力義務とされていることを踏まえても,第一類・第二類医薬品について法律が本来予定する有資格者の購入者に対する十分な情報提供を確保するために有資格者の対面による販売を義務付けて郵便等販売を販売方法から除外することは当該法律の委任の範囲内に属すると解されるから,原告らの上記主張も理由がない。
 なお,原告らのその余の主張も,新施行規則中の本件各規定と新薬事法の委任の範囲との関係に関する前示の判断を左右するに足りるものとは認められない。

(5) したがって,改正省令中の本件改正規定により設けられた新施行規則中の本件各規定は,法律(改正法により設けられた新薬事法の授権規定)の委任に基づくものであり,かつ,その法律の委任の範囲内で定められたものであるといえるので,これらを法律の委任を欠き又はその委任の範囲を超えるものとして無効であるということはできない。

(次回へ続く)

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2012年01月16日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【事案】

(前回からの続き)

(7) 第二次検討会における議論等及び再改正省令の制定に至る経過等

ア.平成21年2月13日,改正法に基づく新薬事法の全面施行を同年6月1日に控え,新制度の下,国民が医薬品を適切に選択し,かつ,適正に使用することができる環境作りのために国民的議論を行うことを目的として,厚生労働大臣の指示の下に検討会を開催するとして,第二次検討会の開催が決定された。第二次検討会の主な検討事項は,@薬局・店舗等では医薬品の購入が困難な場合の対応方策,Aインターネット等を通じた医薬品販売の在り方等であり,その構成員は,医薬品販売に関する有識者,都道府県の関係者,インターネット等通信販売事業者及び一般用医薬品にかかわる団体の代表で構成するものとされた。

イ.平成21年2月24日,第二次検討会第1回会議が開催された。第二次検討会の座長にもP10座長が選出された(以下,第二次検討会との関係でも「P10座長」という。)。第二次検討会第1回会議では,P13大学総合政策学部教授のP59委員,原告P1代表者,P5株式会社(以下「P5」という。)代表取締役会長兼社長のP60委員,P12委員,P58協議会のP61委員,P16委員,P50委員から,それぞれ提出資料についての説明があり,その後,質疑が行われた。
 P59委員からは,移動困難等の理由により,インターネット販売を必要としている顧客が多いこと,医薬品の安全確保のための方策として対面販売は本質ではなく,インターネットは真の安全を確保する上で有効な道具であること,規制をすることによって健全な業者の営業が制限されれば,違法な業者の活動が活発になり,より危険が増すおそれがあること,世界的なインターネット利用の進展の流れに逆行し,日本の医薬品業界や流通業界の国際競争力を失わせる危険があることといった内容の説明がされ,原告P1代表者からは,インターネット販売の継続を希望している多数の消費者の意見を聞くべきであること,インターネット販売に対する不安を払拭するための安全性確保の方策が国民から求められていることに関しては,インターネットの無限の可能性を活用して,副作用のリスクを極力抑制するための安全性確保の方策を策定したこと等の説明がされ,P60委員からは,近隣に薬局がないなどの理由からインターネット販売を含む通信販売に頼らなければならない消費者は相当多数いるのであって,現に相当多数の消費者からこれを規制する改正省令案に対して反対意見が寄せられていること,法律ではなく省令による権利の規制であるという点でも問題があること,パブリックコメントの内容が十分に開示・反映されていないこと,P4とも協力して業界をしっかりまとめて,安全なインターネット販売を実現していきたいと考えていること等の説明がされ,他方で,P12委員からは,薬の扱い方や副作用をよく知らない人が多く,そのことも考慮した制度設計が必要であり,それも考慮して改正省令の結論が採られていること,薬の入手に困難があるという人たちというのは,薬に対するリスクが高い群の人たちであると考えられ,そのような人たちが医薬品を購入する際にはなおさら医療や専門家と接点を持つべきであること,インターネットの危うさとして,サイトの中で間違った情報を次々と載せていくことによって,医薬品の適正な扱いが行われなくなり,それが助長されることにもなりかねない点がある上,最も危うい点として,インターネットにおいては,一部の悪質な業者がいた場合に,そのような業者を規制することが困難であり,一部の業者がいい加減なことをやると,そこで薬物被害が出てしまうという問題があること等の指摘がされた。
 原告P1代表者が第二次検討会第1回会議に提出した資料には,「一般用医薬品のインターネット販売における安全策について(業界ルール案)」と題する業界ルール案(P4のP5との提携による策定に係るもの)の説明資料が含まれており,その内容は,@違法販売サイト,個人輸入サイトとの区別や専門家が実在することにつき,薬局・店舗のサイト上で,都道府県等への届出済みであることを確認できるようにし,対応する専門家の情報も掲示し,公のサイト(厚生労働省の資格検索システムなど)でも届出済みである旨を掲示して実在することを確認できるようにすること,A薬局・店舗において掲示しなければならない事項(薬局・店舗の管理及び運営に関する事項,一般用医薬品の販売制度に関する事項)は,サイトにも分かりやすく掲示すること,B各医薬品の注意事項等の説明につき,各医薬品の外包又は添付文書に基づき,名称,成分及び分量,用法及び用量,効能又は効果,使用上の注意等を明示し,掲載内容については各店舗の専門家が確認し,必要に応じて諸注意を追記し,その他医薬品全般に関する汎用的な注意事項を掲示するなど啓蒙に努めること,C使用者の情報や状態の把握について,使用者の状態を適切に把握し,問診の前に購入者が使用者であるかどうか確認し,購入者と使用者が違う場合には,使用者の立場に立って答えるよう明示的に促し,使用者の年齢・性別の申告を義務付け,使用者の状態について,禁忌事項に該当するか否かチェックボックス等で項目別に申告を義務付け,禁忌事項への該当があれば,医薬品の注文自体を受け付けず,使用上の注意を明示し,読んで理解した旨の申告を義務付け,その他気掛かりな点を気軽に相談できるよう様々な申告手段を設け,使用者の状況に即して,適切な情報を提供するための資料とすること,D購入者の質問等への対応につき,購入者の質問に対しては,専門家本人が回答し,電子メール,電話,ファクシミリ等状況に応じて適切な手段で双方向のやり取りを実現し,質問があった場合には販売前に回答し,市販薬を用いた処置が不適切と考えられる場合には受診勧奨を行い,回答に当たる専門家は氏名を明らかにし,実在することを確認できるようにすること,E注文に対する販売可否の判断につき,申込みに対しては,禁忌事項に該当する場合は注文を除外し,特に注意を要する注文は専門家が詳細に審査し,最終的には専門家が販売可否を判断し,同一顧客からの大量注文,同種の製品の複数注文等がないかを確認し,最終的に販売を可とした専門家は押印するなどして氏名を明示すること,F禁忌事項について,申告された購入者・使用者の適格性を判断し,当該製品の使用が不適切と判断される場合や申告内容に禁忌事項への該当がある場合には販売をせず,禁忌事項や注意書を理解しないままの申告を防ぐため,理解した旨の申告を義務付け,注文内容,申告情報,購入履歴等に気掛かりな点がないか,各注文の内容を個別に専門家が確認し,疑義があれば販売を保留し,専門家から購入者へ連絡し詳細を確認すること,G医薬品と他の商品の混同・誤用を防ぐため,サイト上では医薬品と一般の商品とは売場を別にし,各医薬品にはリスク区分を明示し,出荷の際,医薬品は内袋に入れるなどして他の商品と混同しないような措置を採り,販売可能と判断された注文伝票と出荷内容が一致しているかの確認を図り,医薬品の品質劣化,損傷を防ぐ梱包となっているかの確認を図り,気掛かりな点があれば使用を控え専門家に相談する旨の文書を同梱すること,H相談窓口の連絡先と対応時間を明記した紙を同梱すること,I不適切販売を行う店への対策として,各店舗の業務手順の明確化により販売状況の透明化を図り,各事業者等に通報窓口を設置し,業界全体で通報内容を共有し,保健所による監視,業界による自主調査,第三者機関による調査といった複数機関による監視・調査活動を行い,業界団体が自主的に調査を行い,不適切な店舗については当局に通報することなどといったものである。(以下,上記内容の業界ルール案を「P4業界ルール案」という。)
 第1回会議の議論においては,P59委員の説明資料にいうインターネットの方がより確実に情報提供ができる場合とはどのようなものかという趣旨のP36委員の質問に対し,P59委員から,画面を超えるような説明書がある場合に,全部スクロールして最後まで到達しないと読んだというボタンが押せず,かつ,それを押さなければ発注画面に移れないという方式や,文字だけでは説得力が足りないという場合に,音声や動画を入れることを想定しており,そのほか,購入者が過去に買った医薬品との飲み合わせを確認することや購入者の条件を確認することによって説明を変更することも可能であること,本当に危険なものについては,ビデオ会議で薬剤師を呼び出すことも技術的には可能である旨の発言があり,それに続いて,原告P1代表者からは,インターネット販売は,薬剤師が購入者と対面しているのと比べて,購入者と薬剤師の間にインターネットを介しているかどうかの違いしかなく,上記業界ルール案に沿っていけば副作用のリスクを最大限に減らしていくことができると確信している旨の発言があった。

ウ.平成21年3月12日,第二次検討会第2回会議が開催された。第二次検討会第2回会議では,P60委員及び原告P1代表者を含む委員から提出された資料の説明及び質疑等が行われた。原告P1代表者は,P62神戸大学名誉教授(本件原告ら訴訟代理人)の意見書を提出した。

エ.平成21年3月31日,第二次検討会第3回会議が開催された。第二次検討会第3回会議では,事務局の作成した検討項目の説明並びにP60委員及び原告P1代表者を含む委員から提出された資料の説明があり,その後に議論が行われた。同会議の議論において,P60委員からは,P5やP4等が中心となって行っている医薬品の通信販売の継続を求める署名が約107万件に達している旨の説明があり,また,消費者のニーズにこたえていく体制を採るべきであるという趣旨の発言があったが,他方,P63会事務局長のP64委員からは,P60委員の上記発言につき,消費者が安全であることを最優先に考えるべきである旨の発言があった。

オ.平成21年4月16日,第二次検討会第4回会議が開催された。第二次検討会第4回会議では,一般消費者からのヒアリング,事務局の作成した検討項目に記載された論点に関する議論が行われた。なお,P60委員が新検討会第4回会議に提出した資料中には,「通信販売安全確保に向けた6月に向けた取組」として,@使用上の注意の確認等を注意喚起する画面の導入,A年齢認証機能の導入(18歳未満は医薬品の販売を禁止する予定),B各店舗が問診票の記載を行うという記述がある。また,同資料中には,「インターネット等を通じた医薬品販売の在り方」と題する部分があるが,具体的なインターネット販売のルールに関する内容は,P4業界ルール案及び上記@ないしBと基本的に同様である。

カ.平成21年4月28日,第二次検討会第5回会議が開催された。第二次検討会第5回会議では,事務局の作成した検討項目に記載された論点につき議論が行われた。その議論において,P36委員からは,チェックボックスによる申告では,本人がそれに該当するかどうか分からない事項については正しい情報を得ることができず,対面で専門家が本人と話をしてきちんとコミュニケーションを取りながら情報を引き出すことによって正しい情報を得る必要があること,そのような問題点があるため,改正法においては一般用医薬品をリスクの程度に応じて分類し,通信販売のできるものとできないものを区別したものである旨の発言がされた。P10座長からの禁忌事項等についてチェックボックスで尋ねて確認してから情報提供を行うということは現在行われているのか今後行おうとしているのかとの質問に対し,原告P1代表者からは,やっているところもあるし,まだできていないところもある旨の回答がされ,また,同原告代表者からは,インターネット販売等の通信販売について,安全性確保の方策を法令によって義務付けた上で認めることを含めて今後検討していくことを要望するとともに,そうした法令の整備がされるまで,当分の間,現状のとおり医薬品の通信販売ができるような措置を検討してほしい旨の提案がされた。その後,事務局から,特定の漢方薬等を継続して服用している者や離島居住者などの利便性に配慮した経過措置を設けるとすると改正省令の一部を再改正する必要があり,同年6月1日に迫った施行日に間に合わせるためにはパブリックコメント等の手続を行わなければならず,再改正の内容について第二次検討会の了承を得る前に先行してパブリックコメントの手続を行いたい旨の提案がされたが,そのような改正省令の再改正案(再改正省令案)があるのであれば,骨子だけでも第二次検討会に提示して議論すべきであるなどの意見が出され,次回の第二次検討会の会議において再改正省令案について議論することとなった。

キ.平成21年5月11日,第二次検討会第6回会議が開催された。第二次検討会第6回会議では,事務局から再改正省令案の内容が示され,議論が行われた。議論の結果,第二次検討会として再改正省令案を承認することはせず,厚生労働省の責任でパブリックコメントの手続を行うこととなった。

ク.厚生労働省は,平成21年5月12日,同月18日を締切日として,再改正省令案の内容を示し,意見公募手続を行った。意見公募に当たっては,期間短縮の理由として,郵便等販売に関する経過措置を設けるため,改正省令の一部を改正して平成21年6月1日までに公布・施行する必要がある旨が示されている。

ケ.平成21年5月22日,第二次検討会第7回会議が開催された。第二次検討会第7回会議では,事務局から,再改正省令案(同第6回会議で提示されたものと同様のもの)及び上記クの意見公募手続の結果が説明され,議論が行われた。意見公募手続の結果は,経過措置に賛成とするもの42件,経過措置に反対とするもの1146件(うち,経過措置は不要とするもの692件,経過措置の内容に反対するもの454件),郵便等販売の規制をすべきでないとするもの8333件等であった。同会議の議論では,改正省令の再改正の在り方について,経過措置による規制の緩和に反対する趣旨で,P64委員,P53委員,P12委員及びP36委員から,更なる規制の緩和を内容とする経過措置の創設を求める趣旨で,P60委員101及び原告P1代表者から,それぞれ反対の意見が出され,委員全体の6割を超える他の委員らからは賛成の意見が出されたものの,最終的に共通の意見の取りまとめにまでは至らなかったため,P10座長の整理に従い,厚生労働省の責任において再改正省令を同案の内容で公布・施行することとして,第二次検討会を終えることとされた。

コ.平成21年5月29日,再改正省令(改正省令の一部を改正する省令)が平成21年厚生労働省令第114号として公布され,改正法及び改正省令の施行に先立ち同日から施行され,これにより,改正省令附則に前記2(2)イ(ア)ないし(カ)の郵便等販売に関する経過措置の規定等が加えられた。

(8) 改正法及び改正省令の施行後の状況等

ア.改正法及び改正省令(ただし,再改正省令による改正後のもの)は,平成21年6月1日から施行された。

イ.改正法及び改正省令の施行直後,本件規制を批判する立場でインターネットサイトに記事を公表した者が自ら薬局又は店舗で医薬品を購入して調査を行った結果をその記事に掲載した内容によれば,ある薬局では,第一類医薬品の購入時に情報提供がされず,ドラッグストアチェーン店の店舗2店では,第二類医薬品の購入時に情報提供がされないことがあったと記載されている。

ウ.改正法及び改正省令の施行直後の原告P1の調査結果によれば,平成21年7月ころ,漢方薬を取り扱う薬局において,@購入者が家族のためのものであることを明らかにして薬剤師と対面して購入した第二類医薬品につき,その後に当該購入者が再度電話で注文したところ,当該医薬品が郵送で販売された事例,A注文者が自己の症状を電話及びファクシミリで伝え,友人が代理人であることを明らかにして薬剤師と対面して購入した第二類医薬品につき,その後に注文者が再度電話で注文したところ,当該医薬品が郵送で販売された事例があった。

エ.熊本県における医薬品の特例販売業(旧薬事法35条)の取扱いについて定めた特例販売業取扱要領には,特例販売業は,薬局及び医薬品販売業の普及が十分でない場合,その他適正な医薬品の供給を図るため知事が特に必要と認める場合に限り,許可するものとし,適正な医薬品の供給を図るため知事が特に必要と認める場合とは,@駅の構内等の特殊な施設であって,容易に薬局等を利用し難い場合,A医療用酸素等通常薬局等において購入し難いガス性医薬品及び揮発性医薬品等を取り扱う場合であるとされている。熊本県内で一般販売業の許可を受けて漢方薬等の医薬品の通信販売を行っていた株式会社P65(以下「P65」という。)が,改正法の施行直前である平成21年5月22日付けで,上記「適正な医薬品の供給を図るため知事が特に必要と認める場合」に該当するものとして,特例販売業の許可(旧薬事法35条)を受けており,そのほか,10業者が,改正法の施行直前に特例販売業の許可を得ている。

オ.原告P1の医薬品の1か月当たりの売上げは,平成20年4月から平成21年4月にかけて,約4500万円から約7000万円の間でおおむね緩やかに上昇してきたが,同年5月に1億円を超える売上げを記録した後,同年6月から11月までおおむね3000万円から4000万円の間で推移している。原告P1は,平成21年6月2日,本件規制の影響により医薬品の売上げの減少が予想されることから,平成22年3月期の業績予想につき,同期の売上高を120億円,当期純利益を2500万円と下方修正した。これは,第二類医薬品のインターネット販売が認められることを前提とした業績予想よりも売上高で5億円低く,当期純利益で9500万円低い。なお,原告P1の売上高に占める医薬品の割合はその前期において約7%であった。
 また,原告P2の医薬品の1か月当たりの売上げは,平成20年12月から平成21年3月まで104万円から129万円の間で推移し,同年4月には176万円,同年5月には303万円を記録したものの,同年6月から11月まで58万円から90万円の間で推移し減少傾向にある。もっとも,原告P2の1か月当たりの総売上げは,平成20年12月から平成21年3月まで495万円から564万円の間で推移し,同年4月に614万円,同年5月に866万円を記録した後,同年6月から11月までは430万円から501万円の間で推移しており,同年6月から10月までは,前年同月の総売上げをいずれも上回っている。

【判旨】

1.争点(1)(本件無効確認の訴え及び本件取消しの訴えの適法性)について

(1) 行政事件訴訟法3条4項の処分の無効確認の訴え及び同条2項の処分の取消しの訴えの対象は,いずれも,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下「行政処分」という。)でなければならず,行政処分とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体(法令に基づきその権限の委託を受けた機関を含む。)が行う法令に基づく行為のうち,公権力の行使として行われる行為であって,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解される(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。

(2) 本件無効確認の訴え及び本件取消しの訴えの対象は,改正省令の一部としての本件改正規定であるところ,省令の制定は,法律の委任を受けた行政機関がその委任に基づいて行う立法作用に属するから,限られた特定の者に対してのみ適用される結果として行政庁の処分と実質的に同視し得るものといえる例外的な場合を除き,一般的には抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものではないと解するのが相当である(最高裁平成15年(行ツ)第35号,同年(行ヒ)第29号同18年7月14日第二小法廷判決・民集60巻6号2369頁最高裁平成21年(行ヒ)第75号同年11月26日第一小法廷判決・裁判所時報1496号7頁参照)。
 そこで,改正省令の一部である本件改正規定(改正省令のうち薬事法施行規則に本件各規定を加える改正規定)について,上記の例外的な場合に該当するか否かを検討するに,本件改正規定により加えられる本件各規定の主な内容は,薬局開設者又は店舗販売業者による一般用医薬品の販売又は授与(以下,単に「販売」という。)について,@新薬事法36条の6第1項ないし第3項の規定による情報提供は薬剤師又は登録販売者(第一類医薬品については薬剤師)が薬局又は店舗において対面で行うことを要すること(新施行規則159条の15第1項1号,159条の16第1号並びに159条の17第1号及び2号),A第三類医薬品の郵便等販売を行う場合を除き,薬剤師又は登録販売者(これらの管理・指導下の一般従事者を含み,第一類医薬品については薬剤師(その管理・指導下の登録販売者又は一般従事者を含む。)に限る。)が薬局等において対面で販売することを要すること(新施行規則159条の14),B郵便等販売を行う場合は第三類医薬品以外の一般用医薬品の販売は行わないこと(新施行規則15条の4第1項1号)であって,上記@及びAの規制が,一般用医薬品の販売を行う者全般に広く適用される規制であることに加え,上記Bの規制も,その規制の適用を受ける「郵便等販売」とは,薬局開設者又は店舗販売業者が当該薬局又は店舗以外の場所にいる者に対してする郵便その他の方法による医薬品の販売をいい(新施行規則1条2項7号参照),インターネット販売を行う業者のみならず,それ以外の郵便その他の方法による通信販売を行う業者全般が当該規制の対象となるのであって,特定の業者(特定の企業又は個人)のみを規制の対象とするものではないから,本件改正規定は,限られた特定の者に対してのみ適用される規定ではないというべきであり,当該省令の規定の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないので,改正省令中の本件改正規定の制定行為は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである。
 原告らは,改正省令中の本件改正規定は,実質的には第一類・第二類医薬品のインターネット販売を行っていた原告らを始めとする限られた者の権利を制限するものであるから,行政処分に当たる旨主張するが,上記@ないしBの本件改正規定の性質・内容に照らし,上記主張は採用することができない。
 なお,原告らは,対世効や仮の救済の手続において当事者訴訟では不十分な点があるから抗告訴訟が認められるべきである旨主張するが,まず,対世効については,仮に,当事者訴訟である本件地位確認の訴えに係る原告らの請求を認容する判決がされ,原告らと被告との間で原告らが本件各規定にかかわらず第一類・第二類医薬品の郵便等販売をすることができる地位を有することが確認されれば,原告らは,本件各規定による規制を受けずにこれらの郵便等販売をすることができ,その販売行為について被告の所轄行政庁から監督権限の行使等を受けることもなく,原告らの法的利益の保護として十分であるといえる上,原告ら以外の他の販売業者等にも対世効を及ぼして第一類・第二類医薬品の郵便等販売を認めなければ行政運営の対応に困難を来すといった事情は見当たらないことも併せ考えれば,対世効のある訴訟手続によるべき必要性は認め難い。また,仮の救済手続の点については,そもそも仮の救済手続の利用の可否やその容易性が行政処分性の有無の判断に影響を与えるとは解されないから,原告らの上記主張も,改正省令中の本件改正規定の行政処分性に関する前示の判断を左右するものとは認められない。

(3) したがって,本件無効確認の訴え及び本件取消しの訴えは,いずれも,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないものを対象として提起されたものといわざるを得ず,その余の点(行政事件訴訟法36条の要件該当性等)について判断するまでもなく,不適法であり,却下を免れない。

2.本件地位確認の訴えの適法性について

(1) 本件地位確認の訴えは,公法上の当事者訴訟のうちの公法上の法律関係に関する確認の訴えと解することができるところ,原告らは,改正省令の施行前は,一般販売業の許可を受けた者として,郵便等販売の方法の一態様としてのインターネット販売により一般用医薬品の販売を行うことができ,現にこれを行っていたが,改正省令の施行後は,本件各規定の適用を受ける結果として,第一類・第二類医薬品についてはこれを行うことができなくなったものであり,この規制は営業の自由に係る事業者の権利の制限であって,その権利の性質等にかんがみると,原告らが,本件各規定にかかわらず,第一類・第二類医薬品につき郵便等販売の方法による販売をすることができる地位の確認を求める訴えについては,前記2のとおり本件改正規定の行政処分性が認められない以上,本件規制をめぐる法的な紛争の解決のために有効かつ適切な手段として,確認の利益を肯定すべきであり,また,単に抽象的・一般的な省令の適法性・憲法適合性の確認を求めるのではなく,省令の個別的な適用対象とされる原告らの具体的な法的地位の確認を求めるものである以上,この訴えの法律上の争訟性についてもこれを肯定することができると解するのが相当である(なお,本件改正規定の適法性・憲法適合性を争うためには,本件各規定に違反する態様での事業活動を行い,業務停止処分や許可取消処分を受けた上で,それらの行政処分の抗告訴訟において上記適法性・憲法適合性を争点とすることによっても可能であるが,そのような方法は営業の自由に係る事業者の法的利益の救済手続の在り方として迂遠であるといわざるを得ず,本件改正規定の適法性・憲法適合性につき,上記のような行政処分を経なければ裁判上争うことができないとするのは相当ではないと解される。)。

(2) したがって,本件地位確認の訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,確認の利益が肯定され,法律上の争訟性も肯定されるというべきであり,本件地位確認の訴えは適法な訴えであるということができる。
 そこで,以下,本件地位確認の訴えの本案の争点として,争点(2)(本件改正規定の適法性・憲法適合性)について検討する。

(次回へ続く)

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2012年01月13日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【事案】

(前回からの続き)

(5) 改正法案の国会における審議の経過等

ア(ア) 前記(3)ノの報告(厚生科学審議会検討部会報告書)を受けて,厚生労働省において,厚生科学審議会の審議の結果としての検討部会報告書の内容を踏まえ,改正法案(薬事法の一部を改正する法律案)の立案作業が行われ,平成18年3月7日,閣議決定を経て第164回国会に改正法案が提出された。

(イ) なお,厚生労働省が平成18年3月に作成した「薬事法の一部を改正する法律案想定問答集」には,外国における一般用医薬品の販売制度に関する質問に対し,「基本的には欧米諸外国については,日本における一般用医薬品に当たるものは,アメリカを除き,概ね薬剤師等による対面販売が求められていると承知している」との答が記載されており,参考として,ドイツにおいては薬剤師又は薬局助手等による対面販売であるとする内容がある。

イ.改正法案は,第164回国会において審議され,平成18年4月10日の参議院本会議において,厚生労働大臣が,改正法案の趣旨説明を行った。趣旨説明においては,「国民の健康意識の高まりや医薬分業の進展等の医薬品を取り巻く環境の変化,店舗における薬剤師等の不在など制度と実態の乖離等を踏まえ,医薬品の販売制度を見直すこと」が求められているとした上で,「今回の改正では,医薬品の適切な選択及び適正な使用に資するよう,医薬品をリスクの程度に応じて区分し,その区分ごとに,専門家が関与した販売方法を定める等,医薬品の販売制度全般の見直しを行う」との内容がある。

ウ.平成18年4月11日の参議院厚生労働委員会において,改正薬事法案につき,上記イと同様の趣旨説明が行われた。

エ.平成18年4月13日の参議院厚生労働委員会において,改正法案の審議が行われた。

(ア) P39議員からは,今回の改正のポイントとして,国はめりはりと実効性の向上を考えているようであるが,自らの薬害被害の経験を踏まえ,購入者,患者への安全性を第一に考えてほしいという旨の質問があり,これに対し,厚生労働省の医薬食品局長(以下,単に「医薬食品局長」ともいう。)からは,改正により必要な情報提供が実効性をもって行われるようになると考えており,消費者の安全性がより確保される仕組みが構築されると考えている旨の答弁がされ,それに対し,P39議員から,二度と薬害被害を発生させないために安全性の強調を強く求めていきたいと思う旨の発言があった。また,P39議員からは,検討部会報告書でB分類の医薬品のうちアスタリスクが付せられたもの(新施行規則210条5号の指定第二類医薬品に相当するもの。以下「指定第二類医薬品」という。)について,オーバー・ザ・カウンターによる陳列・販売を義務付けるべきではないかという旨の質問があり,医薬食品局長からは,検討部会報告書においては,指定第二類医薬品については,オーバー・ザ・カウンターを義務付けるべきであるとはされておらず,オーバー・ザ・カウンターそのものではないとしても,それに準ずる方法も考えられ,積極的な情報提供を行う機会がより確保されることが最も重要であり,そのための手段としてどのような陳列・販売方法が適当か,法案成立後に検討をしていきたいと考えている旨の答弁がされた。P39議員からは,さらに,指定第二類医薬品については,オーバー・ザ・カウンターでないと売れないとか,薬剤師による面談をしながらやっていくというやり方の方がより安全性を担保できるのではないか,薬にはリスク・副作用があり,常習性もあるものがあることが認知されているのであるから,きっちりとした販売の形態を採らなければならないのではないかという質問がされ,それに対し,医薬食品局長からは,法案成立後にオープンな場で検討をしていきたい旨の答弁がされた。P39議員からは,再度検討してほしい,ただ売ればいい,売上げが上がればいいという発想ではなくて,薬には危険がつきものであることを国民に周知徹底するためにも,オーバー・ザ・カウンターといった販売形態を採ってほしいと提案しているのであり,積極的な答弁をしてほしい旨の質問がされ,医薬食品局長からは,よく検討する旨の答弁が,厚生労働大臣からは,法案成立後に関係者の意見を詰めていきたいとの答弁がされた。
 また,P39議員の既存配置販売業者に関する質問に答えて,厚生労働大臣からは,既存配置販売業者は,販売品目がこれまで限定的に認められているものであること,購入者や事業活動への無用の混乱を与えないようにすること等の観点から,経過措置を設けたものである旨の答弁がされた。

(イ) P40議員からは,医薬食品局長から,第二類医薬品及び第三類医薬品については,専門家である薬剤師や登録販売者が直接対応するだけでなく,専門家の管理下で非専門家である他の従業員が補助的に販売に従事することも可能とすることを考えている旨の説明がされたのを受けて,資格者の管理監督下の販売・授与ということになると,通信販売やインターネット販売に道を開くことにならないのかとの質問がされ,これに対し,医薬食品局長からは,検討部会報告書において,第三類医薬品については一定の要件の下で通信販売を認めざるを得ないとされていることを紹介し,医薬品の販売については,対面販売が重要であるということが基本であり,インターネット技術の進歩にはめざましいものがあるものの,現時点では検討部会報告書を踏まえて慎重な対応が必要であると認識している旨の答弁がされ,これに関連して,P40議員からも,対面販売は必要であると思う旨の発言がされた。

オ.平成18年4月14日の参議院厚生労働委員会において,参考人からの意見聴取と参考人に対する質疑が行われた。

(ア) 参考人であるP10部会長からは,検討部会の審議の経緯及び検討部会報告書の内容についての説明がされ,改正法案は,検討部会での審議結果及び検討部会報告書を十分に踏まえたものであり,医薬品はその本質として効能効果だけではなくて副作用などのリスクを併せ持つものであるから,適切な情報提供が伴ってこそ真にその医薬品は安全で有効なものとなる旨の陳述がされた。

(イ) P41協議会理事長・P42大学薬学部客員教授(一般用医薬品学)のP43参考人からは,一般人が信頼感をもって医薬品を購入できるための要件としては,専門家から個々の一般人の状況に応じた情報が示されること,その示された情報で当該一般人が納得できること等が挙げられ,特に,情報及び情報を提供する人がどのようなものであるかということが注目される旨,情報を提供する人には,情報を個々の一般人にふさわしいものにして提供していく技量,情報を提供する者が医薬品を買いに来た人の状況を判断できること,専門家が一般人にとって平滑かつ分かりやすい言葉で提供すること,目の前の買いに来た人の身体的・精神的な状況をある程度判断できることが必要であり,また,専門家と買いに来た人が互いにコミュニケーションをきちんと取れることが必要である旨の陳述がされた。

(ウ) P11協議会代表世話人のP44参考人からは,薬害被害者のみから構成されている自分たちの団体の願いは薬害の根絶ということ以外にはない旨,インターネット販売に関しては,陳列方法,相談応需及び情報提供に関する法案の規定を素直に読めば第三類医薬品以外のインターネット販売は不可能に読めるところ,第一類・第二類医薬品についても消費者のニーズを理由に売りたいという業者がいるが,第一類・第二類医薬品のインターネット販売を認めてしまうと,相談応需又は情報提供は全く実効性がなくなり,改正法は台なしになってしまうので,これをどのような形で改正法の政省令で定めるかということが行政の手腕に期待されるところであって,第一類・第二類医薬品のインターネット販売は断固としてできない体制を採ってほしい旨の陳述がされた。

(エ) 質疑においては,P40議員から,第三類医薬品について,通信販売を認めることと対面販売の原則の関係についてどう考えるかという質問がされ,これに対し,P10部会長からは,対面販売が医薬品の場合には望ましいということはそのとおりであるが,現在一定の時間帯には薬剤師の電話での相談応需による販売が認められていることに配慮をしたものと思われる旨の説明がされた。また,P45議員の質問に対し,P10部会長からは,情報提供の努力義務が課されているにもかかわらずドラッグストアなどでほとんどそれが行われていないという実態に対し,情報提供が対面販売という形で行われるようにしていこうというのが今回の議論の出発点である旨の説明がされた。また,P40議員の質問に対し,P11のP44参考人からは,第一類・第二類医薬品についてインターネット販売を禁止すべきであるという意見としたのは,一般の国民の利便性からすればインターネットを全部禁止するということは不便であるという意見になってしまい,その結果として事実上規制の実効性が全くなくなってしまうことを懸念したことから,第一類・第二類医薬品については絶対に禁止するというめりはりを付けるべきであると考えたものである旨,薬害被害者という立場からは,一般の方のアンケート結果は理解するが,医薬品の危険性は身にしみており,強く心配されるため,第一類・第二類医薬品についてはインターネット販売を断固禁止してほしい旨の陳述がされた。

カ.平成18年4月18日の参議院厚生労働委員会において,改正法案の審議が行われた。

(ア) 既存配置販売業者に関する経過措置により資格のない者が配置員として販売を続けることがダブルスタンダードになるのではないかというP46議員からの質問に対し,医薬食品局長からは,改正法に基づく登録販売者を置いて業務を行う配置販売業者は既存配置販売業者よりもかなり多くの品目を取り扱えるようになること,既存配置販売業者でも新制度に基づく情報提供義務を負うことなどからすれば,ダブルスタンダードには当たらない旨の答弁がされた。

(イ) P47議員からは,重篤な副作用,薬害被害がまた出るというようなことがあってはならないと思うとした上で,その点について,今後の厚生労働大臣の薬事行政の推進,特に医薬品の安全の問題についての考えを決意も含めて聞かせてほしいとの質問がされ,これに対し,厚生労働大臣からは,今回の薬事法の改正に当たっては,効能効果とリスクを併せ持つ医薬品の本質を踏まえることが最も重要である旨,今回の薬事法の改正は,購入者による医薬品の適切な選択,適切な使用に資するものであり,議員の懸念される副作用の大きな被害を二度と起こしてはならないというスタンスの中で努力をしていくとともに,今回の制度改正をその趣旨が生かされるよう実施し,医薬品全体の安全体制の充実強化に積極的に取り組んでいく旨の答弁がされた。それに続けてP47議員からは,規制改革という流れには一定の必要性を認める一方で,医薬品の安全性の問題については,悲惨な歴史があるとともに,今後も同じような事態が発生するのではないかという懸念が非常に強くある状況であるので,信頼,安全,安心をどのように作っていくかについては抜かりなく油断なく対応してほしい旨の発言がされた。

(ウ) P40議員からは,第一類医薬品についてもインターネット販売で売られているという実態について,何らかの対策を講ずべきではないかという質問がされ,これに対し,厚生労働大臣からは,法改正後については,改正後の薬事法において,第一類医薬品を販売する場合には,省令で定めるところにより,薬剤師が適正な使用のために必要な情報を提供しなければならないものとされていて,これに基づき対面販売により情報提供することを求めるという方向性になっており,その定めの違反は行政処分による強制力のある取締りの対象となり,従来は通知に基づく行政指導がされてきたインターネット販売はその取締りの対象となる旨の答弁がされた。

(エ) P45議員の配置販売業者に関する質問に対し,厚生労働大臣からは,配置販売は,三百余年もの長い伝統の中で培われてきた利便性の高い我が国固有の販売形態であり,購入者の家庭において対面による適切な情報提供や相談対応を行い,医薬品を購入するため外出することが困難な家庭に対する一般用医薬品の供給等という社会的役割も担っていると認識している旨の答弁がされた。

(オ) これらの審議の後,同日の参議院厚生労働委員会において,改正法案は採決され,賛成多数で可決された。

キ.平成18年4月19日,参議院本会議で改正薬事法案が議題とされ,採決が行われ,賛成多数で可決された。参議院厚生労働委員会の本会議への報告では,改正法案は,「医薬品の適切な選択及び適正な使用に資するよう,一般用医薬品をその副作用等により健康被害が生ずるおそれの程度に応じて区分し,その区分ごとに,専門家が関与した販売方法を定める等,医薬品の販売制度全般の見直しを行う(中略)こと等により,保健衛生上の危害の発生の防止を図」ることを改正の趣旨・目的とするものと報告された。また,参議院の附帯決議として,政府に対し,「医薬品の適切な選択及び適正な使用の確保のため,新たな一般用医薬品の販売制度が実効あるものとなるよう十分留意すること」,「新たな一般用医薬品の販売制度について,国民が,医薬品のリスク分類によって,販売者,販売の在り方等が異なることを理解し,適正に販売がなされていることを容易に確認できるよう必要な対策を講ずること。また,制度の実効性を確保するよう薬事監視の徹底を図ること」及び「一般用医薬品のリスク分類については,安全性に関する新たな知見や副作用の発生状況等を踏まえ,不断の見直しを図ること」を求める旨の決議がされている。

ク.平成18年6月2日,衆議院厚生労働委員会において,改正法案の趣旨説明が行われた。その内容は,参議院におけるものと同様であった。

ケ.平成18年6月7日,衆議院厚生労働委員会において,改正法案の審議が行われた。P48議員から,対面販売とはいえない医薬品のインターネット販売については大変危険であると思っており,薬害被害の実態を考えれば,少なくとも特にリスクの高い第一類医薬品はインターネット販売や通信販売を禁止すべきであるがどう考えるかという質問がされたのに対し,医薬食品局長からは,医薬品のインターネット販売についての検討部会報告書の考え方として,対面販売が原則であることから情報通信技術を活用することについては慎重に検討すべきであるとされ,第三類医薬品については一定の要件の下で通信販売を認めざるを得ないとされていることを紹介した上,厚生労働省としては,医薬品の販売は対面販売が重要であり,インターネット技術の進歩にめざましいものがあるとはいえ,現時点においては,検討部会報告書を踏まえた慎重な対応が必要であると考えている旨の答弁がされた。また,P49議員からも,医薬品のインターネット販売に関する質問があったのに対し,医薬食品局長からは,検討部会報告書の内容を紹介し,対面販売の原則ということから厳しく制限をすべきであるという意見がある一方で,利便性あるいはIT技術の活用により対面販売に準じた対応も可能として規制を緩和すべきであるという意見もあるが,厚生労働省としては,医薬品の販売は対面販売が重要であるという基本的な考え方に立って,インターネット技術の進歩にはめざましいものがあるとはいえ,現時点では,検討部会報告書を踏まえて慎重な対応が必要であると考えている旨の答弁がされた。
 これらの審議の後,同日の衆議院厚生労働委員会において,改正法案の採決が行われ,賛成多数で可決された。

コ.平成18年6月8日の衆議院本会議において,改正法案の採決が行われ,賛成多数で可決され,改正法案が成立した。衆議院厚生労働委員会の本会議への報告でも,改正法案の趣旨・目的について,上記キと同旨の報告がされた。

サ.平成18年6月14日,改正法が平成18年法律第69号として公布され,その後の政令による施行期日の定めにより平成21年6月1日から改正法が施行され,これにより,薬事法に36条の3,36条の5,36条の6等の規定が新設された。

(6) 第一次検討会における議論及び改正省令の制定に至る経過等

ア.P4(※原告P1の代表者が理事長を務めるNPO法人)は,平成20年1月,第一次検討会への参加を求める要望書を厚生労働大臣あてに提出したが,同年2月,厚生労働省から,検討会委員に選出されなかった旨の連絡を受けた。

イ.平成20年2月8日,第一次検討会第1回会議が開催された。第一次検討会の座長にはP10部会長が選出された(以下,第一次検討会との関係では「P10座長」という。)。第一次検討会第1回会議の議論においては,P16委員から,第一類医薬品は直接的に対面販売等が基本であり,これは検討部会でも委員全体の総意だったと思う旨,第二類医薬品及び第三類医薬品もそうだと思うが,情報提供という概念を維持するためにはインターネット販売との絡みできちんと整理しておく必要がある旨の発言があった。

ウ.平成20年2月22日,第一次検討会第2回会議が開催された。第一次検討会第2回会議では,リスク区分に関する表示の取扱いや情報提供等の内容・方法等について議論が行われた。

エ.平成20年3月13日,第一次検討会第3回会議が開催された。第一次検討会第3回会議では,医薬品の販売の実情に関して,P6協会副会長のP50委員から,大規模店舗の状況について,P16委員から,薬局の状況について,社団法人P22副会長のP51委員から,薬種商販売業の状況について,P52協会常任理事長のP53委員及びP54協会副会長のP55委員から,配置販売業の状況について,それぞれ説明があり,その後,情報提供等を適正に行うための販売体制について議論が行われた。その議論においては,情報通信技術を活用した販売について,検討部会報告書のとおり,第三類医薬品の販売のみ認めるべきである趣旨の意見と,第三類医薬品の販売も認めるべきではないとの意見が出され,一致をみなかった。また,P16委員からは,インターネット販売は国内より国外のものの方が多い現状やインターネットを通じた偽薬の販売の問題が発生したことからも分かるように,インターネット販売に対する実効的な規制は難しく,第三類であっても医薬品にはリスクがあるので,現状を考えれば,医薬品については情報通信技術を通じた販売は認めるべきではないというのが原則論である旨の意見が述べられた。

オ.平成20年3月25日,第一次検討会第4回会議が開催された。第一次検討会第4回会議における情報通信技術を活用した販売に関する議論においては,インターネットを使用した一般用医薬品以外の薬の販売に対する規制の実効性の問題が指摘されたり,第三類医薬品について規制なく販売することは相当ではないという趣旨の意見が出されたりしたほか,P12委員から,上記(1)イの通知(※カタログ販売の取扱医薬品の範囲に係るもの)において販売が認められた医薬品を,第三類医薬品のみインターネット販売を認めることが望ましいという検討部会報告書の趣旨に沿って再度分類し,第三類医薬品に該当するもののみインターネット販売を認めるという形を取るべきではないかという旨の意見が述べられ,P56会のP57委員からも,第一類及び第二類医薬品については,対面販売をすることが原則であり,売り手と買い手の対話が成立しないインターネット販売には反対である旨の意見が述べられ,これらの意見を踏まえ,P10座長からは,ほとんどの委員はP57委員の上記意見と同様の意見ではないかという旨の発言がされ,これについて特に異議が述べられることはなかった。また,議論において,事務局から,対面の原則に関し,検討部会報告書に,「購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができる」販売方法である対面販売を医薬品販売の原則とすべきである旨の記述があるとの紹介がされた。

カ.平成20年4月4日,第一次検討会第5回会議が開催された。第一次検討会第5回会議では,原告P1代表者(P4理事長)からのインターネット販売の実情についてのヒアリングが行われた。原告P1代表者は,インターネット販売における顧客とのやりとりの概要についての説明を行い,インターネット販売の安全・安心及び利便性について,@正規の薬局・薬店による運営がされていること,A添付文書及び内容物の画像・禁忌情報の提示等による十分な情報提供を行っていること,Bアンケート形式で個別に購入申込受付前の確認ができること及び電子メールや電話による個別の相談に応じられること,C薬局・薬店に出向くことが地理的・時間的に困難な顧客の要望に応えられること,D販売した医薬品の追跡が可能であることを挙げ,店舗販売を行っている薬局・薬店が対面販売による安全・安心な店舗販売を心がける一方,生活弱者からの強いニーズがあって,そのニーズにこたえるべくインターネット販売を行っており,対面販売の趣旨にのっとった安全・安心を確保すべく,発展著しい情報通信技術を活用している旨の説明をした。その後の質疑応答については,以下のようなやり取りがあった(以下の回答は,いずれも原告P1代表者(P4理事長)の回答である。)。P12委員から,(a)ホームページ上で正規の薬局・薬店であるかどうかを表記するルールがあるかどうか,(b)購入する際に医薬品と医薬品に類似しているが医薬品ではないサプリメント等の区別を確認できる形になっているかという質問があり,これに対し,上記(a)について,P4で策定している自主規制案の中でそのような枠組みを強く求め,P4の会員にはそのような表記を強く求めている旨,上記(b)についても,インターネット上で陳列の表示をする際に,医薬品であるかどうかを確認できるように自主規制案で定めている旨の回答がされ,同じくP12委員からの質問に対し,日本で普通に薬局・薬店を営んでいる者がきちんとインターネットで安全・安心を追求しながら販売することと,未承認薬といった正規のルートでないところで医薬品が流通することをはっきりと分けて考え,未承認薬や海外からのさまざまな安全でない入り方については徹底的に遮断していくといった施策が必要と考える旨の回答がされた。また,P50委員から,顧客側から見て相対している者が薬剤師かどうかという判断や店舗できちんと取り扱われているかの判断を可能とする方法があるかという質問があり,これに対し,誰が薬剤師であるか,どういう薬局・薬店であるかをインターネット上に掲示している旨の回答がされたが,さらにP50委員からは,それでは顧客側からは事実の確認はできないとの指摘がされた。また,P55委員から,スイッチOTCを含め薬局に置かれている医薬品全部がインターネット販売の対象となっているのかという質問があり,これに対し,薬剤師が適否を判断した上でスイッチOTCを販売することもあり得る旨の回答がされ,同じくP55委員からの初回購入者の適格性についてどのような判断をしているのかという趣旨の質問に対し,基本的には顧客の申告をよほどの事がない限りは信頼して販売する旨の回答がされた。P36委員から,急性期の患者に対しニーズにあった時間内に薬を届けることができるかという趣旨の質問及び顧客の地域的な広がりの質問がされ,これに対し,急性期の症状が出かかっているような顧客は店頭に行くことになり,余りインターネット販売は利用せず,インターネット販売は常備薬としてあらかじめ買われる場合などに利用され,状況に応じて顧客が使い分けているのではないかという趣旨の回答,また,地域的には必ずしも近隣ではなく,漢方薬の場合などのように,距離に関してはもう少し広がりがあるであろうという趣旨の回答がされ,それを受けて,P36委員から,常備薬であれば,店頭や配置薬で対応できるので,利便性が最も問題となる緊急時の対応についてはインターネット販売の利便性はあまりないと思う旨の指摘がされたのに対し,歩くのが不自由な方など情報通信技術の活用を求めている顧客は少なからずいる旨の回答がされたが,P36委員からは,今の話では,ある程度限定された集団になるという印象をもった旨の発言がされた。また,P10座長からの質問に対し,P4の自主規制案は策定中のものである旨の回答がされ,自主規制案自体は第一次検討会第5回会議には示されなかった。ヒアリング後の議論において,P50委員からは,安全と安心のための対面の原則が根底にあって,そのために専門家が常駐していることが必要であるとする改正法の趣旨からすると,対面販売の点は譲れない旨の発言があり,P16委員からは,きちんとしている業者でも難しい問題はあり,医薬品の販売において情報通信技術は限定された範囲で使うべきものであると再認識したところであり,これを使うのは第三類医薬品と上記(1)イの通知で認められた範囲を超えるべきではない旨の発言があり,P12委員からは,インターネットのホームページでは販売許可を受けているかどうか判然としないものもあり,ホームページを見る限りでは,当該業者について店舗の有無や本当に専門家が対応しているかどうかを見分けることができない旨の発言があった。

キ.平成20年4月24日,第一次検討会第6回会議が開催された。第一次検討会第6回会議では,事務局が作成した論点整理案が示され,これを基に議論が行われた。同会議の議論においては,医療用医薬品がインターネットを通じて販売されていることに対する規制の実効性に関する意見も出されたが,P21委員からは,インターネットで違法な販売方法が行われているものは医薬品以外にも多数あり,インターネットでの違法な取引をどのように摘発して止めさせるかは大きな問題としてあるが,例えば外国から発信されている情報には日本政府は直接規制をかけられないということもあり,そういった問題がある中で,インターネットの世界は闇であるからインターネットを利用した医薬品に関係する取引はすべて規制するということではなく,薬局・薬店等の店舗が一定の通信技術を用いてきちんと行うものはルールを定めて許容するという形で考えていくべきではないかという趣旨の意見が出され,これに対して特に異論は出なかった。

ク.平成20年5月16日,第一次検討会第7回会議が開催された。第一次検討会第7回会議では,事務局が作成した報告書案を基に議論が行われた。この報告書案中の通信販売に関する「販売時の情報提供を行うことが努力義務となっている第二類医薬品については,販売時の情報提供の方法について対面の原則が担保できない限り,販売することを認めることは適当ではない。」という記載の意味について,委員の質問に答えて,事務局からは,例えば,東京に店舗を有する業者が他の地域の顧客に通信販売をする場合に,東京の店舗で対面販売をすることができるからといって対面の原則が担保できる場合に当たるとはいえず,具体的に認められると考えられる方法は現在のところ出てきていないが,実際にそのようなことをしようとする業者から何かアイディアが示された場合には,対面の原則が担保されているかどうかを個別に判断していくという趣旨のものである旨の説明がされた。

ケ.平成20年7月4日,第一次検討会第8回会議が開催された。第一次検討会第8回会議では,修正された報告書案を基に議論が行われ,報告書案は了承された。第一次検討会報告書には,「情報通信技術を活用する場合の考え方」として,@医薬品の販売に当たって専門家が対面によって情報提供することが原則であることから,販売時の情報提供に情報通信技術を活用することについては慎重に検討すべきであり,第一類医薬品については,書面を用いた販売時の情報提供が求められていることなどから,情報通信技術を活用した情報提供による販売は適当ではない,Aテレビ電話を活用して販売することについては,深夜早朝における薬剤師の確保が困難であることを発端として制度が設けられたものであり,登録販売者制度の導入により,深夜早朝における専門家が十分に確保されるのであれば,時間帯にかかわらず専門家が対面により確実に情報提供が行われる体制を求めるべきであって,今後,深夜早朝においても専門家が十分に確保されるよう努めることにより,テレビ電話を活用した販売については廃止することとし,新制度施行後,経過措置期間として専門家が十分に確保された体制で医薬品販売を行うことについての猶予が認められているまでの間,現行認められている条件の下で,テレビ電話を活用して第二類及び第三類医薬品を販売することを引き続き認める,B(T)薬局又は店舗販売業の許可を受けている者が,当該薬局又は店舗に来訪していない購入者から医薬品の購入の申込みを受け,当該薬局又は店舗から,購入された品目を配送する方法による販売(通信販売)を行うことについては,購入者の利便性,現状ある程度認めてきた経緯にかんがみると,その薬局又は店舗での販売の延長で販売時及び相談時の情報提供が行われるものであれば,一定の範囲の下で認めざるを得ず,この場合,販売時や販売後の相談においても,相談があった場合の情報提供が専門家によって行われていることが購入者から確認できるような仕組みを設けるとともに,相談の内容によって,薬局又は店舗で対面により相談に応ずることが可能な体制を確保する必要があり,また,購入者に薬局又は店舗において掲示しなければならない情報の伝達を図るべきであり,これらの点を確認するため,通信販売を行う場合,薬局又は店舗販売業の許可を受けている者はあらかじめ通信販売を行うことを届け出ることが適当である,(U)また,取り扱う品目については,情報通信技術を活用する場合は,販売時に情報提供を対面で行うことが困難であることから,販売時の情報提供に関する規定がない第三類医薬品を販売することを認めることが適当であり,販売時の情報提供を行うことが努力義務となっている第二類医薬品については,販売時の情報提供の方法について対面の原則が担保できない限り,販売することを認めることは適当ではない,(V)なお,本項目の検討に当たって,薬局又は販売業の許可を受けて通信販売を行う事業者の団体から,現状の通信販売の実態,自主的な取組等について意見聴取を行ったことを申し添えるという内容の記述がある。

コ.P4は,平成20年7月,第一次検討会報告書に対する意見書を厚生労働省に提出し,同年8月,「対面の原則を担保し,安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン」を発表した。

サ.厚生労働省は,平成20年9月17日から同年10月16日まで,改正省令案の概要を示し,これに対する意見公募手続を行った。

シ.政府の規制改革会議は,平成20年11月11日,上記サの改正省令案に関する見解を示した。その内容は,@薬事法上インターネット販売を含む通信販売を禁止する明示的な規定がなく,省令で当該規制を行うことは法の授権範囲を超えていること,A消費者の利便性を阻害すること,B地方の中小薬局のビジネスチャンスを制限すること,Cインターネット販売を含む通信販売が店頭での販売に比して安全性に劣ることが実証されていないことを挙げ,改正省令案のうち,インターネット販売を含む通信販売に係る規制に該当する部分をすべて撤回し,IT時代にふさわしい新たなルール整備を早期に行うべきであるというものであった。

ス.改正省令案によるインターネット販売の規制に関し,平成20年11月から12月にかけて,厚生労働大臣に対し,規制に賛成し規制を強化すべきであるとするP11等からの要望書及びP15等の薬業に関係する団体からの声明書,規制に反対するP4からの意見書及びP4を含む販売事業者等からの要望書並びにP58協議会からの伝統薬存続に関する要望書が提出された。

セ.厚生労働省は,平成20年12月19日,同月16日付けの規制改革会議からの質問事項について,上記シの見解に対する回答を含め,回答した。

ソ.P4は,平成20年11月20日,インターネット販売を行う事業者による自主規制案として,「安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン」を発表し,同年12月11日,同ガイドラインを改訂した。改訂後の同ガイドライン(以下「P4ガイドライン」という。)の主な内容は,別紙「P4ガイドラインの主な内容」のとおりである。

【別紙】P4ガイドラインの主な内容

1.会員は,購入者が医薬品を適切に選択・購入し,かつ,適正に使用することができるよう,@専門家による情報提供,A購入者のその時点における状態に応じた情報提供,B添付文書を基本とした情報提供の原則を遵守するものとする(3条)。

2.会員は,医薬品のインターネット販売を行う場合は,あらかじめ住所,氏名,電話番号などを登録した購入者に対してのみ行う。会員は,登録された情報を基に,各購入者の状況に応じて必要な情報を提供した上で商品を販売するよう努める(5条)。

3.会員が郵便等販売を行う場合は,薬局又は店舗ごとに,その薬局又は店舗の所在地の都道府県知事等に,@当該薬局又は店舗の名称及び所在地,A当該薬局又は店舗の許可番号及び許可年月日,B当該薬局又は店舗の郵便等販売の方法を届け出るものとする(6条1項)

4.会員が特にインターネット販売を行う場合は,上記3の事項のほか,@インターネット販売を行うウェブサイトの名称,Aインターネット販売を行うウェブサイトのURL,Bインターネット販売における責任者,C取り扱う医薬品の種類,D相談に応ずる方法,専門家の種別・氏名,相談に応ずることができる時間,Eインターネット販売において,その適正な使用のために必要な情報提供を行うために講ずる措置を届け出るものとする(6条2項)。

5.会員は,医療用医薬品,毒薬・劇薬,毒物・劇物,乱用薬物(大麻,覚せい剤,麻薬及び向精神薬などの乱用の危険性の高い物質),指定薬物,違法ドラッグ,個人輸入ドラッグ(個人が自分で使用する目的でしか輸入が認められておらず,国内での販売が禁止されている医薬品),化学物質及び危険物に該当するものをインターネット販売では取り扱わないものとする(27条)。

6.会員は,第一類医薬品については,その薬局又は店舗に貯蔵し又は陳列している医薬品であって,後記8から23までに定める情報提供を書面を用いて行うことを条件として,インターネット販売で取り扱うものとする。なお,会員は,購入者が医薬品を受領する以前にかかる書面を購入者に届けなければならない(28条)。

7.会員は,第二類医薬品及び第三類医薬品については,その薬局又は店舗に貯蔵し又は陳列している医薬品であって,後記8から23までに定める情報提供を行うことを条件として,インターネット販売で取り扱うものとする(29条1項)。

8.販売する際に行う情報提供は,第一類医薬品にあっては販売に従事する薬剤師,第二類及び第三類医薬品にあっては販売に従事する薬剤師又は登録販売者が行うものとする(30条1項)。

9.上記8の情報提供は,情報提供時に購入者側のその時点における状態を的確に把握する方法として,原則として店舗等において行うこととする(30条2項)。

10.会員は,医薬品を郵便等販売する場合であっても,情報提供時に購入者側のその時点における状態に合わせて,適切な情報提供を行うことができる方法を用いて行うものとする(30条3項)。

11.専門家(第一類医薬品にあっては薬剤師,第二類及び第三類医薬品にあっては薬剤師又は登録販売者)は,購入者側のその時点における状態について,購入者自身がその時点で使用する場合のほか,購入後の別な時期に使用する場合や購入者の家族等が使用する場合等にも留意して情報提供を行うものとする(30条4項)。

12.会員は,医薬品をインターネット販売するに当たって,自己の運営するウェブサイト,電子メール,電話,ファクシミリなどの情報通信技術を活用して,医薬品の適切な選択に資するよう,@購入の動機は何か,A使用する者は誰か,B服用してはいけない人,してはいけないことに該当するか否か,C医師等による治療を受けているか否か,D治療を受けている場合,使用前に医師・薬剤師等に相談する必要がある人か否かについて,購入者の申出により確認し,必要に応じて質問するものとする(31条1項)。

13.会員は,上記12の購入者の申出又は購入者への質問に対する返答を中心として,販売名,第一類医薬品・第二類医薬品・第三類医薬品の別,成分及び分量,効能又は効果,用法及び用量,製造・販売元,その他外箱に記載される内容,服用してはいけない人及びしてはいけないことに関する情報,医師等による治療を受けているか否かに関する情報,治療を受けている場合,使用前に医師・薬剤師等に相談する必要がある人に関する事項,添加剤に関する情報,その他添付文書に記載される重要と思われる事項とその出典及び情報の最終確認年月を始めとする添付文書を基本とした情報提供を,自己の運営するウェブサイト,電子メール,電話,ファクシミリ等の情報通信技術を活用して確実に行うものとする(31条2項)。

14.会員は,医薬品をインターネット販売するに当たって,自己の運営するウェブサイト,電子メール,電話,ファクシミリ等の情報通信技術を活用して,医薬品の適正な使用に資するよう,購入者に対して,@外箱,添付文書を保存しておくようにする旨の情報,A添付文書をよく読んでから使用する旨の情報,B併用してはいけない薬剤に関する情報,C副作用が発現したと思われる場合は,直ちに使用を中止し,医師・薬剤師等に相談する旨の情報,D一定期間服用しても病状が改善しない場合には,医師・薬剤師等に相談する旨の情報,E一定期間服用しても病状が改善せずに悪化した場合は,医療機関での診療を受ける旨の情報,F後日相談するために必要な情報(専門家の氏名,連絡先等),G健康被害救済制度に関する情報について,情報提供をするものとする(32条)。

15.会員は,医薬品のリスク区分の別にかかわらず,また,購入者側から情報提供を不要とする旨の申出があったか否かにかかわらず,申込みに対する承諾後に,販売時に提供した情報を電子メールや文書等により送付し,改めて使用の注意を促す。ここで,不要と明示する場合とは,購入者側から常備薬として日常使用しているものであると申出がされた場合,使用中の同一製品を持参又は送付してきた場合,又は店舗等において購入者が過去に同一の製品を購入していたことが購入履歴から明確に確認できる場合を意味するものとする(33条1項)。

16.上記15の電子メール・文書による情報提供には,添付文書をよく読んでから使用する旨の情報,併用してはいけない薬剤に関する情報,後日相談するために必要な情報(専門家の氏名,連絡先等)を含む(33条2項)。

17.相談を受けて対応する場合,相談に応ずる専門家は,購入者にとって不利益がもたらされることがないよう慎重な対応をとるものとする。登録販売者は,自らの専門性の範囲を超える相談に対しては薬剤師や医師に相談することを勧めるものとする(34条1項)。

18.上記17の情報提供についても,第一類医薬品に係るものは薬剤師が,第二類及び第三類医薬品に係るものは薬剤師又は登録販売者が行わなければならないものとする(34条2項)。

19.上記17に基づき相談に応ずる専門家は,購入時に情報提供を受けた内容を確認する場合,相談の時点で使用するに適当な医薬品か否かを確認する場合等,相談を受けて対応する場合の情報提供についても原則として店舗で行うものとする(35条1項)。

20.ウェブサイトや電子メール,電話,ファクシミリ等の情報通信技術を活用して相談を受けて対応する場合は,購入者や購入した医薬品が特定されない限り,不確実かつ不適切な対応になってしまうおそれがあることに注意し,専門家は,原則として,単純な事実関係の確認のほか,@店舗等への来訪を求めること,A医療機関への受診を勧めること(受診勧奨),B店舗等への来訪や受診勧奨を前提とした,使用者側の情報収集にとどめるものとする(35条2項)。

21.会員は,情報通信技術を活用して行う販売時や販売後の相談においても,相談があった場合の情報提供が専門家によって行われていることが購入者から確認できるような仕組みを設けるよう努めるものとする(35条3項)。

22.営業時間外に相談が行われる場合や店舗等が遠方である場合など,店舗等において即時的に行われることが困難である場合,相談の内容によっては近隣の医療機関を紹介するなど積極的に受診勧奨するように努めるものとする(35条4項)。

23.会員は,店舗等及び自己の運営するウェブサイトにおける情報提供のほか,電子メール,電話,ファクシミリ等を利用した相談窓口を設け,ウェブサイト上に表示する。会員は,相談窓口において適切な情報提供及び相談応需ができるよう,営業時間中(又は相談を受ける時間中),情報提供を行うための場所の数や方法に合わせて専門家を必要数確保する(36条)。

24.会員は,自己の運営するウェブサイト上で,購入者が適正に医薬品を購入する観点から,薬局・薬店として,@薬局又は店舗の基本情報(名称・住所・店舗地図),A薬局又は店舗の外観及び営業時の様子を撮影した写真,B許可の区分の別,C郵便等販売を行うことを届け出た旨の表示及び届け出た事項,D開設者の氏名又は名称,E管理者の氏名,店舗等において業務に従事する際の顔写真(ただし,顔写真については,着衣・名札が明瞭に識別できるよう工夫すること),F勤務する専門家の種別,氏名,店舗等において業務に従事する際の顔写真(ただし,顔写真については,着衣・名札が明瞭に識別できるよう工夫すること),G取り扱う医薬品の種類,H従事者の着衣・名札等による区別に関する説明,I営業時間及び営業時間外に相談に応ずることができる時間,J緊急時や相談時の連絡先(電話番号・ファクシミリ番号・電子メールアドレス等)の各基本情報を掲示するものとする(37条)。

25.会員は自己の運営するウェブサイト上で,販売制度の実効性を高める観点から,@第一類医薬品,第二類医薬品及び第三類医薬品の定義・説明,A第一類医薬品,第二類医薬品及び第三類医薬品の表示に関する説明,B第一類医薬品,第二類医薬品及び第三類医薬品の情報提供に関する説明,C指定第二類医薬品に関する陳列等についての説明,D医薬品の陳列に関する説明,E相談時の対応方法に関する説明,F健康被害救済制度に関する説明,G苦情相談窓口に関する情報の各情報を表示するものとする(38条)。

26.会員は,自己の運営するウェブサイト上で,医薬品は原則としてかかりつけの店舗等で専門家に相談してから購入するよう促すための掲示を行う(39条)。

27.会員は,上記24から26までに定める情報を,自己の運営するウェブサイト上において,購入者が容易に見ることができる場所に掲示するとともに,購入者にとって理解が深まるよう,分かりやすい記載に努めるものとする。また,必要に応じて,同じ掲示情報を複数の場所からリンクすることにより,購入者が頻繁に見ることができるよう工夫するよう努めるものとする(40条)。

28.会員は,医薬品のインターネット販売を行う場合は,@購入者から購入者(又は使用者)のその時点の状態を申告させたり,購入者に対して質問したりするなどの方法により,購入者側の状態を把握すること,A専門家によって購入者側のその時点の状態に応じた適切・適正な情報を購入者に提供すること,B購入者が,自己の申し込んだ医薬品の販売名,個数,価格等の情報を申込みの確定前に確認できる仕組みを設け,必要に応じて購入者に対して申込みを受け付けた旨を通知すること,C購入者に対して当該医薬品を販売してもよいか否かの判断を,必ず専門家が行うこと,D上記@からCまでの条件を満たしている場合に限り,購入者の申込みを承諾し,購入者に対して当該申込みを承諾した旨を通知すること,E売買契約の対象となった医薬品が確実に購入者に到達するための工夫をすることというすべての条件を満たすことにより,安心・安全を確保した販売を実現する(42条1項)。

29.会員は,購入する医薬品の個数,注文頻度,同一又は類似の薬効群の医薬品の注文状況等から総合的に判断して,購入者の安全を害するおそれがあると判断した場合は,当該購入者への販売を取りやめるなどの対応を取る(43条)。

30.会員は,医薬品のインターネット販売において,逆オークション,共同購入,価格比較等の方法による販売価格のみを強調するような販売方法は採らないものとする(44条1項)。

31.会員は,医薬品のインターネット販売において,レビュー機能を始めとした専門家以外の者による推奨情報,クチコミ情報は表示しないものとする(44条2項)。

32.会員は,一般用医薬品の使用によって,購入者の体調に変化が生じた場合の対応を案内するため,緊急連絡先等を自己の運営するウェブサイト上の分かりやすい部分に表示する(45条1項)。

33.会員は,一般用医薬品の使用によって発現した副作用について,購入者が健康被害救済制度を利用できるよう,自己の運営するウェブサイト上に当該制度についての案内を表示する(45条2項)。

タ.厚生労働省は,平成21年2月6日,上記サの意見公募手続の結果を発表した。その内容は,全体の意見数は3430件であること,郵便等販売に関する意見は2353件あること,賛成意見及び反対意見とそれらに対する厚生労働省の回答等であり,郵便等販売は第三類医薬品に限って認めるべきであるとする賛成意見に関しては,11の主な理由とそれに対する回答,郵便等販売により販売可能な一般用医薬品の範囲を第三類医薬品以外の医薬品についても認めるべきであるとする反対意見に関しては,34の主な理由とそれに対する回答が示されている。

チ.平成21年2月6日,改正省令(薬事法施行規則等の一部を改正する省令)が平成21年厚生労働省令第10号として公布され,これにより,薬事法施行規則に本件各規定が新設され,同年6月1日(改正法の施行日)から施行されることとなった。

(次回へ続く)

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2012年01月11日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【事案】

(前回からの続き)

6.裁判所の認定した事実

(1) 改正法施行前の医薬品の販売方法に関する規制等

ア.昭和50年6月28日付け薬発第561号各都道府県知事あて厚生省薬務局長通達「薬事法の一部を改正する法律の施行について」には,@薬剤師,薬種商販売業者等が医薬品を販売する際,消費者に対し直接に効能効果,副作用,使用取扱い上の注意事項を告げて販売する等医薬品の対面販売の実施につき指導すること等,また,A薬局等の構造設備は,かかる対面販売が可能となるようなものとするよう指導することとの内容がある。

イ.昭和63年3月31日付け薬監第11号各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局監視指導課長通知「医薬品の販売方法について」は,薬局開設者や一般販売業者がカタログ,ちらし等を配布し,注文書により契約の申込みを受けて医薬品を配送する通信販売(以下「カタログ販売」という。)につき,医薬品の販売に当たっては,その責任の所在が明確でなければならないこと,消費者に対し医薬品に関する情報が十分に伝達されなければならないこと等が要請されるところであり,これらにかんがみ,一般消費者に対し薬剤師等が直接に効能効果,副作用,使用取扱い上の注意事項を告げて販売する医薬品の対面販売を指導してきたところであって,カタログ販売は,このような対面販売の趣旨が確保されないおそれがあり,一般的に好ましくないところであるとした上,カタログ販売に当たって最小限遵守されるべき事項を示すとともに,その内容を周知して監視指導の徹底を図るよう依頼するとしている。なお,同通知は,カタログ販売の取扱医薬品を一定の薬効群に限るものとしており,その薬効群に属する医薬品のうち,@承認基準が定められているものにあっては,当該基準外のもの,A指定医薬品,B新一般用医薬品及びC分服内用液剤は除くものとされている。

ウ.平成8年法律第104号による薬事法の改正により,薬事法に,薬局開設者又は医薬品販売業者の,医薬品を一般に購入し又は使用する者に対する,医薬品の適正な使用のための必要な情報提供の努力義務を定めた規定(77条の3第4項)が追加された。

エ.平成10年12月2日付け医薬発第1043号各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生省医薬安全局長通知「薬局等における薬剤師による管理及び情報提供等の徹底について」には,今般の立入検査の結果,一般販売業の店舗において開店中に薬剤師が不在であった多数の例が判明するなどしたため,従前の厚生省薬務局長通知に係る薬局開設者の遵守すべき事項等を,薬局及び一般販売業者の開局中又は開店中は,薬剤師を常時配置し,医薬品の販売に当たり,医薬品を一般に購入し又は使用する者に対し,医薬品の適正な使用のために必要な情報を提供すること等といった趣旨により改正する旨の内容がある。

オ.平成16年4月1日から,深夜早朝の時間帯に,他の一般販売業の店舗と共同して行う医薬品の販売又は授与が認められることとなり(改正省令による改正前の薬事法施行規則140条),具体的には,一般販売業者が,その店舗以外の複数の店舗と共同して,センターに薬剤師を置いて,テレビ電話を用いた医薬品販売を行うことができることとなった。この場合,購入者に対し医薬品を販売するに当たって,必ずその都度,情報通信設備(テレビ電話その他の動画及び音声により情報提供・収集及び医薬品の確認を適正に行うことができるもの)を使用させて,必要な情報提供・収集又は販売される医薬品の確認を行うことが必要とされている(「他の一般販売業の店舗と共同して行う医薬品の販売又は授与に関する厚生労働大臣が定める基準」(平成16年厚生労働省告示第193号))。そして,上記情報通信設備については,平成16年4月1日付け薬食発第0401011号各都道府県知事,各保健所設置市長,特別区長宛て厚生労働省医薬食品局長通知において,顔色や身体の自然な動きを適切に認識することができ,受診勧告の必要性が判断できるとともに,薬剤師が医薬品についての確認をすることができるものであり,現時点では携帯電話は対象とならない旨定められている。

カ.平成16年9月3日付け薬食監麻発第0903013号各都道府県,各保健所設置市,各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知「医薬品のインターネットによる通信販売について」には,医薬品の通信販売については,上記イの通知において,対面販売の趣旨が確保されないおそれがあるため,最小限遵守されなければならない事項を示しているところであり,インターネットによる通信販売についても同様の扱いとしていたところであるが,最近,同通知で示した事項を逸脱した事例が見受けられ,指導が行われているとし,関係業者に対し,同通知に基づく取扱いについて改めて周知するとともに,遺漏のないよう監視指導の徹底を図るよう依頼する旨の内容がある。

(2) 一般用医薬品の販売状況・副作用等に関する調査結果等

ア.厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課が調査した平成9年度ないし平成14年度における薬局等における薬剤師等の不在率は,一般販売業の店舗においては18.7%ないし23.12%であり,平成12年度ないし平成14年度における調査実施時に薬剤師等が不在であり,かつ,薬剤師等不在時に医薬品を販売する等不在時の対応が不適切であった施設の割合は,一般販売業の店舗においては14.6%ないし17.1%であった。

イ.P6協会が行った「日本のドラッグストア実態調査」によれば,ドラッグストアの店舗数は,平成12年に1万1787だったものが,平成15年には1万4103へと増加し,ドラッグストアにおける医薬品の売上高の推計値も平成12年に8234億円だったものが平成15年には1兆1992億円へと増加した。

ウ.製薬企業や医薬関係者から厚生労働大臣に対してされた副作用報告に基づく一般用医薬品によるものと疑われる副作用事例(副作用報告の対象となっている重篤な症例及び中等度の症例)は,平成10年度から平成14年度までに約950件に上り,死亡事例は,平成12年4月から平成15年5月までの間に,アナフィラキシー・ショック(血圧低下,呼吸困難等のショック症状)関連やスティーブンス・ジョンソン症候群(発熱,発疹,粘膜のただれ,眼球の充血等の症状を特徴とし,予後が悪い場合,失明や致命的になることもあるもの)関連によるものなど10件となっている。
 また,平成14年度の一般用医薬品の副作用報告265件の中には,風邪薬を長期間にわたり多量に服用して肝機能障害を起こした例,併用禁止薬を併用したため間質性肺炎を発症した例,解熱鎮痛剤によるアレルギー歴があり投与禁忌であった者が再度解熱鎮痛剤を服用したためアナフィラキシーショックを発症した例,授乳中の母親が風邪薬を服用した結果乳児に発赤が発症した例など,薬剤師等から十分な情報提供が行われていれば副作用の発生を防止することが可能であったものが,約30件含まれている。
 その後,平成16年度から平成19年度までの一般用医薬品の副作用報告数は,合計1052件である。
 厚生労働大臣に対する副作用報告書の様式には,当該医薬品をどのように入手したかを記入する欄がないことから,インターネット販売により入手した医薬品の使用による副作用の件数を把握することはできないが,他の欄の記入内容からインターネット販売により入手した医薬品の使用による副作用と判明したものとして,生薬成分であるカシュウを含む滋養強壮剤を購入して服用したところ,肝障害の副作用を発症し,20日間程度の入院の後軽快した事例が1件あった。この副作用がインターネット販売により入手したという販売方法に起因するものかどうかについて,当該報告書の記載中には言及されていない。

エ.平成14年度の薬局及び一般販売業の店舗に対する指導状況は,各都道府県が,全国に約4万9000ある薬局のうち五十数%の施設に立入検査をしており,悪質なところには年に二,三回これを行うこともあり,一般販売業に対しては,一万二千余の施設に対して,延べ約1万回の立入検査が行われている。

オ.検討部会での検討のため,平成17年1月に行われたアンケート調査によると,市販薬を購入する際の最も多い買い方を回答する質問に対しては,店舗で症状や目的を言って勧めてもらうとするものが42.1%,パッケージや店頭の案内などを見て自分で選ぶとするものが38.9%,名前を指定して買うとするものが16.9%であり,市販薬に対する意識につき,医師が処方する医薬品と比較して,市販薬では副作用を生ずることはほとんどないと思うかとの質問についてそう思うとの回答が約18%,医師が処方する医薬品と比較して,市販薬では服用する量や時期を守らなくても危険はないと思うかとの質問についてそう思うとの回答が約13%あった。

カ(ア) 平成18年2月に,P7新聞社が同紙に掲載された広告上のアンケートに応募した1491人の回答の中から1000人の回答(うち354人がウェブにより回答を寄せている。)を抽出して集計した結果によれば,一般用医薬品の添付文書について,分かりやすいとの回答が44.1%,分かりにくいとの回答が21.2%,どちらでもないとの回答が34.7%であって,分かりにくいと回答した者に対する分かりにくい点を複数回答で尋ねる質問に対する回答は,198人の回答者のうち,122人が文字が小さく読みづらい旨,44人が説明が長い旨,28人が専門用語が多く,分かりにくい旨,11人が副作用についての説明が不十分である旨の回答をしている。

(イ) 平成21年5月に,P7新聞社が上記(ア)と同様に広告上のアンケートに応募した2150人の回答の中から1000人の回答(うち380人がウェブにより回答を寄せている。)を抽出して集計した結果によれば,1000人のうち,一般用医薬品についての意見を求める自由回答欄に記入した者が651人おり,そのうち,薬局・薬品・ドラッグストアに対する意見・要望として,薬剤師に詳しく薬の説明ををしてほしい,相談に乗ってほしい,どの店舗にも常駐してほしいとする旨の意見の数が43,薬の勉強をしてほしい,きちんと説明してほしいとする旨の意見の数が35であった。

キ.平成18年ころの研究者らの調査によれば,薬局の名称を使用して一般用医薬品のインターネット販売を行っていたインターネットサイトの24%で,第一類医薬品の販売が行われていた。

ク.財団法人P8が平成19年1月から同年12月までに受信した中毒症状の発症件数3万3932件のうち,一般用医薬品を起因物質とするものは3293件であった。また,自殺企図をもって使用したことを原因とするもの1851件のうち,一般用医薬品を起因物質とするものは405件であった。

ケ.厚生労働省が平成16年9月に取りまとめた「2003〜2004年海外情勢報告」には,2003年(平成15年)9月に成立したドイツの医療保険近代化法の内容として,医薬品の通信販売を認めるとの記載がある。また,ドイツ連邦憲法裁判所の判決として,ワクチンの医師への配送及びその宣伝行為を法律によって禁じることは薬剤師の基本法12条1項に基づく基本的権利を侵害する旨の2003年(平成15年)2月11日の判決があり,当該判決には,当該規定が薬剤師に医師へのワクチン配送及びその宣伝行為を禁じる限り,基本法に違反して無効である旨の判示がある。さらに,EU司法裁判所の判決として,医薬品の通信販売のドイツ国家による禁止は,ドイツにおいて発売承認を得た非処方せん医薬品に適用される場合,EU法に反する旨の2003年(平成15年)12月11日の判決があり,当該判決の被告はオランダの薬局及びその代表者の1人である。同判決は,医薬品の輸入に対して制限的な効果を持ち得る規制は,それが人類の健康と生命を効果的に保護するために必要な限度でのみ,EC条約と両立するとし,非処方せん医薬品の場合,その禁止は正当化されないと判示している。

(3) 厚生科学審議会(検討部会)における審議の経過等

ア.厚生労働大臣の諮問機関である厚生科学審議会は,平成16年4月,厚生労働大臣から,医薬品のリスク等の程度に応じて,専門家が関与し,適切な情報提供等がされる実効性のある制度を構築するための医薬品販売の在り方全般の見直しについて諮問を受け,その調査審議を行うため,同審議会の下に,関係各界の専門家・有識者等を委員とする検討部会を設置した。検討部会の検討事項は,@医薬品のリスク等の程度に応じた区分,A医薬品販売に当たっての情報提供の在り方((ア)必要な情報提供の内容,(イ)医薬品販売に従事する者の資質とその確保,(ウ)情報提供の手法(情報通信技術の活用等),B販売後の副作用発生時等への対応,C上記@ないしBの法令上の位置付け及びその実効の確保方策,Dその他(特例販売業の在り方等)であった。

イ.平成16年5月14日,第1回検討部会が開催された。第1回検討部会では,厚生労働省の医薬食品局長から,一般用医薬品の販売の実態と法律の建前との間に乖離があるという指摘があり,そのような乖離をどのように埋めていくかが課題であり,医薬品の販売時における実効性ある情報提供の方法を議論し,その成果を制度改正につなげるという検討課題等の説明がされ,P9大学名誉教授(以下,役職はすべて当時のものである。)のP10委員(以下「P10部会長」という。)が部会長として選出され,事務局から医薬品販売制度の現状と課題等について説明がされた後,各委員が意見を述べた。P11協議会のP12委員からは,医薬品は普通の商品と違って健康を損なって初めてその商品の欠陥が分かるという品物であることを今一度確認して,今後検討の中で情報提供がどうあるべきか,あるいは一般用医薬品の販売の在り方がどうあるべきかということを悲惨な薬害が発生したことを踏まえて審議する必要がある旨の発言があった。また,P13大学医学部教授・薬剤部長のP14委員からは,医薬品は生体に作用するなにがしかの薬理作用があるので,副作用が絶対にない医薬品はあり得ず,薬剤師が関与していようがいまいが副作用がある確率で起こることは避けられないものの,早期に発見して軽微な状態で処置をすれば大事に至らないことがあり,もし起こったときにどのような形で使用者を守れるかという仕組みが大事であって,そこに薬剤師の情報提供の必要性があると考える旨の発言があり,社団法人P15副会長のP16委員からは,医薬品の有効性と安全性をどのように担保しながら供給していくかが重要であり,消費者・国民にとっての医薬品の供給の利便性というものの本当の意味について,商業主義ではなく真の国民の視点に立った観点から議論する必要がある旨の発言があった。

ウ.平成16年6月8日,第2回検討部会が開催された。第2回検討部会では,諸外国における医薬品販売制度の現況等についての事務局からの報告,報告に対する意見交換,意見陳述人からのヒアリング,意見陳述人に対する質疑が行われた。
 第2回検討部会の資料である「諸外国における一般用医薬品販売規制等について」には,ドイツの状況について,すべての医薬品を取り扱うことができる薬局においては,薬剤師の監督下による一定の知識経験を有する者による対面販売が必要であり,自動販売機及び郵送による販売は禁止されている旨,具体的な効能や明白な治療効果がない自由販売医薬品を取り扱う薬店(ドロゲリー)においては,インターネットを使用した郵送販売は可能である旨の記載がある。
 ヒアリングにおいては,P17連盟の意見陳述人からは,薬害は未来永劫にわたる重大な課題であって,国やメーカーが責任を問われてきた薬害の歴史を繰り返さないためには安全対策を基本原則とすべきで薬事法の規制は強化すべきであり,医薬品の規制緩和については非常に慎重な議論が必要である旨,薬害を防止して医療の質を高めて,適切な医薬品を適切に使用することが本当に必要であると考えており,医薬品の安全確保に関しては規制強化を辞さない姿勢で臨む必要がある旨,現在の日本の状況はセルフメディケーションを進めるような環境にはなく,一般用医薬品を一般店で販売するための条件整備は現状では不備である旨,安易な規制緩和には消費者としては非常に危ぐを抱いている旨,医療・医薬品の専門家がいない会議で決めたのでは,国民の命と健康にかかわることについて消費者不在のまま決められることとなってしまう旨,消費者と薬剤師との間での情報のきちんとした提供と対話が必要であり,特に添付文書の提示の上で分かりやすい説明を受けられることが必要である旨,薬害の被害者団体が各政党に対して行ったアンケートによれば,薬剤師が適切にかつ親切に情報提供することが必要だとすべての政党が回答した旨の意見等が述べられた。国民生活センターの意見陳述人からは,同センターに寄せられる医薬品に関する相談の中で,件数の多いものは,配置薬に関するもののほか,漢方薬に関するもの,薬が効かなかったり服用して具合が悪くなったというもの,同じ症状について販売店によって勧められる医薬品が違うというもの,薬剤師の不在に関するもの等がある旨の説明がされた。
 さらに,医薬品を販売する各業態の意見陳述人から,各業態の実情の説明があったところ,P12委員からは,意見陳述人に対する質問に当たって,深夜の販売の利便性ということが言われるが,深夜に薬が欲しい場合には緊急医療に掛かるべきであり,一般用医薬品で対応するというのは望ましくないと考えている旨の発言があった。

エ.平成16年6月23日,第3回検討部会が開催された。第3回検討部会では,委員及び事務局から医薬品販売制度の現状についての報告,報告に関する質疑応答,事務局の作成した論点整理案の説明及び論点整理案に対する質疑が行われた。論点整理案には,「インターネット販売及びカタログ販売について,専門家による情報提供の観点から,どう考えるか」という項目が明記されていた。

オ.平成16年7月21日,第4回検討部会が開催された。第4回検討部会では,論点整理を基にした議論が行われた。その議論においては,P12委員から,添付文書をきちんと理解しなくても飲む人がいるということも含めた上で医薬品は扱われなければならず,そのために厳格な規制をしていると思う旨の発言があった。

カ.平成16年9月6日,第5回検討部会が開催された。第5回検討部会では,厚生労働省室長から上記(1)カの通知について説明があり,その後,論点整理を基にした議論が行われた。その議論においては,P12委員から,インターネット販売やカタログ販売において本当に情報提供されているといえるかどうかは非常に疑問である旨の発言があった。また,第5回検討部会では,検討部会の下に,医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等について検討する専門委員会を置くことが決められた。

キ.平成16年9月27日,第6回検討部会が開催された。第6回検討部会では,医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等についての議論が行われた。その議論においては,P16委員から,一般用医薬品には,自分の疾患をよく分からずに自己の判断で薬を選ぶことにより疾患が悪化するというリスクや,自己の判断で定められた用法・用量を守らずに服用することにより副作用が発生するというリスク等があり,特に後者はアメリカにおいては非常に問題となっており,こういった一般用医薬品の使用環境におけるリスクに注意する必要がある旨の発言があり,社団法人P19常任理事のP20委員から,医師からは考えられない薬の飲み方をする患者も多く,町の診療所の患者の場合,いくら口で言っても分からず,ましてや注意書を読まない者も多い旨の発言があった。

ク.平成16年11月22日,第7回検討部会が開催された。第7回検討部会では,一橋大学大学院法学研究科教授で検討部会の部会長代理のP21委員の「一般用医薬品の販売におけるリスクと販売活動の規制についての考え方」に関する講義,それに対する質疑,専門委員会での医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等についての検討状況の報告,それに対する質疑が行われた。専門委員会の検討状況の報告に対する質疑において,社団法人P22常務理事のP23委員から,店頭において消費者から情報提供を受ける場合に,「アレルギーがありますか。」,「いいえ。」,「胃腸は弱いですか。」,「はい。」という単純なことだけで済むものではなく,知識と経験を基にして,機械ではできない人と人との会話を通じて正しい情報がつかめるように努力をしている旨の発言があった。

ケ.平成16年12月22日,第8回検討部会が開催された。第8回検討部会では,専門委員会での医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等についての検討状況の報告,P11協議会の副代表世話人によるこれまで発生した薬害の概要についての講義,東京工業大学フロンティア創造共同研究センター教授のP24委員による情報通信技術の活用についての講義が行われた。P11協議会の副代表世話人からは,講義の中で,インターネット等の医薬品の販売では実際に売っている人が資格のある人なのかどうなのか分からず,また,実際にその薬が自分にとって適切なものなのかどうなのかを判断する人がいない状態で買って使用しているのは問題なのではないかという問題意識でフォーラムを開催した旨,今後被害者を出さないこと,専門家に加害者になってほしくないことが自分たちの願いである旨の発言があった。また,P24委員の講義には,テレビ電話等で顔色や血液の色を正しく伝送するためには,カメラ,照明,表示装置の調整等が必要となる旨の内容があり,その具体的内容は,現在のテレビは,より美しく見えるように工夫されているため,色を正しく表示することができず,また,被写体と見ている人のいる場所とで照明の条件が違う場合には人間の色に対する感じ方の特性からも正しい色の認識はできないため,@デジタルカメラに通常組み込まれている画像処理機能を外した上で,色票を撮影してカメラの特性を計測すること,A被写体のある場所と見る人のいる場所の照明環境を測定すること,B受像器の調整をすることが必要になるというものであった。

コ.平成17年2月10日,第9回検討部会が開催された。第9回検討部会では,事務局による諸外国の医薬品販売制度の調査結果についての報告,それに対する質疑,専門委員会での医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等についての検討状況の報告,それに対する質疑等が行われた。諸外国の医薬販売制度の調査結果についての報告に対する質疑において,P12委員からインターネット販売及びカタログ販売についての質問があり,それに対して,事務局が,インターネット販売及びカタログ販売は,現地調査の調査項目には入っていたが,確認したところ一部不正確なところがあったので,第9回検討部会の資料では提示しなかった旨の回答があった。その後,P16委員から,P15でも外国の調査を行ったので,その内容と第9回検討部会の資料とを照らし合わせた結果を申し上げたい旨発言し,インターネットによる販売については,「ここに書かれていますように,まず不正確とはいいながら,ドイツ,フランス,イギリスでは何らかの制限を持っているというのがここに書いています。」との発言があった。

サ.平成17年2月28日,第10回検討部会が開催された。第10回検討部会では,専門委員会での医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等についての検討状況の報告,それに対する質疑,消費者及び薬局・医薬品販売業者等に対するアンケート調査の結果の報告,それに対する質疑,事務局による特例販売業に関する調査の結果の報告,それに対する質疑が行われた。特例販売業について,事務局から,制度が設けられた昭和35年当時には10万店舗程度あったものが平成15年3月末には約9900店舗になっている旨の報告があった。

シ.平成17年3月24日,第11回検討部会が開催された。第11回検討部会では,医薬品の販売に当たっての必要な情報提供等について議論が行われた。

ス.平成17年4月15日,第12回検討部会が開催された。第12回検討部会では,医薬品販売業務の内容・方法等についての議論が行われ,また,上記サのアンケート調査の結果に関する追加報告が行われた。

セ.平成17年4月28日,第13回検討部会が開催された。第13回検討部会では,医薬品販売に従事する者の資質と責務について及び医薬品販売における情報通信技術の活用等についての議論が行われた。その議論において,P6協会事務総長のP25委員からは,P12委員からの質問に答えて,例えば真っ白い顔をしているなどの相手の状態を見て,薬を勧めたり医師のところへ行くことを勧めたりするのは医療行為とはいえないのではないかと思う旨の発言があり,この点の医師法との関係について当初に言及した疑問の趣旨をこの考え方に沿って説明する発言がされ,この点に関し,P16委員からも,受診勧告は診断ではないので医療行為ではない旨,リスクを伴う医薬品を取り扱う以上,供給者側にも責任があることは明確にしなければならないし,販売店としてはそのような認識を持って業務を行うべきである旨の発言があった。また,P13大学医学部教授(小児科学)のP26委員からは,医師として仕事をしていても,基本的な知識とか経験に基づいて分かりやすく患者に伝えるということが一番難しく,添付文書を単純に整備しただけでは,自動的に消費者に伝わるとは思われず,説明の実効性に限界がある旨,販売側は半分近くの人が説明したと思っていても買う側では10人に1人もそうは思っていないということを示すアンケート結果があった点からしても説明の実効性の問題があることに留意する必要がある旨の発言があり,P27協会副会長のP28委員からは,添付文書の中だけで説明をするということになるとインターネットで販売するのと何ら変わらないことになるところ,リスクの程度に応じて実効性のある情報を会話によっていろいろと提供することは対面販売でなければできない内容であると思う旨の発言があったほか,専門委員会の委員でP29大学薬学部教授のP30専門委員から,これからの時代はセルフメディケーション時代,自己責任の時代であることは明らかであるから,添付文書に書いてあることをきちんと理解すれば問題ないが,現実問題として,添付文書を各消費者がきちんと自分のこととしてかみ砕いて理解して読むかどうかは別問題であり,個々の消費者によっても全く環境は異なるのであるから,原則として,薬に対するきちんとした知識を持った者が,対面販売で,例えば運転手のような環境にある消費者には眠くならない薬を勧めるといったことを指導することが必要である旨の発言があった。第13回検討部会の資料には,情報通信技術の活用に関する論点として,消費者への対面による情報提供や医薬品の実地における管理と,情報通信技術を活用した情報のやりとりとの違いは何か等の内容,インターネット販売及びカタログ販売に関する論点として,「@インターネット販売及びカタログ販売と対面販売との違いは何か。特に,消費者の状況の把握とそれに伴う情報提供が困難である可能性があることについて,どう考えるか,A@を踏まえ,インターネット販売及びカタログ販売についてどう考えるか」という内容が記載されていた。

ソ.平成17年5月20日,第14回検討部会が開催された。第14回検討部会では,医薬品販売における情報通信技術の活用等について議論が行われた。その議論において,P16委員からは,消費者の個別のいろいろな細かい情報を正確に吸収して集め,そこから正確な個別の情報提供ができるという流れの中で,細かく個別の正確な情報を収集することは,経験上インターネットでは無理であると思われ,人と人との会話,顔の色,表情,行動といったものの総合的な中で収集することになり,それを踏まえて専門家の立場で正しく情報提供することが必要で,それを支えるものとして情報通信技術を用いるのが適当である旨の発言があった。また,P31大学経営学部教授のP32委員からは,インターネットは,医薬品の販売に関しては,対面に代わるというものではないが,それをうまく組み込む工夫をすることによって,消費者に対しての情報量は相当に増えるし,全体としてはリスクを吸収していくことがある旨の発言があり,P24委員からは,情報通信技術を用いることについては,消費者にとって必ず利便性が向上するのは明らかであり,ビジネスの観点は別にして,消費者と販売者がお互いに納得できる安全基準を作って,実証実験のようなことを行ってみる意味もあるのではないかという旨,そのようにした場合に5年後,10年後には普及しているということになるかもしれないし,安全性のレベルを上げなければならないということになるかもしれない旨,便利さとセキュリティのレベルを両方成り立たせることは可能であり,ある程度のレベルをまず要求した上で仕組みを作っていくべきではないかという旨の発言があったが,他方で,P25委員からは,電子メールやインターネットでの健康情報の提供には,内容については自己判断であり責任は負えない旨の免責条項を入れることが常識となっており,限界がある旨の発言があり,P30専門委員からは,インターネットやメールといった新しい技術の情報をユーザーのどれくらいの割合の人が理解できて使いこなせるかはかなり疑問であり,本当に必要な人たちが使う場合には,基本的には対面で説明をきちんとする方法が重要になると思うので,方法論が広がることは否定しないものの,それがすべてのように考えることには非常に疑問がある旨の発言があり,P20委員からは,インターネットや添付文書による情報提供では提供される情報の正確性には問題がないものの,インターネットや添付文書を実際に読む人の誤解や思い違いという問題も大きく,その面では対面販売にもかなり長所がある旨の発言があった。

タ.平成17年6月17日,第15回検討部会が開催された。第15回検討部会では,医薬品販売における情報通信技術の活用等について,意見陳述人からのヒアリングとそれに対する質疑応答が行われた。P33会の意見陳述人からは,医薬品は医薬品としてカウンター越しに買うのが当然だと思う旨,薬剤師が,薬のプロとして利用者からの症状や他に飲んでいる薬の情報などを会話によって得て,より的確なアドバイスをすることによって,症状にあった薬を選べると考える旨,P33会の会員で一般薬で発症した者はほとんど添付文書を読んでいなかった旨,日本では薬を安易に飲む傾向があるので,国民の薬に対する知識レベルを徐々に上げていってほしい旨の意見が陳述された。また,大阪府健康福祉部薬務課の意見陳述人は,使用後の安全問題の取組などの医薬品の特性から,その供給は原則として有資格者による対面販売にこだわるべきであり,消費者の利便性のために供給体制を変更するというのは本末転倒である旨の意見が陳述された。質疑において,P33会の意見陳述人からは,医薬品の性質を分かっていない人が多いと思われ,P33会の会員にも薬店で売っているからそれほど強い薬ではないだろうと思っていた者がおり,そのような間違った考えを元に戻すために規制を強化してもらうのがよい旨の発言があったほか,P12委員からは,もともと医薬品というものは利便性を追求する商品とは異なる性格のものではないかということが検討部会の中でずいぶん議論された旨の発言があった。さらに,第15回検討部会では,インターネット販売,カタログ販売及び個人輸入の問題について議論が行われた。この議論において,東京都福祉保険局健康安全室薬務課長のP34委員からは,違法サイト的なインターネットの問題とは別に,医薬品製造業者,薬局及び一般販売業者がインターネット上で医薬品を販売することの適否について議論すべきであるとした上で,このような販売方法は,国から発出されている通知に定められた品目に限られているかどうかが確認しにくく,また,店舗における対面販売が原則であるという意見が多い中で,双方向性をどのように保っていくのかが問題であり,インターネット上で広く宣伝をして注文を集めるという形の販売は店舗による販売ではないと思う旨の発言があった。

チ.平成17年7月8日,第16回検討部会が開催された。第16回検討部会では,第11回検討部会から第15回検討部会までの議論の取りまとめが行われた。事務局が上記各部会における意見の取りまとめとして作成した資料には,情報通信技術の活用の仕方について,「情報通信技術は,消費者のメリットになる場合等,活用できるところは活用すべきであるが,消費者の誤解の防止等には対面での販売にメリットがあることや,情報通信技術に親しみのない世代がいること等を踏まえ,情報通信技術に過度に偏った仕組みを作るべきではなく,補助的・補完的な選択肢として使用するべきである」との内容,「インターネット販売やカタログ販売,個人輸入については,対面販売,情報提供,適正使用の観点から,対策を講じるべき」との内容がある。同部会の議論において,P13大学大学院経営管理研究科委員長兼教授のP35委員からは,情報通信技術というのは非常に広い意味があり,医薬品販売との関係では,どちらかというと対面販売をしないでテレビ電話を活用するといった方向に流れがちになるが,情報通信技術は薬剤師が顧客をサポートする際に非常に効果を発揮すべきものである旨,既存のネットワークやIT(情報通信技術。以下同じ。)を活用した一般用医薬品の販売はどうあるべきかという議論は,検討部会以後にいずれ出てくる旨の発言があり,P10部会長から,インターネット販売,カタログ販売,個人輸入に関し,何らかの対策を講ずるべきであるという意見が圧倒的に多かったとのまとめでよいか各委員に確認され,了承された。

ツ.平成17年9月14日,第17回検討部会が開催された。第17回検討部会では,第11回検討部会から第15回検討部会において出された意見の取りまとめに関する議論が行われた。その議論において,P21委員からは,インターネットでは,相談に対応している専門家と称する者が本当に専門家であるかどうかというリスクがあり,実際の店舗で実地に営業している者が嘘をつくケースは余り考えられないので,その方が安全であろうという発言があった。

テ.平成17年9月29日,第18回検討部会が開催された。第18回検討部会では,医薬品販売に際しての情報提供について議論された。事務局の作成した論点整理の資料には,対面販売の意義・必要性について,@現在,医薬品販売に当たっては,「適切な情報提供」及び「適切な相談対応」が行われるよう,薬剤師等の専門家の関与が求められていること,Aこの「適切な情報提供」及び「適切な相談対応」が全うされるためには,消費者と専門家との間で円滑な意思疎通が行われること及び専門家において消費者側の状態を的確に把握できることが必要であること,Bこれらが確実に行われるためには,消費者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができ,例えば,消費者側の顔色等も含めた全体の様子を見ることができる「対面販売」が必要であり,これを医薬品販売に当たっての原則とすべきではないかとの内容があった。この「対面販売」について,P25委員の質問への回答として,厚生労働省担当官から,消費者が直接医薬品を手に取ることができないような陳列をして専門家が医薬品を手渡しするいわゆるオーバー・ザ・カウンターの場合に限らず,消費者が自由に医薬品を手に取れる場合を含めて,最終的な販売までのいずれかの時点で消費者が専門家と対面することを「対面販売」であると考えている旨の説明があった。

ト.平成17年10月12日,第19回検討部会が開催された。第19回検討部会では,医薬品販売に従事する者の資質等について議論が行われた。

ナ.平成17年10月31日,第20回検討部会が開催された。第20回検討部会では,適切な情報提供や相談対応のための環境整備等について議論が行われた。事務局が作成した資料には,ITの活用について,「医薬品販売に関するITの活用については,大きく分けて,@ITを活用した一般的な情報提供,普及啓発,AITを活用した販売方法(対面販売に代替する手段としての活用)の2つが考えられ,@については,ITの積極的活用について異論はないと考えられるため,Aについて検討するとした上,販売時に行われるべきものとして「リスクの程度に応じた情報提供」と「相談対応」があるが,ITを活用した販売方法に関して検討する際には,この2つを分けて,それぞれについて考察すべきではないか,「リスクの程度に応じた情報提供」については,販売側からいわば一方的に働きかけるものであることから,ITを活用してこれを行おうとしても,消費者側の注意を引きつけ,情報を確実に伝達するのは難しい場合があるのではないか,これに対し,「相談対応」の場合には,消費者側からの働きかけが端緒となっているため,消費者側も注意を払って意思疎通を図ろうとすることから,ITの活用になじみやすい部分もあるのではないか」という内容及び「現在,薬局,一般販売業等の許可を得ている者が,一定の範囲内の医薬品(リスクの程度が低いものが中心となっている)について,インターネット等を活用した通信販売を行っているが,これについてどう考えるか,現在,取締りの法的根拠はないとして,通知の範囲を超えた医薬品についても取り扱う通信販売業者が存在しているが,今後こうした業者についてはどのような対応を行うことがが適切か」という内容がある。同部会の議論において,P16委員からは,店舗販売でさえも非常に指導の限界があるといわれており,ましてやインターネットの販売における規制は必ずしもできないというのが現状である旨の発言があり,P26委員からは,将来安全が担保される時代がすぐそこに来ているとしても,まだそれが目に見えない時点で,安全性を確保しながらの運用というのを議論するのは空虚な気がするので,消極的な意見である旨の発言があり,また,P9大学薬学部教授のP36委員からは,インターネット販売や通信販売は,フェース・トゥ・フェースではないという定義になり,これからのリスク分類での情報提供の在り方がフェース・トゥ・フェースでなければならないものは取扱商品の範囲から除外しなければならず,それ以外のものが真にインターネット販売や通信販売に適しているかどうかもまた議論を要する旨発言があった。これに対し,P24委員からは,対面販売の実効性が本当に担保されるかは疑問である一方,購入の際は急いでいて説明を受けられなかったが後から説明を受けたい場合にはITは大変有効であり,一つの型にはめるのではなく,実際に本来の目的にあった効果を残しておく方がよいのではないかという発言もあったが,P10部会長からは,インターネット販売については,対面販売に準ずるか又は対面販売より優れているという考え方もあり得るものの,委員らが現状で認識されているところでは,対面販売に勝っているとはいえないようであり,インターネット販売について規制を考える必要があるというのが検討部会の意見の大勢であったというまとめでよいかとの確認がされ,各委員からこれに異論を呈する発言はなかった。

ニ.平成17年11月18日,第21回検討部会が開催された。第21回検討部会ではリスク分類と販売時における対応等について議論された。事務局の作成した資料には,一般用医薬品を,A(第一類医薬品に相当),B(第二類医薬品に相当),C(第三類医薬品に相当),D(平成11年及び平成16年に医薬品から医薬部外品に移行されたもので,現在は医薬品に該当しないもの)に分類した上,@積極的な情報提供の要否,A文書の使用の要否,B専門家の関与の要否,Cオーバー・ザ・カウンターとすることの要否,D販売時におけるIT(情報通信技術)の活用の可否について,(a)Aについては,積極的な情報提供及び文書の使用を必須の義務とし,薬剤師の関与を必要とし,オーバー・ザ・カウンターを必須の義務とし,ITの活用については,対面販売の原則を徹底すべきであり,認められないとし,(b)Bについては,積極的な情報提供及び文書の使用を努力義務とし,薬剤師又は新制度下において資質の確認を受けた者の関与を必要とし,オーバー・ザ・カウンターを努力義務とし,ITの活用については,対面販売を原則とすべきではあるが,消費者の利便性に配慮し,販売方法によっては,限定的に認めることも検討する余地はあるとし,(c)Cについては,積極的な情報提供を努力義務として法令上規定するほどではなく(ただし,相談応需義務はある。),文書の使用は必要ではないが,薬剤師又は新制度下において資質の確認を受けた者の関与を必要とし,オーバー・ザ・カウンターは不要とし,ITの活用については,対面販売を原則とすべきではあるが,消費者の利便性に配慮し,販売方法によっては,限定的に認めることも検討する余地はあるとし(リスクの程度や消費者の利便性,現状ある程度認めてきた経緯にかんがみると,薬局,一般販売業等の許可を得ている者が通信販売を行うことについても認めざるを得ないと考えられるが,どのように考えられるかと注記されている。),(d)Dについては,積極的な情報提供,文書の使用,専門家の関与及びオーバー・ザ・カウンターはいずれも不要とし,ITの種類を問わず,これを活用した販売方法も認められるとされている。同部会の議論においては,P10部会長及び事務局から,上記資料におけるITの活用とは基本的にはテレビ電話に限定したものを想定しており,インターネット販売は,Cについて場合によっては認めるとされている「通信販売」に含まれると考えているとの説明があった。また,P24委員から,販売時に情報提供するのが非常に重要であることはよく分かるが,買った人が服用するとは限らないし,また,常備薬として家庭に置いておく場合などの現状を考えると,最も重要なことは医薬品の危険性が消費者にとってよく分かるようにすることであり,消費者が後からでも必要に応じて情報を得ることができるようにすることが重要ではないか,そうすると,医薬品のインターネット販売を規制する必要もないのではないかという旨の指摘があり,これに対し,厚生労働省担当官から,情報を適切に伝達する最大の機会は販売の際であり,家族が使用する場合でも家族の状況が一応分かることを前提に情報を伝えることができる機会として,対面販売を重視すべきであり,検討部会の従来の議論でも対面販売を原則とすることで意見がまとまりつつあるのではないかとの回答がされ,これを受けて,P24委員から,多くの意見がそのようなものであることは大体分かるしある程度は納得でき,その判断はそれで結構であると思うが,時代とともに状況は変わるので,この状態が今後何十年も固定化されることがないようにしてほしいとの発言があった。これらのやり取りを含む委員全体の議論の結果,上記AないしDの各医薬品に係る上記@,A,B及びDの各項目については上記資料の内容が基本的に了承された。

ヌ.平成17年11月25日,第22回検討部会が開催された。第22回検討部会では,従来の議論の結果を取りまとめた報告書案について議論が行われた。

ネ.平成17年12月15日,第23回検討部会が開催された。第23回検討部会では,修正された報告書案について議論が行われ,報告書として了承された。報告書には,(a)薬事法においては,医薬品販売について,薬剤師等の店舗への配置により情報提供を行うことを求めているが,現実には薬剤師等が不在であったり,薬剤師等がいても情報提供が必ずしも十分に行われていないなどの実態に対応するため,医薬品のリスクの程度に応じて,専門家が関与し,適切な情報提供等が行われる実効性のある制度を構築するため医薬品販売の在り方全般について見直しを行うこととし,(b)国民の健康意識の高まりを始め,一般用医薬品を取り巻く環境の変化を踏まえ,セルフメディケーションを支援する観点から,安全性の確保を前提とし,利便性にも配慮しつつ,国民による医薬品の適切な選択,適正な使用に資するよう,薬局,薬店等において,専門家による相談応需及びリスクの程度に応じて情報提供等が行われる体制を整備するという改正の理念の下に,(c)医薬品の販売時の適切な情報提供及び購入者の疑問や要望を受けた場合の適切な相談応需が必要であるという観点から,専門家において購入者側の状態を的確に把握でき,購入者と専門家の間で円滑な意思疎通が行われるよう,購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができる「対面販売」を医薬品販売に当たっての原則とし,(d)情報通信技術の活用については,行政,製造業者等による啓発や情報提供については積極的に進めるべきである一方,医薬品の販売については,対面販売が原則であることから情報通信技術を活用することについては慎重に検討すべきであって,@第一類医薬品については,対面販売とすべきであり,情報通信技術を活用した販売を認めることは適当でないと考えられ,A第二類及び第三類医薬品については,対面販売を原則とすべきであるが,購入者の利便性に配慮すると,深夜早朝に限り,一定の条件の下で,テレビ電話を活用して販売することについては,引き続き認めることも検討する余地はあると考えられ,B第三類医薬品については,リスクの程度や購入者の利便性,現状ある程度認めてきた経緯にかんがみると,薬局・店舗販売業の許可を得ている者が,電話での相談窓口を設置する等の一定の要件の下で通信販売を行うことについても認めざるを得ないと考えられるという内容があり,同報告書は,上記(a)ないし(d)の内容を含め,検討部会の検討結果を取りまとめた内容として了承された。なお,同部会の議論の中で,P10部会長からは,検討部会の議論の前提になったのは,医薬品供給の安全性の確保ということであり,これは委員の中でも異論がないことであると認識しており,今後の法制化に当たっては,その点が遺漏なく法案に盛り込まれるようにしてほしい旨の発言があった。

ノ.平成17年12月15日,検討部会の検討結果として取りまとめられた検討部会報告書は,厚生労働大臣に報告され,公表された。

(4) 原告P1らの国に対する要望の提出状況等

ア.原告P1らは,平成16年11月,「(仮称)P37協議会」として,国の規制改革・民間開放推進会議に対し,上記(1)カの通知による医薬品のインターネット販売の規制の緩和又は撤廃を求める要望を提出した。厚生労働省からは,インターネット販売の在り方については今後検討部会で議論する予定であり,必要な事項を平成18年通常国会提出予定の法案に盛り込む予定である旨の回答があった。

イ.原告P1は,平成17年6月,規制改革・民間開放推進会議に対し,上記アと同様の要望を提出し,検討部会では適切な審議結果が期待できない旨を指摘した。これに対し,厚生労働省は,上記アと同様の回答をした。

ウ.原告P1は,平成17年,厚生労働省医薬食品局総務課の担当官からのヒアリングを受けた。

エ.原告P1は,平成17年11月,規制改革・民間開放推進会議に対し,上記アと同様の要望とともに,医薬品販売の免許を有する薬店がインターネット販売を行う際に,適切な販売を行っている旨を消費者に証明する仕組みとして,オンラインマーク制度の導入の検討を求める要望を提出した。厚生労働省は,検討部会の報告書の趣旨等を踏まえて必要な制度改正を行う旨及び同報告書の該当部分を紹介する内容の回答をした。

オ.原告P1は,平成18年1月ころ,自社の医薬品販売サイトにおいて,医薬品の購入の際,@注意事項のチェック欄を設け,チェックに応じた薬剤師のアドバイスを表示し,禁忌事項にチェックされた場合には,販売しないようにすること,A販売前に必要な注意事項の画面を必ず表示し,当該画面を確認した旨のボタンを押して注文を受けること,B注文者に対し,注文した医薬品の使用時の注意事項を記載した電子メールを送信することを開始した。

カ.原告P1らは,平成18年1月19日,「P38の会」として,厚生労働大臣に対し,要望書を提出した。

キ.P4は,平成18年4月,厚生労働省に対し,医薬品のオンライン販売に関する自主規制案を提出したところ,この経緯は次のとおりである。原告P1の担当者は,同年3月13日,自主規制案の原案を添付した電子メールを厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の担当官に送付して意見を求め,その後,同年4月21日,改訂した自主規制案を添付した電子メールを送付して,自主規制案について説明し,また,完成後の自主規制案についてニュースリリースをする時期,内容,方法等について相談するため,厚生労働省担当官との面会を申し込んだ。この電子メールには,改正法案が国会審議中であるため無用な刺激を避けるためにも第一類ないし第三類医薬品の分類についてはあえて言及しなかった旨記載されている。そして,同月25日,原告P1の担当者は,厚生労働省担当者あてに電子メールを送付して,自主規制案への意見を求めるとともに,その対外発表について是非を含めた感触を知りたいとして面会を求めたところ,返信の電子メールの文面には,面会可能な日程の連絡とともに,国会審議等においてインターネット販売については厳しい意見しか出ていない状況であり公表には慎重になられた方がよろしいかと思われ,この点については,面会時によく意見交換したい旨の回答があった。

(次回へ続く)

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2012年01月08日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【事案】

(前回からの続き)

イ.争点(2)イ(本件規制の憲法適合性)について

(原告らの主張の要旨)

 以下のとおり,インターネット販売に対する規制と,薬局,店舗販売業及び特例販売業の規制との間にはおよそ不合理な不均衡があり,本件規制は不合理な法システムである上,一般用医薬品のインターネット販売による副作用の危険は,対面販売による副作用の危険と比べて有意に高いことはなく,しかも,情報提供の方法をきちんと義務付ければ,想定されるインターネット販売に伴う問題は回避されるので,インターネット販売自体を禁止する必要性・合理性はないというべきであり,本件改正規定は憲法22条1項に違反する。

(ア)a 本件規制は,医薬品の販売方法の禁止であり,その性質に照らせば,その必要性と合理性について統制密度を高めるべき事案であり,しかもインターネット販売という職業の人格的価値を否定するものであり,原告らが努力しても克服できない客観的条件による規制であるから,職業選択の自由に対する最も過酷な制限であり,必要最小限度の手段でなければ合憲性は認められないとの判断基準が採られるべきである。そして,本件は消極目的によるであるから,「対面販売」とは何なのか,それで医薬品の副作用を防げ,インターネット販売では防げないのかという点について,立法事実に立ち入った判断が行われるべきである。

b 職業選択の自由に関する規制の合憲性の判断は,単に形式的に許可制なのかどうかによるのではなく,具体的な規制内容,それにより制限される職業選択の自由の程度を比較考量して判断されなければならない。本件規制は,インターネット販売に着目すれば,例外を許さない新規の禁止であり,職業選択の自由そのものに対する強力な制限である。医薬品販売に関する許可は配置販売業など販売方法により分類された業態ごとに行われているところ,インターネット販売は,それ自体が一つの業態であり,本件規制も,インターネット販売を対面販売から区別して,情報提供方法のいかんを問わず,これまで許されていたインターネット販売の方法による第一類・第二類医薬品の販売を禁止しようとしているのであるから,許可制を超える厳しい規制である。そして,職業選択の自由は人格的価値と密接にかかわるものであり,本件規制はインターネット販売を行ってきた販売業者の人格権を著しく制限する。被告は,本件規制は販売方法の禁止にすぎないと主張し,現行法の体系に照らせばそのような仕組みになってはいるものの,許可制とするか販売方法の規制とするかは立法者の選択であって,規制の強弱の問題ではないから,販売方法の禁止という仕組みが採られているからといって,その司法審査の基準を当然に緩めてよいというものではなく,実質的に制限される権利の内実に着目すべきである。本件規制の内容は,インターネット販売という職業選択の自由を直接に害するもので,原告らのように,インターネット販売に大きな比重を置いている販売業者にとっては,事業の存続に重大な影響を及ぼす職業の不許可処分に等しく,また,インターネット販売のみを差別的に規制するものであるから,合憲性の判断には,より厳格な基準を用いるべきである。

c 被告は,本件規制については立法府の広い裁量が認められると主張するが,本件規制は消極目的による規制であり,その合憲性の判断に当たっては,いわゆる明白性の原則は採り得ず,規制の理由とされた立法事実を詳細に審査し,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であるとの厳格な合理性の要件を満たすと判断されることが必要である。なお,被告が立法事実に踏み込んで判断することが適当でない事情として主張する「現在の医薬品を取り巻く環境をどのような形であるととらえ,その環境に合わせた政策としてどのような対策を講ずべきかといった判断」は,本件の争点となっていないし,「医薬品販売状況,販売者数の推移や販売業態の変化等の様々な事実から推認されるセルフメディケーションの進展状況の判断とその是非等」も,医薬品のインターネット販売を禁止することの立法事実とは関係がない。
 そもそも,本件では,国会においてインターネット販売を禁止することについての立法事実が明らかにされておらず,改正法案がインターネット販売を禁止する趣旨であることの説明はなかったのであり,国会において論点が明示され,議論の上で合理的な考慮がされたわけではなく,国会が立法裁量権を行使した場合とはいえないから,合憲性の推定が及ぶ前提を欠く。

d 仮に,本件規制が職業内容及び態様に対する規制であるとしても,国家権力の行使である以上,比例原則により,過大な規制は許されず,その規制が重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であるかどうかという厳格な合理性の基準により個別的にその適否が判断されなければならない。

(イ) 本件規制の目的は,国民の生命及び健康への危害防止という消極目的である。仮に,被告がその目的の中に対面販売まで含めるのであれば,それは本件規制の目的として相当ではない。

(ウ)a 医薬品には効用と副作用があり,いかにして効用を最大限に引き出し,副作用リスクを最小限に低減するかが課題である。リスクマネジメントの観点からすると,世の中のリスクをすべて除去することは不可能であり,十分に注意して使用しても生ずるかもしれない全く稀なリスクを事前に予防することは,かえって社会に過大な負担を課すものであり,事後の対策に待つしかない。薬事法でも,医薬品の購入時に防止できなかったリスクは,相談応需という事後の対応や医師の診断・治療によって対応することになっている。したがって,法的規制に当たっては,インターネット販売の禁止によって防止できる副作用被害があるのかどうか,仮にあるとした場合にどれだけあるのか,副作用を防止するのにインターネット販売の禁止が必要かつ合理的な規制であるのかを吟味しなければならない。

b まず,立法事実については,情報提供の不十分さによる単なる医薬品副作用被害が生ずる抽象的危険ではなく,インターネット販売による副作用被害が問題になるのであって,それが対面販売であれば防げるものであるか,また,インターネット販売の利便性をも減殺するほどのものであるかが問題とされるべきである。
 実際,インターネット販売で購入された医薬品の使用により副作用が生じたことが報告されている事例は1件のみであり,しかもその事例についてはインターネットを通じた販売方法に起因するものか否かの調査が行われていない。適切な情報提供がされていれば副作用を予防できた可能性がある例とされているものも,ごく稀なケースであり,しかも,インターネット販売を禁止することによって防げる件数は不明であり,これが規制の根拠になるとはいえないし,添付文書が分かりにくいというアンケート結果もインターネット販売を禁止することの根拠とはならない。そして,販売段階での情報提供があっても発症が避けられない副作用も多く,対面販売によりどれだけの副作用が防げるかについてまともな分析はされていない。そもそも,本件規制の対象は,一般用医薬品であるから,副作用が発生してもそれほど深刻なものではないことが前提とされ,副作用のリスクは決して大きくはない。
 なお,被告は,立法事実の不存在を原告らが論証すべきであると主張するが,これは,消極目的の規制については妥当しない。仮に,原告らが論証すべきであるとしても,インターネット販売の販売方法に起因する副作用被害の事例が報告されていないというだけで,立法事実が存在しない論証としては十分である。
 これらによれば,本件規制を基礎付ける立法事実は存在しない。

c 被告は,対面販売の優位性を強調するが,前述のとおり,そもそも,対面の原則の定義・根拠が,明確に確立されておらず,改正法及び改正省令の立案の過程で十分に議論された形跡もない。
 また,以下のとおり,情報提供手段として,インターネット販売と対面販売にはそれぞれ長短があり,一方的にインターネット販売のみにマイナス点があるというわけではなく,インターネット販売が対面販売と比較して情報提供において劣るとはいえない

(a)(T) 対面で医薬品を購入する際でも,対面販売の特徴である柔軟で双方向的な会話をすることによって情報提供が行われることが常に必要なわけではなく,実際の販売の際にはそのような会話・説明は行われないのが普通である。同様に,対面販売の特徴とされる,対面により購入者側の情報を的確に把握して適切な対応を採ることができることについても,それが可能なのは例外的な事例に限られる。
 インターネット販売では,インターネット等を通じて薬剤師が組織的に丁寧な質問をし,情報を収集して販売することができる。この際,丁寧に質問項目を作り,チェックボックスを用いるなどして,質問に答えなければ購入できないようにすれば,口頭で行うよりも正確かつ統一的であり,購入者のすべての情報を把握できるようにすることができ,確実に履行される。また,インターネット販売では,質問への回答を通じて,店舗での販売よりも多くの副作用情報を得ることができる。インターネット販売では,いわゆる指名買いにより不適切な医薬品を購入する危険性が高いという点は観念的な憶測にすぎず,むしろ,同種の医薬品を比較検討でき,電話や電子メールを利用して薬剤師からの助言を得てより適切な医薬品を選択することが可能である(なお,テレビ電話を使えば,対面で双方向的なやり取りも可能となる)。また,インターネットを通じて医薬品を購入しようとする者は,もともとそれなりに理解力の高い者であり,高齢者であっても理解力があるので,高齢者に繰り返し説明をする必要があるような場合は想定し難い。
 さらに,インターネット販売では,視覚障害者,聴覚障害者,対人恐怖症その他の理由で他人と向き合うことが困難な消費者に対しても,分け隔てのない情報提供が可能である。
 対面販売では,製品や添付文書を示しながら説明が行われるとされるが,箱を開けて箱の中の添付文書を示すことは通常行われず,外箱を示すだけでは余り意味がない。これに対し,インターネット販売では,店舗では見られない医薬品の箱の中に入っている添付文書をインターネットの画面に購入前に表示させることもでき,購入後に注意事項を何度でも閲覧することも可能である。
 対面販売において丁寧な情報提供のために時間を掛けることは,販売者と購入者に過大な負担を課すことになり,現実には困難であると考えられるし,理解力に問題のある例外的な人を基準に必要以上に詳しく情報提供がされることになれば,かえって,重要な点を聞き損なうおそれがある。これに対し,インターネット販売では,使用者が,自分の時間のあるときにじっくりと必要な情報を得ることができ,情報収集に積極的であると考えられる。

(U) 対面販売では,どれだけの説明が行われるのかにつき,対応する薬剤師等により個人差があり,制度的な保障がなく,説明の一部をし落とす可能性もあるし,また,無数にある薬の副作用について適切に把握していない場合もある。さらに,実際の説明内容が,医薬品の外箱に記載された説明の繰り返しにとどまることが多く,大勢の薬剤師に真に的確なアドバイスをする能力があるかどうかは疑わしいし,登録販売者は,その資格取得のハードルは低く,的確な判断ができるほど有能な資格ではないはずである。これに対し,インターネット販売では,上記のとおり統一的な情報提供が可能であり,専門家の資質を問わず確実な情報提供が可能である。

(V) 自分の既往症を話したがらない人が多いことからすると,使用者の身体の調子を申告させ,発生する可能性のある副作用を注意喚起することは店舗では困難な場合が多いし,対人恐怖症,人に買っているところを見られたくない薬を買う消費者などは,対面販売では,情報提供を拒むことが予想され,安全性が確保されないことになる。また,このような場合にプライバシー侵害につながるおそれもある。これに対し,インターネット販売では,既往症等について他人に知られるおそれがないことから,プライバシーの問題も少なく,使用者に関する情報が確実に提供される。

(W) 新薬事法施行後においても,薬局や店舗による医薬品販売の状況や情報提供の態様に変わりはなく,ドラッグストアでは情報提供はほとんど行われていないのが実情である。

(b)(T) 購入者が虚偽の申告や誤った申告をする場合には,対面販売に当たる薬剤師や登録販売者であってもそれを見抜くことは困難である。

(U) また,医薬品に関する相談応需についても,夜間等には即時の情報提供が期待できないだけでなく,薬局や店舗に対面で相談できる余裕があるのは限られた場合であり,かつ,薬剤師や登録販売者に相談する場合でも,結局は医師の診察を求めるべきことになる。これに対し,インターネット販売では,夜間等の相談応需についても,ある程度の対応は可能である。

(V) そして,顔の色を見て購入者の情報を収集するのは診察行為になり,薬剤師がそのような行為を行うのは,医師法違反になるとも考えられる。

(W) さらに,対面販売では,情報提供のやりとりをすべて書面にすることは容易ではなく,書面としては簡単な説明書が交付されるにとどまり,後日,どのように情報提供が行われたかを検証することは困難である。これに対し,インターネット販売では交信の記録をきちんと保存させることにより,後日,問題が発生したときの検証もできるし,緊急連絡も容易であり,また,規制の実効性も高い。

(X) 被告は,資格を有している者が情報提供を行っていることの確認が容易かどうかという点を指摘するが,対面販売でも名札を偽ったりすることはあるので,情報提供を行っている者が実際に有資格者であるかどうかの確認は難しい。インターネット販売でも,情報提供のルールの作成者,注文に対してその薬を販売してよいかどうかを判断するポスト及び相談応需の担当者を薬剤師として社内の勤務体制を作らせれば,無資格者による対応を防ぐためのものとしては十分であると考えられる。

(c)(T) 新薬事法によれば,第二類医薬品はコンビニエンスストアで登録販売者による販売が可能であるが(新薬事法36条の5),第二類医薬品の販売の際の情報提供は努力義務にすぎない(新施行規則159条の16)ので,対面による情報提供がされるとは限らず,また努力義務の遵守を徹底させることは不可能であり,その実効性確保の方法はない。

(U) 第一類医薬品についても,購入者が説明不要との意思を表明すれば,説明なしで販売することが認められている(新薬事法36条の6第4項)。この点につき,被告は,専門家が対面により購入者の状態を把握し,場合によっては説明を要しないとする理由等も確認した上で初めて情報提供義務が解除されると主張するが,そのような解釈は,法律の文言にない厳格な要件を追加するものであって,法治主義に反し,許されない。

(V) 医薬品の購入者が使用者の代理人であるような場合に,専門家が使用者の属性,状態等を把握して必要な情報を使用者に伝えることは不可能あるいは著しく困難である。家族や会社内で長期間かけて消費される置き薬の場合も,同様である。インターネット販売では,医薬品の使用者本人が,電話や電子メールで薬剤師と直接やりとりをすることができ,使用者以外の者が薬局や店舗に赴いた場合よりも的確で安全な情報提供が可能である。

(W) 旧薬事法35条の特例販売業の許可を改正法の施行前に得た業者が,同法附則14条により,本件規制を受けずに医薬品を通信販売しているが,上記附則では,「当分の間」,特例販売業の業務を行うことが認められており,終期が定められていない。また,厚生労働省は,このような通信販売を規制していない。

(X) 既存配置販売業者については,年間数百件の苦情,十数件の副作用報告及び重篤な副作用が発生した事実があったにもかかわらず,改正法附則10条において,第二類医薬品の配置販売を登録販売者の資格を要せず事実上無期限でできることとされている。また,新施行規則159条の18において読み替えて準用する同規則159条の17によれば,購入者等において何か疑問等があるたびに,配置販売業者が情報提供のために遠隔地まで逐一来訪することが想定されているが,そのようなことが現実に行われるとは考えられない。

(d) なお,すべての副作用を防止するためには,禁忌事項と使用上の注意を,すべての使用者に対し,説明して確認しなければ意味がないことになるが,それは,販売者と購入者に過大な負担を課すことになるし,現実的でもない。仮に,購入者が医薬品について自分で判断できないことがあれば,購入をやめるか,外箱をしっかり読んで判断するか,丁寧な説明を求めるかすればいいのであり,消費者にもその程度の主体性は求められる。情報提供の必要性の基準は,通常の消費者が誤解するおそれがあるかどうかでなければならない。理解が困難な一部の消費者のために,大部分の理解力のある通常の消費者に過大な負担を掛けるべきではない。

d(a) 離島や山村の住民,出歩くことが容易でない障害者・高齢者,要介護者の家族,子育て中の親,介護中の者,引きこもりの者(外見上の問題,対人恐怖症等)及びプライバシー上の問題のある者(周囲の人間に知られたくない疾患を抱えている者)等は薬局,店舗,配置販売業から適切な医薬品を購入することは困難であり,インターネット販売が禁止されると必要な医薬品が入手できず,生存権が侵害されることになる。また,インターネット販売業者では多種の品揃えを確保して,消費者の希望に適時・適切に答えることができるし,流行性の疾患の感染拡大防止のために外出が抑制される事態になったような場合もインターネットで買う方が安全であり,このような場合に,配置販売業者で対応できるとはいえない。さらに,配置販売よりもインターネット販売の方が消費者に便利であり,リスクもない。そして,インターネット販売を利用すると,薬局に行くよりも購入が便利であるので,早期に医薬品を入手して治療ができるメリットもある。

(b) 改正法及び改正省令により,一方では規制緩和がされて一般用医薬品の販売に多くの新規参入が検討されている反面,医薬品のインターネット販売を行う多くの業者の営業に重大な影響が出ることが予想され,これは明白な人権侵害であるが,この点に対する配慮はない。現に,新薬事法施行後,原告らは,第二類医薬品の購入申込みの多くを断らなければならず,売上額の減少等による大きな損害が生じている。

(c) 加えて,本件規制により,医薬品の闇取引が横行するおそれもあり,そうなってしまった場合の取締りは困難である。

e 医師による処方を要するほどでもない医薬品であれば,薬剤師から十分に説明を受け,適切に判断して使用すれば問題はなく,説明の方法として,使用者が,薬局で薬剤師から面前で質問され,説明を受けるなら問題はないとされているところ,インターネット販売においても,薬剤師がインターネットを通じて購入者に質問をし,情報提供をすること,また,そのような方法を省令等で義務付けることは可能である。現に原告P1は,平成18年1月ころから,購入者が医薬品を購入する前に薬剤師からの質問にウェブ上で回答し,その回答内容に対して,薬剤師からの服薬説明をウェブ上で行うことによって,使用すべきでない医薬品の購入を防ぐとともに,購入者に対して適切な使用を促すための,インターネットによる服薬機能説明を導入し,また,NPO法人P4協会(以下「P4」という。)は安全な情報提供の在り方についての自主規制案を検討し,平成18年6月にはこれを厚生労働省に提出し,その後,平成20年11月及び12月にも内容を改訂した上で公表しているほか,より広く業界全体としての安全策を実現するため,P5株式会社と提携して策定した「一般用医薬品のインターネット販売における安全策について(業界ルール案)」を第二次検討会に提出し,同検討会においてインターネット販売と店頭での販売に共通した適切な情報提供の方法を定めるべきことを提案した。このように,情報提供等の方法を工夫して,省令ですべての一般医薬品の販売業者に義務付けるとか,副作用の表示を目立つようにし,かつ,説明書きを丁寧にするなど医薬品の外箱の表示の仕方を規制するとかいう方策を採った場合においても,薬局や店舗における対面販売より定型的に危険であり,医薬品の使用に伴う弊害を防止できないというのでなければ,一律にインターネット販売を禁止することは過大な規制である。改正省令(本件改正規定)は,上記のようなより制限的でない方法についての検討をすることなく,実証的な根拠なしにインターネット販売の一律の禁止を定めたものである。第一次・第二次検討会等の省令の検討過程においては,「インターネットは危険だから」といった漠然とした議論がされているにすぎず,インターネット販売における情報提供の義務付けの方法等について立ち入った議論は全くされていない。
 以上のとおり,対面での情報提供の義務付けが必要不可欠とされているのが本件規制の趣旨でありながら,実際には情報提供が担保されない法設計となっており,その矛盾は甚だしい。また,インターネット販売によって発生するリスクは考えられないばかりか,上記各事情によれば,仮に,インターネットによる販売方法が何らかの副作用を生ずると仮定しても,情報提供等の方法を工夫して義務付けるとか,医薬品の外箱の表示の仕方を規制するとかいうよりゆるやかな規制手段を採らず,第一類・第二類医薬品についてインターネット販売を全面禁止することは,到底,必要性・合理性のある規制とは考えられず,違憲である。

(エ) 再改正省令は,郵便等販売に関する経過措置(改正省令附則23条47ないし28条。以下「郵便等販売に関する経過措置」という。)を設けているが,これによっても,改正省令の違憲性・違法性が除去されるものではない。すなわち,離島居住者や継続購入者に限定した郵便等販売に関する経過措置に合理性はなく,インターネット販売を行っている業者に対する過度の規制であって,これらの業者や消費者に対する救済措置にならないことに変わりはない。
 さらに,上記継続購入者の経過措置の要件を満たさないにもかかわらず郵便等販売が行われている例があり,対面販売の原則が現実には守られていない。

(オ) 以上によれば,本件規制を定める本件改正規定は,いかなる審査基準を採ったとしても,憲法22条1項に違反し,違憲である。

ウ.争点(2)ウ(省令制定手続の適法性)について

(原告らの主張の要旨)

(ア) 改正省令は,改正省令案に対する意見公募手続(パブリックコメント)での反対意見が多かったにもかかわらず,それを公表せず,また,意見を何ら考慮することなく制定されたもので,行政手続法42条に反する。
 また,再改正省令は,やむを得ない理由がないにもかかわらず意見公募手続(パブリックコメント)の期間を短縮して行われ,期間短縮の理由も明示していない点で,行政手続法40条1項に違反して制定されたものである。なお,再改正省令の意見公募手続(パブリックコメント)においても,本件規制に反対する意見が圧倒的に多かったが,そのことが考慮された形跡もない。

(イ) 改正省令は,これまで許容されていたインターネット販売を,インターネット販売を行う事業者のみを対象として禁止するものであり,立案の過程で,当該事業者に対し,経過措置を設けたり,協議を行い,適切な指導をすることなどによって当該事業者の地位を不当に害することのないように配慮することが可能な場合にはそのような配慮がされるべき義務があるというべきところ(最高裁平成12年(行ツ)第209号,同年(行ヒ)第206号同16年12月24日第二小法廷判決・民集58巻9号2536頁参照),その制定に際しては,このような協議や配慮がされていないのであるから,違法である。

(ウ) 本件規制が検討された検討部会,第一次検討会及び第二次検討会(以下,両検討会を「第一次・第二次検討会」と総称する。)においては,インターネット販売の規制の在り方や規制の憲法上の根拠・限界に関するまともな議論はなく,特に検討部会及び第一次検討会では,構成員の選定に問題があり,偏った議論がされた。
 検討部会には,インターネット販売を行っている業者は参加しておらず,インターネット販売禁止の議論が初めて行われた平成16年6月23日の検討部会では,インターネット販売禁止についてはほとんど検討されなかったのみならず,個人輸入の問題や未承認医薬品等の違法販売などと,適法な薬局・店舗による医薬品のインターネット販売とを混同した発言が頻繁にされ,その後の検討部会においても,重大な事実誤認に基づく議論やずさんな議論が繰り返された。
 第一次検討会の構成員となった医薬品販売事業者は,通信販売とは潜在的に競合する関係にある医薬品販売団体の関係者に限られ,P4は,第一次検討会への委員としての参加を求めたが,認められなかった。第一次検討会は,厚生労働省からの天下りを受け入れている団体や多額の政治献金をしている団体など通信販売と競合する業界団体の利権確保の場であった。また,第一次検討会には,憲法・行政法に関する専門家の参加もなかった。第一次検討会の議論はあいまいで,結論先取りで,まともな理由が付された議論はされていない。第一次検討会第5回会議で,原告P1がP4の自主規制案について策定中であると返答したのは,法令にのっとる形でのルールは策定中という意味であり,原案はその当時に完成していて,厚生労働省にも提出しており,公開も検討したが,同省担当者から公開は慎重にするように勧められ,公開を取りやめたという経緯がある。
 第二次検討会は,座長が意見をまとめることができず,厚生労働省が既定方針どおり押し切ったものであり,インターネット販売については禁止ありきで,情報提供はどうあるべきかという議論はなかった。
 以上の点において,検討部会及び第一次・第二次検討会における議論にはその過程での手続的な瑕疵に起因する不備があるから,改正省令中の本件改正規定の制定手続は違法である。

(被告の主張の要旨)

(ア) 行政手続法42条に定める「考慮」とは提出意見の内容をよく考え,定めようとする命令等に反映すべきかどうか,反映するとしてどのように反映すべきかについて適切に検討することであり,当該提出意見の内容を定めようとする命令等の内容に反映しなければならない義務までが課されるわけではないから,改正省令の公布は,行政手続法42条に違反しない。
 また,再改正省令案に関する意見公募手続(パブリックコメント)については,その開始日から30日以上の意見提出期間を設定すると,改正法の施行日である平成21年6月1日に間に合わなくなることを勘案して,意見募集期間を1週間に設定したものであるから,やむを得ない理由に当たり,行政手続法40条1項に違反しない。なお,行政手続法42条の提出意見の考慮は,提出意見の内容に着目して行われるものであって,その多寡に着目するものではないから,反対意見の数や割合の多さをもって行政機関に命令等を見直す義務が課せられるものではない。

(イ) 原告らの主張に係る条例の制定過程における関係業者との協議及び配慮の義務に関する最高裁判決(前掲最高裁平成16年12月24日第二小法廷判決)は,本件とは明らかに事案を異にする。

(ウ) 検討部会は,様々な専門分野出身の委員20名により構成され,議論においては,対面販売による情報提供の必要性が指摘され,対面販売の優位性が示されている。また,取りまとめられた意見にも,販売方法については対面販売の原則が挙げられ,対面販売の原則が必要とされる理由についても,インターネット販売に対する優位性を含め,明確に示されている。
 第一次検討会においては,情報提供等の内容・方法や情報提供等を適正に行うための販売体制等について検討が行われ,原告P1代表者及びP4役員からのヒアリング等も行った上で,第一類医薬品については,情報通信技術を活用した情報提供による販売は適当でないとされ,第二類医薬品については,販売時の情報提供の方法について対面の原則が担保できない限り,販売することを認めることは適当でないとされた。そして,この検討結果に基づき,改正省令案は作成された。
 第二次検討会においては,薬局・店舗等では医薬品の購入が困難な場合の対応方策等,インターネット等を通じた医薬品販売の在り方等が検討事項とされ,その議論を踏まえて,再改正省令案が策定された。

(次回へ続く)

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2012年01月05日

最新下級審裁判例

東京地裁民事第2部判決平成22年03月30日

【事案】

(前回からの続き)

5.争点に関する当事者の主張の要旨

(1) 争点(1)(本件無効確認の訴え及び本件取消しの訴えの適法性)について

(原告らの主張の要旨)

ア.原告らは,改正省令(本件改正規定)に処分性が認められることを前提として,@本件無効確認の訴えについては,改正省令(本件改正規定)が無効であることの確認を求める抗告訴訟である処分の無効確認の訴え(行政事件訴訟法3条4項)として提起するとともに,A本件取消しの訴えについては,改正省令(本件改正規定)が違法であるが無効とまではいえないと解される余地があり得ることから,そのような場合に備えた抗告訴訟の予備的な訴えとしての処分の取消しの訴え(同条2項)として,改正省令(本件改正規定)の取消訴訟を提起するものである。
 法令は,一般には一般的・抽象的なものであるから,処分性は認められないが,それ自体で具体的な権利義務に直接の法律的な変動をもたらす性質を有する法令は,処分性を有すると解すべきである。
 改正省令(本件改正規定)は,これまで許可を得た上で適法に行われてきた営業行為(第一類・第二類医薬品のインターネット販売)を,何らの行政処分を介在させることなく,直接全面的に禁止するものであるから,上記営業行為に対する許可を取り消したものと同視でき,行政の外部にいる者の権利義務を直接に定めるという行政処分の要素を有する。また,本件規制は,実質的には上記営業行為を行ってきた限られた業者を対象とするものであり,一般的な規制とはいえない。したがって,改正省令(本件改正規定)には処分性が認められるべきである。
 また,対世効や仮の救済の手続において当事者訴訟では不十分な点があることからも,抗告訴訟が認められるべきである(後記イ参照)。

イ.無効等確認の訴えの要件に関する行政事件訴訟法36条の解釈についてのいわゆる二元説に立てば,「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者」については,「現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り」との要件は必要とされないと解すべきであるから,本件無効確認の訴えは,行政事件訴訟法36条の要件を当然に充足することは明らかである。
 また,この点を措くとしても,無効等確認の訴えの判決には対世効があると解すべきであること,当事者訴訟における仮の救済の手続の存否が不明確であることからすれば,当事者訴訟では効果が不十分な場合があり,裁判所の各審級において各訴訟類型の適法性に関する判断が分かれた場合等の救済を図る観点からも,当事者訴訟が適法とされる場合であっても,「現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができない」場合に当たると解され,この補充性の要件の要否にかかわらず,当事者訴訟と抗告訴訟としての無効等確認の訴えの両方が適法とされるべきである。したがって,本件地位確認の訴えと本件無効確認の訴えを単純併合して提起するものである。

(被告の主張の要旨)

ア.原告らが無効確認及び取消しを求めている省令は,立法行為としての性質を有し,国民の法律上の地位に対して直接具体的な影響を及ぼすものではなく,特定の者の具体的な権利義務ないし法律上の利益に直接的な影響を及ぼすものでもないから,処分性は認められない。

イ.なお,本案訴訟が適法でなければ仮の救済の手続は問題とならないのであるから,本案の適法性を判断するに当たり,仮の救済制度について考慮する余地はない。

(2) 争点(2)(本件改正規定の適法性・憲法適合性)について

ア.争点(2)ア(委任命令としての適法性)について

(被告の主張の要旨)

(ア) 法律による行政の原理によれば,行政の内容はそのすべてをあらかじめ法律で詳細かつ具体的に規定しておくことが望ましいが,実際には複雑で専門・技術的な現代行政の諸施策の内容を法律で細部まで規定しておくことは困難であるため,法律自体には,実施すべき行政施策の目的や要件・内容等につき大綱的な定めを置くにとどめ,細目的な事項や技術的な事項は,それぞれの担当行政部局がその専門的な知見に基づいて定めるよう,行政権に命令の定立を委任する行政立法が行われてきた。そして,行政立法の専門性・技術性等にかんがみると,委任を受けた行政機関が,どの時点において,どのような内容の省令等を制定するかについては,法律の委任の範囲を逸脱しない範囲において,その専門的・技術的な判断にゆだねられているのであって,行政機関には省令等の制定について一定の裁量権が与えられているというべきである。そして,その委任の範囲は,授権法の文言だけではなく,当該制度の制定の経緯やその沿革等を考慮して,授権法の趣旨を解釈して判断すべきであり,本件においても,新薬事法が何をどの範囲で省令に委任する趣旨であるかは,当該規定の制定経緯,医薬品販売に関するその他の規定とその趣旨,さらには新薬事法全体の趣旨・目的を総合して判断されるべきである。

(イ) 改正省令中の本件改正規定により設けられた新施行規則中の本件各規定のうち,15条の4は新薬事法36条の5及び36条の6,159条の14は新薬事法36条の5,159条の15第1項1号は新薬事法36条の6第1項,159条の16第1号は新薬事法36条の6第2項,159条の17第1号及び第2号は新薬事法36条の6第3項の規定の委任をそれぞれ受けたものであって,本件各規定にはいずれも法律の授権規定が存在する。

(ウ) 改正法の成立に至る経過は,次のようなものである。すなわち,@制度と実態の乖離が生じ,医薬品の適切な選択及び適正な使用が担保されるように機能していなかったという旧薬事法の下の実状を踏まえ,医薬品の販売主体,客体,販売方法等を全般的に見直すこととし,Aこれを出発点として,検討部会においても,医薬品の特質にかんがみると,専門家が対面で情報提供し,販売することが極めて重要であり,他方,すべての店舗に薬剤師を常駐させ,すべての医薬品について情報提供を義務付けることはかえって実効性をなくすおそれがあることから,新しい医薬品販売資格を創設し,医薬品もリスクに応じて分類し,その分類に応じた情報提供及び販売の規制を行うことで柔軟な対応をすべきこととされ,B改正法案も検討部会で集約された意見に沿った趣旨のものとされ,医薬品は対面販売によることが重要であるという基本的発想に立って制度の骨格が定められ,C国会においても,対面販売の重要性が指摘され,検討部会の部会長から,改正法案は検討部会報告書及び検討部会における議論の結果を十分に踏まえたものである旨が説明され,政府参考人はインターネット販売には慎重な対応が必要である旨の答弁をし,厚生労働大臣は改正法を受けて省令において対面による情報提供を義務付ける旨の規定を設ける旨の答弁をし,こうした答弁を前提に質疑が行われ,Dその上で,検討部会の取りまとめた意見を踏まえ,医薬品の販売主体,客体,販売方法という医薬品販売の全般についての規定を改正し,制度の骨格を定め,店舗販売業という新しい許可の種類を創設し,店舗販売業者については,店舗における販売に当たり,リスクの軽視できない第一類・第二類医薬品について専門家による積極的な関与を義務付けるとともに,制度全般につき具体的な定めを省令に委任する内容で改正法案が可決されたというものである。したがって,新薬事法25条,36条の5及び36条の6の規定の文言・内容のほか,こうした薬事法全体の改正経緯,立法者の意思,成立した新薬事法の医薬品販売に関する制度全体の仕組みやその趣旨などを総合的に考慮すると,新薬事法は,リスクの軽視できない医薬品については,専門家が店舗において購入者と対面し,その属性に応じて臨機応変に適切な情報を提供して販売することが重要であるとして,店舗販売業を,原則として「店舗において」医薬品を対面販売することが予定される業態と考えて創設したものであることは明らかであり,したがって,新薬事法が,店舗販売業者に対し,第一類・第二類医薬品について,来客との対面を前提に情報提供及び販売を義務付け,郵便等販売を原則として禁止し,その上で,個別具体的な販売方法等に関する諸規定についてはその定めを省令に委任する趣旨であることは明らかである。
 なお,改正法案が検討部会報告書に依拠した内容となっており,その内容・趣旨は国会審議において十分に審議されたことからすれば,新薬事法の趣旨・目的を検討する上で,検討部会報告書の内容は当然に考慮されるべきものである。
 そして,医薬品の販売方法に関しては,新薬事法に基づき,新施行規則において,医薬品の販売は第三類医薬品について郵便等販売を行う場合を除き対面で行う旨(新施行規則159条の14),情報提供の具体的な方法については対面で行う旨(新施行規則159条の15及び159条の16)及び郵便等販売については第三類医薬品に限って認める旨(新施行規則15条の4第1号)を定めたものであるところ,これらが対面での情報提供及び販売を基本とすべきとする立法者の意思あるいは新薬事法の趣旨に合致するものであることは明らかである。
 よって,改正省令(本件改正規定)は,新薬事法の委任の趣旨に沿うものであり,その委任の範囲を逸脱する無効なものではない。

(エ) 原告らは,新薬事法の文理から対面販売の趣旨は読み取れないとするが,これは,新薬事法の規定を個々に分断して硬直的に解釈したものであって相当ではない。上記(ウ)のとおり,新薬事法の主眼が専門家に積極関与させる対面販売を原則とすべきというところにあることからすれば,新薬事法25条の「店舗において」という文言は,店舗という場所における対面販売を原則として位置付けていることの表れというべきであり,新薬事法36条の6第1項が電磁的方法による情報提供を定めていないのは情報通信技術を利用した情報提供を許さない趣旨であることは明らかである。こうした条文相互の関係や立法経緯等を総合すれば,新薬事法25条,36条の5及び36条の6の規定が,店舗販売業者において,第一類医薬品及び第二類医薬品の店舗における対面での情報提供及び販売を義務付ける趣旨であり,これを前提として具体的な販売等の方法を省令により義務付ける趣旨であることも明らかであるというべきである。以上によれば,新薬事法25条,35条の5及び35条の6の各規定は,郵便等販売を許容するものではなく,改正法の立法経緯や上記の規定の趣旨によれば,新薬事法37条1項もまた,郵便等販売を許容するものではないと解すべきである。原告らは,新薬事法36条の5は販売従事者に関する規定であり,新薬事法36条の6は情報提供等に関する規定であって,インターネット販売を禁止する趣旨は読み取れない旨主張するが,販売時の情報提供に対面が要求されれば必然的に販売方法も対面販売になるのであり,販売時の情報提供の制限は,販売方法の制限に直結するので,この点に関する原告らの主張は失当である。なお,新薬事法36条の5は,販売従事者について規定した上で具体的な販売方法についても厚生労働省令に委任するものである。
 また,原告らは,第一類医薬品については,その購入の際に購入者が説明を不要と申し出れば,情報提供義務に関する規定が適用されなくなる点(新薬事法36条の6第4項),第二類医薬品については,新薬事法上,情報提供の努力義務が定められているにとどまる点,いずれも,使用者以外の者による購入が認められている点を指摘するが,新薬事法においては,専門家が店舗において対面で購入者の状態を直接確認し,医薬品のリスクに応じて情報を提供した上で販売することが基本的な理念として重要とされているといえ,これに対し,郵便等販売の方法では,そもそも専門家が購入者の状態を直接確認することすらできないのであるから,こうした前提を欠いたまま,上記の各点のみを取り上げて新薬事法が郵便等販売を禁止する趣旨を含まないと解することはできない。

(原告らの主張の要旨)

(ア)a 憲法で保障された国民の権利を制限し,国民に義務を課すには,法律の定めが必要であり,各省大臣が定めるにすぎない省令では法律の明確な委任がなければ義務を課し,権利を制限することはできないところ,新薬事法には,旧薬事法で認められていた第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止することを省令に委任する趣旨の授権規定は見当たらない。本件規制は,これまで認められてきたインターネット販売を禁止するものであるから,法律の条文による明確な授権が必要である。被告は,本件改正規定の根拠となる新薬事法の規定は36条の5及び36条の6であると主張するが,新薬事法36条の5は,販売に従事する者についての規制であって,対面販売にも触れておらず,インターネット販売を禁止する省令の根拠とはなり得ないし,同法36条の6第1項は第一類医薬品についての薬剤師による情報提供の義務を課し,同条2項は第二類医薬品についての薬剤師等による情報提供の努力義務等を課し,同条3項は購入者からの相談に応ずる義務を課すものであるところ,これらの規定は,情報提供の方法を授権しているにすぎず,情報提供の方法にとどまらない販売方法の規制に該当するインターネット販売の禁止を授権しているとはいえない。新薬事法には対面販売の原則は規定されていないし,「対面」という言葉も用いられず,対面販売の定義はされていない。新薬事法25条は店舗販売業の定義を「店舗において」販売等することとしているが,これは,インターネット販売や電話注文による配達販売を違法としていなかった旧薬事法37条1項の「店舗による」と同義と解すべきであり,この文言が郵便等販売を禁止する趣旨を含むということはできず,新薬事法25条が許可したことを禁止するためには,同法36条の5及び36条の6により明確な規定が必要であるし,また,特に定めがない以上,薬事法36条の6第1項が電磁的方法による情報提供について規定していないからといってそれが許されないとの趣旨であると解すべきではない。新薬事法中の本件各規定の委任規定についての厚生労働省の説明は,不正確かつあいまいであって,確実な説明がされたのはかなり後になってからであることからすれば,厚生労働省が,薬事法の改正の際,第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止する意図を有していなかったことがうかがわれる。

b 被告は,法律の省令への委任の範囲は,単に改正法の該当条文の文言・内容のみならず,当該規定の制定経過,医薬品販売に関するその他の規定とその趣旨,さらには改正法全体の趣旨・目的を総合して判断されるべきであると主張するが,これは,茫漠として広すぎるのであり,国会が唯一の立法機関であり,委任は白紙委任であってはならず,具体的でなければならず,少なくとも,権利自由を制限する場合には授権法は明確でなければならないという憲法原則からみて相当ではない。
 また,立法者の意思といえるためには,条文として明確な形で現れるか,少なくとも提案理由又は附帯決議で現れている必要があり,単に国会における議論の過程や答弁に現れているだけで,条文の形になっておらず,提案理由又は附帯決議にも現れていないものを立法者意思とするのは,法律の解釈の限界を超え,法律による行政の原理に反する。

(イ) 改正法及び改正省令の制定過程においても,新薬事法が第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止する趣旨を省令に委任したことをうかがわせる事情は見当たらない。

a 国会の審議過程をみても,新薬事法が第一類・第二類医薬品のインターネット販売を禁止する趣旨であることは読み取れない。まず,法案の提案理由では,対面販売の義務付けへの言及はない。国会審議においても,平成18年4月13日の参議院(厚生労働委員会。以下この項において同じ。)の政府答弁でインターネット販売については慎重に検討すべきであるという認識を厚生労働省が有しているという説明はされているが,改正後の薬事法の規定においてインターネット販売が禁止されるという趣旨の説明はなく,厚生労働大臣も実効ある情報提供体制の整備が主眼であると述べるにとどまる。また,同月14日の参議院の議事では,厚生労働省は,インターネット販売禁止を法律の条文に書き込んだとは述べていない。同月18日の参議院の議事では,厚生労働大臣が,予定される省令の説明をしているが,インターネット販売を禁止できるとの説明はしておらず,インターネット販売業者が第一類医薬品を販売している事案について,実態を確認の上,注意喚起や指導を行うこととしたい旨述べるにとどまる。なお,同日の厚生労働大臣の「対面販売により情報提供することを求めることになっております」との答弁は第一類医薬品についてのものであり,そもそも,このような片言隻句を根拠に授権法の趣旨を読み取るのは強引である。また,同年6月7日の衆議院(厚生労働委員会)における答弁によれば,この時点では,厚生労働省は慎重な対応が必要であると考えていたというにすぎず,第二類医薬品のインターネット販売禁止は念頭に置かれていない。そうすると,少なくとも第二類医薬品のインターネット販売禁止を正当化するためには,省令制定の段階で,慎重に検討した結果,利便性やIT技術活用により対面販売に準じた対応も可能として規制を緩和すべきであるという意見を排斥した理由及びそれが薬事法の下の省令の立法裁量の範囲内であることが示される必要があるが,それは全くされていない。参考人の意見中に,インターネット販売の禁止に関するものがあるが,参考人の意見は立法者意思とは異なるし,参考人の意見も一致しているわけではないから,その一部のみを立法者意思とするのは相当ではない。厚生労働省が改正法成立後に作成した改正法の概要にもインターネット販売を禁止することに結び付く記載はない。

b(a) 厚生科学審議会における審議は立法過程そのものではないから,同審議会等の議論の有無や内容が法律による授権の有無に直結するわけではないし,検討部会において,インターネット販売の規制の在り方や規制の憲法上の根拠・限界に関するまともな議論はなかった。

(b) 厚生労働省は,遅くとも平成16年9月の段階で,ドイツでは医療保険近代化法の成立により医薬品のインターネット販売が認められていたことを把握していたにもかかわらず,同年6月8日に開催された検討部会において,ドイツにおいて薬局からの医薬品のインターネット販売が禁止されている旨記載された資料を提示し,また,平成17年2月10日に開催された検討部会においては,インターネット販売が禁止されている旨の記載を資料から削除し,ドイツにおいて郵送による医薬品販売禁止の制度に変更があったことを認識していたはずであるにもかかわらず,インターネット販売が禁止されているかのように誘導する旨の委員の発言を是正せず,検討部会の議論を誤った方向に導いた。検討部会や国会で正しい情報が提示されていれば,議論の結果は異なっていた可能性が高い。さらに,内閣法制局における法案審査の際も,インターネット販売を禁止する措置の定めを省令に授権する趣旨は資料に記載されておらず,その前提で法案審査がされた形跡はない。また,厚生労働省が作成した国会における改正法案の想定問答集にも,インターネット販売が改正後の薬事法で禁止されるとか,これを省令で禁止するとかいう内容の記載はない。

c 改正法による医薬品の販売に関する規制において,第二類医薬品の販売については,情報提供が単なる努力義務とされており(同条2項),法的な拘束力のない努力義務を根拠として,適切な情報提供の可能な郵便等販売を禁止するのは不均衡である。

イ.争点(2)イ(本件規制の憲法適合性)について

(被告の主張の要旨)

(ア)a 経済的自由権の規制立法は,精神的自由権の規制立法とは異なり,憲法適合性の判断の在り方に関し,合憲性推定の原則が働く。そして,経済的自由権の規制立法に関する憲法適合性の判断について,規制目的により憲法適合性の判断の在り方に差が生じることに一定の合理性は認められるものの,規制目的が積極目的であるか消極目的であるかの判別が難しい場合があり,両目的が混在する場合やいずれかに割り切れない場合も十分に想定されることなどからすれば,規制目的の判別だけによって憲法適合性の判断の在り方が決定されると考えるのは不適切である。規制目的を判別することは,司法における憲法適合性の判断の在り方を決する上で,そうした規制目的に出た立法政策に対して司法がその判断能力の観点からどの程度立法事実に踏み込んで判断することができるかをみる要素として考慮することに意義があるが,経済的自由権の規制立法について合憲性が推定されるのは,健全な民主的手続を経て制定された経済的自由権の規制立法は,通常,規制により得られる利益と制約される利益との調整が合理的に図られたものと考えられるから,その判断を原則として尊重すべきとするところに本質的な理由があるのであって,裁判所の判断能力に限界があることに本質的な理由があるわけではない。
 そして,健全な民主的手続を経て制定された経済的自由権の規制立法は,規制により得られる利益と制約される利益との調整が合理的に図られた結果であると推定される以上,その判断は尊重されるべきであり,ただ,裁判所は,規制目的のほか,法律で明らかにされた規制の対象や規制の具体的な方法,制約される権利の内容・程度等からみて利益調整の合理性に疑義があるような場合には,合憲性が推定されるとしつつも,より慎重に憲法適合性を判断すべきことになり,これが尊重すべき立法府の裁量の幅を決する要素であり,同時に司法がどの程度立法事実に立ち入った判断をすべきかを決する要素であるというべきである。

b これを本件規制についてみると,@本件規制の規制目的は,購入者における医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保して国民の健康被害を防止する必要があること及びセルフメディケーションの進展といった医薬品販売を取り巻く環境にかんがみ,医薬品に関する適切な情報を提供して知識の普及を図るというものであり,積極・消極の二分論では割り切れず,また,現在の医薬品を取り巻く環境をどのような形であるととらえ,その環境に合わせた政策としてどのような対策を講じるべきかといった判断は,医薬品の販売状況,販売業者数の推移や販売業態の変化等の様々な事実から推認されるセルフメディケーションの進展状況の判断とその是非等に基づいて議論され,国民的合意の下でその方向性が決定されるべき性質のものであるから,その限度では,司法において,立法事実に踏み込んで判断するにはなじまない性質も含まれていること,A本件規制の対象は,既存業者にもこれから新規に許可を得て医薬品を販売しようとする者にも等しく及ぶもので,新規参入予定業者にのみ及ぶような旧薬事法の適正配置規制とはその性質を異にするものであること,B本件規制の方法が,一部の医薬品について対面販売を義務付け,郵便やインターネットという手法での販売を許さないとする態様のもので,医薬品販売という職業の選択そのものを許さない規制ではなく,選択した医薬品販売という職業に関して郵便等販売という一つの販売方法を規制するものにすぎないから,旧薬事法の適正配置規制のような狭義の職業選択の自由そのものに対して強い制約を課すものではないこと,C本件規制の手段は,専門家が購入者と対面して情報を提供しながら販売することを義務付け,これができない郵便等販売を許さないとするもので,医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保するという本件規制の目的の達成に直結することからすると,本件規制は,立法府において規制により得られる利益と制約する利益との調整が合理的に図られた結果であるとの推認が十分に維持されるものといえるから,改正法の憲法適合性を判断するに当たっては,立法府の広い裁量が認められるべきであり,対面の重要性を認め,対面が確保できない郵便等による方法での医薬品販売を一部規制することについての必要性及び合理性を認めた立法府の判断は十分に尊重されるべきである。
 このような前提に立つと,改正法の憲法適合性を判断するに当たっては,規制目的が公共の福祉に合致しないことが明らかであるか,又は規制手段がその目的を達成するための手段として必要性若しくは合理性に欠けていることが明らかでない限り,違憲とはならないものと解すべきである。

c 原告らは,インターネット販売という一つの独立した業態を想定すべきであると主張するが,新薬事法は,郵便等販売を,医薬品販売業という職業を選択した者が採り得る販売方法の一つとしてとらえていることは明らかであり,また,仮に原告ら主張のような理解をすると,職業選択に対する制約と職業遂行における態様等の制約を区別する意味がおよそなくなるのであるから,相当でない。
 また,原告らは,本件規制は原告らが努力しても克服できない客観的条件であるとするが,医薬品販売という職業選択の可否という観点から見た場合,原告らが努力しても職業選択それ自体が不可能となるようなものではない。

(イ) 新薬事法は,専門家による積極的な関与の下に,購入者に対し,対面での情報提供を行って医薬品を販売することによって,適切な知識の普及に努めつつ,医薬品に伴う副作用を未然に防止するなどして国民の健康被害を防止することを目的としており,こうした規制目的が国民全体の身体・健康の安全に直接かかわるものであることからして,これが重要な公共の利益に合致することは明白である。

(ウ)a 経済的自由権の規制の場合は,現実的・具体的危険がある必要はなく,原告らにおいて,抽象的危険もないことを立証しなければならないが,次のとおり,本件では,抽象的危険のみならず,現実的・具体的危険も十分に認められる。

b 医薬品の適切な選択及び適正な使用に関しては,次のような事情がある。すなわち,@一般用医薬品の副作用が報告された事例の中で,専門家による適切な説明があれば,副作用の発生を未然に防止できた可能性が高い事例が存在すること,A購入者が医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保するために必要な情報を有していない場合も多いこと,B医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保するために必要な情報の内容や提供の方法は,購入者の年齢によっても大きく異なること,Cそもそも医薬品の服用方法に関する常識的な知識すら普及していない可能性があることにも配慮しなければならない状況にあること,D購入者側でも医薬品の安全性や副作用に関する情報が不足していると感じ,適切な情報提供を望む声が多く,求める情報提供の内容からして,詳しい説明を薬剤師等の専門家に期待していることは明らかであることといったものである。
 このような事情からすると,現時点では,医薬品の適切な選択及び適正な使用を購入者の自発的な情報収集に期待することには無理があり,また適切でもないという実情にあるといわざるを得ず,医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保するために求められる情報提供及び販売の方法については,購入者の属性等に応じて真に必要な情報を抽出したり,専門用語をかみ砕くなどの工夫をこらして分かりやすく情報を提供すること,様々な観点から質問をして事情を聞くことにより提供すべき情報の内容や量を決めること,購入者の年齢や購入態度等,購入者側の属性等により臨機応変に対応することが必要である。
 そして,医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保すべく,実効性のある情報提供方法が必要であるとする改正法の趣旨・目的を達成するためには,購入者の属性,状態,購入態度等を把握して,双方向の柔軟な意思疎通を行うことが必要不可欠であり,これは,対面による情報提供及び販売という方法によって初めて実践可能なものである。なお,使用者と異なる者が購入しようとする場合も,専門家は,購入者以外の者が使用することを前提に,慎重に使用者の事情を聞き,提供すべき情報の内容を変えるなど,臨機応変の対応をすることができるから,このような場合でも,対面での情報提供及び販売を義務付けることの必要性・合理性は認められる。

c これに対し,インターネットによる情報提供の方法は,現在のシステム環境の下では,まずは利用者(購入者)の自己責任を前提とせざるを得ない上,技術的にも購入者の属性等を把握したり柔軟な意思疎通を図ったりすることは極めて困難である。購入者を直接見て対応することで,様々な問いかけをすることができ,場合によっては販売を差し控えることができるということは,インターネット販売ではなし得ないことである。
 原告らは,対面販売を義務付けることに合理性が認められないことを主張するに当たって,購入者の理解力等に対する根拠のない過度の信頼・期待を基礎としているが,前記のとおり,購入者の実態は原告ら主張のようなものとは異なるものであり,原告らのこの点に関する主張は失当である。そして,新薬事法は,購入の手軽さや簡易さといった利便性は購入者にとって真の意味での利便性とはいえず,仮にこのような利便性に配慮するにしても,リスクの軽視できない医薬品については利便性よりも安全性を優先すべきとの考えに立っていることに加え,現在の購入者側における医薬品に関する知識の普及の程度や購入現場における実態をも考慮すれば,医薬品の適切な選択及び適正な使用を第一次的には購入者の自発性や自己責任にゆだねれば足りるといえる状況には全くないことによれば,インターネットによる情報提供で十分であるとする原告らの主張は理由がない。実際,業界団体によるルール案によっても,購入者の属性等の把握が購入者側による自発的な申告にゆだねられてしまうのに等しいこと,形式的,定型的,表面的,一方的な情報提供にとどまること,購入者側が説明を理解したかどうかの確認が困難であること等からすれば,インターネット販売による情報提供は,対面販売の際の情報提供とは本質的に性質が異なるものである。
 その他,対面販売とインターネット販売の間には,対面販売では製品や添付文書を示しながら説明ができるのに対しインターネット販売ではそれが困難である点,インターネット販売では購入者が虚偽の申告や誤った申告をした場合にそれを見抜いたり防止したりすることが対面販売に比して著しく困難である点,インターネット販売では,インターネットを通じた情報提供を実際に専門家が行っているかどうかを購入者が確認することが対面販売に比して困難である点,対面販売では購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができ購入者の質問に即時に対応できるのに対し,インターネット販売では電子メールやファクシミリを利用するなど購入者が情報提供を求めた場合の対応に時間を要することになる点において,対面販売にはインターネット販売と比較して明らかな優位性が認められる。

d このように,インターネットを用いる手法は,対面による方法とは本質的に性質が異なっているのであるから,技術的な工夫によって対面と同様の効果を得ることは困難である。結局,インターネットの性質上の限界から,改正法の趣旨・目的を達成することは困難といわざるを得ず,インターネットは対面に代わるものということはできない。
 したがって,改正法が,前記(イ)の規制目的を達成するため,対面での情報提供及び販売を義務付け,これに郵便等による販売を禁止する趣旨を含め,その委任を受けた改正省令において,第一類・第二類医薬品につき郵便等販売を禁止する措置を採ったことについて,その必要性・合理性は明らかというべきであり,加えて,インターネットによる方法では,改正法の規制目的を達成することが困難である以上,インターネット販売を許容した上で具体的な販売方法を規制することによって改正法の規制目的を達成することもできないから,改正法の本件規制よりも制限的でない規制方法で規制目的を達成することはできない。

e(a) 原告らは,インターネット販売であることを原因として薬害が発生した事実やその危険性があるとの事実は説明されておらず,インターネット販売を規制すべき立法事実を欠いていると主張するが,本件規制における立法事実として重要なのは,不十分な情報提供を原因とする医薬品による副作用被害が発生する抽象的危険の存在であり,上記被害が相当数存在したことによれば,上記危険が存在したことは明らかであるところ,改正法及び改正省令は,上記危険を防止する観点から,適切な情報提供方法として,対面による方法の方がインターネット等の対面によらない方法に比較して明らかに優位性が認められ,後者によっては上記危険を防止できないという事情を踏まえて,第一類・第二類医薬品について郵便等販売を禁止したものであるから,何ら立法事実として欠けるところはない。

(b) 原告らは,夜間等の対応において対面販売には不十分な点があると主張するが,新薬事法は販売時における医薬品の情報提供が重要であるとの認識の下に,販売時の対面を義務付けているのであり,販売時の即時の応答・指導の可否が検討されなければならないのであって,対面販売であればこれが可能であるのに対し,インターネットの場合には即時の応答・指導ができる制度的環境にはなく,販売業者側の努力も常に期待できるものではないし,即時の応答・指導を法令上義務付けたとしても,応答が返ってくるのを待つかどうかの判断を購入者にゆだねるものであって,不適切といわざるを得ない。

(c) 新薬事法36条の6第4項については,専門家が購入者の状態を確認し,問題がないと判断されることを前提として,購入者の申出により説明を省略できるのであるが,インターネット販売では,購入者の状態を直接確認できないのであるから,その省略を認める前提を欠くものといわざるを得ないし,そもそも,このようなごく一部の例外的場合の存在を根拠に規制手段の合理性が失われるとはいえない。また,使用者以外の者が店頭を訪れた場合は,専門家は使用者の状況を聞き,店頭を訪れた者を通じて使用者に情報提供するのであるから,対面販売の必要性はより高まる。
 第二類医薬品の販売における情報提供の努力義務も,購入者が店舗で専門家と対面することを前提としており,このような前提を欠く郵便等販売と同列に論ずることはできない。また,努力義務であっても,義務として規定されている以上,無視しても許されるものではない。

(エ) 改正法附則又は改正省令附則に基づく経過措置は,それぞれ次の各理由に基づく特例として設けられたものであり,インターネット販売に対する本件規制の合理性を補強しこそすれ,これを否定する根拠となり得るものではない。

a 特例販売業については,特定の種類の医薬品に限り,必要やむを得ない場合に限って例外として認められた業態であったことを踏まえ,激変緩和措置として,当分の間,引き続き当該業務を行うことができることとし,新薬事法36条の5及び36条の6の規定は適用しなかったものである。

b 既存配置販売業者については,配置販売業が,旧薬事法において明確に医薬品販売業の一業態として規定され,長い間認められてきた販売形態であり,地域の実情もあるため,購入者や事業活動に無用の混乱を与えないよう経過措置が設けられたものであって,既存配置販売業者に関する経過措置が認められたことをもって,インターネット販売まで許容されるべきものということはできない。

c 離島居住者に関する経過措置は,離島居住者が地理的制約から薬局又は店舗において対面で医薬品を購入することが特に困難であることから,経過措置を定めることで,例外的に,一定期間に限り,第二類医薬品の郵便等販売を可能にしたものであり,また,継続使用者に関する経過措置は,改正省令の施行前に購入した医薬品を現に使用中の者が,改正省令の施行後に当該医薬品を引き続き購入できなくなる不便を考慮し,専門家が情報提供を要しない旨の意思を確認し,かつ,情報提供を行う必要がないと判断した場合に限るなどの一定の条件を付した上で,例外的に,一定期間に限り,継続使用者が同一の薬局等から同一の医薬品を郵便等販売により購入することを可能とした例外的な措置である。

(オ) これらの事情によると,改正法は,上記(ア)で述べた基準によれば憲法22条1項に反しないのみならず,いわゆる厳格な合理性の基準によっても憲法22条1項に反するものではない。

(次回へ続く)

posted by studyweb5 at 01:53| 下級審裁判例 | 更新情報をチェックする


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