2017年11月08日

平成29年予備試験論文式刑事実務基礎参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.当サイトでは、一般的な合格答案の傾向として、以下の3つの特徴を示しています。

(1)基本論点を抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範を明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを明示できている。

  もっとも、上記のことが言えるのは、ほとんどの科目が、規範→当てはめの連続で処理できる事例処理型であるためです。近時の刑事実務基礎は、民事実務基礎と同様の出題傾向となっており、事例処理型の問題ではありません。設問の数が多く、(知識さえあれば)それぞれの設問に対する「正解」が比較的明確で、一問一答式の問題に近い。そのため、上記(1)から(3)までを守るというような「書き方」によって合否が分かれる、というようなものではありません。端的に、「正解」を書いたかどうか単純に、それだけで差が付くのです。ですから、刑事実務基礎に関しても、民事実務基礎と同様、成績が悪かったのであれば、それは単純に勉強不足(知識不足)であったと考えてよいでしょう。実務基礎は、民事・刑事に共通して、論文試験の特徴である、「がむしゃらに勉強量を増やしても成績が伸びない。」という現象は、生じにくく、勉強量が素直に成績に反映されやすい科目といえます。ただし、民事実務基礎に関しては、主として要件事実を学習すればよいのに対し、刑事実務基礎は、学習しようとしても、なかなかその対象を絞りにくい刑事手続から事実認定まで、対象が幅広いからです。この点が、民事と刑事の重要な差であると思います。そのため、民事のように重点的に勉強しようとしても、なかなか効率的な学習が難しいのです。とはいえ、刑法・刑訴の基本的な知識(ただし、刑訴に関しては、規則等の細かい条文も把握しておく必要があります。)と、刑事事実認定の基本的な考え方(間接事実による推認の仕方、直接証拠型と間接事実型の推認構造の違いなど)を把握していれば、十分合格ラインに達します。ですから、刑事実務基礎に関しては、普段の刑訴の学習の際に、手続の条文を規則まできちんと引くようにする。そして、事実認定に関しては、過去問に出題されたようなものは、しっかりマスターするその程度の対策で、十分なのだろうと思います。
 以上のようなことから、参考答案は、他の科目ほど特徴的なものとはなっていませんほぼ模範解答のイメージに近いものとなっています。

2.今年の刑事実務基礎は、上記の傾向どおりの出題となっています。昨年同様、設問の数が多いことに注意が必要です。小問も含めると、設問1、設問2、設問3、設問4、設問5(1)、設問5(2)、設問6(1)、設問6(2)と、実に8つの問いがある。これらについて、1つ1つ丁寧に解答していたら、あっという間に答案用紙がパンクします。一問一答式のように、端的に解答するのが、形式面での共通するポイントです。

3.以下では、各設問について、簡単にポイントとなる部分を説明します。
 設問1は、書き方にやや注意が必要です。問題文に、「判断要素を踏まえ」とある。論文の問題文で、「○○を踏まえ」とあれば、その「○○」には、配点があります。ですから、本問では、判断要素を明示する必要があるのです。実務基礎では、通常は一問一答式で答えるので、規範の明示→事実の摘示というスタイルを守る必要がないのですが、ここは例外的に、判断要素を明示した上で、当てはめる形式にする必要があるわけです。それから、結論的に罪証隠滅のおそれを基礎付けるB子との関係だけを答える。もちろん、紙幅に余裕があれば、Vは入院中で少なくとも1週間は取調べにも応じられない状態であり、WはAともB子とも面識がないのだから、V及びWに対する威迫については客観的可能性に乏しいという点を指摘してもよいのでしょうが、本問では、そこまでの紙幅の余裕はないでしょう。
 設問2は、「目撃証言なのだから直接証拠」と勘違いしないことが重要です。Wは犯行の一部始終を目撃していたわけではなく、肝心の暴行の有無については明確な供述をしていません。下線部bの供述内容は、公訴事実記載の暴行そのものに関するものではないわけですから、これは直接証拠ではなく、間接証拠となる。このことを、端的に示せば足ります。問題文は、「直接証拠又は間接証拠のいずれと考えているか」としているわけですから、直接証拠でなければ間接証拠だ、という感じで書いてしまってよいでしょう。厳密には、下線部bの供述内容から公訴事実記載の暴行が推認できる旨(※1)を説明すべきなのでしょうが、本問では、そこまで丁寧に論じる余裕はなさそうです。また、他の法律基本科目であれば、「直接証拠とは~。間接証拠とは~。」などと規範を明示する必要があるのですが、実務基礎では必ずしも必要ではありません。
 ※1 下線部bの供述は、そこで示されたAの暴力的な言動から、公訴事実記載の暴行があったのだろう、という程度の緩やかな推認を可能にさせます。もっとも、それだけでなく、公訴事実記載の暴行の存在を認めるB子の供述(証拠③、甲7号証)と整合する一方、暴行を否定するAの供述(証拠④、乙1号証)と矛盾する内容の供述ですから、公訴事実記載の暴行の有無に関する各供述の信用性に影響を与える補助証拠であるともいえます。なお、「下線部bの供述はAの故意を推認させるから間接証拠である。」とする解答は、「Aが公訴事実記載の暴行に及んだことを立証する上で直接証拠又は間接証拠のいずれと考えているか」とする問題文(「Aの故意を立証する上で」とはされていない)に対する解答としては不適切です。

 設問3は、出題の不備であろうと思います。おそらく、出題者が考えている解答は、以下のようなものでしょう。

 

(参考答案より引用。太字強調は筆者。)

1.刑訴法316条の15第3項1号イの「証拠の類型」として、同条1項5号ロに該当する証拠であることを明らかにすべきである。
2.同条3項1号ロの「開示が必要である理由」として、Aが一貫して公訴事実記載の暴行に及んだことを否認していること、甲3号証では公訴事実記載の暴行の一部が供述されていること、甲3号証の録取以前に作成されたVの警察官面前調書が存在するはずであること、甲3号証の録取以前におけるVの供述は、事件についてより記憶が鮮明な状態でされたものといえること、これと甲3号証の供述内容とに食い違いがある場合には、甲3号証の信用性が減殺され得ること等から、甲3号証の証明力を判断するために重要であり、被告人の防御の準備のためにその開示が必要である旨を明らかにすべきである。

(引用終わり)

 

 検察官調書が検察官請求証拠とされている場合に、類型証拠として警察官調書の開示を求めるというのは、典型的な類型証拠開示の例です。そして、上記の参考答案の解答は、そのような場合の模範的なもので、普通はこれでよいわけです。本問でも、上記のようなことを書いて、上位で合格している人はいるようです。しかしながら、本問の事実関係からすれば、これはあり得ない。なぜなら、本問で、Vの警察官面前調書が作られるはずがないからです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

A(26歳,男性)は,平成29年4月6日午前8時,「平成29年4月2日午前6時頃,H県I市J町2丁目3番Kビル前歩道上において,V(55歳,男性)に対し,その胸部を押して同人をその場に転倒させ,よって,同人に加療期間不明の急性硬膜下血腫等の傷害を負わせた。」旨の傷害事件で通常逮捕され,同月7日午前9時,検察官に送致された。送致記録に編綴された主な証拠は次のとおりであった(以下,特段の断りない限り,日付はいずれも平成29年である。)。

⑴ Vの受傷状況等に関する捜査報告書(証拠①)

 「近隣住民Wの119番通報により救急隊員が臨場した際,Vは,4月2日午前6時10分頃にH県I市J町2丁目3番Kビル前(甲通り沿い)歩道上に,意識不明の状態で仰向けに倒れていたVは,直ちにH県立病院に救急搬送され,同病院において緊急手術を受け,そのまま同病院集中治療室に入院した。同病院医師によれば,Vには硬い面に強打したことに起因する急性硬膜下血腫を伴う後頭部打撲が認められ,Vは,手術後,意識が回復したが,集中治療室での入院治療が必要であり,少なくとも1週間は取調べを受けることはできないとのことであった。」

 (中略)

3 Aは,勾留中,一貫して,Vの胸部を押してVを転倒させ,傷害を負わせた事実を否認した。検察官は,回復したVに対する取調べ等の所要の捜査を遂げ,4月26日,H地方裁判所にAを傷害罪で公判請求した。

(引用終わり)

 

 検察官に送致されるまでの間には、いまだVは取調べを受けられる状態にはなっていない。したがって、警察官調書が作られるはずがないのです(※2)。上記参考答案では、「甲3号証の録取以前に作成されたVの警察官面前調書が存在するはずである」と書いていますが、むしろ逆なのですね。
 ※2 送検後も警察による取調べがされることは普通にありますが、本問では、「検察官は,回復したVに対する取調べ等の所要の捜査を遂げ」とするのみで、警察による送検後のVの取調べについては、何ら記載がありません。身柄拘束中の被疑者取調べであれば、送検後も警察の取調べを受けることは特に記載がなくても当然である、というのもわからなくはありませんが、少なくとも本問のように取調べが困難な状態にあった被害者に対する警察の取調べについては、それがあったことを前提に解答するのであれば、その旨(「○○の時点でVは回復し、警察の取調べにも応じることができた。」等)を問題文に特に記載しておく必要があるでしょう。

 ですから、弁護人が、Vの警察官調書の開示を請求するなどということは、本来は想定できないわけです。ここで、「弁護人はVの病状がわからないのだから、知らないで警察官調書の開示を請求してしまった、という設定なんじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、そのように考える余地はないのです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

5 ⓒ弁護人は,検察官請求証拠を閲覧・謄写した後,検察官に対して類型証拠の開示の請求をし,類型証拠として開示された証拠も閲覧・謄写するなどした

(引用終わり)

 

 問題文によれば、開示請求をした類型証拠は、開示されている。これが、「請求した証拠は不存在であるとして開示を拒否された。」なら、つじつまがあうのですが、そうはなっていません。あるはずのない証拠が、開示されているわけですね。おそらく、作問者は、うっかりしたのでしょう。この設問3は、当初は入っていない設問だったのかもしれません。原案が作られた後になって、「Vの検察官調書だけが証拠請求されている事案だから、警察官調書を類型証拠として開示請求する場合を問うてはどうか。」という意見が出て、採用された。後から急に挿入したために、当初の設定との矛盾を失念してしまった。そういうことなのでしょう。実はVの検察官調書が複数あって、検察官がそのうちの一部だけを証拠請求していたので、残りの検察官調書を開示請求したのだ、という理解をすれば一応筋はとおりますが、問題文の事情は、そのようなことを問うような内容にはなっていないでしょう。本問は、出題の不備であろうと思います。このような出題の不備は、意外とよくあることです。今年の予備試験の論文でも、行政法で、出題の不備とみられるものがありました(「平成29年予備行政法で行手法33条を適用すべき理由」)。また、平成27年司法試験出題趣旨の民法に不適切な点があることについては、「司法試験平成27年出題趣旨の読み方(民法)」において、詳しく説明しています。このような出題の不備に現場で気付いてしまうと、混乱してしまいがちです。そんなときは、落ち着いて多数派が書きそうなことを書いておく。正しいか、間違っているかということは、気にしてはいけません。参考答案は、その一例です。こういったところで悩んでしまうのは、時間のロスでしかなく、避けるべきことです。このように不適切な出題が普通にされていることも怖いことですが、一般的に流通している解説ではこの点が適切に説明されておらず、そのことを誰も知らないまま、あり得ない解答が正解だとして普通に流布され、信じられるという現象が起きていることは、さらに怖いことだといえるでしょう。
 設問4は、伝聞証拠に当たるかどうかによって異なる証拠意見になった、ということまでは、比較的多くの人がわかったと思います。問題は、根拠条文です。刑訴法309条1項、同規則205条1項は、予備試験受験生の間では比較的有名な条文ですが、ここで挙げるのは誤りです。

 

(刑訴法309条1項)
 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調に関し異議を申し立てることができる。

(刑訴規則205条1項)
 法第三百九条第一項の異議の申立は、法令の違反があること又は相当でないことを理由としてこれをすることができる。但し、証拠調に関する決定に対しては、相当でないことを理由としてこれをすることはできない。

 

 本問の証拠意見は、証拠決定前のものですから、証拠決定に対する異議でないことは明らか。また、文言上は、「証拠調に関し」といえそうですが、刑訴法309条1項の異議は、異議に対する裁判所の応答を求めるものです。

 

(刑訴法309条3項)
 裁判所は、前二項の申立について決定をしなければならない。

 

 しかし、本問の証拠意見は、これを聴いて裁判所が証拠決定をする、というもので、当事者が異議を述べても、裁判所がその異議に対して別途応答することを予定するものではありません。その意味において、刑訴法309条1項の異議とは性質が異なるのです。なお、証拠決定に対する異議が法令違反に限定される(同規則205条1項ただし書)のは、上記のとおり証拠決定前に証拠意見を聴いて、そこでの異議を踏まえて証拠決定をしているのだから、証拠決定後に単なる不相当の異議を再度させてもほとんど意味がないからです。
 次に、刑訴法298条、同規則190条2項を挙げた人は、間違いとまではいいにくいのですが、本問で挙げるには不適切です。

 

(刑訴法298条1項)
 検察官、被告人又は弁護人は、証拠調を請求することができる。

(刑訴規則190条)
 証拠調又は証拠調の請求の却下は、決定でこれをしなければならない。
2 前項の決定をするについては、証拠調の請求に基く場合には、相手方又はその弁護人の意見を、職権による場合には、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない。
3項略。

 

 これらの条文は、本問において、裁判所が、公判期日における決定をする場面ではないにもかかわらず、被告人又は弁護人の意見を聴かなければならない根拠としては、正しい。何が言いたいのかわからない、という人もいるでしょう。そんな人は、刑訴規則33条を見て下さい。

 

(刑訴規則33条1項)
 決定は、申立により公判廷でするとき、又は公判廷における申立によりするときは、訴訟関係人の陳述を聴かなければならない。その他の場合には、訴訟関係人の陳述を聴かないでこれをすることができる。但し、特別の定のある場合は、この限りでない。

 

 公判前整理手続は公判準備であって、公判廷における手続ではありません。

 

(刑訴法316条の2第1項)
 裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。

(刑訴法282条1項)
 公判期日における取調は、公判廷でこれを行う。

 

 そうすると、刑訴規則33条1項本文後段によれば、公判準備である公判前整理手続においては、「申立により公判廷でするとき、又は公判廷における申立によりするとき」には当たらないから、当事者の意見を聴かずに証拠決定ができそうだ、しかし、そうではない、というのが、上記刑訴規則190条2項で、これは33条1項ただし書の特別の定めに当たると理解されています。なお、刑訴法298条1項、同規則190条2項は、公判準備にも適用される条文です(「第一節 公判準備及び公判手続」の表題参照)。そういうわけで、本問でも、裁判所は、検察官請求証拠について証拠決定をするに当たり、相手方である被告人又はその弁護人の意見を聴く必要がある。その意味では、間違ってはいません。しかし、本問で問われているのは、なぜ弁護人が証拠意見を述べたのか、ということですよね。ですから、弁護人が証拠意見を述べなければならなかった根拠を摘示すべきでしょう。すなわち、刑訴法316条の16第1項です。

 

(刑訴法316条の16第1項)
 被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四第一項並びに前条第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けたときは、検察官請求証拠について、第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない

 

 「第三百十六条の十三第一項の書面」とは、証明予定事実記載書を指し、「第三百十六条の十四第一項並びに前条第一項及び第二項の規定による開示をすべき証拠の開示」とは、検察官請求証拠及び類型証拠の開示を指します。

 

(刑訴法316条の13第1項)
 検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない。

(刑訴法316の14第1項)
 検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
 各号略。

(刑訴法316条の15)
 検察官は、前条第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同項第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
 各号略。
2 前項の規定による開示をすべき証拠物の押収手続記録書面(前条第一項又は前項の規定による開示をしたものを除く。)について、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、当該証拠物により特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときも、同項と同様とする。
3項略。

 

 本問では、証明予定事実記載書の送付を受け、かつ、検察官請求証拠及び類型証拠の開示を受けています。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

4 検察官は,5月10日,前記傷害被告事件について,証明予定事実記載書を裁判所に提出するとともに弁護人に送付し,併せて,証拠の取調べを裁判所に請求し,当該証拠を弁護人に開示した

 (中略)

5 ⓒ弁護人は,検察官請求証拠を閲覧・謄写した後,検察官に対して類型証拠の開示の請求をし,類型証拠として開示された証拠も閲覧・謄写するなどした上,「Aが,Vに対し,公訴事実記載の暴行に及んだ事実はない。Vは,興奮した状態でAの胸ぐらをつかんで前後に激しく揺さぶってきたが,このときVの何らかの疾患が影響して,自らふらついて転倒して後頭部を強打し,公訴事実記載の傷害を負ったにすぎない。」旨の予定主張事実記載書を裁判所に提出するとともに検察官に送付し,併せて,検察官に対して主張関連証拠の開示の請求をした。

(引用終わり)

 

 だから、本問の弁護人は、「第三百二十六条の同意をするかどうか又はその取調べの請求に関し異議がないかどうかの意見を明らかにしなければならない」わけです。これを指摘できたかどうかで、ここは差が付くでしょう。公判前整理手続の条文は頻出ですから、直前に確認しておくべきです。なお、本問では、弁護人は「異議あり」とするだけで、異議事由を明らかにしていません。通常は、「異議あり。必要性なし。」とか、「異議あり。関連性なし。」などと異議事由を明示します。おそらく、異議事由を問題文に記載してしまうと、その異議事由の存否まで解答する人が出てくるので、敢えて問題文には書かなかったのでしょう。
 設問5は、最決平23・9・14(川口強制わいせつ事件)を知っているかどうかそれだけの問題です。

 

最決平23・9・14より引用。太字強調は筆者。)

 本件において,検察官は,証人(被害者)から被害状況等に関する具体的な供述が十分にされた後に,その供述を明確化するために証人が過去に被害状況等を再現した被害再現写真を示そうとしており,示す予定の被害再現写真の内容は既にされた供述と同趣旨のものであったと認められ,これらの事情によれば,被害再現写真を示すことは供述内容を視覚的に明確化するためであって,証人に不当な影響を与えるものであったとはいえないから,第 1 審裁判所が,刑訴規則199条の12を根拠に被害再現写真を示して尋問することを許可したことに違法はない

 (中略)

 本件において証人に示した被害再現写真は,独立した証拠として採用されたものではないから,証言内容を離れて写真自体から事実認定を行うことはできないが,本件証人は証人尋問中に示された被害再現写真の内容を実質的に引用しながら上記のとおり証言しているのであって,引用された限度において被害再現写真の内容は証言の一部となっていると認められるから,そのような証言全体を事実認定の用に供することができるというべきである。

(引用終わり)

 

 上記判例の後半部分は、最決平25・2・26(電子メール添付事件)でも明示的に引用されています。

 

最決平25・2・26より引用。太字強調は筆者。)

 本件電子メールは,刑訴規則199条の10第1項及び199条の11第1項に基づいて被告人乙に示され,その後,同規則49条に基づいて公判調書中の被告人供述調書に添付されたものと解されるが,このような公判調書への書面の添付は,証拠の取調べとして行われるものではなく,これと同視することはできないしたがって,公判調書に添付されたのみで証拠として取り調べられていない書面は,それが証拠能力を有するか否か,それを証人又は被告人に対して示して尋問又は質問をした手続が適法か否か,示された書面につき証人又は被告人がその同一性や真正な成立を確認したか否か,添付につき当事者から異議があったか否かにかかわらず,添付されたことをもって独立の証拠となり,あるいは当然に証言又は供述の一部となるものではないと解するのが相当である。
 本件電子メールについては,原判決が指摘するとおり,その存在及び記載が記載内容の真実性と離れて証拠価値を有するものであること,被告人乙に対してこれを示して質問をした手続に違法はないこと,被告人乙が本件電子メールの同一性や真正な成立を確認したことは認められるが,これらのことから証拠として取り調べられていない本件電子メールが独立の証拠となり,あるいは被告人乙の供述の一部となるものではないというべきである。本件電子メールは,被告人乙の供述に引用された限度においてその内容が供述の一部となるにとどまる最高裁平成21年(あ)第1125号同23年9月14日第一小法廷決定・刑集65巻6号949頁参照)。
 したがって,上記の理由により本件電子メールが被告人乙の供述と一体となったとして,これを証拠として取り調べることなく事実認定の用に供することができるとした原判決には違法があるといわざるを得ない。

(引用終わり)

 

 これは、刑訴法の知識として、知っておきたい論点です。当サイト作成の「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」でも、論証を用意しています。

 

(「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」より引用)

規則199条の12によって証拠採用されていない書面等を示すことができる場合
重要度:B
 証人から立証事項に関する具体的な供述が十分にされた後に、その供述を明確化するために示す場合であって、書面等の内容が既にされた供述と同趣旨のものであるときは、規則199条の12に基づき、証拠採用されていない書面等を示すことができる(川口強制わいせつ事件判例参照)。

証拠採用されていない書面等を示して得られた証言を事実認定に用いることはできるか
重要度:B
 証人に示した書面等は、独立した証拠として採用されたものではないから、証言内容を離れてその書面等自体から事実認定を行うことはできないが、証人が証人尋問中に示された書面等の内容を実質的に引用しながら証言した場合には、引用された限度においてその書面等の内容が証言の一部となるから、そのような証言全体を事実認定に用いることができる(川口強制わいせつ事件、電子メール添付事件各判例参照)。

(引用終わり)

 

 これが刑訴法科目の出題であれば、上記の規範を一般論として明示した後に、問題文の事実を書き写して当てはめをするわけですが、刑事実務基礎ではそのような紙幅はありません。ですから、規範を当然の前提として、いきなり当てはめるようにまとめて書く。具体的には、以下のような感じです。

 

(参考答案より引用)

1.小問(1)

 検察官は、Vが、AがVの胸を両手で1回強く押したことに関する具体的な供述が十分にされた後に、その供述を明確化するために甲4号証貼付の写真を示そうとしており、同写真は、Vの公判廷供述と同趣旨のものであることから、裁判長は、刑訴規則199条の12第1項に基づき、同写真を示すことを許可したと考えられる。

2.小問(2)

 甲4号証貼付の写真は、独立した証拠として採用されたものではないから、裁判所は、Vの証言内容を離れて同写真自体を事実認定の用に供することはできない。もっとも、Vは、同写真を示されて、同写真を引用しながら証言しており、Vが引用した限度において同写真の内容が証言の一部となるから、裁判所は、そのような証言全体を事実認定の用に供することができる。

(引用終わり)

 

 これが、実務基礎の特徴です。逆にいえば、他の法律基本科目では、上記のような書き方をしてはいけない。丁寧に規範を明示し、問題文の事実を書き写して当てはめる必要があります。実務基礎だけは成績が良いのに、他の法律基本科目の成績が悪い、という人は、この点をもう一度再確認してみるとよいでしょう。
 実際には、上記の判例を知らなかった人の方が多かったのではないかと思います。結果的に、小問(1)は刑訴規則199の12を摘示できたか、小問(2)は取調べを経ていない以上事実認定の用に供することができないという原則論を答案に示せているかで、差が付いたでしょう。小問(2)に関しては、写真自体が事実認定に用いられるのではなく、写真を引用した証言が事実認定に用いられることによって、引用された写真の内容が事実認定に用いられることになる、ということがポイントです。問題文の「同写真とVの証言内容との関係に言及しつつ」とは、このことを意味しています。
 設問6の小問(1)は、特に説明を要しないでしょう。ポイントとしては、規範の明示をしない。すなわち、「相反する」の意義や相対的特信情況の判断基準を一般的に明示することなく、いきなり当てはめる書き方をするということくらいでしょう。小問(2)は、現実の訴訟であれば、「必要性あるに決まってるだろ。」、「ですよね。」で終わりそうなところです。しかし、答案としては、「必要性あるに決まってる」理由をきちんと示すべきなのでしょう。B子が犯行の一部始終を目撃した唯一の証人であること、その供述が変遷していることを、まず指摘したい。それから、弁護人が必要性なしと言っているのは、要するにB子は公判廷に出てきているのだから、公判廷で尋問すれば足り、書面を出す必要はないということです。ですから、公判廷でB子に聞いても埒があかないということを示せばよい。この小問は最後の設問なので、時間と紙幅を余らせないように、余裕があればしっかり書いておきたいところです。時間と紙幅を余らせて、ぼんやりと待機する時間を作ってしまった人は、反省すべきでしょう。

 

【参考答案】

第1.設問1

 「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑訴法207条1項、60条1項2号)があるか否かは、隠滅の対象、隠滅の態様、隠滅の客観的・主観的可能性を考慮して判断すべきである。
 本件で、疎明資料(刑訴規則148条1項3号)として提供されたと考えられる証拠③によれば、Aは、B子と交際し、2人で生活していることが一応認められるから、B子を対象とし、口裏合わせという態様による隠滅が行われる客観的・主観的可能性が高い。
 以上を考慮し、裁判官は、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があると判断したと考えられる。

第2.設問2

 公訴事実記載の暴行とは、Vの胸部を両手で2回押すというものである。下線部bには、Aが上記暴行に及んだ旨の供述は含まれていない。
 よって、検察官は、下線部bの供述を間接証拠と考えている。

第3.設問3

1.刑訴法316条の15第3項1号イの「証拠の類型」として、同条1項5号ロに該当する証拠であることを明らかにすべきである。

2.同条3項1号ロの「開示が必要である理由」として、Aが一貫して公訴事実記載の暴行に及んだことを否認していること、甲3号証では公訴事実記載の暴行の一部が供述されていること、甲3号証の録取以前に作成されたVの警察官面前調書が存在するはずであること、甲3号証の録取以前におけるVの供述は、事件についてより記憶が鮮明な状態でされたものといえること、これと甲3号証の供述内容とに食い違いがある場合には、甲3号証の信用性が減殺され得ること等から、甲3号証の証明力を判断するために重要であり、被告人の防御の準備のためにその開示が必要である旨を明らかにすべきである。

第4.設問4

1.弁護人が証拠意見を述べたのは、証明予定事実記載書の送付を受け、検察官請求証拠と類型証拠の開示を受けた場合には、検察官請求証拠について証拠意見を明らかにする必要があるからである(刑訴法316条の16第1項)。

2.弁護人が、甲4号証について「不同意」との意見を述べたのは、貼付された再現写真は警察官の動作によるVの供述が表現されたものであり、Vの説明及び再現写真どおりのAのVに対する暴行の存在が要証事実となることから、原則として証拠能力が否定される伝聞証拠(320条1項)として、326条1項の同意の対象となると考えたからである。

3.これに対し、弁護人が、甲5号証について「異議あり」との意見を述べたのは、単純な現場写真であって、供述証拠に当たらない(新宿騒乱事件判例参照)と考えたからである。

第5.設問5

1.小問(1)

 検察官は、Vが、AがVの胸を両手で1回強く押したことに関する具体的な供述が十分にされた後に、その供述を明確化するために甲4号証貼付の写真を示そうとしており、同写真は、Vの公判廷供述と同趣旨のものであることから、裁判長は、刑訴規則199条の12第1項に基づき、同写真を示すことを許可したと考えられる。

2.小問(2)

 甲4号証貼付の写真は、独立した証拠として採用されたものではないから、裁判所は、Vの証言内容を離れて同写真自体を事実認定の用に供することはできない。もっとも、Vは、同写真を示されて、同写真を引用しながら証言しており、Vが引用した限度において同写真の内容が証言の一部となるから、裁判所は、そのような証言全体を事実認定の用に供することができる。

第6.設問6

1.小問(1)

(1)公訴事実記載の暴行及びその後倒れたVの腹の上に馬乗りになってVを殴ろうとしたか否かという点について、B子の公判廷供述は、甲7号証における供述内容と正反対の認定を導き得るものであるから、「前の供述と相反する…供述をしたとき」(刑訴法321条1項2号後段)に当たる。

(2)B子は、公判廷において、「嘘を話した覚えはない。録取された内容を確認した上、署名・押印したものが、甲7号証の供述録取書である。」と証言しており、その成立及び内容の真実性について認めていること、「5月に入ってからAの子を妊娠していることが分かった。」と証言しており、甲7号証の録取があった後にAをかばうべき事情が新たに生じたと考えられることから、相対的特信情況(同号ただし書)がある。

2.小問(2)

 本件では、暴行の有無が主に争われており、犯行があったとされる状況の一部始終を目撃していたのはB子のみである。B子は、犯行から近い時点において録取された甲7号証においては暴行の存在を認める供述をしていた。にもかかわらず、公判廷においては一転して暴行の存在を否定する供述をした。捜査段階での検察官に対する供述状況について、B子は、「何を話したのか覚えていない」と証言する一方で、「嘘を話した覚えはない。」とも証言していることから、これ以上公判廷においてB子を尋問することは適切でなく、甲7号証を直接に取り調べる必要がある。

以上

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2017年11月01日

平成29年予備試験論文式民事実務基礎参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.当サイトでは、一般的な合格答案の傾向として、以下の3つの特徴を示しています。

(1)基本論点を抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範を明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを明示できている。

 もっとも、上記のことが言えるのは、ほとんどの科目が、規範→当てはめの連続で処理できる事例処理型であるためです。民事実務基礎は、そのような事例処理型の問題ではありません。民事実務基礎の特徴は、設問の数が多く、それぞれの設問に対する「正解」が比較的明確で、一問一答式の問題に近いという点にあります。そのため、上記(1)から(3)までを守るというような「書き方」によって合否が分かれる、というようなものにはなっていません。端的に、「正解」を書いたかどうか単純に、それだけで差が付くのです。ですから、民事実務基礎に関しては、成績が悪かったのであれば、それは単純に勉強不足であったと考えてよいでしょう。その意味では、論文試験の特徴である、「がむしゃらに勉強量を増やしても成績が伸びない。」という現象は、民事実務基礎に関しては、生じにくい。逆に言えば、勉強量が素直に成績に反映されやすい科目ということができるでしょう。
 以上のようなことから、参考答案は、他の科目のような特徴的なものとはなっていませんほぼ模範解答のイメージに近いものとなっています。

2.今年の民事実務基礎の問題は、上記のような例年の傾向がそのまま当てはまるものとなっています。単純に、知識で差が付く問題であったといえるでしょう。
 設問1小問(1)は、保全の手段を問うものです。執行・保全については、どのような場面でどのような手段があるか、なぜそのような手段が必要か、という程度を、条文を摘示しつつ解答できれば足ります。参考答案では、占有移転禁止の仮処分について民事保全法25条の2第1項括弧書きを摘示していますが、これは同括弧書きに定義規定があるためで、同項が本問の場合に適用されるという趣旨ではありません。仮処分をしない場合に生じる問題について、即時取得されるおそれがある、という解答をする人が意外と多いのですが、適切ではありません。即時取得以前に、単に第三者に譲渡されたというだけで、その第三者に執行力が及ばなくなることが問題なのです。即時取得との関係では、執行官保管によって即時取得が成立することを事実上防ぐ意味はありますが、即時取得の成立を完全に防ぐことはできません。
 小問(2)。従来は請求の趣旨を解答させることが多かったのですが、今回は訴訟物を解答させる問題でした。問題文が「記載」としていることから、端的に結論だけを書くということがポイントです。訴訟物を示す場合には、個数も示すことがある(問題研究要件事実、要件事実論30講等参照)ので、個数も答えておいた方が無難でしょう。訴訟物が2個以上ある場合には、併合形態も解答します。
 小問(3)は、要件事実をそのまま解答させる問題です。知っていれば、何も迷うことはないでしょう。アイウが原告所有を構成し、エが被告占有を構成します。①は、Aもと所有を示します。過去の一定時点におけるものであることを明確にする趣旨で、「当時」を付すのが通例です。②は、BX売買を示します。売買契約の要素である目的物と代金額を摘示するのがポイントですが、問題文のイを見れば、間違いようがないという感じがします。このように、実務基礎では、問題文に答えに近いヒントが書いてあることがあります。なお、「Bは」と、係争物(本問では本件壺)の権利を処分したBを主語にするのが普通です。「原告は~買った。」という表現はあまりしません。③は、被告の現占有を示します。現在とは、訴訟上は事実審の口頭弁論終結時を指すわけですが、現在の法律関係や事実については、いちいち「現在」を付けません。ですから、単に「占有している」とすれば足り、「現在占有している」とは記載しないのが通例です。
 小問(4)は、どの程度書くか、がポイントです。問題文には、「主張の内容(当該主張を構成する具体的事実を記載する必要はない。)」とあります。これは、単に「主張を挙げなさい」という問い方よりも、やや詳しく書いて欲しいという趣旨です。このことは、設問2の小問(2)の問い方と比較すればわかります。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

(2) 上記(1)の二つの抗弁のうち弁護士Qが主張しないこととした抗弁を挙げるとともに,その抗弁を主張しないこととした理由を,想定される再抗弁の内容にも言及した上で説明しなさい。

(引用終わり)

 

 単に「主張を挙げなさい」とあれば、端的に「即時取得の主張」とだけ答えれば足ります。しかし、ここでは「主張の内容」とあるので、もう少し詳しく書く。具体的には、下記の参考答案程度でしょう。

 

(参考答案より引用)

 Pは、XがBから本件壺の引渡しを受けたことによる即時取得の主張を検討したと考えられる。

(引用終わり)

 

 それから、主張を断念した理由については、「簡潔に」とあるので、占有改定と即時取得の可否を論証する必要はないでしょう。端的に、本問の引渡しが占有改定によるものであり、判例が占有改定による即時取得を認めていない旨を示せば足りるでしょう。他の科目であれば、問題文の事実を具体的に答案に書き写して、占有改定であることを認定したりする必要があるわけですが、実務基礎ではそのようなことは不要です。この辺りが、実務基礎科目特有な部分です。
 設問2。小問(1)は、前記設問1小問(4)同様、「抗弁の内容(当該抗弁を構成する具体的事実を記載する必要はない。)」とされていますので、単に「対抗要件具備による所有権喪失の抗弁」とするのではなく、もう少しだけ詳しく書く。具体的には、以下のような感じです。

 

(参考答案より引用)

(1)Aは、本件壺をB及びYに二重譲渡しているところ、YがAから本件壺の引渡しを受けたことによって、Bが本件壺の所有権を喪失した旨の対抗要件具備による所有権喪失の抗弁
(2)YがAから本件壺の引渡しを受けたことにより、本件壺を即時取得した結果、Xが本件壺の所有権を喪失した旨の即時取得による所有権喪失の抗弁

(引用終わり)

 

 対抗要件具備による所有権喪失の抗弁に代えて、対抗要件の抗弁を考えた人もいるでしょうが、「本件壺の所有者は私ですから」とするYの相談内容からすれば、適切とはいえないでしょう。
 小問(2)は、先立つ対抗要件具備の再抗弁の成立が想定されるので、対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を主張しなかった旨を解答すれば足ります。ただ、注意すべき点が2つあります。ここでの先立つ対抗要件具備とは、XがBから引渡しを受けたことではありません。対抗関係にあるのはYとBなのですから、BがAから引渡しを受けたことが、ここでの先立つ対抗要件具備になるのです。それから、単に再抗弁が想定されるから諦めた、というのでは不十分です。抗弁は、請求原因事実が認められることを前提にしてするわけです。本問の場合、再抗弁を構成する事実は、平成27年3月5日のAB売買契約に基づく引渡しです。ところが、請求原因において、その売買契約の存在は既に請求原因で主張されていて、Bが本件壺を現実に保管していたことは、Yも争っていない。そうなると、実際には、再抗弁事実を争う余地はほとんどないということになるでしょう。このことを、断念した理由として解答すべきなのです。逆にいえば、その再抗弁を争うことができる状態ならば、それ以前の請求原因段階でAB間売買を否認して勝っているだろう、ということです。実際、設問3では、それでYが勝訴した設定になっています。
 設問3は、事実認定に関する出題です。小問(1)は、記名が署名に当たらないこと、B名下の印影がBの印章によって顕出されたか否かが明らかでないことから、一段目の推定に必要な要件を満たさないことを端的に解答すれば足ります。注意すべきは、「Bの印章」とはB所有の印章のこと(※1)であって、Bという名称を表す印章というだけでは足りない、ということです。
 ※1 より厳密には、B自身が専ら使用するために管理する印章であることを要します。

 

最判昭50・6・12より引用。太字強調は筆者。)

 私文書の作成名義人の印影が当該名義人の印章によつて顕出されたものであるときは、反証のないかぎり、右印影は名義人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されるところ(最高裁昭和三九年(オ)第七一号同年五月一二日第三小法廷判決・民集一八巻四号五九七頁ほか参照)、右にいう当該名義人の印章とは、印鑑登録をされている実印のみをさすものではないが、当該名義人の印章であることを要し、名義人が他の者と共有、共用している印章はこれに含まれないと解するのを相当とする。
 これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実によれば、「本件各修正申告書の上告人名下の印影を顕出した印章は、上告人ら親子の家庭で用いられている通常のいわゆる三文判であり、上告人のものと限つたものでない」というのであるから、右印章を本件各申告書の名義人である上告人の印章ということはできないのであつて、その印影が上告人の意思に基づいて顕出されたものとたやすく推定することは許されないといわなければならない。

(引用終わり)

 

 ですから、「これは自分の印章を誰かが盗んで勝手に押したに違いない。」という主張であれば、二段の推定が生じるのですが、「これは自分の印章ではなく、他から同姓のものの印章を買ってきて押したに違いない」という主張の場合には、一段目の推定は生じないのです。本問では、Bは、「私の名前の判子は押してありますが、こんな判子はどこでも買えるもので、Xが…私の名前の判子を勝手に買ってきて押印したものに違いありません。」と主張しているので、後者のケースということになります。ここは、安易に二段の推定を認めた人がそれなりにいるでしょうから、差が付きやすいところです。
 小問(2)は、事実認定の方法に沿って検討されているかで、差が付くでしょう。ここは、一般的に流布している解説等をみても、適切な説明がされていないように思います。研修所ではきちんと教えているのに、残念なことです。ですので、少し詳しく説明しておきましょう。
 本問では、まず、解答の対象を確認する必要があります。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

(2) 弁護士Pは,本件第2訴訟の第3回口頭弁論期日までに,準備書面を提出することを予定している。その準備書面において,弁護士Pは,前記【Xの供述内容】及び【Bの供述内容】と同内容のX及びBの本人尋問における供述並びに前記の提出された書証に基づいて,Bが否認した事実についての主張を展開したいと考えている。弁護士Pにおいて準備書面に記載すべき内容を,提出された書証や両者の供述から認定することができる事実を踏まえて,答案用紙1頁程度の分量で記載しなさい。

(引用終わり)

 

 「Bが否認した事実」とは何か。それは、設問3の第2段落冒頭に明示されています。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 第1回口頭弁論期日で,Bは,Xから本件壺の引渡しを催告され,相当期間が経過した後,Xから解除の意思表示をされたことは認めたが,BがXに対して本件壺を売ったことと,BX間の売買契約に基づいてXからBに対し150万円が支払われたことについては否認した

(引用終わり)

 

 したがって、「BがXに対して本件壺を売ったこと」と、「BX間の売買契約に基づいてXからBに対し150万円が支払われたこと」が認められることを解答すればよい。では、両者について別個独立に解答すればよいかというと、そうではありません。それは、Bの供述内容をみればわかります。Bは、Xから150万円を受け取っていない、という主張に終始していて、150万円を受け取ったとしても、それは本件壺の代金として受け取ったのではない、という主張はしていません。ですから、150万円の授受があったことが認められてしまえば、自動的にBの主張するストーリーは崩れてしまうのです。そういうわけで、本問で主に解答すべきは、150万円の授受があったかなかったか、その点だということになる。これを理解して解答されているかどうかが、第1のポイントです。
 次に、重要なポイントは、どのような事実を基礎として、主張を展開するのか、ということです。本問のような場合に基礎としてよい事実は、概ね以下の3つです(研修所では「動かし難い事実」と呼んでいます。)。

① 成立の真正が認められる書面信用できる部分に記載された事実
② 両当事者の供述において一致する事実
③ 一方当事者が自認するその当事者にとって不利益な事実

 それ以外の、例えば、各当事者が自分に有利なことを一方的に主張しているだけの事実については、他の証拠等によって認定できない限り、認定の基礎にしてはいけないのです。このことを理解しないままに解答している答案が、非常に多い。この時点で脱落した答案をどう処遇するのか。採点には苦慮しているだろうと想像します。
 上記を踏まえていれば、本問では本件領収書を主張の基礎としてはいけないことがわかります。本問で主な主張の対象となっている150万円の授受との関係で、本件領収書は直接証拠です(※2)。「直接証拠があるのであれば、まずそれから検討する。」という鉄則から、本件領収書を認定の中心に据えるべきだ、と考えた人もいたかもしれません。しかし、それは成立の真正が認められる場合の話です。本問では、本件領収書の成立の真正に争いがあり、しかも、この点に関するX及びBの供述内容は、自分に有利なことの言いっ放しとなっていますから、上記の①から③までのいずれにも当たりません。ですから、本件領収書の成立の真正を基礎付ける事実は、本問では存在しないのです。そうすると、小問(1)で検討したとおり、本件領収書については二段の推定は生じないわけですから、本件領収書が真正に成立したとは、認めることができない。したがって、本件領収書は、主張の基礎としてはならない。つまり、答案に本件領収書に基づく主張が書いてあれば、それは積極ミスとなる。ここで、ある程度差が付くだろうと思います。
 ※2 意思表示は書面によってできますが、金銭の授受は書面によってすることはできない(書面に何かを記載することによって、金銭を物理的に相手方のもとに移動させることなどできない)わけですから、領収書は処分証書ではなく、金銭授受の事実に関する当事者の認識が記載された報告文書です。

 さて、本件領収書が使えないとすれば、どうやって150万円の授受を認定するのでしょうか。まず、上記の①に当たりそうなものとして、X名義の預金通帳があります。これは、Rがその成立の真正を認めていますから、成立には争いがない。では、その記載内容の信用性はどうか。「預金通帳なんだから信用できるに決まってるだろ。」というのでは、解答になっていません。「信用できるに決まってる」のは、そのとおりで、このことを研修所では、「預金通帳は類型的信用文書である。」と表現します。しかし、試験の解答としては、なぜ「信用できるに決まってる」のか、その理由を答える必要があるのです。文章化すると、以下のようになるでしょう。

 

(参考答案より引用)

 預金通帳は、第三者である銀行が業務として作成するもので、入出金があるごとに機械的に記載されるから、その記載内容は信用できる。

(引用終わり)

 

 これで、預金通帳に記載された事実が、上記①に当たることがわかりました。預金通帳に記載された事実とは、「平成28年5月1日に150万円を引き出したこと」ですから、そのとおりの事実が認められる。このことは、Xの供述内容の以下の部分と整合します。

 

(問題文の【Xの供述内容】より引用)

 私は,平成28年5月1日に,親友の紹介でB宅を訪問し,本件壺を見せてもらいました。Bとは,そのときが初対面でしたが,Bは,現金150万円なら売ってもいいと言ってくれたので,私は,すぐに近くの銀行に行き,150万円を引き出して用意しました。

(引用終わり)

 

 このように、Xの供述内容は、客観証拠であるX名義の預金通帳により認定できる事実と整合的です。
 次に、上記②として、平成28年5月2日にBがAから借りていた200万円を返済した、という事実があります。

 

(問題文の【Xの供述内容】より引用)

 Aは同年5月2日にBから200万円を借金の返済として受け取っているようです

(引用終わり)

(問題文の【Bの供述内容】より引用)

 私は,同月2日に,Aから借りていた200万円を返済したことは間違いありません

(引用終わり)

 

 この事実は、主張の基礎としてよい。この事実を基礎とすると、その返済資金の出所はどこなのだ、ということになる。ここは、XとBとで供述が食い違っています。

 

(問題文の【Xの供述内容】より引用)

 この200万円には私が交付した150万円が含まれていることは間違いないと思います。

(引用終わり)

(問題文の【Bの供述内容】より引用)

 これは,自分の父親からお金を借りて返済したもので,Xからもらったお金で工面したものではありません。父親は,自宅にあった現金を私に貸してくれたようです。また,父親とのやり取りだったので,貸し借りに当たって書面も作りませんでした。

(引用終わり)

 

 このように、両者の供述が食い違っている場合には、直ちにどちらかの供述を真実であると認めることはできません。しかし、一方当事者の供述の信用性が否定される場合は別です。本問では、Bの供述は信用できない。なぜか。単に、「たまたま父親が貸してくれたなんて嘘っぽい。」とか、「書面を作ってないなんて不自然だ。」などということではありません。Bの供述内容の以下の各部分を、よく対照して読んでみると、理由がわかります。

 

(問題文の【Bの供述内容】より引用。太字強調は筆者。)

 Xは,私に150万円を現金で渡したと言っているようですが,そんな大金を現金でもらうはずはありません

 (中略)

 私は,同月2日に,Aから借りていた200万円を返済したことは間違いありませんが,これは,自分の父親からお金を借りて返済したもので,Xからもらったお金で工面したものではありません。父親は,自宅にあった現金を私に貸してくれたようです。また,父親とのやり取りだったので,貸し借りに当たって書面も作りませんでした。

(引用終わり)

 

 「150万円もの大金を現金でポンともらうとかありえねーだろ。」と言っているその本人が、「200万円は父親が現金でポンと貸してくれた。書面も作ってない。」と言っているそれこそありえねーだろ、ということですね。これをきちんとした日本語にすると、こうなります。

 

(参考答案より引用)

 返済資金の出所について、Bは、自分の父親からお金を借りたと供述する。しかし、Bは、150万円のような大金を現金でもらうはずがないという感覚を示す一方で、返済資金の200万円は父親から現金で貸してもらい、書面も作らなかったと供述しており、多額の現金授受に対する感覚において一貫していない。したがって、この点に関するBの供述は信用できない。

(引用終わり)

 

 この点に関するBの供述が信用できず、虚偽であることは、Xの供述内容と整合します。すなわち、Bが嘘をついた動機は、Xから受け取った150万円をAへの借金返済に充てたことを隠そうとする点にあると考えて矛盾がない。このように、Bの供述内容は、その主要な点で信用できないのに対し、Xの供述内容は他の証拠と整合している。以上から、150万円の授受は認められるだろう。こういう流れになるわけです(※3)。
 ※3 当事者の供述については、当事者が主要事実の存在を供述するのは当然であることから、これを直接証拠として供述の信用性を検討するという構造ではなく、他の間接事実から直接主要事実を推認する構造によって判断するべきであるという考え方もあります。この考え方によれば、本問では、Xが150万円を銀行から引き出した事実と、BがAに200万円の借金を返済した事実から直接にXB間の現金授受が推認できるのだから、XB供述の信用性判断を経由する必要はない、ということになります。しかし、それだけで本当に現金授受を推認できるのかというと、疑問です。Xが現金授受があったと供述し、Bは受け取っていないと供述しているところ、Xの供述は概ね信用できるのに対し、Bの供述は主要な点で信用できないという信用性判断を経由して初めて、現金授受の事実を認定できるというべきでしょう。上記の考え方は、「通常はそれで問題ない。」というだけであって、本問のように、当事者の供述の一部に一貫性を欠く部分があり、その信用性が否定されることが重要な意味を持つ事案については、当てはまらないと思います。

 前記のとおり、150万円の授受が認定された以上、Bのストーリーは既に崩れています。ですから、後はざっくりと認定すれば足ります。問題文の事情を使うなら、上記②の両当事者一致の事実として、XBに面識がないということがありますから、これを使えば、以下のように論述できるでしょう。

 

(参考答案より引用)

 XとBに従前の面識がなかったことは、両者が認めている。面識のないXB間で、何の理由もなく150万円の授受がされることは考えられないところ、X及びBの供述からは、本件壺の売買があり、その代金として支払われたとする以外の理由は見当たらない。

(引用終わり)

 

 本問は、以上のようなプロセスで解答します。他の法律基本科目の当てはめのように、使えそうなものを全部答案に書き写して、一言コメントのように評価を付せばよい、というものとは違うのです。現状では、この点を正しく解説しているものが少ないので、普通に当てはめのように書いていても合格ラインに達してしまっていますが、将来的には、このことに気付く受験生も増えてくるでしょうから、気を付けたいところです。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

 採り得る法的手段は占有移転禁止の仮処分命令(民保23条1項、25条の2第1項括弧書き、62条)の申立て(同法2条1項)であり、これを講じなかった場合には、本件訴訟の基準時(民執35条2項参照)前に本件壺の占有がY以外の者に移転されると、訴訟係属中に訴訟引受け(民訴法50条)の手続を経ない限り、勝訴してもその者に対し強制執行をすることができない(民執23条1項1号、3号)という問題が生じる。

2.小問(2)

 所有権に基づく返還請求権としての動産引渡請求権1個

3.小問(3)

① 平成27年3月5日当時、本件壺を所有していた。
② Bは、平成28年5月1日、原告に対し、本件壺を代金150万円で売った。
③ 被告は、本件壺を占有している。

4.小問(4)

 Pは、XがBから本件壺の引渡しを受けたことによる即時取得の主張を検討したと考えられる。
 XがBから受けた本件壺の引渡しは占有改定によるものであるところ、判例が占有改定による即時取得を否定していることが、これを断念した理由である。

第2.設問2

1.小問(1)

(1)Aは、本件壺をB及びYに二重譲渡しているところ、YがAから本件壺の引渡しを受けたことによって、Bが本件壺の所有権を喪失した旨の対抗要件具備による所有権喪失の抗弁

(2)YがAから本件壺の引渡しを受けたことにより、本件壺を即時取得した結果、Xが本件壺の所有権を喪失した旨の即時取得による所有権喪失の抗弁

2.小問(2)

 Qが主張しないこととした抗弁は、前記1(1)の対抗要件具備による所有権喪失の抗弁である。
 YがAから本件壺の引渡しを受けた平成28年5月15日に先立つ平成27年3月5日にBがAから引渡しを受けた旨の先立つ対抗要件具備の再抗弁が想定されるところ、同日のAB間売買の存在が既に請求原因事実とされている以上、上記再抗弁事実の存在を争う余地はほとんどないと考えられることが、主張しないこととした理由である。

第3.設問3

1.小問(1)

(1)民訴法228条4項の「署名」とは自署をいい、記名を含まないから、Bの記名があることによって、本件領収書の成立の真正について、同項の推定が生じることはない。

(2)同項の「本人の…押印」とは、本人の意思に基づく押印をいう。文書中の印影が本人の印章によって顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、その印影は本人の意思に基づいて成立したものと推定される(判例)。
 本件では、B名下の印影がBの印章によって顕出された事実について争いがあり、証拠上も確定することができない。したがって、その印影がBの意思に基づいて成立したものと推定することはできない。
 以上から、本件では「本人の…押印」があるとはいえず、同項の推定は生じない。

2.小問(2)

(1)成立に争いのないX名義の預金通帳には、平成28年5月1日に150万円を引き出したことが記載されている。預金通帳は、第三者である銀行が業務として作成するもので、入出金があるごとに機械的に記載されるから、その記載内容は信用できる。したがって、記載どおりの事実が認められる。この事実は、同日に銀行に行き、引き出した現金150万円をBに交付したとするXの供述と整合する。
 同日の翌日である同月2日にBがAから借りていた200万円を返済したことについて、XとBで供述が一致しているから、そのとおりの事実が認められる。返済資金の出所について、Bは、自分の父親からお金を借りたと供述する。しかし、Bは、150万円のような大金を現金でもらうはずがないという感覚を示す一方で、返済資金の200万円は父親から現金で貸してもらい、書面も作らなかったと供述しており、多額の現金授受に対する感覚において一貫していない。したがって、この点に関するBの供述は信用できない。Bが虚偽の供述をするのは、Xから受け取った150万円を返済に充てた事実を隠そうとする動機によるものと考えることができ、この点におけるXの供述と整合する。
 以上から、平成28年5月1日に150万円の授受があった事実が認められる。

(2)XとBに従前の面識がなかったことは、両者が認めている。面識のないXB間で、何の理由もなく150万円の授受がされることは考えられないところ、X及びBの供述からは、本件壺の売買があり、その代金として支払われたとする以外の理由は見当たらない。

(3)よって、BがXに対して本件壺を売ったことと、BX間の売買契約に基づいてXからBに対し150万円が支払われたことが認められる。

以上

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2017年09月08日

平成29年予備試験論文式刑訴法参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、司法試験と同様、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、上位合格者のレベルに達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があるのです。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は3頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に4頁後半まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、1行35文字以上のペースで4頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

4.今年の刑訴法は、設問1は平成25年司法試験、設問2は平成25年予備試験とかなりの部分が重なっています。過去問をきちんと検討していた人にとっては、用意していたものを書けばよかったので、楽だったでしょう。事例や論点も複雑ではなかったので、現場では解きやすいと感じた人が多かったのではないかと思います。

 設問1は、「①の現行犯逮捕の適法性」が問われています。現場では、準現行犯逮捕と緊急逮捕を書くべきか、悩んだ人もいたでしょう。設問の文理だけからすると、準現行犯逮捕も緊急逮捕も書くべきだ、ということになります。なぜかというと、以下のような場合があり得るからです。

・警察官のした①の現行犯逮捕は、現行犯逮捕としては違法であるが、準現行犯逮捕としては適法である。
・警察官のした①の現行犯逮捕は、現行犯逮捕としては違法であるが、緊急逮捕としては適法である。

 現行犯逮捕がされた事案について、直ちに緊急逮捕状を請求していればその現行犯逮捕が緊急逮捕として適法となる余地を示唆する裁判例は、それなりにあります。本問と類似の事案である京都地決昭44・11・5(西宮恐喝未遂事件)も、その1つの例です。ですから、「①の逮捕は現行犯逮捕として適法か」という問い方ではなく、「①の現行犯逮捕の適法性」という問い方である限り、準現行犯逮捕や緊急逮捕として適法であるかどうかも、文理上は問題となり得るのです。
 もっとも、ここで、過去問の傾向というものを考える必要があります。

 

平成25年司法試験論文式試験刑事系第2問より引用。太字強調は筆者。)

 同日午後10時30分,前記路上において,甲は,司法警察員Pにより,刑事訴訟法第212条第2項に基づき,乙と共謀の上,Vを殺害した事実で逮捕された【逮捕①】。また,その頃,同所において,乙は,司法警察員Qにより,同項に基づき,甲と共謀の上,Vを殺害した事実で逮捕された【逮捕②】。

 (中略)

〔設問1〕  【逮捕①】及び【逮捕②】並びに【差押え】の適法性について,具体的事実を摘示しつつ論じなさい。

(引用終わり)

平成25年司法試験の採点実感等に関する意見(刑事系科目第2問)より引用。太字強調は筆者。)

 なお,【逮捕②】を違法とする答案の多くが,緊急逮捕としての適法性を論じていたものの,設問には「刑事訴訟法第212条第2項に基づき」と記載され,準現行犯逮捕としての適法性が問われているのは明白であり,緊急逮捕を論じる必要はない。また,中には,現行犯逮捕としての適法性を論じる答案もあったが,準現行犯逮捕として違法である以上,それよりも要件の厳しい現行犯逮捕として適法になる余地はなく,現行犯逮捕を論じること自体,無令状逮捕が認められる要件や趣旨を理解していないことの表れである。いわゆる論点主義に陥らず,刑事手続全体を俯瞰した学習を求めたい。

(引用終わり)

 

 平成25年の司法試験の問題でも、文理上は、緊急逮捕としての適法性が問題となり得ます。「Pが212条2項に基づいてした逮捕は、同項の要件は満たさないが、緊急逮捕の要件を満たす余地がある。」といい得るからです。ところが、考査委員は、問題文にわざわざ「刑事訴訟法第212条第2項に基づき」と書いてあるんだから、準現行犯逮捕だけ検討しろよ、と言っているわけですね。考査委員は、解答の対象を限定する趣旨で、そのような文言を問題文に入れてくる。このような過去問の傾向からすれば、本問の場合も、解答の対象を限定する趣旨で、わざわざ、「現行犯逮捕した」、「現行犯逮捕の適法性」と書いてあるのだろう、と読むべきです。ですから、解答の対象は現行犯逮捕だけでよい、ということになるわけですね。なお、これが、「現行犯人として逮捕した」、「現行犯人としてされた逮捕の適法性」となっていたのであれば、準現行犯逮捕も検討すべきことになります。

 

(212条)
 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。

(213条)
 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

 

 現行犯逮捕とは、212条1項の「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」を逮捕する場合をいい、準現行犯逮捕とは、同条2項によって現行犯人とみなされる者を逮捕する場合をいうわけですから、「現行犯逮捕」と「準現行犯逮捕」は別の概念であって、「現行犯逮捕」に「準現行犯逮捕」が含まれるということはできませんが、「現行犯人を逮捕する場合」といえば、概念上両方含まれるのです。 このような例としては、平成19年度の旧司法試験があります。

 

平成19年度旧司法試験刑事訴訟法第1問試験問題及び出題趣旨。太字強調は筆者。)

 警察官Aは,住居侵入被害発生の110番通報を受け,被害者B女方に赴いた。Bの説明は,「私はこの家に一人で住んでいます。先ほど居間で夕食をとっていると見知らぬ男がかぎの掛かっていない玄関から居間に上がり込んできました。悲鳴を上げるとその男は何もせずに逃げて行きましたので,すぐに110番しました。」というものであった。
 そこで,Aは,Bとともに付近を捜したところ,上記通報から約30分後に,B方から約200メートル離れたコンビニエンスストアで雑誌を立ち読みしている男性甲をBが認め,「あの男です。」と指示した。その直後,甲が同店から出てきたので,Aは,同店前路上において,甲に対し職務質問を開始した。甲の外見からは本件住居侵入を犯したことをうかがわせる証跡は認められなかったものの,甲がAの質問には何も答えずに立ち去ろうとしたことから,Aは,同所で,甲を本件住居侵入の現行犯人として逮捕した。さらに,Aは,その場で甲の身体を捜索し,着衣のポケットからカメラ機能付携帯電話,名義の異なる複数のクレジットカード及び注射器を発見したため,これらを差し押さえた。
 以上のAの行為は適法か。

 

 具体的な答案の書き方です。まず、いきなり現行犯逮捕の要件を書く。これは、事前に覚えて準備しておく必要があります。

 

(「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」より引用)

現行犯逮捕(212条1項、213条)の要件
重要度:A
 現行犯逮捕(212条1項、213条)が認められるためには、犯罪及び犯人の明白性、犯罪の現行性(「現に罪を行い」)又は時間的接着性(「現に罪を行い終つた」)の明白性、逮捕の必要性(199条2項ただし書準用)が必要である。

(引用終わり)

 

 後は、順番に規範を書いて当てはめるだけです。これも覚えていないと書けませんから、事前に覚えておくしかありません(※1)。覚えていれば、後は吐き出すだけです。
 ※1 「現行犯逮捕着手後の追跡による時間の経過」の論点については、覚えていなくても現場で考えて書けそうです。同論点の重要度がCになっているのは、そのような趣旨によるものです。

 

(「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」より引用)

犯罪及び犯人の明白性の意義
重要度:B
 犯罪及び犯人の明白性とは、その犯人が特定の犯罪を行ったことを逮捕者が現認したことをいう。

時間的接着性の明白性の意義
重要度:B
 時間的接着性の明白性とは、犯行後時間的に極めて接着した段階にあることが、逮捕者に明らかであることをいう。

現行犯逮捕着手後の追跡による時間の経過
重要度:C
 現行犯逮捕の着手時に要件を充足する場合には、追跡が継続している限り、時間の経過があっても、現行性又は時間的接着性の明白性は否定されない。

現行犯人性の判断資料
重要度:B
 現行犯人であるか否かは、逮捕の現場における客観的外部的状況等から、逮捕者自身において直接明白に覚知し得る事実に基いて判断すべきである(西宮恐喝未遂事件参照)。

(引用終わり)

 

 大事なことは、肯定・否定両方の事実をきちんと答案に書き写すことです。自分が取る結論を基礎付ける事実しか拾わない人が多いのですが、それは評価を落とします。設問1では、ここで一番差が付くでしょう。

 

(参考答案より引用)

2.犯罪及び犯人の明白性とは、その犯人が特定の犯罪を行ったことを逮捕者が現認したことをいう。現行犯人であるか否かは、逮捕の現場における客観的外部的状況等から、逮捕者自身において直接明白に覚知し得る事実に基いて判断すべきである(西宮恐喝未遂事件参照)。
 確かに、Wは、犯行を目撃した。しかし、逮捕者である警察官は、犯人を見失ったWから犯人の特徴及び犯人の逃走した方向を聞き、Wから聴取していた犯人の特徴と合致する甲を発見し、職務質問を実施したところ、甲が犯行を認めたにすぎない。Vの殺害に使用されたサバイバルナイフは、Vの胸部に刺さった状態で発見された。したがって、犯人が特定の犯罪を行ったことを逮捕者が現認したとはいえない。以上から、犯罪及び犯人の明白性があるとはいえない。

3.時間的接着性の明白性とは、犯行後時間的に極めて接着した段階にあることが、逮捕者に明らかであることをいう。現行犯逮捕の着手時に要件を充足する場合には、追跡が継続している限り、時間の経過があっても、現行性又は時間的接着性の明白性は否定されない。
 確かに、Wは、犯行後、直ちに犯人を追跡した。しかし、Wは、追跡開始から約1分後、犯行現場から約200メートルの地点で犯人を見失ったから、追跡は継続していない。逮捕者である警察官が甲を発見したのは、犯行から約30分後、犯行現場から約2キロメートル離れた路上であった。したがって、犯行後時間的に極めて接着した段階にあることが、逮捕者に明らかであるとはいえない。以上から、時間的接着性の明白性があるとはいえない。

(引用終わり)

 

 犯罪及び犯人の明白性が否定された時点で、違法の結論が出るのだから、時間的接着性の明白性は論じるまでもないだろう、と思う人は、理論的には正しいしかし、論文試験で点を取る、という観点からは、誤っています本問の場合、時間的接着性の明白性についても当てはめる事情があるのだから、そこに配点があるそうであるなら、書かなければならないのです。真面目な人は、このような場合に、書き方に悩むようです。「実益のないことを書いているようで違和感がある。」などと考えてしまうわけですね。しかし、そんなことは、何も気にする必要はない。参考答案のように、開き直って2つ並べて書けば済むことです。論文試験の答案は、「理論的な正解を書く。」ものではありません。「限られた時間の中で、得点が最大化される文字を記載する。」ものです。仮に理論的におかしくても、それを書いて点が取れるなら、堂々と書かなければいけない。なお、上記参考答案中で、「Vの殺害に使用されたサバイバルナイフは、Vの胸部に刺さった状態で発見された。」という部分を書き写したのは、甲は凶器を持っていないし、凶器から犯人が甲であると考えることはできないという趣旨です。「なら答案にそう書けよ。」と思う人で、現場で時間内に書ける人は、そう書けばよいでしょう。一方で、参考答案は、逮捕の必要性については何も当てはめをしていません。逮捕の必要性の配点は低いでしょうし、論理的にも、違法の結論とするならば、敢えて検討する必要はないからです。受かりにくい人は、こういったところでも、「犯罪及び犯人の明白性と時間的接着性の明白性まで当てはめたのだから、逮捕の必要性まで当てはめないとダメなのではないか。」と考えて、律儀に書こうとする傾向があります。そうしたことが、途中答案の原因となっていないか、考える必要があるでしょう。

 

 設問2です。小問1は、訴因の特定の規範を書いて、当てはめるだけの問題です。訴因の特定については、判例(最決平26・3・17)の規範を明示できたかどうかがポイントとなります。「判例は識別説だ。」という理解から、後半部分を落とす人が多いので、注意を要します。

 

最決平26・3・17より引用。太字強調は筆者。)

 いずれの事件も,上記1の訴因における罪となるべき事実は,その共犯者,被害者,期間,場所,暴行の態様及び傷害結果の記載により,他の犯罪事実との区別が可能であり,また,それが傷害罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされているから,訴因の特定に欠けるところはないというべきである。

(引用終わり)

(「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」より引用)

訴因特定(256条3項)の程度
重要度:A
 訴因が特定(256条3項)されたというためには、他の犯罪事実との区別が可能であり、起訴に係る罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされていることを要する(包括一罪となる傷害罪の訴因に関する判例参照)。

(引用終わり)

 

 当てはめは、上位を狙わないのであれば、問題文を書き写して終わりです。

 

(参考答案より引用)

 訴因が特定(256条3項)されたというためには、他の犯罪事実との区別が可能であり、起訴に係る罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされていることを要する(包括一罪となる傷害罪の訴因に関する判例参照)。
 ②の公訴事実に記載された訴因は、「被告人は、甲と共謀の上、平成29年5月21日午後10時頃、H県I市J町1丁目2番3号先路上において、Vに対し、殺意をもって、甲がサバイバルナイフでVの胸部を1回突き刺し、よって、その頃、同所において、同人を左胸部刺創による失血により死亡させて殺害したものである。」というものであり、他の犯罪事実との区別が可能であり、Vに対する殺人の共謀共同正犯の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている。
 よって、②の公訴事実は、訴因の記載として罪となるべき事実を特定したものといえる。

(引用終わり)

 

 これでは足りない、と思う人も多いでしょう。しかし、この部分をきちんと説明できている人は、実際にはかなり少ないはずです。例えば、練馬事件判例(最大判昭33・5・28)を参考にして、似たようなことを書いた人もいたでしょう。

 

練馬事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつで互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。… 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならないから、これを認めるためには厳格な証明によらなければならないこというまでもない。しかし「共謀」の事実が厳格な証明によつて認められ、その証拠が判決に挙示されている以上、共謀の判示は、前示の趣旨において成立したことが明らかにされれば足り、さらに進んで、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についていちいち具体的に判示することを要するものではない

(引用終わり)

 しかし、上記の判示の趣旨を正しく理解して書ける人は、意外といません。例えば、以下のような誤った記述をする人が多いのです。

「共謀共同正犯における共謀は、「罪となるべき事実」そのものではないから、共謀の日時、場所及び方法の特定は不要である。」
「共謀共同正犯における実行正犯の実行行為の日時、場所及び方法は「罪となるべき事実」そのものであるから特定が必要であるが、共謀の日時、場所及び方法は「罪となるべき事実」そのものではないから、特定を要しない。」

 上記はなぜ、誤っているのか。まず、256条3項を確認しておきましょう。

 

(256条3項)
 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

 

 特定の対象は、「罪となるべき事実」であり、それを特定するための手段が、「日時、場所及び方法」である。したがって、日時、場所及び方法は、基本的に罪となるべき事実そのものではない、ということになります。

 

最大判昭37・11・28(白山丸事件)より引用。太字強調は筆者。)

 刑訴二五六条三項において、公訴事実は訴因を明示してこれを記載しなければならない、訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならないと規定する所以のものは、裁判所に対し審判の対象を限定するとともに、被告人に対し防禦の範囲を示すことを目的とするものと解されるところ、犯罪の日時、場所及び方法は、これら事項が、犯罪を構成する要素になつている場合を除き、本来は、罪となるべき事実そのものではなく、ただ訴因を特定する一手段として、できる限り具体的に表示すべきことを要請されているのであるから、犯罪の種類、性質等の如何により、これを詳らかにすることができない特殊事情がある場合には、前記法の目的を害さないかぎりの幅のある表示をしても、その一事のみを以て、罪となるべき事実を特定しない違法があるということはできない。

(引用終わり)

 

 このことの具体的な意味は、意外と理解されていないところです。「罪となるべき事実」=「犯罪事実」とは、殺人罪を例にすれば、「人を殺すこと」です。

 

(刑法199条)
 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

 

 いつ、どこで、どんな方法であるか、被害者が誰であるかを問わず、人を殺せば、殺人罪が成立する。これは明らかです。したがって、日時、場所及び方法は、通常は犯罪事実を構成しない。ただし、犯罪事実にこれらが含まれる場合もあります。例えば、名誉毀損罪においては、公然と事実を摘示する方法であることが、強盗罪においては、暴行又は脅迫の方法を用いることが犯罪事実を構成します。

(刑法230条1項)
 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

(刑法236条)
 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 これが、白山丸事件判例のいう、「犯罪の日時、場所及び方法は、これら事項が、犯罪を構成する要素になつている場合を除き、本来は、罪となるべき事実そのものではなく」ということの具体的な意味です。
 次に、白山丸事件のいう、「訴因を特定する一手段として、できる限り具体的に表示すべきことを要請されている」ということと、最決平26・3・17が、「他の犯罪事実との区別」と、「構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている」ことをもって、訴因の特定についての判断基準としていることの意味について、説明しましょう。
 犯罪の日時、場所及び方法が犯罪事実を構成しないとしても、訴訟においては、これを特定しないわけにはいきません。なぜか。例えば、甲、乙が別々の機会に殺害され、それぞれ捜査の対象にされているような場合に、「被告人は、いつ、どこで、どんな方法で、誰を殺したかはわからないが、とにかく人を殺した。」として起訴されても、甲が殺害された殺人事件のことなのか、乙が殺害された殺人事件のことなのかわかりません。少なくとも、被害者が誰であるかを確定しておかないと、どの事件が起訴されたのか、審判の対象が確定できないわけです。これが、「他の犯罪事実との区別」という観点です。他方、誰が殺されたのかさえ確定していれば、日時、場所及び方法は、他の犯罪事実との区別という見地からは、必ずしも特定の必要はないこれは殺人罪の特徴で、平成29年9月10日に何者かがVを殺害し、その1か月後の同年10月10日にも何者かがVを殺害した、ということはないわけですから、「Vを殺したって、いつの方だよ?」という話にはならないということですね。例えば、窃盗罪の事例で、平成29年9月10日に何者かがV宅で10万円を盗み、その1か月後の同年10月10日にもまた何者かがV宅で10万円を盗んだ、というような場合には、「V宅で10万円盗んだって、いつの方だよ?」という話になる。そのような場合には、日時を特定しておかないと、他の犯罪事実との区別ができないということになります。なお、日時、場所及び方法とは異なりますが、殺人罪の場合は、客観面だけからは傷害致死との区別ができないので、「殺意をもって」という文言を特に記載します。一般に、故意は客観面から明らかとなるので、犯罪事実として敢えて記載しないのですが、このような場合は記載を要するのです。
 「構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている」という要件との関係を考えます。まず、前提となるのは、公訴事実に記載された事実が認定された場合に、起訴された罪が成立するといえる場合でなければならないということです。

 

(339条1項)
 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。
一 第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。
二 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。
三 公訴が取り消されたとき。
四 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。
五 第十条又は第十一条の規定により審判してはならないとき。

 

 「被告人がいつ、どこで、何をしたかは、全くわからない。Vは死亡した。」というような公訴事実の記載では、当然ですが、殺人罪が成立するとすらいえません。ですから、少なくとも、「人を殺した」と評価できるような具体的な事実の記載がなければいけないのです。
 そして、ここからが本題ですが、殺人罪で起訴された場合に、「被告人が人を殺した」ことを立証し、裁判所がこれを認定するためには、合理的な疑いを容れない程度の証明が必要です。いくら犯罪の日時、場所及び方法が犯罪事実を構成しないといっても、「いつ、どこで、どんな方法で殺したかはわからないが、とにかく被告人がVを殺したことは間違いない。」といえるような状況は、通常はないわけです。だから、合理的な疑いを容れない程度の証明があったというためには、ある程度は日時、場所及び方法を特定しておかなければならない。逆にいえば、「被告人が人を殺した」ことについて、合理的な疑いを容れない程度の証明があったと認め得るならば、それ以上の特定は必ずしも必要がないこのことを、最決平26・3・17は、「構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている」と表現するわけです。
 さて、このことを、共同正犯における共謀について考えてみましょう。まず、共謀は、共同正犯の成立要件ですから、犯罪事実を構成する要素です。練馬事件判例が、「「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならない」と言っているのは、この趣旨です。同時に、共謀があれば、いつ、どこで、どんな方法でなされたかは問わないわけですから、共謀の日時、場所及び方法は、犯罪事実を構成しない。とはいえ、上記のとおり、「他の犯罪事実との区別」ができ、「構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている」といえる程度には特定されている必要があるということになります。
 まず、「他の犯罪事実との区別」について考えてみましょう。ここでのポイントは、通常は、共謀の対象である犯罪の内容が特定されている限り、共謀の日時、場所及び方法が特定されなくても、他の犯罪事実との区別が可能だということです。例えば、先の窃盗罪の事例で、平成29年9月10日に何者かがV宅で10万円を盗み、その1か月後の同年10月10日にもまた何者かがV宅で10万円を盗んだ、というような場合であっても、共謀の対象が、同年9月10日にV宅に盗みに入る、というものであれば、共謀の日時、場所及び方法がどのようなものであるかによって、別の犯罪事実についての共同正犯が成立することになる、ということはあり得ないのです。つまり、「他の犯罪事実との区別」との観点からは、共謀の対象さえ確定していれば足り、共謀の日時、場所及び方法を特定する必要は必ずしもない、ということになります。
 それでは、「構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている」というためには、どの程度の特定が必要でしょうか。先ほどの殺人の場合には、「いつ、どこで、どんな方法で殺したかはわからないが、とにかく被告人がVを殺したことは間違いない。」などということはほとんどない、だから、ある程度は殺害した日時、場所及び方法が明らかでないといけないだろう、という話でした。しかし、共謀の場合には、「いつ、どこで、どんな方法で共謀したかはわからないが、とにかく被告人が実行犯と共謀したことは間違いない。」ということは、それなりにあり得るわけです。例えば、被告人が見張りをし、別の実行犯がV宅に侵入して窃盗を行った、というような場合、何の共謀もないのにそのような役割分担をするだろうか、という話になるでしょう。しかし、いつ、どこで、どんな方法で共謀したかはわからない。あるいは、犯行計画を記載したメモが証拠として存在するから、その元になった計画を策定した共謀があったことは間違いない。しかし、その元になった犯行計画がいつ、どこで、どんな方法で策定されたかはわからない。このような事例は、それなりによくあるわけです。ですから、共謀の日時、場所及び方法が特定されていなくても、「構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている」といえる場合は、それなりにあるこのことをもって、練馬事件判例は、以下のように判示しているのです。

 

練馬事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつで互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。 …「共謀」の事実が厳格な証明によつて認められ、その証拠が判決に挙示されている以上共謀の判示は、前示の趣旨において成立したことが明らかにされれば足り、さらに進んで、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についていちいち具体的に判示することを要するものではない

(引用終わり)

 

 ここまで理解すれば、前に挙げた2つの例は、太字強調部分が誤っていることがわかるでしょう。

「共謀共同正犯における共謀は、「罪となるべき事実」そのものではないから、共謀の日時、場所及び方法の特定は不要である。」
「共謀共同正犯における実行正犯の実行行為の日時、場所及び方法は「罪となるべき事実」そのものであるから特定が必要であるが、共謀の日時、場所及び方法は「罪となるべき事実」そのものではないから、特定を要しない。」

 以上を踏まえた上で、本問で適切な理由付けを付すとすれば、以下のような論述になるでしょう。

 

【論述例】

 訴因が特定(256条3項)されたというためには、他の犯罪事実との区別が可能であり、起訴に係る罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされていることを要する(包括一罪となる傷害罪の訴因に関する判例参照)。
 ②の公訴事実に記載された訴因において、共謀の対象となる殺人の客体はVとされているから、共謀の日時、場所及び方法がどのようなものであれ、被告事件がVに対する殺人の共謀共同正犯以外の犯罪となることはあり得ない。したがって、他の犯罪事実との区別が可能である。また、同訴因において、共謀の対象となる殺人の日時、場所、方法、被害者の死因等につき、平成29年5月21日午後10時頃、H県I市J町1丁目2番3号先路上において、Vに対し、殺意をもって、甲がサバイバルナイフでVの胸部を1回突き刺し、よって、その頃、同所において、同人を左胸部刺創による失血により死亡させて殺害した旨が記載されているから、殺人罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている。そうである以上、甲との共謀の存在について合理的な疑いを容れない程度の証明がなされる限り、共謀の日時、場所及び方法が特定されなくても、Vに対する殺人の共謀共同正犯の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされているといえる。
 よって、②の公訴事実は、訴因の記載として罪となるべき事実を特定したものといえる。

 

 こういったことを、正確に現場で書けるかというと、普通はできないわけです。そういうわけで、合格ラインという意味では、参考答案程度でよいのだろうと考えています。

 小問2です。小問2の端的な答えは、「釈明しただけで訴因変更はしてないんだから、訴因の内容になるわけねーだろ。」ということに尽きます。とはいえ、「釈明しただけで当然に訴因の内容になる場合がある。」と説明される場合があります。それは、求釈明時の訴因が不特定であって、釈明事項が訴因の内容になると考えて初めて不特定が治癒されるといえる場合です。仮に、本問で、「乙は、甲との間で、平成29年5月18日、甲方において、Vを殺害する旨の謀議を遂げた。」 という③の釈明事項が訴因に記載されていなければ、訴因は特定されていない、と考えてみましょう。この場合に、上記の「釈明しただけで訴因変更はしてないんだから、訴因の内容になるわけねーだろ。」という原則論を貫くと、こうなります。

裁判所「このままだと訴因不特定なので、共謀の日時、場所について釈明はありませんか?」
検察官「それでは、『乙は、甲との間で、平成29年5月18日、甲方において、Vを殺害する旨の謀議を遂げた。』ということで。」
弁護人「乙は、同日は終日、知人である丙方にいた。したがって、共謀については否認します。」
裁判所「そうですか。まあ、検察官は釈明しただけで訴因変更してないので、訴因は不特定なままですね。なので、338条4号に基づいて公訴棄却判決します。」
検察官「えっ?」
弁護人「えっ?」

 もちろん、これでも検察官は釈明事項を訴因に加えて再度起訴できるわけですが、それは時間の無駄、講学上の用語でいえば、訴訟経済を害するでしょう。そこで、このような場合には、当然に釈明事項が訴因の内容となる、と考えられているわけです。もっとも、これはやや便宜的にすぎるという側面もあります。このような場合に検察官の釈明事項が訴因の内容になるのは、その釈明が法的には訴因変更を伴う補正であると理解できるからでしょう。そうだとすれば、被告人が在廷していない場合(規則209条6項参照)には、釈明だけでは足りず、訴因変更の手続(※2)をとることが必要であると考える余地は、十分あるでしょう。仮に、検察官が訴因変更の手続をとろうとしない場合には、裁判所は改めてその旨を求釈明し、それでも検察官が応じないならば、訴因変更を命ずるべきときもあるように思います
 いずれにせよ、本問では訴因は不特定ではないと考えるのが一般でしょうから、釈明事項は訴因の内容とならない、と解答すれば足ります。参考答案は、それだけを簡潔に書いています。
 ※2 被告人が在廷している場合(規則209条6項)を除き、検察官は被告人の数に応じた謄本を添付した書面を提出し(同条1項、2項)、裁判所は謄本を被告人に送達し(同条3項)、検察官は公判期日において提出した書面を朗読する(同条4項)。そして、裁判所がこれを許可するときは、被告人へ通知する(法312条3項)。

 設問3です。当事者間では、平成29年5月18日の共謀の有無、具体的には、同日に甲方にいたのか、丙方にいたのか、ということを争っていたのに、裁判所がいきなり同月11日の共謀を認定してよいか、ということが問われています。設問2の解答を前提にすれば、共謀の日時は訴因の内容となっていませんから、訴因変更の要否は問題となりません。問題となるのは、争点逸脱認定です。争点逸脱認定については、最判昭58・12・13(よど号ハイジャック事件)があります。

 

(よど号ハイジャック事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 被告人が所属するA派内部において、昭和四五年一月以降、海外における国際根拠地の設定及びそのための派遣要員の国外脱出計画が存在し、その手段としてのハイジヤツクに向けた種々の準備が行われていたこと、被告人が右国外派遣要員の母体とされる「L軍」の隊長という地位にあり、ハイジヤツクを実行するうえで必要な資金や武器の獲得計画に重要な役割を果たしたことなどの点については、証拠上第一審判決の認定をおおむね是認することができるが、他方、A派内部において、国外脱出の手段としてのハイジヤツク計画が現実のものとして具体化してきたのは、三月上旬以降のことであること、被告人は、三月四日から一二日まで京都市に居て、同日夜帰京してきたものであり、帰京以前に、H、Cらと本件ハイジヤツクに関する具体的な話合いをしたことを窺わせる的確な証拠の見当らないことなども、記録上明らかなところである。そして、前記のような訴訟の経過によると、本件において、当事者双方は、被告人に対し本件ハイジヤツクに関する共同正犯の刑責を負わせることができるかどうかが、一にかかつて、被告人が、京都から帰つた一二日以降逮捕された一五日朝までの間にH、CらA派最高幹部とともに本件ハイジヤツクに関する具体的な謀議を遂げたと認めうるか否かによるとの前提のもとに、右謀議成否の判断にあたつては、証拠上本件ハイジヤツクに関する具体的な話合いが行われたとされている三月一三日の喫茶店「G」における協議(第一次協議)に被告人が加わつていたかどうかの点がとりわけ重要な意味を有するという基本的認識に立つて訴訟を追行したことが明らかであり、一、二審裁判所もまた、これと同一の基本的認識に立つものであると認められる。
 ところで、原審は、第一審と異なり、一三日夜喫茶店「G」において第一次協議が行われたとされる時間帯における被告人のアリバイの成立を認めながら、同夜の協議は現実には一二日夜に同喫茶店において行われたもので、被告人もこれに加わつており、さらに、一三日昼、一四日にも被告人を含めた顔ぶれで右協議が続行されているとして、被告人に対し本件ハイジヤツクの共謀共同正犯の成立を肯定したのである。
 しかし、三月一二日夜喫茶店「G」及びホテル「f」において被告人がH、Cらと顔を合わせた際に、ごれらの者の間で本件ハイジヤツクに関する謀議が行われたという事実は、第一審の検察官も最終的には主張せず、第一審判決によつても認定されていないのであり、右一二日の謀議が存在したか否かについては、前述のとおり、原審においても検察官が特段の主張・立証を行わず、その結果として被告人・弁護人も何らの防禦活動を行つていないのである。したがつて、前述のような基本的認識に立つ原審が、第一審判決の認めた一三日夜の第一次協議の存在に疑問をもち、右協議が現実には一二日夜に行われたとの事実を認定しようとするのであれば、少なくとも、一二日夜の謀議の存否の点を控訴審における争点として顕在化させたうえで十分の審理を遂げる必要があったと解されるのであつて、このような措置をとることなく、一三日夜の第一次協議に関する被告人のアリバイの成立を認めながら、率然として、右第一次協議の日を一二日夜であると認めてこれに対する被告人の関与を肯定した原審の訴訟手続は、本件事案の性質、審理の経過等にかんがみると、被告人に対し不意打ちを与え、その防禦権を不当に侵害するものであつて違法であるといわなければならない。

(引用終わり)

 

 本問でも、上記判例をそのまま当てはめればいいかというと、必ずしもそうではありません。訴因変更の要否で有名な最決平13・4・11(青森保険金目的放火・殺人事件判例)があるからです。

 

(青森保険金目的放火・殺人事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 殺人罪の共同正犯の訴因としては,その実行行為者がだれであるかが明示されていないからといって,それだけで直ちに訴因の記載として罪となるべき事実の特定に欠けるものとはいえないと考えられるから,訴因において実行行為者が明示された場合にそれと異なる認定をするとしても,審判対象の画定という見地からは,訴因変更が必要となるとはいえないものと解される。とはいえ,実行行為者がだれであるかは,一般的に,被告人の防御にとって重要な事項であるから,当該訴因の成否について争いがある場合等においては,争点の明確化などのため,検察官において実行行為者を明示するのが望ましいということができ,検察官が訴因においてその実行行為者の明示をした以上,判決においてそれと実質的に異なる認定をするには,原則として,訴因変更手続を要するものと解するのが相当である。しかしながら,実行行為者の明示は,前記のとおり訴因の記載として不可欠な事項ではないから,少なくとも,被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ,判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には,例外的に,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる実行行為者を認定することも違法ではないものと解すべきである。

(引用終わり)

 

 上記判例のうち、訴因の特定に必要でない事項に関する部分の判示は、「争点の明確化などのため…明示するのが望ましい…明示をした以上…実質的に異なる認定をするには,原則として,訴因変更手続を要する」としていることから読み取れるように、一種の争点逸脱認定についての判示です。これを争点逸脱認定一般の場合に敷衍すると、以下のようになるでしょう。

 

(「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」より引用)

争点顕在化措置の要否
重要度:B
 訴因に含まれない事実であっても、一般的に被告人の防御にとって重要な事項について、当事者の前提とする事実と異なる事実を認定する場合には、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が当事者の前提とする事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえないときを除き、裁判所は、求釈明(規則208条1項)等によって争点を顕在化させる措置をとることを要する(よど号ハイジャック事件判例及び訴因変更に関する青森保険金目的放火・殺人事件判例参照)。

(引用終わり)

 

 現在では、単に当事者の前提とする事実と異なるから、というだけでなく、青森保険金目的放火・殺人事件判例の例外要件を充足するか、という点も検討する必要があるのです。本問は、上記の規範を挙げて、当てはまる事実を列挙すれば終わりです。

 

(参考答案より引用)

 訴因に含まれない事実であっても、一般的に被告人の防御にとって重要な事項について、当事者の前提とする事実と異なる事実を認定する場合には、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が当事者の前提とする事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえないときを除き、裁判所は、求釈明(規則208条1項)等によって争点を顕在化させる措置をとることを要する(よど号ハイジャック事件判例及び訴因変更に関する青森保険金目的放火・殺人事件判例参照)。
 共謀のあった日は、一般的に被告人の防御にとって重要な事項である。検察官は、乙の公判前整理手続において、裁判長からの求釈明に対し、「乙は…平成29年5月18日…謀議を遂げた。」旨釈明した。これに対し、乙の弁護人は、甲との共謀の事実を否認し、「乙は、同日は終日、知人である丙方にいた。」旨主張したため、本件の争点は、「甲乙間で、平成29年5月18日…謀議があったか否か。」であるとされ、乙の公判における検察官及び弁護人の主張・立証も上記釈明の内容を前提に展開された。したがって、裁判所が、「乙は…平成29年5月11日…謀議を遂げた。」と認定することは、当事者の前提とする事実と異なる事実を認定する場合であって、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものといえる。したがって、裁判所は、求釈明(規則208条1項)等によって争点を顕在化させる措置をとることを要する。
 よって、裁判所が上記措置をとらないまま、上記の認定をして有罪の判決をすることは許されない。

(引用終わり)

 

 本問のような問題では、「現行犯逮捕や訴因制度の趣旨に遡ったかどうかで合否を分ける。」などといわれがちです。当サイトは、それは誤っていると考えています。旧司法試験では、説の分岐や、制度趣旨に遡ってそこから自説を説明できるか、などが問われていました。配点は、他説の紹介とその批判、趣旨からの自説の説明の部分に集中していた。そのため、自説を事案に当てはめる部分は、「本問では、上記の~に当たるといえる。」などと、2行程度しか書いていなくても、合格できたのです。これに対応して、予備校が、他説の紹介と批判、趣旨からの自説の説明方法を定型化して論証集や論点ブロックカードというものを作った。当時は、それを貼り付ければ、本当に合格できたのです。しかし今は、意図的にそれでは受からないような配点に変えられています。かつての予備校が用意していた論証、すなわち、規範の理由付けに配点をおかないようにすれば、予備校論証を丸暗記する受験生を落とすことができる。そして、当てはめの事実の摘示に大きな配点を置けば、それほど勉強時間をとれない若手も点が取れる。一方で、知識の豊富な年配者は、旧試験時代のクセで規範の理由付けを延々と書いてしまったり、余計な応用論点を拾いに行ってしまったりしやすいだけでなく、体力や反射神経の衰えから、当てはめの事実を摘示する時間的余裕がなくて、事実をほとんど摘示できないので、どんなに勉強してもなかなか受からない。若手を採りたい法務省としては、今の採点方式は非常に都合がよいのです(若手優遇策の歴史的変遷については、「平成28年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」を参照。)。参考答案は、訴因制度の趣旨を一切書いていません。これでいい。もちろん、参考答案程度では時間が余ってしまって困る、というのであれば、趣旨に遡ったり、事実の評価を増やせばよいでしょう。しかし、ほとんどの人はその余裕がないはずです。今回、「現行犯逮捕が認められた趣旨は~」、「訴因制度の趣旨は~」と書いていて時間切れになった人は、特にこの点に気を付けないと、毎年、「わかってはいたのに書き切れなかった。」を繰り返すことになってしまうでしょう。
 参考答案中の太字強調部分は、「司法試験定義趣旨論証集刑訴法」に準拠した部分です。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.現行犯逮捕(212条1項、213条)が認められるためには、犯罪及び犯人の明白性、犯罪の現行性(「現に罪を行い」)又は時間的接着性(「現に罪を行い終つた」)の明白性、逮捕の必要性(199条2項ただし書準用)が必要である

2.犯罪及び犯人の明白性とは、その犯人が特定の犯罪を行ったことを逮捕者が現認したことをいう現行犯人であるか否かは、逮捕の現場における客観的外部的状況等から、逮捕者自身において直接明白に覚知し得る事実に基いて判断すべきである(西宮恐喝未遂事件参照)
 確かに、Wは、犯行を目撃した。しかし、逮捕者である警察官は、犯人を見失ったWから犯人の特徴及び犯人の逃走した方向を聞き、Wから聴取していた犯人の特徴と合致する甲を発見し、職務質問を実施したところ、甲が犯行を認めたにすぎない。Vの殺害に使用されたサバイバルナイフは、Vの胸部に刺さった状態で発見された。したがって、犯人が特定の犯罪を行ったことを逮捕者が現認したとはいえない。以上から、犯罪及び犯人の明白性があるとはいえない。

3.時間的接着性の明白性とは、犯行後時間的に極めて接着した段階にあることが、逮捕者に明らかであることをいう現行犯逮捕の着手時に要件を充足する場合には、追跡が継続している限り、時間の経過があっても、現行性又は時間的接着性の明白性は否定されない
 確かに、Wは、犯行後、直ちに犯人を追跡した。しかし、Wは、追跡開始から約1分後、犯行現場から約200メートルの地点で犯人を見失ったから、追跡は継続していない。逮捕者である警察官が甲を発見したのは、犯行から約30分後、犯行現場から約2キロメートル離れた路上であった。したがって、犯行後時間的に極めて接着した段階にあることが、逮捕者に明らかであるとはいえない。以上から、時間的接着性の明白性があるとはいえない。

4.よって、①の現行犯逮捕は、違法である。

第2.設問2

1.小問1

 訴因が特定(256条3項)されたというためには、他の犯罪事実との区別が可能であり、起訴に係る罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされていることを要する(包括一罪となる傷害罪の訴因に関する判例参照)
 ②の公訴事実に記載された訴因は、「被告人は、甲と共謀の上、平成29年5月21日午後10時頃、H県I市J町1丁目2番3号先路上において、Vに対し、殺意をもって、甲がサバイバルナイフでVの胸部を1回突き刺し、よって、その頃、同所において、同人を左胸部刺創による失血により死亡させて殺害したものである。」というものであり、他の犯罪事実との区別が可能であり、Vに対する殺人の共謀共同正犯の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされている。
 よって、②の公訴事実は、訴因の記載として罪となるべき事実を特定したものといえる。

2.小問2

 ②の公訴事実の訴因の記載は適法であるから、③の検察官の釈明をもって訴因変更を伴う補正とみるべき余地はない。
 したがって、訴因変更の手続がとられていない本問では、③の検察官の釈明した事項は、訴因の内容とならない。

3.小問3

 訴因に含まれない事実であっても、一般的に被告人の防御にとって重要な事項について、当事者の前提とする事実と異なる事実を認定する場合には、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、判決で認定される事実が当事者の前提とする事実と比べて被告人にとってより不利益であるとはいえないときを除き、裁判所は、求釈明(規則208条1項)等によって争点を顕在化させる措置をとることを要する(よど号ハイジャック事件判例及び訴因変更に関する青森保険金目的放火・殺人事件判例参照)
 共謀のあった日は、一般的に被告人の防御にとって重要な事項である。検察官は、乙の公判前整理手続において、裁判長からの求釈明に対し、「乙は…平成29年5月18日…謀議を遂げた。」旨釈明した。これに対し、乙の弁護人は、甲との共謀の事実を否認し、「乙は、同日は終日、知人である丙方にいた。」旨主張したため、本件の争点は、「甲乙間で、平成29年5月18日…謀議があったか否か。」であるとされ、乙の公判における検察官及び弁護人の主張・立証も上記釈明の内容を前提に展開された。したがって、裁判所が、「乙は…平成29年5月11日…謀議を遂げた。」と認定することは、当事者の前提とする事実と異なる事実を認定する場合であって、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものといえる。したがって、裁判所は、求釈明(規則208条1項)等によって争点を顕在化させる措置をとることを要する。
 よって、裁判所が上記措置をとらないまま、上記の認定をして有罪の判決をすることは許されない。

以上

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