2016年08月21日

平成28年予備試験論文式一般教養の解法と参考答案

1.予備試験の論文式試験において、一番どうしていいかわからない、という感覚を持つのが、一般教養だろうと思います。一般教養の対策は何もしない、という人も、結構いるようです。しかし、それは非常にもったいないことです。論文式試験における一般教養科目の配点は、他の法律基本科目と同じ50点です。

 

(「司法試験予備試験に関する配点について」より引用)

 法律基本科目及び一般教養科目については各科目いずれも50点満点とする。

(引用終わり)

 

 ですから、一般教養の対策をしないということは、法律基本科目を1科目捨てていることと同じなのです。そして、一般教養を解くための方法論は、大学受験の現代文のテクニックと同じであり、一度解法を理解すれば、安定して上位を取れるおいしい科目でもあります。直前に覚えるような知識もありませんから、余裕のある時期に解法を確立しておけば、むしろ、安定した得点源になるのです。
 もっとも、一般教養の解法が、大学受験の現代文のテクニックと同じであるということ自体、あまり知られていないように思います。また、司法試験受験界には、大学受験の現代文のテクニックを知っている人自体が少ないのかもしれません。そこで、今回は、その解法を、具体的に、設問の目の付け所から文章の読み方、答案用紙に書き込む文言まで、詳細に解説しておきたいと思います。問題文は、こちらから、各自参照して下さい。

2.設問1です。直接的な問いは、「何が求められるであろうか」という部分です。ただ、それよりもまず、目を付けるべきは、「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ」という部分です。これは、解答の中身を構成する要素だからです。より具体的に言えば、答案で、「学問における専門家集団の役割は~」という形で必ず書くことになる、ということですね。ですから、まずは、これが文章中のどの部分を指しているか、ということを、検討することになるわけです。
 この際に、気を付けたいのは、「実質的な意味を考えようとしない。」ということです。自分の頭で考えようとすると、10人いれば10人考え方が違いますから、どんどん出題者の期待する解答からズレていきます。そうではなく、文法の法則に従って、形式的、客観的に考えていく。それが、大学入試の現代文の基本であり、そのまま予備試験の一般教養の基本ともなるわけです。この場合のテクニックは、「キーワードに着目し、それと同じ言葉、あるいは同義語、類義語、対義語を探す。」ということです。「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割」の主要な要素は、「役割」です。答案では、「学問における専門家集団の役割は~という役割である。」と書くことになるからですね。そこで、「役割」を探します。すると、「個々の学問分野において研究者が果たしている役割も,基本的にこれと同じである。」という文章を見付けることができるはずです。これを見た時に、「これは楽だな。」と感じるべきです。なぜなら、この文章の中に、他のキーワードである、「学問」と「研究者」が既に入っているからです。「学問における専門家集団の役割」と、「個々の学問分野において研究者が果たしている役割」は、ほとんど同じ意味ですね。ですから、今度は、「基本的にこれと同じである。」の「これ」が何を指しているかを確定すればよい。これも、自分の頭で考えるのではなく、文法法則に従って、「これ」のある文章の直前のものを指していると考えて、直前の文章を見ればよい。すると、「例えば法律・医療・会計などの領域では,各種の専門家が一定の条件下で知識を独占的に運用し続けている。」とあります。これをそのまま、「これ」に当てはめて、「学問における専門家集団の役割は~という役割である。」という形式にしてみると、

 「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割は、法律・医療・会計などの領域では、一定の条件下で知識を独占的に運用し続ける役割である。」

という文章になります。これでもよさそうです。ただ、気にすべきは、「例えば」となっているということです。「例えば」は抽象的・一般的なものを示した後、それに沿う具体例を挙げる場合に使う言葉です。だとすれば、「例えば」の前の文章は、より抽象的・一般的なものがあるはずです。その意識を持って、前の文章を見てみます。すると、「その一方で,「知識」と「情報」を概念的に区分することに固有の関心=利害(interest)を持つ人々も,いまだに存在する。」という文章がある。この文章のうち、「固有の関心=利害(interest)を持つ人々」とは、ここでは「学問における専門家集団」とほぼ同義の表現として用いられていることがわかるでしょう。そして、「「知識」と「情報」を概念的に区分すること」は、「役割」に当てはまり得る表現である。そうすると、これを先の文章と合わせて、「学問における専門家集団の役割は~」の形式で文章化すると、

 「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割は、「知識」と「情報」を概念的に区分する役割であり、例えば、法律・医療・会計などの領域では、一定の条件下で知識を独占的に運用し続けるという役割である。」

という文章になります。とりあえず、これで、「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ」という要求には応えられそうです。
 そこで、今度は、直接的な問いである、「一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには,何が求められるであろうか。」に対する解答を考えてみましょう。答案用紙には、「一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには~が求められる。」というような形で書くことになるでしょう。設問の文章中のどの部分が、この「~」の部分に該当するのか、そのような目で、文章を見ることになります。ここでも、自分の頭で考えてはいけません。キーワードに着目して、形式的に考えればよいのです。ここでのキーワードは、「学問的知識」です。このキーワードを探しながら文章を読むと、最後に出てきます。最後の文章で注目すべきは、「すなわち」という接続詞です。「すなわち」は、直前の文章と同じ意味のことを言い換える場合に使う接続詞です。「つまり」とか、「換言すれば」などと同じ意味ですね。そこで、前の文章を見ると、「個々の学問分野において研究者が果たしている役割も,基本的にこれと同じである。」という前に見た文章です。そして、ここでいう「これ」の意味は、前に確認しましたね。もう一度確認すると、

 「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割は、「知識」と「情報」を概念的に区分する役割であり、例えば、法律・医療・会計などの領域では、一定の条件下で知識を独占的に運用し続けるという役割である。」

ということでした。ここまで来ると、設問が、「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割に触れつつ」と言っていた意味がわかります。
 さて、上記の文章に続けて、最後の文章は、「すなわち研究者は,「斯界の権威」として学問的知識の生産や流通にコミットし続けている。」としているわけですから、研究者が、「学問的知識の生産や流通にコミットし続けている」こととは、「「知識」と「情報」を概念的に区分する」ことを指しているのであり、「一定の条件下で知識を独占的に運用し続ける」ことを指していることになります。「「知識」と「情報」を概念的に区分する」ことによって、学問的知識が生産され、それを「独占的に運用し続ける」ことによって、学問的知識が流通しているともいえるでしょう。ここまで来ると、「一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには,何が求められるであろうか。」に対する解答が見えてきますね。「「知識」と「情報」を概念的に区分する」ことによって、学問的知識が生産される、すなわち、「知識」と「情報」を概念的に区分すると、学問的知識が生まれるのですから、「学問的知識」が「学問的知識」であるためには、「知識」と「情報」が概念的に区分されることが求められるというわけです。
 さあ、これで解答がわかりました。後は、これを解答用紙に書く文章としてまとめるだけです。書出しは、「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割は」で始めるのが、書きやすそうです。

 「学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割は、「知識」と「情報」を概念的に区分する役割であり、例えば、法律・医療・会計などの領域では、一定の条件下で知識を独占的に運用し続けるという役割である。」

 先に確認したとおり、学問的知識は、研究者が上記の役割を果たす、すなわち、「「知識」と「情報」を概念的に区分する」ことによって生産されていたのでした。このことを文章化すると、

 「研究者は、上記の役割を果たすことにより、「斯界の権威」として学問的知識の生産や流通にコミットし続けている。すなわち、学問的知識は、「知識」と「情報」を概念的に区分することによって生み出される。 」

ということになるでしょう。そして、結論です。

 「したがって、一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには、「知識」と「情報」が、研究者によって概念的に区分されることが求められる。」

 これが、設問1の解答ということになるわけです。

3.では、設問2を見ていきましょう。直接的な問いは、「「国家」はいかなる立場に置かれているであろうか。」というものです。ですから、解答用紙には、「「国家」は~の立場に置かれている。」と書くことになるのでしょう。ただ、ここでも、この直接的な問いの解答をいきなり探さない方が解きやすい。まずは、解答の際の注文として、「具体的な事象を取り上げつつ」とされているわけですから、この「具体的な事象」とは何か、これを考えてみるべきなのです。ヒントになるのは、設問の部分で前提的に書いてある、「グローバル化=個人化が進行する中で」という部分です。これの具体例が、「具体的な事象」に当たりそうですね。ここまで読んでいればもうわかっていると思いますが、これも、自分の頭で考えてはいけません。「グローバル化=個人化が進行する中で」という言葉が、設問の文章の中のどの部分を指しているのか。これを、「グローバル化」や、「個人化」というキーワードに着目して探していけばよいのです。
 そこで、文章を頭から見ていくと、「グローバル化」と「個人化」は、セットで出てきます。まず、最初に発見するのは、「人々が中間的な集団から解放されることを「個人化(individualization)」と呼ぶならば,グローバル化は個人化と軌を一にしている。」という文章です。まず、「個人化」という言葉は、「人々が中間的な集団から解放されること」と定義されていることがわかります。このことから、解答用紙に記入する場合には、「人々が中間的な集団から解放されるという個人化」と書くことになりそうです。それから、「軌を一にする」の「軌」の語源は、「軌道」の「軌」。すなわち、車輪の跡のことです。ですから、「軌を一にする」という言葉は、「同じ方向性で」という程度の意味です。グローバル化と個人化が同じ方向性にある、という場合の、同じ方向性とは、どのようなものなのか。この、共通の方向性に当たるものを、文章から抜き出すことができれば、設問の、「グローバル化=個人化が進行する中で」の意味もわかりますし、その具体例も理解できそうです。そこで、同じ方向性とは何か、という目でもう一度文章を読むと、冒頭の「インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と,手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている。その一方で,(地理的・空間的に)身近な人々との関係が,より疎遠になる傾向が認められる。」という文章が、これに当たりそうだ、ということがわかるでしょう。すなわち、「インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と,手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で,(地理的・空間的に)身近な人々との関係が,より疎遠になる傾向」が、グローバル化と個人化に共通する方向性、ないしは共通の原因である、ということです。したがって、「グローバル化=個人化が進行する中で」との関係では

 「グローバル化=人々が中間的な集団から解放されるという個人化は、インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で、(地理的・空間的に)身近な人々との関係がより疎遠になる傾向という点で軌を一にして進行している。」

という文章が成立します。
 さらに、「グローバル化」と「個人化」のキーワードは、その直後の文章にも登場します。「グローバル化=個人化は今日,社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。」という文章です。これを見れば、設問の、「グローバル化=個人化が進行する中で」との関係で

 「グローバル化=個人化の進行は、今日、社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。」

という文章が成立することに気が付きます。そして、注目すべきは、その直後の文章が、「例えば」で始まっていることです。「多大な影響」の具体例が挙がっているのでしょう。見てみると、「例えば家族や地域のコミュニティーは,その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」とある。ここから

 「グローバル化=個人化の進行は、今日、社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。例えば、家族や地域のコミュニティーは、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

という文章が成立します。そうすると、「具体的な事象」とは、今のところ、「家族や地域のコミュニティーが恒常的な解体圧力にさらされていること」を指す事象ということになる。「事象」とは、現実に起きた出来事という程度の意味です。できれば、時事的な社会現象や歴史的事実のようなものを挙げられると一番よい。ただ、問題文には、これは直接的には書いてありません。このような場合にも、「自分の頭で独創的に考える」のではなく、「考査委員が想定していそうな最も無難なもの」を「予測」して挙げるのが基本です。何を挙げるべきかについては、直接的な問いに対する解答とも関係しますので、それを検討してから考えることにしましょう。
 次に、直接的な問いである、「「国家」はいかなる立場に置かれているであろうか。」に対する解答を考えます。キーワードである「国家」を文章から探してみると、実は見つかりません。そこで、同義語、類義語、対義語を探してみると、「中間的な集団」、「社会」、「コミュニティー」という言葉が見つかります。ただ、これは、「国家」とは少し意味が違う言葉です。ですから、これを、「国家」にそのまま当てはめてよいか、というのは、少し注意が必要なのです。1つ1つ、慎重に吟味してみましょう。まず、「中間的な集団」を含む文章は、「人々が中間的な集団から解放されることを「個人化(individualization)」と呼ぶならば」となっています。これを、「国家」に置き換えてみると、

 「人々が国家から解放されることを「個人化(individualization)」と呼ぶならば」

となる。まあ、それなりに意味が通じますね。では、「社会」を含む文章を見てみます。前にみた、「グローバル化=個人化は今日,社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。」という文章です。これも、「国家」に置き換えてみましょう。すると、

 「グローバル化=個人化は今日、国家の各所に多大な影響を及ぼしつつある。」

となります。特に違和感はありませんね。さらに、「コミュニティー」を含む文章を見てみましょう。「例えば家族や地域のコミュニティーは,その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」という文章です。 「国家」に置き換えると、

 「例えば家族や地域の国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

となります。これは、「家族や地域の国家」という部分がおかしいですね。そこで、「家族や地域の」を削除してみましょう。

 「例えば、国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

 これは特に違和感がない。ここまで来ると、何となくこれでいけそうだな、という感触が生じます(※)。

※ 「国家」を「中間的な集団」や「家族や地域のコミュニティー」よりは上位の組織と考えて、「国家内部の中間的な集団」、「国家内部の家族や地域のコミュニティー」という言葉で置き換えるということも十分考えられます。その場合は、「例えば国家内部の家族や地域は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」ことの「具体的な事象」(例えば、貧富の格差による中間層の希薄化、核家族化、アウトソーシング化(家族や地域が担っていた機能を企業や行政のサービスが担うようになること)を挙げ、それを「家族や地域のコミュニティーのような中間的な集団の空洞化」と置き換え、これをもって国家の置かれている地位として記述することになります。より高度な解法になりますが、一度考えてみるとよいでしょう。

 


 さて、ここで、前に検討した「グローバル化=個人化の進行」と、その「具体的な事象」をもう一度確認しておきましょう。

 「人々が中間的な集団から解放されるという個人化=グローバル化は、インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で、(地理的・空間的に)身近な人々との関係がより疎遠になる傾向という点で軌を一にして進行している。」

「グローバル化=個人化の進行は、今日、社会の各所に多大な影響を及ぼしつつある。例えば、家族や地域のコミュニティーは、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

 上記のうち、「中間的な集団」、「社会」、「家族や地域のコミュニティー」を、「国家」に置き換えるのでした。すると、

 「グローバル化=人々が国家から解放されるという個人化は、インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で、(地理的・空間的に)身近な人々との関係がより疎遠になる傾向という点で軌を一にして進行している。」

「グローバル化=個人化の進行は、今日、国家の各所に多大な影響を及ぼしつつある。例えば、国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

ということになるでしょう。そして、「例えば、国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」に当たるような「具体的な事象」として、「考査委員が想定していそうな最も無難なもの」を予測します。2つの方向性があり得るように思います。1つは、「中間的な集団」を国家に置き換えたことに着目する方向性です。つまり、国家を中間的な集団とみる場合、より上位の集団は、国家統合体を指すことになります。ですから、国家が解体して統合されるというようなものを挙げればよい。考査委員が想定しそうなものは、EUでしょう。答案用紙に書く場合には、

 「例えば、EUのように国家より上位の統合体が組織されるなど、国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

というような感じになるわけです。なお、ここで、「しかし、必ずしもそのようには言えないと私は考える。国家統合の動きはインターネットが普及する以前から存在していたし、インターネットの普及は、例えば、英国のEU離脱やスコットランド独立のような、むしろ逆の動きの原動力ともなっているからである。そうだとすると~」などと、自分が言いたいことを書き始めてはいけません。そのようなことをやってしまうと、元の文章からどんどん離れていってしまいます。
 もう1つの方向性は、「インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で、(地理的・空間的に)身近な人々との関係がより疎遠になる傾向」や「人々が国家から解放される」というようなことをヒントに、個人が国家を離れて勝手なことをするようになる、と考える方向性です。具体的な事象としては、イスラム国に代表されるテロ組織の活動などが、考査委員が想定しそうな無難な例です。答案用紙に書く場合には、

 「例えば、イスラム国に代表されるテロ組織の活動のように、個人が国家の枠を超えて組織され、国家と対立する行動をとるなど、国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされている。」

というような感じになるでしょう(なお、「国家の枠を超えて」とあるのに、「イスラム国」の語が「国」を含んでいてややこしいと感じたら、「かつてのアルカイダ」という表現にすればよいでしょう。)。これを、「「国家」は~の立場に置かれている。」の形式に書き換えると、

 「グローバル化=個人化の進行によって、今日、国家は、その各所に多大な影響を及ぼされつつある地位に置かれている。例えば、EUのように国家より上位の統合体が組織されるなど、(イスラム国に代表されるテロ組織の活動のように、個人が国家の枠を超えて組織され、国家と対立する行動をとるなど、)国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされる立場に置かれている。」

ということになります。これで、ほぼ解答が完成しました。
 後は、上記を解答用紙に書き込む順番を整理するだけです。設問の、「グローバル化=個人化が進行する中で」の中身を説明するところから書き出すのが一番自然でしょう。

 「グローバル化=人々が国家から解放されるという個人化は、インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で、(地理的・空間的に)身近な人々との関係がより疎遠になる傾向という点で軌を一にして進行している。」
 そのような「グローバル化=個人化の進行によって、今日、国家は、その各所に多大な影響を及ぼされつつある地位に置かれている。例えば、EUのように国家より上位の統合体が組織されるなど、(イスラム国に代表されるテロ組織の活動のように、個人が国家の枠を超えて組織され、国家と対立する行動をとるなど、)国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされる立場に置かれている。」

 これが、設問2の解答です。

4.上記の解答をまとめたものが、下記の参考答案です。
 このように、一般教養は、教養に基づく思考が問われていないという意味では、「ほとんど頭を使わない。」といえます。もっとも、設問の文章をうまく文法法則に沿って整理するという面では高度なパズルでもあり、その意味では、「非常に頭を使う。」ともいえます。要は、頭の使い方が、「一般教養」という科目の名称から想像されるものとは随分違う、ということです。このような出題になってしまうのは、大学入試の現代文と同じ理由に基づきます。すなわち、客観的な採点をしなければならないからです。客観的な採点をするためには、客観的・形式的に解答が導けるものでなければならないだから、このような出題となり、それに対する解法も、上記のようなものとなるのです。しかし、原文を書く小説家等は、実は、そこまで厳密な文法法則を意識して書いていなかったりします。そのために、「出題された文章を書いた筆者本人が解答すると、正解できない。」という面白い現象が生じるわけですね。このことからも、「自分の頭で文章の本質を理解し、自分の言葉で答案を書く」と、ほとんど点が取れないことがわかるでしょう。多くの受験生が、このことを知らないのです。
 同時に、上記のような思考方法は、単なる予備試験の一般教養科目のためだけの受験テクニックというわけではなく、判例の原文などの法律文を読む際にも用いることのできる方法論である、ということも、指摘しておきたいと思います。上記のように、置換えや、読替え、指示語の指す対象の特定ができるようになると、判例も正しく読めるようになります。判例の規範も、より正確な、洗練されたものを用意することができるようになる。予備校のテキストだけでなく、学者の体系書の中にも、判例の規範の示し方が上記のような方法論を適切に用いていないために、不正確になっているとみられるものがあります。ここで示したような基本的な文章の読み方を理解した上で、判決原文と、テキスト等の判旨や規範を対照してみるのも、面白いのではないかと思います。

 

【参考答案】

第1.設問1

 学問における専門家集団(いわゆる研究者のコミュニティー)の役割は、「知識」と「情報」を概念的に区分する役割であり、例えば、法律・医療・会計などの領域では、一定の条件下で知識を独占的に運用し続けるという役割である。
 研究者は、上記の役割を果たすことにより、「斯界の権威」として学問的知識の生産や流通にコミットし続けている。すなわち、学問的知識は、「知識」と「情報」を概念的に区分することによって生み出される。
 したがって、一般に「学問的知識」が「学問的知識」であるためには、「知識」と「情報」が、研究者によって概念的に区分されることが求められる。

第2.設問2

 グローバル化=人々が国家から解放されるという個人化は、インターネットの普及によって(地理的・空間的に)遠方にいる人々と手軽にコミュニケーションを取ることが可能になってきている一方で、(地理的・空間的に)身近な人々との関係がより疎遠になる傾向という点で軌を一にして進行している。
 そのようなグローバル化=個人化の進行によって、今日、国家は、その各所に多大な影響を及ぼされつつある地位に置かれている。例えば、EUのように国家より上位の統合体が組織されるなど、(イスラム国に代表されるテロ組織の活動のように、個人が国家の枠を超えて組織され、国家と対立する行動をとるなど、)国家は、その中で恒常的な解体圧力にさらされる立場に置かれている。

以上

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2016年08月16日

平成28年予備試験論文式刑事実務基礎参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験における合格ラインは、平成25年、26年は、「一応の水準」の下限でした。昨年は、「一応の水準」の真ん中より少し下の辺りになっています(平成27年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。当サイトでは、この一応の水準の真ん中を超える十分条件として、

(1)基本論点を抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範を明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを明示できている。

という3つを提示しています。
 もっとも、上記のことが言えるのは、ほとんどの科目が、規範→当てはめの連続で処理できる事例処理型であるためです。近時の刑事実務基礎は、民事実務基礎と同様の傾向の出題となっており、事例処理型の問題ではありません。設問の数が多く、(知識さえあれば)それぞれの設問に対する「正解」が比較的明確で、一問一答式の問題に近い。そのため、上記(1)から(3)までを守るというような「書き方」によって合否が分かれる、というようなものではありません。端的に、「正解」を書いたかどうか単純に、それだけで差が付くのです。ですから、刑事実務基礎に関しても、民事実務基礎と同様、成績が悪かったのであれば、それは単純に勉強不足(知識不足)であったと考えてよいでしょう。実務基礎は、民事・刑事に共通して、論文試験の特徴である、「がむしゃらに勉強量を増やしても成績が伸びない。」という現象は、生じにくく、勉強量が素直に成績に反映されやすい科目といえます。ただし、民事実務基礎に関しては、主として要件事実を学習すればよいのに対し、刑事実務基礎は、学習しようとしても、なかなかその対象を絞りにくい刑事手続から事実認定まで、対象が幅広いからです。この点が、民事と刑事の重要な差であると思います。そのため、民事のように重点的に勉強しようとしても、なかなか効率的な学習が難しいのです。とはいえ、刑法・刑訴の基本的な知識(ただし、刑訴に関しては、規則等の細かい条文も把握しておく必要があります。)と、刑事事実認定の基本的な考え方(間接事実による推認の仕方、直接証拠型と間接事実型の推認構造の違いなど)を把握していれば、十分合格ラインに達します。ですから、刑事実務基礎に関しては、普段の刑訴の学習の際に、手続の条文を規則まできちんと引くようにする。そして、事実認定に関しては、過去問に出題されたようなものは、しっかりマスターするその程度の対策で、十分なのだろうと思います。
 以上のようなことから、参考答案は、他の科目ほど特徴的なものとはなっていませんほぼ模範解答のイメージに近いものとなっています。

2.今年の刑事実務基礎は、上記の傾向どおりの出題となっています。特に、今年は設問の数が多いことに注意が必要です。小問も含めると、設問1、設問2(1)、設問2(2)、設問3、設問4(1)、設問4(2)、設問5(1)、設問5(2)と、実に8つの問いがある。これらについて、1つ1つ丁寧に解答していたら、あっという間に答案用紙がパンクします。一問一答式のように、端的に解答するのが、形式面でのポイントです。

3.内容面について、簡単にポイントとなる部分を説明します。
 まず、設問1です。これは、大体ほとんどの人が、同じようなことを書くでしょう。差が付くのは、「認容がないので未必の故意もない。」ことを指摘できるかです。目を閉じて撃っているとしても、玄関付近を狙って撃っていることは認識しています。玄関先に撃てば、偶然人に当たる可能性があるわけですから、Aにはその可能性の認識はあった。しかし、脅すつもりだったので、人の死の認容がない、ということですね。「殺意の概念に言及しつつ」とあるのは、この点を問う趣旨なのでしょう。これは、刑法の基本的な知識があれば解答できる問題です。
 設問2の小問(1)は、指示説明と現場供述の区別です。ポイントは、証拠②のW供述の存在です。本問の場合、証拠②のW供述の信用性が肯定されれば、犯罪事実の存在は認定できます。後は、他の証拠により犯人とAの同一性を認定できれば、有罪認定が可能です。ですから、証拠③の実況見分調書は、現場の客観的状況が、W供述と整合し、矛盾がないということを示すためのもの、すなわち、W供述の信用性を補強する補助証拠ということになるのです。V役の警察官Yを立たせたのは、実況見分の結果明らかになった弾丸の玄関ドア着弾位置にVの体格と似た警察官Yを立たせると、ちょうど胸部後方に当たりますよ、だから、W供述と矛盾なく整合していますよね、ということを示すためです。㋐は、そのような趣旨で警察官Yを立たせたのですよ、という動機を示しています。また、犯人役の警察官Zを立たせたのは、証拠②のW供述どおりの状況を再現した場合に、弾丸の玄関ドア着弾位置、門扉の高さ、玄関ドアの位置等との関係で、客観的状況と矛盾がないかを確かめるためです。例えば、門扉の高さは約1.3メートルで、弾丸の玄関ドア着弾位置は、玄関ドア下端から上方へ約1.3メートルから約1.4メートルの範囲で、Zが構えた銃口は門扉の上端から約10センチメートル上方だったというわけですから、Wの供述どおりの犯行が行われたとして矛盾なく整合することがわかります。㋑は、このことを示すためにZを立たせますよ、という動機を示すものです。㋐も㋑も、証拠②のW供述に含まれた内容ですから、㋐及び㋑によって犯罪事実を立証しようとする趣旨ではありません。証拠②のW供述よりも、㋐と㋑はより位置関係が詳細ではないか、と思うかもしれません。しかし、犯罪事実の認定に当たっては、構成要件該当性を判断できる程度に認定できれば足り、詳細にどの位置に立っていたかまでは立証する必要はありません。ですから、証拠②のW供述程度に具体的に認定できれば、十分有罪認定が可能なのです(最判昭23・7・22最判昭24・2・10最決昭58・5・6等参照)。ですから、㋐及び㋑は、現場供述には当たらない。このことを、コンパクトに指摘する必要があります。類似のケースは、平成21年司法試験刑事系第2問で出題されています。これを正しく理解していれば、本問は難しくなかったでしょう。これは刑事実務基礎に限ったことではなく、他の科目にも言えることですが、予備試験と司法試験は類似の論点、問題意識が問われることが多いですから、予備試験の受験生も、司法試験の過去問は全て解いておくべきです。小問(2)は、端的に、真正作成供述(刑訴法321条3項)のための証人尋問を請求すべきことを指摘すれば足ります。ここでのポイントは、「実況見分調書の伝聞例外」の論点を「論証」しないことです。設問2は、刑訴の基本的な知識があれば、十分解答可能な問題です。
 設問3は、刑訴法316条の22を引けるかどうか、その上で、Cの証人尋問、証拠⑫の開示請求という問題文の事情と結び付けて説明できるかがポイントです。特に知識がなくても、現場で条文にたどり着けば、何とか解答できるでしょう。ただ、全く条文を引いたことがない人と、事前に何度か条文を読んだことのある人とでは、スピードが全く違います。こういった条文は、準用条文も含めて、普段の刑訴の学習の際に、意識して確認し、目を通しておく必要があるのです。普段からそのような学習をしていれば、これは十分解答可能な問題です。
 設問4は、小問(1)で間接事実型の推認過程を解答し、小問(2)では、それが直接証拠型になる、ということを解答すれば足ります。小問(1)は、端的に解答するのが難しいですから、ここはそれなりに分量を割いて書くことになるでしょう。小問(2)は、証拠⑬も間接証拠ですから、「直接証拠型」というと違和感があるかもしれませんが、「Aが犯行計画をメモ帳に記載した。」という間接事実を、証拠⑩及び⑪から推認される再間接事実によって認定するのではなく、直接に証拠⑬によって推認する場合ですから、構造としては直接証拠型です。間接事実型か直接証拠型かというのは、刑法や刑訴の学習ではフォローできないところではありますが、事実認定の基本的な知識ですから、過去問で事実認定の問題を解く過程で、習得できる内容です。ですから、特別な対策をしなくても、十分解答可能ではないかと思います。
 設問5小問(1)は、刑訴規則199条の3第3項を引けるかどうかがポイントです。これも、設問3同様、知識がなくても探せば発見できるかもしれませんが、一度条文を確認したことのある人と比べると、スピードに大きな違いが生じます。普段の刑訴の学習の際に、意識して手続の条文を引いたかどうかで差が付くところです。小問(2)は、実戦的には、刑訴規則199条の10又は199条の11を引ければ合格ラインです。実務の運用としては、ここは安易に199条の10で裁判長の許可が不要であるとされることが多いところです。また、自己矛盾供述については、伝聞法則の適用がない(刑訴法328条)ことから、自己矛盾供述を内容とする調書の内容を示すことも、199条の10によって許される、とする運用が比較的普通に行われているように思います。そのことからすれば、本問で、Cの署名押印部分のみならず、調書の内容を示すこともできることになるでしょう。しかし、このような運用は、普通の条文解釈からすると、理解が難しいように思います。書面等の提示について、裁判長の許可を要しない場合(199条の10)と、裁判長の許可を要する場合(199条の11)の違いは、前者が、証拠物の関連性に係る事項を立証対象とするに過ぎないので、証人の証言内容に不当な影響が生じるおそれがないのに対し、後者は、証人の証言内容を変更させるために書面等を提示する場合なので、その証言内容に不当な影響が生じるおそれがある(199条の11第2項参照)という点にあります。そうだとすると、調書の署名押印部分を提示するに過ぎない場合であっても、その調書の関連性を立証する趣旨ではなく、証人の記憶を喚起させてその証言内容を変更させようとするときは、そこに不当な影響が生じるおそれがあるわけですから、裁判長の許可を要する場合として199条の11によるべきであると考えるのが素直です。その意味では、本問を199条の11で処理すべきとする解答も、誤りとはいえないのではないか、という感じがします。仮に、199条の11で処理する場合には、同条1項括弧書きとの関係が問題となります。これについては、同条括弧書きは調書の中身を示すことが類型的に証人の供述に不当な影響を及ぼすと考えられることから、特に除外した趣旨の規定であるとして、署名押印部分のみを示す場合には、類型的に証人の供述に不当な影響を及ぼすとはいえない(不当な影響を及ぼす場合が全くないとはいえないが、それは個別のケースで裁判長が許可をするに当たり影響の有無を具体的に判断すれば足りる。)ので、括弧書きの適用はない、と考えることになるでしょう。なお、実務上安易に199条の10が使われていることが理解できる例として、最決平25・2・26があります。ここでは詳細な説明は避けますが、原審の東京高裁が199条の10のみを根拠として提示を許容したのに対し、最高裁が199条の11をも摘示している点に注意が必要です。これは、証人の証言内容に影響を及ぼす場合には、199条の11によるべきであるとする考え方と整合的です。いずれにせよ、この点は、合否を左右するようなものではない、と考えておいてよいと思います。現場で上記のいずれかの条文を引くことは、ある程度事前に条文に目を通しておけば可能でしょう。その意味では、本問もそこまで解答困難な問題ではなかったといえます。
 以上のように、本問は、冷静に対処すれば、個々の設問はそれほど難しくありませんしかし、2日目の試験であり、多くの人は先に民事実務基礎を解いた状態で、疲労しているということ、設問の数が多く、個々の設問をじっくり考える時間がないこと、一見すると相当高度なことを聞いているようにも見えることなどから、現場で解くとかなりの難問になるのです。とはいえ、普段の学習で対処できない内容ではないことも確かです。「実務家向けの高度な書籍を読まないと対処できない。」とか、「一部の上位ローの実務家教員の講義を聞かないと解けない。」などと誤解しないことが重要です。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.殺意とは、人を死亡させる認識及び認容をいう。

2.本件では、Aは、乙組事務所玄関付近を狙って拳銃を3発撃った際、目を閉じて撃ったため人が事務所から出てきたことに気付かなかった。したがって、人を死亡させる確定的な認識がないことは明らかである。
 また、Aは、拳銃を撃って乙組の連中を脅そうと思っただけであり、人を死亡させても構わないという認容がないから、未必的な殺意も認められない。

3.よって、Aの殺意は、認められない。

第2.設問2

1.小問(1)

(1)伝聞法則(刑訴法320条1項)が適用される現場供述であるというためには、説明の内容が証拠となることを要する。

(2)本件で、犯罪事実の存在を立証する証拠は、直接証拠である証拠②のW供述である。証拠③は、犯行現場の客観的状況が、W供述と矛盾せず、整合すること、すなわち、W供述の信用性を補強する補助証拠に過ぎない。
 そして、証拠②と下線部㋐及び㋑を対照すれば、下線部㋐は、V役の警察官Yを立たせた動機を示し、下線部㋑は、犯人役の警察官Zを立たせ、模擬拳銃を構えさせた動機を示すものであって、その説明の内容を証拠とするものではないことが明らかである。

(3)よって、検察官は、下線部㋐及び㋑は現場供述に当たらない旨の意見を述べるべきである。

2.小問(2)

 検察官は、証拠③の実況見分調書の作成者の証人尋問を請求すべきである(刑訴法321条3項)。

第3.設問3

 予定主張の変更(刑訴法316条の22)を行うべきである。
 具体的には、裁判所及び検察官に対し、従来の予定主張に代えてAが犯行当時C方にいた事実を主張する旨を明らかにし(同条1項)、裁判所に対し、速やかにCの証人尋問を請求し(同条2項)、検察官に対し、変更後の主張に係る主張関連証拠として証拠⑫のCの警察官調書の開示を請求すべきである(同条5項、316条の20)。

第4.設問4

1.小問(1)

(1)証拠⑩から、証拠⑪のメモ帳がA方に存在した事実が認定できる。また、証拠⑪のメモ帳の表紙の裏には、AとCが一緒に写っている写真シールが貼付されていた。このことは、同メモ帳は、Aが私的に用いるものであったことを示す。したがって、上記各事実は、同メモ帳を記載した者がAであることを一定程度推認させる。

(2)証拠⑪のメモ帳の2頁目に記載されたもののうち、「11/1」の部分は、犯行日時である平成27年11月1日を指し、「J町1-1-3」の部分は、乙組事務所の住所であるH県I市J町1丁目1番3号を指し、地図の記載はその周辺の地図を指すと考えて矛盾がない。犯行日及び犯行場所を犯行とは無関係に偶然メモ帳に記載することは考えにくいから、上記各記載は、犯行計画を記載したものであると合理的に推認できる。

(3)上記(1)及び(2)並びに上記(2)の各記載が手書きであったことから、Aが、証拠⑪のメモ帳に犯行計画を記載したことを推認できる。
 そして、犯行に無関係の者が、犯行計画を偶然メモ帳に記載することは考えにくいから、Aが犯行計画を記載した事実は、Aが犯行計画を立案したこと、ひいては、Aが犯人であることを相当程度推認させる。

(4)以上の推認過程により、証拠⑩及び⑪から、「Aが犯人である事実」が推認される。

2.小問(2)

 証拠⑬は、Aが、証拠⑪のメモ帳に犯行計画を記載したという間接事実を直接に推認させる間接証拠である。したがって、これを併せて考慮する場合には、上記事実を推認するに当たり、証拠⑩及び証拠⑪から推認される再間接事実による推認を経由しない点で、推認過程に違いが生じる。この場合、証拠⑩及び証拠⑪は、証拠⑬の信用性を補強する補助事実を推認させる補助証拠として機能する。

第5.設問5

1.小問(1)

(1)誘導尋問は、刑訴規則199条の3第3項ただし書の場合を除き、主尋問においてすることができない(同項本文)。

ア.本件では、検察官の質問中、「証人が、平成27年11月1日に、被告人を乗せて車を運転した」とする部分は、Aのアリバイを否定することを前提とするから、上記質問は、誘導尋問である。

イ.Bの証人尋問は、裁判所が検察官請求証拠である証拠⑥の採用を留保して実施することとされたのであるから、検察官の尋問は主尋問である(同条1項)。

ウ.同条3項ただし書各号に当たる事実は見当たらない。

(2)以上から、弁護人の異議には理由がある。

(3)よって、裁判所は、検察官に対し、質問の変更を命ずる決定をすべきである(刑訴法309条3項、同規則205条の6第1項)。

2.小問(2)

(1)検察官は裁判長の許可を求めていないから、刑訴規則199条の11に基づく提示としては許されない。

(2)では、刑訴規則199条の10に基づく提示として許されるか。

ア.検察官が、Cに示そうとしているのは、証拠⑫のCの署名押印部分である。したがって、書面の成立について尋問する場合(同条1項)に当たる。

イ.検察官の反対尋問において、Cは、「警察官が調書を作成したかどうかも覚えていない。」旨証言したから、提示の必要(同項)がある。

ウ.よって、あらかじめ弁護人に証拠⑫を閲覧する機会が与えられ、又は弁護人の異議がない場合(同条2項)には、刑訴規則199条の10に基づく提示として許される。

以上

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2016年08月12日

平成28年予備試験論文式民事実務基礎参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験における合格ラインは、平成25年、26年は、「一応の水準」の下限でした。昨年は、「一応の水準」の真ん中より少し下の辺りになっています(平成27年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。当サイトでは、この一応の水準の真ん中を超える十分条件として、

(1)基本論点を抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範を明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを明示できている。

という3つを提示しています。
 もっとも、上記のことが言えるのは、ほとんどの科目が、規範→当てはめの連続で処理できる事例処理型であるためです。民事実務基礎は、そのような事例処理型の問題ではありません。民事実務基礎の特徴は、設問の数が多く、それぞれの設問に対する「正解」が比較的明確で、一問一答式の問題に近いという点にあります。そのため、上記(1)から(3)までを守るというような「書き方」によって合否が分かれる、というようなものではありません。端的に、「正解」を書いたかどうか単純に、それだけで差が付くのです。ですから、民事実務基礎に関しては、成績が悪かったのであれば、それは単純に勉強不足であったと考えてよいでしょう。その意味では、論文試験の特徴である、「がむしゃらに勉強量を増やしても成績が伸びない。」という現象は、民事実務基礎に関しては、生じにくい。逆に言えば、勉強量が素直に成績に反映されやすい科目ということができるでしょう。
 以上のようなことから、参考答案は、他の科目ほど特徴的なものとはなっていませんほぼ模範解答のイメージに近いものとなっています。

2.今年の民事実務基礎の問題は、上記のような例年の傾向がそのまま当てはまるものとなっています。単純に、知識で差が付く問題であったといえるでしょう。難易度としては、問題研究要件事実だけではやや足りず、「要件事実論30講」や、「完全講義 民事裁判実務の基礎〈上巻〉」くらいのレベルが要求されています。逆に言えば、その程度のレベルをマスターしていれば、非常に易しく感じるはずです。上記のとおり、民事実務基礎は勉強量が素直に成績に反映されやすいので、できる限り重点的に学習したいところです。
 また、設問1小問(1)では、保全の手段が問われました。執行・保全については、どのような場合にどのような手段があるか、それはどうしてか、という程度のことは、条文と共に把握しておきたいところですし、逆に、それ以上に細かい論点については、学習する必要がありません。口述試験でも、同程度の水準が要求されています。
 設問4では、一方当事者の立場からの事実認定が問われています。これは毎年問われている設問で、ポイントは、確実性の高い事実、証拠を重視して検討するということです。本問で言えば、本件念書の存在は、確実性の高い証拠です。そして、XYの供述については、両者が一致している部分を重視する。そのような基本的な考え方を踏まえた認定がされているかどうかで、差が付くでしょう。そして、設問4は、最後の設問です。最後の設問は、時間や紙幅を残しておく必要がありませんから、設問4に辿り着いた時点で余裕があれば、事実の評価を積極的にやるべきです。民事実務基礎は、端的に解答するタイプの設問が多いので、時間や紙幅が足りなくなるということは、あまりないはずです。ですから、設問4は、できる限り事実の評価までしっかりやりたいところです。そのため、参考答案でも、事実の評価を入れています
 今年は、法曹倫理からの出題がありませんでした。しかし、再び出題される可能性は十分あります。ただ、基本書等を読んで勉強するようなものではありません。直前に、弁護士職務基本規程と弁護士法を軽く一読して、どのような条文がどの辺りにあるか、ということを、簡単に把握しておけば足りるでしょう。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

(1)採るべき法的手段

 処分禁止の仮処分及び占有移転禁止の仮処分(民保23条1項、24条、25条の2第1項括弧書き)の申立て(同法2条1項)である。

(2)理由

 上記各法的手段を講じない場合には、口頭弁論終結前の承継人及び固有の抗弁を有する口頭弁論終結後の承継人に対して、本件訴訟の確定判決を債務名義(民執22条1号)とする承継執行文の付与を受けられない(民訴法115条1項3号、民執27条2項、23条1項3号)ことから、上記各法的手段を講ずることにより、甲土地について処分禁止の登記(民保53条1項)を経ることによって、登記名義の変更があってもこれを抹消し(同法58条2項、不登法111条)、新たな権利の設定があってもこれをXに対抗できないものとする(民保58条1項)とともに、甲土地に占有移転があっても、新占有者に対し承継執行文の付与を受けられるようにする(同法62条。なお民執27条3項1号も参照。)ことが必要となるからである。

2.小問(2)

 被告は、原告に対し、甲土地について、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をせよ。
 被告は、原告に対し、甲土地を明け渡せ。

3.小問(3)

(1)イについて

 Aは、Xに対し、平成27年6月1日、甲土地を代金1000万円で売った。

(2)ウについて

 Yは、甲土地を占有している。

第2.設問2

1.主張すべき抗弁

 対抗要件具備による所有権喪失の抗弁である。

2.理由

 Yが甲土地の対抗要件である登記(民法177条)を具備することによって確定的に甲土地所有権を取得し、その反射としてXの甲土地所有権の取得が否定される結果、請求原因事実による所有権移転登記請求権及び甲土地明渡請求権の発生が障害されるからである。

第3.設問3

1.エに入る具体的事実

 Yは、本件第2売買契約の際、本件第1売買契約を知っていた。

2.理由

 背信的悪意者は「第三者」(民法177条)に当たらない(判例)。したがって、Yが背信的悪意者に当たる場合には、抗弁事実であるYの登記具備による効果の発生が障害される。そして、オの事実としてYの背信性の評価根拠事実が摘示されているから、エに入る具体的事実は、Yの悪意に当たる事実であり、上記1のとおりとなる。

第4.設問4

1.本件念書には、本件第2売買契約締結の日である平成27年8月1日を作成日とし、Yが、Aに対し、甲土地の転売利益の3割を謝礼として支払う旨の記載がある。本件念書の成立は、弁護士Qも認めている。また、X及びYの供述においても、AとYのどちらが持ちかけたかという点は異なるものの、AY間において、高く転売できたときは、YがAに謝礼を支払う旨の合意をし、本件念書を作成したとする点で一致する。このことから、本件第2売買契約の際、Yは転売目的を有していたことが認められる。

2.同年9月1日に、XがY宅を訪れた際、Yが、2000万円という金額を示して、Xに買取りの打診をしたことは、Yも認めている。また、当時の甲土地の時価が1000万円程度であったことにつき、XYの供述は一致している。
 本件第2売買契約からわずか1か月後に、Yが、Xに対し、当時の時価の倍の代金を提示して買取りを打診したことは、本件第2売買契約の際、Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していたことを推認させる事実である。

3.Yが建築業者で、現在、甲土地を資材置場として使用していることについては、XYの供述が一致している。このことは、Yは、不動産業者のように土地の転売を業としておらず、甲土地を転売目的で購入したものではないという認定を導き得る事実といえる。
 しかし、AがYの知人であり、本件念書が手書きであることからも、業としての売買ではないことがうかがわれることから、Yが建築業者であることと転売目的とは矛盾しない。また、X供述によると、置かれている資材は大した分量ではなく、それ以外に運搬用のトラックが2台止まっているに過ぎないから、転売先が決まれば、上記資材及びトラックを移動させることは容易であると考えられる以上、転売目的と矛盾しない。

4.以上から、Yは、本件第2売買契約の際、Xに対して甲土地を高値で買い取らせる目的を有していたことが認められる。

以上

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