2017年08月20日

平成29年予備試験論文式民訴法参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、司法試験と同様、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、上位合格者のレベルに達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があるのです。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は3頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に4頁後半まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、1行35文字以上のペースで4頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

4.今年の民訴法は、現場では易しいと感じた人が多かったのではないでしょうか。それは、ほとんどの人が、応用論点に気が付いていなかったからです。基本論点しか見えないので、基本的な問題であると感じた、ということですね。基本論点しか見えない場合に、「他にも何かあるのではないか。」と、応用論点を探しているようでは、早く受かるようにはなりません。その基本論点に絞って、しっかり書いていけば、それでよいのです。本問のように、上記(1)の基本論点が見えやすい問題の場合には、上記(2)、(3)が合否を分けることになります。
 設問1ではっきり差が付くのは、上記の(2)。すなわち、当てはめに入る前に、大阪国際空港事件判例(最大判昭56・12・16)の規範を明示できるかどうかです。

 

大阪国際空港事件判例より引用。※注及び太字強調は筆者。)

 民訴法二二六条(※注:現行法の135条)はあらかじめ請求する必要があることを条件として将来の給付の訴えを許容しているが、同条は、およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。このような規定の趣旨に照らすと、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権についても、例えば不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合のように、右請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、債務者による占有の廃止、新たな占有権原の取得等のあらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについては請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない点において前記の期限付債権等と同視しうるような場合には、これにつき将来の給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえない。しかし、たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であつても、それが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができるとともに、その場合における権利の成立要件の具備については当然に債権者においてこれを立証すべく、事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものについては、前記の不動産の継続的不法占有の場合とはとうてい同一に論ずることはできず、かかる将来の損害賠償請求権については、冒頭に説示したとおり、本来例外的にのみ認められる将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有するものとすることはできないと解するのが相当である。

(引用終わり)

 

 予備試験の場合は、この時点で多くの人が脱落します。判例の規範を覚えていない人、覚えていても答案に明示しない人。前者は、基本的な知識が足りていない人で、規範を覚える学習を増やす必要があります。後者は、基本的な答案の書き方を習得できていない人で、答案の書き方のクセを直さないと、どんなに知識を増やしても受かりません。当サイトが繰り返し説明している、「何度受けても受からない人」になりやすいタイプです。
 後は、それぞれの要件に当てはまりそうな事実を問題文から書き写して、結論を出せば終わり、というのが、実戦的な考え方です。本問は賃料がらみの事案だったためか、上記判例でも将来給付の訴えが認められる典型例として挙げている、「不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合」に近いと考えて、適法とした人が多かったようです。参考答案も、適法の結論にしておきました。しかし実際には、類似の事案で、判例は将来給付の訴えを不適法としているのです(※)。
 ※ 大阪国際空港事件判例は継続的不法行為の事案であったのに対し、本問は継続的不当利得の事案なので、同判例の規範がそのまま妥当するのかという点に疑問を持った人は鋭いのですが、下記判例が「将来発生すべき債権」と表記しているとおり、現在では、大阪国際空港事件判例の規範は将来給付の訴え一般に妥当する要件として取り扱われています。

 

最判昭63・3・31より引用。太字強調は筆者。)

 将来の給付の訴えは、現在すなわち事実審の口頭弁論終結の時点では即時履行を求めることのできない請求権について予め給付判決を求める訴えであつて、予め請求をする必要があるときに限り提起することが許されるものであり(民訴法二二六条)、既に権利発生の基礎をなす事実関係及び法律関係が存在し、ただこれに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証し得る別の一定の事実の発生にかかつているにすぎない期限付債権や条件付債権のほか、将来発生すべき債権についても、その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動が予め明確に予測し得る事由に限られ、しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ強制執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても、当事者間の衡平を害することがなく、格別不当とはいえない場合には、これにつき将来の給付の訴えを提起することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和五一年(オ)第三九五号同五六年一二月一六日大法廷判決・民集三五巻一〇号一三六九頁参照)。これを本件についてみるに、被上告人の前記請求は、上告人が被上告人との共有物件である本件土地を訴外会社に専用駐車場として賃貸することによつて得た収益のうち上告人の持分割合をこえる部分について不当利得の返還を求めるものであるから、訴外会社との賃貸借契約の存続及びこれに基づく賃料の現実の収受を当然の前提とするものであり、したがつて、賃料が現実に収受されたか否かを問わずに、将来にわたり賃料収入による収益の分配につき継続的給付を命ずることは、右請求の性質からみて問題があるというべきである。もつとも、上告人と訴外会社との間に現に賃貸借契約が存続していて、上告人に賃料収入による一定の収益がある場合には、継続的法律関係たる賃貸借契約の性質からいつて、将来も継続的に同様の収益が得られるであろうことを一応予測し得るところであるから、右請求については、その基礎となるべき事実上及び法律上の関係が既に存在し、その継続が予測されるものと一応いうことができるしかし、右賃貸借契約が解除等により終了した場合はもちろん、賃貸借契約自体は終了しなくても、賃借人たる訴外会社が賃料の支払を怠つているような場合には、右請求はその基礎を欠くことになるところ、賃貸借契約の解約が、賃貸人たる上告人の意思にかかわりなく、専ら賃借人の意思に基づいてされる場合もあり得るばかりでなく、賃料の支払は賃借人の都合に左右される面が強く、必ずしも約定どおりに支払われるとは限らず、賃貸人はこれを左右し得ないのであるから、右のような事情を考慮すると、右請求権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動が予め明確に予測し得る事由に限られるものということはできず、しかも将来賃料収入が得られなかつた場合にその都度請求異議の訴えによつて強制執行を阻止しなければならないという負担を債務者に課すことは、いささか債務者に酷であり、相当でないというべきである。そうとすれば、被上告人の前記請求のうち、原審口頭弁論終結後の期間にかかる請求部分は、将来の給付の訴えの対象適格を有するものということはできないから、右訴えにかかる請求を認容した原審の判断には、訴訟要件に関する法令の解釈適用を誤つた結果、将来の給付の訴えの対象適格を欠く請求についてその適格を認めた違法があるといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

(引用終わり)

 

 さらに、類似の事案において、最判平24・12・21は上記判例を明示的に引用し、より一般的な形で判示しています。

 

最判平24・12・21より引用。太字強調は筆者。)

 共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものである(最高裁昭和59年(オ)第1293号同63年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事153号627頁参照)。

(引用終わり)

 

 さて、そうなると、本問でも不適法とするのが正解、となるかというと、実はそう簡単ではありません。上記平成24年判例には、引用判例の射程に関する千葉勝美裁判官の補足意見(須藤正彦裁判官同調)が付されています。

 

最判平24・12・21における千葉勝美補足意見より引用。太字強調は筆者。)

 前掲最高裁昭和63年3月31日第一小法廷判決は,共有物件である土地を第三者に専用駐車場として賃貸することによって得た賃料収入に関し,相手方の持分割合を超える部分の不当利得返還を求める請求については,賃貸借契約が解除等で終了したり,賃借人が賃料の支払を怠っているようなときには,将来請求はその基礎を欠くところ,これらは専ら賃借人側の意思等に基づきされることでもあり,必ず約定どおりに支払われるとは限られない等の点から,将来の給付請求を可能とする適格を欠くとしている。
 …この判決の射程距離が問題になるが,この判決の理解としては,①持分割合を超える賃料部分の不当利得返還を求める将来請求の場合を述べたものとする理解(このような捉え方をしていると思われる他の最高裁判例として,最高裁平成7年(オ)第1203号同12年1月27日第一小法廷判決・民集54巻1号1頁がある。)と,②①の場合に加え,当該賃料が駐車場の賃料であるという賃料の内容・性質をも含んだ事例についての判断であるとする理解とがあり得るところである。
 このうち,①の理解によると,この裁判要旨については,将来得るべき賃料はそれが現実に受領されて初めて不当利得返還請求権が発生することから,その発生は第三者の意思等によるところ,そのような構造を有する将来請求全てに射程距離が及ぶ判断であると捉えることにもなろう。しかし,昭和56年大法廷判決の法理によって将来請求の適否を判断するためには,当該不当利得返還請求権の内容・性質,すなわち,その発生の基礎となる事実関係・法律関係が将来も継続するものかどうかといった事情が最重要であり,それを個別に見て判断すべきであるとすれば,昭和63年第一小法廷判決の射程距離については②の理解を採ることになろう
 私としては,上記①の理解はいささか射程が広すぎるように思う。すなわち,居住用家屋の賃料や建物の敷地の地代などで,将来にわたり発生する蓋然性が高いものについては将来の給付請求を認めるべきであるし,他方,本件における駐車場の賃料については,50台程度の駐車スペースがあり,これが常時全部埋まる可能性は一般には高くなく,また,性質上,短期間で更新のないまま期間が終了したり,期間途中でも解約となり,あるいは,より低額の賃料で利用できる駐車場が近隣に現れた場合には賃借人は随時そちらに移る等の事態も当然に予想されるところであって,将来においても駐車場収入が現状のまま継続するという蓋然性は低いと思われ,その点で将来の給付請求を認める適格があるとはいえない。いずれにしろ,将来の給付請求を認める適格の有無は,このようにその基礎となる債権の内容・性質等の具体的事情を踏まえた判断を行うべきであり,その意味でも昭和63年第一小法廷判決の射程距離については,上記②の理解に立つべきである。

(引用終わり)

 

 上記を理解してから本問の問題文を見れば、本問は最判昭63・3・31の射程外の事案であると考える余地があることに気付くでしょう。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者)

 Yは,甲土地の所有者であったが,甲土地については,Aとの間で,賃貸期間を20年とし,その期間中は定額の賃料を支払う旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結しており,Aはその土地をゴルフ場用地として利用していた

 (中略)

 なお,弁護士Lが確認したところによると,Aが運営するゴルフ場の経営は極めて順調であり,本件賃貸借契約が締結されてからこの10年間本件賃貸借契約の約定どおりに賃料の支払を続けていて,これまで未払はないとのことであった。

(引用終わり)

 

 上記の事実を捉えて、前記千葉補足意見のいう「将来にわたり発生する蓋然性が高いもの」に当たるとし、昭和63年判例の射程外とする。これが、想定される「正解」です。しかしながら、ほとんどの受験生が、そもそも昭和63年判例自体を知らないか、仮に知っていても、それを答案に明示して射程論を論じるという書き方を知らないので、誰も書けない結果的に、このような応用部分は、無視すべきことになるのです。上位を狙う場合には、とりあえず事実の評価も付しておく。そうしていると、事実の評価に関する配点だけでなく、偶然に上記のような問題意識に合致する事実の評価がされていた場合には、その部分でも配点を取れるというわけです。ただし、それは、そのような事実の評価を答案に書くだけの余裕がある人だけがなし得ることです。

 設問2です。設問2は、300万円までが114条2項で既判力、それ以外は信義則これは、誰もが気付くところだろうと思います。実戦的には、これだけを普通に書いていれば、問題ないでしょう。若干気を付けるとすると、114条2項の既判力の内容の記述の仕方です。これは、「本件貸金債権のうち300万円が不存在であること」と記載するのが正しい「本件貸金債権のうち250万円については弁済により、50万円については相殺により不存在であること」とするのは、通説とは異なる見解ということになるので、何の説明もなく書いてしまえば、評価を落とすでしょう。また、Xの不当利得返還請求権の不存在については、114条2項ではなく、同条1項の既判力によりますから、同条2項の既判力の内容として書いてしまわないようにする必要があります。
 ここからは、ほとんどの人が気付いていないであろう応用論点の話です。本問の問題文には、なぜか敢えてボカしている部分があることに、現場で疑問を持った人もいたでしょう。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 第1訴訟の受訴裁判所は,審理の結果,Xの不当利得返還請求権に係る債権については300万円全額が認められる一方,Yの本件貸金債権は500万円のうち450万円が弁済されているため50万円の範囲でのみ認められるとの心証を得て,その心証に従った判決(以下「前訴判決」という。)をし,前訴判決は確定した。

(引用終わり)

 

 「その心証に従った判決」とは、具体的にはどのような判決なのか。「250万円限度の一部認容判決に決まってるじゃん。」と思うかもしれません。実は、必ずしもそうではないのです。どういうことか。ポイントは、第1訴訟が、実は一部請求である、というところにあります。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 弁護士Lは,Xと相談した結果,差し当たり,訴え提起の時点までに既に発生した利得分の合計300万円のみを不当利得返還請求権に基づいて請求することとした。

(引用終わり)

 

 XのYに対する不当利得返還請求権のうち、「訴え提起の時点までに既に発生した利得分」だけを請求している。継続的不当利得に基づく返還請求権については、日々刻々と別個の権利が発生するのではなく、1個の不当利得返還請求権の内容が変動する、というのが、一般的な理解です。このように、現在給付部分と将来給付部分がそれぞれ1つの請求権の一部を構成することは、将来給付の訴えの請求適格に関する前記各判例の表現の仕方からも明らかです。

 

大阪国際空港事件判例より引用。太字強調は筆者。)

 別紙当事者目録記載の番号1ないし239の被上告人ら(原判決別紙二の第一ないし第四表記載の被上告人らないしその訴訟承継人ら)の損害賠償請求のうち原審口頭弁論終結後に生ずべき損害(この損害の賠償の請求に関する弁護士費用を含む。)の賠償を求める部分は、権利保護の要件を欠くものというべきであつて、原判決が右口頭弁論終結ののちであることが記録上明らかな昭和五〇年六月一日以降についての上記被上告人らの損害賠償請求を認容したのは、訴訟要件に関する法令の解釈を誤つたものであり、右違法が判決に影響を及ぼすものであることは明らかである。

(引用終わり)

最判昭63・3・31より引用。太字強調は筆者。)

 被上告人の前記請求のうち、原審口頭弁論終結後の期間にかかる請求部分は、将来の給付の訴えの対象適格を有するものということはできないから、右訴えにかかる請求を認容した原審の判断には、訴訟要件に関する法令の解釈適用を誤つた結果、将来の給付の訴えの対象適格を欠く請求についてその適格を認めた違法があるといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

(引用終わり)

最判平24・12・21より引用。太字強調は筆者。)

 共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものである(最高裁昭和59年(オ)第1293号同63年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事153号627頁参照)。

(引用終わり)

 

 「~のうち…の部分」という表現は、請求の趣旨において一部請求であることを明示する場合に用いる表現でもあるので、覚えておくとよいでしょう。問題文上は「差し当たり…請求することとした。」としか書いてありませんが、当然、弁護士Lは請求の趣旨においてこれを明示した、と考えることになります。
 さて、そうすると、何がどう変わってくるか。学習の進んでいる人ならピンと来るでしょう。そうです。「一部請求と相殺」の論点が出てくるのです。一部請求と相殺については、外側説を採るのが判例(最判平6・11・22)、通説です。

 

最判平6・11・22より引用。太字強調は筆者。)

 特定の金銭債権のうちの一部が訴訟上請求されているいわゆる一部請求の事件において、被告から相殺の抗弁が提出されてそれが理由がある場合には、まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の請求に係る一部請求の額が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。けだし、一部請求は、特定の金銭債権について、その数量的な一部を少なくともその範囲においては請求権が現存するとして請求するものであるので、右債権の総額が何らかの理由で減少している場合に、債権の総額からではなく、一部請求の額から減少額の全額又は債権総額に対する一部請求の額の割合で案分した額を控除して認容額を決することは、一部請求を認める趣旨に反するからである。

(引用終わり)

 

 では、これを本問の場合にもそのまま適用すれば足りるかというと、そうではありません。そのことは、上記判例のいうように、「まず、当該債権の総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定」しようとしてみるとわかります。「当該債権の総額」とは、本問でいえば、将来発生すべき部分も含んだ全額ということになります。そこから、自働債権の額、本問では弁済で消滅していない50万円を控除する。結論的には、将来発生すべき不当利得返還請求権の額が50万円を超える場合には、Xの請求は300万円全額認容ということになります。明らかにおかしいですね。おかしいということの具体的な意味は2つです。まず1つは、請求適格との関係です。仮に、設問1で将来発生部分の請求適格を否定する場合には、 上記の処理は、これと矛盾する。すなわち、請求適格を否定しているにもかかわらず、実質的には、将来発生部分についても請求を認めているのと同じ結論になってしまうということです。もう1つは、相殺適状との関係です。将来発生すべき不当利得返還請求権は、現在発生していないわけですから、現時点で相殺適状にない。それにもかかわらず、将来発生部分をも含んだ総額から控除したのでは、相殺適状にない受働債権との相殺を認めていることになってしまいます。仮に、控除の趣旨を、将来発生した時点で直ちに相殺する趣旨と考えたとしても、Yの合理的意思として、通常は既に発生した不当利得返還請求権との相殺を望むのが当然ですから、先に将来発生部分との相殺を強制する結果になるような処理は、妥当とはいえません。こうして、本問のように、継続的に発生する債権のうち、既に発生した部分について一部請求がされた場合において、相殺の抗弁が提出されてそれが理由があるときは、外側説ではなく、内側説を採るべきだ、という結論に至るのです。その後の処理は、この論点に気付かなかった場合と同じです。
 「しまった。そんなの気付かなかったよ。」と思ったなら、むしろそれは逆です。「気付かなくてよかったよ。」と思うのが正しい。こんなことに現場で気付いてしまったら、混乱して、誰もが書く当たり前の論述が雑になってしまうでしょう。こんなものは、気付かない方が幸せなのです。上記(1)の基本論点に絞って書くというのは、このような趣旨も含んでいるのです。
 参考答案は、上記(1)から(3)までに絞って書いていますが、本問の場合は、もう少し事実の評価を付す余裕もあったかもしれません。もちろん、余裕があれば、評価を付して構いません。予備試験の場合は、民法、商法、民訴を同時に解くので、民訴で生じた余裕を、民法、商法に回すという選択肢もあったでしょう。いずれにせよ、参考答案程度のレベルなら、安定して常に時間内に書き切れる、という力を身に付けることが大切です。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.将来給付の訴えが適法となるためには、事前請求の必要性(135条)及び請求適格が必要である。

2.事前請求の必要性があるというためには、履行期の任意の履行が期待できないこと、履行期に履行されなければ債権の目的を達することができないこと等の事情があることを要する。
 本件で、Xから委任を受けた弁護士LがYと裁判外で交渉をしたものの、Yは支払に応じなかったから、履行期の任意の履行が期待できない。したがって、事前請求の必要性がある。

3.将来給付の請求適格が認められるためには、その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動が予め明確に予測しうる事由に限られ、これについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ強制執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても、当事者間の公平を害することがなく、格別不当とはいえないことを要する(大阪国際空港事件判例参照)。
 本件で、YとAとの間で本件賃貸借契約が締結され、甲土地がXとYとの共有となった後も、甲土地の管理は引き続きYが行っており、YA間の本件賃貸借契約も従前どおり維持されていた。Aからの賃料については、Yが回収を行い、Xに対してはその持分割合に応じた額が回収した賃料から交付されていたが、ある時点からYはXに対してこれを交付しないようになり、Xから委任を受けた弁護士LがYと裁判外で交渉をしたものの、Yは支払に応じなかった。したがって、Yに対する不当利得返還請求権発生の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測される。本件賃貸借契約における賃貸期間中の賃料は定額である。Aが運営するゴルフ場の経営は極めて順調であり、Aは、本件賃貸借契約が締結されてからこの10年間本件賃貸借契約の約定どおりに賃料の支払を続けていて、これまで未払はない。したがって、債権の発生・消滅及びその内容につきYに有利な将来における事情の変動が予め明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ強制執行を阻止しうるという負担をYに課しても、当事者間の公平を害することがなく、格別不当とはいえない。したがって、請求適格が認められる。

4.よって、訴え提起の時点では未発生である利得分も含めた不当利得返還請求訴訟を提起することは適法である。

第2.設問2

1.相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する(114条2項)。上記既判力の内容は、基準時における自働債権の不存在である。
 本件で、第1訴訟においてXの不当利得返還請求権に係る債権については300万円全額が認められたから、本件貸金債権のうち相殺をもって対抗した額は、300万円である。したがって、本件貸金債権のうち300万円は、第1訴訟の基準時において存在しないという点について、既判力が生じる。
 よって、第2訴訟において、受訴裁判所は、本件貸金債権のうち300万円については、基準時後の事実を除き、改めて審理・判断をすることはできない。

2.本件貸金債権のうち残部の200万円については、前訴判決の既判力は及ばない。
 既判力によって遮断されない場合であっても、訴訟上の信義則(2条)に反するときは、後訴での主張は許されない。 信義則に反するか否かは、前訴で容易に主張しえたか、相手方に前訴判決によって紛争が解決したとの信頼が生じるか、相手方を長期間不安定な地位に置くものといえるか等の観点から判断すべきである(判例)。
 本件で、確かに、Yが長期間経過後に第2訴訟を提起したという事情はなく、直ちにXを長期間不安定な地位に置くとはいえない。しかし、前訴判決は本件貸金債権は500万円のうち450万円が弁済されているとの心証に基づくものであり、Yは、第1訴訟において、本件貸金債権がいまだ弁済されていないとする主張を容易になしえたし、Xに前訴判決によって紛争が解決したとの信頼が生じるといえる。したがって、Yが本件貸金債権のうち残部の200万円の存否について改めて争うことは、訴訟上の信義則(2条)に反し、許されない。
 よって、第2訴訟において、受訴裁判所は、本件貸金債権のうち残部の200万円については、改めて審理・判断をすることはできない。

以上

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2017年08月13日

平成29年予備試験論文式商法参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、司法試験と同様、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、上位合格者のレベルに達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があるのです。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は3頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に4頁後半まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、1行35文字以上のペースで4頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

4.今年の商法は、応用的な要素もないわけではありませんが、答案に書くべき内容としては、基本的なものに限られています。したがって、上記の(1)から(3)までを普通にこなせば、優に合格答案となるでしょう。
 設問1で、上記(1)に当たる基本事項は、金銭債権の現物出資の方法があることと、募集株式の発行と現物出資に関する一般的な手続です。これを解答すれば、最低限の合格答案でしょう。参考答案は、それだけしか書いていません。過去の傾向からすると、この程度ですら、意外と書けない人が多いものです。
 上位を狙うなら、現場で条文検索をし、207条9項5号に気付く必要があります。

 

(207条9項5号)
 現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第百九十九条第一項第三号の価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合 当該金銭債権についての現物出資財産の価額

 

 同号は、同項4号の隣にある条文です。現物出資一般の手続を説明する際に、4号の証明は、検査役の調査に代わるものとして、覚えて引用する条文です。これを引く際に、5号が目に入ってくれば、気付くチャンスはあったのではないかと思います。同号に気付いたなら、さらに括弧書きの弁済期到来要件を満たしていないことにも気付きたいところです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 X社は,同社に対して5億円の金銭債権(弁済期平成28年7月1日)を有するA株式会社(以下「A社」という。)に対し,A社のX社に対する同債権を利用して,募集株式1万株を発行することとして(払込金額は5万円,出資の履行の期日は平成28年5月27日),A社にその旨の申入れをしたところ,A社の了解を得ることができた。

(引用終わり)

 

 ここまで気付けば、さらに、X社が期限の利益を放棄すれば、この要件を満たすことになりそうだ、ということにも気付きたい。ここまで書ければ、設問1は上位の合格答案といえるでしょう。ただ、実際には、初日の疲労が残った状態で、しかも、実務基礎を3時間で解いた後にこれを解くわけですから、現場でここまで気付くのは、なかなか難しいことです。現場で条文を引こうとするあまり、それ以前の基本事項を落としてしまった、という人も、かなりいたのではないかと思います。
 さらに、超上位を狙うなら、通常の金銭出資とし、払込義務と金銭債権を相殺するという方法についても、書くことになるでしょう。ここでは、208条3項との関係を検討することになります。

 

(208条3項)
 募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。

 

 同項のポイントは、「募集株式の引受人は…相殺することができない。」とされ、会社側からの相殺は禁じていないということです。

 

会社法制の現代化に関する要綱第2部第4の3(6)a注2より引用。太字強調は筆者。)

(注2 ) 相殺禁止に関する規定は,金銭等で払い込むべきものと定められている場合における引受人からの相殺を禁止する旨の規定に改めるものとする。

(引用終わり)

会社法制の現代化に関する要綱試案第4部第2の6(1)③注1より引用。太字強調は筆者。)

(注1) 相殺禁止に関する規定については,金銭で払い込むべきものと定められている場合における引受人からの相殺を禁止する旨の規定に変更するものとする。

(引用終わり)

会社法制の現代化に関する要綱試案の補足説明より引用。太字強調は筆者。)

 (注1)は,相殺禁止に関する規定(商法200条2項,有限会社法57条)についてその趣旨を明らかにする改正をすることを掲げている。このことと,金銭債権の現物出資との関係について検討すると,会社に対する金銭債権の現物出資を検査役の調査を経ずに認める実質的な趣旨については,次のように整理することができる。
 第一に,一旦金銭で弁済して,再度同額を出資すれば金銭債権の現物出資と同様の効果が認められるが,債権者が出資しないというリスク等を負担しなければならず,また,他の債権者との関係でも望ましくない。
 第二に,現物出資の目的となる金銭債権の債権者は,現物出資により株主というより弁済順位の低い資金提供者へとその地位を後退させるのであるから,他の債権者及び将来の債権者にとっては有利な行為である。
 このように,会社が現物出資に同意している限り,金銭債権の現物出資によって,会社及びその債権者が害されることはない。そうではなく,(注1)に掲げたように,会社が金銭で払い込むべき,すなわち現実の払込みを行うべきものと定めたときに,引受人がその有する会社に対する債権を自働債権として相殺することを禁止するところに相殺禁止の規定の意義があるといえる。

(引用終わり)

 

 このように、208条3項は、引受人からの一方的意思表示による相殺(法定相殺)を禁じているにすぎず、会社側からの相殺や、会社と債権者の合意による相殺を禁じる趣旨の規定でないことは明らかです。したがって、本問において、金銭出資とした上で、X社側から期限の利益を放棄して相殺をしたり、X社とA社の合意により相殺をすることは可能であるということになる。また、このことは、金銭債権の現物出資による方法が、208条3項の潜脱になるなどという余地もないことを示しています。これらの点について、それなりに論述できれば、超上位の合格答案といえるでしょう。
 設問1で問われた手法は、負債(Debt)と資本(Equity)を交換(Swap)するという意味で、デット・エクイティ・スワップ(Debt EquitySwap)と呼ばれます。もっとも、そのような名称を知らなくても、十分に解答できます。なお、デット・エクイティ・スワップに関しては、「現物出資財産の価額」を帳簿価額と考えるべきか、時価(その金銭債権の評価額)と考えるべきか、という厄介な論点があります。しかし、本問では、A社の有する金銭債権の帳簿価額と評価額に乖離がある旨の記載が問題文にありませんし、方法と手続しか問われていません(※1)から、この点は直接には問われていないと考えるべきなのでしょう。問題文を見ても、金銭債権の評価額と帳簿価額の乖離が生じているとは考えにくい事案に、敢えて設定されているようにみえます。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

2.X社は,主たる事業である電子機器の製造・販売業は堅調であったが,業績拡大の目的で多額の投資を行って開始した電力事業の不振により多額の負債を抱え,このままでは債務超過に陥るおそれがあった。そこで,X社は,この状況から脱却するため,電力事業を売却し,同事業から撤退するとともに,募集株式を発行し,債権者に当該募集株式を引き受けてもらうことにより負債を減少させる計画を立てた。

3.X社は,同社に対して5億円の金銭債権(弁済期平成28年7月1日)を有するA株式会社(以下「A社」という。)に対し,A社のX社に対する同債権を利用して,募集株式1万株を発行することとして(払込金額は5万円,出資の履行の期日は平成28年5月27日),A社にその旨の申入れをしたところ,A社の了解を得ることができた。

(引用終わり)

 

 「電力事業の不振により多額の負債を抱え,このままでは債務超過に陥るおそれがあった」というのは、現時点ではまだ債務超過にはなっていないということです。また、「電力事業を売却し,同事業から撤退する」としているので、売却による現金が入ってくるし、多額の負債を生む原因となった電力事業から撤退するわけですから、債務超過のおそれはひとまず解消されるとみることができる。しかも、弁済期は平成28年7月1日であり、遠い将来というわけでもない。さらに、A社に対する5億円の債務も、募集株式の発行が実現すれば、これによって解消される。こうした事情からすれば、A社の金銭債権の評価額が、返済不能のリスクによって帳簿価額より低い価額になるという可能性は、かなり低いといえるでしょう。以上のことから、この点は、仮に知識として知っていたとしても、書くべきではないのだろうと思います。
 ※1 厳密には、現物出資財産の価額を時価(評価額)とみた場合には、給付すべき「募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産」(208条2項)としてはA社の有する金銭債権では足りないという余地があり、そもそもA社の金銭債権の現物出資という方法では1万株を発行するという目的を達し得ないので、現実的に採り得る方法とはいえないとか、払込金額5万円自体は特に有利な金額ではなくても、実質的には、その払込金額を下回る価額で株式発行を受けられることになるから、実質的な有利発行であるとして、株主総会特別決議を要するとする解釈の余地があり得ます。

 設問2です。設問2で、上記(1)に当たる基本事項のうち、最も重要なものは、見せ金該当性です。ここで、当てはめに入る前に一般論として判例(最判昭38・12・6)の規範を明示したか、すなわち、上記(2)をクリアしたかによって、合否が分かれるでしょう。

 

最判昭38・12・6より引用。太字強調は筆者。)

 株式の払込は、株式会社の設立にあたつてその営業活動の基盤たる資本の充実を計ることを目的とするものであるから、これにより現実に営業活動の資金が獲得されなければならないものであつて、このことは、現実の払込確保のため商法が幾多の規定を設けていることに徴しても明らかなところである。従つて、当初から真実の株式の払込として会社資金を確保するの意図なく、一時的の借入金を以て単に払込の外形を整え、株式会社成立の手続後直ちに右払込金を払い戻してこれを借入先に返済する場合の如きは、右会社の営業資金はなんら確保されたことにはならないのであつて、かかる払込は、単に外見上株式払込の形式こそ備えているが、実質的には到底払込があつたものとは解し得ず、払込としての効力を有しないものといわなければならない。しかして本件についてこれを見るに、原判決の確定するところによれば、訴外D株式会社は資本金二〇〇万円全額払込ずみの株式会社として昭和二四年一一月五日その設立登記を経由したものであるが、被上告人Bは、発起人総代として同じく発起人たるその余の被上告人らから、設立事務一切を委任されて担当し、株式払込については、被上告人Bが主債務者としてその余の被上告人らのため一括して訴外E銀行Gから金二〇〇万円を借り受け、その後右金二〇〇万円を払込取扱銀行である右銀行支店に株式払込金として一括払い込み、同支店から払込金保管証明書の発行を得て設立登記手続を進め、右手続を終えて会社成立後、同会社は右銀行支店から株金二〇〇万円の払戻を受けた上、被上告人Bに右金二〇〇万円を貸し付け、同被上告人はこれを同銀行支店に対する前記借入金二〇〇万円の債務の弁済にあてたというのであつて、会社成立後前記借入金を返済するまでの期間の長短、右払戻金が会社資金として運用された事実の有無、或は右借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等、その如何によつては本件株式の払込が実質的には会社の資金とするの意図なく単に払込の外形を装つたに過ぎないものであり、従つて株式の払込としての効力を有しないものではないかとの疑いがあるのみならず、むしろ記録によれば、被上告人Bの前記銀行支店に対する借入金二〇〇万円の弁済は会社成立後間もない時期であつて、右株式払込金が実質的に会社の資金として確保されたものではない事情が窺われないでもない。然るに、原審がかかる事情につきなんら審理を尽さず、従つてなんら特段の事情を判示することなく、本件株式の払込につき単にその外形のみに着目してこれを有効な払込と認めて被上告人らの本件株式払込責任を否定したのは、審理不尽理由不備の違法があるものといわざるを得ず、その結果は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は、その余の論点に対する判断を俟つまでもなく、破棄を免れない。

(引用終わり)

 

 これをクリアしたことを前提に、仮装出資に係る新株発行の無効と不存在の区別、仮装出資に関する規律の適用について、それなりに示すことができれば、合格答案といったところだろうと思います。見せ金該当性に関する規範を明示しなかった人のほとんどは、法的三段論法が重要だということは当然知っているし、判例の規範も知っていたでしょう。単に、時間、紙幅等の関係で、省略してしまったにすぎない。中には、上記判例が事例判例であることを意識して、過度に一般化してはいけないと思い、敢えて規範として明示しなかった人もいるでしょう。そのような人は、規範を丸暗記して貼り付けた人よりも、むしろ、理解の深い人といえます。しかしながら、そのような人もすべて、規範を明示していないという理由だけで、「法的三段論法もわかっていないし、判例の規範があることも知らない。法律家として不適格である。」という評価になる。これが、論文試験の恐ろしいところです。そうだからこそ、当サイトは、上記(1)から(3)までを、多くの受験生からすれば極端に感じられるほどに、強調しているのです。 
 仮装出資に係る新株発行の効力については、平成26年会社法改正によって有効になった、という説明が、一部でなされているようです。これは、同改正を契機に論者が自説を改める、というのならわかりますが、同改正が有効説を採用する趣旨でなされたとか、同改正によって論理的に有効説しか取り得なくなった、という趣旨であるなら、それは誤っていると思います。

 

法制審議会会社法制部会第21回会議議事録より引用(肩書は当時)。※注及び太字強調は筆者。)

内田修平(法務省民事局付)関係官  出資の履行が仮装された場合の募集株式の発行の有効性については,解釈に委ねることが相当と考えられますが,当部会での御議論を踏まえますと,仮にこれが有効で,引受人が株式を取得すると解される場合でも,①又は②の責任(※注 213条の2、213条の3の責任に相当するもの)が履行されるまでの間は,株主権の行使を認めるべきではないと考えられることから,この点について明文の規定(※注 209条2項に相当するもの)を置くものでございます。

(引用終わり)

 

 「仮にこれが有効…でも」と、有効説について言及しているのは、有効説からは無制限に株主権の行使が認められるとも思えるためで、有効説を前提にするという趣旨ではありません。改正によって有効説になった、という誤解が生じるのは、「引受人に払込み・給付に相当する責任を負わせたり、株主権の行使に関する規定があったりするってことは、有効説じゃないと説明できないんじゃないの?」という発想があるからでしょう。そのような疑問を持ってしまう人は、募集株式の発行については、「無効だけど有効と扱われる。」という状況が存在することを、失念しているのです。

 

(828条1項)
 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる
一 略。
二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
3号以下略。

(834条2号)
 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(第八百四十条第一項において「新株発行の無効の訴え」という。) 株式の発行をした株式会社

(839条)
 会社の組織に関する訴え第八百三十四条第一号から第十二号まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う

 

 募集株式の発行に無効事由があっても、新株発行無効の訴えが提起され、認容判決が確定する時までは、有効と扱われるのです。しかし、839条の文言から明らかなことは、募集株式の発行と、それによって交付された株式が有効と扱われる、というだけで、それ以外の法律関係については、従来はよくわからないままでした。そうすると、発行及び株式は有効だけれど、払込みは無効で、引受人は失権するから、もはや払込義務を負わない、という帰結になりそうだ。それは困る、ということで規定されたのが、平成26年改正によって規定された一連の規律です。

 

法制審議会会社法制部会第10回会議議事録より引用(肩書は当時)。太字強調は筆者。)

内田修平(法務省民事局付)関係官 判例上,仮装払込みは,払込みとしての効力を有しないと解されており,有効な払込みがない以上,現行法の下では,仮装払込みをした引受人は,会社法第208条第5項の「出資の履行をしないとき」に該当するものとして,募集株式の株主となる権利を失うとともに,払込みの責任を免れるようにも思われます。もっとも,仮装払込みをした者は,仮装払込みにより既存株主から価値の移転を受けた場合には,それを返還すべき地位にあるといえます。そこで,仮装払込みをした者は,払込期日・払込期間の経過後も払込みの責任を免れないものとすることについて,検討を要するものと存じます。

(引用終わり)

法制審議会会社法制部会第21回会議議事録より引用(肩書は当時)。太字強調は筆者。)

岩原紳作(東大教授)部会長 払込みが仮装された場合に,引受人が失権して,もう払込義務もなくなってしまうということで,最終的に責任をとる者もいなくなってしまうといった最悪の場合を捕まえて,それについての規定を置こうというのが,部会資料24の案だと思っています。確かに,こういう規定を入れると,逆に,ここから新株発行の有効性を前提にしているのではないかとか,そういう解釈論的な問題が出てくる可能性はあり得るのですけれども,取りあえず,そういう最悪のケースは押さえておきたいということで提案されているのが部会資料24だと思います。

(引用終わり)

 

 このように、「無効だけど有効」という困った事態に対処する趣旨の規定なわけですから、これは不存在の場合には適用がないということになります。

 

法制審議会会社法制部会第21回会議議事録より引用(肩書は当時)。太字強調は筆者。)

藤田友敬(東大教授)幹事 単なる仮装払込みの場合は,この規律でいいと思うのですが,いわゆる新株発行不存在の場合に,しかも,払込みが仮装であるというケースであれば,ここのルールに従って後で払い込みがなされたとしても,有効な新株発行になったりするわけではない,募集株式の不存在の話は全く別で,このルールによって何か新たなものが作り出される話ではないと理解してよろしいですね

坂本三郎(法務省民事局参事官)幹事 正に,藤田幹事の御指摘のとおりでございまして,不存在の場合は,それはまた別ということになるという理解でおります。

(引用終わり)

 

 この延長線上の話として、新株発行無効の訴えの認容判決が確定してしまった場合には、もはや「無効だけど有効」という状態ではないのだから、その後に引受人が213条の2の義務を履行したからといって、株主権を行使できるようになるというわけではない、ということになる。「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」では、このことを明らかにした論証を用意していました。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」より引用)

仮装出資に係る規律(52条の2第、102条3項、4項、102条の2、103条2項、3項、209条2項3項、213条の2、213条の3)の適用範囲
重要度:B

 仮装出資に係る規律の趣旨は、新株発行等に無効事由があっても、無効判決が確定する時までは有効なものと扱われる(828条1項2号、3号、839条)ことから、その間の法律関係を明確にする点にある。従って、新株発行等が不存在となる場合には、上記の規律は適用がない。また、新株発行等の無効判決が確定した場合には、その時から上記の規律は適用されない。

(引用終わり)

 

 本問が、問題文で、「なお,これを論ずるに当たっては,上記5の募集株式の発行の効力についても,言及しなさい。」としているのは、不存在とした場合には改正法の規律が適用されなくなるからです(※2)。 参考答案は、上記の論証を用いていますが、これはせっかく当サイトで作ったものなので使っているという程度の意味です。現段階では知らない人の方が多いでしょうから、書けなくても合格答案でしょう。なお、本問では、議決権のような共益権も、209条2項の株主権に含まれるか(同条2項が経済的価値の移転に着目した規定であるとするなら、配当受領権等の自益権のみが否定され、共益権は否定されないのではないか。)、という応用論点もあり、「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」では収録していました。
 ※2 厳密には、小問(1)のY及びZ社に213条の3、213条の2が適用されるかという点にも影響するので、小問(2)にこのなお書きを付したことが適切であったかについては疑問の余地があります。ただし、この点が特に問題となるのは株主権の行使の場面ですので、小問(2)に付したこともわからないではありません。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」より引用)

「株主の権利」(52条の2第4項、102条3項、209条2項)には共益権も含むか
重要度:C

 本来拠出すべき支払又は給付がないのに会社の経営に参画することは相当でない以上、「株主の権利」(52条の2第4項、102条3項、209条2項)には共益権も含まれる。

 

 これはCランクの論点でもあり、文言を素直に読めば含まれることは明らかでしょうから、敢えて論証するまでもないでしょう。
 小問(1)でCの採り得る手段について、株主代表訴訟には気付いたと思いますが、847条1項には213条の2の責任は明示的に規定されているものの、213条の3の責任が明示されていないので、迷った人もいたかもしれません。213条の3の責任が個別に規定されていないのは、「役員等…の責任」に含まれると考えれているからです。

 

(847条1項)
 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

(「会社法制の見直しに関する中間試案の補足説明」より引用。太字強調は筆者。)

 仮装払込みをした者に払込みの責任を果たすよう求めることは困難な場合もあるほか,仮装払込みの抑止という観点からも,仮装払込みに関与した取締役等に責任を負わせる必要があるとの指摘もされている。そこで,②では,仮装払込みに直接又は間接に関与した取締役等は,株式会社に対して仮装払込みの金額に相当する額を支払う義務を負うものとしている。上記のとおり,旧商法における取締役の引受担保責任は,取締役が所定の手続を経ることなく株式を引き受けることになるのは適切でないと考えられたこと等から,会社法制定時に廃止されたという経緯があるが,②の義務は,そのような引受担保責任とは異なり,仮装払込みへの関与についての帰責性に基づく特別の法定責任として,仮装払込みの金額に相当する額を支払う義務を課すものである。そして,帰責性に基づく法定責任という責任の性質を踏まえ,取締役等は,その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すれば,このような義務を免れるものとしている。ただし,払込みの仮装をした取締役等については,その行為態様等に鑑み,無過失責任としている。なお,②の義務は,株式会社の取締役等の責任として,同法第847条第1項の責任追及等の訴えの対象となると考えられる。

(引用終わり)

 

 今回、平成26年改正について全然知らなかった、という人は、さすがに対策不足です。改正事項だからといって、出題されない、ということはありません。もちろん、あらゆる改正について準備しておかなければならないということはありませんが、多くの人が準備するようなものは、事前に知っておく必要があります。出資の仮装に関する規律は、同改正の中でも重要度の高いものであり、「司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材」でも取り上げていたものですので、基本事項の1つとして、当然に知っておくべきことでした。これは新判例についてもいえることですが、重要なものは、上記(1)の基本論点に含まれてきますので、きちんと準備をしておく必要があるのです。
 参考答案は、設問1で、207条9項5号に全く触れていません。「デット・エクイティ・スワップの特殊性に全然気付いていないじゃないか。」と思うでしょう。しかし、これで十分合格答案です。なぜなら、そもそも一般的な募集株式発行の手続について、的確に解答できる人が少ないからです。上記(1)の基本論点だけを解答すれば合格レベルになる、というのは、そういうことです。
 なお、参考答案中の太字強調部分は、「司法試験定義趣旨論証集(会社法)」に準拠した部分です。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.A社のX社に対する金銭債権を現物出資するという方法が考えられる。

2.必要な手続

(1)募集事項(199条1項各号)の決定は、非公開会社においては株主総会の特別決議による必要がある(同条2項、309条2項5号)が、公開会社においては、第三者割当てによる有利発行(199条3項)である場合を除き、取締役会決議によれば足りる(201条1項、202条3項3号、5項)。
 本件で、X社は公開会社である。A社は、募集株式の発行を受けるまで、X社の株式を有していなかったから、第三者割当てである。もっとも、募集株式の払込金額5万円は、A社に特に有利な金額ではないから、有利発行には当たらない。
 従って、募集事項の決定は、取締役会決議によれば足りる。

(2)公開会社が取締役会決議によって募集事項を定めた場合には、株主割当てのとき(202条5項)又は金商法4条1項から3項までの届出をしている等のとき(201条5項)を除き、株主に対する通知(126条)又は公告(939条)をすることを要する(201条3項、4項)。
 本件で、X社が金商法4条1項から3項までの届出をしている等の場合でなければ、株主に対する通知又は公告が必要である。

(3)総数引受契約がある場合には、株式申込予定者に対する通知(203条1項)及び割当て(204条1項)の手続を要しない(205条1項)。
 本件で、A社は発行される募集株式1万株の総数を引き受けるから、総数引受契約を締結することにより、X社は、A社に対する通知及び割当ての手続をしないことができる。

(4)現物出資(199条1項3号)をするためには、現物出資財産の価額につき、検査役の調査(207条1項)又はこれに代わる証明(同条9項4号)が必要である。
 本件で、X社は、現物出資財産であるA社のX社に対する金銭債権の価額について、検査役の調査又はこれに代わる証明の手続をとることが必要である。

(5)資本金の額(911条3項5号)及び発行済株式総数(同項9号)に変動が生じることから、X社は、変更の登記をする必要がある(915条1項)。

第2.設問2

1.小問(1)

(1)見せ金とは、払込取扱機関以外の者からの借入金を払込みに充て、払込みの効力が生じた後に引き出して上記借入金を返済することをいう見せ金に当たるというためには、借入金を返済するまでの期間の長短、払戻金が会社資金として運用された事実の有無、借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無等を考慮し、実質的に会社の資金とする意図がなく、単に払込みの外形を装ったに過ぎないと認められることを要する(判例)
 本件で、借入れ、払込みは平成29年2月1日にされ、借入金の返済は同月2日にされたから、その間はわずか1日である。払戻金が会社資金として運用された事実はない。Z社の払込みがされずに、募集株式の発行ができないこととなると、X社の財務状態に対する信用が更に悪化するという事情からすれば、借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響は大きいといえる。以上から、実質的に会社の資金とする意図がなく、単に払込みの外形を装ったに過ぎないと認められる。従って、Z社による払込みは、見せ金である。

(2)Z社による払込みは、見せ金であるから、払込みを仮装した場合(213条の2第1項1号)に当たる。

ア.Yは、X社の代表取締役であり、上記見せ金についてZ社と協議したから、出資の履行の仮装に関する職務を行った取締役(施行規則46条の2第1号)として、X社に対し、3億円を支払う義務を負う(213条の3第1項)。Yは、出資の履行を仮装した者といえるから、無過失免責の余地はない(同項ただし書括弧書き)。

イ.Z社は、募集株式の引受人として、X社に対し、3億円を支払う義務を負う(213条の2第1項1号)。この責任は総株主の同意がなければ免除できない(同条2項)から、Cが同意しない場合には、免除の余地はない。

ウ.上記アイの責任は、連帯債務となる(213条の3第2項)。

(3)よって、Cは、株主代表訴訟の手段により、上記Y及びZ社の責任を追及することができる(897条1項、3項)。

2.小問(2)

(1)出資の履行が仮装された場合には、会社の事業資金は何ら確保されたことにはならない以上、出資の履行としての効力は生じない(判例)
 本件で、Z社の払込みは無効であり、既に払込期日である平成29年2月1日を経過しているから、Z社が有効に株式の発行を受けることはできない(208条5項)。

(2)出資の履行を仮装した新株発行等は、その実体がある場合には無効事由となるが、発行等の実体すら認められない場合には不存在である
 本件で、X社は、Z社に対して、募集株式6000株を発行し、Z社は、これをすべてB社に代物弁済し、名義書換がされたから、発行の実体がある。従って、Z社に対する募集株式の発行には、無効事由がある。

(3)仮装出資に係る規律の趣旨は、新株発行等に無効事由があっても、無効判決が確定する時までは有効なものと扱われる(828条1項2号、3号、839条)ことから、その間の法律関係を明確にする点にある。従って、新株発行等が不存在となる場合には、上記の規律は適用がない。また、新株発行等の無効判決が確定した場合には、その時から上記の規律は適用されない
 本件で、Z社に対する募集株式の発行には無効事由がある。従って、209条2項、3項の適用がある。

(4)よって、B社は、出資の仮装につき悪意・重過失でない限り、議決権を行使できる(同条3項)。

以上

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2017年08月03日

平成29年予備試験論文式民法参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、司法試験と同様、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、上位合格者のレベルに達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があるのです。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は3頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に4頁後半まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、1行35文字以上のペースで4頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

4.今年の民法は、基本と応用が混在していて、「正解」を考えようとすると、難しい問題です。しかし、合格答案を書くだけなら、基本部分に絞って書けばよいので、意外と易しい。その意味で、上記の(1)が重要だったといえるでしょう。
 設問1は、まず、Aが本件登記によって、甲建物の所有権を確定的に取得したといえるか。これが、入り口にある応用論点です。登記原因が譲渡担保であることを重視するなら、本件登記は、Aが譲渡担保権を取得したことについて対抗力を生じるにすぎないから、所有権取得について対抗力は生じない、と考える余地がありそうにも思えるからです。このことは、例えば、本件登記が抵当権設定登記であった場合を考えると、理解しやすいでしょう。抵当権設定登記でもって、所有権取得について対抗力が生じることは、あり得ません。同様に、譲渡担保権設定登記としての性質を有する本件登記によって、所有権取得に関する対抗力は生じ得ないのだ、ということになるのか。これについては、登記原因は対抗力の内容を構成しないので、たとえ登記原因が譲渡担保であろうと、それは単純な所有権移転の登記である、とするのが一般です。

 

(東京高決昭55・1・28より引用。太字強調は筆者。)

 譲渡担保を登記原因とすることは、所有権移転の原因を示すにすぎず、登記として完全な所有権移転の登記であつて、抵当権設定登記のような所有権に対する制限としての意味は、全く有しない。のみならず、譲渡担保契約の当事者間の問題として考えてみても、被担保債務の不履行により譲渡担保権者に所有権が終局的に帰属してしまつている場合もあり、この場合と、いまだ譲渡担保が設定されているにとどまつている場合とは、登記自体からは判別することができず、この点において、単なる担保権としての抵当権の設定登記とは事情を著しく異にし、これと同視することはおよそ不可能である。

(引用終わり)

 

 解釈論としては、譲渡担保の法的性質について担保権的構成に立った上で、譲渡担保を登記原因とする場合に限っては、登記原因も対抗力の内容を構成し得る、とする考え方もあり得ないわけではないと思います。しかし、登記原因を売買として登記する譲渡担保も一般に認められているので、そのように理解すると、登記原因を譲渡担保としたか売買としたかによって、対抗力の内容が異なることになってしまいます。ですので、筆者としては、そのような解釈は無理ではないかという感触を持ちます。実戦的には、ここは問題文から多数派の書きそうなことを予測し、決め打ちすることになります。本問では、次に説明する94条2項、110条類推適用は多くの人が気付きます。これを、多数派は書いてくるでしょう。仮に、本件登記によるAの所有権取得の対抗力を否定してしまうと、ACは単純な二重譲渡による対抗関係となってしまいますから、94条2項、110条類推適用が出てこない。こうして、本件登記の対抗力を否定してはいけない、と現場で判断することになるのです。
 本件登記が単純な所有権移転登記であるとすると、本問のAは、本件登記を備えた時に確定的に甲建物所有権を取得し、その後にBから買い受けたCは、無権利者からの譲受人となります。このままではCは勝てませんので、何らかの救済法理を考えることになる。多くの人が、以下の問題文を見て、94条2項類推適用を考えたでしょう。これは、基本論点です。

 

(問題文より引用)

 平成23年12月13日,Bは,不動産業者Cとの間で,甲建物をCに500万円で売却する旨の契約を締結し,同日,Cから代金全額を受領するとともに,甲建物をCに引き渡した。この契約の締結に際して,Bは,【事実】2の譲渡担保設定契約書と甲建物の登記事項証明書をCに提示した上で,甲建物にはAのために譲渡担保が設定されているが,弁済期にCがAに対し【事実】2の貸金債権を弁済することにより,Aの譲渡担保権を消滅させることができる旨を説明し,このことを考慮して甲建物の代金が低く設定された。Cは,Aが実際には甲建物の譲渡担保権者でないことを知らなかったが,知らなかったことについて過失があった。

(引用終わり)

 

 差が付くのは、問題文の以下の点に着目して、110条も併せて類推適用すべき場合であるかについて、最判平18・2・23を踏まえた規範に沿って検討できたかどうかです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

 Bは,実際にはAからの借金は一切存在しないにもかかわらず,AのBに対する300万円の架空の貸金債権(貸付日平成23年9月21日,弁済期平成24年9月21日)を担保するためにBがAに甲建物を譲渡する旨の譲渡担保設定契約書と,譲渡担保を登記原因とする甲建物についての所有権移転登記の登記申請書を作成した上で,平成23年9月21日,Aを呼び出し,これらの書面を提示した。Aは,これらの書面の意味を理解できなかったが,これで甲建物の登記名義の移転は万全であるというBの言葉を鵜呑みにし,書面を持ち帰って検討したりすることなく,その場でそれらの書面に署名・押印した。同日,Bは,これらの書面を用いて,甲建物について譲渡担保を登記原因とする所有権移転登記(以下「本件登記」という。)を行った。

(引用終わり)

最判平18・2・23より引用。太字強調は筆者。)

 上告人は,甲に対し,本件不動産の賃貸に係る事務及びc番dの土地についての所有権移転登記等の手続を任せていたのであるが,そのために必要であるとは考えられない本件不動産の登記済証を合理的な理由もないのに甲に預けて数か月間にわたってこれを放置し,甲からc番dの土地の登記手続に必要と言われて2回にわたって印鑑登録証明書4通を甲に交付し,本件不動産を売却する意思がないのに甲の言うままに本件売買契約書に署名押印するなど,甲によって本件不動産がほしいままに処分されかねない状況を生じさせていたにもかかわらず,これを顧みることなく,さらに,本件登記がされた平成12年2月1日には,甲の言うままに実印を渡し,甲が上告人の面前でこれを本件不動産の登記申請書に押捺したのに,その内容を確認したり使途を問いただしたりすることもなく漫然とこれを見ていたというのである。そうすると,甲が本件不動産の登記済証,上告人の印鑑登録証明書及び上告人を申請者とする登記申請書を用いて本件登記手続をすることができたのは,上記のような上告人の余りにも不注意な行為によるものであり,甲によって虚偽の外観(不実の登記)が作出されたことについての上告人の帰責性の程度は,自ら外観の作出に積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視し得るほど重いものというべきである。そして,前記確定事実によれば,被上告人は,甲が所有者であるとの外観を信じ,また,そのように信ずることについて過失がなかったというのであるから,民法94条2項,110条の類推適用により,上告人は,甲が本件不動産の所有権を取得していないことを被上告人に対し主張することができないものと解するのが相当である。

(引用終わり)

 

 上記判例の規範は、「司法試験定義趣旨論証集(民法総則)」に収録し、特に内容紹介において説明をしていたところです。

 

(「司法試験定義趣旨論証集(民法総則)」の内容紹介より引用)

 学説よりも判例重視という点は、他の科目と同様です。従来のいわゆる予備校論証では粗くなりがちな判例法理を、より正確な形で論証化しました。
 例えば、多くの人が知っている94条2項類推適用。従来の論証では、外観の存在、外観作出の帰責性、相手方の善意が規範とされ、「意思外形非対応型」なら110条も併せて類推するとされていると思います。しかし、これは粗すぎます。上記のように漠然と「外観作出の帰責性」と覚えていると、意思的関与に乏しい軽過失的場合にまで簡単に帰責性を肯定する当てはめをしてしまいかねません。判例は、94条2項を類推適用するためには、「虚偽の外観作出に積極的に関与した場合」と「虚偽の外観を知りながらあえて放置した場合」という規範を比較的明確に示しています(相手方の善意は94条2項自体の要件ですから、厳密には類推適用するための要件ではありません。)。そして、上記場合でなくても「同視し得るほど重い帰責性」がある場合には、110条も類推して善意無過失を要求しているのです(最判平18・2・23等参照)。単なる帰責性ではなく、「積極的に関与」や「知りながらあえて放置」と同視し得る程度でなければならないのです。上記平成18年最判では「余りにも不注意な行為」という言い回しで上記帰責性を肯定していますが、これは「重過失は悪意と同視できる」という考え方を想起すると理解しやすいでしょう。上記判例は、外観の認識がない場合には重過失レベルの帰責性を要求していると理解することが可能なのです。このように、判例の規範を正確にみると、「帰責性」の範囲はそれなりに限定されていることがわかるのです。規範を明確にした上で当てはめると、当てはめも的確になります。近時の司法試験では規範の正確性に対する比重が高まっています。本書は、この点が、特に従来の論証集と異なるところです。

(引用終わり)

 

 実戦的には、これを問題文の事実を引いて当てはめれば、終わり、というところです。ただ、応用的な論点が、いくつか残されているように思います。
 まず、本問の場合に果たして虚偽の外観があるといえるのか、という問題です。不動産取引において94条2項類推適用が問題となる場合とは、基本的に、虚偽の公示(登記)を信頼して取引をした場合です。すなわち、この場合における虚偽の外観とは、虚偽の公示(登記)のことをいう。例えば、以下の事例では、Aの帰責性やCの善意・過失を考慮する以前に、虚偽の外観がないというべきです。

 

【事例】

1.Aは、Bから甲建物を買い受け、その旨の所有権移転登記をした。
2.Bは、Cに対し、「甲建物にはAへの所有権移転登記があるが、あれは何かの間違いであり、真実の所有者は私である。」などと申し向け、言葉巧みにBが甲建物を所有しているかのようにCに信じさせて、甲建物につきCと売買契約を締結し、代金を受け取った。
3.Aは、上記2のようにBがCを騙そうとしていることを知りながら、放置していた。

 

 さて、前に説明したとおり、本件登記は、単純な所有権移転の登記です。登記原因は、公示の内容を構成するとはいえない。そうだとすると、本問の場合、実体と外観は一致しているのではないか。多くの人は、「登記原因が譲渡担保なのだから、本件登記はAに譲渡担保権があることを公示している。これをCが信頼し、Aに譲渡担保権があると誤信したのだから、仮にCが善意無過失であったなら、Aは、自らが譲渡担保権者ではないことを対抗できない。」というように考えたかもしれません。しかし、そのような理解は、「本件登記は譲渡担保権を公示しているのではなく、単純な所有権移転を公示するものであるから、Aは、Bからの所有権移転について本件登記によって対抗力を具備しており、Cは無権利者Bからの譲受人である。」という前提と矛盾します。そうだとすると、本問では、虚偽の外観があるということは難しそうです。仮に、登記原因を考慮して譲渡担保権の公示があり、Cがこれを信頼したと考えるとしても、問題はあります。前記東京高決昭55・1・28も指摘していることですが、譲渡担保を登記原因とする所有権移転登記がされているというだけでは、債務者が弁済によって目的物を受け戻し得る状態なのか、既に帰属清算がされて受け戻し得ない状態なのか、判別できません。処分清算の場合には、処分先の第三者への移転登記がされますが、帰属清算の場合には、それを登記する手段がないからです。本問で、Cがいまだ受け戻し得る段階であると信頼したのは、登記事項証明書に記載された内容に加えて、Bの説明があったからでしょう。そこで、BのCに対する説明という登記外の事実に関する信頼を加味してよいか、という問題が生じるわけですね。かつての旧司法試験であれば、このようなところに論理矛盾があるというだけで、理不尽なくらい減点されたものですが、現在では、そのような極端な採点はされていません。ですから、実戦的にはあっさり虚偽の外観を認めて問題はないでしょうが、真面目に考えると難しいところです。
 もう1つ、応用的な論点として、本問で94条2項、110条が類推適用された場合に、どのような法律関係になるのか、ということがあります。Cが信頼した内容は、飽くまでAが譲渡担保権者であり、Cが弁済すれば甲建物を受け戻すことができる、というものです。そうすると、仮にCが善意無過失だったなら、AB間に債権債務関係が発生し、同時にAに譲渡担保権が発生するということになるのか。そうだとすると、Cのした弁済供託は有効で、Aは、供託金を受領できることになりそうです。また、仮にCが供託金を取り戻してしまった場合、Aは、Bに対して貸金返還請求をなし得ることになりそうですが、本当にそれでいいのか。そうではなく、端的にCが甲建物の所有権を取得できるという効果だけが生じ、Cのした弁済供託は非債弁済となるのか。これも、実戦的には無視すればよいと思いますが、困難な問題です。
 参考答案は、唯一の基本論点である94条2項、110条類推適用に絞って、規範と事実を書いているだけです。この程度でも、十分でしょう。本問のような問題では、応用的な部分を書きに行って混乱し、おかしなことを書いてしまったり、最も重要な94条2項、110条類推適用を落としてしまうなど、自滅する人の方が多いので、結果的に、この程度の答案が合格答案になってしまうのですね。

 設問2です。設問2の入り口は、合意解除を転借人に対抗できるか、という基本論点でした。これは、対抗できないとするのが判例(最判昭37・2・1。 土地賃貸借解除の地上建物賃借人への対抗につき最判昭38・2・21。)で、これは誰でも書ける。問題は、その後の法律関係です。
 合意解除を転借人に「対抗できない」ということを文字どおりに捉えれば、転借人との関係では、合意解除はなかった、すなわち、転借人との関係では、原賃貸借は存続しているものとして考えることになります。本問の場合、Cは、原賃貸人の地位に基づいてEに賃料を請求でき(613条1項)、修繕費用については、Eとの関係でいまだ転貸人とされるDに対して、Eは償還請求をすべきことになります。なお、613条1項により賃料請求をする場合、原賃貸借の賃料額を上限として、転貸借契約上の賃料を請求することになります。本問では、原賃貸借の賃料より転貸借の賃料の方が低額ですから、CがEに請求し得るのは、月額15万円です。
 上記の考え方は、「対抗できない」の意味としては素直ですが、原賃貸借を存続させ、賃借人(転貸人)を巻き込んだ状態を維持する点で、問題です。一般的な見解は、賃借人(転貸人)は賃貸関係から離脱し、賃貸人・転借人間に従来の転貸借関係が移転する、と考えます。その理屈は、概ね「合意解除を転借人に対抗できないということの意味は、要するに、転借人が、不動産の所有者に対して、占有権原として転借権を対抗できるという意味だろう。だから、目的不動産が譲渡され、新所有者に賃借権を対抗し得る場合に賃貸人の地位の移転が生じるのと同様に、合意解除によって転貸人の地位の移転が生じ、旧転貸人(賃借人)は賃貸関係から離脱すると考えるべきだ。」というものです。上位陣であれば、これは事前に準備して論証化していた人もいたのではないかと思います。これによれば、本問の場合、Cは、移転した転貸人の地位に基づいて、月額15万円の賃料をEに請求でき、Eは、Cに対し、修繕費用を償還請求できることになりそうです。ただ、後者については、必ずしも論理必然ではありません。なぜなら、Eが修繕費用を支出した後に、合意解除がなされているからです。

 

(問題文より引用。太字強調は筆者。)

7.…Eは甲建物を使用していたが,平成27年2月15日,甲建物に雨漏りが生じた。Eは,借主である自分が甲建物の修繕費用を負担する義務はないと考えたが,同月20日,修理業者Fに甲建物の修理を依頼し,その費用30万円を支払った
8.平成27年3月10日,Cは,Dとの間で甲建物の賃貸借契約を同年4月30日限り解除する旨合意した

(引用終わり)

(民法608条1項)

 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。

 

 仮に、転貸人の地位の移転が生じても、その時点で既に発生している債権債務は、当然には承継されない、という考え方を採用すれば、本問では、修繕費用を支出した時点で既にDに対する償還請求権が発生しているので、それはCに承継されない、と考えることになります。もっとも、既発生の債権債務については、既に発生している賃借人の債務(例えば未払い賃料)は当然には承継されないが、必要費償還請求等の賃貸人の債務は当然に承継される、というのが一般的なようです。ただ、このように単純に類型化できるかというと、やや疑問な感じもします。例えば、未払い賃料については、本来旧賃貸人が支払を受けるべきものだったわけだから、新賃貸人に承継しない、というように、個別の理由付けが重要な意味を持つように思われます。必要費償還請求についていえば、単に賃貸人の債務だから承継される、というのではなく、必要費の支出によって生じた不動産の価値の増加・回復は、新賃貸人が享受するといえることから、承継を肯定すべきと考える方が、より説得的です。こうして、本問では、Eは、修繕費用をCに請求できる、という結論になるわけです。なお、有益費については、新賃貸人が償還義務を承継するというのが判例(最判昭46・2・19)です。これは、有益費が発生するのが賃貸借終了時であることから、必要費の場合より容易に理解できるでしょう。
 結局、Cは、Eに対して月額15万円しか請求できず、Eは、Cに30万円を償還請求できる。これが、転貸人の地位の移転が生じると考えた場合の、1つの論理的な帰結です。もっとも、これに対しては、問題文上、触れて欲しそうな事情があります。1つは、DE間で月額賃料が15万円だったのは、従前のDE間の取引関係を考慮したもので、実際の相場賃料は月額25万円だったということ。もう1つは、CD間では、通常の使用により必要となる修繕については、その費用をDが負担することが合意されていたことです。 これは、わざわざ書いてあるわけですから、答案で触れる必要がある。「そうはいっても、転貸人の地位が移転するんだから、仕方ないじゃない。」というのが端的な解答になるわけですが、なぜ、「仕方ない」といい得るのか。そういえる要素を、できる限り列挙して書いておく必要があるでしょう。詳しくは、参考答案を参照してみて下さい。設問2は、書ける人は普通に書けるはずなので、この点のケアまでしておかないと、安全圏とはいえないように思います。それから、一見地味ではありますが、必要費の意義を書いて当てはめるという作業をしているか、していないかによって、予想外に差が付くでしょう。
 参考答案は、相変わらず羅列的で、唐突感のある文章になっています。しかし、配点のある部分は書いているので、これで点が取れてしまう。読みやすい文章にしようとするあまり時間が足りなくなってしまう人は、まずは参考答案のような答案なら最低限書ける、というレベルを目指すべきでしょう。読みやすい文章を書くのは、参考答案程度のものをスラスラと書けるようになって、なお余裕がある場合にすればよいことです。

 

【参考答案】

第1.設問1

1.Cが、Aに対し、甲建物の所有権に基づき、本件登記の抹消登記手続を請求するためには、Cが甲建物の所有権を取得していることが必要である。
 本件では、Aが先に本件登記を備えた以上、Cは、無権利のBからの譲受人であり、甲建物の所有権を取得できないのが原則である。

2.もっとも、Cは、契約の締結に際して、Bから譲渡担保設定契約書と甲建物の登記事項証明書を提示され、甲建物にはAのために譲渡担保が設定されているが、弁済期にCがAに対し貸金債権を弁済することにより、Aの譲渡担保権を消滅させることができる旨の説明を受け、このことを考慮して甲建物の代金が低く設定されたという事情がある。

(1)自ら虚偽の外観作出に積極的に関与し、又は既に生じた虚偽の外観を知りながら敢えて放置していた場合でなくても、これと同視し得るほど重い帰責性があるときは、94条2項、110条の類推適用により、善意無過失の第三者に対して、外観どおりの権利関係の不存在を対抗できない(判例)。

(2)本件登記は、所有権移転という点では、実体に合致している。しかし、本件登記の登記原因は譲渡担保とされているが、実際にはBにAからの借金は一切存在せず、譲渡担保設定契約書は、Aが書面の意味を理解できないまま署名・押印したものであるから、譲渡担保設定契約は無効である。したがって、虚偽の外観がある。

(3)Aは、Bが作成した譲渡担保設定契約書及び登記申請書について、その書面の意味を理解できなかったから、自ら虚偽の外観作出に積極的に関与し、又は既に生じた虚偽の外観を知りながら敢えて放置していたとはいえないが、これで甲建物の登記名義の移転は万全であるというBの言葉を鵜呑みにし、書面を持ち帰って検討したりすることなく、その場でそれらの書面に署名・押印したから、上記と同視し得るほど重い帰責性がある。

(4)Cは、Aが実際には甲建物の譲渡担保権者でないことを知らなかったが、知らなかったことについて過失があった。したがって、善意無過失の要件を満たさない。

3.以上から、Cは、甲建物の所有権を取得できない。

4.よって、Cは、Aに対し、甲建物の所有権に基づき、本件登記の抹消登記手続を請求することはできない。

第2.設問2

1.CのEに対する請求

(1)甲建物明渡請求

 Cが、Eに対し、甲建物の明渡しを請求するためには、Eの占有権原である転借権が消滅したことを要する。
 賃貸人と賃借人の間でした賃貸借の合意解除は、398条、538条の法意と信義則(1条2項)に照らし、転借人に対抗できない(判例)。
 本件で、Cは、CD間の賃貸借が合意解除されたことをEに対抗できない。その結果、Cとの関係では、Eはいまだ占有権原として転借権を有する。
 よって、Cは、Eに対し、平成27年4月30日までに甲建物を明け渡すことを請求できない。

(2)賃料支払請求

 Cが、Eに対し、賃料(601条)を請求するためには、Eとの関係で賃料請求権を有することを要する。
 賃貸人と賃借人の間でした賃貸借の合意解除を転借人に対抗できない場合には、賃借人は賃貸・転貸関係から離脱し、転貸人の地位が賃貸人に移転する。
 本件では、Dの転貸人の地位がCに移転する、その結果、DE間の契約関係が、そのままCE間に移転する、したがって、Cは、Eに対し、賃料請求権を有するが、その額は、DE間の契約に基づく月額15万円である。
 確かに、平成27年5月以降の相場賃料は月額25万円である。DE間の契約において、賃料は従前のDE間の取引関係を考慮して、月額15万円とすることが合意された。しかし、転貸人の地位の移転は、CD間の合意解除によって生じたもので、Eは関与していない。CE間に移転する契約の期間は2年であり、平成28年8月末日をもって満了するから、正当事由があれば更新拒絶の余地がある(借地借家法28条)。Cは、Dに対し、賃料減額相当部分につき、不当利得返還請求をする余地がある。Cは、借賃増額請求をする余地がある(同法32条)。以上から、上記の結論を左右しない。
 よって、Cは、Eに対し、月額15万円の限度で、平成27年5月以降の賃料の支払を請求することができる。

2.EのCに対する請求

(1)Eが、Cに対し、修繕費用30万円の支払を直ちに請求するためには、同費用が必要費(608条1項)に当たることを要する。
 必要費とは、通常の用法に適する状態において目的物を維持・保存するために支出した費用をいう。
 本件で、修繕費用30万円は、雨漏りの修理のためFに支払ったものであるから、通常の用法に適する状態において目的物を維持・保存するために支出した費用といえ、必要費に当たる。

(2)確かに、CD間の賃貸借契約においては、通常の使用により必要となる修繕については、その費用をDが負担することが合意された。Eの負担する賃料は、CD間の賃貸借契約における月額20万円より低額な月額15万円である。しかし、CE間の契約関係は、DE間の転貸借関係が移転したものである。DE間においては、甲建物の修繕に関して明文の条項は定められなかった。Cは、Eに償還した必要費について、Dに求償する余地がある。以上から、EのCに対する償還請求を否定すべき事情はない。

(3)よって、Eは、Cに対し、修繕費用30万円の支払を請求できる。

以上

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