2018年10月21日

平成30年司法試験の結果について(13)

1 以下は、短答・論文段階の合格者の平均年齢等の推移です。


(平成)
短答
合格者
短答
前年比
論文
合格者
論文
前年比
短答・論文
の年齢差
18 29.92 --- 28.87 --- 1.05
19 30.16 +0.24 29.20 +0.33 0.96
20 30.36 +0.20 28.98 -0.22 1.38
21 30.4 +0.04 28.84 -0.14 1.56
22 30.8 +0.4 29.07 +0.23 1.73
23 30.7 -0.1 28.50 -0.57 2.20
24 30.9 +0.2 28.54 +0.04 2.36
25 31.0 +0.1 28.37 -0.17 2.63
26 31.3 +0.3 28.2 -0.17 3.1
27 32.2 +0.9 29.1 +0.9 3.1
28 32.1 -0.1 28.3 -0.8 3.8
29 32.0 -0.1 28.8 +0.5 3.2
30 31.8 -0.2 28.8 3.0

 一貫して、短答合格者の方が、論文合格者よりも高齢となっています。短答は知識重視なので、若手が苦戦し、高齢受験者が受かりやすい。そのため、短答合格者の年齢は、高齢になりやすくなります。一方、論文は「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則があるので、受かりやすい人は若いうちにあっさり合格し、受かりにくい人は高齢化しつつ、合格できずに滞留することになる。そのため、論文合格者の年齢は、若年化しやすくなるというわけです。直近では、短答から論文を経ることで、概ね3歳程度の若年化が生じています。

2 直近の短答の平均年齢をみると、わずかながら若年化傾向であることに気付きます。これは、主に1回目、2回目受験生の短答合格率の上昇に起因するものです。以下は、今年の10月5日に実施された第88回法科大学院等特別委員会の配布資料に含まれている「平成30年司法試験受験状況」に基づく受験回数別の短答合格率(受験者ベース)です。

受験回数 短答合格率
1回目 68.6%
2回目 67.2%
3回目 63.9%
4回目 66.3%
5回目 71.6%

 従来の傾向では、受験回数が増えると、短答合格率が上がっていきました。受験回数が増えるほど、短答の知識をインプットできる時間を確保できるわけですから、これは自然な傾向でした。それが、今年は1回目、2回目の受験生の方が、3回目、4回目の受験生よりも高い合格率になっています。この逆転現象は、平成27年頃から継続的にみられたものです(「平成27年司法試験の結果について(12)」、「平成28年司法試験の結果について(16)」、「平成29年司法試験の結果について(13)」)。この逆転現象の主な原因は、法科大学院の入学定員及び志願者数の減少と、修了認定の厳格化にあります。周知のように、法科大学院の入学定員及び志願者数は、当初から大幅に減少しています。現在では、かつてのように、「誰でも簡単に法曹になれるらしい。」という安易な感覚で法科大学院に入学する者は、ほとんどいないでしょう。また、その修了認定も厳格化されており、かつて短答で合格できなかったようなレベルの人のうちの一定数は、そもそも法科大学院を修了できなくなっています。このような法科大学院に関する環境の変化は、入学から修了までの一定のタイムラグを経て、司法試験の結果に影響してきます。その影響が、新規参入者の短答合格率の上昇という形で、表れてきているのでしょう。また、ほぼ100%短答に合格する予備試験合格者の存在も、逆転現象の要因の1つとなっています。

3 論文合格者の平均年齢に関しては、今年は横ばいとなりました。以下は、「平成30年司法試験受験状況」に基づく受験回数別の論文合格率(短答合格者ベース)です。

受験回数 論文合格率
1回目 53.1%
2回目 34.4%
3回目 29.3%
4回目 25.8%
5回目 19.5%

 論文は、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則があります(「平成30年司法試験の結果について(6)」)。規範と事実を明示しない書き方をする人や、問題文から論点を素早く抽出する反射神経、早く文字を書く能力等が劣る者は、どんなに勉強量を増やしても、受かりにくいことに変わりはない。受かりにくい特性を強く持つ者が滞留していくので、受験回数が増えれば増えるほど、合格率は下がっていくのです。今年も、その傾向どおりの結果になっています。5回目受験生は、決して実力で劣っているわけではありません。それは、短答の高い合格率から明らかです。しかし、そのような実力を持つ5回目受験生も、「受かりにくい人」であるがゆえに、論文では厳しい結果になるのです。このように、短答と論文は全く特性が異なるということを、普段の学習においても意識すべきです。

4 以前の記事で、昨年と今年の予備組には、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則の作用が弱まったようだ、という話をしました(「平成30年司法試験の結果について(9)」)。以下は、「平成30年司法試験受験状況」に基づく予備組の予備試験合格年別の論文合格率(短答合格者ベース)です。予備組が受控えをすることは考えにくいので、合格年と受験回数は概ね連動します。そこで、合格年の欄の括弧書きで、対応する受験回数を表記しています。

予備合格年
(平成)
論文
合格率
29
(1回目)
85.4%
28
(2回目)
58.0%
27
(3回目)
44.8%
26
(4回目)
43.7%
25
(5回目)
36.3%

 受験回数が増えるに従って、確実に合格率は下がっていきます。したがって、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則が、予備組にも作用していることは間違いないもっとも、以下の平成28年の数字と比較すると、その作用は弱まっていることが確認できます。

平成28年
合格年
(平成)
論文
合格率
27
(1回目)
73.8%
26
(2回目)
47.7%
25
(3回目)
33.3%
24
(4回目)
24.1%
23
(5回目)
22.2%

 平成28年は、予備組でも、4回目、5回目になると2割台まで合格率は下がっていたのです。このことは、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則は、そのカラクリを理解した上で適切に対応すれば、克服できるということを示しています。多くの受験生がそのカラクリを知らない(法科大学院はもちろん、予備校でも教えてもらえない)ことが、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則を作用させているのです。

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