2018年06月08日

平成30年司法試験短答式試験の結果について(1)

1.平成30年司法試験短答式試験の結果が公表されました合格点は、108点でした。以下は、憲民刑の3科目、175点満点になった平成27年以降の短答式試験の合格点をまとめたものです。

合格点
27 114
28 114
29 108
30 108

 平成27年、平成28年と、114点だったものが、昨年は108点に下がりました。今年も、昨年と同じ108点となっています。この合格点は、どのようにして決まっているのでしょうか。

2.7科目、350点満点だった頃の短答式試験は、満点の6割である210点を一応の下限とし、それで合格者数が多すぎるようなら、5点刻みで上方修正する、という感じで、合格点が決まっていました。
 では、憲民刑の3科目、175点満点になった平成27年以降の短答式試験の合格点は、どのように決まっているのか。当サイトの仮説は、満点(175点)の6割5分である113.75の小数点を切り上げた114点を一応の基本的な合格点とし、それで合格者数が多すぎたり、少なすぎたりするようなら微修正する、というものでした(「平成28年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。 昨年については、基本的な合格点である114点では合格者数が少なすぎたので、ちょうどよい水準まで合格点を引き下げたところ、108点になったという説明が可能でした(「平成29年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。今年は、どうなのでしょうか。

3.実際の合格者数等の数字を見てみましょう。以下は、直近5年の受験者数、短答合格者数、受験者合格率の推移です。

受験者数 合格者数 受験者
合格率
26 8015 5080 63.3%
27 8016 5308 66.2%
28 6899 4621 66.9%
29 5967 3937 65.9%
30 5238 3669 70.0%

 直近では、短答式試験の受験者合格率は、概ね66%前後で推移していました。これは、ちょうど下位3分の1を落とす水準です。そして、昨年は、この合格率66%、下位3分の1を落とすような合格率になる得点まで合格点を引き下げると、108点になった、という説明が可能だったのです(「平成29年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。ところが、今年の受験者合格率は、70.0%にまで上がっています。合格点は昨年と同じ点数ですが、この点が、昨年とは違っているのです。
 仮に、今年の合格点が114点だった場合の合格者数を、法務省の公表した得点別人員調から確認してみると、3219人となります。これは、受験者合格率にすると、61.4%です。若干例年よりも低いかな、という感じではありますが、ここから6点も合格点を下げなければいけないのかな、という感じです。例えば、109点くらいまで合格率が63%くらいで、108点にすると70%になった、というように、従来どおりの手法でやろうとしたけれども、得点刻みの関係でちょっと従来より合格率が高くなってしまった、ということはあるかもしれない。本当にそうだろうか。そこで、108点から114点までの人員分布はどうなっていたのか、確認してみましょう。以下は、法務省の公表した得点別人員調を基礎にして、108点から114点までの累計人員と、そこから仮にその得点が合格点だった場合の受験者合格率を算出し、まとめたものです。

得点 人員 受験者
合格率
114 3219 61.4%
113 3297 62.9%
112 3379 64.5%
111 3459 66.0%
110 3529 67.3%
109 3598 68.6%
108 3669 70.0%

 従来どおりの合格率、すなわち、66%にしたかったのであれば、111点にすれば、ちょうどよかったことがわかります。したがって、今年は、合格率66%になる得点まで合格点を引き下げると、108点になった、という説明はできません。一方で、今年の受験者合格率が70%というきれいな数字になっていることも、気になります。まだ、はっきりとはしませんが、司法試験委員会が、短答式試験の合格水準を、「下位3分の1を落とす。」というものから、「下位3割を落とす。」というものに変えてきたのではないか、という仮説は、容易に思い付くところです。では、今年になってなぜ、そのような変更を行ったのか

4.実は、短答合格者数を増やしておかないと困る事情があるのです。それは「合格者数1500人の下限」です。

 

(「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)より引用。太字強調は筆者。)

  新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである

(引用終わり)

 

 以前の記事で、今年も、合格者数1500人が守られる可能性はそれなりにあるかもしれない、という話をしました(「平成30年司法試験の出願者数について(2)」)。仮に、今年の合格者数を1500人で維持する場合の論文式試験における短答合格者ベースの合格率を計算すると、以下のようになります。

 1500÷3669≒40.8%

 この水準は、どの程度のものか。以下は、直近5年の論文合格率の推移です。


(平成)
論文
合格率
26 35.6%
27 34.8%
28 34.2%
29 39.1%
30 40.8%?

 今年の短答合格者数であれば、1500人受からせても、昨年とほぼ同水準の合格率になることがわかります。仮に、今年の短答合格率を、例年どおり66%にして、合格点を111点とすると、合格者数は3459人となるので、論文で1500人受からせる場合の短答合格者ベースの論文合格率を算出すると、以下のようになります。

 1500÷3459≒43.3%

 めちゃくちゃに高すぎる、というわけではありませんが、過去の推移からすれば、ちょっと高くなりすぎる感じです。司法試験委員会は、これを嫌ったのだ、という仮説は、考え得るでしょう。この仮説が正しいならば、今年も、合格者数1500人の下限は守られる今回の短答式試験の結果は、そのようなことを示唆するものといえます。

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