2021年04月11日

令和3年予備試験の出願者数について(2)

1.出願者数から予測できる今年の予備試験の短答・論文の難易度を検討します。
 まず、受験者数の予測ですが、予備試験の受験率(出願者ベース)から推計できます。以下は、平成28年以降の受験率の推移です。

出願者数 受験者数 受験率
平成28 12767 10442 81.7%
平成29 13178 10743 81.5%
平成30 13746 11136 81.0%
令和元 14494 11780 81.2%
令和2 15318 10608 69.2%
令和3 14317 ??? ???

 昨年は、出願後に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生じ、緊急事態宣言の発出により試験日程が延期される等のイレギュラーがありました。そのために、受験率が大きく下落しています。前回の記事(「令和3年予備試験の出願者数について(1)」)でも説明したとおり、今年は、ある程度状況がわかった上で出願しているでしょうから、感染リスクを恐れて受験を回避しようと考える人は、始めから出願をしないでしょう。そこで、ここでは、例年どおりの受験率として81%と仮定してみましょう。そうすると、受験者数は、以下のとおり、11596人と推計できます。

 14317×0.81≒11596人

  昨年と比較すると、受験者数は988人ほど増えることになりそうだ、ということがわかります。出願者数が減ったにもかかわらず、受験者数が増えそうだというのは、少し面白い現象ですね。試験が終了して受験者数が公表された段階で、「予想外に受験者が多かった。」等と言われるかもしれませんが、それは現時点で予測可能なことです。

2.次に、予備試験の短答式試験の合格者数です。近年は、短答合格者数の決定基準が不安定になっています。平成29年までは5点刻みの「2000人基準」(「平成29年予備試験短答式試験の結果について(1)」)、平成30年は5点刻みの「2500人基準」で説明できました(「平成30年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。令和元年は、初めて合格点が5点刻みになっていないという、異例の結果で、それは、「2500人基準」とすると、合格者数が2911人となって、多くなり過ぎるということを考慮したのではないか、と思われたのでした(「令和元年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。
 そして、昨年は、1点刻みの「2500人基準」で説明でき、これは受験者数が1万人強で推移する状況の下では、合格点前後の1点に100人弱の人員が存在するので、5点刻みだと偶然の事情で500人弱の合格者数の変動が生じてしまいかねないことを踏まえ、1点刻みとすることとしたのではないかと考えられたのでした(「令和2年予備試験短答式試験の結果について(1)」)。 1点刻みとなると、短答合格者数が2500人を大きく上回ることは生じにくくなる。そこで、ここでは、短答合格者数を2550人と想定して、合格率(対受験者)を試算してみることにしましょう。そうすると、今年の短答合格率(対受験者)は、以下のとおり、21.9%と推計できます。

 2550÷11596≒21.9%

 以下は、これまでの短答合格率(対受験者)の推移です。

短答
合格率
平成23 20.6%
平成24 23.8%
平成25 21.8%
平成26 19.5%
平成27 22.1%
平成28 23.2%
平成29 21.3%
平成30 23.8%
令和元 22.8%
令和2 23.8%
令和3 21.9%?

 こうしてみると、今年の短答式試験の数字の上での難易度は、平成29年と同じくらいになりそうだ、ということがわかります。昨年と比べてみましょう。昨年は、10608人が短答を受験して、2529人が合格。合格点は、156点でした。仮に、合格率が21.9%だったとすると、合格者数は2323人となり、得点別人員と対照すると、合格点は159点くらいとなります。順位にすると200番くらい、点数にすると3点くらい、昨年より難しくなりそうだ、ということがいえるでしょう。昨年、短答をぎりぎりの得点で合格したような人は、注意しておかないと、今年はやられてしまうかもしれません。とはいえ、全科目総合で3点程度の違いなので、ほとんど変わらないといってよいでしょう。

3.論文はどうか。平成29年以降の論文式試験の合格点及び合格者数は、「5点刻み(※)で、初めて450人を超える得点が合格点となる。」という、「450人基準」で説明することができます(「令和2年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。
 ※ 短答の方が1点刻みになったのに、論文の方では5点刻みを維持しているのは、論文は短答合格者しか受験しないので、合格点付近の人員が1点当たり10人程度となることが多く、5点刻みでも大きなブレが生じにくいということがあるのではないかと思います。

 これを前提とすると、今年の論文合格者数も、概ね460人~490人くらいと考えておけばよさそうです。そうすると、以下のとおり、論文合格率(対短答合格者≒論文受験者)は、18%~19%程度と推計できます。

 460÷2550≒18.0%
 490÷2550≒19.2%

 これを、過去の数字と比べてみましょう。


(平成)
論文
受験者数
論文
合格者数
論文合格率
23 1301 123 9.4%
24 1643 233 14.1%
25 1932 381 19.7%
26 1913 392 20.4%
27 2209 428 19.3%
28 2327 429 18.4%
29 2200 469 21.3%
30 2551 459 17.9%
令和元 2580 494 19.1%
令和2 2439 464 19.0%
令和3 2550 460~490 18~19%

 概ね、平成30年から昨年までの合格率です。平成30年(18%)に近くなるか、昨年、一昨年(19%)に近くなるかは、5点刻みで初めて450人を超える得点の人員が何人だったかという、偶然の事情によって左右されます。昨年の数字と比べてみましょう。仮に、昨年の論文合格率が18%だったとすると、合格者数は439人となり、得点別人員から読み取れる合格点は232点くらいとなります。したがって、最悪の場合を考慮すると、順位としては25番くらい、得点にすると2点くらい、昨年より難しくなりそうだ、といえます。とはいえ、予備試験の論文の合計点で2点というのは、1科目当たりにすると0.2点ということなので、感覚的にはほとんど違いがわからない程度の差でしかありません。

4.以上、みてきたように、今年は、短答、論文共に、数字の上での難易度は、昨年とほとんど変わらないか、わずかに難しくなるかもしれない、という感じです。もっとも、今年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、本気度の低い人が初めから出願を避けただろうことが伺われます(「令和3年予備試験の出願者数について(1)」)。受験者全体に占めるガチ勢の割合が、高まっているでしょう。なので、数字の上の難易度よりも、若干厳し目のイメージを持っておいた方がよさそうです。

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2021年04月08日

令和3年予備試験の出願者数について(1)

1.法務省から、令和3年司法試験予備試験の出願者数の速報値が公表されました。14317人でした。以下は、年別の予備試験の出願者数の推移です。

出願者数 前年比
平成23 8971 ---
平成24 9118 +147
平成25 11255 +2137
平成26 12622 +1367
平成27 12543 -79
平成28 12767 +224
平成29 13178 +411
平成30 13746 +568
令和元 14494 +748
令和2 15318 +824
令和3 14317 -1001

 平成25年、平成26年と急激に増加した出願者数は、平成27年にいったん頭打ちとなり、これからは減少傾向に転じるのではないかとも思われました。ところが、平成28年から再び増加に転じ、それ以降は、昨年に至るまで、その増加幅を拡大させていたのでした。それが、今年は急激な減少となっています。新型コロナウイルス感染症の影響によるものでしょう。

2.以下は、平成28年から昨年までの出願者数、受験者数及び受験率の推移です。

出願者数 受験者数 受験率
平成28 12767 10442 81.7%
平成29 13178 10743 81.5%
平成30 13746 11136 81.0%
令和元 14494 11780 81.2%
令和2 15318 10608 69.2%

 昨年は、出願後に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生じ、緊急事態宣言の発出により試験日程が延期される等のイレギュラーがありました。そのために、受験率が大きく下落しています。注意したいのは、司法試験の場合(90.5%→87.6%)よりも下落幅が大きいということです(「令和3年司法試験の出願者数について(2)」)。司法試験の場合、受験しなければ1年を無為に過ごすことになりやすく、5年5回の受験制限もあるので、受験を回避することには慎重になりがちなのですが、予備試験の場合、法科大学院に進学してもよいと思っている大学生、普通に修了すれば受験資格を得られる法科大学院生、1年受験を遅らせても生活設計に支障が生じない社会人等、リスクを冒してまで受験する必要のない人が多いという特徴があり、それが受験率の低下に繋がりやすいのです。
 この受験率の低下に着目すると、今年の新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた試算をすることが可能です。昨年の受験者数10608人は、仮に例年どおりの受験率である81%の年の数字と仮定して考えると、以下のとおり、出願者数は、13096人くらいだっただろうと考えることができます。

 10608÷0.81≒13096

 この数字は、仮に、昨年の出願時点において、既に新型コロナウイルス感染症に関する情報が出回っていて、受験を回避するような人は始めから出願しなかったとした場合の出願者数の近似値です。これを、今年の数字と比較すると、今年の出願者数は14317人ですから、上記の試算値より1221人多いということがわかります。今年は、ある程度状況がわかった上で出願しているでしょうから、感染リスクを恐れて受験を回避しようと考える人は、始めから出願をしないでしょう。そうすると、今年は、よほどの状況変化がない限り、例年と同様に、81%程度の受験率になりそうだ、という予測をすることができます。そう考えると、以下のとおり、受験者数は概ね11596人となり、昨年より988人くらい増えそうだ、という予測が成り立つわけです。出願者数が大幅に減少しているので、受験者数も減少するだろう、と考えている人が多いかもしれませんが、そうならない可能性が高そうです。

 14317×0.81≒11596

 このように考えてくると、見かけの出願者数は急激な減少となっているようですが、新型コロナウイルス感染症の影響がなければ、出願者数は増加していただろう、と考えることができます。したがって、これまでの増加傾向を支えてきた基本的な要因については、変わっていないとみることができるのです。そこで、以下では、その要因について確認をしておきましょう。

3.法曹になりたいと思う人には、法科大学院に入学するか、予備試験を受験するか、という2つの選択肢があります。このことを大雑把に数式化すると、以下のような関係となります。なお、予備試験出願者数から法科大学院在学中の者を除いているのは、既に法科大学院に通っている以上、新たな法曹志願者とはいえないからです。

 

 法曹志願者総数=予備試験出願者数(法科大学院在学中の者を除く)+法科大学院入学者数

 

(1)まず、法科大学院入学者数に着目してみます。法曹志願者総数が一定で、法科大学院に入学する人が増えると、予備試験出願者数は減少し、逆に法科大学院に入学する人が減ると、予備試験出願者数が増えるという関係にある。以下は、平成20年以降の法科大学院の実入学人員の推移です(「各法科大学院の平成28年度~令和2年度入学者選抜実施状況等」等参照)。

年度
(平成)
実入学者数 前年比
20 5397 ---
21 4844 -553
22 4122 -722
23 3620 -502
24 3150 -470
25 2698 -452
26 2272 -426
27 2201 -71
28 1857 -344
29 1704 -153
30 1621 -83
令和元 1862 +241
令和2 1711 -151

 上記の入学者数の推移と、予備試験の出願者数が対応しているか、という目で見てみます。法科大学院の入学者数は、平成26年まで、一貫して下がり続けています。これに対して、予備試験出願者数は、平成25年、平成26年に大幅に増加していますが、平成24年はそれほど増加していない。これは、予備試験ルートの認知度が影響しています。予備試験が始まったのは平成23年ですが、当時の合格者数は116人にとどまっていました。そのため、当時はまだ、予備試験ルートを真剣に検討する人は、少なかったのです。それが、平成24年に合格者が219人とほぼ倍増したことから、「予備合格者は今後どんどん増える。予備ルートの方が近道だ。」と言われだした。そのために、平成25年から、どっと予備試験受験者が増えたのでした。このような経緯を踏まえると、平成25年、平成26年に、それまでの法科大学院入学者数の減少分を一気に吸収した結果が、予備試験の出願者数の推移に表れているとみることができるでしょう。法曹志願者のうち、法科大学院への入学を躊躇していた人が、予備にどっと流れたのが、この時期だったといえます。
 そのような流れが一時的に止まったのが、平成27年でした。この年は、法科大学院の実入学者数の減少が、わずかにとどまっています。これは、予備試験の出願者数が平成27年に一時的に減少に転じたことと符合しています。そして、平成28年になると、法科大学院の実入学者数の減少幅が、また拡大しました。予備の出願者数が増加に転じたことは、これと符合しています。
 しかし、平成29年以降は、この相関が崩れていきます。法科大学院の実入学者数は、平成29年、平成30年と減少幅を縮小させ、令和元年にはついに増加に転じたものの、令和2年は再び減少するに至っています。一方、予備の出願者数は増加幅を拡大させていて、法科大学院の実入学者数の変動との対応はみられません。そうすると、近時の出願者数の増加傾向は、法科大学院の入学者数が減少したことによるものとはいえない、ということになるでしょう。

(2)次に、法科大学院在学中の予備試験出願者数をみていきます。以下は、法科大学院在学中の予備試験出願者数の推移です。

法科大学院在学中の
予備試験出願者数
前年比
平成23 282 ---
平成24 706 +424
平成25 1722 +1016
平成26 2153 +431
平成27 1995 -158
平成28 1875 -120
平成29 1678 -197
平成30 1548 -130
令和元 1499 -49
令和2 1543 +44

 平成26年までは、一貫した増加傾向です。特に、平成25年の増加幅が大きい。このことが、平成25年の予備試験の出願者数の急増に対応しています。それが、平成27年になって、減少に転じました。平成27年は、予備試験の出願者数も減少に転じていますから、この点でも、対応関係があるといえるでしょう。
 しかし、平成28年以降に関しては法科大学院在学中の予備試験出願者数は減少傾向となっているのに、予備試験全体の出願者数は、むしろ増加しています。したがって、法科大学院在学中の予備試験出願者という要素も、近時の予備試験の出願者数の増加傾向の要因とはいえない、ということになるのです。

4.以上のように、平成27年以前の予備試験出願者数の増減は、概ね法科大学院入学者数と法科大学院在学中の予備試験出願者数の増減によって説明が付いたものの、直近の予備試験出願者数の増加傾向については説明できないことがわかりました。法科大学院入学者数と法科大学院在学中の予備試験出願者数の増減によって説明できない予備試験出願者数の増加は、法曹志願者総数の増加によって生じている平成27年くらいまでは、法曹志願者数は例年あまり変わらないけれども、その法曹志願者が法科大学院入学を選ぶのか、予備試験受験を選ぶのか、という内訳が変動しているというだけでした。それが、最近では、新たに法曹を目指す人が、予備試験を受験しようとしているということです。
 ただし、これは必ずしも、法曹になりたいと思う若者が増えたということだけを意味していません。年齢別、職種別にみると、20代前半と大学生だけでなく、40代以降と有職者の受験者も増加傾向にあるからです(「令和元年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」、「令和元年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)。つまり、若者だけではなく、年配社会人の法曹志願者が増えたことも、予備試験の出願者数の増加傾向に寄与している可能性が高いのです。「予備試験は専ら若者の抜け道として使われている。」などとよく言われますが、それとは異なる一面が、ここに表れているといえるでしょう。当面は新型コロナウイルス感染症の影響で不透明な状況が続きそうですが、その影響が収束すれば、再び上記の傾向に戻るのではないか、という感じがしています。

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2021年04月05日

令和3年司法試験の出願者数について(2)

1.今回は、明らかになった出願者数から、今年の司法試験についてわかることを考えてみます。以下は、直近5年の出願者数、受験者数、合格者数等をまとめたものです。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
平成29 6716 5967 88.8%
平成30 5811 5238 90.1%
令和元 4930 4466 90.5%
令和2 4226 3703 87.6%
令和3 3754 ??? ???

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
平成29 3937 65.9%
平成30 3669 70.0%
令和元 3287 73.6%
令和2 2793 75.4%
令和3 ??? ???

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
平成29 1543 39.1% 25.8%
平成30 1525 41.5% 29.1%
令和元 1502 45.6% 33.6%
令和2 1450 51.9% 39.1%
令和3 ??? ??? ???

2.まず、受験者数の予測です。これは、出願者数に受験率を乗じることで、算出できます。受験率は、直近では概ね90%程度です。昨年は、出願後に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生じ、緊急事態宣言が発出されて試験日程が延期されるに至りました。昨年の受験率が例年より低いのは、そうしたイレギュラーな事情によるものでしょう。今年は、ある程度状況がわかった上で出願していますので、それほど受験率は低下しないと考えられます。そこで、受験率を90%と仮定して、試算しましょう。

 3754×0.9≒3378

 受験者数は、3378人と推計でき、昨年より325人程度減少するだろうということがわかります。

3.次に、短答合格者数です。現在の短答式試験の合格点は、論文の合格者数を踏まえつつ、短答・論文でバランスのよい合格率となるように決められているとみえます(「令和2年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。そうだとすると、短答合格者数を考えるに当たっても、先に論文合格者数がどうなるかを、考えておく必要があるでしょう。そこで問題となるのは、「1500人程度」の下限が、今年は完全に無視されるか、ということです。

 

(「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)より引用。太字強調は筆者。)

  新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである

(引用終わり)

 

(1)以下は、直近5年の論文合格者数の推移です。

論文合格者数
平成28 1583
平成29 1543
平成30 1525
令和元 1502
令和2 1450

 平成28年以降、毎年のように、「今年こそは1500人を割り込むに違いない。」などと言われながら、令和元年までは結果的に1500人の下限が守られてきたのでした。それが、昨年、ついに1500人を割り込む1450人となりました。もっとも、ぎりぎり「1500人程度」といえそうな微妙な数字でもあったのでした(「令和2年司法試験の結果について(1)」)。この数字だけを見て、「1500人を割り込んだのだから、もはや1500人という数値目標は意味をなさなくなった。」と考えるのは早計ですし、一方で、「今年も1500人程度といえる枠内に必ず収まるだろう。」と考えるのも楽観に過ぎるというものです。
 そこで、次に考えるべきことは、前回の記事(「令和3年司法試験の出願者数について(1)」)でも紹介した法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律(いわゆる連携法)等の改正に伴い設定される法科大学院の入学定員の上限との関係です。この入学定員管理の趣旨は、予測可能性の高い制度とすること、いい換えれば、再び合格率が急落する事態が生じないようにすることでした。

 

法科大学院等特別委員会(第92回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

小幡専門教育課長 定員管理に関するところでございますが,法務大臣と文部科学大臣の相互協議の規定の新設ということで,法務大臣と文部科学大臣は,法科大学院の学生の収容定員の総数その他の法曹の養成に関する事項について,相互に協議を求めることができることなどを規定することとしております。 また,この後,こちらも省令でございますけれども…学校教育法施行令を改正し,法科大学院の定員増を認可事項とし,文科省告示により,入学定員総数について,現状の定員規模である2,300人程度を上限とすることを検討しているということでございます。これによりまして法科大学院の定員管理の仕組みを設け,予測可能性の高い法曹養成制度を実現するということを目的としております。

(引用終わり)

参院法務委員会令和元年5月30日より引用。太字強調は筆者。)

政府参考人(森晃憲君) 法科大学院制度については、制度発足時、数多くの法科大学院が設置されて過大な定員規模となったこと、それから、修了者の合格率が全体として低迷していること、そして、数多くの学生が時間的負担が大きいと感じている、そういった課題がございます。また、司法試験合格者については、当面千五百人規模は輩出されるような必要な取組を進めるということとされておりまして、こうした状況を踏まえまして、今回の改正案については、法務大臣と文科大臣の相互協議の規定を新設して法科大学院定員管理の仕組みを設けたこと、それから、法科大学院において涵養すべき学識等を具体的に規定して法科大学院教育の充実を図ること、さらに、今御指摘がありました3プラス2の制度化と司法試験の在学中受験の導入によりまして、時間的、経済的負担の軽減を図ることとしております。

(引用終わり)

 

 定員の上限を2300人程度としたとしても、合格者数が1500人を大きく割り込んでしまえば、「合格率が高くなったと聞いて法科大学院に入学したのに、自分が修了する頃には合格率が急落してしまっていた。」ということになるでしょう。これでは、予測可能性の高い制度にはならない。このように考えると、定員に上限を設ける施策は、合格者数が1500人を大きく下回らないことを前提としているといえるのです。このように考えると、昨年の1450人から合格者数が大きく減少することはないのではないか、という予測にも根拠があるといえるでしょう。
 もっとも、この合格者数1500人というのは、毎年2300人が法科大学院に入学してくるという前提で試算された数字です。ところが、前回の記事(「令和3年司法試験の出願者数について(1)」)でみたとおり、実際の入学者数は令和2年度で1711人と、全く届いていない。そうすると、実入学者数が2300人程度まで回復してくるまでは、合格者数が1500人を相当程度下回っても構わない、と考えることができます。このように考えてくると、昨年より合格者数が減っても不思議ではないともといえるでしょう。

(2)もう1つ、考えるべきファクターとして、累積合格率があります。

 

規制改革推進のための3か年計画(再改定)(平成21年3月31日閣議決定) より引用。太字強調は筆者。)

 法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で、法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7~8割)の者が新司法試験に合格できるよう努める。

 (引用終わり)

 

 上記閣議決定の「約7~8割」は、各年の受験者合格率ではなく、修了生が受験回数制限を使い切るまでに、最終的に7~8割が合格するということ、すなわち、累積合格率を意味します(「令和元年司法試験の結果について(2)」)。現在でも、この目標は維持されています。

 

衆院文部科学委員会平成31年4月24日より引用。太字強調は筆者。)

畑野君枝(共産)委員 七、八割が合格できるという点についてはどうなったのですか。

小出邦夫政府参考人 お答えいたします。
 先ほど申し上げました平成二十七年の法曹養成制度改革推進会議決定では、法科大学院全体としての司法試験合格率などが制度創設当初に期待されていた状況と異なり、法曹志望者の減少を招来する事態に陥っているとされまして、法科大学院改革により、各年度の修了者に係る司法試験の累積合格率として、おおむね七割以上が司法試験に合格できるよう充実した教育が行われることを目指すとされたところでございます。

(引用終わり)

 

 そして、各年の受験者合格率をPとするとき、受控えや中途の撤退等を考慮しない単純な想定の下での累積合格率は、以下の算式で表すことができます。

 1-(1-P)

 以下は、上記の算式に基づいて、今年の論文合格者数と対応する累積合格率をまとめたものです。

論文
合格者数
受験者
合格率
累積
合格率
1500 44.4% 94.6%
1300 38.4% 91.1%
1100 32.5% 85.9%

 かつては、累積合格率が7割に達しないことが問題にされていましたが、現在ではむしろ、累積合格率が高くなりすぎるのではないか、ということを考える段階になっています。仮に、累積合格率が9割を超えるようなら、前記閣議決定の「約7~8割」の枠を超えてしまいますし、試験として適切に機能しているかが疑わしくなってくるでしょう。その観点から上記の表をみると、仮に合格者数が1300人まで減少しても、9割を超える累積合格率になることがわかります。司法試験委員会がこのことを考慮して、「1300人くらいまで減らしても全然問題ない。」と考えるかもしれません。さらにいえば、1100人まで減らしても、8割5分の水準となるので、「1100人でもいいんじゃないの?」と判断される可能性も否定できないでしょう。もっとも現時点の法科大学院全体の累積合格率は53.7%(「各法科大学院の平成28年度~令和2年度入学者選抜実施状況等」参照)にとどまっていますから、累積合格率が高くなりすぎるという心配をするには早すぎるという感じもします。上記の試算に基づく累積合格率は、受控えや中途の撤退等を考慮していませんし、予備組を含んだ数字なので、法科大学院修了生に限った実際の累積合格率は、もう少し低い数字になるでしょう。そのようなことも考慮すると、今年はまだ1500人前後で問題ない、という判断がされても不思議ではないという感じもします。

(3)ここまで、色々と考えてきましたが、そもそもそのような議論は無意味である、という考え方も十分成り立ちます。なぜなら、合格者数は結局のところ司法試験委員会が勝手に決めるので、実は「1500人程度」とか、「修了生7割」というような数値目標には意味がないからです。

 

法曹養成制度検討会議第14回会議議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁(早大)委員 これまでも何度か申し上げてきましたけれども,今の司法試験のシステムというのは,政策的に何人と決めて,それに合わせて合格者を決めるという性質のものではありません。受験者の学力といいますか,試験の成績を司法試験委員会のほうで判定して決めている。その結果として2,000人なら2,000人という数字になっているということなので,その仕組みを変えない限り,それを何千にするということを言うわけにはいかない性質のものだと思います。ですから,法曹人口の問題については,このぐらいのところを目指すべきだということは言えるかもしれないですけれども,合格者を何人にしろというのは現行の制度では無理で,仮にそうするというのでしたら,現行の司法試験の合格者決定の仕組み自体を変えろという提言をしないといけないということになるだろうと思います。

(引用終わり)

参院法務委員会令和元年5月30日より引用。太字強調は筆者。)

政府参考人(小出邦夫君) 推進会議決定におきましては、今後新たに養成し、輩出される法曹の規模として千五百人程度は輩出されるよう必要な取組を進めることとされております。他方…司法試験委員会においては、この推進会議決定を踏まえつつ毎年の司法試験の合格者を決定しているものと承知しております。
 ただ、司法試験の合格者は、あくまでも実際の試験結果に基づいて決定されるものでございます。実際の試験の結果と関わりなく一定数を合格させるものではございません。したがいまして、あらかじめ決められた一定数を合格させる試験ではないといった法務省の答弁の趣旨は、こういったことを説明したものでございます。

(引用終わり)

 

 かつて、合格者数3000人を目指すと言われていた当時も、司法試験委員会は、その数字にはとらわれない合否判定をしていたとされています。

 

平成20年度規制改革会議第1回法務・資格タスクフォース議事概要より引用。太字強調は筆者。)

佐々木宗啓法務省大臣官房司法法制部参事官 再々申し上げていますように、司法試験合格者数につきましては、司法試験委員会においてどうするということが判定される。そのときに判定する基準は、受験者が法曹三者になろうとするものに必要な学識及びその応用能力を有するか否かということになります。このような判定基準によるそういう資格試験ですので、実際に採点してみないと、その基準に達する者が何人いるかはわからない
 あと、このことに関しましては司法試験委員会の方で、一応の目安となる合格者の概数を発表してございますが、これはあくまでも概数であって、優秀な方がたくさんいれば数字は上がるでしょうし、優秀な方がほとんどいなければ数字は下がる。そういうような性格のものでございますので、今の段階での見通しを言うことはなかなか難しいと思います。

 (中略)

福井秀夫(政策研究大学院大学教授)主査 その目標の数字を前提とすると、おっしゃったことは資格試験だから能力本位で、数は後から付いてくるものだという御趣旨の建前だと思うんですが、実際には数の目標で、ある程度のボリュームをコントロールすると、ボーダーラインの水準は常に動くはずですね。その関係はどう見ておられますか。

佐々木参事官 特にボリュームをコントロールしているということではなくて、司法試験委員会において、この程度まで達していれば法曹となろうとする者にふさわしい能力があるということを考えられて,そこで切っているので、数ありきの判定ではないと御理解いただければと思います。

福井主査 仮に 3,000 人の目標年次においてふさわしい能力の者が、今年は特別できが悪くて 300 人しかいなかったというときに、10 分の1の 300 人を合格者にするということは少し考えにくいのではないですか

佐々木参事官 我々としては、300 人であれば 300 人でしょうし、6,000 人ならば 6,000 人なのではないか,と申し上げることになります

福井主査 一応、政府の方針は司法試験委員会としては勘案されるわけでしょう

 佐々木参事官 勘案はしますけれども、質を低下させるということはできない,質を維持し確保しながらの増員というのが閣議決定の内容と考えているわけです。

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第42回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

土屋美明(共同通信)委員  すいません、私、司法試験委員会の委員をしておりまして、説明しなければならない立場かと思うのですが、皆さんご存知の通りこれは守秘義務がございます。そういう意味では中身をですね、全部お話するという事はとても出来なくて申し訳ないと思うんですが、今回初めて考査委員の会議にも出席させて頂いて、色んな方のお話を伺いました。非常に多彩な意見の方がいて、昨年までの考査委員の会議の判定の仕方と今年は違っているという風に事務局からはうかがいました委員の皆さんの考え方がより反映されるような判定をするという方式に変わったという風に了解しております。一応目安として、本年度3,000人程度と言う合格者数、2,900人から3,000人と言う目安が出されてはおりましたけれども、それとの関連で合格者数を決めるというような発想はあまり取られていなかったように私は受け止めました。私の感じです。あくまで委員の皆さんがこの結果でもって、法曹資格を与えるに値するかどうかという事を非常に慎重に議論されていらっしゃる。受験者の中身を見ようという風に皆さん考えていらっしゃったという事が言えるかと思います。私の感想は以上です。

(引用終わり)

法科大学院特別委員会(第48回)議事録より引用。太字強調は筆者。)

井上正仁(東大)座長代理  司法試験については、司法試験委員会ないし法務省の方の見解では、決して数が先にあるのではなく、あくまで各年の司法試験の成績に基づいて、合格水準に達している人を合格させており、その結果として、今の数字になっているというのです。確かに、閣議決定で3,000人というのが目標とはされているのだけれども、受験者の成績がそこまでではないから、2,000ちょっとで止まっているのだというわけです。それに対しては、その合格者決定の仕方が必ずしも外からは見えないこともあり、本当にそうなのかどうか、合格のための要求水準について従来どおりの考え方でやっていないかどうかといった点も検証する必要があるのではないかということは、フォーラムなどでも申し上げております。

(引用終わり)

 

 考査委員の側から言わせれば、別に合格者数の目安を無視したいというわけではないが、採点していて満足な答案が少ないので、これ以上合格点を下げてまで合格者数を増やしてはさすがにダメだろうという感覚があって、やむを得ずそうしているのだ、ということになるのでしょう。これは、合格者数が少ないといわれていた旧司法試験時代からあった話です。特に実務家の考査委員は研修所教官であることも多いので、ここで甘くすると、後で自分が困るという事情もあったりするわけです。

 

司法制度改革審議会集中審議(第1日)議事録より引用。太字強調は筆者。)

藤田耕三(元広島高裁長官)委員 大分前ですけれども、私も司法試験の考査委員をしたことがあるんですが、及落判定会議で議論をしますと、1点、2点下げるとかなり数は増えるんですが、いつも学者の試験委員の方が下げることを主張され、実務家の司法研修所の教官などが下げるのに反対するという図式で毎年同じことをやっていたんです学者の方は1点、2点下げたところで大したレベルの違いはないとおっしゃる研修所の方は、無理して下げた期は後々随分手を焼いて大変だったということなんです
 そういう意味で学者が学生を見る目と、実務家が見る目とちょっと違うかなという気もするんです。口述試験も守秘義務があるから余り言っちゃいけないのかもしれませんけれども、あるレベルの点数がほとんどの受験者について付くんですが、出来がよければプラス1、プラス2、悪ければマイナス1、マイナス2というような点を付けます。本当は全科目についてレベル点以上を取らなければいけないのですが、それでは予定している人数に達しないので、1科目や2科目、マイナスが付いているような受験生も取るということでやっていました。そういう意味では以前のことではありますけれども、質的なレベルについてはかなり問題があるんじゃないでしょうか。

(引用終わり)

法曹の養成に関するフォーラム第13回会議議事録より引用。太字強調は筆者。)

鎌田薫(早大総長)委員 実際には旧試験の合格者が500人とか1,000人の時代でも,正直言って本当に満足できる答案は1,000人なんかとてもいないのに,1,000人合格させていたというふうな印象が採点する側にはある

(引用終わり)

 

 実務家委員の方が学者委員より厳しいという図式は、法科大学院教員が排除された平成28年に合格者数が急減し、法科大学院教員が戻ってきた平成29年に合格者数がほとんど減らなかったということとも符合します(「平成30年司法試験の出願者数について(2)」)。
 以上のことを踏まえると、今年の試験が実施されて実際に採点された段階で、全体の出来が悪いと考査委員が判断すれば、上記推進会議決定にかかわらず、合格者数が昨年の1450人をさらに下回ることは普通にあり得る、ということになるわけです。

(4)以上のことから導かれる結論は、にゃんともいえない、ということです。 

4.そういうわけで、ここでは、いくつかの場合を想定して、シミュレーションをしてみましょう。

(1)まず、論文合格者数が昨年と同じ数字だった場合、すなわち、合格者数1450人だった場合です。この場合、仮に短答の合格率を昨年同様75.4%とすると、以下のようになります。

短答合格者数:2547人
短答合格率(対受験者):75.4%
論文合格者数:1450人
論文合格率(対短答):56.9%
論文合格率(対受験者):42.9%

 昨年の論文合格率は、対短答で51.9%、対受験者で39.1%でしたから、特に対短答の論文合格率がちょっと高過ぎはしないか、という感じはするところです。そこで、論文の対短答合格率を、昨年と同水準の51.9%にすると、どうなるか。この場合、短答合格者数は2793人となりますから、まとめると、以下のようになります。

短答合格者数:2793人
短答合格率(対受験者):82.6%
論文合格者数:1450人
論文合格率(対短答):51.9%
論文合格率(対受験者):42.9%

 今度は、短答がちょっと高すぎるかな、という感じです。そこで、両者の中間くらいの短答合格者数ということで、2650人にしてみると、以下のようになります。

短答合格者数:2650人
短答合格率(対受験者):78.4%
論文合格者数:1450人
論文合格率(対短答):54.7%
論文合格率(対受験者):42.9%

 これなら、短答と論文のバランスがよさそうです。そのことからすれば、論文合格者数を昨年同様の1450人にするなら、この辺りの数字に落ち着きそうな感じがします。
 この場合の短答・論文の数字の上での難易度を考えてみましょう。昨年の短答の合格点は93点ですが、仮に合格率78.4%だったとすると、法務省の公表する得点別人員調によれば、合格点は88点まで下がります。また、昨年の論文は、短答合格者2793人中1450人が合格したわけですが、仮に対短答合格率が54.7%となれば、1527人合格する計算です。したがって、数字の上では、短答でいえば5点程度、論文でいえば77番程度、昨年より難易度が下がると考えることができるでしょう。

(2)次に、論文合格者数が1450人を割り込んで、1300人になった場合を想定します。この場合、仮に短答の合格率を昨年同様75.4%とすると、以下のようになります。

短答合格者数:2547人
短答合格率(対受験者):75.4%
論文合格者数:1300人
論文合格率(対短答):51.0%
論文合格率(対受験者):38.4%

 昨年の論文合格率は、対短答で51.9%、対受験者で39.1%でしたから、これはこのままでもなかなかいいバランスだ、ということができるでしょう。
 昨年の論文は、短答合格者2793人中1450人が合格したわけですが、仮に対短答合格率が51.0%であれば、1424人合格する計算です。したがって、数字の上では、短答は変わらず、論文でいえば20~30番程度難易度が上がると一応考えることができますが、ほとんど昨年と変わらないイメージでよいでしょう。

(3)最後に、最も悲観的な数字として、1100人まで減った場合を想定しましょう。この場合、仮に短答の合格率を昨年同様75.4%とすると、以下のようになります。

短答合格者数:2547人
短答合格率(対受験者):75.4%
論文合格者数:1100人
論文合格率(対短答):43.1%
論文合格率(対受験者):32.5%

 昨年の論文合格率は、対短答で51.9%、対受験者で39.1%でしたから、対短答の論文合格率がちょっと低すぎる、という印象がないわけではありません。そこで、短答合格率を70%にすると、以下のようになります。

短答合格者数:2364人
短答合格率(対受験者):70.0%
論文合格者数:1100人
論文合格率(対短答):46.5%
論文合格率(対受験者):32.5%

 これは、それなりにありそうな数字です。
 この場合の短答・論文の数字の上での難易度はどうか。昨年の短答の合格点は93点ですが、仮に合格率が70%だったとすると、法務省の公表する得点別人員調によれば、合格点は97点となります。また、昨年の論文は、短答合格者2793人中1450人が合格したわけですが、仮に対短答合格率が46.5%となれば、1298人が合格する計算となる。したがって、数字の上では、短答でいえば4点程度、論文でいえば152番程度、昨年より難易度が上がると考えることができるでしょう。言い方を変えれば、最悪の状況でも、この程度だということです。

(4)それぞれの想定の数字をまとめると、以下のような対応関係となります。

受験者数 短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
3378 2547 75.4% 1450 56.9% 42.9%
2793 82.6% 1450 51.9% 42.9%
2650 78.4% 1450 54.7% 42.9%
2547 75.4% 1300 51.0% 38.4%
2547 75.4% 1100 43.1% 32.5%
2364 70.0% 1100 46.5% 32.5%

5.最後に、以上の試算に基づく推計の数字を、最初に示した年別の一覧表に書き込んだものを示しておきましょう。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
平成29 6716 5967 88.8%
平成30 5811 5238 90.1%
令和元 4930 4466 90.5%
令和2 4226 3703 87.6%
令和3 3754 3378? 90.0%?

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
平成29 3937 65.9%
平成30 3669 70.0%
令和元 3287 73.6%
令和2 2793 75.4%
令和3 2364? 70.0%?
2547? 75.4%?
2650? 78.4%?

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
平成29 1543 39.1% 25.8%
平成30 1525 41.5% 29.1%
令和元 1502 45.6% 33.6%
令和2 1450 51.9% 39.1%
令和3 1100? 46.5%? 32.5%?
1300? 51.0%? 38.4%?
1450? 54.7%? 42.9%?
posted by studyweb5 at 17:54| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする
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