2021年02月28日

令和2年司法試験の結果について(12)

1.以下は、司法試験における短答・論文段階の合格者の平均年齢等の推移です。年号の省略された年の表記は、平成の元号によります。

短答
合格者
短答
前年比
論文
合格者
論文
前年比
短答・論文
の年齢差
18 29.92 --- 28.87 --- 1.05
19 30.16 +0.24 29.20 +0.33 0.96
20 30.36 +0.20 28.98 -0.22 1.38
21 30.4 +0.04 28.84 -0.14 1.56
22 30.8 +0.4 29.07 +0.23 1.73
23 30.7 -0.1 28.50 -0.57 2.20
24 30.9 +0.2 28.54 +0.04 2.36
25 31.0 +0.1 28.37 -0.17 2.63
26 31.3 +0.3 28.2 -0.17 3.1
27 32.2 +0.9 29.1 +0.9 3.1
28 32.1 -0.1 28.3 -0.8 3.8
29 32.0 -0.1 28.8 +0.5 3.2
30 31.8 -0.2 28.8 3.0
令和元 31.6 -0.2 28.9 +0.1 2.7
令和2 30.9 -0.7 28.4 -0.5 2.5

 一貫して、短答合格者の方が、論文合格者よりも高齢となっています。短答は知識重視なので、若手が苦戦し、高齢受験者が受かりやすい。そのため、短答合格者の年齢は、高齢になりやすくなります。一方、論文は、若年化方策の効果によって、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則が成立する(「令和2年司法試験の結果について(6)」)ので、受かりやすい人は若いうちにあっさり合格し、受かりにくい人は高齢化しつつ、合格できずに滞留することになる。そのため、論文合格者の年齢は、若年化しやすくなるというわけです。もっとも、司法試験には受験回数制限があるので、5年を超える滞留者は予備試験の方に流れていきます。そのため、司法試験の論文における若年化は、概ね5歳以内に収まると考えられます。
 実際の数字をみると、平成26年から平成30年までは、短答から論文を経ることで、概ね3歳程度の若年化が生じていました。それが、昨年は2.7歳、今年は2.5歳の若年化にとどまっています。若年化方策の効果が薄まりつつある、という当サイトの感覚に合致する数字といえるでしょう。とはいえ、それでも、2.5歳の若年化を実現しているわけですから、若年化方策が機能していることは間違いありません。

.直近の短答の平均年齢をみると、若年化傾向であることに気付きます。これは、主に1回目、2回目受験生の短答合格率の上昇に起因するものです。以下は、令和3年2月3日に実施された第102回法科大学院等特別委員会の配布資料に含まれている「令和2年司法試験受験状況」に基づく法科大学院修了生の資格で受験した者の受験回数別の短答合格率(受験者ベース)です。

受験回数 短答合格率
1回目 78.0%
2回目 68.8%
3回目 69.3%
4回目 68.0%
5回目 69.4%

 従来の傾向では、受験回数が増えると、短答合格率が上がっていきました。受験回数が増えるほど、短答の知識をインプットできる時間を確保できるわけですから、これは自然な傾向でした。それが、平成27年頃から、必ずしもそのような傾向ではなくなってきています(「平成27年司法試験の結果について(12)」、「平成28年司法試験の結果について(16)」、「平成29年司法試験の結果について(13)」、「平成30年司法試験の結果について(13)」、「令和元年司法試験の結果について(12)」)。今年は、1回目の受験生が合格率のトップ。2回目の受験生も、4回目の受験生より高い合格率になっています。
 その主な原因は、法科大学院の入学定員及び志願者数の減少と、修了認定の厳格化にあります。周知のように、法科大学院の入学定員及び志願者数は、大幅に減少しています。現在では、かつてのように、「誰でも簡単に法曹になれるらしい。」という安易な感覚で法科大学院に入学する者は、ほとんどいないでしょう。また、その修了認定も厳格化されており、かつて短答で合格できなかったようなレベルの人のうちの一定数は、そもそも法科大学院を修了できなくなっています。このような法科大学院に関する環境の変化は、入学から修了までの一定のタイムラグを経て、司法試験の結果に影響してきます。その影響が、新規参入者の短答合格率の上昇という形で、表れてきているのでしょう。

3.論文合格者の平均年齢に関しては、昨年より0.5歳の若年化となりました。今年に関しては、短答段階で0.7歳の若年化が生じていたことによるところが大きいでしょう。とはいえ、前記1のとおり、短答段階から2.5歳の若年化を実現しています。これは、受験回数が増えると論文合格率が下がるためです。以下は、「令和2年司法試験受験状況」に基づく法科大学院修了生の資格で受験した者の受験回数別の論文合格率(短答合格者ベース)です。

受験回数 論文合格率
1回目 63.2%
2回目 43.1%
3回目 31.5%
4回目 25.5%
5回目 22.5%

 当サイトで繰り返し説明しているとおり、若年化方策の採られている論文には、「受かりにくい人は、何度受けても受かりにくい」法則があります。規範と事実を明示しない書き方をする人や、問題文から論点を素早く抽出する反射神経、速く文字を書く能力等が劣る者は、どんなに勉強量を増やしても、受かりにくいことに変わりはない。受かりにくい特性を強く持つ者が滞留していくので、受験回数が増えれば増えるほど、合格率は下がっていくのです。今年も、その傾向どおりの結果になっています。勉強量が多くて有利なはずの5回目受験生が、勉強量の少ない1回目受験生に大きく差を付けられている。5回目受験生は、決して実力で劣っているわけではありません。それは、短答の高い合格率から明らかです。しかし、そのような実力を持つ5回目受験生も、「受かりにくい人」であるがゆえに、論文では厳しい結果になるのです。このように、短答と論文は全く特性が異なるということを、普段の学習においても意識すべきです。問題なのは、このようなことを、法科大学院はもちろん、予備校等でもほとんど教えてもらえないということです。「短答は丸暗記で合格できるが、論文は本質を理解していないと合格できない。」というような、紋切り型の誤った説明がされるのが一般的でしょう(※)。また、このような論文の特性を理解した上で作成された教材も、ほとんどないのが現状です。当サイト作成の「司法試験定義趣旨論証集」は、上記のような点を踏まえ、司法試験の論文式試験に必要と思われる規範などを網羅的に掲載した教材です。現時点では、まだ一部の科目に限られてはいますが、活用して頂ければ幸いです。
 ※ この説明からは、論文の若年化傾向は、予備校テキスト等で短期間勉強すれば本質をよく理解できるが、学者の体系書や論文などを読み込むような長期受験者の学習法だと本質が理解できなくなることを意味することになりますが、そのような理解からは、長期間専門的な研究に携わる学者は全く本質を理解できていない存在であるということになるでしょう。現在の論文式試験は、「本質」を理解すると、かえって解けなくなってしまうことの方が多いのです。例えば、「この判例は事例判例なので、安易にこの問題でそのまま規範として使ってはいけないのではないか?」 等と悩んでいる人と、「これ判例あるじゃん。規範書き写して当てはめすれば終わりだよね。」と何も考えずに解答する人とでは、早く受かるのは明らかに後者です。

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2021年02月25日

令和2年司法試験の結果について(11)

1.以下は、直近5年の選択科目別の最低ライン未満者割合、すなわち、その科目を選択して短答に合格した者に占めるその科目で最低ライン未満となった者の割合の推移です。

平成28 平成29 平成30 令和元 令和2
倒産 4.68% 1.80% 2.77% 2.76% 2.39%
租税 0.00% 3.20% 2.92% 1.29% 0.49%
経済 3.50% 2.71% 1.33% 1.19% 4.25%
知財 2.51% 3.80% 7.06% 0.91% 3.30%
労働 1.11% 7.48% 0.63% 1.94% 3.20%
環境 0.35% 1.99% 0.54% 0.61% 0.87%
国公 0.00% 0.00% 0.00% 5.12% 3.03%
国私 4.54% 4.88% 2.63% 0.60% 2.11%

 過去の傾向では、最低ライン未満者の多い科目は、倒産法でした。短答・論文の合格率が最も高い傾向を示す倒産法で、最低ライン未満者が多数出ていることは、ある意味不思議な現象でした。当サイトでは、実力者が倒産法を選択しているという傾向がある一方で、倒産法の採点は厳しく、素点で最低ライン未満になる危険性が高いことから、倒産法を選択するということには、そのようなリスクがある、という説明をしていたのでした(「平成26年司法試験の結果について(10)」)。一方で、労働法は、毎年最低ライン未満者が少なく、その意味では安全な科目であるということができました。
 それが、最近では、年ごとに最低ライン未満者の多い科目が変動するようになってきました。平成29年は労働法、平成30年は知的財産法が突出して高い最低ライン未満者割合でした。昨年は、国際公法が高い数字となりました。もっとも、昨年の国際公法は短答合格者39人に対して2人というものですから、あまり有意な数字ではないでしょう。
 今年は、突出して最低ライン未満者割合の高い科目はないものの、租税法・環境法を除いて、どの科目もそれなりに最低ライン未満者を出しており、油断ができない状況です。倒産法が特に危険であるとか、労働法が特に安全だといったことは、いえなくなっています。現時点では、最低ライン未満になるリスクを考慮して選択科目を選ぶという考え方は、適切でないといるでしょう。

.選択科目ごとの素点の傾向をみてみましょう。以前の記事(「令和2年司法試験の結果について(9)」)でみたとおり、素点の平均点の高低、バラ付きの大小は、素点段階と得点調整後に最低ライン未満の得点となる者の数を比較すれば、ある程度わかります。以下は、素点段階の最低ライン未満者数と、得点調整後に最低ライン未満の得点となる者の数をまとめたものです。

素点
ベース
調整後
ベース
倒産 15
租税
経済 22 18
知財 13
労働 28 47
環境
国公
国私 12

 調整後の数字の方が小さくなっているのは、経済法と知的財産法ですが、両者はその理由が違っていそうです。経済法の方は、調整後に10点未満の人が2人いますので、素点の平均点が全科目平均点より低かった可能性は低いでしょう。ですので、素点の標準偏差が10より大きかった、すなわち、考査委員が意識して差を付けた要素が大きかったのだろうと考えることができます。他方、知的財産法の方は、調整後の最も低い点数が11点になっていますので、素点の平均点が全科目平均点より低かった可能性が高そうです。つまり、出題趣旨を捉えることが難しい問題だった、あるいは、各考査委員の採点が厳し目だったのだろうと考えることができるでしょう。
 一方、それ以外の科目は、国際公法を除き、調整後ベースの方が大きな数字になっています。これらの科目では、素点の平均点が全科目平均点より高いか、素点の標準偏差が10より小さい。そして、調整後に極端に高い得点の者がいる場合は前者の可能性は低いといえますが、今年は最高でも78点の者しかいないので、これだけでは何ともいえません。他方、調整後の上位と下位の得点で人員ゼロのものが目立つ場合は、後者の可能性が高くなります。素点で平均点に密集していた人員分布を標準偏差10になるようにバラけさせようとすると、飛び飛びの分布になって、人員ゼロの得点が生じやすくなるからです。その観点でみると、各科目とも、とりわけ20~30点辺りに中抜けのような人員ゼロの得点があります。したがって、必ずしもはっきりはしないものの、これらの科目では後者、すなわち、標準偏差が10より小さかった可能性が高そうです。仮にそうだとすると、素点段階ではわずかな差でしかなかったものが、得点調整によって大きな差となってしまいがちなので、再現答案では説明のしにくい得点差が生じやすいでしょう。なお、国際公法も人員ゼロの得点が目立つ人員分布になっていますが、こちらは単に選択した受験者が極端に少ないことによります。

3.選択科目は、基本的には、自分の興味のある科目を選べばよいと思います。学部やローで講義を受講できるかどうかも1つの要素ですが、特にこだわりがなければ、選択者の多い科目を選んでおくのが無難だと思います。
 以下は、今年の選択科目別受験者数及びその全体に占める割合をまとめたものです。

受験者数 割合
倒産 452 12.3%
租税 288 7.9%
経済 683 18.6%
知財 525 14.3%
労働 1104 30.1%
環境 161 4.4%
国公 48 1.3%
国私 403 11.0%

 労働法が圧倒的に多く、3割近い受験生が選択しています。それ以外では、倒産法、経済法、知的財産法、国際私法が1割から2割の間の水準です。租税法、環境法は1割を下回るマイナー科目で、国際公法はその存在意義が疑われかねないほど選択者が少ない科目となっています。
 このような状況からすれば、特に好みがないなら、労働法を選択しておけばよいのかな、と思います。労働法は、選択科目の中でも、当サイトが繰り返し説明している、「規範と事実」のパターンにはまりやすい科目です。必須科目と比べて論文の書き方に特殊な点がないという点からも、労働法は選択しやすい科目といえるでしょう。ただ、覚えるべき規範の量は、他の科目より少し多めです。ですから、選択科目のための勉強時間を十分に確保できない社会人や大学在学中の予備合格者にとっては、覚える量の少ない国際私法の方がよいかもしれません。実際、国際私法は、大学在学中予備合格者の選択が多かったと思われる時期がありました。ただし、前回の記事(「令和2年司法試験の結果について(10)」)でもみたとおり、最近は、予備試験合格者も労働法を選択するようになってきているようにみえます。
 かつて、労働法より人気があったのが、倒産法でした。法科大学院で履修しやすい科目であったこと、民事系科目との親和性が強いことが要因だったのでしょう。しかし、前回の記事(「令和2年司法試験の結果について(10)」)で説明したとおり、倒産法は実力者が選択する傾向があるために、得点調整で不利になりやすいことや、かつて最低ライン未満者が毎年多かったこともあって、近年は敬遠されがちな科目となっています。もっとも、最近では、最低ライン未満者数もかつてほど多くはなくなってきています。前回の記事(「令和2年司法試験の結果について(10)」)でもみたとおり、昨年・今年は、予備組が国際私法から倒産法に移ってきているともみえる結果となっています。今後は、また人気が回復してくる可能性もあるでしょう。

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2021年02月22日

令和2年司法試験の結果について(10)

1.今回は、選択科目についてみていきます。まずは、選択科目別にみた短答式試験の受験者合格率です。

科目 短答
受験者数
短答
合格者数
短答
合格率
倒産 452 376 83.1%
租税 288 203 70.4%
経済 683 517 75.6%
知財 525 393 74.8%
労働 1104 873 79.0%
環境 161 114 70.8%
国公 48 33 68.7%
国私 403 284 70.4%

 短答は、選択科目に関係なく同じ問題ですから、どの科目を選択したかによって、短答が有利になったり、不利になったりすることはありません。ですから、どの選択科目で受験したかと、短答合格率の間には、何らの相関性もないだろうと考えるのが普通です。しかし実際には、選択科目別の短答合格率には、毎年顕著な傾向があるのです。
 その1つが、倒産法の合格率が高いということです。例年、倒産法は短答合格率トップでした。昨年は労働法にトップの座を奪われましたが、今年は、再びトップの座に返り咲いています。このことは、倒産法選択者に実力者が多いことを意味しています。倒産法ほど顕著ではありませんが、労働法も似たような傾向で、昨年は倒産法を抑えてトップとなり、今年は倒産法にトップを奪還されたものの、3位以下にかなりの差を付けて2位となりました。
 逆に、国際公法は、毎年短答合格率が低いという傾向があります。今年も、最下位の合格率です。このことは、国際公法選択者に実力者が少ないことを意味しています。国際公法ほど顕著ではありませんが、環境法も類似の傾向です。
 また、新司法試験開始当初は、国際私法も合格率が低い傾向だったのですが、次第にそうでもない、という感じに変わってきました。その原因の1つには、大学在学中の予備試験合格者の選択が増えている、ということが考えられました。国際私法は、他の選択科目よりも学習の負担が少なく、渉外系法律事務所への就職を狙う際に親和性がありそうにみえる、ということが、その理由のようでした。もっとも、昨年は、国際公法に次ぐ低めの合格率でした。今年も、租税法とともに、国際公法に次ぐ低い合格率になっています。このことは、予備試験合格者の科目選択の傾向に変化が生じた可能性を示唆しています。

2.論文合格率をみてみましょう。下記は、選択科目別の短答合格者ベースの論文合格率です。

科目 短答
合格者数

論文
合格者数

論文
合格率
倒産 376 204 54.2%
租税 203 97 47.7%
経済 517 269 52.0%
知財 393 200 50.8%
労働 873 481 55.0%
環境 114 46 40.3%
国公 33 13 39.3%
国私 284 140 49.2%

 論文段階では、どの科目を選択したかによる影響が多少出てきます。もっとも、各選択科目の平均点は、全科目平均点に合わせて、どの科目も同じ数字になるように調整され、得点のバラ付きを示す標準偏差も、各科目10に調整されます。ですから、基本的には、選択科目の難易度によって、有利・不利は生じないはずなのです(※)。したがって、論文段階における合格率の差も、基本的には、どのような属性の選択者が多いか、実力者が多いのか、そうではないのか、といった要素によって、変動すると考えることができます。
 ※ 厳密には、個別のケースによって、採点格差調整(得点調整)が有利に作用したり、不利に作用したりする場合はあり得ます。極端な例でいえば、ある選択科目が簡単すぎて、全員100点だったとしましょう。その場合、全科目平均点の得点割合が45%だったとすると、得点調整後は全員が45点になります(なお、この場合は調整後も標準偏差が10にならない極めて例外的なケースです。)。この場合、選択科目の勉強をたくさんしていた人は、損をしたといえるでしょうし、逆に選択科目をあまり勉強していなかった人は、得をしたといえます。もっとわかりやすいのは、ある選択科目が極端に難しく、全員25点未満だった場合です。この場合は、素点段階で全員最低ライン未満となって不合格が確定する。これは、その選択科目を選んだことが決定的に不利に作用したといえるでしょう。このように、特定の選択科目が極端に易しかったり、難しかったりした場合などでは、どの科目を選んだかが有利・不利に作用します。とはいえ、通常は、ここまで極端なことは起きないので、科目間の難易度の差は、それほど論文合格率に影響していないと考えることができるのです。

 論文合格率についても、かつては倒産法がトップになるという傾向が確立していました。ところが、平成26年に初めて国際私法がトップになって以降、この傾向に変化が生じました。以下の表は、平成26年以降で論文合格率トップとなった科目をまとめたものです。

論文合格率
トップの科目
平成26 国際私法
平成27 経済法
平成28 倒産法
平成29 国際公法
平成30 経済法
令和元 倒産法
令和2 労働法

 平成30年までは、倒産法がトップになったのは平成28年だけで、経済法が2回トップになっているものの、トップになる科目が安定しない結果でした。また、上位の科目については、論文合格率にそれほど大きな差が付かない状況が続いていました。昨年は、再び倒産法がトップとなり、しかも、他の科目にそれなりに差を付けました(「令和元年司法試験の結果について(10)」)。今年も、倒産法はそれなりに高い合格率です。しかし、労働法がこれを上回り、トップとなりました。一時期の流動的な状況と比較すると、倒産法の強さが戻ってきてはいるものの、かつてのような圧倒的な強さではない、という感じです。今年論文トップの労働法は、短答でも2位となっており、選択者も多いことから、安定感のある選択肢となっています。
 一方、下位については、国際公法が圧倒的に論文合格率が低いという傾向で安定しています。今年も、圧倒的に低い合格率でした。平成29年に一度論文合格率トップとなっていますが、これは母数が少ないことによるイレギュラーな結果とみるべきでしょう。また、環境法は、国際公法と似た傾向で、今年も、国際公法に次ぐ低い合格率でした。「国際」・「環境」というキーワードに惹きつけられやすい層というのは、忍耐強く司法試験の学習を続けていくには向かない人が多いのかもしれません。ブレが大きいのが国際私法で、かつては国際公法と同様に低い合格率でしたが、近年は、前記のとおり、大学在学中の予備試験合格者の選択が増えたことで、むしろ合格率上位のグループに属する傾向となっていました。ところが、昨年・今年と続けて低い合格率に沈んでいます。短答の合格率も下がっているところからみて、予備組があまり選択しなくなったのかもしれません。倒産法・労働法の強さと併せて考えると、予備組の選択傾向が国際私法から倒産法・労働法に移った可能性もありそうです。

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