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2018年07月30日

平成30年予備試験論文式憲法参考答案

【答案のコンセプトについて】

1.予備試験の論文式試験において、合格ラインに達するための要件は、司法試験と同様、概ね

(1)基本論点抽出できている。
(2)当該事案を解決する規範明示できている。
(3)その規範に問題文中のどの事実が当てはまるのかを摘示できている。

という3つです。とりわけ、(2)と(3)に、異常な配点がある。(1)は、これができないと必然的に(2)と(3)を落とすことになるので、必要になってくるという関係にあります。応用論点を拾ったり、趣旨や本質論からの論述、当てはめの事実に対する評価というようなものは、上記の配点をすべて取ったという前提の下で、上位合格者のレベルに達するために必要となる程度の配点があるに過ぎません。

2.ところが、法科大学院や予備校では、「応用論点に食らいつくのが大事ですよ。」、「必ず趣旨・本質に遡ってください。」、「事実は単に書き写すだけじゃダメですよ。必ず自分の言葉で評価してください。」などと指導されます。これは、必ずしも間違った指導ではありません。上記の(1)から(3)までを当然にクリアできる人が、さらなる上位の得点を取るためには、必要なことだからです。現に、よく受験生の間に出回る超上位の再現答案には、応用、趣旨・本質、事実の評価まで幅広く書いてあります。しかし、これを真似しようとするとき、自分が書くことのできる文字数というものを考える必要があるのです。
 上記の(1)から(3)までを書くだけでも、通常は3頁程度の紙幅を要します。ほとんどの人は、これで精一杯です。これ以上は、物理的に書けない。さらに上位の得点を取るために、応用論点に触れ、趣旨・本質に遡って論証し、事実に評価を付そうとすると、必然的に4頁後半まで書くことが必要になります。上位の点を取る合格者は、正常な人からみると常軌を逸したような文字の書き方、日本語の崩し方によって、驚異的な速度を実現し、1行35文字以上のペースで4頁を書きますが、普通の考え方・発想に立つ限り、なかなか真似はできないことです。
 文字を書く速度が普通の人が、上記の指導や上位答案を参考にして、応用論点を書こうとしたり、趣旨・本質に遡ったり、いちいち事実に評価を付していたりしたら、どうなるか。必然的に、時間不足に陥ってしまいます。とりわけ、上記の指導や上位答案を参考にし過ぎるあまり、これらの点こそが合格に必要であり、その他のことは重要ではない、と誤解してしまうと、上記の(1)から(3)まで、とりわけ(2)と(3)を省略して、応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいってしまう。これは、配点が極端に高いところを書かずに、配点の低いところを書こうとすることを意味しますから、当然極めて受かりにくくなるというわけです。

3.上記のことを理解した上で、上記(1)から(3)までに絞って答案を書こうとする場合、困ることが1つあります。それは、純粋に上記(1)から(3)までに絞って書いた答案というものが、ほとんど公表されていないということです。上位答案はあまりにも全部書けていて参考にならないし、合否ギリギリの答案には上記2で示したとおりの状況に陥ってしまった答案が多く、無理に応用、趣旨・本質、事実の評価を書きにいって得点を落としたとみられる部分を含んでいるので、これも参考になりにくいのです。そこで、純粋に上記(1)から(3)だけを記述したような参考答案を作れば、それはとても参考になるのではないか、ということを考えました。下記の参考答案は、このようなコンセプトに基づいています。

 

【参考答案】

第1 法律上の争訟性

1 固有の司法権の対象となりうるのは、「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)、すなわち、当事者間の具体的な権利義務・法律関係の存否に関する紛争(法律上の係争)であって、かつ、法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(板まんだら事件判例参照)。

(1)処分2の取消しを求める訴えの訴訟物は、Xに対する除名の違法性であるから、当事者間の具体的な権利義務・法律関係の存否に関する紛争といえる。

(2)自律的な法規範を有する団体の内部規律の問題として自治的措置に任せるのを適当とする事項を訴訟物とする訴えは、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的、自律的な解決に委ねるのが適当であるから、法令の適用により終局的に解決することができないものとして、「法律上の争訟」に当たらない(部分社会の法理。地方議会議員懲罰事件、富山大学事件、愛知県議会発言取消命令事件各判例参照。)。
 地方議会は、議員に対し、議決により懲罰を科することができる(地方自治法134条1項)。したがって、議員の懲罰は、地方議会の内部規律の問題として自治的措置に任せるのを適当とする事項といえる。もっとも、処分2の取消しを求める訴えは、Xに対する除名の効力に関するものである。除名は、地方議会の議員の地位を失わせる処分であるから、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるものとはいえない。
 したがって、上記法理の適用はない。

2 よって、処分2の取消しを求める訴えに法律上の争訟性が認められる。

第2 処分1の合憲性

1 Xの主張

 思想・良心とは、信仰に準ずる確固たる世界観、主義、思想等、個人の人格形成の核心をなす内心の活動をいう(君が代不起立不斉唱事件判例における千葉補足意見参照)。特定の思想又はその否定と不可分に結び付く行為の強制、特定の思想又はその否定を外部に表明する行為であると評価される行動の強制、特定の思想の有無についての告白の強制は、いずれも思想・良心の自由の直接的制約として、直ちに19条に違反する(君が代ピアノ伴奏拒否事件判例、君が代不起立不斉唱事件判例、同判例における須藤正彦補足意見参照)。
 本件発言は正当であるとのXの信念は、個人の人格形成の核心をなす内心の活動といえ、処分1は、Xのそのような思想の否定を外部に表明する行為であると評価される行動の強制に当たる。
 よって、処分1は、思想・良心の自由の直接的制約として、19条に違反する。

2 想定される反論

 謝罪広告事件、ポストノーティス命令事件各判例によれば、処分1は19条に違反しない。

3 私見

 謝罪広告等の強制は、その内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものである場合や、同種行為を繰り返さない旨の約束文言を強調する意味を有するにすぎない場合には、思想・良心の自由の直接的制約とはならない(謝罪広告事件、ポストノーティス命令事件各判例参照)。もっとも、上記場合であっても、その謝罪広告等が個人の思想に由来する行動と異なる外部的行動を求めるものであるときは、思想・良心の自由の間接的制約となる(君が代不起立不斉唱事件判例参照)。
 処分1の陳謝文の内容は、「私は、Dについて、事実に反する発言を行い、もってDを侮辱しました。ここに深く陳謝いたします。」というもので、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものといえる。したがって、思想・良心の自由の直接的制約とはならない。もっとも、本件発言は正当であるというXの思想に由来する行動と異なる外部的行動を求めるものであるから、思想・良心の自由の間接的制約となる。
 思想・良心の自由に対する間接的制約の合憲性は、その制約の目的、内容、態様等を総合的に較量して、制約を許容しうる程度の必要性・合理性が認められるかという観点から判断する(上記判例参照)。
 処分1は、Dから地方自治法133条に基づく処分の請求があったこと、Dに関する疑いは誤りであったことが判明したことによるものであり、Dに関する疑いを報道したCの所属する新聞社が訂正報道を行ったこと、Dに関する疑いが誤りであったことはXも認めていることを考慮すると、制約を許容しうる程度の必要性・合理性が認められる。
 よって、処分1は、19条に違反しない。

第3 処分2の合憲性

1 Xの主張

 議員活動の自由は、21条1項の保障を受ける(府中市政治倫理条例事件判例参照)。議員活動の自由についての制約の合憲性は、その目的のために制約が必要とされる程度と、制約される自由の内容・性質、具体的な制約の態様・程度等を較量して、必要かつ合理的なものとして是認できるかによって判断する(府中市政治倫理条例事件、よど号事件、成田新法事件各判例参照)。
 処分2は、Xが処分1に従わないことは議会に対する重大な侮辱であるとの理由でされたから、その目的は議会の秩序維持にあるといえ、一応正当といえる。しかし、除名は、懲罰の中でも議員の地位を失わせる最も重い処分であり、陳謝の次に重く、除名より軽い処分として出席停止がある(地方自治法135条1項)ことを考慮すると、議会の秩序を維持する必要性との均衡を欠いている。したがって、必要かつ合理的なものとして是認することはできない。
 よって、処分2は、21条1項に違反する。

2 想定される反論

 処分2は、議員活動の自由を制約するものではない。

3 私見

 狭義の表現(「言論、出版その他一切の表現」)とは、自らの思想等を外部に表明することをいう。政治的行為は、行動としての面を持つほかに、政治的意見の表明としての面をも有するから、その限りにおいて、21条1項による保障を受ける(猿払事件判例参照)。議員活動の自由も、意見表明の側面において、21条1項の保障を受けるにすぎない。
 処分2は、単に議会の秩序を乱したとしてされた懲罰にすぎず、意見表明を禁止する処分ではないから、21条1項の保障する議員活動の自由を制約するものとはいえない。
 よって、処分2は、21条1項に違反しない。

以上

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