2017年09月29日

平成29年司法試験の結果について(9)

1.前回の記事(「平成29年司法試験の結果について(8)」) では、予備組の合格率の急上昇が、全体の論文合格率の上昇だけでは説明が付かないものであることが明らかになりました。そこで今回は、予備組内部の合格率に何かヒントがないか、調べてみます。以下は、年代別の受験者合格率です。

年齢 受験者数 合格者数 受験者合格率
20~24 161 155 96.2%
25~29 59 49 83.0%
30~34 29 19 65.5%
35~39 48 27 56.2%
40~44 33 14 42.4%
45~49 32 13 40.6%
50以上 38 13 34.2%

 年代別にみると、合格率に顕著な差があることがわかります。20代前半は9割を超える圧倒的な合格率。それが、歳を重ねるにつれて、下がっていきます。9割以上の20代前半、8割程度の20代後半、5~6割台の30代、4割台の40代、3割台の50代以上、というように、歳を取ると合格率が下がっていく傾向が顕著です。
 この差は、どの段階で生じているのか。短答段階では、予備組は受験者400人中7人しか落ちていません。その7人は、20代前半と20代後半にそれぞれ2人、30代前半、30代後半、40代前半にそれぞれ1人で、むしろ若手に集中している。40代後半以降で短答に落ちた人は、1人もいません。ですから、若手の圧倒的に高い合格率は、専ら論文段階で生じているのです。
 この論文段階での若手圧倒的有利の傾向は、今年の予備組に限ったことではなく、毎年みられる確立した傾向です。ですから、その背後にある要因を明らかにすることが、論文を攻略するための重要なヒントとなるのです。
 若手圧倒的有利の要因の1つは、以前の記事でも説明した「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則です(「平成29年司法試験の結果について(6)」)。不合格者が翌年受験する場合、必ず1つ歳をとります。不合格を繰り返せば、どんどん高齢になっていく。その結果、高齢の受験生の多くが、不合格を繰り返した「極端に受かりにくい者」として滞留し、結果的に、高齢受験者の合格率を下げる。これは、年齢自体が直接の要因として作用するのではなく、不合格を繰り返したことが年齢に反映されることによって、間接的に表面化しているといえます。
 もう1つは、年齢が直接の要因として作用する要素です。それは、加齢による反射神経と筆力の低下です。論文では、極めて限られた時間で問題文を読み、論点を抽出して、答案に書き切ることが求められます。そのためには、かなり高度の反射神経と、素早く文字を書く筆力が必要です。これが、年齢を重ねると、急速に衰えてくる。これは、現在の司法試験では、想像以上に致命的です。上記の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則とも関係しますが、論点抽出や文字を書く速度が遅いと、規範を明示し、問題文の事実を丁寧に書き写すスタイルでは書き切れなくなります。どうしても、規範を省略したり、問題文を要約するスタイルにならざるを得ない。そうなると、わかっていても、「受かりにくい者」になってしまうのです。この悪循環が、上記のような加齢による合格率低下の要因になっているのだと思います。

2.ここまでは、例年の傾向との関係を説明しました。ここからは、今年の予備組に顕著な特徴をみていきましょう。以下は、上記1でみた年代別合格率を、昨年と今年で比較したものです。

年齢 今年 昨年 前年比
20~24 96.2% 94.2% +2.0
25~29 83.0% 72.7% +10.3
30~34 65.5% 43.5% +22.0
35~39 56.2% 45.6% +10.6
40~44 42.4% 23.6% +18.8
45~49 40.6% 22.5% +18.1
50以上 34.2% 28.2% +6.0

 年配者の合格率が、考えられないほど急上昇している。例年なら、論文段階で壊滅するはずの年配者が、今年はなぜか論文にも受かっているのです。これが、例年にはみられない、今年の予備組の顕著な特徴です。ここに、今年の予備組の合格率の急上昇の謎を解く手がかりがあるのです。
 先ほど、若手圧倒的有利の要因が、論文特有の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則と、加齢による反射神経と筆力の低下にあることを説明しました。加齢による反射神経と筆力の低下が、今年の年配者に限って生じなかった、ということは、ちょっと考えられません。ですから、今年の年配者の合格率の急上昇は、「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則が、あまり作用しなかった、ということになるでしょう。そしてまた、このことが、今年の予備組の合格率急上昇の原因でもあった。年配者に作用する影響が要因だったのなら、上位ロー既修の合格率が急上昇しなかった(「平成29年司法試験の結果について(8)」)ことも筋が通ります。
 ではなぜ、今年は、「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則が、あまり作用しなかったのでしょうか。これは今のところ、よくわかりません。今年の論文の問題が、例年の傾向と違ったかといえば、そのようなことはなかったでしょう。例年どおり、規範の明示と事実の摘示が重要で、しかもそれを書き切るためにはかなりの文字数が必要でした。そうだとすると、受験生の側に変化があったという可能性の方が高いでしょう。当サイトでは、最近になって、上記の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則が生じる原因が、答案の書き方、スタイルにあることを繰り返し説明するようになりました(「平成29年司法試験の結果について(6)」)。平成27年からは、規範の明示と事実の摘示に特化したスタイルの参考答案も掲載するようになりました。その影響で、年配の予備受験生が、規範の明示や事実の摘示を重視した答案を時間内に書き切るような訓練をするようになったのではないかと思います。「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則は、どの部分に極端な配点があるかということについて、単に受験生が知らない(ロー等で規範と事実を書き写せと指導してくれない)という、それだけのことによって成立している法則です。ですから、受験生に適切な情報が流通すれば、この法則は作用しなくなる。正確な統計があるわけではありませんが、当サイトの読者層には、年配の予備受験生が多いようです。ロー等に通えないことから、当サイト等を頼ることになりやすいからでしょう。その影響が一定程度あって、年配の予備組受験生については、正しい情報が流通し始めたのではないか。今年、30代以上の予備試験受験者は180人なので、そのうちの数十人が当サイトの読者であったという程度でも、合格率に大きく影響する可能性はあるでしょう。現段階では、まだはっきりとはわかりませんが、当サイトとしては、そのように考えたいところです。

3.以下は、予備組の職種別の受験者数、合格者数、受験者合格率をまとめたものです。法務省公表の資料で、「公務員」、「教職員」、「会社員」、「法律事務所事務員」、「塾教師」、「自営業」として表示されているカテゴリーは、それらを合計した数字を「有職者」としてまとめて表示し、「その他」のカテゴリーは省略しています。

職種 受験者数 合格者数 受験者
合格率
有職者 95 49 51.5%
法科大学院生 102 97 95.0%
大学生 92 88 95.6%
無職 98 50 51.0%

 法科大学院生・大学生のグループと、有職者・無職のグループに分かれます。前者のグループが、後者のグループより圧倒的に合格率が高い。これは、職種というより、年齢の要素を反映したものと考えてよいでしょう。大学生や法科大学院生のほとんどは20代なので、合格率が高くなっているのです。
 注目したいのは、有職者と無職で合格率にほとんど違いがない、ということです。正社員として勤務していると、勉強をする時間がないので、無職(アルバイトを含む。)の方が有利である、と言われることがあります。しかし、この数字を見る限り、必ずしもそうではない。これは、論文試験が、主として法律の知識・理解ではなく、反射神経や筆力に依存する試験であることによります勉強量は、ほとんど関係がないのです。このことは、受験を考えている社会人にとって、重要な事実でしょう。ただし、短答は勉強量に強く依存しますから、短答の学習をする時間は、最低限確保しなければなりません。
 ここまでは、例年みられる確立した傾向です。昨年の職種別合格率と比較すると、前記2で説明したことと同じ今年特有の傾向が現れます。

職種 今年 昨年 前年比
有職者 51.5% 35.5% +16.0
法科大学院生 95.0% 87.7% +7.3
大学生 95.6% 95.8% -0.2
無職 51.0% 35.7% +15.3

 大学生以外のカテゴリーですべて合格率が上昇している。特に、有職者と無職のカテゴリーの上昇幅は、これまでの傾向を知る者からすれば、ありえないものです。先ほど説明したとおり、上記の各カテゴリーの数字は、職種というより、年齢層に依存しています。今年は、年配者の予備組の合格率が大きく上昇したので、それに対応して、有職者と無職のカテゴリーの上昇幅が大きくなっている。今年は、文字どおり「苦節十年」という感じの人が、多く受かっているはずです。法曹として活躍するにふさわしい意欲と能力を持ちながら、論文特有の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則に阻まれて、合格できない人がたくさんいます。当サイトは、そのような人はできる限り少なくなった方がよいと考えています。その意味では、この傾向が、今後も続けばよいと思います。

4.以下は、予備組の最終学歴別の受験者数、合格者数、受験者合格率のうち、「大学在学中」、「法科大学院修了」、「法科大学院在学中」の3つのカテゴリーを抜粋したものです。

学歴 受験者数 合格者数 受験者
合格率
大学
在学中
93 89 95.6%
法科大学院
修了
68 27 39.7%
法科大学院
在学中
102 96 94.1%

 法科大学院修了のカテゴリーだけ、極端に合格率が低いことがわかります。このカテゴリーは、主にローを修了した後に受験回数を使い果たし、予備試験に合格して復活した人達が属します(※)。予備試験に合格して敗者復活を果たしても、司法試験で苦戦している、ということです。これが、論文特有の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則です。以前の記事(「平成29年司法試験の結果について(6)」)で説明したとおり、書き方のクセが直らないと、予備試験に合格しても、司法試験で苦戦することになるのです。
 ※ 厳密には、ロー在学中に予備に合格し、司法試験を受験したが、不合格になった人が、ローを修了した後に再受験する場合も含みます。

 さて、ここでも、昨年と比較してみましょう。

学歴 今年 昨年 前年比
大学
在学中
95.6% 95.8% -0.2
法科大学院
修了
39.7% 27.5% +12.2
法科大学院
在学中
94.1% 87.7% +6.3

 法科大学院修了のカテゴリーの合格率が大きく上昇しています。ここでも、「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則の作用が弱まっていることが確認できるでしょう。

5.以上のように、今年の予備組の合格率の急上昇の原因は、「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則の作用が弱まったことにあります。そして、そのとりあえずの仮説として、2回目以降の予備組の受験生が、適切な情報に基づいて、規範の明示と事実の摘示のスタイルを守って書き切る訓練をするようになったために、「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則の作用が弱まったということが考えられる。仮にこれが正しければ、来年以降もこの傾向が続きやすいでしょう。逆に、来年以降、また元の傾向に戻ってしまうのであれば、今年限りのイレギュラーな原因によるものであったということになります。

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2017年09月27日

平成29年司法試験の結果について(8)

1.ここ数年、司法試験の結果が出るたびに、注目されるのが、予備組の結果です。今年は、予備試験合格の資格で受験した400人中、290人合格。予備組の受験者合格率は、72.5%でした。以下は、予備組が司法試験に参入した平成24年以降の予備試験合格の資格で受験した者の合格率の推移です。


(平成)
受験者数 前年比 合格者数 前年比 受験者
合格率
前年比
24 85 --- 58 --- 68.2% ---
25 167 +82 120 +62 71.8% +3.6
26 244 +77 163 +43 66.8% -5.0
27 301 +57 186 +23 61.7% -5.1
28 382 +81 235 +49 61.5% -0.2
29 400 +18 290 +55 72.5% +11.0

2.受験者数は一貫して増加を続けているものの、今年になって急激に増加幅が減少しています。その要因は2つ1つは、予備試験の最終合格者数が、昨年から11人しか増えなかったことです(「平成28年予備試験口述試験(最終)結果について(1)」)。これは、予備試験の論文段階で「400人基準」が採られる限り、今後も同様の傾向となるでしょう(「平成28年予備試験論文式試験の結果について(1)」)。もう1つは、予備組が参入して5年が経過したことにより、受験回数制限による退出者が本格的に生じたということです。昨年失権したとみられる平成23年予備合格者は、記録上11人います(「平成28年司法試験受験状況」)。ただ、予備組は合格率が非常に高いので、そもそも滞留者があまり生じません。ですから、この影響は、法科大学院修了生の場合ほど大きくはならないでしょう。
 気になるのは、合格者数の急増と合格率の急上昇です。特に、これまで低下傾向だった合格率が、今年は反転し、大幅な上昇となっている。合格者数の急増は、これに対応したものといえます。昨年の記事では、予備組の合格率の低下傾向は、今後も続くだろうと予測していました(「平成28年司法試験の結果について(10)」)。この予測は、大きく外れたということになります。この原因は、どこにあるのでしょうか。

3.まず、原因として思いつくことは、今年は全体の論文合格率が大きく上昇した年だったということです(「平成29年司法試験の結果について(1)」)。全体の論文合格率が上がったのだから、予備組の合格率が上がるのも当然といえるでしょう。問題は、これだけで十分な説明になっているかどうかです。以下は、平成24年以降の受験生全体の論文合格率(短答合格者ベース)の推移です。


(平成)
全体の
論文合格率
前年比
24 39.3% ---
25 38.9% -0.4
26 35.6% -3.3
27 34.8% -0.8
28 34.2% -0.6
29 39.1% +4.9

 確かに、ある程度は予備組の合格率の変動と対応しています。しかし、今年の予備組の合格率が11%も上昇しているのに、全体の論文合格率は、4.9%の上昇にとどまっている。これを、どう考えるかです。
 直感的には、「予備組の方が実力者が多いので、全体の論文合格率の上昇幅以上に合格率が上昇しても不思議ではない。」という感じもします。仮に、この考え方が正しいなら、同じく実力者の多い上位ロー既修の合格率も、かなりの上昇幅になっているはずです。そこで、東大、京大、一橋、慶応の既修者の今年の受験者合格率と昨年の受験者合格率をまとめたのが、以下の表です。

法科大学院 今年の
受験者合格率
昨年の
受験者合格率
前年比
東大
既修
68.6% 63.0% +5.6
京大
既修
63.1% 64.4% -1.3
一橋
既修
65.0% 61.7% +3.3
慶応
既修
58.5% 58.7% -0.2

 意外なことに、上位ロー既修は、予備組ほど合格率は上がっていないことがわかります。むしろ、京大や慶応は、合格率が下がっている。その結果、今年は、72.5%の合格率を誇った予備組が、上位ロー既修に対しても圧倒的な差を見せています。このことの意外感は、昨年の数字と比較すると、実感しやすいでしょう。以下は、昨年の予備組と上位ロー既修の合格率等をまとめたものです。

昨年(平成28年)
  受験者数 最終
合格者数
受験者
合格率
予備 382 235 61.5
東大
既修
165 104 63.0
京大
既修
149 96 64.4
一橋
既修
81 50 61.7
慶応
既修
211 124 58.7

 昨年は、東大、京大、一橋の既修は、予備組より高い合格率だったのです。それが、今年は完敗している。このように、今年の予備組の合格率の急上昇は、「予備組の方が実力者が多いので、全体の論文合格率の上昇幅以上に合格率が上昇しても不思議ではない。」ということでは、説明できません。単に、全体の論文合格率が上昇したという原因以外に、予備組に固有の要因が何かある

4.ここで、予備組の合格率を左右する予備組固有の要因を確認しておきましょう。昨年の記事で、予備組の合格率が低下傾向を続けるだろうと予測した根拠は、論文特有の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則が、予備組にも妥当すること滞留者の増加傾向が続いていることにありました(「平成28年司法試験の結果について(10)」)。ここでは、後者の滞留者の推移を確認してみます。以下は、各年の受験者数から合格者数を差し引いた滞留者数の推移です(※)。
 ※ 厳密には、受験回数制限による失権者を差し引く必要がありますが、現時点では今年の失権者数が不明なため、差し当たり単純な数字を用いています。


(平成)
滞留者数 前年比
24 27 ---
25 47 +20
26 81 +34
27 115 +34
28 147 +32
29 110 -37

 今年は、滞留者の数が一転して減少に転じたことがわかります。この原因は、前記2で説明した受験者数の増加幅の縮小と、予備組の合格率の急上昇による合格者数の増加にあります。もっとも、注意すべきは、これは来年受験するであろう滞留者の数が減ったということを意味するにとどまるということです。今年の結果は、昨年の滞留者の増減が影響します。そして、昨年は、滞留者の増加傾向が続いていた。ですから、今年の予備組の合格率の急上昇の原因とはなり得ません。では、上記に挙げた根拠のうちの前者、すなわち、論文特有の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則が、予備組にも妥当するという部分に、何か変化があったのか。次回は、この点を意識しながら、予備組のデータを見ていきたいと思います。

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2017年09月25日

平成29年司法試験の結果について(7)

1.以下は、論文の合計得点、公法系、民事系、刑事系についての順位と得点の対応をまとめたものです。得点欄の括弧内の数字は、1科目当たりに換算したものです(小数点以下切捨て)。

合計得点
順位 得点
1位 624点
(78点)
100位 511点
(63点)
500位 450点
(56点)
1000位 414点
(51点)
1500位 387点
(48点)
2000位 363点
(45点)
2500位 339点
(42点)
3000位 309点
(38点)
3500位 261点
(32点)

 

公法系
順位 得点
1位 169点
(84点)
100位 134点
(67点)
500位 117点
(58点)
1000位 106点
(53点)
1500位 98点
(49点)
2000位 91点
(45点)
2500位 84点
(42点)
3000位 75点
(37点)
3500位 62点
(31点)

 

民事系
順位 得点
1位 236点
(78点)
100位 199点
(66点)
500位 173点
(57点)
1000位 158点
(52点)
1500位 147点
(49点)
2000位 136点
(45点)
2500位 126点
(42点)
3000位 112点
(37点)
3500位 94点
(31点)

 

刑事系
順位 得点
1位 164点
(82点)
100位 137点
(68点)
500位 119点
(59点)
1000位 107点
(53点)
1500位 99点
(49点)
2000位 91点
(45点)
2500位 83点
(41点)
3000位 73点
(36点)
3500位 60点
(30点)

 順位と1科目当たりの得点の対応が合計得点や各系別で比べても概ね同じくらいの数字になっているのは、得点調整(採点格差調整)によって、平均点と標準偏差が一定の値に調整されるためです。
 受験生に個別に送付される成績通知には、系別の得点は記載されますが、各科目別の得点は記載されず、順位ランクのみが記載されます。なぜ、各科目別の得点を記載しないのか。法務省は、当然科目別の得点を把握しているわけですから、技術的にできないということはあり得ません。単純に、「やりたくないから。」というだけです。その背後には、「受験生ごときに教えてやる必要はない。」という発想があるように感じます。

 

司法試験委員会会議第65回議事要旨より引用)

委員 受験者からは,問ごとの得点を教えてほしいという要望が強いようである。

 (中略)

委員 そのような要望は聞いているときりがないことになるのではないだろうか。

委員長(高橋宏志) それを助長することにはなるだろう。問ごと,更には小問ごとに成績を出せなどということになる。

委員 結局は模範解答を示せというような話になりかねない。

委員長(高橋宏志) 法科大学院生も非常に点数を気にしているが,2点,3点の点数の差よりも,できたかできないかは,自分で分かるはずである。反省の材料が欲しいという気持ちは分かるが,2点,3点の差が分かることと反省とは直結していないと思う。

(引用終わり)

 

 「更には小問ごとに成績を出せなどということになる。」という発言がありますが、それがどうして困るのか。普通に考えると、公開したからといって、何ら不都合はないはずです。おそらく、考査委員が恐れているのは、小問ごとの得点が公開され、小問単位で論述内容と得点とを比較されてしまうと、同じような論述内容なのに、得点が随分違う場合があることが明らかになってしまうということでしょう。
 それはともかく、送付されてきた成績通知の順位ランクだけでも、上記の順位と得点の対応表とを照らし合わせれば、ある程度は科目ごとの得点を把握することが可能です。例えば、公法系第1問が1001位から1500位までの順位ランクであったなら、概ね49点から53点までの間の点数だったということがわかるわけです。

2.それから、上記の順位と得点との対応は、論文の採点基準における優秀、良好、一応の水準、不良の各区分との関係でも、意味を持ちます。100点満点の場合の各区分と得点との対応は、以下のとおりです(「司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について」)。

優秀 100点~75点
(抜群に優れた答案 95点以上)
良好 74点~58点
一応の水準 57点~42点
不良 41点~0点
(特に不良 5点以下)

 以下は、合計得点、公法系、民事系、刑事系のそれぞれについて、上記の各区分に対応する順位をまとめたものです。

合計得点
成績区分 順位
優秀 1位
良好 2位から378位まで
一応の水準 349位から2549位まで
不良 2550位以下

 

公法系
成績区分 順位
優秀 14位以上
良好 15位から513位まで
一応の水準 514位から2455位まで
不良 2456位以下

 

民事系
成績区分 順位
優秀 10位以上
良好 11位から478位まで
一応の水準 479位から2460位まで
不良 2461位以下

 

刑事系
成績区分 順位
優秀 17位以上
良好 18位から590位まで
一応の水準 591位から2408位まで
不良 2409位以下

 これを見ると、優秀の区分は1桁に近いトップクラスを狙う場合に要求される水準だということがわかるでしょう。1桁に近い上位でないと納得できない、というような人は別にして、普通に合格を考えている人にとっては、優秀という区分はほとんど関係のない世界です。
 良好の区分をみると、概ね500番より上を狙う場合に必要となる水準であることがわかります。500番より上の上位で受かりたい、という人にとっては、このレベルをクリアする必要があるのでしょうが、とにかく合格したい、という人にとっては、やはりそれほど関係のない領域です。当サイトが、基本論点について、規範の明示と事実の摘示をしっかりやっていれば500番くらいは取れる、と繰り返し説明しているのは、通常はこれを守るだけで一応の水準の上位となり、場合によっては良好の領域にまで入ってしまうことが多いからです。逆にいえば、500番にも届かない場合には、基本論点を落としているか、規範を明示できていないか、事実の摘示ができていない、ということです。
 一応の水準は、概ね500番から2500番までの間の順位です。ここで、合否が分かれます。不良の区分は、はっきりした不合格答案です。
 以前の記事(「平成29年司法試験の結果について(5)」)でも触れましたが、採点実感等に関する意見を読む際には、上記のことを念頭に置く必要があるのです。自分が500番より上を狙っているのであれば、「良好に該当する答案の例は~」とされている部分まで注目する必要があります。単に合格したい、というのであれば、一応の水準について言及されている部分だけに注目すれば足りる。そして、このことは、出題趣旨との関係でも、意識すべきです。出題趣旨で多くの文字数を割いて説明してあることの多くは、優秀・良好に関する部分です。優秀・良好に関する部分は、普通の受験生にはわかりにくい応用的な部分を含むので、詳細に説明をする必要があるからです。これに対し、一応の水準に関する部分は、当たり前すぎるので、ほとんどの場合、省略されている。当たり前すぎる判例の規範を明示すること、それに当てはまる事実を問題文から答案に書き写すこと。こういったことは、わざわざ出題趣旨に書いても仕方がないと考えられているわけですね。だから、出題趣旨をただ漫然と読んでも、合格レベルというものは、見えてこないのです。「俺は大体出題趣旨と同じようなことを書いたのに、ひどい点数だったぞ。」という人は、規範を明示していたか、事実を答案に書き写していたか、再度チェックすべきでしょう。もっとも、最近では、重要な判例の規範については、わざわざその内容を出題趣旨で引用している場合も増えてきました。あまりに規範を答案に明示しない人が多いので、このような対応をしているのでしょう。こうしたものは、特に合否を分ける重要な規範であることが多いので、答案に明示できるようになっておく必要があります。こういったことは、出題趣旨の各部分が、採点実感等に関する意見でどの区分に関するものとして整理されているかを確認すると、ある程度わかるようになります。出題趣旨を読む際にも、採点実感等に関する意見と対照する必要があるのです。

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司法試験平成25年判例論証穴埋問題集
司法試験平成25年判例論証集
司法試験定義趣旨論証集(行政法)

  【最新ニュース・新刊書籍紹介】
元修習生、熊本も敗訴 給費制廃止訴訟
給費制廃止巡る訴訟、元司法修習生側が敗訴 6例目、いずれも敗訴 熊本地裁
伊藤真が教える司法試験予備試験の合格法
19歳巡査の「実名・顔写真」公開捜査、少年法に反しない? 警官射殺後、銃を持ったまま逃走
監護者性交の罪に問われた父親の初公判、起訴内容認める
司法試験&予備試験 平成29年 論文過去問 再現答案から出題趣旨を読み解く。
最高裁 再雇用賃下げ、初判断へ 原告「正社員と同じ仕事」
賃金格差、最高裁が6月判決 正社員と非正規 
現役弁護士が司法試験を解いてみた: AI時代にこれでいいのか (GENJINブックレット)
「ロイター記者逮捕はワナ」警官が法廷証言 ミャンマー
ロイター記者逮捕は「わな」=ミャンマー警察高官証言
行政法研究【第23号】
金大が筑波大と法科大学院で連携 社会人受け皿強化
車塗装脱色の容疑女性に無罪判決 岡山地裁「目撃情報信用できず」
はじめての行政法 第4版 (有斐閣アルマ > Basic)
起訴された幹部らの保釈ならず 関係者「否認の見せしめ」 検察側「証拠隠滅の恐れ」
現役弁護士が手がけるAI契約書レビューサービス「AI-CON」正式公開、ランサーズとも連携
法学入門講座II 行政法
「ブロッキングの前にやるべきことある」 ISPや弁護士が考える「海賊版サイト対策」とは
プロバイダー協会「全く知らなかった」 海賊版サイトへのアクセス遮断めぐって緊急シンポジウム
行政情報の法理論 (九州大学法学叢書 5)
オウム真理教 移送「精神的ダメージ」 死刑囚、接見弁護士に心情
安田好弘弁護士が会見(全文1)政権批判の対抗措置としての死刑執行を危惧
行政関係判例解説〈平成28年〉
最高裁「通信原価公開せよ」公共性強調…料金引き下げの後押しとなるか(韓国)
米最高裁、ネット販売への売上税課税で17日に公判
基本行政法 第3版
他州購入の酒類持ち込み禁止、憲法違反にあたらず=加最高裁が判断
資格スクエアのスタッフに聞く ダブルスクール両立の極意
資格取得のeラーニング「通勤講座」に“勉強仲間”SNSオープン(KIYOラーニング)
法学セミナー 2018年 05 月号
五反田駅近くに「コインスペース」 品川エリア初出店、勉強・仕事に対応
法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会第10回会議議事録等
違憲審査基準ーーアメリカ憲法判例の現在
ブラジル人弁護士、難関越え誕生へ 出稼ぎ母子家庭・言葉 負けず猛勉強
日系3世ブラジル人弁護士誕生へ 出稼ぎ母子家庭から猛勉強 「外国人支えたい」
比較の眼でみる憲法
「倍返しだ」「同情するならカネをくれ」は著作物?
大阪・門真の4人殺傷 懲役30年 「統合失調症影響」 地裁判決
憲法判例評論
「なぜパパが」疑問晴れず…極刑回避に遺族悔しさにじませ 大阪・門真4人死傷
「たった一人でも、多数決に勝てる。それが裁判」 夫婦別姓訴訟の作花知志弁護士が憲法に問い続ける理由
憲法判例 第8版
ワンセグ受信料訴訟、NHKが逆転勝訴。携帯電話は受信機の「設置」に該当 放送法の改正を求めたい
殺人ロボット「とにかく禁止」は短絡的?「敵味方の区別難しい」現代戦争での論点
「自己決定権」の構造
インド最高裁、他宗教間の結婚支持する決定
16歳で死刑判決のパキスタン女性、20年ぶり釈放
判例トレーニング憲法
重病英男児の生命維持、最高裁が反対もローマ法王は支持
平成30年司法試験予備試験の試験場
司法試験 論文過去問答案パーフェクトぶんせき本〈平成29年度版〉
【東京】電話/土曜相談OK!繁忙期の方、必見!短時間で相談できる個別相談会
【東京】土曜日開催!平日多忙な方向け個別相談会
AI時代の食える弁護士 週刊エコノミストebooks
法科大学院生の皆さん『国家公務員』という未来、考えてみませんか?(人事院パンフレット)
専門職大学院設置基準の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメント(意見公募手続)の結果について
司法の現場で働きたい!――弁護士・裁判官・検察官 (岩波ジュニア新書)
2017(平成29)年度「法科大学院認証評価」の結果について
「法科大学院評価基準-解説」,「認証評価事業基本規則」の改定及び「自己点検・評価委員会運営細則」の制定についてのお知らせ
法律英単語 BASIC
明治大学が法科大学院を改革、司法試験の合格率向上目指す
戦後10例目の違憲判決をたった一人で勝ち取った異才、作花知志弁護士の「思考法」
ニューヨーク州弁護士が教える 英文契約書の基礎
海賊版サイトのブロッキング問題が物議…既に実施している「児童ポルノ」との違いは
法科大学院 制度を大胆に見直す時期だ
国際弁護士が教える海外進出やっていいこと、ダメなこと
年間所得200万円も…弁護士はもはや負け組?
司法試験委員会 第138回会議(平成30年1月29日)
エンターテックブック クラブカルチャーの未来と風営法改正 法改正から生まれた夜の価値
AI弁護士が残業代について解説!? 残業代相談チャットボット「六法あいこ」4月4日より提供開始のお知らせ
米警察、監視システムにAI導入も 顔認証を瞬時に
難しい依頼者と出会った法律家へ -パーソナリティ障害の理解と支援-
性的指向、第三者の暴露禁止 国立市
韓国初のAI弁護士、法律事務所に“就職”…「弁護士70%が路頭に迷うことに」
検証 検察庁の近現代史 (光文社新書)
鳥取の強殺、逆転無罪見直しか 6月に最高裁弁論
鳥取のホテル支配人殺人事件 逆転無罪を見直す可能性
新生検察官論―国民の司法参加と検察官の役割
英国でウーバーに勝訴の元ドライバーが語る「戦い抜く決意」
裁判所 増員こそ必要
罪種別・事例中心 現行犯人逮捕手続書・緊急逮捕手続書・被害届作成ハンドブック
国際法より国内法を優先?「国内法優先イニシアチブ」とは(スイス)
関電の戸別訪問「不当な侵害行為」 送電線工事、不安視の署名基に
ひどい捜査 検察が会社を踏み潰した (講談社+α文庫)
JCBトッピング保険に「弁護士費用サポートプラン」を新たにリリース
JPBAが袴田さん支援緊急アクション「検察はタオルを投げろ!」立ち上げ
裁判官の視点 民事裁判と専門訴訟
交通死亡事故で元少年に無罪判決 福岡地裁、見えなかった可能性指摘
「警官が記憶整えた可能性」暴行罪で2審も無罪
憲法学からみた最高裁判所裁判官 70年の軌跡
裁判員裁判で審理最長の207日…地裁姫路支部
両親殺害の兄弟、刑務所で再会 同一区画に収容 米
日本の裁判官論
言ってはいけない、弁護士会の闇
国立大学の運営費交付金、39校増額、46校減額に
司法試験論文過去問答案パーフェクトぶんせき本 平成29年度版
法政大の法科大学院など「不適合」と評価
研修、法律講義で教育協定 九大法科大学院と福岡少年院
司法試験・予備試験 伊藤真の速習短答過去問 刑事訴訟法
死刑廃止は人権保護にあらず、制度の意義を元裁判官に聞く
高裁がミス、審理やり直し 判決資格ない裁判官、署名
別の裁判官が判決文に署名…控訴審判決を破棄
判例トレーニング憲法
最高裁 定年後の再雇用 賃金75%減は違法
1票の格差判決 国会対応を評価 最高裁、統一判断へ 
新基本法コンメンタール 刑事訴訟法 (別冊法学セミナー NO.253)
東京・高3殺害 無期懲役確定へ 最高裁・上告棄却
大阪の裁判所で所持品検査が始まったって?
ケースブック刑事訴訟法 第5版
裁判所でエックス線検査 仙台、切り付け事件受け
AIを用いて法務の仕事をスマートに——弁護士起業家が立ち上げたLegalForceが8000万円を調達
目で見る刑事訴訟法教材 第3版
児童虐待 弁護士が助言…小松市と協定
企業、役員を対象とする日本版司法取引――「攻め」と「守り」が制度の肝
刑事訴訟法 第2版 (LEGAL QUEST)
商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案
民事執行法の改正に関する中間試案(平成29年9月8日)
民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

刑事訴訟法等の一部を改正する法律について
法曹養成制度関係閣僚会議
民法の一部を改正する法律案
法曹養成制度改革の推進について(PDF)
法曹養成制度改革推進会議
法曹養成制度改革顧問会議
平成30年司法試験予備試験の実施について
平成30年司法試験の実施について
司法試験考査委員の不適切行為に関する通報窓口

  【司法研修所教材・講義案・調査官解説等】
事件記録教材 法科大学院教材
調査官解説
事例で考える民事事実認定
プラクティス刑事裁判
プロシーディングス刑事裁判
検察講義案 平成24年版
新問題研究要件事実
紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造 改訂
刑事第一審公判手続の概要
刑事判決書起案の手引
民事判決起案の手引
民事訴訟第一審手続の解説
情況証拠の観点から見た事実認定
民事訴訟における要件事実 第2巻
民事訴訟における要件事実 増補 第1巻
書記官研修講義案等