2017年02月28日

平成29年司法試験の出願者数について(2)

1.今回は、明らかになった出願者数の速報値から、今年の司法試験についてわかることを考えてみます。以下は、直近5年の出願者数、受験者数等をまとめたものです。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
25 10315 7653 74.1%
26 9255 8015 86.6%
27 9072 8016 88.3%
28 7730 6899 89.2%
29 6716 ??? ???

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
25 5259 68.7%
26 5080 63.3%
27 5308 66.2%
28 4621 66.9%
29 ??? ???

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
25 2049 38.9% 26.7%
26 1810 35.6% 22.5%
27 1850 34.8% 23.0%
28 1583 34.2% 22.9%
29 ??? ??? ???

2.まず、受験者数の予測です。これは、出願者数に受験率を乗じることで、算出できます。受験率は、受験回数制限が緩和されて以降、概ね88%、89%程度で推移しています。ここでは、受験率を89%と仮定して、試算しましょう。そうすると、

 6716×0.89≒5977

 受験者数は、5977人と推計できます。概ね6000人前後で、昨年より900人程度減少するという計算になります。

3.次に、短答合格者数です。当サイトでは、現在の短答の合格点は、以下のようなルールによって決まっているのではないか、と考えています。

 

(「平成28年司法試験短答式試験の結果について(1)」より引用。太字強調は現在の筆者による。)

 従来、短答式試験は7科目350点満点で、その6割である210点が下限の合格点。それで合格者数が多すぎるようなら、5点刻みで上方修正する。これが、7科目時代の合格点の決まり方でした。
 昨年から、短答式試験の試験科目は憲民刑の3科目175点満点になりました。3科目になった場合、合格点はどのように決まるのか。当サイトの仮説は、満点(175点)の6割5分である113.75の小数点を切り上げた114点が基本的な合格点。それで合格者数が多すぎたり、少なすぎたりするようなら微修正する、というものです(「平成27年司法試験短答式試験の結果について(1)」)。

(引用終わり)

 

 直近の数字をみる限り、合格率66%というのが、居心地の良い数字のようです。ちょうど、下位3分の1を落とす、という感じになっていることが、そう感じさせる理由なのでしょう。これより高かったり、低かったりするようなら、微修正をして、66%に近づけるのではないか。ここでは、差し当たりそのように考えてみましょう。そこで、今年も短答の合格率(対受験者)が66%となると仮定すると、

 5977×0.66≒3944

 短答合格者は、3944人と推計できます。概ね4000人前後ということですね。
 合格率を一定にして試算していますから、合格者数が4000人前後であれば、短答の難易度は、それほど変わらないということになります。ただ、初回受験者は、気を付ける必要があるでしょう。短答は、受験回数が増えると、受かりやすくなる、という傾向があるからです。以下は、平成28年の受験回数別の短答合格率(受験者ベース)です。

受験回数 短答合格率
(対受験者)
1回 63.1%
2回 63.4%
3回 62.4%
4回 71.5%
5回 83.1%

 平成28年の特徴は、1回目から3回目までがあまり差がなく、むしろ3回目は少し合格率が落ちている一方で、4回目、5回目の合格率が顕著に高くなっていることです。4回目、5回目の短答合格率が顕著に高いことは、受験回数制限が緩和されて以降、確立した傾向となっています。逆にいえば、初回受験者は、短答を甘くみていると、やられてしまいやすい、ということです。肢別本に代表される肢別の問題集を全肢3回連続間違えずに正解できる、というのが1つの目安ですが、そのレベルまで早い段階で高めておく必要があります。短答は、勉強時間さえ確保すれば、ダイレクトに得点に結び付けることができますから、手抜きをせずにやっておくべきです。

4.さて、論文です。ここは、1500人の下限が破られるか、というのが、ポイントになります。

 

(「法曹養成制度改革の更なる推進について」(平成27年6月30日法曹養成制度改革推進会議決定)より引用、太字強調は筆者)

  新たに養成し、輩出される法曹の規模は、司法試験合格者数でいえば、質・量ともに豊かな法曹を養成するために導入された現行の法曹養成制度の下でこれまで直近でも1,800人程度の有為な人材が輩出されてきた現状を踏まえ、当面、これより規模が縮小するとしても、1,500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め、更にはこれにとどまることなく、関係者各々が最善を尽くし、社会の法的需要に応えるために、今後もより多くの質の高い法曹が輩出され、活躍する状況になることを目指すべきである

(引用終わり)

 

 論文合格者数は、昨年の段階で、既に1583人まで減少しています。上記は飽くまで「されるよう…目指す」ものに過ぎませんし、実際に合格者数を決めるのは、司法試験委員会です。これまでも、司法試験委員会は、政府の合格者数の目安を無視してきました。ですから、1500人が守られる保証は、どこにもないのです。したがって、現時点では、合格者数がどうなるのか、予測が難しいといえます。ここでは、いくつかのケースを想定して考えてみましょう。
 まず、下限が守られ、1500人だった場合です。この場合、論文の短答合格者ベースの合格率は、

 1500÷3944≒38.0%

となります。これは、直近でみると、平成25年に次ぐ高めの数字です。やや高すぎるという印象を持ちますね。このことは、1500人の下限が破られそうだと感じさせます。
 次に、1000人だった場合を考えてみましょう。これは、おそらく想定できる最悪の数字でしょう。直感的な予想に過ぎませんが、さすがに1000人を割ることはない、という感覚は、現段階で多くの人が共有しているところだろうと思います。この場合、論文の短答合格者ベースの合格率は、

 1000÷3944≒25.3%

となります。対受験者の合格率は、16.7%。これは、新司法試験では過去に例のない極端に低い数字です。合格率でみても、さすがにこれはない、という印象を持ちます。
 最後に、当サイトの仮説に基づく推計をしてみましょう。当サイトの仮説は、「司法試験委員会は、累積合格率7割が達成できる単年度合格率である23%を意識して、最終合格者数を決めている。」というものでした(「平成28年司法試験の結果について(3)」)。そこで、今年の受験者ベースの論文合格率が23%となる合格者数を考えると、

 5977×0.23≒1374

 論文合格者数は、1374人ということになります。感覚的にも、ありそうな数字だと感じさせます。この場合、短答合格者ベースの論文合格率は、

 1374÷3944≒34.8%

となります。これは、平成27年、平成28年とほぼ同水準です。これより合格者数が多ければ昨年より易しく、これより合格者数が少なければ昨年より厳しい。そのような感覚を持っておけばよいのだろうと思います。最後に、上記の数字をまとめておきましょう。

出願者数 受験者数 受験率
(対出願)
24 11265 8387 74.4%
25 10315 7653 74.1%
26 9255 8015 86.6%
27 9072 8016 88.3%
28 7730 6899 89.2%
29 6716 5977? 89%?

 

短答
合格者数
短答
合格率
(対受験者)
24 5339 63.6%
25 5259 68.7%
26 5080 63.3%
27 5308 66.2%
28 4621 66.9%
29 3944? 66%?

 

論文
合格者数
論文
合格率
(対短答)
論文
合格率
(対受験者)
24 2102 39.3% 25.0%
25 2049 38.9% 26.7%
26 1810 35.6% 22.5%
27 1850 34.8% 23.0%
28 1583 34.2% 22.9%
29 1500?
1000?
1374?
38.0%?
25.3%?
34.8%?
25.0%?
16.7%?
23%?

5.仮に、当サイトの仮説に基づく試算どおりの結果になると、合格者数が1500人を割ってしまうので、合格者数1500人を前提に入学定員2500人を想定していた文科省は困るのか。それは実はそうではない、ということは、以前の記事(「平成28年司法試験の結果について(3)」)で説明したとおりです。

posted by studyweb5 at 15:58| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする

2017年02月27日のtweet








posted by studyweb5 at 00:01| ツイッターまとめ | 更新情報をチェックする

2017年02月27日

2017年02月26日のtweet






posted by studyweb5 at 00:01| ツイッターまとめ | 更新情報をチェックする


  【当サイト作成の電子書籍一覧】
司法試験平成28年最新判例ノート
平成29年司法試験のための平成28年刑訴法改正の解説
司法試験定義趣旨論証集刑訴法(逐次改頁版)
司法試験定義趣旨論証集刑訴法(通常表示版)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(民法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(民法)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(行政法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(行政法)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(憲法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(憲法)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(会社法)
司法試験定義趣旨論証集(会社法)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(物権)
司法試験定義趣旨論証集(物権)
司法試験平成26年最新判例ノート
司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(民法総則)
司法試験定義趣旨論証集(民法総則)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(刑法各論)
司法試験定義趣旨論証集(刑法各論)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(刑法総論)
司法試験定義趣旨論証集(刑法総論)
司法試験平成25年判例肢別問題集
司法試験平成25年判例論証穴埋問題集
司法試験平成25年判例論証集
司法試験定義趣旨論証集(行政法)

  【最新ニュース・新刊書籍紹介】
最高裁長官に大谷氏を正式決定
最高裁判事で初の旧姓使用へ 来月就任の宮崎氏「当然」
法学セミナー 2018年 01 月号
取り調べ録音・録画「間違った印象与えるおそれも」
「平成30年司法試験用法文」印刷製本等業務の請負一式
判例法理から読み解く 企業間取引訴訟
第71期司法修習生に対する合同就職説明会のご案内(神奈川県弁護士会)
NHK、最高裁判決を受信料徴収の「錦の御旗にしない」「公平負担の徹底に努めたい」 上田良一会長会見詳報
裁判官! 当職そこが知りたかったのです。 -民事訴訟がはかどる本-
NHK訴訟 受信料、安易な徴収歯止め 制度議論は途上 (1/3)
NHK判決で「テレビ局離れ」が進む
国際裁判管轄の理論と実務-新設規定をめぐる裁判例・学説の検討と解釈-
NHK「受信料支払い拒否裁判」は時代錯誤も甚だしい
受信料訴訟、大きなアドバンテージが認められたNHKとその責任
主文例からみた請求の趣旨記載例集
NHK受信料判決、弁護士出身の裁判官1人が反対意見
「NHK受信料制度は合憲」最高裁が判決、支払い強制「立法裁量として許容される」
判例にみる 債務不存在確認の実務
「調書に誤り」差し戻し審で有罪判決 裁判長は問題調書について言及せず 大阪地裁
赤根国際司法協力担当大使兼最高検察庁検事の国際刑事裁判所裁判官当選について(外務大臣談話)
司法試験・予備試験 スタンダード100 (6) 民事訴訟法 2018年 (司法試験・予備試験 論文合格答案集)
「障害の影響限定的」元名大生控訴審で検察側鑑定医 
タクシーで暴れた弁護士、罰金30万円略式命令
司法試験・予備試験 伊藤真の速習短答過去問 民事訴訟法
名張毒ブドウ酒事件、再審請求棄却を決定 名古屋高裁
出廷被告のブラジャー禁止は「羞恥心を侵害する行為で人権侵害」と弁護士会
民事書記官事務の解説―第一審訴訟記録に基づいて 記録編
「アディーレは弁護士ムラの掟を踏みにじった」懲戒処分の舞台裏
アディーレが業務再開 2カ月の処分期間終える 
民事書記官事務の解説―第一審訴訟記録に基づいて 解説編
アディーレが業務再開 弁護士退職、一部は開けず
「出血量、自白と合わず」栃木小1殺害、弁護側証人
法学六法'18
覚醒剤所持の男が弁護士会館に逃走後、逮捕 弁護士会「避難場所との認識は不本意」
弁護士に自動的に付与した税理士資格、規定削除の改正法が可決(韓国)
民事訴訟判例 読み方の基本 The Fundamentals of Judicial Precedents on Civil Procedure
米、入国規制措置を施行 北朝鮮・イランなど8カ国 
米入国制限、暫定差し止め無効 連邦最高裁が判断 
裁判官はこう考える 弁護士はこう実践する 民事裁判手続
性犯罪の新判断 「社会の変化」と最高裁
強制わいせつ判例変更…「ふんぎりが悪い判決」「境目がわからない」弁護側が批判
はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割
強制わいせつ、性的意図は不要…最高裁判例変更
強制わいせつ「性的意図」不要 最高裁 47年ぶり判例変更
かんたん会社法 機関・形態編
強制わいせつ「性的意図」は不要 最高裁大法廷、約半世紀ぶりに判例変更
強制わいせつ罪、成立に「性的意図」不要 最高裁が判例変更
株式会社法 第7版(江頭憲治郎)
司法試験合格後の身辺調査について
【東京】≪法科大学院修了生対象≫2017年最後の個別相談会
【大阪】≪70期司法修習生対象≫就職先が決まっていない方の為の個別相談会
女性殺害元米軍属に無期、殺意を認定…那覇地裁判決
図解 会社法 平成29年版
旧優生保護法 不妊手術強制、初の国提訴「尊厳を侵害」
総務・法務担当者のための会社法入門
松橋事件、検察が特別抗告を検討 再審開始決定受け
松橋事件、福岡高裁も再審認める 85年の熊本の殺人
取引ステップで考える実践的M&A入門
所有者不明の土地対策 納税者情報活用へ 国交省
法科大学院等特別委員会(第83回) 配付資料
事例でみる 事業承継の実務-士業間連携と対応のポイント-
司法試験委員会 第135回会議(平成29年9月11日)
法制審議会民法(相続関係)部会第22回会議(平成29年6月20日) 議事録等
会社法のファイナンスとM&A
陛下退位 19年4月30日 新天皇は5月1日即位、改元
皇室会議、採決がない初のケース 25年ぶりの開催
企業法とコンプライアンス 第3版
トップの追及、高いハードル 笹子トンネル事故書類送検 
ヘイトスピーチで在特会の敗訴確定 最高裁、上告退ける
概説 労働市場法
殺傷力高い銃禁止の州法維持=「違憲」主張退ける―米最高裁
新潟水俣病、9人全員の患者認定命令 東京高裁 1審敗訴の2人も
商法判例集 第7版
新潟水俣病控訴審判決 全員救済に歓喜の輪 支援30年、弁護士「よかった」
長崎「被爆体験者」訴訟 大半の敗訴確定へ
取締役・取締役会制度
法科大学院入学、未修者3割枠撤廃へ 志願者が激減
変貌する法科大学院と弁護士過剰社会
「ネット中立性」の終焉は、インターネットにどんな不利益をもたらすか
誰も「自動運転」を正確に定義できない──自動運転機能の多様化が生む混乱
ジュリスト 2017年 12月号
司法修習生の給付金復活へ 「不公平」との声も
東京地検、「宿直勤務者」が2つの仰天不祥事
法学教室 2017年 12 月号
勾留・釈放取り違え 東京地検、身柄取り扱いミス2件
うるまの女性殺害、元米軍属に無期懲役を求刑 那覇地裁
受験新報 2018年 01 月号
民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

刑事訴訟法等の一部を改正する法律について
いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について(PDF)
法曹養成制度関係閣僚会議
民法(債権関係)の改正に関する要綱案
民法の一部を改正する法律案
法曹養成制度改革の推進について(PDF)
法曹養成制度改革推進会議
法曹養成制度改革顧問会議
平成29年司法試験予備試験の結果について
平成30年司法試験の実施について
司法試験考査委員の不適切行為に関する通報窓口

  【司法研修所教材・講義案・調査官解説等】
事件記録教材 法科大学院教材
調査官解説
事例で考える民事事実認定
プラクティス刑事裁判
プロシーディングス刑事裁判
検察講義案 平成24年版
新問題研究要件事実
紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造 改訂
刑事第一審公判手続の概要
刑事判決書起案の手引
民事判決起案の手引
民事訴訟第一審手続の解説
情況証拠の観点から見た事実認定
民事訴訟における要件事実 第2巻
民事訴訟における要件事実 増補 第1巻
書記官研修講義案等