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2016年09月30日

平成28年司法試験の結果について(13)

1.論文には、素点ベースで満点の25%(公法系及び刑事系は50点、民事系は75点、選択は25点。)未満となる科目があると、それだけで不合格になるという、最低ラインがあります(※1)。以下は、論文採点対象者に占める最低ライン未満者の割合等の推移です。全科目平均点の括弧内は、最低ライン未満者を含む数字です。

最低ライン
未満者
割合
前年比 論文試験
全科目
平均点
前年比
18 0.71% --- 404.06 ---
19 2.04% +1.33% 393.91 −10.15
20 5.11% +3.07% 378.21
(372.18)
−15.70
(---)
21 4.68% −0.43% 367.10
(361.85)
−11.11
(−10.33)
22 6.47% +1.79% 353.80
(346.10)
−13.30
(−15.75)
23 6.75% +0.28% 353.05
(344.69)
−0.75
(−1.41)
24 8.54% +1.79% 363.54
(353.12)
+10.49
(+8.43)
25 7.62% −0.92% 361.62
(351.18)
−1.92
(−1.94)
26 13.4% +5.78% 359.16
(344.09)
−2.46
(−7.09)
27 6.78% −6.62 376.51
(365.74)
+17.35
(+21.65)
28 4.54% −2.24 397.67
(389.72)
+21.16
(+23.98)

 最低ライン未満者数の主たる変動要因は、全科目平均点です。全科目平均点が高くなると、最低ライン未満者数は減少し、全科目平均点が低くなれば、最低ライン未満者数は増加する。全体の出来が良いか、悪いかによって、最低ライン未満になる者も増減するということですから、これは直感的にも理解しやすいでしょう。単純な例で確認すると、より具体的に理解できます。表1は、X年とY年で、100点満点の試験を実施した場合の受験生10人の得点の一覧です。

表1 X年 Y年
受験生1 60 70
受験生2 55 65
受験生3 50 60
受験生4 45 55
受験生5 40 50
受験生6 35 45
受験生7 30 40
受験生8 20 30
受験生9 15 25
受験生10 10 20
平均点 36 46
標準偏差 16.24 16.24

 25点を最低ラインとすると、最低ライン未満となる者は、X年は3人ですが、Y年には1人に減少しています。これは、平均点が10点上がったためです。表1では、得点のバラ付きを示す標準偏差には変化がありません。得点のバラ付きに変化がなく、全体の平均点が上昇すれば、そのまま最低ライン未満者は減少するということがわかりました。
 では、平均点に変化がなく、得点のバラ付きが変化するとどうなるか、表2を見て下さい。

表2 X年 Y年
受験生1 60 80
受験生2 55 70
受験生3 50 60
受験生4 45 50
受験生5 40 40
受験生6 35 30
受験生7 30 15
受験生8 20 10
受験生9 15 5
受験生10 10 0
平均点 36 36
標準偏差 16.24 27.00

 X年、Y年共に、平均点は36点で変わりません。しかし、最低ライン未満者は、X年の3人から、Y年は4人に増加しています。これは、得点のバラ付きが広がったためです。得点のバラ付きが拡大するということは、極端に高い点や、極端に低い点を取る人が増える、ということですから、極端に低い点である最低ライン未満を取る人も増える、ということですね。統計的には、得点のバラ付きが広がるということは、標準偏差が大きくなることを意味します。Y年の標準偏差を見ると、X年よりも大きくなっていることが確認できます。このように、得点のバラ付きの変化も、最低ライン未満者数を変動させる要因の1つです。ここで気を付けたいのは、論文の最低ライン未満の判定は、素点ベースで行われる、ということです。採点格差調整(得点調整)後の得点は、必ず標準偏差が100点満点当たり10に調整されます(※2)が、素点段階では、科目ごとに標準偏差は異なります。そのため、素点段階でのバラ付きの変化が、最低ライン未満者数を増減させる要素となるのです。もっとも、全科目平均点の変化と比べると、副次的な要因にとどまるというのが、これまでの経験則です。
 以上のことを理解した上で今年の数字をみると、今年は、全科目平均点が大幅に上昇したので、最低ライン未満者が減少したのだろう、ということで説明が付くことがわかります。

 ※1 もっとも、実際には、最低ラインだけで不合格になることはほとんどありません(「司法試験論文式試験 最低ライン点未満者」の「総合評価の総合点を算出した場合,合格点を超えている者の数」の欄を参照)。最低ラインを下回る科目が1つでもあると、総合評価でも合格点に達しないのが普通なのです。

 ※2 法務省公表資料では、得点調整後の標準偏差の基礎となる変数は、「配点率」とされているだけで、実際の数字は明らかにされていません。しかし、得点調整後の得点分布を元に逆算する方法によって、これが100点満点当たり10に設定されていることがわかっています。

 

2.以下は、直近5年における公法系、民事系、刑事系の最低ライン未満者割合の推移です。

公法 民事 刑事
24 3.74% 0.76% 2.17%
25 2.83% 1.93% 3.09%
26 10.33% 1.69% 1.59%
27 3.46% 2.76% 1.43%
28 1.01% 1.88% 0.73%

 例年、公法系は最低ライン未満者が多い傾向でした。特に、平成26年は異常で、実に受験者の1割以上が、公法系で最低ライン未満となっていたのでした。それが、今年は非常に少なくなっている。これが、今年の最大の特徴です。例の漏洩事件を発端とする考査委員の交代が、その原因となっている可能性はあるでしょう。
 民事系、刑事系も、最低ライン未満者の割合が減少しています。これは、全科目平均点の上昇による自然な結果といえるでしょう。ただ、若干気になるのは、民事系の最低ライン未満者が、公法系、刑事系よりも多いという点です。公法系、刑事系は2科目ですから、2つの科目が極端に悪いと最低ライン未満となります。これに対し、民事系は3科目ですから、3科目すべてが極端に悪くないと、最低ライン未満にはならないのです。このことからすれば、普通は公法系、刑事系よりも、民事系の方が最低ライン未満者は少なくなるはずです。ところが、むしろ、それとは逆の結果になっている。このことから考えられる可能性は、今年は、公法系、刑事系は得点のバラ付きが小さかったが、民事系は得点のバラ付きが大きかった、ということです。

3.これを確認するには、素点ベース、得点調整後ベースの最低ライン未満者数を比較するのが有効です。両者を比較すると、素点段階のバラ付きが大きい(各科目標準偏差10を超えている)か、小さい(各科目標準偏差10を下回っている)かを知ることができるからです。そのことを、簡単な数字で確認しておきましょう。100点満点で試験を行い、受験生10人の素点と、得点調整後の得点を一覧にしたのが、以下の表3です。

表3 素点 調整後
受験生1 80 55.62
受験生2 70 51.71
受験生3 60 47.81
受験生4 55 45.85
受験生5 40 40
受験生6 35 38.04
受験生7 25 34.14
受験生8 20 32.18
受験生9 10 28.28
受験生10 5 26.32
平均点 40 39.99
標準偏差 25.6 10

 最低ラインを25点とすると、素点では3人の最低ライン未満者がいるのに、調整後は1人も最低ライン未満者がいません。これは、素点段階の得点のバラ付きが大きかった(標準偏差が10を超えている)ために、得点調整によって標準偏差を10に抑えられてしまうと、平均点付近まで得点が引き上げられてしまうためです。
 もう1つ、例を挙げましょう。

表4 素点 調整後
受験生1 40 50.4
受験生2 39 47.08
受験生3 38 43.77
受験生4 37 40.46
受験生5 36 37.15
受験生6 35 33.84
受験生7 34 30.53
受験生8 33 27.22
受験生9 32 23.91
受験生10 31 20.59
平均点 35.5 35.49
標準偏差 3.02 10.02

 表4では、表3とは逆に、素点段階では1人もいなかった最低ライン未満者が、調整後には2人生じています。これは、素点段階の得点のバラ付きが小さかった(標準偏差が10より小さい)ために、得点調整によって標準偏差を10に拡大されてしまうと、下位者の得点が引き下げられてしまうためです。このように、得点調整後の点数が最低ラインを下回っていても、素点段階では最低ライン未満とはなっていない、ということはあり得るのです。その結果、成績表に表示される得点は最低ラインを下回っているのに、それだけで不合格とはされず、総合評価の対象となっているという、一見すると不思議な現象が生じます。
 以上のことを理解すると、素点段階の最低ライン未満者数と、得点調整後に最低ライン未満の得点となる者の数の増減を確認することによって、素点段階での得点のバラ付きが、標準偏差10より大きかったのか、小さかったのかを判断することができることがわかります。法務省が公表する最低ライン未満者数は、素点段階の数字です。では、得点調整後の最低ライン未満者数はどうやって確認するか。これは、各科目の得点別人員調を見ればわかります。得点別人員調は、調整後の得点に基づいているからです。このようにして、素点ベース、得点調整後ベースの最低ライン未満者数をまとめたのが、以下の表です。倍率とは、得点調整後の数字が、素点段階の数字の何倍になっているかを示した数字です。

科目 素点 得点調整後 倍率
公法 47 133 2.82
民事 87 129 1.48
刑事 34 160 4.70

 公法系、民事系、刑事系のいずれも、得点調整後の方が数が増えています。これは、上記の例で言えば、表4のパターンだということですね。つまり、素点段階ではバラ付きが小さかった(標準偏差が各科目10より小さかった)ために、得点調整後に下位者の点数が押し下げられて、最低ライン未満になる者が増えたのだ、ということです。その中でも、特に倍率の高い刑事系は、極端に素点のバラ付きが小さかったといえるでしょう。逆に、民事系は、それほど極端ではない。このことは、民事系の最低ライン未満者数が、公法系、刑事系より多かった原因の1つといえるでしょう(※3)。民事系は、公法系、刑事系よりも素点段階での得点のバラ付きが大きかったために、最低ライン未満者が生じやすかった、ということです。

 ※3 厳密には、バラ付きの大小だけでなく、各科目の平均点も要因の1つとなり得ます。得点調整によって、各科目の平均点が全科目平均点に調整されるからです。今年に関しては、民事系の平均点がやや低めで、公法系、刑事系の平均点が高めだったことも、民事系の最低ライン未満者が公法系、刑事系よりも多かった原因の1つである可能性はあるでしょう。もっとも、今年の全科目平均点の大幅な上昇を考えると、民事系の平均点が低めであったとしても限定的である可能性が高いですから、各科目の平均点の差が決定的な要因であった可能性は低いと思います。

 

4.上記のように、今年は、公法系、民事系、刑事系のいずれも、素点段階のバラ付きが小さかった年でした。従来、公法系だけは素点段階のバラ付きが大きい(各科目の標準偏差が10より大きい)という傾向でした(「平成27年司法試験の結果について(9)」)。公法系だけ、素点段階で大きな差が付いていたということです。それが、今年は、公法系も他の科目と同様に、素点段階で差が付かないようになっている。例の漏洩事件による考査委員交代の影響がありそうです。従来の公法系の傾向が、特定の考査委員の影響力による極端な憲法の採点手法によるものであったとすれば、来年以降も、公法系は他の科目と同様、素点段階で差が付かない採点になる可能性が高いでしょう。
 素点のバラ付きが小さいと、具体的にどのくらい調整後の得点が変動するのか。これは、各科目の最低ラインとなる得点と、得点別人員調の順位を下から見た場合の最低ライン未満者数の順位に相当する得点を比較することで、ある程度把握することが可能です。例えば、公法系では47人の最低ライン未満者がいます。今年の論文の採点対象者は4621人ですから、下から数えて47位は、上から数えると4575位です。そこで、得点別人員調で4575位に相当する得点を見ると、39点ですね。すなわち、得点調整後の40点を取った者は、ギリギリ最低ライン未満とはならないということです。最低ラインの得点は、公法系では50点ですから、素点で50点を取った者は、ギリギリ最低ライン未満とはならない。つまり、素点の50点は、得点調整後の40点に相当するということです。このことは、得点調整によって、概ね10点程度得点が変動していたことを意味します。同様のことを民事系、刑事系で行い、何点程度変動したかをまとめたものが、以下の表です。

科目 得点調整
による
変動幅
公法 10点
民事 6点
刑事 20点

 民事系は6点しか変動していません。これに対し、刑事系は、実に20点も得点が動いています。例えば、今年の刑事系のトップは164点を取っていますが、素点段階では144点程度だった可能性が高いということです。他方、刑事系で10点未満だった者は5人いますが、この5人も、素点段階では30点弱くらいは取っていた可能性が高い。このように、実際に無視できないほどの得点の変動が、採点格差調整(得点調整)によって生じているのです。
 このような現象が生じることを知っておくことは、受験対策上も重要です。素点段階では些細な差に過ぎなかったものが、得点調整を経ると想像以上に大きな差となる。これは、ちょっとしたことが致命傷になり得ることを意味します。誰もが書く規範を1つ明示し忘れたとか、当てはめの事実を1つ落としてしまった。そんな些細なことが、得点調整後には致命的になり得るのです。特に今年は、刑事系でその現象が顕著に生じているはずです。「他の人とほとんど変わらないのに、どうして俺だけこんなに低い点数なんだ。」ということが、普通に起きるのです。再現答案等を比較する際には、こういったことを理解しておく必要があります。

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2016年09月29日のtweet






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2016年09月28日

平成28年司法試験の結果について(12)

1.これまでは、予備組全体の合格率をみていきました。今回は、予備組内部の合格率をみてみましょう。以下は、年代別の受験者合格率です。

年齢 受験者数 合格者数 受験者合格率
20〜24 138 130 94.2%
25〜29 55 40 72.7%
30〜34 39 17 43.5%
35〜39 46 21 45.6%
40〜44 38 23.6%
45〜49 31 22.5%
50以上 39 11 28.2%

 年代別にみると、明暗がはっきり分かれていることがわかります。20代前半は9割を超える圧倒的な合格率。それが、歳を重ねるにつれて、急速に落ちていきます。今年は、50歳以上がやや健闘していますが、大まかにみると、9割以上の20代前半、7割程度の20代後半、4割台の30代、2割台の40代以降、というように、歳を取ると合格率が下がっていく傾向が顕著です。
 この差は、どの段階で生じているのか。短答段階では、予備組は受験者382人中6人しか落ちていません。その6人は、20代前半に2人、20代後半に1人、30代前半に2人、30代後半に1人で、むしろ若手に集中している。40代以降で、短答に落ちた人は、1人もいません。ですから、若手の圧倒的に高い合格率は、専ら論文段階で生じているのです。
 この論文段階での若手圧倒的有利の傾向は、今年の予備組に限ったことではなく、旧司法試験時代から生じていた論文式試験に顕著な特徴です(「平成22年度旧司法試験論文式試験の結果について」)。その背後にある要因を明らかにすることが、論文を攻略するための重要なヒントとなります。

2.若手圧倒的有利の要因の1つは、以前の記事でも説明した「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則との関係です(「平成28年司法試験の結果について(9)」)。不合格者が翌年受験する場合、必ず1つ歳をとります。不合格を繰り返せば、どんどん高齢になっていく。その結果、高齢の受験生の多くが、不合格を繰り返した「極端に受かりにくい者」として滞留し、結果的に、高齢受験者の合格率を下げる。これは、年齢自体が直接の要因として作用するのではなく、不合格を繰り返したことが、年齢に反映されることによって、間接的に表面化しているといえます。
 もう1つは、年齢が直接の要因として作用する要素です。それは、加齢による反射神経と筆力の低下です。論文では、極めて限られた時間で問題文を読み、論点を抽出して、答案に書き切ることが求められます。そのためには、かなり高度の反射神経と、素早く文字を書く筆力が必要です。これが、年齢を重ねると、急速に衰えてくる。これは、現在の司法試験では、想像以上に致命的です。上記の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則とも関係しますが、論点抽出や文字を書く速度が遅いと、規範を明示し、問題文を丁寧に書き写すスタイルでは書き切れなくなります。どうしても、規範を省略したり、問題文を要約するスタイルにならざるを得ない。そうなると、わかっていても、「受かりにくい者」になってしまうのです。この悪循環が、上記のような加齢による急激な合格率低下の要因になっているのだと思います。
 加齢による反射神経や筆力の低下は、ある程度はやむを得ません。とはいえ、50代以降でも2割以上合格しているように、これは克服可能です。30代以降の受験生は、このことを意識した対策をとる必要があるでしょう。文字を早く書く訓練をしたり、事例演習を繰り返して、反射的に論点を抽出できるようにする。法律の知識・理解よりも、「規範の明示と事実の摘示のスタイルを守って時間内に書き切ること」の方が、はるかに合否を左右します。

3.以下は、予備組の職種別の受験者数、合格者数、受験者合格率をまとめたものです。法務省公表の資料で、「公務員」、「教職員」、「会社員」、「法律事務所事務員」、「塾教師」、「自営業」として表示されているカテゴリーは、それらを合計した数字を「有職者」としてまとめて表示し、「その他」のカテゴリーは省略しています。

職種 受験者数 合格者数 受験者
合格率
有職者 107 38 35.5%
法科大学院生 98 86 87.7%
大学生 72 69 95.8%
無職 91 37 35.7%

 法科大学院生・大学生のグループと、有職者・無職のグループに分かれます。前者のグループが、後者のグループより圧倒的に合格率が高い。これは、職種というより、年齢の要素を反映したものと考えてよいでしょう。大学生や法科大学院生のほとんどは20代なので、合格率が高くなっているのです。
 注目したいのは、有職者と無職で合格率にほとんど違いがない、ということです。正社員として勤務していると、勉強をする時間がないので、無職(アルバイトを含む。)の方が有利である、と言われることがあります。しかし、この数字を見る限り、必ずしもそうではない。これは、論文試験が、主として法律の知識・理解ではなく、反射神経や筆力に依存する試験であることによります勉強量は、ほとんど関係がないのです。このことは、受験を考えている社会人にとって、重要な事実でしょう。ただし、短答は勉強量に強く依存しますから、短答の学習をする時間は、最低限確保しなければなりません。
 もう1つ、興味深いのは、法科大学院生より大学生の方が合格率が高いということです。これは、1つには年齢の要素があります。通常、大学生の方がロー生より若いので、反射神経や筆力という点で、ロー生より有利になるというわけです。それだけでなく、ローで教えていることが、司法試験の合格に不要であるばかりか、有害である可能性も示唆しています。ローでは、趣旨や本質から考えることを教えますが、それは論文では書いていられない。端的に規範を明示し、問題文を書き写さないと受からないので、ローで教わったことを書く余裕がないというわけです。その結果、ローに通っていない大学生の方が受かりやすくなってしまう。興味深い現象です。

4.以下は、予備組の最終学歴別の受験者数、合格者数、受験者合格率のうち、「大学在学中」、「法科大学院修了」、「法科大学院在学中」の3つのカテゴリーを抜粋したものです。

学歴 受験者数 合格者数 受験者
合格率
大学
在学中
72 69 95.8%
法科大学院
修了
69 19 27.5%
法科大学院
在学中
98 86 87.7%

 法科大学院修了のカテゴリーだけ、極端に合格率が低いことがわかります。このカテゴリーは、ローを修了した後に受験回数を使い果たし、予備試験に合格して復活した人達が属します(※)。予備試験に合格して敗者復活を果たしても、司法試験で苦戦している、ということです。ここでもまた、論文の「受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則が強力に作用していることがわかります。以前の記事(「平成28年司法試験の結果について(9)」)で説明したとおり、書き方のクセが直らないと、予備試験に合格しても、司法試験で苦戦することになるのです。同じ予備組で、ここまで差が付いているということを、重く受け止める必要があるでしょう。

 ※ 厳密には、ロー在学中に予備に合格し、司法試験を受験したが、不合格になった人が、ローを修了した後に再受験する場合も含みます。

posted by studyweb5 at 05:26| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする

2016年09月26日

平成28年司法試験の結果について(11)

1.前回の記事(「平成28年司法試験の結果について(10)」)でみたとおり、予備組の合格率は毎年下がってきています。これは、ロー生と比較すると、どの程度の水準なのでしょうか。

2.まず、ロー生全体の受験者合格率と比較してみましょう。今年の受験者全体の受験者合格率は、22.9%でした(「平成28年司法試験の結果について(2)」)。もっとも、この数字は、予備組も含まれた数字です。そこで、ロー生に限ってみると、6517人が受験して1348人合格ですから、受験者合格率は、20.6%ということになる。このことからわかるとおり、全体の受験者合格率は、予備組の参入によって、2.3%押し上げられているのです。他方、前回もみたとおり、予備組の受験者合格率は61.5%です。したがって、ロー生全体との比較では、いまだに3倍程度の圧倒的な差があることになります。
 もっとも、短答合格者ベースの論文合格率で比較すると、その差は少し縮まります。今年のロー生全体の短答合格者は4245人で、そのうちの1348人が論文に合格していますから、短答合格者ベースの論文合格率は、31.7%ということになります。これに対し、予備組の短答合格者は376人で、そのうちの235人が合格ですから、予備組の短答合格者ベースの論文合格率は、62.5%です。このように、論文段階に限ってみると、その差は2倍程度に縮まるのです。とはいえ、それでも予備組の方が圧倒的に受かりやすいことには変わりがありません。

3.それでは、上位ローと比較するとどうか。以下は、予備組、東大、京大、一橋、慶応の受験者数、最終合格者数、受験者合格率です。

  受験者数 最終
合格者数
受験者
合格率
予備 382 235 61.5
東大 285 137 48.0
京大 222 105 47.2
一橋 127 63 49.6
慶応 350 155 44.2

 上位ローですら、受験者合格率はいずれも4割台で、5割以上のものはありません。6割強の合格率を保っている予備組は、今でも上位ローを超える合格率を維持しているといえるでしょう。
 もっとも、これを短答合格者ベースの論文合格率で比較すると、少し様相が変わってきます。以下は、予備組、東大、京大、一橋、慶応の短答合格者数、最終合格者数、短答合格者ベースの論文合格率です。

  短答
合格者数
最終
合格者数
論文
合格率
予備 376 235 62.5
東大 222 137 61.7
京大 163 105 64.4
一橋 103 63 61.1
慶応 280 155 55.3

 慶応は少し後れをとっていますが、京大は、予備組の合格率を上回っています東大、一橋も、ほぼ予備組と遜色のない合格率です。このように、論文段階に限ってみれば、予備組は、既に上位ローに追い付かれ、一部では追い抜かれてしまっているのです。
 上位ローは、論文段階では予備組と遜色ないのに、なぜ受験者合格率では大きな差を付けられてしまっているのか。それは、短答段階で大きく差を付けられているからです。確認してみましょう。以下は、予備組、東大、京大、一橋、慶応の受験者数、短答合格者数、短答の受験者合格率です。

  受験者数 短答
合格者数
短答
合格率
予備 382 376 98.4
東大 285 222 77.8
京大 222 163 73.4
一橋 127 103 81.1
慶応 350 280 80.0

 短答は、予備組が圧倒的に強く、上位ローもそれなりに高い合格率ではあるものの、予備組との差は歴然としています。特に、論文で予備を上回っていた京大は、短答で苦戦しています。
 以上のように、上位ローと予備組は、論文段階では既にほとんど差がないが、短答段階での差は、いまだに大きいということができます。このような短答段階での上位ローと予備組の大きな差は、短答を学習する際のポイントを示唆します。以前の記事(「平成28年司法試験の結果について(8)」)でも説明したとおり、短答の学習は、できる限り早い段階で着手しなければならず、それは完全に独学だ、ということです。予備組は、司法試験の一年以上前から、予備合格に向けて短答の学習に着手しますから、ロー生と比べて必然的に早い段階で短答の学習に着手します。そして、ローの講義と関わりなく、完全に独学で学習していく。それが、このような短答での予備組の圧倒的な強さの原動力となっているのでしょう。これに対し、ロー生は、ローの講義の予習などに時間を取られてしまい、なかなか短答の学習に着手できない。また、ローの講義に学習のペースを合わせてしまいがちなので、短答プロパーの知識の習得が後回しになりやすいのです。現在、法科大学院に通っている人は、この点に注意する必要があるでしょう。

4.さらに、上位ローの既修と比較してみましょう。以下は、予備組、東大既修、京大既修、一橋既修、慶応既修の受験者数、最終合格者数、受験者合格率です。

  受験者数 最終
合格者数
受験者
合格率
予備 382 235 61.5
東大
既修
165 104 63.0
京大
既修
149 96 64.4
一橋
既修
81 50 61.7
慶応
既修
211 124 58.7

 既修に限ってみれば、既に東大、京大、一橋は予備を上回っています慶応も、ほぼ遜色のない合格率です。このように、予備組は、既に上位ローの既修とほぼ同水準か、むしろそれ以下のレベルになっているといえます。

5.前回の記事(「平成28年司法試験の結果について(10)」)でみたとおり、予備組の合格率が年々下がってきているのは、2回目以降の滞留者の存在が原因でした。他方で、ロー生の方も、2回目以降の滞留者がいて、その存在が、全体の合格率を下げている。そこで、その要素を排除した1回目受験生同士で対決すると、どうなるか。興味が湧くところです。ただ、残念ながら、現時点では、予備組の受験回数別合格率が明らかではありません。後日、予備組の合格年別の合格率が公表されるでしょうから、その時に、この点を確認してみたいと思います。

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2016年09月25日

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2016年09月24日

平成28年司法試験の結果について(10)

1.ここ数年、司法試験の結果が出るたびに、注目されるのが、予備組の結果です。今年は、予備試験合格の資格で受験した382人中、235人合格。予備組の受験者合格率は、61.5%でした。以下は、予備組が司法試験に参入した平成24年以降の予備試験合格の資格で受験した者の合格率の推移です。


(平成)
受験者数 前年比 合格者数 前年比 受験者
合格率
前年比
24 85 --- 58 --- 68.2% ---
25 167 +82 120 +62 71.8% +3.6
26 244 +77 163 +43 66.8% −5.0
27 301 +57 186 +23 61.7% −5.1
28 382 +81 235 +49 61.5% −0.2

 受験者数、合格者数共に、一貫して増加しています。ただ、その増加幅をみると、今年は傾向に変化があることがわかります。昨年までは、受験者数、合格者数共に、増加幅は縮小傾向にありました。それが、今年は拡大に転じています。これは、予備試験の合格者数、特に論文合格者数の増減幅に対応しています(予備論文合格者数の変動要因については、「平成27年予備試験論文式試験の結果について(1)」参照)。
 一方で、受験者合格率をみると、平成26年以降は、一貫して下落傾向でした。今年も、その傾向自体に変わりはありませんが、その下落幅はわずかです。ほぼ横ばいといってよいでしょう。今年で下げ止まり、来年以降は上昇に転じるのか、来年以降、また下落幅が拡大するのか、これを予測するには、これまで予備組の合格率が下落傾向にあった原因を考える必要があります。それは、当サイトで繰り返し説明している、「論文に受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則です。

2.「論文に受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則は、予備組にも当てはまる法則なのか。同法則が顕著に表れるのは、受験回数別の論文合格率です。予備組に関しては、受験回数別合格率は公表されていません。ただ、類似のデータとして、予備試験に合格した年別の数字は公表されます。予備組が受控えをするというのは、ほとんど考えられませんから、これは受験回数別の数字と考えてよいでしょう。今年は、まだその数字が出ていませんので、参考として、昨年の数字を用いて、 予備合格年別の短答合格者ベースの論文合格率を算出すると、以下のようになっています。予備合格年欄の括弧書きは、受控えがない場合の受験回数です。

予備
合格年
論文合格率
(短答合格者ベース)
26
(1回目)
79.17%
25
(2回目)
42.00%
24
(3回目)
27.50%
23
(4回目)
16.67%

  受験回数が増えるにつれて、顕著に合格率が下がっていることがわかります。これが、「論文に受かりにくい者は、何度受けても受からない」法則の怖さです。予備組も、この法則から逃れることができていません。昨年の短答合格者ベースの論文合格率は、全体で34.8%でした。予備組の3回目以降の論文合格率は、この水準すら下回っています。つまり、予備組であっても、2回不合格になるような「論文に受かりにくい者」は、平均的な論文合格率をも下回ってしまうのです。

3.上記のことからわかるのは、予備組の合格率を低下させる要因は、2回目以降の受験者、すなわち、滞留者の増加にある、ということです。確認してみましょう。以下は、毎年の受験者数から合格者数を差し引いた滞留者数の推移です。


(平成)
滞留者数 前年比
24 27 ---
25 47 +20
26 81 +34
27 115 +34
28 147 +32

 このようにしてみると、滞留者数は一貫して増加傾向にあり、今年はわずかに増加幅が縮まったものの、ほぼ前年と同程度の増加幅を維持していることがわかります。そうだとすると、今後、予備組の合格率が上昇に転じるということは、考えにくいでしょう。予備組の合格率の下落傾向は、今後も続くと考えておいた方がよいと思います。

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