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2015年09月29日

平成27年司法試験の結果について(11)

1.今回は、年齢をみていきます。下記は、短答・論文段階の合格者の平均年齢の推移です。


(平成)
短答
合格者
短答
前年比
論文
合格者
論文
前年比
短答論文
の年齢差
18 29.92 --- 28.87 --- 1.05
19 30.16 +0.24 29.20 +0.33 0.96
20 30.36 +0.20 28.98 −0.22 1.38
21 30.4 +0.04 28.84 −0.14 1.56
22 30.8 +0.4 29.07 +0.23 1.73
23 30.7 −0.1 28.50 −0.57 2.20
24 30.9 +0.2 28.54 +0.04 2.36
25 31.0 +0.1 28.37 −0.17 2.63
26 31.3 +0.3 28.2 −0.17 3.1
27 32.2 +0.9 29.1 +0.9 3.1

 これまで、短答は緩やかに高齢化、論文は、緩やかに若年化していました。今年は、短答・論文共に、ほぼ1歳高齢化しています。これまでと比べると、大幅な高齢化です。この原因は、主に受験回数制限が5年3回から5年5回に緩和されたことにあります。これまで退出を余儀なくされていた4回目の受験生の参入は、受験者層の平均年齢を引き上げます。そして、短答は勉強量を増やすと合格し易くなりますから、4回目の受験生の参入は、短答合格者の平均年齢をダイレクトに引き上げるのです。

2.ただ、論文合格者の平均年齢も、短答と同程度に高齢化したことは、意外です。論文には、「受かりにくい者は何度受けても受からない」法則があるからです。短答では力を発揮する4回目受験生は、論文では受かりにくい。従って、短答の合格者平均年齢を引き上げた4回目受験生が、論文の合格者平均年齢を引き上げることには貢献できない、と考えていたのです(「平成26年司法試験の結果について(12)」)。
 そこで、受験回数別の合格率をみてみると、以下のようになっています。現段階で受験回数別の受験者数がわかっていないので、受験予定者ベースで合格率を算出しています。

受験回数 受験予定者数 合格者数 受験予定者
合格率
1回目 3137 920 29.3%
2回目 2639 505 19.1%
3回目 2169 267 12.3%
4回目 1012 158 15.6%

 飽くまで受験予定者ベースではありますが、4回目の合格率が、3回目より高くなっています意外な結果です。この4回目の受験生の健闘が、論文合格者の平均年齢を引き上げた、と考えてよさそうです。なぜ、4回目の受験生の合格率が上がったのか。今後も、この傾向が続くのか。今のところは、まだわかりません。
 とはいえ、今年も、短答と論文の合格者平均年齢の差は3歳程度あります。すなわち、短答合格から論文合格に至る過程で、3歳若返るという現象が生じているということです。この論文の若年化傾向は、平成19年以降、年々強まってきています。4回目の受験生の健闘があった今年も、過去最大水準の若年化が生じていることは、注意すべきことでしょう。その最大の原因は、前記のとおり、「受かりにくい者は何度受けても受からない」法則です。2回目以降の受験生は、短答では力を発揮するが、論文は受かりにくいため、短答の平均年齢は上がり易く、論文の平均年齢は下がり易い。この傾向は、いまだに続いているということです。

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2015年09月28日のtweet








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2015年09月28日

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2015年09月27日

平成27年司法試験の結果について(10)

1.今回は、選択科目別の合格率をみていきます。まずは、短答の受験者合格率です。

科目 短答
受験者数
短答
合格者数
短答
合格率
倒産 1519 1101 72.4%
租税 531 339 63.8%
経済 887 591 66.6%
知財 1060 676 63.7%
労働 2309 1615 69.9%
環境 522 297 56.8%
国公 124 69 55.6%
国私 985 620 62.9%

 短答は、選択科目に関係なく同じ問題ですから、どの科目を選択したかによって、短答が有利になったり、不利になったりすることはありません。ですから、どの科目を選択したかと、短答合格率の間には、何らの相関性もないだろうと考えるのが普通です。しかし実際には、選択科目別の短答合格率には、毎年顕著な傾向があるのです。
 その1つが、倒産法の合格率が高いということです。今年の数字をみても、倒産法が合格率トップ。しかも、他の科目選択者にかなり差を付けています。このことは、倒産法選択者に実力者が多いことを意味しています。倒産法ほどではありませんが、労働法も似たような傾向です。
 逆に、国際公法は、毎年短答合格率が低いという傾向があります。今年も、国際公法は合格率ワースト1位。全体の短答合格率は66.2%ですから、それよりも10%低い合格率です。このことは、国際公法選択者に実力者が少ないことを意味しています。国際公法ほど顕著ではありませんが、環境法も類似の傾向です。また、新司法試験開始当初は、国際私法も合格率が低い傾向だったのですが、最近では、そうでもなくなってきています

2.次に、論文合格率をみてみましょう。下記は、選択科目別の短答合格者ベースの論文合格率です。

科目 論文採点
対象者数

論文
合格者数

論文
合格率
倒産 1101 388 35.2%
租税 339 115 33.9%
経済 591 222 37.5%
知財 676 225 33.2%
労働 1615 579 35.8%
環境 297 82 27.6%
国公 69 17 24.6%
国私 620 222 35.8%

 新司法試験が始まってしばらくの間は、論文合格率も倒産法が高く、国際公法が低いという傾向で安定していました。ところが、昨年になって、国際私法がトップとなり、今年は経済法がトップ。倒産法は、微差ではありますが、国際私法、労働法に敗れて4位となっています。上位に関しては、これまで安定していた傾向性が、薄れつつある、という感じです。今年に関しては、環境法と国際公法以外の科目は、ほぼ横並びと言ってもよい状態です。
 一方で、安定しているのは、下位の国際公法です。毎年、最下位の合格率。今年も、他と比較するとダントツの低さです。環境法は、年にもよりますが、国際公法と似た傾向で、今年も低い合格率となっています。一方、かつては国際公法と同様に低い合格率だった国際私法は、昨年は逆にトップとなり、今年も上位の合格率となっています。国際私法については、選択者の層に変化があったのかもしれません。

3.選択科目は、基本的には自分が興味・関心のある科目や、自分の通うローで講座の設定されている科目を選べばよいとは思います。ただ、複数の科目で迷っている場合には、上記のことも、一応考慮に入れてもよいでしょう。
 例えば、倒産法は、実力者が選択する傾向が強く、過去の数字では最低ライン未満者が生じ易い科目です。得点調整(採点格差調整)を考えると、実力者の多い科目は、得点調整の結果、他の科目より低い数字に調整される可能性が高い。ですから、他に興味・関心のある科目があるのであれば、倒産法は避けるという考え方は、あり得るでしょう。他方で、倒産法は民法との親和性の高い科目ですから、民法が得意な人は、敢えて倒産法にするという選択も、十分合理性があるように思います。倒産法選択者の短答合格率の高さも、民法が得意な人が選択し易いという側面を表しているといえるでしょう。
 逆に、国際公法は、実力者が少ないので、得点調整で有利になり易いかもしれません。それを狙って、敢えて選択してみるという考え方も、あり得るでしょう。ただ、国際公法は、必須科目との親和性が低いので、学習効率が良いかといえば微妙です。また、受験者数が少なすぎるので、マニアックな人が選択している可能性もあります。そのような人と争うと考えると、必ずしも有利とはいえないかもしれません。さらにいえば、将来的に、選択科目の見直しがされる場合には、最も削除の可能性が高い科目であることも、考えておく必要があると思います。

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2015年09月26日

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2015年09月25日

平成27年司法試験の結果について(9)

1.最低ライン未満者数をみてみます。以下は、論文採点対象者に占める最低ライン未満者の割合等の推移です。全科目平均点のカッコ内は、最低ライン未満者を含む数字です。

最低ライン
未満者
割合
前年比 論文試験
全科目
平均点
前年比
18 0.71% --- 404.06 ---
19 2.04% +1.33% 393.91 −10.15
20 5.11% +3.07% 378.21
(372.18)
−15.70
(---)
21 4.68% −0.43% 367.10
(361.85)
−11.11
(−10.33)
22 6.47% +1.79% 353.80
(346.10)
−13.30
(−15.75)
23 6.75% +0.28% 353.05
(344.69)
−0.75
(−1.41)
24 8.54% +1.79% 363.54
(353.12)
+10.49
(+8.43)
25 7.62% −0.92% 361.62
(351.18)
−1.92
(−1.94)
26 13.4% +5.78% 359.16
(344.09)
−2.46
(−7.09)
27 6.78% −6.62 376.51
(365.74)
+17.35
(+21.65)

 平成24年から昨年までは、異常値が続いていました。特に昨年は、実に受験者の13.4%が、最低ライン未満となって不合格になったのです(※1)。その原因は、主に公法系で極端にバラ付きの大きい採点がされていたことにありました(「平成26年司法試験の結果について(10)」)。

※1 もっとも、最低ライン未満者684人のうち、総合得点を算出すると合格点に達した者は8人しかいません(「司法試験論文式試験 最低ライン点未満者」)。最低ラインだけで不合格になることは、実は極めてまれなことなのです。最低ラインを下回る人は、基本的に総合でも合格点に達しないのが普通です。

 

2.今年は、平成22年、23年頃の数字に落ち着いています。その最も大きな要因は、全科目平均点の大幅な上昇です。全体の得点が上昇すれば、最下層の者の数も減少するということです。

3.最低ライン未満者数に影響を与えるもう1つの要因として、素点のバラ付きの大小があります。バラ付きが大きいと、極端に低い点を取る人が増えますから、最低ライン未満者が増える。昨年は、公法系で、素点のバラ付きが極端に大きかったことが、異常な最低ライン未満者の増加を生じさせていました。今年は、どうでしょうか。
 まずは、直近5年分の科目別最低ライン未満者割合の推移をみてみましょう。なお、選択科目については、当該科目選択者に占める割合を示しています。

  23 24 25 26 27
公法 2.97% 3.74% 2.83% 10.33% 3.46%
民事 2.59% 0.76% 1.93% 1.69% 2.76%
刑事 2.17% 4.98% 3.09% 1.59% 1.43%
倒産 0.63% 2.77% 6.21% 6.12% 2.96%
租税 0.00% 1.85% 0.51% 1.98% 0.37%
経済 2.58% 0.96% 2.19% 0.82% 1.01%
知財 2.59% 1.46% 1.27% 1.12% 1.22%
労働 0.70% 0.72% 1.01% 1.33% 2.07%
環境 1.36% 0.34% 0.37% 0.21% 0.57%
国公 0.00% 1.31% 1.33% 0.00% 2.41%
国私 0.75% 0.76% 1.82% 1.65% 1.01%

 昨年、異常な数値だった公法系が、今年は落ち着いています。とはいえ、平成23年や平成25年と比べると、やや高い数字です。また、民事系が今年は直近5年では最も高くなっています。逆に、刑事系は、直近5年で最低です。
 選択科目の特徴は、倒産法です。例年、倒産法は最低ライン未満者の多い科目でした。それが、今年は3%弱にとどまっています。また、多数派が選択する科目としては最低ライン未満者が少なく、安全と言われていた労働法が、過去最高の2%に上昇しています。今後もこの傾向が続くとすれば、労働法も安全とはいいにくくなります。それから、従来ほとんど最低ライン未満者のいなかった国際公法で、今年は3人の最低ライン未満者が出ています。
 このように、特定の科目に最低ライン未満者が偏らなかったのが、今年の特徴です。

4.上記の最低ライン未満者割合をみる限り、特定の科目で極端にバラ付きの大きい採点はされていなかっただろうという推測が働きます。それをより詳しく確認するには、素点ベース、得点調整後ベースの最低ライン未満者の人数を比較するのが有効です。両者を比較すると、得点調整(採点格差調整)によって、どのような変動があったかを知ることができるからです。下記は、科目別にこれをまとめたものです。素点ベースの数字は実際の最低ライン未満者数を、得点調整後ベースの数字は得点別人員調を基礎にしています。

  素点
ベース
調整後
ベース
公法 184 173
民事 147 212
刑事 76 254
倒産 45 41
租税 15
経済 35
知財 13 18
労働 48 72
環境
国公
国私 10 29

 調整後ベースにすると人数が減るのは、公法系と倒産法だけです。これは、例年の傾向どおりです。これは何を意味するか。得点のバラ付きが大きいと、最低ライン未満の点数になる者が増え、逆に得点のバラ付きが小さいと、平均点付近に得点が集中するため、最低ライン未満の点数になる者は減少する。ですから、調整後ベースにすると人数が減るということは、素点よりも得点調整後の得点の方が、バラ付きが小さいということです。逆に言えば、素点のバラ付きが大きかったことを意味する。より正確にいえば、得点調整後の得点は標準偏差が各科目10となるわけですから、素点の標準偏差が10より大きかったということを意味することになります。
 このことは、具体的な数字で単純な試算をしてみると、よくわかります。10人の受験生について、素点と調整後の点数を100点満点で表したのが、下記の表です。

表1 素点 調整後
受験生1 80 55.62
受験生2 70 51.71
受験生3 60 47.81
受験生4 55 45.85
受験生5 40 40
受験生6 35 38.04
受験生7 25 34.14
受験生8 20 32.18
受験生9 10 28.28
受験生10 5 26.32
平均点 40 39.99
標準偏差 25.6 10

 受験生8、9、10は、素点だと25点未満なので、最低ライン未満者となります。しかし、得点調整後は、25点以上になっている。これが、素点ベースと調整後ベースで生じる最低ライン未満者の数の差です。素点の標準偏差が10を超えているので、このような現象が生じるわけですね。
 とはいえ、今年の公法系と倒産法の調整後の人数の減少は、わずかです。昨年の公法系は、素点ベースで525人だったものが、調整後ベースにすると259人に急減するという、極端な状況でした。それと比べると、今年の公法系は、昨年と比較すると穏やかな採点のされ方、素点ではそこまで極端な差の付かない採点がされていたということがいえると思います。そして、このことが、最低ライン未満者数の減少の要因となっていたということです。
 他方、目立つのは、刑事系です。調整後に人数が急増しています。これは、公法系とは逆に、素点ではほとんど差が付いていないということです。素点では平均点付近に得点が集中していたものが、得点調整によって、得点幅を極端に拡げられてしまっているということです。これも、単純な数字で具体的に見てみましょう。下記は、上記と同様に、10人の受験生について、素点と調整後の点数を100点満点で表したものです。

表2 素点 調整後
受験生1 40 50.4
受験生2 39 47.08
受験生3 38 43.77
受験生4 37 40.46
受験生5 36 37.15
受験生6 35 33.84
受験生7 34 30.53
受験生8 33 27.22
受験生9 32 23.91
受験生10 31 20.59
平均点 35.5 35.49
標準偏差 3.02 10.02

 受験生9と受験生10は、素点では25点以上ですから、最低ライン未満者とはなりません。しかし、得点調整後は、25点を下回っている。これが、素点ベースと調整後ベースで生じる最低ライン未満者の数の差です。素点の標準偏差が10未満だと、このような現象が生じるわけです。
 トップの受験生1と最下位の受験生10は、素点では9点しか差が付いていません。ところが、得点調整後は、30点ほどの差に拡大しています。上記は、極端な数字ですから、実際にはここまで変動しないと思うかもしれません。しかし、実際にも、得点調整によってかなり点数が変動していることがわかっています。これは、最低ライン付近の者の数字をみることで確認できます。今年の刑事系の最低ライン未満者は76人ですから、下から77番目(5232位)の者は、素点で50点以上だったはずです。そこで、得点調整後の下から77番目の者の得点をみると、34点です。素点で50点以上だった点数が、得点調整によって34点になっている得点調整によって16点以上、素点よりも得点が引き下げられたことになるわけです。上記の表では、下位の者の得点が10点程度下がっていますが、今年の刑事系のように極端に平均点に得点が集中する場合には、上記の表に近い変動が、現実に生じているのです(※2)。
 このような場合、考査委員がさほど意識していないような微妙な点数の差が、得点調整によって大きな差になってしまうことがあります。そのため、同じような答案でも、説明の付かない差が生じることがある。そして、はっきり差が付くようなところは、普通に考えると想像し難いほどの大きな差になる。ですから、誰もが普通に書く規範、事実を1つ、2つ落としただけで、致命的な差となってしまうのです。逆に言えば、ほとんどの人が同じようなことを書くので、そのようなところでしか差が付かないということでもあります。今年の刑事系は、「俺は正解筋で書いたのに何でこんなに酷い点なんだ」という人が多いと思います。正解筋で書いていても、誰もが普通に書く規範、事実をぽろぽろ落とせば信じられないほどの下位に沈むのです。こういったことは、これまでも普通にあることです。再現答案を読む場合にも、上記のようなことに気を付けて読むべきでしょう。このようなことは、ほとんどのローの教官、予備校講師は把握していない(しようともしていない)のが現状です。

※2 成績通知に記載されている得点は得点調整後の点数ですから、最低ラインの得点を下回る得点が記載されているのに、最低ライン未満者とはなっていない、ということが生じます。

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