2014年06月30日

2014年06月29日のtweet










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2014年06月29日

司法試験平成26年民事系第3問設問3について

1.平成26年司法試験民事系第3問設問3は、最後のP発言の示す法律構成を検討すればよいということは、容易に読み取ることができます。その法律構成は、「あるいは」の前後で2つに分かれています。

 

問題文より引用、太字強調は筆者)

P:そうしますと,既判力肯定説に立ちつつ,我々に有利な結論を導くには,和解条項第2項及び第5項について生じる既判力を本件後遺障害に基づく損害賠償請求権の主張を遮断しない限度にまで縮小させる,あるいは,本件和解契約は同請求権を対象として締結されたものではないから,訴訟上の和解につき既判力肯定説を採るとしても,本件の和解条項第2項及び第5項につき同請求権を不存在とする趣旨の既判力は生じない,というような議論を考えればよいわけですね。

(引用終わり)

 

2.前者は既判力の縮減の話です。これは、場面は違いますが、平成25年にも出題されたテーマですから、比較的すぐに理解できるでしょう。ただし、民訴法117条の使い方が難しい。ヒントとして挙げられていますが、むしろ問題を難しくしています。
 ポイントは、同条が、なぜ定期金の場合のみ定めているのか
、ということです。同条は、一時金請求の一部認容として定期金賠償を認める判決をする場合の根拠となる等、定期金賠償を命じやすくする条文と言われています。同条が置かれる前の最判昭62・2・6は、一時金請求の一部認容として定期金賠償とすることは許されないとしていました。

 

最判昭62・2・6より引用、太字強調は筆者)

 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の申立をしている場合に、定期金による支払を命ずる判決をすることはできないものと解するのが相当であるから、定期金による支払を命じなかつた原判決は正当である。

(引用終わり)

 

 しかし、現在では、117条により、場合によっては事後に判決を変更できるのだから、一部認容として定期金賠償とすることも許されるとするのが、下級審裁判例の傾向です(東京高判平15・7・29など)。原告(被害者)としては、定期金より一時金の方が良い。定期金だと、加害者の無資力のリスクを被害者が負うことになりやすいだけでなく、加害者との関係を早期に打ち切りたいという被害者の意思にもそぐわないことが多いのです(※1)。上記判例も、その辺りを考慮して、一部認容を否定していたのでしょう。117条の存在によって、直ちに原告の意思に反しないといえるかは、微妙な面がないわけではありません(※2)。理論的には、不法行為時に全損害の履行期が到来している(この点が、継続的不法行為との違いです)はずなのに、なぜそれが定期金賠償となり得るのか。期限の利益の発生根拠が不明であるという困難な問題もあると思います。

※1 長期の低金利が常態化している現在では、原告(被害者)にも、法定利息による過大な中間利息控除を定期金賠償によって回避できるというメリットがあります。また、加害者に定期の賠償を継続させることに懲罰的意味があるとして、原告(被害者)側が定期金賠償を望むこともないわけではありません。
※2 そのため、定期金賠償を認める下級審裁判例は、一時金賠償か定期金賠償かは義務の履行方法に過ぎないから、処分権主義が及ばないという理由を付加することが多いのですが、これについても、本当にそのように言い切れるのか、疑問の余地があるでしょう。

 いずれにせよ、定期金賠償は、一時金賠償よりも妥協的な賠償形式ということは、間違いないでしょう。これが、本問を解く手がかりになります。117条は定期金賠償という妥協的解決が可能であることを前提とした上で、そのような場合には、既判力が制限されることを認めています。妥協的解決方法には厳格な既判力がなじまないという法理を、ここから読み取ることができるわけです。
 117条によって、定期金賠償がやりやすくなったというのは、事後の変更が可能であることを念頭に置いた上で、踏み込んで予測的な賠償額を認定できるという意味も含んでいます。将来的に予測と異なる事情が生じれば、判決の変更をすればよい、ということです。裁判所としては、損害額算定の基礎の予測が難しいと感じた場合には、その部分の請求を棄却するのではなく、定期金賠償とすることによって、将来の変更の余地を残しつつ一応の解決を図ることが可能となるわけです。117条は、定期金賠償にそのような独自の妥協的紛争解決機能を持たせる規定であるということもできるでしょう。
 このことを、同様に妥協的解決である訴訟上の和解にスライドさせて考えるとどうか。それが、求められていたのではないかと思います。すなわち、既判力の客観的範囲の原則を厳格に貫くと、妥協的解決が困難になる場合があることから、訴訟上の和解については既判力の生じる範囲を弾力的に理解すべきだ、ということですね。当サイトの参考答案は、そのような理解で書いています。

3.他方、後者は、直接には既判力の話ではありません。冷静によく読まないと気付きにくいのですが、ポイントは、「本件和解『契約』は」となっていることです。訴訟上の和解ではなく、私法上の和解の側面を問うているのです。設問1でも、訴訟上の和解としての効力が否定された場合の私法上の和解の効力が問われていましたが、設問3でも、同様の問い方がされていたわけです。そして、設問1は、設問3のヒントにもなっていた。設問1で、訴訟上の和解が私法上の和解を前提に成立するということに気付いていた人は、私法上の和解が成立しない部分について、訴訟上の和解は成立しませんから、その部分に既判力が生じないという、気付いてしまえば当たり前のことに気付きやすいでしょう。そこで、以前に紹介した判例(「民事系第3問設問3の参考判例」)のように、私法上の和解の原則、例外を書いていけばよかったのだと思います。気付いてしまえば簡単に感じるのですが、気付くのが難しい。そういう問題だったと思います。

4.重要なことは、原則論を示すことです。昨年の出題趣旨を見れば明らかなとおり、ここに大きな配点がある。当たり前なので省略してしまいがちですが、これをまず確認する。この原則論は、多くの人がわかるはずです。逆に、その後の部分は、多くの人がわからない。わかるところをきちんと正確に書いたかどうかで、差が付くのです。

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