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2013年07月31日

平成25年司法試験論文式民事系第3問参考答案

問題文は、こちら

第1.設問1

1.昭和47年判決の趣旨

 過去の法律関係の確認は、その後の変動可能性から、現在の紛争解決に適切でなく、原則として訴えの利益が認められない。
 同判決は、上記を前提にした上で、遺言無効確認の訴えにつき過去の法律行為の効力の確認を求めるものではなく、遺言が有効であるとすればそれから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解釈して適法としたものである。

2.同判決と訴訟Tにおける事案の違い

 同判決の事案では、係争中の相続財産が多数であり、原告の主張によれば遺言において全財産を相続すべきとされた者が明らかでなく、権利関係が不明であって、現在の法律関係の確認の訴えとして請求の趣旨を特定するのが困難であった。そのために、現在の法律関係の記載に代えて、形式上過去の法律行為の確認を求めるものとして請求の趣旨を記載することが許されたものである。
 これに対し、訴訟Tの事案では、遺言@の目的となる財産は甲1だけであり、遺贈の相手方がBであることも明らかである。従って、現在の法律関係の確認の訴えとして請求の趣旨を特定することは容易である。そうである以上、敢えて過去の法律行為の確認を求める形式をもって請求の趣旨を記載する必要はない。端的に、甲1がEに帰属することの確認を求める等の現在の法律関係を対象とする訴えとして請求の趣旨を記載すべきである。

3.結論

 よって、昭和47年判決を前提としても、訴訟Tは確認の利益を欠き、不適法である。

第2.設問2

1.訴訟Uの被告適格者

 被告適格は、原告の主張する訴訟物たる法律関係の帰属主体となるべき者にある。
 訴訟Uの訴訟物は、所有権移転登記抹消登記手続請求である。既に遺贈の執行として甲2についてCに所有権移転登記手続がなされた以上、甲2は相続財産から逸出してCに帰属するから、上記抹消登記手続請求に応ずべき帰属主体もCである。
 よって、訴訟Uの被告適格者は、Dではなく、Cである。

2.結論

 よって、訴訟Uは被告適格のないDを被告とするから不適法であり、訴えは却下されるべきである。

第3.設問3

1.小問(1)

 相続は被相続人の死亡によって生じる(民法882条)から、Fの死亡が請求原因となる。
 そして、相続開始の時から、相続人は被相続人の財産を包括承継する(同法896条本文)。従って、Gが相続人、すなわちFの子(同法887条1項)であること及び土地乙が被相続人の財産であったこと、すなわち、Fが土地乙をもと所有していたことが請求原因となる。

2.小問(2)

(1)問題の所在

 上記1の請求原因のうち、Fの死亡及びGがFの子であることについては、前訴におけるGの主張中「Gの父F」「その生前に」という部分に顕れている。
 他方、Fが土地乙をもと所有していた事実については、前訴におけるHの主張中、「Jから土地乙を買い受けたのは…Fであり」とする部分に顕れている。そこで、Gの主張しない上記Hの主張中に含まれる請求原因事実を裁判所は判決の基礎とすることができるかが問題となる。

(2)不利益陳述の斟酌の可否

 そもそも、当事者の主張しない事実は判決の基礎にすることができない(弁論主義の第1原則)ところ、弁論主義は当事者と裁判所の役割分担の問題であって、当事者間の役割分担ではない。従って、裁判所は、一方当事者の主張した事実を他方当事者に有利な事実として判決の基礎とすることができる(主張共通)。
 従って本問では、裁判所は、Fが土地乙をもと所有していた事実についても判決の基礎とすることができる。
 もっとも、G及びHが単独所有権の主張しかしていないことを考慮すると、裁判所としては、上記事実を斟酌するに当たり、不意打ち防止の観点から、Gに対し、相続による共有持分権の取得に基づく主張をするか否か明確にされたい旨釈明を求めるのが適切である。

(3)結論

 以上から、裁判所は、適切に釈明権を行使した上で、上記1の請求原因を判決の基礎とすることができる。

第4.設問4

1.平成10年判決の趣旨

 平成10年判決は、実質的には前訴で認められなかった請求及び主張を蒸し返すものであることを主要な根拠として、訴訟物の範囲を超える部分につき信義則による遮断効の拡張を認めている。
 上記判決は、既判力の機能が紛争の蒸返し防止にあることを実質的に考慮し、形式的に既判力が及ばない部分についても、信義則を用いて妥当な結論を導くべきであるとする趣旨である。

2.遮断効の縮小の肯否

 上記平成10年判決の趣旨からすれば、形式的に既判力が及ぶ部分についても、紛争の蒸返しとならない例外的場合には、信義則を用いて遮断効を縮小させることが可能である。
 すなわち、前訴の審理・判決から後訴の提起に至るまでの事情から、後訴を提起する者において前訴で争うことが期待できない場合であって、相手方に紛争解決の合理的期待が認められないときは、形式的に既判力の及ぶ範囲に属する事柄であっても、信義則上遮断効は及ばないと考えることができる。

3.本問における適用

(1)前訴で共有持分権の主張は期待できたか

 前訴では、GもHも共に単独所有権を主張しており、相続による共有持分権の有無は全く争われていなかった。数量的一部請求の棄却とは異なり、Gの主張するGJ間売買及びHの主張するFからの贈与のいずれの事実についても、その存否の審理判断の過程において必然的に相続による共有持分権の取得が判断される関係にはない。
 また、共有持分権の主張は単独所有権を否定することになり、一部敗訴を導くことになるから、G自ら主張することは期待し難い。
 しかも、裁判所による適切な釈明権の行使もなかったというのであるから、Gに共有持分権の主張の機会も適切に与えられていなかった。
 以上から、Gにおいて共有持分権を前訴で争うことは期待できなかったといえる。

(2)Hに紛争解決の合理的期待を認めうるか

 上記(1)のとおり、前訴では専ら単独所有権の有無が争われたに過ぎない。従って、Hにおいて、共有持分権の存否について解決済みであるとの合理的期待が生じたとは認め難い。
 また、Hは、前訴で土地乙の明渡しを求める反訴を提起し、棄却されている。確かに、上記反訴の棄却判決の既判力は、Hが土地乙の所有権者でないことには及ばない。しかし、Hの単独所有権は事実上否定されたといえる。にもかかわらず、Hは、その後も贈与による単独所有権の取得を主張した。その態度は、自ら紛争を蒸し返すものといわざるを得ない。そうである以上、Hには、前訴による紛争解決の合理的期待は認められない。

3)結論

 上記のとおり、相続による共有持分権の主張は、Gにおいて前訴で争うことが期待できず、かつ、Hに紛争解決の合理的期待は認められないから、信義則上前訴既判力による遮断効は及ばない
 よって、Gは、後訴において、相続による共有持分権の取得の主張をすることができる。

以上

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2013年07月27日

平成25年司法試験論文民事系第3問設問3の釈明の意味

最高裁判所第一小法廷判決平成9年07月17日(下線及び※注は当サイトによる)

【事案】

 本件訴訟において、上告人は、被上告人らとの間において上告人が第一審判決別紙物件目録三記載の建物(以下「本件建物」という。)の所有権並びに同目録一及び二記載の土地(以下「本件土地」という。)の賃借権を有することの確認等の請求をし、その請求原因として、上告人が、昭和二一年ころに、Dから本件土地を賃借し、その地上に本件建物を建築したとの事実を主張した被上告人らは、これを否認し、本件土地を賃借して本件建物を建築したのは、上告人ではなく、上告人の亡父Eである旨を主張した原審は、(1) 上告人主張の右事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって、被上告人らの主張するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのはEであることが認められるとして、(2) その余の点について判断することなく直ちに、上告人の請求を認容した第一審判決を取り消し、上告人の請求をすべて棄却した

【判旨】

1.原審の確定したところによれば、Eは昭和二九年四月五日に死亡し、Eには妻F及び上告人を含む六人の子があったというのである。したがって、原審の認定するとおり、本件土地を賃借し、本件建物を建築したのがEであるとすれば、本件土地の賃借権及び本件建物の所有権はEの遺産であり、これを右七人が相続したことになる。そして、上告人の法定相続分は九分の一であるから、これと異なる遺産分割がされたなどの事実がない限り、上告人は、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各九分の一の持分を取得したことが明らかである

2.上告人が、本件建物の所有権及び本件土地の賃借権の各九分の一の持分を取得したことを前提として、予備的に右持分の確認等を請求するのであれば、Eが本件土地を賃借し、本件建物を建築したとの事実がその請求原因の一部となり、この事実については上告人が主張立証責任を負担する本件においては、上告人がこの事実を主張せず、かえって被上告人らがこの事実を主張し、上告人はこれを争ったのであるが、原審としては、被上告人らのこの主張に基づいて右事実を確定した以上は、上告人がこれを自己の利益に援用しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこの事実をしんしゃくし、上告人の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和三八年(オ)第一二二七号同四一年九月八日第一小法廷判決・民集二〇巻七号一三一四頁参照)。

3.原審がこのような措置を執ることなく前記のように判断したことには、審理不尽の違法があり、この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は、右の趣旨をいうものとして理由がある。したがって、原判決のうち別紙記載の部分は破棄を免れず、右部分につき、被上告人らの抗弁等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、右破棄部分以外の原判決は正当であるから、この点に関する上告を棄却することとする。

【藤井正雄補足意見】

 私は、法廷意見に同調するものであるが、なおこれに若干の意見を補足しておきたい。
 本件は、上告人の建物所有権及び土地賃借権に基づく請求の訴訟において、被上告人らが、上告人の主張した所有権及び賃借権(以下「所有権等」という。)の取得原因事実は否認したが、「上告人の父の所有権等の取得と同人の死亡」という別の取得原因事実を先行的に陳述した場合に、裁判所のとるべき措置に関する。
 ある当事者が訴訟上自己に不利益な事実を陳述したとき、相手方がその陳述を援用すると否とにかかわらず、裁判所はこれを訴訟資料として斟酌すべきであると説かれる。法廷意見の引用する最高裁昭和四一年九月八日判決は、原告の所有権に基づく土地明渡請求訴訟において、原告が、被告に対して土地の使用を許したとの事実を先行して陳述したという事案である。使用貸借は被告側から主張すべき権利障害事由であるが、原告がこれを先行陳述したことにより、自己の請求の有理性(首尾一貫性)を欠如させる結果となっており、被告の援用いかんにかかわらず、請求棄却を免れないことになる。
 これに対して、本件は、被告ら(被上告人ら)が原告(上告人)の主張すべき請求原因事実を先行陳述した場合である。不利益陳述に関するさきの理論は、原告の場合と被告の場合とを区別せず、請求原因についてであろうと抗弁についてであろうと、等しくどちらについても妥当するというのが、一般的な理解のようである。しかし、本件では、被上告人らの陳述した「父の取得、死亡」の事実は、上告人の所有権等の全部を理由あらしめるものではなく、その一部(九分の一の共有又は準共有持分)を基礎づけるに過ぎないのである。そして、(準)共有持分権は、所有権等の割合的一部ではあるけれども、共有物の利用管理等については、単一の所有権等とは異なる種々の制約があり、単純な分量的一部とはいえない。訴訟物としては所有権等の中に包含されているといってよいが、被上告人らが持分権の取得原因事実を先行的に陳述しているからといって、裁判所が、上告人に何らの釈明も求めることなく、直ちに所有権等の分量的一部として共有持分権の限度でこれを認容してよいということにはならないもしそのようなことをしたならば、当事者、殊に被上告人らにとっては、予期しない不意打ちとなるであろう。したがって、相続分の限度での一部認容判決をするためには、裁判所としては、上告人に対し、九分の一の共有持分権の限度の請求としてもこれを維持する意思があるかどうかについて釈明を求めた上、予備的に請求の趣旨を変更させる措置をとるのが普通である裁判所がそのような措置をとらないままで、上告人の所有権等の取得は認められないとする請求棄却の判決をし、これが確定したときは、上告人は目的物の所有権等を有しないとの判断につき既判力が生じるから、上告人が右判決の既判力の標準時以前に生じた所有権等の一部たる共有持分権の取得原因事実、すなわち亡父の遺産の相続の事実を再訴で主張することができないということになる最高裁平成五年(オ)第九二一号同九年三月一四日第二小法廷判決・裁判集民事一八二号登載予定※設問4で問題となる福田反対意見の付された判例である。)。そうした事態はなるべく起こらないことが望ましい。
 しかし、このことは、裁判所が常に当然に釈明義務を負うということを意味するものではない。本件において、上告人は、本件土地建物の所有権等が自己の固有の財産であるとする主張に固執し、一、二審を通じて、遺産の共有持分の限度での請求をする気配を見せていなかったのであり、このようなときに、裁判所が、遺産共有を前提として共有持分権の主張をするかどうかについて釈明を求めてまで、請求の一部を認めてやる義務があるというべきかは一考を要する。相続開始後年月を経て、他の相続人間では格別の紛争もなく、一定の事実状態が形成されてきているような場合だと、裁判所の介入がかえって紛争の拡大を助長する結果となることもあり、事案に応じた慎重な配慮が求められるのである。
 記録によると、父Eが死亡したのは昭和二九年で、本訴が提起されたのはそれから三六年後であり、相続紛争としては今更の感が深い。しかし、上告人は、被上告人らの主張に対する反論としてではあるが、仮に被上告人らのいうように本件土地建物が亡父の遺産であるとするなら遺産分割協議は未了であるということを述べているのであり、遺産とされた場合の法律関係のことも一応念頭にあったことがうかがわれる。のみならず、平成元年の母Fの死亡後に、被上告人B1と同B2、同B3、同B4及びG(一審相被告)の間で、遺産をめぐる紛争が起こっており、本件土地建物の所有権等の帰属は、今なお未解決の状態にある。そうすると、本件においては、父Eの死亡から相当の年月を経ているとはいえ、事態はなお流動的であるので、本件土地建物に関する上告人の相続上の権利の有無について、この際判断を加えておくことを躊躇する理由はないことになり、これを拒んだ場合には上告人の再訴における主張が既判力で妨げられる結果になることをも考慮すると、原審としては、上告人に対し所要の釈明を求めて判断をすべきであったということができる。以上の理由により、上告人の共有持分権に関する部分につき、審理不尽、釈明義務違背があるものと認めるのを相当と考える。

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2013年07月25日

平成25年司法試験・予備試験短答式試験の感想(4)

刑訴法について

刑訴も、大きな傾向変化はない。
刑訴は、短答では最も多彩な出題形式が採られる。
論理問題だけでなく、知識問題も、少し変わった出題形式になることがある。
また、知識問題は、マイナー分野から出題されるものも多い。
確実に取れるものと、そうでないものを素早く見極める必要がある。
他方、論理問題は比較的易しい傾向にある。
これは、刑法と同様である。
細かい知識問題は保留して、論理問題は時間を使って確実に解きたい。

司法試験第25問は、新試験では珍しい個数問題である。

(司法試験第25問)

 令状主義に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの個数を,後記1から6までの中から選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。

ア.捜査機関が,犯罪の証拠物として被疑者の体内に存在する尿を強制的に採取するには,捜索差押令状を必要とするが,人権の侵害にわたるおそれがある点では,検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので,「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附することができる」旨の規定が前記捜索差押令状に準用される。

イ.捜査機関は,身体を拘束されていない被疑者を採尿場所に任意に同行することが事実上不可能であると認められる場合,採尿することを許可する捜索差押令状の効力として,採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ,その際,必要最小限度の有形力を行使することができる。

ウ.身体検査令状に関する「裁判官は,身体の検査に関し,適当と認める条件を附することができる」旨の規定は,その規定する条件の付加が強制処分の範囲,程度を減縮させる方向に作用するので,身体検査令状以外の検証許可状にもその準用を肯定することができる。

エ.捜査機関は,強盗殺人事件に関し,被疑者が犯人である疑いを持つ合理的理由が存在する場合,検証許可状がなくても,犯人の特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手する手段として,これに必要な限度において,公道上を歩いている被疑者の容貌等を撮影することができる。

オ.捜査機関が,捜査目的で宅配業者が保管している宅配便荷物に荷送人や荷受人の承諾を得ることなく,エックス線を照射して内容物の射影を観察するには,検証許可状を必要とする。

1.0個   2.1個   3.2個   4.3個   5.4個   6.5個

個数問題には、旧司法試験以来の傾向がある。
それは、正解は「全部正しい」か「全部誤り」のことが多いということだ。
本問も、全部の肢が正しく、正解は6である。

個数問題では、正誤を2つ誤ると、正解になってしまうことがある。
例えば、○○×○○で、正しい肢4個が正解だとしよう。
この場合、誤って○×○○○と考えても、正しい肢4個となり、正解となってしまう。
しかし、全部正しいか、全部誤りの場合は、そのようなことがない。
そのため、出題側の心理として、そうなりやすいのだろう。
ただし、常にそうだというわけではない。
迷ったときの一応の目安という程度に、考えておけばよいだろう。
なお、エは、最決平20・4・15、オは、最決平21・9・28である。
司法試験平成20年最新判例肢別問題集司法試験平成21年最新判例肢別問題集に収録している。

司法試験第33問、予備試験第23問は、伝聞・非伝聞の区別を問う問題である。

(司法試験第33問、予備試験第23問)

 次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。

【事 例】

 甲及び乙は,共謀の上,平成24年12月5日午前1時頃,H市内のコンビニエンスストア「T」において,同店店員Vから現金10万円を強取したとしてH地方裁判所に起訴され,併合審理されることとなった。この審理において,V,甲の妻A及び知人Bに対する証人尋問が行われたところ,Vは,「2人組の犯人が店から出て行く際,犯人の1人がもう1人の犯人に対し,『@甲,早く逃げるぞ。』と言っていた。」旨を証言した。次に,Aは,「平成24年12月8日午後3時頃,自宅において,甲から『A3日前の午前1時頃,乙と一緒に,H市内のコンビニエンスストア「T」で,果物ナイフを店員に突き付けて現金10万円を奪ってきた。見付からないと思っていたが,乙が捕まった。ひょっとしたら,乙が自分のことを話すかもしれない。そうなると,警察が来るだろう。頼む。B3日前の午前1時頃には,俺が自宅で寝ていたということにして欲しい。』と言われた。」旨を証言した。次に,Bは,「平成24年12月4日,甲から,『C明日の午前1時頃,H市内のコンビニエンスストアで強盗をしないか。』と言われたが,断った。」旨を証言した。また,乙に対する被告人質問において,乙は,「甲と一緒に強盗をした際,甲が店員に『D金を出せ。出さないと殺すぞ。』と言っていた。」旨を供述した。

【記 述】

ア.下線部@の発言は,要証事実を「犯行後,犯人の1人が逃走を呼び掛けた相手が甲と呼ばれていたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

イ.下線部Aの発言は,要証事実を「甲が乙と一緒に強盗を実行したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

ウ.下線部Bの発言は,要証事実を「甲がAに甲のアリバイ作りに協力するよう依頼したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

エ.下線部Cの発言は,要証事実を「甲がBに強盗を実行することを持ち掛けたこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

オ.下線部Dの発言は,要証事実を「甲がVを脅迫したこと」とした場合,伝聞証拠ではない。

伝聞法則は論文でも頻出であり、本問は確実に取りたい。
どの肢も、伝聞法則を理解していれば間違いようのない肢である。
本問を間違えた人は、伝聞法則を理解できていない。
きちんと復習しておかないと、論文でもまた間違えることになる。

まず、@は、甲が体験した事実を再現する内容ではない。
従って、伝聞証拠となりようがない。
アは、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

Aは、甲が自ら体験した過去の事実(乙との強盗)を再現する内容である。
その内容どおりの事実が存在したことを立証する場合、伝聞証拠となる。
従って、イは誤りである。

Bは、甲が体験した事実を再現する内容ではない。
従って、伝聞証拠となりようがない。
ウは、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

Cも、甲が体験した事実の再現ではない。
従って、伝聞証拠となりようがない。
エも、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

Dも、甲による体験事実の再現でないから、伝聞証拠になりようがない。
従って、オも、要証事実云々を読むまでもなく、正しい。

わかっていれば、簡単すぎる問題である。
しかし本問は、必ずしも正答率は高くないだろう。
それだけ、伝聞法則を理解している人が少ないことを意味している。
(「伝聞法則の趣旨は知覚、記憶、表現・・・」と飽きるほど答案に書いているのに、体験した事実の再現でない発言を伝聞証拠と考えてしまうこと自体、本来はおかしな話である。)
論文で繰り返し出題されているのも、あまりに出来が悪いためである。
逆に言えば、一度理解してしまえば、それだけで差を付けることができる。

司法試験第35問は、最判平24・9・7である。
これは、司法試験平成24年最新判例肢別問題集で出題した。
ただ、知識がなくても、容易に解けるようになっている。

(司法試験第35問)

 次の【記述】は,前科証拠の証拠能力に関する最高裁判所の判例を要約したものである。【記述】中の@からBまでの( )内から適切な語句を選んだ場合,その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

【記 述】

 前科も一つの事実であり,前科証拠は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての価値(@(a.法律的関連性 b.自然的関連性))を有している。反面,前科,特に同種前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生ずるなど,その取調べに付随してA(a.争点が拡散する b.不当な不意打ちになる)おそれもある。したがって,前科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば,(@)があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実がB(a.顕著な特徴 b.相当の重大性)を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。

1.@a Aa Ba
2.@a Ab Ba
3.@a Ab Bb
4.@b Aa Ba
5.@b Aa Bb

文脈から、自然的関連性はあるが、法律的関連性の観点からは問題だ。
そういう趣旨とわかる。
従って、@はb.自然的関連性が入る。
この時点で、正解は4か5に絞られる。
そうすると、Aは考える必要がない。
そこでBをみると、これはa.顕著な特徴しか入らないだろう。
正解は、4ということになる。
この種の問題は、確実に取っていきたい。

posted by studyweb5 at 23:30| 司法試験・予備試験短答式試験関係 | 更新情報をチェックする

2013年07月24日

谷垣法相「3000人目標、一定の成果あった」

谷垣法務大臣閣議後記者会見平成25年7月16日(火)より抜粋(下線は当サイトによる)

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 本日,関係閣僚会議に報告した検討会議の取りまとめ案では,司法試験合格者数を「年間3,000人程度」とした従前の数値目標を撤回するという結論になっておりましたが,目標設定当時の判断として3,000人という数字が妥当であったかどうかについて,現時点で大臣はどのようにお考えでしょうか

【大臣】
 司法制度改革を議論した当時は,21世紀の司法を支える法曹人口の大幅な増加が緊要の課題であるという認識に立って,平成22年頃までに司法試験の年間合格者数を3,000人程度とする目標を掲げたわけです。しかし,この度の検討会議の取りまとめにもありますが,現時点では年間3,000人程度とする目標を継続して掲げていくことは現実的でないという議論になったわけです。ただし,法科大学院を中核とする法曹養成制度が必ずしも当初の想定どおりに整備されたと言えない状況や,我が国の経済動向を含む法曹需要の状況などといったいろいろな要因を踏まえますと,当時の判断として3,000人という数字が妥当であったのかどうかは,今の時点で評価することはなかなか難しいと思います。もっとも,この目標を掲げて司法制度改革を進めたことで法曹人口が増加したことも間違いないわけです。当時は500人程度の司法試験合格者数でしたが,2,000人程度に増えて,その結果,当時は弁護士過疎,つまり誰も弁護士がいない地域があるということが言われておりましたが,現在,そういった地域は解消しました。それから,企業内で仕事をしていく弁護士も増えてきたなど,一定の成果も認められています

【記者】
 新しい検討体制を設けて2年以内に検討を行うとし,事実上先送りとされた課題がいくつかあると思うのですが,この2年という期間について,大臣はどのようにお考えでしょうか

【大臣】
 今日,新たに関係閣僚で構成する会議体を設置して,その下に事務局も置いて,2年以内を目途に検討するということに決めていただいたわけですが,今までの議論でも非常に意見の対立するところがありました実際の法曹に対する需要がどこにあるかなど,もう少し調査しなければならないことがあると思いますので,速やかに体制を作って,その中できちんと議論を整理したいと思っております。

posted by studyweb5 at 02:49| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする

2013年07月19日

平成25年司法試験論文式民事系第2問参考答案

問題文は、こちら

第1.設問1

1.譲渡の会社に対する効力

 甲社は、株券発行会社である(会社法(以下条数のみ示す。)117条6項かっこ書、甲社定款7条)。従って、EのFに対する甲社株式の譲渡は、株券交付により効力が生じる(128条1項本文)。
 もっとも、甲社株式は譲渡制限株式である(2条17号、甲社定款5条)。従って、EのFに対する甲社株式の譲渡につき同社取締役会の承認がないから、甲社に対しては譲渡の効力は生じない(134条本文、ただし書1号及び2号参照)ことになりそうである。
 しかし、甲社は、株式譲渡承認請求から2週間が経過しても譲渡を承認するか否かの決定に係る通知をしていない。従って、譲渡は承認したものとみなされる(145条1号)。
 よって、EのFに対する甲社株式の譲渡は、甲社に対する関係でも効力を有する。

2.株主と扱うことの適否

 株式の譲渡を会社に対抗するには、名義書換が必要である(130条1項)。Fは、名義書換をしていないから、甲社に譲渡を対抗できない。
 もっとも、同項の趣旨は会社の事務処理の便宜であり、対抗できないとは株主の側から主張できないというに過ぎないから、甲社の側からFを株主と認めることは差し支えない。
 よって、甲社が平成25年総会においてFを株主として取り扱うことに違法はない。

第2.設問2(1)

 株主総会決議取消しの訴え(831条)を検討する。

1.提案の違法

 平成25年総会では取締役の報酬に関する議題はないから、Aが本件報酬決議に係る議案を総会の席上で提案することはできない(304条本文)。従って、決議方法の法令違反がある。

2.共有株式に係る議決権行使の取扱いの違法

 Qが有していたABCによる共有株式に係る権利行使者の指定(106条本文)は、管理行為である(判例)から、B及びCによる持分過半数で決することができる(民法264条本文、252条本文)。従って、共有株式に係る議決権行使を無効とした取扱いは違法であり、決議方法の法令違反がある。

3.結論

 よって、甲社株主であるBは、本件報酬決議の日(平成25年3月16日)から3か月以内に決議取消しの訴えを提起することができる(831条1項1号)。
 この場合において、上記1の違法は軽微又は決議に影響しないとして裁量棄却(同条2項)となる余地がある。しかし、上記2の違法は、議決権行使の機会を奪う重大な違法であり、共有株式に係る議決権行使が有効であれば否決となるから決議に影響することが明らかであって、裁量棄却の余地はない。

第3.設問2(2)

 定款に報酬の定めのない甲社においては、取締役の具体的な報酬請求権は株主総会決議によって初めて生じる(判例。361条1項、330条、民法648条1項参照。)。
 他方、株主総会決議取消しの訴えの認容判決には遡及効がある(839条反対解釈)。
 従って、本件報酬決議の取消しの訴えが認容されれば、当初からA、D及びGの報酬に係る決議は無効となるから、報酬請求権は発生しない。既に支払いを受けた報酬は、すべて不当利得となる。もっとも、必ずしも無給となるわけではない。再度株主総会を開催して事後承認を受ければ、承認を受けた限度で適法に報酬を受けることができる(判例)。
 よって、いまだ再度の株主総会による事後承認のない本問では、甲社は、A、D及びGに対し、既に支払済みの報酬の全部を返還請求できる。

第4.設問3@

 募集株式発行差止請求(210条)を検討する。

1.不公正発行(同条2号)

 募集株式の発行は会社の資金調達の手段であるから、主要目的が資金調達にはなく、特定株主の持株比率の低下にある場合には、不公正発行に該当する。
 本問の募集株式発行は、株主割当てとされ、形式的にはB及びCにも持株比率維持の機会が与えられている。しかし、Aが自己の支配権を確立するため、実際にはB及びCに調達困難な払込金額を設定した上、Aは従前の10倍という異常な報酬増額をもって払込金を捻出し、いわば会社の資金をもって払込みに充てるもので、正当な資金調達目的はなく、B及びCの持株比率を低下させることが主要な目的である。
 従って、本問の募集株式発行は、不公正発行である。

2.結論

 よって、本問の募集株式発行によって持株比率低下の不利益を受けるおそれのある甲社株主であるBは、甲社に対し、募集株式の発行をやめることを請求できる。

第5.設問3A

 株式発行無効の訴え(828条1項2号)を検討する。

1.無効事由

(1)前記第4の募集株式発行差止請求を本案とする仮処分命令(民事保全法23条2項)があったのに、これに違反して発行された場合には、差止めの実効性確保の観点から無効事由となる(判例)。

(2)では、差止請求がされていなかった場合に、前記第4の1の不公正発行が無効事由となるか。
 株式取引に関する法的安定性を考慮すると、無効事由は限定的に考えるべきである。もっとも、非公開会社においては、株式取引の安全よりも、株主の持株比率維持の要請が強い(201条1項参照)。従って、株主総会の特別決議(199条2項、309条2項5号)を欠く株主割当て以外の方法による株式発行は、持株比率保護の観点から無効である(判例)。
 そして、特別決議の不要な株主割当てによる方法(202条1項、3項2号、5項)による場合であっても、実質的に株主の持株比率が害される特段の事情がある場合には、持株比率を保護する趣旨が妥当するから、無効事由になると解すべきである。
 本問で、非公開会社である甲社(2条5号、甲社定款5条)には、202条3項2号の定款の定めがあり(甲社定款6条)、株主割当てによる募集株式発行につき特別決議を要しない(202条3項4号、309条2項5号参照)。もっとも、形式的には株主割当ての方法によっているが、実際にはB及びCに調達困難な払込金額を恣意的に設定してされたから、実質的には、B及びCの持株比率が害される。従って、上記特段の事情がある。
 以上から、前記第4の1の不公正発行は、無効事由となる。

2.結論

 よって、甲社株主であるBは、本問の株式発行の効力発生日(平成25年4月1日)から1年以内に、株式発行無効の訴えをすることができる(828条1項2号かっこ書、2項2号)。

以上

posted by studyweb5 at 00:04| 新司法試験論文式過去問関係 | 更新情報をチェックする


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