2013年06月28日

政府公表資料等情報

谷垣法相閣議後記者会見平成25年4月2日(火)より抜粋

成年被後見人の女性に選挙権を認めた判決に関する質疑について

【記者】
 成年後見制度の関係で,結果的に控訴という形になりましたが,それを振り返ってみて,政府内での議論のプロセスと,どのような問題があったのかということと,控訴についての大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

【大臣】
 成年後見制度というのは,財産管理の能力が必ずしも十分でない方の資産を,きちんと管理していく手段がなければいけないということで作られた制度です。ですから,選挙権があるかどうかという問題とは直ちに対応するものではありません。私の立場は,民事の基本法を所管している立場,それから,国の代理人になる立場と,両方の立場がありますが,まずは公職選挙法の観点から,選挙制度の中でこの問題をどう考えるかということが必要であると思います。それは,どちらかというと総務省の所管になると思いますので,そちらの方で,いろいろ議論をしていただいたということです。そして,今回,総務大臣が,このまま控訴をしないでいると非常に混乱するということを言われました。毎週のように選挙はありますし,そこにも大勢の成年被後見の方がいらっしゃるとなると,それに対応する選挙人名簿というものはできていませんから,選挙制度を所管する総務省としては,最低限,その混乱を避けなければならないとされたのは,当然の配慮であったと思います。そこから先は,国の代理人としての私の立場から申しますと,今回の判決を受けてからのいろいろな議論の中では,十分に議論はされていないかもしれませんが,法制度の根幹には,やはり一定の判断能力を前提としていることが基本法の根底にあります。刑法で言えば,刑事責任能力の有無に関して,例えば心神喪失であれば刑を科すことができない。これはやはり,一定の判断能力がある人でないと,処罰できないということがあります。それから,成年後見制度は,民事法における資産管理の観点から,一定の能力がやはり必要だろうということになっています。その背景には,意思能力のない者の行為は,法律行為としては効果を生じないという理論が基本にあると思います。選挙権の方も,二十歳から選挙権を与えることの背後にあるのは,一定の判断能力のある人に選挙権を与えるという,公職選挙法の明文にあるわけではないでしょうけれども,そういった理論の立て方が背景にあります。こうした議論を前提にして,どのような制度を立てたらよいのかという問題があって,それに対しては,いろいろな議論があると思います。従前,訟務部門で行っていた議論は,一定の能力を前提とすることは必要であり,成年後見制度を公職選挙法にも借用することは,一定の合理性があるというものです。私は,その辺を整理しなくていいというわけにはいかないのではないかと思います。そこのところは,選挙制度をはじめとする法律制度の基本ですから,しっかり論点を整理しておかないといけないという気持ちを持っています。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年4月9日(火)より抜粋

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 今日は,これから法曹養成制度検討会議がありますが,中間取りまとめによると,司法試験の年間合格者数を3,000人程度とする数値目標をなくしてしまう方向性のようですが,司法制度改革の理念の実現のための実効性がなくなってしまうことにはならないかという疑念を抱きます。大臣の御見解をお聞かせください。

【大臣】
 法曹養成制度検討会議の議論において,現状で3,000人を直ちに数値目標とすることは現実性等を欠いているという考え方が,おおむねの共通認識のようです。司法制度改革は,質,量ともに充実した法律家を養成していくという目標で出発しましたが,その方向性は現在も堅持していることは間違いないと思います。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年4月12日(金)より抜粋

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 先日,法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめが出されました。最終的な取りまとめが本年8月ということで,検討期間はそれほど残されていないかと思いますが,検討会議の議論状況について,大臣としての御所感がありましたらお願いします。

【大臣】
 今日からパブリックコメントを始めたわけです。法務省としては,パブリックコメントでできるだけ多くの方に御意見をお寄せいただきたいと思っています。それを拝見して,8月2日の期限までに,精力的に議論を詰めていかなければならないと思います。人の養成制度ですから,一朝一夕に目覚ましい効果を目に見える形に現すことは難しいですが,今までの議論の成果を踏まえて,とにかく精力的に論点を煮詰めていただかなければならないと思います。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年5月14日(火)より抜粋

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 先日,文部科学省の方で,今年の春の法科大学院に入学した人の実数が発表されました。3,000人を切るだろうと言われていたのですが,2,600人台となりました。法科大学院の人気の低迷と言いますか,法科大学院離れがますます鮮明になったと思います。法科大学院の新入学者数がだんだん減っていることについての受け止めをお願いします。

【大臣】
 新入学者の数は2,698人だったかと思います。3,000人を下回って,これは過去最低の数字となったと報告を受けております。法科大学院制度は,質,量ともに豊かな法曹を養成しようという理念で始めました。今,法曹養成制度検討会議でいろいろと御議論をいただいているところですが,必ずしも法科大学院制度の中で,プロセスとして法律家を養成していく,選別して養成していくということが,必ずしも当初の狙いどおりとなっていないことは,多くの方の共通の認識だと思います。これはやはり,法科大学院における司法試験の合格状況が,それぞれの大学院によってばらつきも相当多い。それから,合格率も必ずしも高くなっていない。そして,司法試験に受かって弁護士等として就職していこうと思っても,壁が思ったより高いということで,そういったリスクを感じて進学する人が少なくなっているのだと思います。当初,毎年3,000人の司法試験の合格を目指していましたが,それがやや現実と離れていたということもあり,今,いろいろと御議論をいただいているわけですが,その中で教育水準等も上げるなど,法科大学院の魅力を引き出していくような取組を更にいろいろと行っていかなければならないと思います。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年5月17日(金)より抜粋

司法試験及び司法試験予備試験に関する質疑について

【記者】
 本月15日から始まった司法試験ですが,受験者数が速報値で7,653人で2年連続の減少となりました。大臣として,この背景をどのように考えておられるかということ,また,本月19日から始まる司法試験予備試験では,出願者数が1万1,255人で2年連続の増加となりましたが,このことについての受け止めをお聞かせください。

【大臣】
 まず最初の質問ですが,これは想定されていたことです。文部科学省の方針になりますが,要するに競争倍率が2倍以上ない法科大学院に対して,文部科学省がいろいろ取り組んでおられます。そういったことで,法科大学院の入学定員数を絞ってきたということがこのところ数年続いています。そして,法科大学院修了者は,5年以内に3回まで受験できるということですから,司法試験受験者数が,このように絞られた結果になるのは,今までのそういった流れがあってのことだろうと思います。それから,予備試験の方はまだ始まったばかりですので,どのような要素でこういった状況になってきているのかというのは,もう少し様子を見て,いろいろな事を考えていかなければならないと思っております。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年5月28日(火)より抜粋

現行の公職選挙法を違憲とした東京地裁判決の控訴に関する質疑について

【記者】
 昨日,成年被後見人に選挙権を与える公職選挙法改正案が成立しましたが,これを受けて,この改正案提出のきっかけとなりました東京地裁で違憲判決の控訴について,今後どのように対応されていくお考えかをお聞かせください。

【大臣】
 公職選挙法改正案が成立しましたので,選挙権の確認を求める本件訴訟については,その訴えの利益を欠くということで,終了することになると考えております。本件訴訟は,このことを前提に進行して判決が言い渡されることになるでしょうから,訴訟を担当する法務大臣としては,関係機関,特に総務省ですが,協議の上,適切に訴訟に対応していくということです。

【記者】
 判決を待たなくても,控訴を取り下げるという形で,早期に裁判を決着させるという選択肢もあるとは思うのですが,そのような選択肢を採らない理由をお聞かせください。

【大臣】
 控訴の取り下げは考えておりません。東京地裁の第一審では現行の公職選挙法が違憲との判決が出されました。しかし,私どもは,選挙権の付与について,意思能力との関係でどのように判定していくかということは立法政策の問題であり,現行の公職選挙法は憲法に違反しないと主張し,今の訴訟を進めてきたわけです。控訴を取り下げるということになると,そのまま第一審の結論が確定してしまうということになります。それは私どもの従来の主張と違うということです。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年5月31日(金)より抜粋

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 昨日の法曹養成制度検討会議で,中間的取りまとめに対するパブリックコメントの結果が明らかになりました。法科大学院生や司法修習生に対する経済的支援に関し,最も多い2,421通の意見が寄せられましたが,この経済的支援という部分について,大臣はどのような御意見をお持ちでしょうか。
 また,今後,この会議は,最終的取りまとめに向けて,6月中に議論することになりますが,委員の方々にどのような議論を望まれるのでしょうか。

【大臣】
 パブリックコメントの結果が公表されたわけですが,中間的取りまとめに記載された事項について,非常に幅広い御意見を寄せていただいたと思っております。特に今御指摘のありましたように,法科大学院生や司法修習生に対する経済的支援に関連して,約2,400通の御意見が寄せられたということです。これだけたくさんの御意見を頂くということは,法曹養成ということに対して,非常に高い関心があるのだろうと思います。検討会議では,このパブリックコメントの結果も踏まえまして,最終的取りまとめに向けた議論が行われます。私どももこのパブリックコメントの結果についてよく分析しなければならないと思いますが,検討会議においてもよく分析していただいて,充実した議論をしていただきたいと思います。その結果を関係閣僚会議においても検討を行い,8月2日までに一定の結論を出す予定です。

【記者】
 パブリックコメント全体を見ますと,経済的支援のことのみならず,様々な問題や課題についての意見が寄せられています。全体的に手厳しいものが多かった気がしましたが,寄せられた意見の全体を御覧になって,現在の大臣の受け止めをお願いします。

【大臣】
 私も閣僚会議のときに申し上げるべきことは申し上げなければなりませんが,今は議論をしていただいているところですので,現段階ではあまり突っ込んだことは申し上げにくいです。ただ,やはり法曹養成に関しては必ずしも最初の制度設計どおりに動いているとは限らず,想定できないいろいろなこと,つまり世の中というものは,実際に動いてみると多様な反応が出てきますので,こういった結果になったのかなと思います。私どももよく分析して,対応,議論していかなくてはならないと思います。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年6月7日(金)より抜粋

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 昨日,法曹養成制度検討会議において最終取りまとめ案が出されました。内容については,政府目標である司法試験の合格者数3,000人を撤回する内容だったと思うのですが,大臣の御所見を改めてお伺いできますでしょうか。

【大臣】
 委員の方々には大変御苦労いただきました。また,中間試案へのパブリックコメントもたくさんの御意見をお寄せいただきましたが,そういったものを踏まえて御議論いただいたわけです。それを受けて中間試案から変化したところもございますが,8月2日までにとにかく結論を出すということですから,精力的にまとめていただきたいと思っております。

 

谷垣法相閣議後記者会見平成25年6月21日(金)より抜粋

法曹養成制度に関する質疑について

【記者】
 法曹養成制度検討会議の最終提言が本月19日にまとまりました。あるべき法曹人口や合格率が低い法科大学院の抜本的改革が先送りされた形になり,法曹を志す学生や学識経験者から懸念の声も上がっていますが,大臣はいかがお考えでしょうか。

【大臣】
 法曹養成制度検討会議では,1年間という期間で,非常に精力的にいろいろな論点から議論していただいてきました。取りまとめについては,本月26日の検討会議で最終的に決定がされます。その後に関係閣僚会議で報告されて,8月2日までに,相当急がなければなりませんが,一定の結論を出す予定です。それまでは,いろいろなことを申し上げるのは差し控えたいと思います。

posted by studyweb5 at 12:34| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする

2013年06月18日

平成25年司法試験論文式民事系第1問参考答案

問題文は、こちら

第1.設問1

1.必要な主張

 AC間の連帯保証契約が書面(446条2項)でされた旨の主張である。具体的には、以下のとおりである。
 確かに、事実4の連帯保証の書面は、当初Cの了解を得ることなく、Bの無権代理によって作成された。
 しかし、Cの追認(事実5)により、Bの代理行為は当初から遡って有効にCに帰属する(116条本文)。そうである以上、Bの代理行為はCの意思に基づくものといえるから、AC間の連帯保証契約は、Cの意思に基づく書面によってなされたといえる。

2.問題点

 446条2項の趣旨は、自らの負う責任を理解しないまま安易に保証が行われがちであることから、責任を理解した上で慎重に保証人となるか否かを判断する機会を与える点にある。
 上記趣旨から、同項の書面は、保証人自ら作成することを要し、本問のCは自ら書面を作成していないから、AC間の連帯保証契約は無効ではないかが問題となる。

3.当否

 同項の趣旨を、主として保証人の責任を理解させる点にあると考えるならば、同項の書面は必ずしも保証人自ら作成する必要はなく、保証人となるべき者が書面を閲覧して負担する責任を理解したと認められれば足りる。上記理解によれば、本問のCは、連帯保証の書面を示され、その責任内容につきBから説明を受けた上で、Aに対して追認の意思表示をした(事実5)から、Cは自らの負担する責任を理解していたといえ、AC間の連帯保証契約は有効であると解しうる。
 しかし、同項が設けられたのは、安易に保証人となることによってトラブルとなる事例が続出したからである。そうであるとすれば、同項の主たる趣旨は、書面に自ら署名することを通じて保証人となる際の慎重を期する点にあるというべきである。そうすると、同項の書面は、保証人自身が作成することを要する。
 本問で、Cは事実4の連帯保証の書面を自ら作成していない。そうである以上、当該書面は同項の書面に当たらないから、AC間の連帯保証契約は同項の要件を欠いて無効である。
 よって、AC間の連帯保証契約が書面でされた旨の上記1の主張は失当である。

第2.設問2

1.Bの主張

 亀裂の直接の原因はHの過失によるが、FはHを手足として用いていたから、信義則上Hの過失はFの過失と同視できる(履行補助者の理論)。そうすると、Fが過失により亀裂を生じさせたことは用法遵守義務(616条、594条1項)ないし善管注意義務(616条、597条1項、400条)に違反する債務不履行であるから、Bの被った損害である修繕費100万円につきBに賠償する義務を負う(415条前段)。

2.Fの主張

 FH間の契約は、Hが工事の完成を約し、Fが工事の結果に対して報酬を支払うのであるから、請負である(632条)。請負人は、一般に独立性を有し、請負人の過失は当然に注文者の過失とはみなされない(716条参照)。また、Hは飲食店の内装工事を専門とし、内装業を営む者である。そうである以上、HはFの手足として使用される履行補助者ではない。むしろ、Fに代わって内装工事を引き受けてする履行代行者とみるべきである。
 履行代行者を使用する者は、法律上使用が許されるときは、選任監督上の過失においてのみ責任を負うと解される(105条1項参照)。
 本問では、Fは、Hに内装工事を行わせることにつきBの承諾を得ており(事実13)、法律上Hの使用が許される(104条参照)。亀裂は、Hの過失によるもので、この点につきFに選任監督上の過失があったことを認めるに足りる事実はない。
 従って、Fは、Bに対して損害賠償責任を負わない。

3.各主張の当否

(1)契約上の本来的義務を履行する場合、履行に伴うリスクは債務者が負担すべきである。また、補助者の不履行があっても、債権者と補助者に契約関係はないから、債権者は当然に補助者に損害賠償を請求できるわけではない。この点において、請負人の不法行為の場合(716条参照)とは異なる。従って、たとえ補助者が独立的地位にある場合であっても、その者が生じさせた損害について債務者が選任監督上の過失の限度でしか責任を負わないのは妥当でない。上記補助者の過失も、当然に債務者の過失と同視すべきである。債務者は、履行に当たり補助者を利用するか、どの業者を利用するかを選択しうるし、債権者に損害を賠償した後の求償は妨げられないから、債務者にとって酷であるともいえない。

(2)これに対し、付随義務違反が問題となる場合には、債務者は積極的履行義務を負うわけではないから、生じた損害について当然にリスクを負担すべきとまではいえない。また、上記(1)の本来的義務を履行する場合と異なり、補助者の過失は債権者に対する不法行為を構成する一般的注意義務違反となるから、債権者は補助者の不法行為責任を追及すべきである。そうである以上、付随義務違反が問題となる場合には、選任監督上の過失等により債務者自身の付随義務違反が問題となるのは格別、補助者の過失を債務者の過失と同視することはできない(安全配慮義務に関する履行補助者の過失についての判例参照)。
 本問では、Fの用法遵守義務ないし善管注意義務の違反が問題となるが、賃借人の本来的義務は、賃料支払義務(601条)であって、用法遵守義務ないし善管注意義務は、付随的義務である。Fは、内装工事の専門業者であるHに発注し、Bの承諾も得ているのであって選任監督上の過失はなく、他にF自身の用法遵守義務ないし善管注意義務違反を認めるに足りる事実はない。よって、Fの過失は認められない。
 以上から、Bの主張は妥当でなく、Fの主張は結論において正当である。

第3.設問3

1.Gが、Eに修繕を依頼したのは、Gの賃借する丙建物2階部分の窓が損傷し、外気が吹き込む状態となって、児童や生徒に対し授業をすることにも支障が生じた(事実18)ため、賃借目的である学習塾としての使用が困難となったことによる。従って、Gが、Eに支払った修繕費用は、賃借目的に適する状態に復するための維持、保存の費用であるから、必要費(608条1項)に当たる。
 よって、同項により、Gは、Bに対し、修繕費を支払った平成24年9月9日の時点で、直ちにその償還を請求できる。

2.Dが依拠する判例によれば、抵当権者の物上代位による差押えがされた後は、抵当権設定登記後に取得した賃貸人に対する債権と物上代位の目的となった賃料債権との相殺は許されない。
 相殺は、相手方に対する相殺の意思表示によってする(506条1項前段)ところ、本問で、GがBに対して相殺の意思表示をした事実はない。従って、上記判例によれば、既に差押命令の送達によって差押えの効力が生じた(民執法193条2項、145条4項)以上、Gは相殺をもってDに対抗できないことになりそうである。
 しかし、本問における賃借人の債権は、必要費償還請求権である。必要費は、使用収益を継続するために支出せざるを得ない費用である。賃借人としては、抵当権設定登記の有無を確認して修繕等をするか否かを決定できるわけではない。そうである以上、抵当権設定登記による公示を主たる理由とする上記判例の趣旨は、必要費償還請求権をもって相殺する場合には妥当しない。
 また、賃貸人の修繕義務(606条1項)は、賃貸人の本来的義務である使用収益させる義務(601条)の一部である。従って、賃借人の賃料債務とは直接の対価的牽連関係にある。そして、必要費の償還が直ちに認められる(608条1項)のは、上記修繕義務に代わる支出であり、本来的に賃貸人の負担に属するからである。賃貸人が費用を負担して修繕義務を果たした場合との均衡をも考慮すれば、必要費償還請求権については、賃借人は相殺の意思表示を要せずして、当然に賃料との差引きを主張できると解すべきである。従って、専ら相殺の可否について判示した上記判例の趣旨は妥当しない。
 以上のとおり、いずれにせよDの依拠する判例は本問に適切でなく、Gは、Dに対し、修繕費用30万円を差し引いた60万円のみを支払えば足りる。

以上

posted by studyweb5 at 12:29| 新司法試験論文式過去問関係 | 更新情報をチェックする

2013年06月14日

平成25年予備試験短答式の結果について

法務省から、平成25年予備試験短答式の結果が公表された(法務省HP)。
合格点は、170点。
合格者数は、2017人だった。
合格点は、5点上がり、合格者は306人増えた。
合格点は、これまで2年続けて165点だった。
これは、満点のほぼ6割。
予備は、毎年これで固定になるとも思われた。
しかし、今年初めて、165点以外の合格点になった。
この数字は、どんな感じで決まったのか。

短答の合格点は、司法試験ではキリのいい数字で決めてくる。
概ね、5点刻みになっている。
どうやら、予備でも同様の決め方のようだ。
仮に、例年どおり165点だと、どうか。
法務省の得点別人員によれば、合格者数は2492人になる。
これは、さすがに多すぎる。

昨年より受かりにくかった

他方、175点だと、どうか。
これは、1645人となる。
昨年は、1711人。
これと比べると、あってもよさそうな数字にみえる。
しかし、合格率を加味して考えると、ちょっと採用しにくい数字だった。

以下は、年別の短答、論文の合格率の推移である。
(短答合格率は受験者ベース、論文合格率は短答合格者ベースの数字である。)

 

受験者数

短答
合格者数

短答
合格率

論文
合格者数

論文
合格率

23

6477

1339

20.6%

123

9.1%

24

7183

1711

23.8%

233

13.6%

25

9224

2017

21.8%

2017人でも、昨年より2%合格率が落ちている。
仮に、1645人だと、どうなるか。
これは、17.8%になる。
これは、ちょっと合格率が下がりすぎ、という感じだ。
そういうわけで、間の170点、2017人に落ち着いた。
そんな感じだろう。

今年は、昨年より合格者数は増えたが、合格率は下がっている。
これは、合格者増よりも受験者増の方が大きかったことによる。
仮にこの傾向が続けば、短答は次第に受かりにくくなっていく。
現在、ローの志願者減が止まらない。
その分、予備の方に流れている。
もうしばらくは、この傾向は続きそうである。
予備の短答合格率は、やや低下傾向になりそうだ。

科目別状況

以下は、各科目の平均点の推移である。
一般教養のかっこ内は、比較のため、30点満点に換算した数字である。

 

平成23年
平均点

平成24年
平均点

平成25年
平均点

憲法

15.8

15.1

16.5

行政法

12.2

12.5

14.2

民法

19.2

16.3

19.7

商法

12.9

14.7

12.1

民訴法

14.7

16.9

17.0

刑法

18.6

16.6

17.0

刑訴法

14.0

15.6

17.9

教養

23.2
(11.6)

27.2
(13.6)

25.2
(12.6)

合計

130.7

134.7

139.5

昨年より、5点ほど合計点が上がっている。
合格点が5点上がったのは、これに対応している。

商法を除くと、法律科目は全て平均点が上がっている。
法律科目は、解き易い問題が多かった。
昨年より平均点が上がったのは、法律科目の全般的な易化のせいである。
一方で、一般教養は、平均点が2点下がっている。
しかし、それでも平成23年より2点高い。
昨年が易しかったとみるべきだろう。

例年、行政、商法、一般教養の出来が悪い。
今年も、その傾向は続いている。
ただ、これはやむを得ない面もある。
上記3科目を勉強するより、憲法や民法の方が、伸びしろがあるだろう。
今年の問題なら、憲法、民法は8割以上取りたい。

予備でよく言われるのは、一般教養は零点でも受かる、ということだ。
今年の合格点は、170点。
法律科目は、7科目である。
従って、各科目平均で、170÷7≒24.2点取ればよい。
24点は、30点満点の8割である。
従って、法律科目で8割強を取れば、教養は零点でもよかった。
とはいえ、実際には法律科目全科目で8割強は、なかなか難しい。

逆に、法律科目を7割取ると、教養は何点必要なのか。
法律科目7割は、合計で147点である。
そうすると、170-147=23点を教養で取る必要がある。
これは、今年の教養の平均点より約2点下の水準である。
さらに、法律科目が6割だと、どうか。
法律科目6割は、合計で126点である。
そうすると、170-126=44点を教養で取らないと受からない。
これは、60点満点の7割強である。
こうなると、むしろ教養で逆転するイメージになる。
従って、教養を平均以上取る自信のない人は、法律科目7割を確保したい。

司法試験の短答では、概ね6割強を取れば受かる。
もちろん、全科目法律科目である。
教養を7割強取る人を除けば、予備は法律科目7割が必要。
すなわち、予備は、司法試験より1割くらい短答が厳しい。
予備組が全員司法試験の短答に受かるのは、10%の差が堅いことを示している。
体調等による得点の振幅が、10%以上生じない。
多少調子が悪くても、予備で7割取れた者が司法試験で6割未満に落ちることがない。
これが、短答の安定性である。
逆に、教養で逆転する人は、法律科目は6割程度。
すなわち、司法試験でもギリギリのラインである。
このような層が一定数いれば、予備全員合格は難しい。
司法試験短答の予備全員合格は、教養で逆転するタイプの人がほとんどいないことを示している。
教養逆転型の人が少ないということは、予備に一般教養を課す意味に疑問を投げかける。

論文の予測

気になるのは、今年の論文の合格者数である。
以下は、いくつかの想定される今年の論文合格者数と合格率の組み合わせである。

想定論文
合格者数

想定論文
合格率

備考

300

14.8%

 

274

13.6%

昨年の合格率

250

12.3%

 

233

11.5%

昨年の合格者数

183

9.1%

平成23年の合格率

123

6.0%

平成23年の合格者数

平成23年の水準は、ちょっとなさそうだ。
さすがに、これは合格者数、合格率共に低すぎる。

昨年と同じ合格者数(233人)だと、どうか。
合格率は、11.5%となる。
合格率としては、ちょうど昨年と平成23年との中間くらいの数字になる。
今年の司法試験の短答では、予備が全員合格した。
しかも、予備の受験者数は増加傾向だ。
昨年より合格者数を絞る、ということは考えにくい。
そうすると、この数字が予想の下限ということになる。
最も厳しい想定でも、上位1割に入れば、十分受かる。
そのくらいの受かり易さ、ということになる。

昨年と同じ合格率(13.6%)だと、どうか。
この場合、合格者数は、274人となる。
昨年より、41人合格者数が増える。
ありそうな数字である。
この場合は、受かり易さは昨年と同程度ということになる。
昨年の再現答案の水準が、そのまま参考になる。

仮に、300人まで合格した場合は、どうか。
この場合、合格率は14.8%になる。
概ね、上位15%に入れば、受かる。
300という数字は、一つの心理的な節目である。
今回は、この辺りが上限ではないか、という感じだ。
最も甘い想定でも、上位15%は必要だ、ということになる。
上位20%以下では、合格は難しい。

今年の短答は、合格者数が増えた反面、合格率は下がった。
論文も同じようになるとみると、250人、12.3%が、ありそうな数字となる。
この場合、昨年よりも、やや受かりにくくなる。
それでも、上位1割に入れば問題ない。
いずれにせよ、目標は上位1割、ということだろう。

現実的な数字としては、合格者数は250~280。
合格率は、12%~14%の辺りに収まりそうである。

合格ラインは、「一応の水準」の下の方

昨年の論文合格率は、短答合格者ベースで13.6%だった。
すなわち、上位13.6%に入らないと、受からなかった。
これは、どの程度の水準なのだろうか。

昨年の論文の合格点は、230点。
これは、500点満点の46%である。

得点率46%とはどのくらいの水準なのか。
これは、「一応の水準」の下限に近い水準である。

(「司法試験予備試験論文式試験の採点及び合否判定等の実施方法・基準について」より引用)

1.採点方針

(1) 白紙答案は零点とする。

(2) 各答案の採点は,次の方針により行う。

ア.優秀と認められる答案については,その内容に応じ,下表の優秀欄の範囲。
 ただし,抜群に優れた答案については,下表の優秀欄(  )の点数以上。

イ.良好な水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の良好欄の範囲。

ウ.良好とまでは認められないものの,一応の水準に達していると認められる答案については,その内容に応じ,下表の一応の水準欄の範囲。

エ.上記以外の答案については,その内容に応じ,下表の不良欄の範囲。
 ただし,特に不良であると認められる答案については,下表の不良欄[  ]の点数以下。

優秀

良好

一応の水準

不良

50点から38点
(48点)

37点から29点

28点から21点

20点から0点
[3点]

(引用終わり)

各科目50点満点だから、得点率46%は、23点。
一応の水準は、28点から21点の間だから、真ん中よりも下。
むしろ、下限に近い水準であることがわかる。
これは、平均点の水準ではない。
合格ライン、すなわち、上位13.6%の水準である。
なお、平均点は190.2点だから、得点率38%。
1科目にすると、19点で、不良の方に落ちている。

※なお、合格率が9.1%だった平成23年の合格点は、245点だった。
この場合、得点率は49%。
1科目にすると、24.5点である。
上位9%水準でも、一応の水準の真ん中であった。

このことからいえるのは、「一応の水準」に入れば概ね受かる、ということだ。
「優秀」や「良好」という枠は、ないと思った方がよい。
この点を、多くの人が誤解している。
予備の合格率は低いから、優秀のレベルを書かないと受からない。
そう思っている人が多い。
そういう人は、誰も書かないような問題意識を大展開する。
その結果、かえって一応の水準の事柄を落とす。
実力のある不合格者のほとんどは、こういう自滅型である。

昨年の大学生の論文合格率は、28.5%である。
全体の13.6%の、倍以上の合格率である。
大学生が受かりやすいのは、余計な論点を思いつかない。
基本事項だけを、素直に書いてくるからである。
基本とは、大学生でも知っているレベルの基本である。
(ローで教わることは、合格には必要でない。)
配点は、そういうところにしかない。
実力者しか思いつかない論点は、書いても零点、むしろマイナスになる。
再現答案等をみていても、そういう感じの採点になっている。
「当たり前だから書かない」ではなく「当たり前だけを書く」。
この発想の転換が、必要である。

posted by studyweb5 at 08:05| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする


  【当サイト作成の電子書籍一覧】
司法試験平成28年最新判例ノート
平成29年司法試験のための平成28年刑訴法改正の解説
司法試験定義趣旨論証集刑訴法(逐次改頁版)
司法試験定義趣旨論証集刑訴法(通常表示版)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(民法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(民法)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(行政法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(行政法)
司法試験平成27年採点実感等に関する意見の読み方(憲法)
司法試験平成27年出題趣旨の読み方(憲法)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(会社法)
司法試験定義趣旨論証集(会社法)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(物権)
司法試験定義趣旨論証集(物権)
司法試験平成26年最新判例ノート
司法試験論文用平成26年会社法改正対応教材
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(民法総則)
司法試験定義趣旨論証集(民法総則)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(刑法各論)
司法試験定義趣旨論証集(刑法各論)
司法試験定義趣旨論証穴埋問題集(刑法総論)
司法試験定義趣旨論証集(刑法総論)
司法試験平成25年判例肢別問題集
司法試験平成25年判例論証穴埋問題集
司法試験平成25年判例論証集
司法試験定義趣旨論証集(行政法)

  【最新ニュース・新刊書籍紹介】
法科大学院の撤退止まらず 国立、有名私大で募集停止
弁護士が着手金詐取か 「被害回復」と顧客集める
ジュリスト 2017年 09 月号
「徴用工 個人請求権消滅せず」 文大統領、初の言及
<文大統領記者会見>「慰安婦、韓日会談で未解決…徴用者も民事訴訟権利は残る」
徴用工問題 歴史再燃防ぐ努力こそ
ハイローヤー 2017年 10 月号
平成30年司法試験の実施日程等について
平成30年司法試験予備試験の実施日程等について
ビギナーズ刑事政策 第3版
【東京開催】≪司法試験受験者対象≫企業への就職を希望する方向け個別就職相談会
【名古屋開催】≪司法試験受験者対象≫今後のキャリアを考える個別就職相談会
司法試験・予備試験 逐条テキスト (3) 刑法 2018年
千葉県警、自動車盗事件でGPS捜査を中止 各地の裁判所で適否めぐる判断分かれ
警察の強圧的事情聴取、生徒の父が音声公開「レコーダーがなければ泣き寝入りだった」
伊藤真が選んだ短答式一問一答1000刑法
「始業5分前体操」でスズキに是正勧告…始業前の体操や朝礼は「労働時間」になる?
痴漢トラブル、その場で弁護士にチャット相談 「痴漢えん罪109番」の機能が画期的!
刑事弁護の理論
“荒れる法廷”中核派活動家・大坂正明被告の公判に立ちはだかる不規則発言と「時間の壁」
東大もハーバードも頂点 真由さんの癖になる勉強法
理論刑法学の探究10
freeeがマネーフォワードに敗れた根本原因
【名古屋開催】≪法務職対象≫転職をじっくり考えたい方の為の個別転職相談会
テキスト 司法・犯罪心理学
【東京開催】≪法務対象≫電話相談OK!土曜日も開催!10月入社希望の方向けの個別転職相談会
【東京開催】≪法務対象≫いつかは転職したい方へ まずは情報収集から始めたい方向け個別転職相談会
司法試験&予備試験 短答過去問題集(法律科目)平成29年度
法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会第4回会議議事録等
法科大学院 破綻する制度
法科大学院、半数が廃止・募集停止 背景に政府読み誤り
受験新報 2017年 09 月号
【大阪開催】≪法務対象≫まだ間に合う!10月入社をご希望の方向け個別転職相談会(無料)
【横浜開催】≪経理・人事・法務・税務スタッフ 対象≫『このままでいいの?』悩める20代の為の個別転職相談会
ハイローヤー 2017年 10 月号
掟破りの勉強法で実力アップ! 問題集はまず「答えチェック」から(23)
第71期司法修習予定者対象採用説明会のご案内(大阪弁護士会)
ジュリスト 2017年 08 月号
司法修習予定者向け夏季・秋季実習について(法テラス)
法曹志望の学生支援 熊本大、九大大学院と連携
法学セミナー 2017年 09 月号
 【名古屋開催】≪司法試験受験者対象≫今後のキャリアを考える個別就職相談会
岡山の弁護士を懲戒処分 依頼人とトラブル 弁護士会調停も出頭せず
法学教室 2017年 08 月号
弁護士が密室で事務員女性にわいせつ行為、来客ない時に
「情けなくて誰にも相談できず」1人自宅で泣き崩れたことも…大阪府警、捜索

裁判実務フロンティア 家事事件手続
検察職員が「出禁」=運動施設、深夜に騒ぐ
「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」(平成29年7月18日)のとりまとめ
注釈民事訴訟法第4巻 -- 第一審の訴訟手続(2) 179条~280条 (有斐閣コンメンタール)

刑事訴訟法等の一部を改正する法律について
いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪について(PDF)
法曹養成制度関係閣僚会議
民法(債権関係)の改正に関する要綱案
民法の一部を改正する法律案
法曹養成制度改革の推進について(PDF)
法曹養成制度改革推進会議
法曹養成制度改革顧問会議
平成29年司法試験予備試験の結果について
平成29年司法試験の結果について
司法試験考査委員の不適切行為に関する通報窓口

  【司法研修所教材・講義案・調査官解説等】
事件記録教材 法科大学院教材
調査官解説
事例で考える民事事実認定
民事訴訟における事実認定 契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)
プラクティス刑事裁判
プロシーディングス刑事裁判
検察講義案 平成24年版
新問題研究要件事実
紛争類型別の要件事実 民事訴訟における攻撃防御の構造 改訂
刑事第一審公判手続の概要
刑事判決書起案の手引
民事判決起案の手引
民事訴訟第一審手続の解説
情況証拠の観点から見た事実認定
民事訴訟における要件事実 第2巻
民事訴訟における要件事実 増補 第1巻
書記官研修講義案等