2013年05月26日

平成25年司法試験論文式の感想

問題文は、こちら

事務処理よりも論理に傾斜

全体の印象としては、事務処理、多論点型の問題が減った。
論理重視の問題が多かった。
これは、新司法試験が始まって以来、続いている傾向である。
今回は、特にその傾向が顕著だったように思われる。
当初は、とにかく論点が多く、事例処理に徹するしかないものが多かった。
そのような問題の場合、論証を省略し、規範・当てはめをコンパクトにこなす。
そういう方法論が有効であった。
それが、次第に単一論点を説明させるような問題へと、シフトしてきている。
そのため、論証をコンパクトにして事例処理さえすればよい。
そういうイメージは、修正が必要になっている。
むしろ、基本論点はしっかり論証する。
その理解から、問われている応用を説明する。
そういう論理系の処理が、求められてきている。
かつての旧司法試験の傾向に、近づきつつある。

憲法について

憲法は、難しく考えれば難しくなるが、易しく考えれば易しい。
受かりやすいのは、易しく考えて書くことである。

本問のテーマは、デモ行進の自由と公共営造物(厳密には行政財産)の目的外利用である。
これは、パッと見てわかるだろう。
(パッ見てわからないとすれば、勉強不足である。)
この直感に従って、簡単に構成すべきだった。

デモ行進について、参照すべきは新潟県公安条例事件
それから、東京都公安条例事件である。
泉佐野市市民会館事件は、市民会館の使用について新潟県公安条例事件を引用したものである。)
後は、これを事案に沿って検討していくだけである。

行政財産の目的外利用については、管理権が優先する。
(地自法238条4項、238条の4第7項参照)
この点が、道路や公園と違うところである。
(同法244条1項2項対照。道路や公園がパブリックフォーラムであることの裏返しともいえる。)
従って、裁量論ということになる。
最判平18・2・7を知っていれば、気付き易かっただろう。
後は、裁量の逸脱濫用があるか。
これを、事実を拾って当てはめていけばよい。

このように書くと、とても簡単そうにみえる。
しかし、現場では、上記だけでも時間が足りないくらいだ。
上記以上のことを書こうとすると、簡単に破綻する。
学問の自由や大学の自治との関係、講演者の表現の自由の援用などは、書いていられない。
(これらが出題趣旨に載ってくるとしても、書きにいくべきではない。)
ましてや、部分社会の法理などは、考えるだけでも時間の無駄である。
上記のような問題意識は、当てはめの中で拾うという程度でよい。
以上のような基本的な検討枠組みを踏まえた上で、具体的な検討ができているか。
それが、憲法の評価を分ける。
入り口の人権選択や検討枠組みを外すと、具体的検討をしていても、評価は伸びない。
公法の最低ライン未満者が毎年多いのは、一つには行政法の勉強不足がある。
しかし最大の原因は、本筋を外した場合の極端な憲法の採点方法にある。
ただ、逆に考えれば、本筋を外さなければ、安定してそこそこの点が付く。
その意味では、怖いけれども、基本を押さえれば安定するようになる科目である。

行政法について

行政法は、他の科目と比較して顕著な傾向がある。
それは、誘導が詳細だ、ということである。
誘導に沿って項目を立てていけば、そのまま答案構成になる。

今年は、特にその傾向が強い。
かなり細かいところまで、書くべきことが書いてある。
後は、それに沿って事実と条文を拾うだけの作業である。
だから、簡単かと言えば、そうではない。
時間との戦いがあるからだ。
本問は、誘導で指定された項目が非常に多い。
項目を書き写し、条文と事実と簡単な理由付けを付す。
これだけで、もう時間が足りない。
行政法の知識・理解というよりは、事務処理能力そのものが問われたといってよい。
その意味では、本問の内容的な検討は、あまり意味がない。

民法について

長文の事例であるが、多論点の事例処理型ではない。
どの設問も、ほとんど単一論点を問うような感じになっている。
そのため、趣旨から丁寧に説明することが必要だった。

設問1は、446条2項の趣旨から、Cの電話による追認の有効性を書く。
設問2は、716条の趣旨から、Hの過失をFの過失と同視できるかを書く。
設問3は、必要費償還請求が認められる趣旨から、相殺の期待の程度が違うことを書く。
(公示をみて修繕するわけでなく、本来的に賃貸人の負担であるから賃料との差引決済の期待が強い。)

いずれも、気付いてしまえば簡単だが、気付かないと厳しい。
このような問題の場合は、構成の時間は多めに採るべきだろう。
何も思いつかないのに、見切り発車するのは危険である。
例えば、設問1で延々と要件事実論を書く。
そういった答案は、ほとんど点が付かない。
出題意図に気付くまでは、長めに時間を取って考える。
気付いてしまえば、内容はシンプルだ。
コンパクトに書けば、短時間でも書ききれるだろう。

商法について

商法は、多論点、事例処理型といえる出題だった。
最近の受験生なら、むしろこういう出題の方が、ホッとするのだろう。

設問1は、145条1号以外は、典型論点である。
そして、同号は、第1回の予備試験でも問われている。
平成23年司法試験予備試験論文式商法出題趣旨検討と参考答案参照)
予備と新試験の重複は、当サイトでも再三指摘している。
予備を受ける人は、新試験を検討すべきである。
新試験を受ける人は、予備も検討すべきである。

設問2(1)は、決議取消しを挙げて取消事由を指摘する。
共有株式による議決権行使を無効にした点、議題外提案(304条)辺りが、目立つところだ。
共有株式の権利行使者(106条本文)は持分過半数で決する(最判平9・1・28)。
これは、やや細かい。
とはいえ、判例を知らなくても、現場で考えれば思いついたのではないか。
余裕があれば、裁量棄却についても触れておきたい。

設問2(2)は、決議が取り消された場合を考えるのだろう。
決議取消しにより、総額は6000万円のままであると考える。
そして、直後の取締役会で決定された分配比率で按分する。
差額が、不当利得として返還されることになる。
これは、あり得る考え方だろう。
あるいは、取締役会への報酬決定の委任自体がないことになる。
だから、直後の取締役会の決定も無効だから、全員無給である。
この場合は、全額返還請求できる。
これも、ないわけではないだろう。
委任は無報酬が原則だからである(会社法330条、民法648条1項)。
なお、決議取消しを前提にしない場合には、利益供与も考え得るが、書く意味はあまりなさそうだ。
それから、Aを特別利害関係取締役として、取締役会の方を無効にする構成もある。
Aだけが極端に報酬が高いので、これは考え得る構成だろう。
この場合は、具体的な配分比率も無効となるので、全員無給とする考え方が成り立つ。

設問3の①は、差止請求(210条)である。
Aの支配権確立目的でされたことが、不公正発行に当たるか。
形式上株主割当てであっても実質BCにその機会がないこと。
Aは報酬の引き上げで払込金を捻出していることから、会社の資金調達の意義に乏しいこと。
こういったことを指摘して、不公正発行だと認定するのが筋だろう。
ここでは、主要目的ルール(東京高決平17・3・23)を展開したくなる。
ただ、一般に主要目的ルールが論じられる場面とは、非公開会社、株主割当てという点で異なる。
しかも、大展開するだけの余裕はない。
そういうことから、主要目的ルールを論じるのではなく、端的に事実を指摘して当てはめた方がよい。

②は、株式発行無効の訴えである。
まずは、①による仮処分命令を無視した場合には無効事由となることを示したい。
それから、不公正発行が無効事由になるかを書く。
余裕がなければ、差止めの機会がある以上無効事由でない、としてもよいだろう。
最判平6・7・14があるからである。
ただ、本問の場合、株主割当てではあるが、実質的にはBCの持株比率が害されている。
そこで、最判平24・4・24と同様の発想で、無効事由とする余地がある。
(上記判例は、司法試験平成24年最新判例ノート(詳細版)に収録していた。)
出題意図は、おそらくこの点にあるのだろう。
気が付いたのであれば、書きたいところである。

民訴法について

民訴は、従来から、最も旧試験に近い傾向を示していた。
設問3を除けば、単一論点の論理問題である。
(設問3は、要件事実の知識問題である。)
旧試験の民訴は、一行問題が多かった。
特に、第1問は、昭和63年度から平成20年度まで、全て一行問題であった。
平成20年度旧司法試験論文出題趣旨民訴法検討参照)
一行問題は、当然理論的な部分を問う問題になりやすい。
民訴は、旧試験時代から、理論重視の性格が強かった。
その傾向が新試験になっても受け継がれ、また近時、強まっているといえる。
旧試験時代の民訴には、定跡があった。
基本知識から書く、ということだ。
例外を問われたら、原則から書く。
配点は、むしろ原則の方にあるからである。
このことは、新司法試験でも、当てはまる。

設問1は、過去の法律関係の確認の利益に関するものである。
判例との事案の違いが問われている。
しかし、いきなり違うところを列挙して羅列してはいけない。
まず、過去の法律関係の確認の利益に関する基本知識を想起すべきだ。
過去の法律関係は、その後変動するから、確認しても紛争解決に役立たない。
だから、現在の法律関係を抜本的に解決できるような場合に限り、確認の利益が認められる。
上記を踏まえて、本問を考える。
結論は、既に指定されている。
訴訟Ⅰは確認の利益を否定、昭和47年判例は肯定である。
だとすれば、訴訟Ⅰは現在の法律関係の抜本的解決につながらない。
他方、昭和47年判例は、現在の法律関係の抜本的解決につながる。
そういう違いがあるのだろう。
そのような予想を立てた上で、両者を見比べると、答えが見つかるはずである。
上記の枠組みを捉えた上で、それに沿った検討がされていれば、評価されるだろう。
例えば、昭和47年判例は、遺言による権利関係が不明確だと主張されている。
そのような場合、現在の法律関係を前提に訴訟を提起するのが難しい。
誰に対し、どのような訴えをすればよいか、わからないからだ。
先に遺言の効力を確定した方が、抜本的解決になる。
他方、訴訟Ⅰの場合、遺言が有効であればBに甲1が帰属するのが明らかだ。
ならば、現在の甲1の帰属につき、直接Bを相手に訴訟をすればよい。
その中で、遺言の効力を争えば足りるだろう。
そういったことを、指摘することになる。

設問2も、同様に考えればよい。
当事者適格について、基本知識を思い出す。
訴訟物である権利義務の帰属主体(と主張し、主張される者)である。
昭和51年判例では、相続財産の処分権が遺言執行者に帰属するから、相続財産の持分権確認の被告となる。
では、訴訟Ⅱの場合はどうか。
遺言②がEの主張どおり無効である場合、抹消登記義務を負うのはCである。
だとすれば、被告適格はCにある。
昭和51年判例とは、訴訟物で主張された権利義務の帰属主体が異なる、ということになる。
これも、いきなり事案の違いを書くのではなく、基本知識を示し、それに沿って論ずべきである。

設問3は、要件事実を問う問題である。
(1)は、非のみ説を書く。
(2)は、Gの主張には「父」「生前」という上記(1)で示した事実をうかがわせる部分がある。
そこで、それは(1)の事実主張を含む趣旨か。
それを釈明すべきだった、ということを示せばよい。
わかってしまえば単純な問題だが、現場では気付きにくかったかもしれない。

設問4は、平成10年判決を基礎に、逆の論理を示せるかを問う問題である。
単純に平成10年判決をひっくり返せば、答えになる。
平成10年判決は、既判力は及ばないが、信義則上争うことが許されないとする。
本問の場合は、既判力は及ぶが、信義則上争うことができる(あるいは遮断効を主張できない)とすればよい。
平成10年判決の理由付けは、訴訟物は一部だが、実質審理は全体に及ぶという点である。
本問の場合は、訴訟物は所有権全体だが、実質審理は共有持分権の有無には及んでいない。
(共有持分権の取得原因の有無を審理し、排斥したわけではない。)
これが、理由付けとなる。
平成10年判決が信義則を基礎付ける根拠としたのは、請求及び主張の蒸し返し、被告の紛争解決への合理的期待、二重応訴の負担という点である。
ならば、本問の場合は、請求及び主張の蒸し返しとならず、被告に紛争解決の合理的期待がなく、二重応訴の負担もやむを得ないという点になろう。
ここで、後訴に至る訴訟経過を使う。
すなわち、Hは、前訴後も単独所有権を主張したために、Gはやむなく後訴を提起した。
紛争の原因は、むしろHにある。
だとすれば、後訴は前訴の蒸し返しとはいえないし、Hに紛争解決の合理的期待もなく、Hの二重応訴の負担もやむを得ない。
こういったことが、指摘できればよい。
こういう論理性が問われている部分は、知識を書いても点にならない。
シンプルな論理を、明快に答案に示すようにしよう。

刑法について

刑法も、憲法同様、怖い科目である。
難しく解くと、大変な難問となる。
しかし、簡単な構成を採れば、それほど怖くない。
本問は、結果的には、単なる論点組み合わせ問題である。

本問で、絶対に検討すべきは、Aの殺害とB車の放火だろう。
まずは、これに絞って検討してみる。

Aの殺害については、出発点は甲による間接正犯である。
仮に、乙が途中で気付かず、計画通りAを焼死させたとしよう。
この場合、争いなく甲は間接正犯だからである。
では、乙の途中知情は、どのように影響するか。
利用者標準説からは、間接正犯の未遂となる。
他方、被利用者標準説からは、そもそも着手がないことになる。
そして、いずれの立場からも、客観的に教唆だったと考えることになる。
そこで、抽象的事実の錯誤の処理となる。
教唆の限度で認めることになるだろう。
(厳密には、教唆の因果性(及びその認識)として十分か疑問はあるが、そういう細かいことは触れない方がよい。)

上記の処理は、答練や演習書ではよくある構成である。
典型論点の組み合わせで、うまく処理できる。
だから、これでよさそうだ、と判断できる。
これ以外の構成は、説明が難しい。
事後的に共謀共同正犯になる、という考え方も、ないわけではない。
しかし、そうすると、典型論点で処理できなくなる。
実力があるのに受かりにくい人は、こういうところで無理をする。
気をつけたい。

乙に関しては、早すぎた構成要件の実現である。
これは最決平16・3・22が出て以来、答練等で頻出の典型論点である。
二つのアプローチがあり得る。
1つは、放火までの一連の行為を1個の実行行為にする方法である。
この場合、上記判例の挙げる密接性が必要だろう。
他方で、第1行為開始時点の危険性や故意は、あまり問われない。
(銃の引き金に手をかける行為だけで死の危険は生じないが、銃で狙いをつけて撃つという実行行為の開始が着手であることと同じ発想である。)
後は、因果関係の錯誤で処理すれば足りる。

もう一つは、第1行為のみが実行行為であるとみる考え方である。
この場合、第2行為との密接関連性は、さほど必要でない。
他方で、第1行為自体に死の危険が認められる必要がある。
本問では、口にガムテープを貼って、山中の悪路を走行する行為に、客観的な死の危険がある。
従って、これが第1行為ということになる。
では、第1行為時の乙に死の認識・認容があるか。
計画性を重視し、因果関係の錯誤の問題としてこれを肯定するのが、普通だろう。
他方で、これは予備の認識に過ぎないとして、過失犯にすることは考えられる。
しかし、その場合、どの過失犯が成立するのか。
車を運転しているから、自動車運転過失致死なのか。
あるいは、業務上過失致死なのか。
重過失致死なのか。
本筋から離れると、こういう面倒な問題に巻き込まれやすい。
素直に因果関係の錯誤を書き、故意を認めればよい。

B車の放火については、自己所有の建造物等以外放火である。
(乙との関係では、甲の同意がある。)
この点については、甲乙は共謀共同正犯ということで問題ないだろう。
あとは、公共の危険の発生、認識の要否について、順次検討すれば足りる。
公共の危険については、最決平15・4・14がある。
この判例は、客体が建造物等でなくてもよいとしたものとして、有名である。
また、車の配置も、本問の事案と似ている。
だから、同様に公共の危険を認めても、合格ラインは超えるだろう。
ただ、上記判例は市街地の駐車場の事案である。
しかも、車だけでなく、ゴミ集積場にまで延焼の危険が及んでいた。
採石場で、しかも車しかない本問の場合に、同様に考えうるか。
厳密には、これは公共の危険を否定すべき事案のように思われる。
とはいえ、本試験現場ではそこまで考えていられない。
むしろ、あっさり肯定した方が、受かりやすいだろう。
公共の危険を肯定すれば、認識の要否まで書けるということもある。

その他の罪としては、監禁があるが、論じる実益はほとんどない。
確かに、可能的自由で足りるかという論点はある。
しかし、わざわざ書きに行くほどでもない。
罪数処理が面倒になるだけである。
本試験の感覚としては、無視してよい、という感じである。
同様に、昏睡させた点についての傷害罪も、敢えて書く必要はないだろう。
また、死体損壊につき不能犯が問題となる。
具体的危険説からは、殺人未遂となり得るだろう。
ただ、これは第1行為のみを殺人の実行行為と考えた場合にしか、問題とならない。
(一連の行為とみるなら抽象的事実の錯誤であるが、これも書く価値は低い。)
そして、明らかにメイン論点ではない。
これを書くくらいなら、殺人と放火をきちんと書いた方がよい。

以上のように、本問は素直に書けば単なる論点組み合わせである。
しかし、本筋を踏み外すと、余計な問題が生じてくる。
構成段階で、無理のない筋を組み立てることができたかが、ポイントだった。

刑訴法について

下線を引いて論ずべき部分を限定するのが、近時の刑訴法の傾向である。
これには、素直に従えばよい。
反面、書くべき論点が限定される分、趣旨から丁寧に論じるようにする必要がある。

設問1のうち、逮捕①は、3号該当で問題ない。
準現行犯の要件を示して、当てはめるだけである。
逮捕②は、甲の証跡をもって3号該当といえるかを検討する。
趣旨から否定に考えるのが、一つの無難な筋である。
肯定する場合には、事前に伝達を受けた情報と乙の供述の一致等、他の事実を付加して説明する必要がある。
自信があれば、踏み込んでもよい。
ただ、まとめ切れる自信がなければ、やめておいた方がよいだろう。
そこまで頑張らなくても、合格ラインは超えるからである。

差押えについては、和光大事件の応用である。
逮捕に伴う捜索差押えの趣旨から、説明していけばよいだろう。
携帯の差押えの必要性、連行と逮捕の現場の関係、連行中に落とした物は押収対象に含まれるか。
順番に説明していけばよい。
連行中に落とした物については、元々所持していたことが明らかであれば、認めて問題ないだろう。
連行後の被逮捕者の身体も捜索対象としうる以上、一時的に落とした場合も同様に考え得るからである。

設問2は、伝聞法則を問う問題である。
毎年のように出るが、毎年のように出来が悪い。
しかし、一度理解してしまえば、あまり間違えないようになる。
過去問も含めて、一度徹底的に理解するようにしておこう。

まず、全体について、321条3項準用。
これは、誰もが気付くだろう。

そして、別紙1は、全体としてWの体験した犯行当時の状況の再現である。
(写真は、Wの供述に代わるものであるから、説明部分と併せて供述証拠となる。)
要証事実は、再現どおりの犯行状況の存在=犯罪事実の存在ということになるだろう。
その内容が、本当に犯行当時の状況どおりであるのか。
写真に写っているとおりに、被害者は刺されたのか。
Wの見間違い、記憶違いではないか。
これは、まさに問題となる。
だから、全体として伝聞証拠である。
ただ、別紙1は、本当にWの言ったとおりに再現したものなのか。
その点について、Wの署名・押印による確認がない。
すなわち、321条1項柱書の要件を欠く。
従って、3号要件を検討するまでもなく、証拠能力は否定される。
Wの証人尋問が必要だ、ということになる。
なお、証人尋問において別紙1の写真を示して引用させた上で、調書に添付することは違法でない(最判平23・9・14)。
証人尋問が必要になっても、写真が無駄になるわけではない。

仮に、検察官の立証趣旨が、「犯行再現状況」であったらどうか。
その場合、犯行状況を立証するつもりはないが、どう再現したかは立証したい。
そういう意味になる。
その場合は、Wの体験した犯行当時の状況どおりであるかは、問題にならない。
とにかく、このように再現をしたという事実。
それだけを立証したいのだ、ということになる。
こんなものは、犯罪事実の立証にはおよそ意味がない。
本来、関連性を否定して却下すべきである。
ところが、第1審、第2審共に、証拠採用して犯罪事実認定の基礎にしてしまった。
それは、再現どおりの犯罪事実の存在を要証事実と考えているにほかならない。
だとすれば、伝聞例外要件が必要である。
そのような検討をしたのが、最決平17・9・27の場合である。
本問の場合を、これと混同した人が、案外多かったようだ。

別紙2の写真は、まさにこのように見える、という映像自体を証拠とするものである。
従って、供述証拠に当たらない。
供述証拠でない以上、伝聞証拠ではない。

その下のWの発言には、性質の異なる二つの発言がある。
犯行当時の事実を再現している部分は、伝聞証拠である。
すなわち、Wが犯行当時立っていた場所を指示する部分。
これは、Wが犯行当時体験した事実の再現である。
従って、他の証拠からWの立ち位置が明らかな場合を除き、伝聞法則の適用がある。
そして、録取の正確性がWの署名・押印で担保されていないから、321条1項柱書の要件を欠く。
従って、この部分には証拠能力が認められない。
他方、その位置からの見え方については、実況見分当時の事実関係を述べているに過ぎない。
「このように」というのは、発言当時のWにとっては、現在の事実のことを言っている。
すなわち、現場指示である。
だから、この部分は非伝聞である。

それから、Pによる「本職も・・」という部分。
これは、撮影の動機を示すに過ぎない。
(よく見えたから撮影したという趣旨であって、よく見えた事実を当該発言から立証する趣旨ではない。)
従って、この部分も、非伝聞である。

以上から、Wの犯行当時の立ち位置を示す部分以外は、証拠能力が認められることになる。

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2013年05月20日

平成24年司法試験予備試験論文式刑事実務基礎出題趣旨検討と参考答案

問題文及び出題趣旨は、こちら

再び犯人性を訊いてきた

第1回予備試験の刑事実務では、犯人性の認定が問われた。
これは、予想外であった。
ただ、当時は、これが傾向として続くのかは疑問だった。
このときは、近接所持の法理が問われていた。
これは、刑事事実認定のテキスト等で、必ず触れられるような事項である。
同様のものとして、殺意や共謀の認定などがある。
それが理由で、犯人性が問われたのではないか。
だとすれば、今後は、必ずしも犯人性がメインにはなりにくい。
殺意や共謀が問われるなら、それは構成要件該当性の問題になるからである。
実際、第1回の予備でも、占有の当てはめが問われていた。
今後事実認定が問われるとしても、構成要件該当性が出やすいのではないか。
また、第1回では、刑事手続が問われなかった。
しかし、コアカリキュラムの刑事実務基礎(PDF)の記述は、大半が刑事手続である。
むしろ、今後はこちらの方が出題されやすいのではないか。
そう予想していた。

ところが、今回もまた、設問1で犯人性を訊いてきた。
しかも、前回以上に複雑な事実関係から、認定させようとしている。
設問2で刑事手続が問われているが、比重はとても小さい。
事例のほとんどは、設問1のためのものである。
すなわち、犯人性の認定をメインで訊いてきた。
前回に引き続き、今回も、予想外の出題だったといえる。

刑事手続についても手を抜かない

今回の出題から、以下のような仮説が考えられる。
刑事実務基礎では、刑法や刑訴との重複を避ける傾向がある。
構成要件該当性の認定は、刑法と重複する。
刑事手続は、刑訴と重複する。
だから、犯人性の認定が問われたのだ。
だとすれば、今後も今回のような傾向が続く。
すなわち、毎年のように犯人性の認定がメインで問われる。
これはこれで、一応ありそうな仮説である。

一方で、以下のような仮説も考えられる。
考査委員は当初、犯人性を続けて出すつもりはなかった。
本当は、刑事手続をメインで出したかった。
しかし、前回の犯人性の認定の出来があまりに悪かった。
そのため、きちんと学習するよう促す意味で、今回は犯人性をメインで出した。
今回、その役割は果たしたので、次回以降は刑事手続もメインにする。
従って、次回以降は、犯人性だけでなく、刑事手続もメインで出題される。
これも、ありそうな仮説である。
考査委員は、予備校の対策の裏をかくのを好む。
今回の出題で、予備校の答練等では、犯人性の認定ばかりが出題されるだろう。
そこで、逆に刑事手続をメインで出す。
考査委員のやりそうなことである。

上記の仮説は、どちらもありそうだ。
そうだとすれば、両方手を抜かずにやるよりない。
今回の出題を受けて、予備校等の対策は、犯人性の認定に偏るだろう。
そのため、刑事手続は手薄になりやすい。
刑訴の学習で、一応刑事手続は学習するが、公判の分野は論文の出題頻度が低い。
そのため、刑訴の学習でも、手薄になりがちだ。
公判前整理手続や、公判審理の手続の手順、趣旨等について、改めて確認しておくべきである。

とにかく最判平22・4・27を挙げる

設問1は、犯人性の認定を訊いている。
甲の自白はなく、直接甲が犯人であるとする目撃証言もない。
従って、直接証拠型ではなく、間接事実型の立証を考えることになる。

この場合に参照すべきは、最判平22・4・27である。

最判平22・4・27より引用、下線は筆者)

 刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ,情況証拠によって事実認定をすべき場合であっても,直接証拠によって事実認定をする場合と比べて立証の程度に差があるわけではないが(最高裁平成19年(あ)第398号同年10月16日第一小法廷決定・刑集61巻7号677頁参照),直接証拠がないのであるから,情況証拠によって認められる間接事実中に,被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するものというべきである。

(引用終わり)

上記判例は、近時の事実認定に関する判例の中で、最重要のものである。
本問でも、上記事実関係があるか否かが、主要な検討事項となる。
しかし、上記判例を参照できた答案は、皆無だったようだ。
ほとんどの答案が、漫然と間接事実を列挙するにとどまっていた。
そして、最後唐突に、「以上を総合すれば、甲を犯人と認定できる」と断定している。
何を根拠に、そのように判断したのかが、ほとんど示されていない。
グレーを積み重ねれば、クロになる。
そういう書き方をしている人が、ほとんどだった。
その原因は、上記判例を踏まえず、検討の視点を欠いたまま論述したからである。

※上記判例の基準は、犯人性につき「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度」を言い換えただけともいえる。
犯人でないとした場合の合理的な説明とは、「合理的な疑い」にほかならないからである。
すなわち、被告人が犯人でなくても、各間接事実は説明可能である。
だとすれば、被告人が犯人ではない合理的疑いがあるということになるだろう。
従って、同趣旨の検討ができていれば、必ずしも上記基準自体を用いる必要はないともいえる。
とはいえ、上記判例が犯人性について基準を具体化した以上、それに沿って検討した方が書きやすいだろう。

なお、上記基準は、飽くまで犯人性の認定に関するものである。
殺意の認定などには、用いるべきでない。

平成23年では、犯人性の認定というより、近接所持の法理を訊いたという感じだった。
そのため、上記判例を書かなくても、近接所持の法理を論述すれば足りた。

※近接所持の法理は、上記判例を財産犯について具体化したものである。
犯行直後に被害品を持っている者がいる。
その者は、どうやって被害品を入手したか、合理的な弁解ができない。
この場合、この者が犯人でないとしたならば、どういう説明が可能か。
犯行直後に、すぐさま犯人から受け取ったのか。
犯人とその者との間に特殊の関係がない限り、それは不合理である。
すなわち、合理的な説明とはいえない。
他に合理的説明の余地がなければ、上記判例に照らし、犯人と認定できる。
上記判例との関係では、そのような法理として理解できる。

しかし、今回は、近接所持以外の間接事実の評価も問われている。
だとすると、上記判例を示した上で、検討しなければならない。
今後、間接事実型の認定が問われた場合には、確実に書けるようにしておきたい。

答案に書く事実を取捨選択する

本問の事例は、かなりの長文である。
そして、様々な事実が挙がっている。
しかし、答案用紙は、4ページしかない。
全ての事実を挙げて、評価する余裕はない。
従って、重要な事実のみを抽出して、答案に書くことになる。
考査委員も、全ての事実の評価を求めているわけではない。
むしろ、必要な事実を抽出できるかを問うている。

(出題趣旨、下線は筆者)

 本問は,【事例】に示された複数の具体的事実の中から,甲が犯人であるか否かを判断するために必要な事実を抽出した上で,各事実が上記判断に有する意味付けを的確に評価して妥当な結論を導くことができるか(設問1),Aの証言に現れた甲の供述が伝聞証拠に該当するか否かなどを検討することにより,本件異議申立ての根拠及び理由の有無を的確に判断して妥当な結論を導くことができるか(設問2),という法律実務に関する基礎的な知識及び能力を問うものである。

例えば、ひったくりの前科は、犯人性とは全く関係がない。
「ひったくりの前科は犯人性を認定する根拠とはならない」などとわざわざ書くのは、紙幅の無駄である。
(ひったくりと住居侵入強盗は犯行態様も異なるから、これを犯人性の根拠とするのは論外である。最判平24・9・7最決平25・2・20参照。)

また、甲が犯人であることと矛盾しない事実は、直接犯人性の根拠とはならない。
例えば、Vの犯行直後の供述における犯人と、甲の体格は似ている。
また、同供述によれば犯人は緑のジャンパー及びサングラスを着用していた。
そして、甲宅からは、緑のジャンパーとサングラスが押収されている。
甲は、緊急逮捕時には赤のジャンパーを着ていたが、Aの供述によれば、一度部屋に入っているから、着替えることができた。
これらは、いずれも甲が犯人であることと矛盾しない事実である。
しかし、矛盾しないというに過ぎない。
甲にアリバイがないということも、同様である。

甲が犯人であっても矛盾しないが、甲以外の者が犯人であると考えても矛盾しない。
このような場合に、甲を犯人と認定することはできない。
上記場合には、甲以外の者が犯人であっても合理的に説明できる。
すなわち、甲は犯人でないという合理的疑いが残るからである。
証明すべきは、上記甲以外の者が犯人であると考える余地を否定する事実である。
それは、上記判例の基準にいう事実関係にほかならない。
犯人性と矛盾しない事実は、補足的に指摘する程度でよい。

なお、甲が犯人だとすると矛盾する事実関係。
これを指摘できる場合には、即犯人性否定となる。
問題文中にそのような事実関係があれば、それだけで結論が出る。
ただ、そのような問題は、あまり出ないだろう。

答案でも、上記判例の基準に当てはまりそうな事実関係。
それに絞って、書いていくべきだった。
本問におけるそれは、クレジットカードの所持とレシートの指紋である。

近接所持で決まりそうだが

クレジットカードの所持は、典型的な近接所持の場面である。
近接所持の法理を書いて、簡単に有罪にできそうにもみえる。
ただ、カードは、簡単に処分可能である。
大量の札束の場合と、比較してみるとよい。
運搬、交付、廃棄のいずれの場面でも、目立つだろう。
これに対し、カードは、怪しまれずに運搬、交付、廃棄が容易である。

犯行は、午前11時頃。
甲の所持が確認されたのは、午後3時頃である。
時間的な間隔は、約4時間ということになる。

※厳密には、所持の時点を午後零時まで遡らせるのは可能だろう。
カードは、V名義、利用停止、Vの供述から、被害品と同一であると認められる。
そして、カードは財布に入っていた。
そのことから、甲は財布も所持していたという一応の推認が働く。
これを否定するには、財布からカードを出した後に甲が入手した。
そういう特別の事情がなければならないからだ。
(ただ、それはさほど特別でないから、推認力は弱い。)
そして、Aの供述によれば、甲は帰宅後財布を所持していた。
その財布は、Aが犯罪で得たものと疑ったというのであるから、従来甲が所持していたものではない。
そして、Vの供述によると、少なくともVの財布とみて矛盾しない。
(ただし、矛盾しないだけで、単独で積極的に同一とは推認できない。)
他に、偶然甲がVのカードと別個にV以外の財布を入手したことを合理的に説明しうる事実はない。
だとすれば、午後零時に甲が所持した財布は、犯人の奪った財布と推認できる。
そう考えれば、時間的な間隔は、約1時間にまで短縮する。
ただ、上記の推認は、際どい。
弱い推認を積み重ねているからだ。
一方、甲の所持したカードと犯人の奪ったカードの同一性は、かなり堅い。
15時における甲の所持も、極めて堅い。
だとすれば、そこから直接推認した方が、わかりやすい。
また、答案上も、上記の推認過程+近接所持を書くより、ダイレクトに近接所持を書いた方が書きやすい。
しかも、本問では別ルートのレシートの指紋の方が、強力である。
だから、ここでそんなに頑張る必要もない。
そういうわけで、以下では15時のカード所持からの推認を考えたい。

4時間の間に、カードの所持が犯人から別の誰かに移る。
これは、それなりにありそうだと感じるだろう。
クレジットカードは、使えば足がつく。
だから、犯人は現金だけ抜いて、カードは捨てたかもしれない。
それを、甲が拾う。
何ら不合理なことではない。

ただ、本問では、甲は一貫して黙秘している。
すなわち、合理的な弁解をしていない。
犯人でないのであれば、黙秘せずしゃべるのではないか。
換言すれば、甲が犯人でないとすれば、甲の黙秘を合理的に説明できないのではないか。
そういうことになる。
(このような発想自体が黙秘権侵害ではないかとも思えるが、近接所持の場面では黙秘権侵害ではないと解されている。)
確かに、強盗の疑いがかかっているときにまで、黙秘するのはどうか。
正直にしゃべれば、強盗の罪は回避できる。
その辺に、ひっかかりはある。
しかし、拾った他人のカードを使うのも、犯罪である。
だから、黙ってしゃべらない。
そこには、一定の合理性がある。
本問では、黙秘に至る事情が不明である。
本問の事情だけで不合理とまでは、断定できないだろう。
以上から、カードの近接所持だけで犯人と認定するのは危ない、という感じだ。

理詰めで事実をつなぐ

有罪立証の本命となる証拠は、レシートである。
ただ、簡単に犯人性の根拠となるものではない。
犯行現場で見つかったレシートに甲の指紋があるから、甲が犯人だ。
そんな推認は、してはならない。
論理的に堅い認定を積み重ねて、犯人と甲をつないでいく必要がある。

レシートからは、甲の指紋が検出されている。
このことから、甲がレシートに触れたことがわかる。
これは、間違いのないことである。

では、レシートは、誰がV宅玄関の上がり口に落としたのか。
家人ではないか、と考えるのが自然である。
しかし、レシートが発行されたのは、犯行当日の午前10時45分。
このことは、レシートの記載と防犯ビデオから、堅い。
そして、犯行直後のV及びWの供述では、両者ともレシートは受け取っていないという。
一般に、犯行直後の被害者供述は、記憶も鮮明であるし、事件の解明を希望する立場であるから、信用できる。
本問でも、VとWに嘘をつく理由はない。
これは、真実だと考えてよいだろう。
そうすると、他にレシートを落とす人物はいるか。
臨場した4名の司法警察職員がいる。
しかし、4名とも、Zを利用していないから、レシートを落とすということはない。
Vによれば、当日はV宅に誰も入っていない。
だとすれば、落とす可能性のある人物は、犯人だけである。
従って、レシートを落としたのは、犯人と認定できる。

甲がレシートに触れた。
犯人が、レシートをV宅に落とした。
甲が犯人だとすれば、極めて自然である。
他方、甲が犯人でないとしたならば、合理的な説明は可能か。
Zでレシートが発行されたのは、犯行の約15分前である。
犯行後に甲がレシートに触れる機会はないから、この15分間に、甲が触れたことになる。
この15分間に甲はレシートに触れ、すかさず犯人に手渡したのか。
ちょっと考えられない、と感じるだろう。
(これは、近接所持の応用である。)
この点を捉えて、合理的な説明はできない、としてよいだろう。
すなわち、上記事実関係から、甲を犯人と認定できる。
ここまで書ければ、トップクラスの合格答案となる。

なお、ZとV宅は200mしか離れていないので、風で飛んできた、とも考え得る。
外のゴミが玄関先に風で入ってくることは、実際にはそれなりにあり得ることである。
あるいは、靴の裏に貼り付いて、玄関先に残ることもある。
たまたまZ付近を通った犯人の靴の裏に貼り付いていた、ということも、ないではない。
しかし、さすがにそれは本問の設定をブチ壊すので、考えなくてよいだろう。

弁護の視点から

上記のように、本問では、甲を犯人でないと考えるのは難しそうだ。
ただ、考査委員の意図したものかは不明であるが、犯人性を否定する筋がある。
それは、犯人は甲ではなく、甲の友人だという場合である。

本問で、甲と犯人が無関係の他人と考えると、15分間でレシートに触れることなどあり得ない。
しかし、両者が共犯(またはそれに近い)関係であれば、どうか。
甲はZで犯行用のひもとガムテープを買い、すぐにレシートの入った袋ごと犯人に渡す。
犯人はこれを受け取って、犯行に及んだ。
その後、甲と犯人は合流し、犯人は2万円を、甲は財布とカードを持って別れる。
このようなストーリーは、本問の各間接事実と矛盾しない。
甲が、Aに対し、財布を「友達にもらった」と答えたこととも、整合する。
その後のAに対するアリバイ工作も、甲が犯人でなくても説明がつく。
自分も、強盗幇助及び盗品無償譲受けの罪を犯しているからである。
また、黙秘して合理的弁解をしないことも、上記理由及び友人を庇う趣旨と考えれば、筋が通る。

Vの被害直後の供述からは、犯人は甲と似た体格で、緑のジャンパーとサングラスをしている。
上記筋からは、甲の友人も、偶然甲と似た体格、着用品だった、ということになる。
しかし、甲の友人が同様の体格、格好でも、何ら不合理ではないだろう。
特に、共通の格闘技やスポーツ(ラグビー等)を通した友人であるなら、なおさらである。
また、ジャンパーには特に特徴はないというのだから、たまたま同じ色でも、おかしくはない。

このように、甲が犯人でないとしても、合理的に説明できる。
もっとも、本問では、そのような友人の存在を示唆する事実がほとんどない。
唯一、甲のAに対する「友人にもらった」という発言だけである。
従って、弁護する側からすれば、上記条件に当てはまるような友人の存在。
これを示す主張・立証活動が必要となってくる。

捜査の視点から

他方で、本問では、当然なされるべき捜査が尽くされていない。
それがために、上記友人の存在を否定できない事実関係になっている。

一つは、甲の交友関係である。
携帯の発着信などから、そのような友人とのやり取りの有無をチェックする。
その結果によっては、別の実行犯が浮上する可能性がある。

もう一つは、犯行動機である。
Aは、甲のアリバイ工作を暴露するなど、捜査に協力的であり、その供述は信用できる。
甲が黙秘している以上、Aから犯行動機を聞き取るべきであった。
(Aが犯罪で得たと疑った理由として、前科以外にも何かあるはずである。)
甲は、Uに勤務しており、強盗まで犯すほど金に困っていたという事情もうかがわれない。
(強盗は、軽い気持ちでできるような犯罪ではない。)
甲に動機が乏しければ、他に主犯となる友人等がいるはずである。
(幇助や盗品譲受けは、軽い気持ちで犯しうる犯罪である。)
その点を、もっと詰めるべきであった。

最後に、2万円の行方である。
財布には、カードの他に、2万円も入っていた。
本問では、2万円がどうなったのか、記述がない。
仮に甲宅で押収された財布に2万円が入っていたとする。
このことは、財布と被害品の同一性を示す要素となる。
ところが、その点に関する記述がない。
そうである以上、財布には2万円は入っていなかったのかもしれない。
だとしたら、どこで使ったのか。
甲が帰宅したのは午後零時である。
犯行から1時間の間に、2万円を使い切ったのか。
2万円は、ちょっとした飲み食いでなくなる金額ではない。
そうすると、他の者に分配した可能性が出てくる。

本問では、細かくみると、以上のような基本的な捜査の不備がある。
それを考えると、厳密には甲の犯人性は認められない。
それが、正解のようにも思われる。
とはいえ、実際の試験現場では、そこまでは考えていられないだろう。
参考答案も、犯人性を肯定する筋で書いている。

ドアノブの指紋について

V宅の玄関ドアノブからは、甲の指紋が検出されている。
しかし、これは外側のドアノブから採取されたものである(事例2第2段落)。
だとすれば、これは2日前に宅配で訪れた際に付着した可能性を否定できない。
しかも、犯行の際、Vは自ら玄関ドアを開けている(事例1第1段落)。
犯行時に甲の指紋がドアノブに付くのは、むしろ不自然である。
また、V宅内部からは、指紋が検出されていない。
これは、犯人が手袋を付けていた可能性を示唆する。

※もっとも、手袋を付けていたと断定はできない。
財布やタンスは、通常凹凸があったり、汗を吸いやすい材質(布、革、木材等)である。
そのような場合には、指紋は残りにくいからである。
逆に、指紋が残り易いのは、凹凸がなく、汗を吸わない材質だ。
わかりやすいのは、スマホの液晶画面である。
使っていると、肉眼でも確認できるほど指紋が付く。
また、窓ガラスなども、はっきり指紋が残るのがわかるだろう。

仮に手袋をしていれば、ドアノブの指紋は、むしろ犯人のものではないことを意味する。
以上のとおり、ドアノブの指紋は、犯人性の根拠とはならない。
これを重視して甲の犯人性を認めれば、評価を下げるだろう。

犯行に用いられた刃物について

犯人は、Vを刃物で脅している。
そして、甲宅からは、4本の刃物が押収されている。
しかし、これらは、いずれも犯人性の根拠とはなりえない。

Vの供述(事例6(2))では、そのうち1本につき、断言はできないが、犯行に用いられた可能性はあるとする。
しかし、これだけでは、可能性があるというに過ぎない。
また、Aの供述(事例4(3))によれば、4本とも甲は持ち出していない。
甲がAの妻であるということを重視し、上記供述の信用性を否定するのは、考え得る。
しかし、Aは甲のアリバイ工作を暴露するなど、甲を庇う姿勢にはない。
だとすれば、Aの供述は、むしろ信用できる。
そう考えれば、4本の刃物は、いずれも犯行に用いられたものではない。
そう認定する方が、自然である。
従って、甲宅で押収された刃物が犯行に用いられたものと簡単に認定し、甲の犯人性の根拠にすれば、評価を落とすだろう。

なお、上記のことは、甲の犯人性を否定するものではない。
刃物は、甲宅以外からでも調達可能だし、犯行後遺棄すれば足りるからである。
もっとも、このことは、甲の犯人性と矛盾しないということに過ぎない。
前記のとおり、甲の犯人性を積極的に基礎付けるものではない。
結局、甲の犯人性を否定も肯定もしない、重要でない事実、ということになる。

甲のアリバイ工作について

Aの供述によると、甲は、Aにアリバイ工作を依頼している。
Aの供述を信用できるとするなら、上記は事実として認定し得る。
この事実から、安易に甲の犯人性を推認できるとした人が、多かったようだ。

しかし、冷静に考えれば、関連性は薄いことがわかるだろう。
ここから推認できるのは、朝から午後零時までの行動を警察に隠したい、という程度のことだ。
それは、甲がV宅に押し入った実行犯である、という事実以外でも成り立ちうる。
前記のとおり、甲以外の実行犯と共犯的関係にある場合も考えられる。
また、本問の犯行と無関係に、警察に露見すると困ることをやっていたのかもしれない。
そうである以上、このことを過度に重視して犯人性を認定するのは、誤りである。

基本である伝聞法則を丁寧に書く

設問2は、甲の供述の伝聞該当性を訊いている。
それは、Bの「伝聞証拠を含むものであるから」というところからわかる。
(Aの証言は公判廷供述であるから、これを伝聞証拠と書いてはならない。)
だとすれば、刑訴と同じように、伝聞法則の趣旨から、丁寧に書けばよい。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 Aの証言に現れた甲の供述が伝聞証拠に該当するか否かなどを検討することにより,本件異議申立ての根拠及び理由の有無を的確に判断して妥当な結論を導くことができるか(設問2),という法律実務に関する基礎的な知識及び能力を問うものである。

(引用終わり)

ところが、刑訴なら書けるのに、本問では書けなかった。
そういう人が、多かったようだ。
1つには、設問1で時間が足りなくなった。
それはあるだろう。
しかし、もう一つには、実務基礎という科目の名前に惑わされた。
そういうことも、あったのではないか。
何か実務的なことを書かないと、点が来ないのではないか。
そういう疑念から、いつもの論述ができなくなったようである。

結果的には、刑訴と同じように、伝聞法則の趣旨から書いた人は、評価されている。
A供述中の甲の発言は、体験した事実の再現ではない。
Aに対する虚偽供述(アリバイ工作)の依頼に過ぎない。
だとすれば、甲の発言内容の真実性は問題とならない。
従って、非伝聞であると処理すればよかった。
普通に刑訴だと思って書けば、問題がなかった。

なお、「条文を挙げつつ」という特別注文が付いている。
これは、伝聞法則関係の条文という趣旨ではない。
異議申立て関係の条文を指している。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 Aの証言に現れた甲の供述が伝聞証拠に該当するか否かなどを検討することにより,本件異議申立ての根拠及び理由の有無を的確に判断して妥当な結論を導くことができるか(設問2),という法律実務に関する基礎的な知識及び能力を問うものである。

(引用終わり)

刑訴法309条1項、規則205条から207条までが、関係する条文である。
これは、実務基礎らしいところである。
この辺りの細かい規則なども、訊いてくる。
普段の刑訴の学習でも、規則まで意識して学習しておきたい。
また、直前期には、一度目を通しておくとよいだろう。

もっとも、規則を挙げたかどうかは、それほど大きな差にはなっていないようだ。
従って、無理をして規則を覚えようとする必要はない。
飽くまで、できる範囲で確認する程度でよいだろう。

それから、関連条文を全て挙げる必要はない。
自分の採る結論に必要な限度で、摘示できれば足りる。
紙幅を考慮すれば、その程度が限界だろう。
優先順位としては、やはり伝聞法則の方である。

なお、本問の異議は、証拠決定に対するものではない。
従って、不相当を理由にすることもできる(規則205条1項本文、ただし書「決定に対しては」対照)。
もっとも、Bの主張は伝聞法則違反であり、違法の主張であるから、結論を左右しない。
法令違反しか主張できないと書いた人が結構いたようなので、多少注意を要する。
(とはいえ、評価にはほとんど影響していないようだ。)

【参考答案】

第1.設問1

1.刑事裁判における有罪認定には合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の立証が必要であり、情況証拠によって犯人性を認定する場合には、認定できる間接事実中に被告人が犯人でなければ合理的に説明できない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれる必要がある。
 そこで、上記事実関係の有無を検討する。

2.被害品の所持

(1)甲は、犯行現場のV宅と同一市内のSにおいて、犯行から約4時間経過後に、V名義のクレジットカード(以下単に「カード」という。)を所持していた。Vの名義及び利用停止の状況から、カードは犯人がV宅の居間から持ち去った財布在中の被害品と認められる。所持の理由につき、甲は黙秘して合理的な弁解をしない。

(2)確かに、甲が犯人でなければ、犯行後いかにして犯人からカードを入手したのかにつき、疑問を生じさせる。
 しかし、カードはその形状から、処分容易な物品である。犯人が遺棄したカードを甲が拾うことも、4時間程度の時間的間隔があれば十分生じうる。カードは金銭と異なり、暗証番号や名義の同一性が要求されることから、足が付くことを嫌った犯人が犯行後に遺棄することも不合理とはいえない。

(3)以上から、甲が犯人でなくても、カードの所持を合理的に説明できるから、当該事実から直ちに甲が犯人であるとは認定できない。

3.遺留品の指紋

(1)領置されたレシート(以下単に「レシート」という。)は、犯行直後にV宅玄関の上がり口で発見された。レシートは犯行15分前に発行され、V及びWの受け取ったものではなく、臨場したKら4名も発行元のZを利用したことはなかった。従って、レシートを落とした者は、レシートが発行されて以降、上記6名以外にV宅を訪れた者としか考えられない。
 犯行直後の被害者のものとして信用できるVの供述によれば、当日は被害に遭うまでV宅に誰も入っていない。従って、上記6名以外にV宅に入ったのは、犯人だけである。
 以上から、レシートを落としたのは、犯人である。

(2)レシートには、甲の指紋が検出された。これは、甲がレシートに触れたことを示す。甲が犯人でないとすると、触れる可能性のある機会は、レシート発行から犯行までのわずか約15分だけである。しかも、最終的にレシートをV宅に落としたのは犯人であるから、甲は、上記約15分の間にレシートに触れ、その後に犯人にレシートを交付したことになるが、そのような事実経過は、本問で明らかな事実関係からは合理的に説明できない。

4.なお、緊急逮捕時の甲の着用品が、被害直後のV供述に基づく犯人の着用品と異なる。しかし、甲の部屋からは犯人の着用品とみて矛盾しない緑のジャンパー及びサングラスが押収されており、犯行から約4時間の間に帰宅し、自室で着替えることは可能であったから、犯人性を否定する事実とはいえない。

5.以上のとおり、本問で明らかな間接事実中には、レシートから検出された甲の指紋という甲が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が含まれるから、甲を犯人と認定できる。

第2.設問2

1.結論

 異議を棄却する(刑訴法309条1項、刑訴規則205条1項本文、同条の5)。

2.理由

 伝聞法則の趣旨(320条1項)は、供述証拠は知覚、記憶した事実を再現する過程において誤りが生じやすく、反対尋問による吟味を要するところ、公判廷外供述にはその機会がないことから、証拠能力を原則として否定する点にある。従って、伝聞証拠とは、供述内容の真実性が問題となる公判廷外供述を内容とする証拠をいう。
 本問で、Aの証言における甲の供述は、甲の体験した事実の再現ではなく、Aへの依頼の意思表示であって、甲がAに虚偽供述依頼をした事実が要証事実である。そうすると、甲の供述内容の真実性は問題とならない。
 よって、Aの証言は伝聞証拠を含まないから、異議には理由がない。

以上

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2013年05月10日

平成24年司法試験予備試験論文式民事実務基礎出題趣旨検討と参考答案

問題文及び出題趣旨は、こちら

事例処理型ではない多論点型

出題形式は、平成23年とほぼ同様だった。
シンプルな設問を、たくさん出してくる。
設問1(1)、(2)、設問2、設問3、設問4(1)、(2)。
合計で、6つの問いに答えることになる。
個々の設問は単発だが、設問の数が多い。
司法試験では珍しい、事例処理型ではない多論点問題である。
理由付けを、丁寧に示す余裕はない。
1問1答に近い感覚で、無駄なく答える必要がある。

実務基礎は、一般の法律科目より、試験時間が長い。
その一方で、解答用紙の枚数は、変わらない。
従って、紙幅不足にならないよう、慎重に構成した上で書き出すべきだった。

賢く配点を取りにいく

設問1(1)は、抗弁事実の主張として必要十分であること。
すなわち、過不足がない理由が問われている。
抗弁事実の記載自体を問わなかったのは、要件事実の暗記で差が付かないようにするためだろう。
逆に言えば、要件事実をさほど勉強していなくても、解答可能なようになっている。

本問のポイントは、解答に当たり留意すべき事項が指定されている点である。

(問題文より引用、下線は筆者)

 上記⑤から⑦までの各事実について,抗弁事実としてそれらの事実を主張する必要があり,かつ,これで足りると考えられる理由を,実体法の定める要件や当該要件についての主張・立証責任の所在に留意しつつ説明しなさい。

(引用終わり)

実体要件と主張立証責任の所在。
これに留意せよ、と書いてある。
このような場合、その事項には確実に配点がある。
だとすれば、これは「留意」するのではなく、答案に「書く」べき事項である。
論文では、配点のある事項を明示してくれることは、ほとんどない。
そこが、論文の難しいところである。
何を書けば点になるのか、いつも迷う。
だからこそ、配点のあることが間違いない事項は、必ず書くべきである。
従って、本問では、相殺の実体要件と主張立証責任。
これは、露骨に項目を立ててでも、必ず書くべきだった。
このことから、他の設問より、本問に紙幅を割いた方が得策だ。
構成段階で、そう判断することになる。
ただ、そうは言っても、2ページまでが限度だろう。

冷静に順序だてて考える

内容的には、難しくない。
相殺の実体要件は、以下のとおりである。

1.相殺適状(505条1項)
(1)互いに同種目的の債務を負担する(自働債権と受働債権の存在)こと(本文)
(2)双方債務が弁済期にあること(本文)
(3)債務の性質上相殺が許されないものでないこと(ただし書)

2.相殺の意思表示(506条1項本文)

3.相殺禁止事由がないこと
(1)相殺禁止特約がないこと(505条2項本文)
(2)509条から511条までの相殺禁止事由に当たらないこと
(3)自働債権に抗弁が付着していないこと

これは、人によっては、もう覚えてしまっているだろう。
覚えていなくても、現場で条文を引けばなんとかなる。

このうち、Yが主張立証責任を負う事実。
それが、抗弁事実として主張すべき事実である。
もっとも、これはゼロから考える必要がない。
問題文に、もう答えが書いてあるからである。

(問題文より引用、下線は筆者)

(1) 別紙【Yの相談内容】の第3段落目の主張を前提とした場合,弁護士Qは,適切な抗弁事実として,次の各事実を主張することになると考えられる。

⑤ Yは,平成22年10月頃,甲建物の屋根の雨漏りを修理したとの事実
⑥ Yは,同月20日,⑤の費用として150万円を支出したとの事実
⑦ Yは,Xに対し,平成23年6月2日頃,⑤及び⑥に基づく債権と本件未払賃料債権とを相殺するとの意思表示をしたとの事実

 上記⑤から⑦までの各事実について,抗弁事実としてそれらの事実を主張する必要があり,かつ,これで足りると考えられる理由を,実体法の定める要件や当該要件についての主張・立証責任の所在に留意しつつ説明しなさい。

(引用終わり)

抗弁事実としては、⑤から⑦までを主張するのが正解である。
これは、問題文から明らかだ。
だから、後は現場で理由だけ考えれば足りる。

⑤と⑥は、必要費を支出したという事実だろう。
雨漏りの修理は、建物の維持、保存のためであって、価値を増加させるものではない。
そして、必要費は、直ちに請求できる(608条1項)。
そうすると、これは自働債権の発生と弁済期到来を意味する。
⑦は、相殺の意思表示だとすぐにわかる。
解除前であるという時的要素も、実は重要である。
ただ、これはここで書かなくても、合否には影響しない。
内容的には、設問3のところで説明する。

さて、そうすると、上記以外の要件は、主張を要しない。
順番にみていく。
1(1)及び同(2)のうち、受働債権の存在と弁済期到来は請求原因でXが既に主張している。
だから、Yは重ねて主張しなくてよい。

※一般に、受働債権の弁済期は、期限の利益を放棄すれば主張不要だと説明される。
しかし本問では、期限の利益を放棄するまでもなく、既に弁済期到来をXが主張している。

1(3)は、一般に、主張するまでもなく明らかだから主張は不要と説明されている。
本問でいえば、賃料と費用償還だから、性質上相殺を許さない債権ではない。
このことが明らかだから、別途主張する必要はない、ということになる。

※性質上相殺を許さない債権とは、どのようなものか。
例えば、50回分の肩たたき券を相互に発行したとする。
これは、同種目的の債権である。
しかし、これはお互いに肩たたきをしてもらわないと、実益を得られない。
だから、このような債権は、性質上相殺を許さないとされる。

3については、法律要件分類説からは、Xが主張立証すべき事実(再抗弁)である。
従って、Yは主張立証責任を負わないから、抗弁事実として主張を要しない。
(なお、相殺禁止事由のうち事実ではなく法解釈の問題(例えば差押禁止債権該当性)については、そもそも主張を要しない。)

以上から、⑤から⑦までで必要十分であることがわかる。
後は、これをコンパクトに答案で説明すれば足りる。
とはいえ、油断すると、あっという間に2頁くらいになる。
うまく端折って書く必要があった。

問題文から素直に答えを出す

設問1(2)は、【Yの相談内容】に答えが書いてある。

(問題文より引用、下線は筆者)

 また,万が一相殺が認められなかったとしても,私は,Xが甲建物の修理費用を払ってくれるまでは,甲建物を明け渡すつもりはありません

(引用終わり

これをみれば、留置権だとわかる。
費用償還請求で留置できるのは、短答知識である(大判昭14・4・28)。
それを端的に記載するだけの問題だった。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 設問1は,Yの相談内容に基づき,相殺の抗弁と留置権の抗弁の検討を求めるものである。

(引用終わり)

ここで信頼関係不破壊の抗弁を書いた人は、問題文を読まないか、言い分形式に慣れていない人である。
【Yの相談内容】には、信頼関係について何ら言及がない。
従って、「【Yの相談内容】を前提」とする問題文の趣旨にはそぐわない。
これを書けば、評価を落とす。

同時履行の抗弁を考えた人もいただろう。
しかし、同時履行にはならない。
対価関係にないからである。
賃貸借における対価関係は、賃料と使用収益の間にある(601条)。
賃料の対価として、使用収益をさせてもらう。
使用収益させる対価として、賃料を払ってもらう。
この関係が、賃貸借の双務性の本質である。
しかし、費用償還請求には、そのような関係はない。
明渡しの対価として、費用を償還するのではない。
費用償還の対価として、明け渡してもらうのでもない。
また、賃料債務と、使用収益させる債務は、賃貸借契約によって発生する。
しかし、費用償還請求の発生原因は、必要費又は有益費の支出それ自体である。
賃貸借契約によって、発生するとはいえない。
608条は賃貸借の条文だから、賃貸借によって発生するのではないのか。
そう思うかもしれない。
しかし、そもそも608条は、196条の特則である。
そして、196条は、不当利得の特則とされる。
すなわち、必要費又は有益費に係る価値が物の返還によって利得になる。
だからその部分を返還すべきだ、というのが、そもそもの趣旨である。
そうである以上、608条は償還請求権の発生原因を定める規定ではない。
返還時期等について賃貸借関係に伴う異なる取扱いを定める趣旨に過ぎない。
そうである以上、賃貸借契約を発生原因とする双務的な債権債務とみることはできない。

本問の問題文からも、同時履行とならないことは読み取れる。
仮に、本問の必要費償還請求が賃借人の債務と同時履行の関係にあるとしよう。
そうすると、そもそも支出の時点で、賃料債務と同時履行になるはずである。
だとすれば、賃料不払が債務不履行を構成しない。
従って、必要費の支出さえ主張立証すれば、解除の効果を否定できる。
これは、本問⑤及び⑥の主張だけで足りることを意味する。
同時履行の存在効果により、権利主張は要しないからだ。
そうなると、⑦の主張まで必要な相殺の抗弁は、過剰主張(a+b)である。

※同時履行の抗弁は、一般に権利抗弁とされる。
拒まずに履行するという選択肢があるからだ。
これに対し、債務不履行解除の場面では、拒まないという選択肢はない。
解除は一方的な単独行為であり、債務者の意思を問う機会がない。
だから、解除の時点で同時履行の反対債務が未履行であれば、債務者意思に関係なく、解除はできない。
従って、この場面では、権利主張を要しない。
それはすなわち、同時履行関係の存在自体に、一定の効果があることを意味する。
そのために、この場面では、同時履行に存在効果がある、と説明される。
このような存在効果が生じる場面として、他に相殺される場合がある。
この場合も、相殺が一方的な単独行為で、債務者の意思を問う機会がないからである。

本問では、相殺の抗弁が正しい抗弁事実として展開されている。
そうである以上、やはり必要費償還請求は、同時履行でない。
ややマニアックであるが、そのような判断の仕方もあった。

「端的に記載」の意味

問題文には「抗弁の内容を端的に記載」と書いてある。
そのため、以下のように書いた人が、結構いたようだ。

2.設問1(1)

 留置権の抗弁。

いくらなんでも、これではダメだろう。
権利抗弁であることを前提に、記載すべき抗弁の内容を答えるべきである。
「⑥の必要費に相当する150万円の支払を受けるまで、甲建物を留置する」くらいは必要だったのではないか。
ただ、要件事実のテキストにも、留置権の抗弁の記載例のあるものは少ない。
結果的に、差が付く要素にはならなかった。
とはいえ、例えば対抗要件の抗弁などは、どのテキストにも大体触れてある。
その場合は、評価を落とす要因になり得るので、注意すべきである。

二段の推定ではない

設問2は、民訴法からの出題である。
本人の署名であれば、228条4項の推定が生じる。
だから、その点を争う趣旨なのか確認する。
これを指摘できるか。
それだけを問う問題だった。

(出題趣旨より引用)

 設問2は,作成者名義の署名がある私文書の成立の真正に関して,民事訴訟法第228条第4項の理解を問うものである。

(引用終わり)

本問の隠れたポイントは、二段の推定を書かない、ということだ。
二段の推定は、押印に関する推定である。

最判昭39・5・12より引用、下線及び※注は筆者)

 民訴三二六条(※現228条4項)に「本人又ハ其ノ代理人ノ署名又ハ捺印アルトキ」というのは、該署名または捺印が、本人またはその代理人の意思に基づいて、真正に成立したときの謂であるが、文書中の印影が本人または代理人の印章によつて顕出された事実が確定された場合には、反証がない限り、該印影は本人または代理人の意思に基づいて成立したものと推定するのが相当であり、右推定がなされる結果、当該文書は、民訴三二六条にいう「本人又ハ其ノ代理人ノ(中略)捺印アルトキ」の要件を充たし、その全体が真正に成立したものと推定されることとなる。

(引用終わり)

従って、署名しかない本問では、問題にはなり得ない。
冷静に考えれば、これはすぐに気付く。
しかし、条件反射で書いてしまった人も、結構いただろう。
そういう人を、ふるい落とす問題といえる。

なお、本人の署名であることは争わないという場合。
その場合に、証拠調べをすることなく228条4項を適用してよいのは、なぜか。
自白は主要事実にしか成立しないという立場からは、これは自白ではない。
厳密には、これは論点である。
当事者拘束力は生じないが、不要証効の限度で自白が成立する。
自白は成立しないが、弁論の全趣旨から本人の署名であると認定してよい。
そういった説明があり得る。
しかし、本問では、そういったことを一々説明する必要はないだろう。
その紙幅の余裕はない。
出題趣旨にも、弁論主義との関係は、全く挙がっていない。

請求原因→抗弁→再抗弁の構造で検討できているか

設問3は、本問では最も難しい。
整理した要件事実と認定事実から、結論となる判決を導く作業をさせる問題である。
このタイプの問題は、旧試験も含めてこれまで一度も出題されたことがない。
そのため、どう考えていけばよいかわからなかった。
そういう人は、多かっただろう。
もっとも、一度理解してしまえば、それほど難しい作業ではない。

要件事実とは、何のために整理するのか。
それは、どの順序で証拠調べをする必要があるのか。
それを、確定する作業である。
認定事実は、上記証拠調べの結果である。
従って、要件事実の整理に沿って結果を照合すれば足りる。
すなわち、請求原因→抗弁→再抗弁の順で、検討していけばよい。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 設問3は,要件事実の整理と事実認定の結果を踏まえて,請求原因・抗弁・再抗弁がそれぞれどのように判断され,どのような主文が導かれるかの検討を求めるものである。その際には,各認定事実が設問1の各抗弁とどのように関係するのかを簡潔に説明することが求められる。

(引用終わり)

まず、請求原因はどうか。
請求原因①から④までのうち、②及び③に含まれる平成23年4月28日の経過。
これは、顕著な事実であるから、証明を要しない(179条)。
では、その他の点についてのYの認否は、どうか。

(問題文より引用、下線は筆者)

【Yの相談内容】

 X所有の甲建物に関する本件契約の内容や,賃料の未払状況及び賃料支払の催告や解除の意思表示があったことは,Xの言うとおりです

(引用終わり)

いずれも、認めている。
(賃料の未払状況は、弁済が抗弁となるので、認否には含まれない。)
従って、自白が成立する。

次は、抗弁の検討である。
抗弁は、2つあった。
相殺と、留置権である。

まず、相殺から検討してみる。
抗弁事実⑤から⑦までに対する、Xの認否はどうか。

(問題文より引用、下線は筆者)

【Xの相談内容】

 ・・Yは,甲建物を修理したので,その修理費用と本件未払賃料とを対当額で相殺したとか,甲建物の修理費用を支払うまでは甲建物を明け渡さない等と言って,明渡しを拒否しています。Yが甲建物の屋根を修理していたこと自体は認めますが,甲建物はそれほど古いものではありませんので,Yが言うほどの高額の費用が掛かったとは到底思えません。また,Yは,私に対して相殺の意思表示をしたなどと言っていますが,Yから相殺の話が出たのは,同年7月1日に私が解除の意思表示をした後のことです。

(引用終わり)

⑤は、認める。
⑥は、否認。
⑦は、平成23年6月2日頃という意思表示の時点につき否認、その余は認める。
こういうことになる。
そうすると、⑥につき証拠調べが必要となる。
では、⑦の相殺の意思表示のされた時点は、どうか。
仮に、解除の後であっても相殺の抗弁が立つなら、証拠調べを要しない。
結論に影響しないからである。
相殺の遡及効(506条2項)からすれば、成り立ちそうな考え方である。
すなわち、遡及効によって、解除の時点では債務不履行はなかったことになる。
(相殺適状は必要費を支出した平成22年10月20日に生じるから、解除の意思表示のされた平成23年7月1日より前である。)
そうすると、たとえ相殺の意思表示が解除の意思表示の後であっても、影響しない。
現場でこのように考えた人も、いただろう。

しかし、そのように後から法律関係をひっくり返すことまで認めてよいのか。
上記の考え方だと、Xが必要費を支払った場合にも、相殺できることになりかねない。
すなわち、Yが必要費を支出した後、Xが償還に応じて弁済する。
ところが、Yが後から相殺した。
この場合、相殺適状時に遡って必要費償還請求権は消滅する。
だから、その後にされたXの弁済は、無効(非債弁済)である。
こうなってしまうだろう。
これは、おかしなことである。
また、508条(時効消滅後の相殺)は、注意規定ということになってしまうだろう。
相殺適状後に自働債権が時効消滅しても、相殺適状時に遡るなら、時効消滅はなかったことになる。
すなわち、508条がなくても、相殺適状後の時効消滅は相殺を妨げないからだ。
これも、おかしな話である。

そもそも、相殺の遡及効の趣旨は、両債権に係る遅延損害金の問題を生じさせない点にある。
遡及効は、その限度で認めればよい。
上記のような、何もかも法律関係を覆滅させる効果はない。
判例も、同様に考えている。

最判昭54・7・10より引用、下線は筆者)

 相殺適状は、原則として、相殺の意思表示がされたときに現存することを要するのであるから、いつたん相殺適状が生じていたとしても、相殺の意思表示がされる前に一方の債権が弁済、代物弁済、更改、相殺等の事由によつて消滅していた場合には相殺は許されない(民法五〇八条はその例外規定である。)、と解するのが相当である。

(引用終わり)

このような考え方からは、解除の効果も、同様である。
相殺によって、後から効力を否定されることはない。

最判昭32・3・8より引用、下線は筆者)

 相殺の意思表示は双方の債務が互に相殺をなすに適したる始めに遡つてその効力を生ずることは、民法五〇六条二項の規定するところであるが、この遡及効は相殺の債権債務それ自体に対してであつて、相殺の意思表示以前既に有効になされた契約解除の効力には何らの影響を与えるものではないと解するを相当とする。

(引用終わり)

以上のように考えると、相殺と解除の意思表示の先後。
これが、重要になってくる。
相殺の意思表示が先なら、解除は認めらない。
従って、明渡しを拒める。
他方、解除の意思表示が先なら、相殺しても解除の効力は否定できない。
従って、明渡しは拒めない。
すなわち、抗弁となるか否かの結論を分ける。
本問では、解除の意思表示の時点につき、Yは争っていない。
そうすると、相殺の意思表示の時点につき、証拠調べを要するということになる。

証拠調べの結果は、問題文に示されている。

(問題文より引用、下線は筆者)

 ⑥から⑧の各事実の有無に関する証拠調べが行われたところ,裁判所は,⑥の事実については,Yが甲建物の屋根の修理費用として実際に150万円を支払い,その金額は相当なものである,⑦の事実については,相殺の意思表示はXによる本件契約の解除の意思表示の後に行われた,⑧の事実については,XはYに屋根の修理費用の一部として30万円を支払ったとの心証を形成するに至った。

(引用終わり)

相殺の意思表示は、解除の意思表示の後だった。
すなわち、抗弁成立に必要な事実のうち、⑦の点を欠いている。
従って、相殺の抗弁は、成立しない。

では、留置権の抗弁は、どうか。
留置権の抗弁の抗弁事実は、問題文上明示されていない。
しかし、295条1項をみれば、以下の2つはすぐにわかる。

1.留置すべき物の占有
2.物に関して生じた債権

これに加えて、権利抗弁であることから、権利主張を要する。
ただ、これは設問1(2)で答えたことであるから、重ねて検討する必要はない。

上記1の占有は事実概念であるから、現在の占有を意味する(現占有説)。
占有取得原因(請求原因①の引渡し)では足りない。
もっとも、【Xの言い分】をみても、これを争う趣旨はうかがわれない。
従って、擬制自白としていいだろう。

上記2は権利関係であるから、発生原因事実を主張立証すればよい。
本問では、これは⑤及び⑥に当たり、これは重ねて主張立証を要しない。
以上から、留置権の抗弁事実は、認められることになる。

では、再抗弁はどうか。
これは、【Xの言い分】によれば、弁済による留置権消滅である。

(問題文より引用、下線は筆者)

【Xの言い分】

 甲建物はそれほど老朽化しているというわけでもないのですから,雨漏りの修理に150万円も掛かったとは考えられません。Yは修理をしたと言いながら,本件訴えの提起までの間に,私に対し,修理に関する資料を見せたこともありませんでした。そこで,実際に,知り合いの業者に尋ねてみたところ,雨漏りの修理程度であれば,せいぜい,30万円くらいのものだと言っていました。そこで,私は,Yとの紛争を早く解決させたいとの思いから,平成23年8月10日,Yに対して,修理費用として30万円を支払っています

(引用終わり)

Xの主張では、修理費用は30万円であった。
その全額を支払ったから、必要費償還請求権は消滅している。
従って、留置権も消滅した。
これが、再抗弁ということになる。

しかし、認定事実によれば、修理費は150万円。
Xの30万円の支払は、その一部であった。
そうなると、これだけでは留置権は消滅しない。
留置権には、不可分性(296条)があるからである。
だから、主張は失当、となりそうである。

ところが、そうではない。
Yは、賃料と必要費償還請求を相殺している。
従って、120万円分は既に相殺により消滅している。
だとすると、残りは30万円。
これについては、弁済の事実が認められている。
結局、必要費償還請求権は、全て消滅。
附従性から、留置権も消滅する。
従って、再抗弁が成り立つということになる。
結論は、請求棄却となる。

再抗弁において相殺を考慮してよいのか。
疑問に思うかもしれない。
まず、Yの抗弁として主張された相殺を、Yに不利な場面で使ってよいのか。
これは、主張共通の場面であり、認められる。
弁論主義は、裁判所と当事者の訴訟資料提出責任の分担の問題である。
当事者によって提出された以上は、裁判所がこれをどう評価するか。
それは裁判所の自由心証の問題である。
従って、提出した当事者の有利にも不利にも用いられる。
次に、相殺の抗弁が認められなかった以上、相殺の効力は生じないのではないのか。
これは、訴訟上の形成権の法的性質論である。
新併存説によれば、抗弁として認められなければ、私法上の効力も生じない。
そうなりそうである。
しかし、これは訴訟上の行使の場合である。
本問は、明らかに訴外で行使した場合だ。

(問題文より引用)

【Yの相談内容】

 ・・Xは,図図しくも,平成23年4月になって未払分の賃料の支払を求めてきたものですから,しばらく無視していたものの,余りにもうるさいので,最終的には,知人のアドバイスを受けて,同年6月2日頃,Xに対し,甲建物の修理費用と本件未払賃料とを相殺すると言ってやりました

(引用終わり)

だから、訴訟上の形成権行使の問題ではない。
相殺の私法上の効力は、抗弁の成否によって妨げられることはない。
ここで誤解してしまい、引換給付と答えた人が多かったようだ。

以上のことを、整理してコンパクトに答案に書く。
なかなかに、しんどい作業である。
正確に答えた人は、ほとんどいない。
そもそも、検討の枠組みを捉えられている人が、皆無に近かった。
難しすぎて、差が付かなかった。
結果的には、適当に短く書いた人が、得をしたという感じだ。
ただ、今後同じような設問が出た場合には、検討の枠組み。
すなわち、請求原因、抗弁、再抗弁という順序で検討する。
これを守っていれば、他の人と差を付けることができるだろう。

法曹倫理は現場思考で短くまとめる

昨年に続いて、今年も法曹倫理が出題された。
守秘義務に関する出題である。
もっとも、全く勉強していなくても、十分対応できた。

問題文をみたときに、「共同法律事務所」とある。
添付されている弁護士職務基本規程の目次をみると、第7章に「共同事務所における規律」がある。
これをみれば、56条の問題だ、と気付くことができた。

あとは、「秘密」と「正当な理由」を当てはめて終わりである。
ただ、本問は小問が2つある。
また、設問1と3で、結構紙幅を奪われる。
そのため、ほとんど何も書けない。
本来は、趣旨→規範→当てはめの順で丁寧に書きたい。
しかし、その余裕はない。
いきなり当てはめになっても、やむを得ないだろう。
実戦的には、設問3を捨てて短く書く。
そして、設問4を趣旨から丁寧に書く。
そういう作戦も、有効だった。
その場合は、趣旨と規範を現場で考え、当てはめていけばよい。
例えば、「弁護士の信頼確保」を趣旨とする。
その上で、「一般に開示すれば依頼者の信頼を損ねる事項」を、秘密の意義とする。
さらに、「信頼確保の要請を考慮してもやむを得ない場合」を正当な理由の規範とする。
趣旨とリンクさせるのが、ポイントである。
この程度であれば、簡単に思いつくだろう。

本問は、法曹倫理をそれなりに勉強していても、差が付かない。
テキスト等にあまり記述のないところが、問われているからである。
守秘義務自体は、どのテキストにも記述がある。
しかし「正当な理由」については、依頼者の承諾や依頼者に訴えられた場合。
この当たりが、典型例として書いてある。
しかし、本問のような場合は、どうなのか。
手がかりになる基準すら、あまり触れられていない。
結局は、現場思考ということになってしまう。
平成23年もそうだったが、勉強しても成果につながらない。
法曹倫理は、そういう科目になっている。

なお、弁護士法23条は、厳密には直接関係がない。

(弁護士法23条)

 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

大いに関係があるじゃないか。
そう思うかもしれない。
しかし、上記の「職務上」とは、弁護士自身の職務を指す。
従って、本問のような共同事務所の他の弁護士の職務に関して知った秘密は含まない。
弁護士職務基本規程56条は、これを拡張した規定である。

(弁護士職務基本規程56条)

 所属弁護士は、他の所属弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、又は利用してはならない。その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、同様とする。

「職務上」と「執務上」を使い分けている。
自分の職務上知り得た秘密でなく、「執務上」知り得た他の所属弁護士の依頼者の秘密。
これについても、守秘義務を負う。
「職務上」ではなく、「執務上」とされているのは、そのような趣旨である。
従って、本条に違反しても、直ちに弁護士法23条違反とはならない。
もっとも、出題趣旨には、弁護士法23条にも留意せよとある。

(出題趣旨より引用、下線は筆者)

 設問4は,弁護士倫理の問題であり,弁護士職務基本規程第56条と弁護士法第23条に留意して検討することが求められる。

これは、小問(2)との関係である。
小問(2)では、既に弁護士登録を抹消している。
すなわち、「弁護士」ではない。
にもかかわらず、規程56条の守秘義務を負うのか。
同条後段は、次のように規定している。

(弁護士職務基本規程56条)

 所属弁護士は、他の所属弁護士の依頼者について執務上知り得た秘密を正当な理由なく他に漏らし、又は利用してはならない。その共同事務所の所属弁護士でなくなった後も、同様とする

共同事務所を辞めても、守秘義務は負う。
そのことは、明らかである。
だが、さらに進んで弁護士ですらなくなった場合は、どうか。
その点は、はっきりしない。
ここで、弁護士法23条を参照するわけである。

(弁護士法23条)

 弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

同条は、弁護士でなくなっても、守秘義務を負う旨明記している。
その趣旨は、弁護士でなくなった後でも、秘密を漏らせば弁護士に対する信頼が害される点にあるだろう。
このことは、規程56条の場合も同様ではないか。
だとすれば、「所属弁護士でなくなった後」には、弁護士でなくなった場合も含まれる。
そう解釈することが可能である。
上記のような意味で、弁護士法23条を援用すべきである。
もっとも、実際には、上記のようなことは、ほとんど評価に影響はない。
普通に弁護士法23条にも違反すると書いても、評価を下げることはなかったようだ。

当てはめのポイントとしては、2つある。
一つは、秘密開示の必要性の差異である。
小問(1)は、契約書の検討を依頼されている。
これは、契約書の文言等に不備がないかが主な内容となる。
R社の信用状況を調査し、報告するという内容ではない。
これに対し、小問(2)は、保証の諾否を取締役会で検討する場面である。
この場合は、R社の信用状況も、当然検討の対象となるだろう。
(代表)取締役の忠実義務からすれば、黙ってT社に損害を生じさせるのは、いかがなものか。
上記の違いを強調して、小問(1)は規程56条に違反し、小問(2)は「正当な理由」がある。
そういう考え方は、あり得るところである。
他方、小問(2)も同様だ、と考える方向性もある。
取締役は、確かに忠実義務を負っている。
しかし、それは守秘義務に係る秘密の開示まで要求するものか。
そうではないだろう。
一見すると、知っていて黙っているのは背信的なようにも思える。
ただ、特殊な関係によって知り得た秘密を基礎に経営判断をするというのは、普通ではない。
T社としては、Aの知り得た秘密によらずとも、R社の信用調査をするのは、当然のことである。
通常の信用調査によってR社が倒産しそうだとわかれば、保証には応じないだろう。
Aの秘密開示がなければ、T社の利益が直ちに害される、という状況ではない。
そういうことからすれば、なお守秘義務が守られるべきだ。
そう考えれば、正当の理由はない、ということになるだろう。
このような忠実義務と守秘義務の関係が、もう一つのポイントだった。

実際のところ、小問(2)は、これだけではまだ正当な理由ありとはいえないと思う。
R社が積極的隠蔽工作や帳簿の虚偽記載をし、それが明白に犯罪に該当する。
そういった事情があれば、正当な理由が認められそうである。
しかし、本問ではそこまでの事情はない。
とはいえ、試験の評価としては、結論はどちらでもよいだろう。

合否を分けるのは

本問は、設問3が極端に難しい。
マトモに解答できた人は、ほとんどいなかった。
そのため、ここでは差が付きにくい。
他方、設問2と4は、大体誰もが同じようなことを書く。
これも、逆の意味で差が付かない。
そのため、差が付いたのは、設問1だった。
特に、実体要件と主張立証責任の所在。
これを、きちんと答案に示したか。
これが、合否を分けるポイントとなっている。
民訴でも指摘したが、問題文を的確に読むこと。
それによって、どこに配点があるかを把握する。
そして、そこだけは絶対にきちんと書く。
これは、単に基本書等を読んでいても、身に付かない。
また、予備校の答練でも、本試験ほど露骨なものは少ない。
過去問を分析して、そういう出題傾向を知っておく必要がある。
勉強量には自信があるのに、なぜか成績が伸びない。
そういう人は、上記の観点から、問題文の読み方を考え直してみるとよい。

【参考答案】

第1.設問1

1.小問(1)

(1)相殺の実体要件

 相殺適状(民法505条1項)、相殺禁止事由(同条2項本文、509条から511条まで)の不存在及び相殺の意思表示(民法506条1項前段)である。

(2)各要件の主張立証責任

 主張立証責任の分配は、法規の規定の仕方を基本とする(法律要件分類説)から、相殺適状及び相殺の意思表示につき、相殺の効果を主張するYが主張立証責任を負い、相殺禁止事由の存在のうち事実主張を要するものは、Xが主張立証責任を負う。

(3)⑤から⑦までの主張で必要十分である理由

 雨漏りの修理費用は、建物の維持、保存の費用であるから必要費である。その償還義務の弁済期は、支出により直ちに到来する(民法608条1項)。また、受働債権の存在及び弁済期到来は、請求原因において既に主張されている。そうすると、⑤及び⑥は、相殺適状を基礎付ける事実である。そして、⑦は相殺の意思表示を基礎付ける事実である。なお、④において解除の主張が既に顕れており、解除の効力を否定するためには相殺の意思表示が解除の意思表示の前であることを要する(判例)から、相殺の意思表示が平成23年6月2日頃された旨の⑦の記載は、単に特定のための時的因子ではなく、解除の意思表示よりも前であることを示すために必要な時的要素である。
 そうすると、⑤から⑦までは、Yが主張責任を負う事実として過不足がないから、主張すべき抗弁事実として必要かつこれで足りる。

2.小問(2)

 被告は、⑥に係る必要費相当額150万円の金員の支払を受けるまで、甲建物を留置する。

第2.設問2

1.署名が丙川のものであることを争う趣旨か否か、否認理由を確認すべきである(民訴規則145条)。

2.なぜなら、Xがこれを争うなら民訴法228条4項の適用を求めるYにおいて、署名を丙川がした事実を立証すべきことになるのに対し、Xがこれを認めて争わない場合には、民訴法228条4項の適用により本件領収書の成立の真正が推定される結果、Xにおいて署名以外の部分の偽造等を主張立証して推定を覆すことを要するからである。

第3.設問3

1.結論

 原告の請求を棄却する。

2.理由

(1)請求原因事実

 いずれもYの自白が成立し、又は顕著な事実である(民訴法179条)。

(2)抗弁事実

ア.相殺の抗弁

 解除の意思表示の後に相殺の意思表示がされたとの認定事実から、⑦の時的要素を欠く。

イ.留置権の抗弁

 抗弁事実のうち、Yの現占有についてはXが争うことを明らかにせず(民訴法159条1項本文)、⑤の事実に自白が成立し、⑥の事実を認定できることから、占有物に関して生じた債権の発生原因事実が認められる。

(3)再抗弁(留置権の抗弁に対して)

 Xによる30万円の支払の主張は、留置権消滅をいうものであるが、修理代金は150万円であったと認定できるから、これは一部支払に過ぎない。
 一般に、留置権の不可分性(民法296条)から、被担保債権の一部支払のみでは主張として失当であるが、本問では既に相殺の意思表示が顕れている(事実⑦)から、これと併せて考慮すると、必要費償還請求権は全て消滅することになり、留置権も消滅する(附従性)。

(4)以上から、上記1の結論となる。

第4.設問4

1.小問(1)

 Aの助言は、弁護士職務基本規程56条前段に違反する。
 なぜなら、他の所属弁護士Bの依頼者であるR社の経営状況は同社の信用に関わるから、同条所定の秘密に当たり、Sの依頼は契約書の検討であって信用調査ではなく、Aが敢えてR社の信用状況につき助言する必要もない以上、秘密を開示する正当な理由はないからである。

2.小問(2)

 Aの発言は、弁護士職務基本規程56条に違反する。
 なぜなら、同条後段には弁護士登録抹消の場合をも含む(弁護士法23条「弁護士であった者」参照)と解されるから、Aはなお所属弁護士と同様の守秘義務を負い、他方でAはT社の代表取締役でもあるが、取締役に期待されるのは一般的な経営能力であって守秘義務に係る秘密開示ではない以上、忠実義務(会社法355条)との抵触は生じないから、秘密を開示する正当な利益はないからである。

以上

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