2022年11月24日

令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(4)

1.以下は、直近5年の受験経験別の受験者数の推移です。

受験経験 なし 旧試験
のみ
新試験
のみ
両方
平成30 7098 2670 428 940
令和元 7796 2580 444 960
令和2 7257 2104 435 812
令和3 8322 2119 487 789
令和4 9445 2201 555 803

 昨年と比較すると、すべてのカテゴリーで、受験者が増加しています。以前の記事(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」)でみたとおり、年代別でみると、20代以上のすべての年代で受験者が増加していましたから、これは自然なことです。
 コロナ禍以前の令和元年との比較という点でいえば、「なし」、すなわち、新規参入の受験者が、最も増加しています。これは、前回の記事(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)でみたとおり、主に大学生と有職者の受験が増加したことによるものでした。一方で、「旧試験のみ」と「両方」は、減少しています。旧司法試験はもう実施されていないわけですから、これは自然なことといえるでしょう。とはいえ、「旧試験のみ」と「両方」を合わせると、3004人これほどの数の人が、旧司法試験時代からずっと苦労をしながら受験を続けているという事実は、あまり知られていません。このような人達がこれまでに費やしてきた資金、時間、労力は、莫大なものがあります。受験を諦めることは、それらが無駄になってしまうことを意味する。だから、やめられない。これが、長期受験者の陥りがちな心理状態です。
 それから、「新試験のみ」も、じわじわと受験者が増加してきています。今年は、500人を超える数字になりました。司法試験で受験回数を使い切った人が予備に流れ、少しずつ滞留してきているのです。このカテゴリーは、当初、まだ若かったりするので、「ちょっとだけ予備も受けてみて、ダメだったら就職しようかな。」という軽い気持ちで受験していたりします。しかし、「あと1回だけ」、「あと1回だけ」を繰り返しているうちに、いつの間にか長期受験者となっていき、「ここで諦めるわけにはいかない。」、「受かるまでずっと受けてやる。」という心理状態へと移行していきます。その結果、滞留現象が生じるのです。

2.以下は、受験経験別最終合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。

受験経験 受験者数 最終
合格者数
最終合格率
(対受験者)
なし 9445 411 4.35%
旧試験のみ 2201 25 1.13%
新試験のみ 555 21 3.78%
両方 803 15 1.86%

 「なし」が、最も高い合格率になっているのは、例年どおりです。それでも4%強で、これが予備試験の厳しさを物語っています。今年の特徴は、「新試験のみ」の合格率が、「なし」に肉薄するほど高い、ということです。昨年の数字と比較してみましょう。

受験経験 令和3 令和4
なし 5.11% 4.35%
旧試験のみ 0.94% 1.13%
新試験のみ 1.43% 3.78%
両方 1.77% 1.86%

 こうしてみると、今年の「新試験のみ」が、いかに尋常でないかがわかります。これは、短答・論文のどの段階で生じたのでしょうか。順にみていきましょう。

3.以下は、受験経験別短答合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。

受験経験 受験者数 短答
合格者数
短答合格率
(対受験者)
なし 9445 1696 17.9%
旧試験のみ 2201 679 30.8%
新試験のみ 555 138 24.8%
両方 803 316 39.3%

 短答は知識重視なので、旧試験時代からずっと勉強を続けている「旧試験のみ」と「両方」が圧勝し、一方で、勉強期間の最も短い「なし」は最低の合格率になる(※1)。これは、例年の傾向どおりです。注目の「新試験のみ」も、短答は例年どおりの水準です。新司法試験の受験回数を使い果たして以降も勉強を続けているので、「なし」には勝つわけですが、旧司法試験時代から受験を続けてきた先達と比べれば勉強期間がはるかに短いので、「旧試験のみ」や「両方」にはかなわないのでした。
 ※1 「旧試験のみ」より「両方」の方が合格率が高いのは、旧試験時代の短答は、憲法・刑法で論理問題が多く、知識のインプットが「両方」より弱いことによります。このことは、昨年の記事(「令和3年予備試験口述試験(最終)結果について(4)」)で詳しく説明しました。

4.論文段階になると、どうか。受験経験別論文合格率(短答合格者ベース)をみると、以下のようになっています。 

受験経験 短答
合格者数
論文
合格者数
論文合格率
(対短答合格)
なし 1696 419 24.7%
旧試験のみ 679 26 3.8%
新試験のみ 138 21 15.2%
両方 316 15 4.7%

 短答で圧勝していた「旧試験のみ」と「両方」が壊滅し、「なし」が圧勝するのは例年どおりで、これが若手優遇策(「令和4年司法試験の結果について(12)」)の効果です。一方で、注目の「新試験のみ」をみると、かなり高い合格率であることがわかります。これが尋常でないことは、昨年の数字と比較すると、よくわかります。 

受験経験 令和3 令和4
なし 26.2% 24.7%
旧試験のみ 3.5% 3.8%
新試験のみ 4.9% 15.2%
両方 5.4% 4.7%

 「旧試験のみ」と「両方」がほとんど変わらないのに対し、「新試験のみ」だけは、あり得ないほど合格率が上昇している。これが、今年みられる顕著な特徴です。「新試験のみ」の受験生のレベルが急に上がるということはちょっと考えられませんから、他の要因を考えることになる。ここで、前回の記事(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)と同じ要因が想起されます。まず、思い当たるのは、選択科目が加わったことです。「新試験のみ」は、司法試験を受験する過程で、選択科目を学習済みですから、これはそれなりに大きなアドバンテージでしょう(※2)。ただ、選択科目の全体に占める比重を考えると、それだけでここまで顕著な上昇になるかどうか。もう1つ、思い当たるのは、憲法に代表されるような最近の出題傾向の変化です。問題・採点が、法科大学院の講義内容と親和性の高いものになってきているのではないか。「新試験のみ」は、ほとんどが法科大学院修了生(※3)ですから、法科大学院の講義内容と親和性の高い出題・採点がされることは、有利に作用するでしょう。もっとも、「新試験のみ」は、修了後、受験回数を使い切って予備に回っているわけですから、法科大学院の講義の記憶がどれだけ残っているだろうか、という疑問は残るところです。仮に、選択科目の影響が強いのであれば、毎年受験を続けている「旧試験のみ」や「両方」の受験生も、次第に選択科目に手が回るようになってくるでしょうから、このような大きな差は縮小に向かうはずでしょう。まだはっきりしないところではありますが、前回の記事(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(3)」)でみた法科大学院生の論文合格率の上昇と符合する要因とも考えられるところなので、今後も、このような傾向が続くかどうか受験対策上も重要な意味を持ちそうです。
 ※2 「両方」も新司法試験を受験しており、選択科目の学習経験があるわけですが、多くは旧試験終了直後にローに入り、受験回数制限を使い切った人達なので、その後は予備に向けた勉強しかしておらず、久しく選択科目を勉強していない、という人がほとんどだったでしょう。
 ※3 予備試験合格者で受験回数制限を使い切った人も一応考えられますが、そのような人は極めてわずかです。また、「両方」もほとんどが法科大学院修了生ですが、※2で説明したとおり、かなり昔に修了した者が多く、プラスに作用しなかったと考えることができるでしょう。

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2022年11月22日

令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(3)

1.以下は、直近5年の職種別の受験者数の推移です。ただし、法務省の公表する資料において、「公務員」、「教職員」、「会社員」、「法律事務所事務員」、「塾教師」、「自営業」とされているカテゴリーは、まとめて「有職者」として表記し、「法科大学院以外大学院生」及び「その他」のカテゴリーは省略しています。なお、「無職」には、アルバイトを含みます。

有職者 法科大学院生 大学生 無職
平成
30
3834 1298 3167 2391
令和
4240 1265 3340 2475
令和
3879 1064 3141 2116
令和
4360 1058 3508 2371
令和
5143 1067 3786 2514

 すべての職種で、昨年より受験者が増加しています。これは、20代以上のすべての世代で受験者が増加していた(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」)ことからしても、自然なことといえるでしょう。もっとも、コロナ禍前の令和元年と比較してみると、法科大学院生だけが減少しています。これは、在学中受験の影響でしょう。急いで予備試験を受験しなくても、在学中受験ができるわけですから、焦る必要はないというわけです。来年は、腕試しに予備試験を受験していた修了見込みの法科大学院生が在学中受験に回るので、法科大学院生の受験者はさらに減少するでしょう。一方で、大学生の受験者は、コロナ禍前と比較してもかなり増加しています。法曹コースの影響によって、大学生の予備受験が減少するかもという話もありましたが、受験者の数自体を抑制する効果はないといえそうです(ただし、上位層の受験は減少したとみえる点につき、後記3、4を参照)。
 有職受験者の増加も目立ちます。コロナ禍前の令和元年との比較でみても、900人程度増加している。「仕事をしながら法曹を目指すことができる。しかも、受験回数や受験期間に制限がないので、マイペースに勉強できる。」ということで、受験してみようと思う人が増えているのでしょう。対照的に、無職の受験者は、コロナ禍前と比べるとほぼ横ばいといってよい状況です。無職の受験者は、以前から横ばい傾向でした。このカテゴリーに属するのは、多くが専業受験者です。特別の事情がなければ毎年受験を継続する一方、新規参入するのは、司法試験の受験回数を使い切って予備に回る人くらいです(※1)。そのため、横ばい傾向となりやすいのです。
 ※1 仕事を辞めて専業受験者になるというのも考えられますが、仕事を辞めて法科大学院に入学するということはあっても、仕事を辞めて予備試験というのは、あまりないことでしょう。仕事を辞めなくても受験できるというのが、予備試験の最大の魅力だからです。

2.以下は、今年の職種別最終合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。

職種 受験者数 最終
合格者数
最終合格率
(対受験者)
有職者 5143 96 1.86%
法科大学院生 1067 124 11.62%
大学生 3786 196 5.17%
無職 2514 48 1.90%

 有職者と無職の合格率が異常に低いのは例年どおりで、これは、高齢受験者の合格率が低いことと対応しています(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」)。
 例年と違うのは、ロー生と大学生で差が開いたという点です。昨年の数字と比較してみましょう。

職種 令和3 令和4
有職者 1.49% 1.86%
法科大学院生 9.35% 11.62%
大学生 7.18% 5.17%
無職 1.85% 1.90%

 ロー生が2ポイントほど合格率を高めている一方で、大学生は、逆に2ポイントほど合格率を下げてしまっている。これは、どういうことなのでしょうか。1つの仮説として考えられるのは、在学中受験及び法曹コースの影響です。在学中受験が可能になったことで、普通の法科大学院生はわざわざ予備を受験しなくなり、よほど自信のある法科大学院生だけが、予備合格の経歴を得るために受験する傾向になっているのではないか。それが、法科大学院生の合格率を高めたのではないか。また、法曹コースが設定されたことで、上位層の大学生が法曹コースを選択し、予備試験から遠ざかったのではないか。前記1でみたとおり、大学生の受験者自体は増加傾向にあるけれども、法曹コースを選択する上位層の大学生が抜けてしまった結果、合格率が下がってしまったのではないか。

3.上記の仮説について考える手掛かりになるのが、短答合格率です。上位層が多く受験していれば短答合格率が高まるでしょうし、上位層が受験しなくなれば、短答合格率は下がることでしょう。以下は、今年の職種別短答合格率(受験者ベース)等をまとめたものです。

職種 受験者数 短答
合格者数
短答
合格率
有職者 5143 1091 21.2%
法科大学院生 1067 255 23.8%
大学生 3786 670 17.6%
無職 2514 685 27.2%

 まず、無職の合格率が高いのはいつものことで、これは、無職が多くの場合専業受験者で、最も多く勉強時間を確保できるからでした。また、有職者は、短答段階で法科大学院生より低い合格率となっており、短答の勉強時間を確保することが課題となっていることがわかる(※2)のも、いつものことでした。
 ※2 このことから、高齢受験者の短答合格率が高いことは、「短答は高齢者に有利」ということを意味するのではなく、「高齢受験者に勉強期間の長い者が多い。」ということを意味することがわかります。なので、昔から勉強を続けているのではなく、新たに法曹を目指して勉強を始める人が含まれやすい有職者のカテゴリーは、短答合格率が低めになるのです。

 さて、本題の法科大学院生・大学生の昨年との比較です。

職種 令和3 令和4
有職者 22.7% 21.2%
法科大学院生 25.2% 23.8%
大学生 20.8% 17.6%
無職 26.3% 27.2%

 無職が昨年より合格率を伸ばしているのとは対照的に、法科大学院生・大学生の合格率はいずれも下落しています。このことから、「在学中受験が可能になったことで、普通の法科大学院生はわざわざ予備を受験しなくなり、よほど自信のある法科大学院生だけが、予備合格の経歴を得るために受験する傾向になっているのではないか。」という仮説にはあまり説得力がないが、「法曹コースが設定されたことで、上位層の大学生が法曹コースを選択し、予備試験から遠ざかったのではないか。」という仮説にはそれなりに説得力がありそうだ、ということがわかります。

4.では、短答で合格率を落としている法科大学院生の最終受験者合格率が上昇したのはなぜか。論文段階の合格率をみてみましょう。以下は、今年の職種別論文合格率(短答合格者ベース)等をまとめたものです。

職種 短答
合格者数
論文
合格者数
論文
合格率
有職者 1091 98 8.9%
法科大学院生 255 130 50.9%
大学生 670 196 29.2%
無職 685 49 7.1%

 まず、有職者と無職が低い合格率であることは、論文の若手優遇策によるもので、いつものことです(「令和4年予備試験口述試験(最終)結果について(2)」、「令和4年司法試験の結果について(12)」)。今回の注目は、法科大学院生・大学生の昨年との比較です。

職種 令和3 令和4
有職者 6.9% 8.9%
法科大学院生 37.8% 50.9%
大学生 34.7% 29.2%
無職 7.2% 7.1%

 これまでは、法科大学院生の方がやや高いものの、大学生とそこまで大きな差は生じない傾向でした。それが、今年は大学生の合格率が下落した一方で、法科大学院生は大幅に合格率を上昇させています。これは、従来みられなかった劇的な変化です。前者は、「法曹コースが設定されたことで、上位層の大学生が法曹コースを選択し、予備試験から遠ざかったのではないか。」という仮説を補強します。一方で、後者は、短答の合格率が下がったことを加味して考えると、「法科大学院生受験者のレベルが上がった。」ということとは別の要因だと考えるのが自然です。まず、思い当たるのは、選択科目が加わったことです。ただ、それだけで、ここまで劇的な差が生じるのかどうか。もう1つ、思い当たるのは、憲法に代表されるような最近の出題傾向の変化です。問題・採点が、法科大学院の講義内容と親和性の高いものになってきているのではないか。今年の問題は、予備校が論証を用意していなかったり、用意していても古い学説だったりするところを判例をベースに検討させようとしたり、事案がやや異なる判例を挙げた上で、「上記判例の趣旨は本問にも当てはまる。」という射程論のような書き方で解答すべきものが多く(※3)、予備校が対応できていない部分が多かったとみえます。まだはっきりしないところではありますが、今後も、法科大学院生と大学生との間で顕著な差が生じる傾向が続くとすれば、受験対策においても重要な意味を持つことになるでしょう。
 ※3 憲法の全農林警職法事件行政法の処分後の間接事情考慮に係る日光太郎杉事件、諮問手続と群馬バス事件商法の兼任禁止該当者を監査役に選任する株主総会決議の効力に関する判例の監査役が子会社取締役に選任され就任を承諾した事案への適用民訴の既判力抵触・作用に関する判例刑法の道具性の類型に関する判例刑訴の令状提示後搬入物に係る判例の同居人持帰り事案への適用等が挙げられるでしょう。具体的な書き方は、各リンク先の参考答案を参照してみてください。

posted by studyweb5 at 07:07| 司法試験関連ニュース・政府資料等 | 更新情報をチェックする


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